JP3990856B2 - ポリプロピレンマスターバッチ及びそれを用いた成形方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた耐傷つき性とともに、成形性(射出成形性または射出圧縮成形性)と物性バランス(高剛性かつ高衝撃強度)に優れるポリプロピレン樹脂成形品が得られるポリプロピレンマスターバッチとそれを用いた成形方法に関するものであり、特に各種工業部品、自動車部品、とりわけ自動車内装部品の成形用として好適なポリプロピレンマスターバッチとそれを用いた成形方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、工業部品分野における各種成形品、例えば、バンパー、インストルメントパネル、ファンシュラウド、グローブボックス等の自動車部品、テレビ、VTR、洗濯機等の家電機器製品の部品用等としてプロピレン系樹脂組成物がその優れた成形性、機械的強度や経済性の特徴を活かし多く実用に供されてきている。しかしながら、近年、上記各用途は、益々高機能化や製品大型化が進みつつあり、それに伴いプロピレン系樹脂組成物には、例えば、自動車内装部品分野においては、高度な成形性、高度な物性バランス(高い剛性と高い衝撃強度)と、それに加えて高度の耐傷つき性が低コストの下で求められている。
【0003】
プロピレン系樹脂組成物の耐傷つき性の改良に関しては、特定のポリエチレンを添加する技術(特開昭57−73034号公報)、特定粒径のフィラーを利用する技術(特開昭57−8235号公報)や、核剤添加等により結晶性を向上させ表面硬度を改良する技術等が知られている。
【0004】
これらの技術により、ある程度、上記の目的は達成されているものの、成形品のシボ模様の多様化に伴い、さらに高度な耐傷つき性の水準が求められつつある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況下において、耐傷付き性に優れその上、成形性(射出成形性または射出圧縮成形性)と物性バランス(高剛性かつ高衝撃強度)に優れるポリプロピレン樹脂成形品が得られる,ポリプロピレンマスターバッチ及びそれを用いた成形方法を提供することにより、低コストで高性能な工業部品、自動車部品とりわけ自動車内装部品を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために、種々の研究を重ねた結果、特定の結晶性ポリプロピレン樹脂に、特定の無機フィラーと特定のポリエチレン及び/または滑成分、分散促進成分、場合によりエチレン・α−オレフィン共重合ゴム、着色成分を特定の比率で配合することにより得られるポリプロピレンマスターバッチを、結晶性ポリプロピレン樹脂と混合して射出成形または射出圧縮成形した場合、その成形品が優れた耐傷つき性を発現し、その上、成形性(射出成形性または射出圧縮成形性)、物性バランス(高い剛性と高い衝撃強度)も高度の水準を発現することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0007】
本発明は、高濃度の無機フィラーを含有するポリプロピレンマスターバッチを使用するにも拘わらず、高度の耐傷つき性、成形性及び物性バランスが並立したポリプロピレン樹脂成形品を与えるものである。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の成分(a)〜成分(f)を配合し、混合及び/または混練造粒してなるポリプロピレンマスターバッチ及びそれを用いた成形方法である。
(a)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜500g
/10分である結晶性ポリプロピレン樹脂; 1〜49.9重量%
(b)タルク及び/またはワラストナイト; 50〜90重量%
(c)密度が0.920g/cm以上のポリエチレン及び/または滑成分; 0.1〜9重量%
(但し、成分(a)〜成分(c)の合計は100重量%である。)
(d)分散促進成分;
成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し0.1〜5重量部
(e)エチレン・α−オレフィン共重合ゴム;
成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し0〜50重量部
(f)着色成分;
成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し0〜20重量部
(ここで、滑成分は天然ワックス系、多価アルコール部分エステル系、エステル類系、炭化水素系またはシリコーン化合物系のもの、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン、アルコール類、脂肪酸アミドまたはその誘導体であり、分散促進成分は高級脂肪酸金属塩または高級脂肪酸である。)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明について詳細に説明する。
〔I〕ポリプロピレンマスターバッチ
1.構成成分
本発明のポリプロピレンマスターバッチは、下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)さらに、場合により成分(e)、成分(f)からなる。
【0010】
(1)結晶性ポリプロピレン樹脂〔成分(a)〕
