JP3991137B2 - カウンターウエイト付厚み圧下プレス - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被圧延材を搬送しながら圧下するカウンターウエイトを有する厚みプレス装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、スラブの圧延には粗ミルが用いられている。圧延されるスラブは5m〜12mの短尺スラブで、所定の厚みにするため、粗ミルを複数台設けたり、スラブを前進、後進させて圧延をするリバース圧延を行っている。また圧下プレスも用いられている。近年、連続鋳造設備による長尺スラブが用いられるようになり、後続する圧延装置に連続的にスラブを搬送することが要望されている。粗ミルで粗圧延する場合、かみ込角限界(約17°)があり、1回の圧延での減厚代Δtは50mm程度である。スラブは連続しているため、リバース圧延はできず、所望の厚みにするためには粗ミルを複数台直列に設けるか、1台の場合は作業ロール径を大幅に大きくする必要がある。
【0003】
このため圧下プレスが用いられている。図8はスライダーで金型を圧下するもので、かつスラブを移動しながら圧下する走間プレスである。スラブ31を挟んで上下に設けられた金型32はスライダー33に取付けられ、スライダー33はクランク機構34により上下動する。金型32,スライダー33およびクランク機構34は送り用クランク機構35によりスラブ流れ方向に往復動する。スラブ31はピンチロール36と搬送テーブル37により搬送される。スラブ圧下中は送りクランク機構35により金型32,スライダー33およびクランク機構34はスラブ流れ方向に移動し、ピンチロール36はこの移動速度に合わせてスラブ31を搬送する。なお、圧下プレスとして圧下中はスラブ31を停止させ、圧下終了後プレスした長さ搬送し、再び圧下を繰り返すスタート・ストップ方式も用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述の大径の粗ミルを製作することは設計上、コスト上困難であり、大径となると低速圧延となりロールの冷却が困難なためロール寿命が短くなる。また図8に示すスライダーと送り用クランク機構を用いた圧下プレスでは、スライダー等をスラブ流れ方向に往復動する機構が複雑で大がかりとなり高価な設備となる。またスライダーの上下方向の振動が大きい。スタート・ストップ方式の圧下プレスでは、スラブを常に0から搬送速度まで、また搬送速度から0まで加減速する必要がある。スラブの搬送はピンチロールと搬送テーブルによって行われ、加減速が大きいためこれらの設備は大型化している。
【0005】
本発明は上述の問題点に鑑みてなされたもので、スラブを搬送しながら厚み圧下を行なう厚み圧下プレスであって構造が比較的簡単であり、圧下動作による振動の少ない圧下プレスを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明では、被圧延材を挟んで上下に設けられたクランク軸と、このクランク軸に摺動自在に嵌合して偏心回動するスライダーと、このスライダーに前記被圧延材に対向して設けられた金型と、前記クランク軸を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記クランク軸は、前記スライダーに嵌合している偏心軸とこの偏心軸の両側に設けられ偏心軸の軸心に対し偏心した軸心を有する支持軸よりなり、この支持軸の少なくても一方には前記偏心軸の偏心方向とほぼ180°方向に偏心したカウンターウエイトが設けられている。
【0007】
スライダーにクランク軸が直接嵌合しており、クランク軸が回転すると、偏心軸は支持軸の回りを偏心して回動するので、スライダーは上下動して被圧延材を圧下するとともに被圧延材流れ方向にも往復動する。これによりスライダーおよび金型は圧下時も被圧延材流れ方向へ移動するので、図8で示したような圧下中の送り用機構は必要ない。このため走間プレスが可能となり、かつ、構成部品が少く、構造が単純となる。また支持軸に偏心軸の偏心方向とほぼ180°の方向に偏心したカウンターウエイトを設けるのでスライダーに生ずる加減加速度が打ち消され振動を少くすることができる。
