JP3678338B2 - プロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、曲げ強度(曲げ応力)及び剛性のいずれにおいても優れたプロピレン系樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、バンパー、インストルメントパネル、ドアトリム、ピラートリム等の自動車部品については、その優れた物性バランス、成形性により、プロピレン系樹脂材料にタルク等の無機フィラー及び/又はエラストマーを配合したプロピレン系複合材料が幅広く用いられている。
【0003】
自動車部品に高い衝撃特性が求められる場合には、プロピレン系樹脂材料にエラストマーを配合することが多く行われる。しかし、エラストマーの配合量が増加すると曲げ弾性率や曲げ強度が低下してしまう問題がある。これらの物性の改善にはタルクなどのフィラーの添加が施されるが、曲げ弾性率は向上するものの、曲げ強度の向上幅はそれほど大きくない。このことから従来のプロピレン系複合材料は、曲げ弾性率は高くても、衝撃性と曲げ強度のバランスにおいて十分なものではなかった。
【0004】
自動車用内装部品には人が直接手を触れる部分が多く、この際の質感の表現である剛性感・しっかり感等は、曲げ強度に依存している。よって、衝撃性と曲げ強度とのバランスの優れたプロピレン系複合材料が望まれている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高い衝撃強度を有し且つ曲げ強度に優れたプロピレン系樹脂組成物を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意検討の結果、特定のプロピレン系高衝撃樹脂材料に、特定の高結晶性のプロピレン樹脂材料、及び場合により特定のタルクを配合し、混合又は溶融混練することにより上記課題が解決された樹脂組成物が得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、以下に示すペレット状の成分(A)及びペレット状の成分(B)を混合し、そのまま射出成形機に投入し、射出成形又は射出圧縮成形することを特徴とする、成形品の製造方法を提供する。
(A)下記成分(a1)と(a2)と(a3)とからなるプロピレン系樹脂材料:90〜40重量%
(a1)結晶性プロピレン単独重合部分(a1−1単位部)を60〜83重量%、及びエチレン含量が30〜52重量%で且つ重量平均分子量が230,000〜600,000であるエチレン・プロピレンランダム共重合部分(a1−2単位部)を17〜40重量%含有し、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が20〜150g/10分、且つ25cm2(面積)×0.5mm(厚み)の成形品におけるゲルサイズ50μm以上のゲル数が100個以下である、プロピレン・エチレンブロック共重合体;100重量部
(a2)炭素数4〜8のα−オレフィンを20〜50重量%含有し、且つMFRが0.3〜15g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合ゴム;〜10重量部
(a3)平均粒径が0.5〜15μmのタルク;0〜200重量部
(B)下記成分(b1)と(b2)とからなるプロピレン系樹脂材料;10〜60重量%
(b1)オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が10重量%以上であり、100℃未満で不溶な成分の重量平均分子量が200,000以上であり、且つMFRが0.3〜20g/10分であるプロピレン単独重合体又はプロピレン・エチレンブロック共重合体:100重量部
(b2)平均粒径が0.5〜15μmのタルク;20〜200重量部
【0008】
本発明では、ゴム成分の割合が多い高流動性のプロピレン系樹脂(成分(A))と、高分子量で高結晶性のプロピレン系樹脂(成分(B))と、場合により特定のタルク成分とを組み合わせた樹脂組成物とすることにより、十分に高い衝撃強度を有し、且つ曲げ強度の向上した樹脂成形材料が得られる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施の形態を説明する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、以下に示す成分(A)及び成分(B)を配合し、混合及び/又は混練造粒してなるものである。
【0010】
(1)成分(A)
本発明で用いられる成分(A)は、下記成分(a1)と(a2)と(a3)とからなるプロピレン系樹脂材料である。
【0011】
1.成分(a1):
成分(a1)は、成分(A)のプロピレン系樹脂材料の主成分であり、結晶性プロピレン単独重合部分(a1−1単位部)とエチレン・プロピレンランダム共重合部分(a1−2単位部;ゴム成分)とを含有するプロピレン・エチレンブロック共重合体である。
【0012】
前記a1−2単位部のエチレン含量は30〜52重量%、好ましくは32〜50重量%、さらに好ましくは35〜45重量%である。エチレン含量が上記範囲をはずれると衝撃強度が劣る。
【0013】
また、前記a1−2単位部の重量平均分子量(Mw)は、230,000〜600,000、好ましくは250,000〜500,000、さらに好ましくは300,000〜400,000である。Mwが上記範囲未満では衝撃強度が劣るので好ましくない。一方、Mwが上記範囲を超えると成形外観が悪化するので好ましくない。