本発明で用いられる上記成分(a)は、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、過半重量のプロピレンと他のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)、芳香族ビニル単量体(例えば、スチレン等)、ビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン等)等との二元以上のブロック、ランダムないしはグラフト共重合体(これらの混合物であっても良い。)である。なかでも、ホモポリプロピレン部(A単位部)とエチレン・プロピレンランダム共重合部(B単位部)を含有するプロピレン・エチレンブロック共重合体またはプロピレン・エチレンランダム共重合体が好ましい。
【0011】
上記結晶性ポリプロピレン樹脂は、高立体規則性触媒を用いて、スラリー重合、気相重合あるいは塊状重合により製造され、重合方式としては、バッチ重合、連続重合のいずれの方式も採用することができる。高立体規則性触媒としては、例えば、塩化マグネシウムに四塩化チタン、有機酸ハライド及び有機珪素化合物を接触させて形成した固体成分に、有機アルミニウム化合物成分を組合わせた触媒を用いる。この結晶性ポリプロピレン樹脂は、2種以上の樹脂混合物であっても良い。
【0012】
前記A単位部は、プロピレンの単独重合によって得られるものであり、また前記B単位部は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるものである。
B単位部は、該プロピレン・エチレンブロック共重合体中に、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜36重量%の割合を占めていることが望ましい。該B単位部の含有量が上記範囲より多いと、ポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂の混合成形品の耐傷つき性や剛性が不良となり易い。
【0013】
また、B単位部の含有量は、1gのプロピレン・エチレンブロック共重合体を沸騰キシレン300ml中に30分浸漬して溶解させた後、室温まで冷却して、ガラスフィルターで濾過、乾燥して求めた固体重量から逆算して求めた値である。
【0014】
さらに、A単位部の密度は、剛性等の観点から0.9071g/cm以上、特に0.9081g/cm以上であることが好ましい。
【0015】
結晶性ポリプロピレン樹脂全体のメルトフローレート(以下、MFRと略す。)は、0.1〜500g/10分であるが、好ましくは0.2〜200g/10分、さらに好ましくは0.3〜150g/10分のものである。MFRが0.1g/10分未満のものは、ポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂の混合成形時に流動性が不足し、500g/10分を超えるものは、成形品の衝撃強度が不足し、それぞれ不適である。
上記MFRは、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して測定されたものである。
【0016】
また、結晶性ポリプロピレン樹脂は、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が8重量%以上のものが好ましく、12重量%以上のものが、とりわけ好ましい。上記100℃及び120℃未満での不溶分は、オルトジクロルベンゼンを溶媒として用い、クロス分別法によって以下に示す条件にて測定した値である。
装置:三菱化学(株)製、CFC・T150A型、カラム:昭和電工(株)製、AD80M/S、濃度:40mg/19ml。
【0017】
(2)タルク及び/またはワラストナイト〔成分(b)〕
本発明で用いられる上記成分(b)のタルク及び/またはワラストナイトは、以下に示すようなものである。
タルクは、平均粒径が1.5〜15μm、好ましくは1.5〜10μm、特に好ましくは2〜8μmのものである。15μmを超えるものは、耐傷つき性が劣り、一方、1.5μm未満のものは、ポリプロピレンマスターバッチ中の分散が不良となり易く、各々好ましくない。
タルクは、剛性及び耐熱性の向上並びに成形品の寸法安定性及び調整等に有効である。さらに、タルクの平均アスペクト比が4以上、特に5以上のものがより好ましい。
【0018】
タルクは、先ず例えば、タルク原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕して製造したり、さらにジェットミル等で微粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレーター等で分級調整する等の方法にて製造する。ここで原石が中国産であると金属不純物成分が少ないので好ましい。
また、タルクは、各種金属塩などで表面処理したものでも良く、さらに、見掛け比容を2.50ml/g以下にした、いわゆる圧縮タルクを用いても良い。
なお、タルクの平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計を用いて測定した値であり、測定装置としては、例えば、堀場製作所製LA−920型が測定精度において優れているので好ましい。タルクの直径や長さ及びアスペクト比は、顕微鏡等により測定された値より求められる。
【0019】
ワラストナイト(珪灰石)は、CaSiOまたはCaO・SiOの化学式で表されるもので、通常、針状または不定形粒状の形状のものである。
ワラストナイトは、平均粒径50μm以下、かつアスペクト比2以上のものが好ましい。