【0008】
請求項2の発明では、被圧延材を挟んで上下に設けられたクランク軸と、このクランク軸に一端部が摺動自在に嵌合して偏心回動し他端部が互いに回動自在に連結された上下の圧下フレームと、この圧下フレームの連結部を水平方向に移動可能に支持する水平案内装置と、前記圧下フレームの一端部に被圧延材と対向して取付けられた金型と、前記クランク軸を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記クランク軸は、前記一端部に嵌合している偏心軸とこの偏心軸の両側に設けられ偏心軸の軸心に対して偏心した軸心を有する支持軸よりなり、この支持軸の少なくても一方には前記偏心軸の偏心方向とほぼ180°方向に偏心したカウンターウエイトが設けられている。
【0009】
かかる構成により圧下フレームの一端部はクランク軸の回転により偏心回転するので、これに接続されている金型は上下動して被圧延材を圧下するとともに被圧延材流れ方向に往復動するので、クランク軸の回転方向を選定することにより金型を圧下時被圧延材の流れ方向へ移動するようにし、走間プレスとすることができる。また上下の圧下フレームの他端部は互いに回動自在に連結され、水平方向にのみ移動するようガイドされるので、圧下時一端部が受ける反力によるモーメントを吸収することができる。本発明も図8で示したような圧下中の送り用機構は必要ない。このため構成部品が少く、構造が単純となる。また支持軸に偏心軸の偏心方向とほぼ180°の方向に偏心したカウンターウエイトを設けるので一端部に生ずる加減加速度が打ち消され振動を少くすることができる。
【0010】
請求項3の発明では、前記カウンターウエイトは回転エネルギを蓄積するのに十分な質量を有しフライホイールとしても働く。
【0011】
カウンターウエイトは支持軸の回りを回転するので回転エネルギーを蓄積することができ、十分な質量を持たせることによりフライホイールの機能を持たせることができる。
【0012】
請求項4の発明では、前記カウンターウエイトの偏心による慣性力は前記スライダーによる慣性力または前記圧下フレームの一端部による慣性力をほぼ打ち消すように設定されている。
【0013】
上記の構成とすることにより、請求項1および2の圧下プレスの振動を大幅に減少させることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は第1実施形態の厚み圧下プレスの構成を示す図であり、図2は図1のX−X断面図である。被圧延材1を挟んで上下に金型2が設けられている。金型2の内部には冷却水を供給し冷却する。なお外部からも冷却水をかけるようにしてもよい。金型2はスライダー3に金型受け4を介して着脱可能に取付けられる。スライダー3には被圧延材1の幅方向にクランク軸5が2本被圧延材流れ方向(前進方向)に1列に摺動自在に嵌合している。クランク軸5はスライダー3と嵌合している偏心軸5bとこの偏心軸5bの両端軸方向に接続された支持軸5aとから構成され、一方の支持軸5aには図示しない駆動装置が接続され、クランク5を回転駆動する。支持軸5aと偏心軸5bとは互いに中心軸をずらして接続されており、これにより偏心軸5bは支持軸5aの回りを偏心回転する。
【0015】
偏心軸5bの両端の支持軸5aにはそれぞれカウンターウエイト6が設けられている。カウンターウエイト6は支持軸5aに対して重心位置をずらして取り付けられており、そのずれの方向は支持軸5aに対する偏心軸5bのずれの方向より180°の方向である。カウンターウエイト6の偏心による慣性力(アンバランス力)がスライダー3、金型2および金型受け4による慣性力をほぼ打ち消すようにすることにより、振動を大幅に減少することができる。
【0016】
金型2、スライダー3、金型受け4、クランク軸5、カウンターウエイト6は、被圧延材1を挟んで上下に対称に設けられ、本体フレーム8によって一体に構成されている。偏心軸5bはスライダー3に設けられた軸受7により回転自在に支持され、支持軸5aは本体フレーム8に設けられた軸受7により回転自在に支持される。