【0020】
(3)ポリエチレン及び/または滑成分〔成分(c)〕
本発明で用いられる上記成分(c)のポリエチレン及び/または滑成分は、以下に示すようなものである。
ポリエチレンは、密度が0.920g/cm以上、好ましくは0.940g/cm以上、特に好ましくは0.950〜0.970g/cmのものである。さらに好ましくは、MFR(190℃、2.16kg荷重)が2g/10分以上、好ましくは4g/10分以上、特に好ましくは15〜30g/10分のものである。上記範囲外の密度やMFRを有するものは、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の耐傷つき性や外観が劣り不適である。
上記密度は、JIS−K7112に、MFRは、JIS−K7210(190℃、2.16kg荷重)に準拠してそれぞれ測定されたものである。
【0021】
また、滑成分としては、天然ワックス系、多価アルコール部分エステル系、エステル類系、パラフィンワックス等の炭化水素系、ステアリルアルコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類、シリコーン化合物系、不飽和カルボン酸及びその誘導体で変性されたポリオレフィン、脂肪酸アミドまたはその誘導体等が挙げられる。
【0022】
なかでも、脂肪酸アミドまたはその誘導体が好ましく、具体的にはラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、N−ステアリルエルカアミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられ、とりわけ、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド等のモノアミドが好ましい。
【0023】
(4)分散促進成分〔成分(d)〕
本発明用いられる上記成分(d)の分促進成分は、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、ステアリン酸等の高級脂肪酸等が挙げられる。本成分は、本発明の、ポリプロピレンマスターバッチ中のタルク及び/またはワラストナイトの分散を良好にするために用いる。この場合、予めタルク及び/またはワラストナイトにプリブレンドする方法等で処理するとより効果的である。
【0024】
(5)エチレン・α−オレフィン共重合ゴム〔成分(e)〕
本発明において、場合により用いられる上記成分(e)のエチレン・α−オレフィン共重合ゴムは、炭素数3〜8のα−オレフィンを20〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、特に好ましくは20〜40重量%含有するものである。このゴムは、ジエンとの3元共重合ゴムであっても良く、この場合は、ジエンを1〜10重量%、好ましくは2〜8重量%、特に好ましくは3〜6重量%含有する。
【0025】
エチレン・α−オレフィン共重合ゴムのMFR(230℃、2.16kg荷重)は、0.05〜100g/10分、好ましくは0.1〜100g/10分、特に好ましくは0.5〜80g/10分のものである。
密度は、0.85〜0.88g/cm、好ましくは0.86〜0.88g/cm、特に好ましくは0.86〜0.87g/cmのものである。炭素数3〜8のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル−ペンテン−1、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン等が挙げられる。なかでも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましく、とりわけ、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンが好ましい。
【0026】
ジエンとの3元共重合体の場合は、共重合するジエンとして、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1、4−ヘキサジエン等を挙げることができる。
α−オレフィンの含有量が上記範囲よりも少なすぎると、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の衝撃強度が不足し、多すぎると、耐傷つき性や剛性が低下する。これらの共重合ゴムは1種単独でも2種以上組合わせて用いても良い。
【0027】
また、これらの製造方法は、特に限定されないが、バナジウム化合物系や国際公開WO91/04257号公報等に示されるようなメタロセン系触媒を用いて製造されたものが好ましい。
α−オレフィンの含有量は、赤外スペクトル分析法や13C−NMR法等の常法(一般に、赤外スペクトル分析法で得られる値は、13C−NMR法に較べ低密度程小さく(約10〜50%)なる傾向がある。)によって測定される値である。
なお、MFRは、JIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に、密度は、JIS−K7112に準拠して測定されたものである。
【0028】
(6)着色成分〔成分(f)〕
本発明において、場合により用いられる、上記成分(f)の着色成分は、通常用いられる場合が多いもので、例えば、カーボンブラック、群青、弁柄、亜鉛華、酸化チタン、鉄黒、クロムイエロー、カドミウムイエロー等の無機系や、アゾ系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ペリレン系、ペリノン系、キノフタロン系、アントラキノン系、フタロシアニン系、アニリンブラック系等の有機系各成分等が挙げられる。
【0029】
これらは、本発明のポリプロピレンマスターバッチに直接添加しても良く、また、予めポリプロピレンやポリエチレンに高濃度に充填した、いわゆる着色マスターバッチとして、本発明のポリプロピレンマスターバッチと混合して用いても良い。この場合、着色マスターバッチとする際、用いるマトリックス材料としては、低密度ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、プロピレン・エチレンランダム共重合体やエチレン・α−オレフィン共重合体ゴムが好ましい。
【0030】
(7)その他の付加成分〔成分(g)〕
本発明のポリプロピレンマスターバッチにおいては、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、或いは、さらに性能の向上を図る為に、上記成分(a)〜成分(f)以外に、以下に示す任意の添加剤や配合材成分を配合することができる。具体的には、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、上記成分(a)〜(f)以外の、各種樹脂、SEBS等の各種ゴム、各種フィラー等の配合材を挙げることができる。
光安定剤や紫外線吸収剤、例えば、ヒンダードアミン化合物系、ベンゾエート化合物系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系やホルムアミジン系等は、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の耐候性の付与・向上に有効である。核剤、例えば、タルク等の無機系、または芳香族カルボン酸の金属塩、ソルビトール系もしくは芳香族リン酸金属塩等の有機系の核剤は、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の剛性や耐傷つき性の付与・向上に有効である。
【0031】
2.配合割合
本発明のポリプロピレンマスターバッチに配合される、成分(a)、成分(b)、成分(c)の割合は、成分(a)が1〜49.9重量%、好ましくは1〜44.8重量%、さらに好ましくは2〜39.5重量%である。成分(a)の割合が1重量%未満では、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の耐傷つき性が劣り、49.9重量%を超えると、剛性が劣る。
【0032】
成分(b)の割合は、50〜90重量%、好ましくは55〜90重量%、さらに好ましくは60〜90重量%である。成分(b)の割合が50重量%未満では、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の剛性が劣り、90重量%を超えると、衝撃強度や耐傷つき性が劣る。
【0033】
成分(c)の割合は、0.1〜9重量%、好ましくは0.2〜9重量%、さらに好ましくは0.5〜8重量%である。成分(c)の割合が0.1重量%未満では、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の耐傷つき性や衝撃強度が劣り、9重量%を超えると、剛性が劣る。
【0034】
成分(d)の割合は、成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し、0.1〜5重量部、好ましくは1〜3重量部である。成分(d)の割合が5重量部を超えると、結晶性ポリプロピレン樹脂との混合成形品の剛性が劣る。
また、場合により配合される、成分(e)及び成分(f)の各成分は、成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し、成分(e)が0〜50重量部、好ましくは1〜50重量部、さらに好ましくは10〜50重量部、また、成分(f)が0〜20重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは1〜10重量部配合される。
成分(e)の割合が50重量部を超えると、同じく剛性が劣り、成分(f)の割合が20重量部を超えると、色むら等の外観不良を生じ易くなり、いずれも好ましくない。
【0035】
3製造
(1)混練・造粒
本発明のポリプロピレンマスターバッチは、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)場合により、成分(e)、成分(f)、〔成分(g)〕を、上記配合割合で配合して一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒する方法や、スーパーミキサーやヘンシェルミキサー等の高速回転型攪拌混合機で攪拌・混練しながら混練物を得、その後押出機で造粒する、いわゆる攪拌混練造粒方法等によって得られる。
【0036】
この場合、各成分の分散を良好にすることができる混練・造粒方法を選択することが好ましく、通常は、高速回転型攪拌混合機にて攪拌混練し(特開昭63−27550公報参照)、その混練物を別の造粒機で造粒する攪拌造粒方法、または一軸若しくは二軸の押出機を用いて混練・造粒が行われる。この混練・造粒の際には、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)場合により、成分(e)、成分(f)、〔成分(g)〕の配合物を、同時に混練しても良く、また性能向上を図るべく各成分を分割、例えば先ず、成分(a)と成分(b)の一部または全部を混練し、その後に残り成分を混練・造粒することもできる。