【0017】
次に動作について説明する。図3はスライダー3の1サイクルの動作を示す。図4は1サイクルにおけるスライダー3と被圧延材1の動作を示す。図3において、1サイクルはt1〜t2〜t3〜t4〜t1と移動し、t2を挟んでta〜tbの期間で圧下が行われる。図4において、t1〜t4は図3のt1〜t4に対応する。t1においてスライダー3は、上方に中間的に上がり、最も後方に移動した位置にある。t2においては、圧下状態を示し、前後方向には中間位置にある。t3においては、上方に中間的に上がり、前後方向には最も前進した位置にある。t4においては、最も上昇した位置にあり、前後方向には中間位置にある。スライダー3はこのように、t1〜t2〜t3の期間は矢印で示すように前進しており、圧下時のt2周辺で最大速度になる。故に圧下時、このスライダー3の速度に合わせてピンチロール9により被圧延材1を搬送することにより、圧下時にも圧下に最適の速度で連続的に搬送することができる。またカウンターウエイト6はスライダー3の運動と180°ずれた動きをすることによりスライダー3による振動を打ち消し振動を少くしている。また、フライホイールとしても機能し駆動装置の動力軽減に寄与している。
【0018】
次に第2実施形態を説明する。図5は本実施形態の圧下プレス装置の構成図であり、図6は、図5のY−Y断面図で被圧延材1の幅方向の中心線に対して対称な構造であるため半分を示す。図5及び図6に示すように、本実施形態の圧下プレス装置は、被圧延材1の上下に対向して配置され回転駆動される上下のクランク軸15と、このクランク軸に一端部13a(図で右端部)が摺動自在に嵌合し、他端部13b(左端部)が互いに回動自在に連結された上下の圧下フレーム13と、圧下フレーム13の連結部13cが水平方向に移動するようガイドする水平案内装置19と、上下の圧下フレーム13の一端部13aに被圧延材1に対向して取り付けられた上下の金型12と、クランク軸15に取付けられたカウンターウエイト16と、クランク軸15を支持する本体フレーム18とを備える。なお、金型12は一端部13aに高さ調整板14を介して取付けられている。
【0019】
水平案内装置19は、油圧シリンダ、クランク機構、或いはサーボモータであり、上下の圧下フレーム13が連結された連結部13cを、クランク軸15の回転に応じて被圧延材流れ方向に移動させるようになっている。
【0020】
クランク軸15は図6に示すように、圧下フレーム13の一端部13aと嵌合する偏心軸15bと、この偏心軸15bの両端に互いの軸心をずらして結合した支持軸15aとからなる。支持軸15aは軸受17を介して本体フレーム18で支持され、偏心軸15bは軸受17を介して一端部13aで支持されている。本体フレーム18の外側の支持軸15aにはカウンターウエイト16がその重心を支持軸15aの軸心とずらして取付けられており、ずれの方向は支持軸15aと偏心軸15bとのずれの方向に対し180°の方向としている。このカウンターウエイト16を付けた支持軸15aの一方には駆動装置20が設けられ、この駆動装置20は制御装置22により制御されている。
【0021】
次に本実施形態の動作を説明する。図7は、金型12の軌跡を模式的に示す図であり、(A)は、金型12と圧下フレーム13の全体の軌跡、(B)は金型12のみの軌跡を示している。クランク軸15を回転すると、上下の偏心軸15bが支持軸15aのまわりを回転し、この偏心軸15bの外周面はその偏心量eの2倍の直径を有する円運動を行い、これに追従して上下の圧下フレーム13は、他端部13bが被圧延材流れ方向に往復動しながら、一端部13aが上下動する。従って、図7(B)に示すように、上下の金型12は、偏心軸15bの偏心量eの2倍の直径を有する円運動を行いながら上下動する。
【0022】