【0037】
〔II〕ポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂の混合成形方法
1.成形と混合割合
本発明のポリプロピレンマスターバッチは、後述の結晶性ポリプロピレン樹脂(通常はペレット)と、任意の割合で混合した後、射出成形法(ガス射出成形法も含む)、または射出圧縮成形法(インジェクションプレス)にて成形することによって各種成形品を得る。
この場合、ポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂の混合割合は、10〜60重量部:90〜40重量部が好ましく、10〜50重量部:90〜50重量部がとりわけ好ましい。
【0038】
2.結晶性ポリプロピレン樹脂
本発明のポリプロピレンマスターバッチは、成形品を得るための成形に当って、以下の結晶性ポリプロピレン樹脂が必要である。
本発明のポリプロピレンマスターバッチと、任意の割合で混合成形する際に用いられる結晶性ポリプロピレン樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、過半重量のプロピレンと他のα−オレフィン(例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン等)、ビニルエステル(例えば、酢酸ビニル等)、芳香族ビニル単量体(例えば、スチレン等)、ビニルシラン(例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリメチルシラン等)等との二元以上のブロック、ランダムないしはグラフト共重合体(これらの混合物であっても良い。)である。なかでも、ホモポリプロピレン部(A単位部)とエチレン・プロピレンランダム共重合部(B単位部)を含有するプロピレン・エチレンブロック共重合体が好ましい。
この結晶性ポリプロピレン樹脂は、2種以上の混合物であっても良い。
【0039】
前記A単位部は、プロピレンの単独重合によって得られるものであり、また前記B単位部は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるものである。
B単位部は、上記プロピレン・エチレンブロック共重合体中に、好ましくは1〜40重量%、より好ましくは2〜36重量%の割合を占めていることが望ましい。
【0040】
結晶性ポリプロピレン樹脂は、MFRが1〜500g/10分のものであるが、1〜200g/10分のものが好ましく、特に10〜100g/10分のものが好ましい。MFRが1g/10分未満のものは、本発明のポリプロピレンマスターバッチとの混合成形時に流動性が不足し、500g/10分を超えるものは、成形品の衝撃強度が不足し、それぞれ不適である。
また、結晶性ポリプロピレン樹脂は、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が8重量%以上のものが好ましく、12重量%以上のものが、とりわけ好ましい。さらに、A単位部の密度は、剛性等の観点から0.9071g/cm以上、特に0.9081g/cm以上であることが好ましい。
B単位部含量、全体のMFR、オルトジクロルベンゼンの100℃及び120℃不溶分の各測定は、前述の成分(a)と同一の測定法にて測定したものである。
【0041】
本発明の効果を著しく損なわない範囲で、この結晶性ポリプロピレン樹脂に、以下に示す任意の添加剤や配合材成分を添加した樹脂を用いることもできる。
具体的には、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、各種樹脂、EPR、EOR、SEBS等の各種ゴム、タルク等の各種フィラー等の配合材を挙げることができる。
光安定剤や紫外線吸収剤、例えば、ヒンダードアミン化合物系、ベンゾエート化合物系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系やホルムアミジン系等は、ポリプロピレンマスターバッチとの混合成形品の耐候性の付与・向上に有効である。
核剤、例えば、タルク等の無機系、または芳香族カルボン酸の金属塩、ソルビトール系もしくは芳香族リン酸金属塩等の有機系の核剤は、ポリプロピレンマスターバッチとの混合成形品の剛性や耐傷つき性の付与・向上に有効である。
【0042】
〔III〕用途
本発明のポリプロピレンマスターバッチは、結晶性ポリプロピレン樹脂と混合成形することによって、その成形品が優れた耐傷つき性を発現し、その上、物性バランス(高剛性かつ高衝撃強度)も、高度の水準を発現するので各種の生活資材用製品、自動車部品や家電機器部品等各種工業部品等の成形材料としての実用性能を有しており、なかでも、自動車内外装部品、とりわけ、インストルメントパネル、コンソール、トリム、ピラー、ドアトリム等の内装部品用成形材料として好適である。
【0043】
【実施例】
本発明のポリプロピレンマスターバッチとそれを用いた成形方法を、さらに詳細に説明するために、以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、ここでのMFRは、成分c−2を除いて、230℃、2.16kg荷重の条件下での測定値である。
【0044】
〔I〕ポリプロピレンマスターバッチの調製
1.原材料
成分(a)(いずれも酸化防止剤と光安定剤を含有)
a−1:密度が0.9092g/cmのA単位部を70重量%、B単位部を30重量%各々含有し、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が8重量%、かつ成分(a)全体の重合MFRが15g/10分である気相重合で製造したプロピレン・エチレンブロック共重合体(ペレット)
a−2:密度が0.9091g/cmのA単位部を90重量%、B単位部を10重量%各々含有し、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が17重量%、かつ成分(a)全体の重合MFRが50g/10分であるスラリー重合で製造したプロピレン・エチレンブロック共重合体(ペレット)
【0045】
成分(b)(いずれもパウダー状)
b−1:平均粒径9.5μm、平均アスペクト比2のワラストナイト
b−2:平均粒径5.8μm、平均アスペクト比6のタルク
b−3:平均粒径6.3μmの重質炭酸カルシウム
成分(c)
c−1:エルカ酸アミド
c−2:MFR(190℃、2,16kg荷重)が22g/10分、密度が0.958g/cmの高密度ポリエチレン
c−3:オレイン酸アミド
成分(d)
d−1:ステアリン酸マグネシウム
成分(e)
e−1:1−オクテンを25重量%含有(赤外法)し、MFRが11g/10分、密度が0.869g/cmの、メタロセン系触媒を用いて溶液重合法で製造されたエチレン・1−オクテン共重合ゴム
【0046】
2.混練造粒
上記材料を、表1に示す割合で配合し、MB1、MB2、MB5〜8については、HTM型押出機にて混練造粒(200℃)し、MB3、MB4については、スーパーミキサーにて攪拌混練(約170〜180℃)した後、押出機にて造粒(200℃)して、ポリプロピレンマスターバッチを調製した。
【0047】
【表1】
Figure 0003990856
【0048】
〔II〕ポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂の混合成形表1に示すポリプロピレンマスターバッチと、下記結晶性ポリプロピレン樹脂(NP)を、表2に示す割合で混合(ドライブレンド)して、射出成形機または射出圧縮成形機へ供し評価用試験片を成形した。
NP1:上記、成分(a−1)と同じ。
NP2:密度が0.9092g/cmのA単位部を85重量%、B単位部を15重量%各々含有し、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が13重量%、かつ全体の重合MFRが30g/10分である気相重合で製造したプロピレン・エチレンブロック共重合体(ペレット)
【0049】
NP3:密度が0.9092g/cmのA単位部を75重量%、B単位部を25重量%各々含有し、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が11重量%、かつ全体の重合MFRが60g/10分である気相重合で製造したプロピレン・エチレンブロック共重合体(ペレット)
NP4:密度が0.9092g/cmのA単位部を95重量%、B単位部を5重量%各々含有し、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が12重量%、かつ全体の重合MFRが0.6g/10分であるスラリー重合で製造したプロピレン・エチレンブロック共重合体(ペレット)
なお、この際、マトリックス樹脂として低密度ポリエチレンを用い、カーボンブラックと酸化チタンを主成分とした着色成分を全体の25重量%含有させた黒灰色着色マスターバッチ(CMB1)も、ポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂の合計100重量部に対し、2重量部ドライブレンドした。
【0050】
〔III〕評価方法
1.耐傷つき性
120mm×120mm×3mmtの射出成形シート(シボ付)の表面中央部を、1mmΦ(先端半径0.3mm)の鋼製針を用いて、荷重600g、速度30mm/secの条件下で擦過し、該針傷跡部分を目視にて観察して下記のように判定した。
A:針傷跡が殆ど認められない、或いは僅かに認められるが目立たない。
B:針傷跡が認められるが、比較的目立ち難い。
C:針傷跡が深く、または白化して、はっきり認められ目立つ。
この場合、Cは成形品として、実用が困難なレベルである。
【0051】
2.成形性
射出成形機:NN350(新潟鉄工製)にて、100mm×360mm×2.5mmtのシートを作成した(実施例1〜4及び比較例1〜5)。
射出圧縮成形機:VFP500(神戸製作所製)にて、1080mm×960mm×2.6mmtのシートを作成した(実施例5)。
成形流動性、各シートの成形品外観を評価し、下記の3段階に分類・判定した。
・非常に良好:充填がスムースで、成形品の外観にも問題ない。
・良好:充填・成形品の外観とも、上記のものに劣るが実用上問題ない。
・不良:充填が一部不可能であったり、フローマーク・リングマークが目立ち、実用上問題がある。
【0052】
3.剛性:曲げ弾性率
JIS−K7203に準拠して、23℃の温度下にて測定した。本値は耐熱性の目安ともなる。
4.アイゾット衝撃強度
JIS−K7110に準拠して、23℃の温度下にてノッチ付で測定した。
【0053】
〔IV〕実施例
実施例1〜3(参考例)、4、5及び比較例1〜5
上記の混合成形と評価を行った結果を表2に示す。