また、図5に示すように、偏心軸15bの回転角度に応じて、金型12による圧下時に水平案内装置19により圧下フレーム13の連結部13cを被圧延材流れ方向に移動することにより、上下の金型12により被圧延材1を圧下しながら被圧延材流れ方向に金型12を搬送することができる。この圧下量は、偏心軸15bの偏心量eで決まり、噛込角等に制限されずに高圧下が可能である。また、被圧延材1を圧下しながら水平案内装置19により搬送するので、走間プレスが自由にできる。またカウンターウエイト16は一端部13aの運動と180°ずれた動きをすることにより一端部13aによる振動を打ち消し振動を少くしている。また、フライホイールとしても機能し駆動装置の動力軽減に寄与している。
【0023】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明は、クランク軸でスライダーまたは圧下フレームの一端部を直接偏心回転することにより、被圧延材を圧下しながら移動させる走間圧下プレスとすることができる。またクランク軸にカウンターウエイトを設けることにより振動を軽減することができ、さらにカウンターウエイトをフライホイールとして機能させることにより駆動装置の動力を軽減することができる。なおクランク軸の偏心回転動作により金型を圧下しながら被圧延材の流れ方向に移動できるので、圧下中金型を被圧延材流れ方向に移動させる機構が必要であり装置が簡単な構造となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態の構成を示す図である。
【図2】図1のX−X断面図である。
【図3】スライダーの1サイクルの動作を示す図である。
【図4】スライダーと被圧延材の1サイクルの動作を示す図である。
【図5】本発明の第2実施形態の構成を示す図である。
【図6】図5のY−Y断面図である。
【図7】金型の軌跡を模式的に示す図である。
【図8】従来の走間圧下プレスの一例を示す図である。
【符号の説明】
1 被圧延材
2 金型
3 スライダー
4 金型受け
5 クランク軸
5a 支持軸
5b 偏心軸
6 カウンターウエイト
7 軸受
8 本体フレーム
9 ピンチロール
12 金型
13 圧下フレーム
13a 一端部
13b 他端部
13c 連結部
14 高さ調整板
15 クランク軸
15a 支持軸
15b 偏心軸
16 カウンターウエイト
17 軸受
18 本体フレーム
19 水平案内装置

Claims (4)

  1. 被圧延材を挟んで上下に設けられたクランク軸と、このクランク軸に摺動自在に嵌合して偏心回動するスライダーと、このスライダーに前記被圧延材に対向して設けられた金型と、前記クランク軸を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記クランク軸は、前記スライダーに嵌合している偏心軸とこの偏心軸の両側に設けられ偏心軸の軸心に対し偏心した軸心を有する支持軸よりなり、この支持軸の少なくても一方には前記偏心軸の偏心方向とほぼ180°方向に偏心したカウンターウエイトが設けられていることを特徴とするカウンターウエイト付厚み圧下プレス。
  2. 被圧延材を挟んで上下に設けられたクランク軸と、このクランク軸に一端部が摺動自在に嵌合して偏心回動し他端部が互いに回動自在に連結された上下の圧下フレームと、この圧下フレームの連結部を水平方向に移動可能に支持する水平案内装置と、前記圧下フレームの一端部に被圧延材と対向して取付けられた金型と、前記クランク軸を回転駆動する駆動装置と、を備え、前記クランク軸は、前記一端部に嵌合している偏心軸とこの偏心軸の両側に設けられ偏心軸の軸心に対して偏心した軸心を有する支持軸よりなり、この支持軸の少なくても一方には前記偏心軸の偏心方向とほぼ180°方向に偏心したカウンターウエイトが設けられていることを特徴とするカウンターウエイト付厚み圧下プレス。
  3. 前記カウンターウエイトは回転エネルギを蓄積するのに十分な質量を有しフライホイールとしても働くことを特徴とする請求項1または2記載のカウンターウエイト付厚み圧下プレス。
  4. 前記カウンターウエイトの偏心による慣性力は前記スライダーによる慣性力または前記圧下フレームの一端部による慣性力をほぼ打ち消すように設定されていることを特徴とする請求項1または2記載のカウンターウエイト付厚み圧下プレス。
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