表2に示すように実施例1〜5のポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂及び着色マスターバッチを混合成形して得られた成形品は、いずれも良好な耐傷つき性、成形性、物性バランス(高剛性及び高衝撃強度)を示した。
一方、比較例1〜5に示したものは、これらのバランスが不良であった。
【0054】
【表2】
Figure 0003990856
また、実施例5に示すポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂及び着色マスターバッチの混合品で、1300mm×420mm×305mm×3.5mmt(概略寸法)の自動車インストルメントパネルを射出成形(成形機:(株)日本製鋼所製 J4000EV、成形温度220℃、金型温度40℃、射出圧力800kg/cm)したところ、良好な耐傷つき性を示すとともに、成形性・外観・機械的強度バランスも良好であった。
【0055】
【発明の効果】
本発明のポリプロピレンマスターバッチと結晶性ポリプロピレン樹脂を混合したものは、優れた成形性(射出成形性または射出圧縮成形性)を示すとともに、その成形品は優れた耐傷つき性と物性バランス(高剛性かつ高衝撃強度)を有するため、各種の生活資材用製品、工業部品用等、なかでも、自動車部品、とりわけインストルメントパネル、コンソールボックス、ピラー、ドアトリム等の内装部品用射出成形及び射出圧縮成形材料として好適な素材である。

Claims (12)

  1. 下記の成分(a)〜成分(f)を配合し、混合及び/または混練造粒してなるポリプロピレンマスターバッチ。
    (a)メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜500g
    /10分である結晶性ポリプロピレン樹脂; 1〜49.9重量%
    (b)タルク及び/またはワラストナイト; 50〜90重量%
    (c)密度が0.920g/cm以上のポリエチレン及び/または滑成分; 0.1〜9重量%
    (但し、成分(a)〜成分(c)の合計は100重量%である。)
    (d)分散促進成分;
    成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し0.1〜5重量部
    (e)エチレン・α−オレフィン共重合ゴム;
    成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し0〜50重量部
    (f)着色成分;
    成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し0〜20重量部
    (ここで、滑成分は天然ワックス系、多価アルコール部分エステル系、エステル類系、炭化水素系またはシリコーン化合物系のもの、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン、アルコール類、脂肪酸アミドまたはその誘導体であり、分散促進成分は高級脂肪酸金属塩または高級脂肪酸である。)
  2. 成分(a)が、プロピレン・エチレンブロック共重合体またはプロピレン・エチレンランダム共重合体である請求項1に記載のポリプロピレンマスターバッチ。
  3. 成分(b)が、平均粒径1.5〜15μmのタルクである請求項1または2に記載のポリプロピレンマスターバッチ。
  4. 成分(c)が、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)5g/10分以上の高密度ポリエチレン及び/または脂肪酸アミド及び/またはその誘導体である請求項1ないし3のいずれか一項に記載のポリプロピレンマスターバッチ。
  5. 成分(e)が、エチレンと炭素数3、4、6、8のα−オレフィンとの共重合ゴムであり、かつ該成分(e)を、成分(a)、成分(b)、成分(c)の合計100重量部に対し1〜50重量部含有する請求項1ないしのいずれか一項に記載のポリプロピレンマスターバッチ。
  6. 攪拌混練造粒方法にて、混練造粒して製造された請求項1ないしのいずれか一項に記載のポリプロピレンマスターバッチ。
  7. 請求項1ないしのいずれか一項に記載のポリプロピレンマスターバッチと、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が1〜500g/10分である結晶性ポリプロピレン樹脂とを混合し、射出成形法または射出圧縮成形法を用いて成形加工する成形方法。
  8. 請求項に記載の成形方法を用いて成形されてなる自動車用部品。
  9. 結晶性ポリプロピレン樹脂として、エチレン・プロピレンランダム共重合部(B単位部)を1〜40重量%含有し、かつメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が1〜200g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いる請求項に記載の成形方法。
  10. 請求項に記載の成形方法を用いて成形されてなる自動車用部品。
  11. 請求項1ないしのいずれか一項に記載のポリプロピレンマスターバッチ10〜60重量部と結晶性ポリプロピレン樹脂90〜40重量部の混合物を用いる請求項またはに記載の成形方法。
  12. 請求項11に記載の成形方法を用いて成形されてなる自動車用部品。」
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