【0014】
前記プロピレン・エチレンブロック共重合体中におけるa1−1単位部とa1−2単位部の割合は、a1−1単位部が60〜83重量%、好ましくは65〜80重量%、さらに好ましくは70〜77重量%であり、a1−2単位部が17〜40重量%、好ましくは20〜35重量%、さらに好ましくは23〜30重量%である。a1−1単位部の割合が上記範囲未満でa1−2単位部の割合が上記範囲を超えると、曲げ強度が劣るので好ましくない。一方、a1−2単位部の割合が上記範囲未満でa1−1単位部の割合が上記範囲を超えると、衝撃強度が劣るので好ましくない。
【0015】
成分(a1)のプロピレン・エチレンブロック共重合体のメルトフローレート(230℃、2.16kg荷重;以下、「MFR」と略す)は、20〜150g/10分、好ましくは20〜110g/10分、さらに好ましくは20〜70g/10分である。MFRが上記範囲未満では成形外観が劣るので好ましくない。一方、MFRが上記範囲を超えると衝撃強度が劣るので好ましくない。
【0016】
また、成分(a1)のプロピレン・エチレンブロック共重合体は、25cm(面積)×0.5mm(厚み)の成形品におけるゲルサイズ50μm以上のゲル数が100個以下、好ましくは60個以下、さらに好ましくは40個以下である。このゲル数が100個を超えると、成形外観や衝撃強度が劣るので好ましくない。
【0017】
かかる特定の性状を有するプロピレン・エチレンブロック共重合体は、チーグラー系やメタロセン系の高立体規則性触媒を用いてスラリー重合、気相重合あるいは液相塊重合により製造されるもので、重合方式としてはバッチ重合、連続重合のどちらを採用することもできる。該プロピレン・エチレンブロック共重合体を製造するに際しては、最初にプロピレンの単独重合によって結晶性ポリプロピレン単独重合部分(a1−1単位部)を形成し、次にエチレンとプロピレンのランダム共重合によってエチレン・プロピレンランダム共重合部分(a1−2単位部)を形成したものが、品質上から好ましい。
【0018】
たとえば、塩化マグネシウムに四塩化チタン、及び有機酸ハライドを接触させて形成した固体成分に、有機アルミニウム化合物、有機珪素化合物を組み合わせた触媒を用いてプロピレンの単独重合を行い、次いでエチレンとプロピレンのランダム共重合を行うことによって製造できる。
【0019】
このプロピレン・エチレンブロック共重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で他の不飽和化合物、たとえば1−ブテンなどのα−オレフィン、酢酸ビニルの如きビニルエステルなどを含有する三元以上の共重合体であっても、またこれらの混合物であってもよい。また、このプロピレンエチレンブロック共重合体はペレット状でもパウダー状でも構わない。
【0020】
2.成分(a2):
本発明の成分(a2)は、炭素数3〜8のα−オレフィンを含有するエチレン・α−オレフィン共重合ゴムである。炭素数3〜8のα−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−ペンテン−1等が挙げられる。
【0021】
前記α−オレフィンの含有量は、エチレン・α−オレフィン共重合ゴム全量に対し20〜50重量%、好ましくは20〜45重量%、さらに好ましくは20〜40重量%である。α−オレフィン量が上記範囲未満では衝撃強度不足となるので好ましくない。一方、α−オレフィン量が上記範囲を超えると剛性が劣るので好ましくない。
【0022】
また、前記成分(a2)のエチレン・α−オレフィン共重合ゴムは、MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.3〜15g/10分、好ましくは0.7〜13g/10分、さらに好ましくは1〜10g/10分である。MFRが上記範囲未満では成形性が劣るので好ましくない。一方、MFRが上記範囲を超えると衝撃強度や表面硬度が不足するので好ましくない。
【0023】
3.成分(a3):
本発明においては、上記成分(a1)及び(a2)に加え、さらに必要に応じて成分(a3)としてタルクを配合することもできる。本発明で用いられるタルクは、好ましくは平均粒径が0.5〜15μm、より好ましくは2〜10μmものである。
【0024】
本発明において、平均粒径が上記範囲内のタルクを用いれば、膨張係数を小さくすることができ、また、収縮率が低減される、良好な低光沢の外観が得られる等の利点がある。なお、タルクの平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布計(たとえば堀場製作所LA−920型)を用いて測定することができる。
【0025】
これらタルクは、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化することにより得られたものをさらに精密に分級することによって得られる。また、一度粗分級したものをさらに分級してもかまわない。機械的に粉砕する方法としては、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いて粉砕することができる。これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調節するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、シャープカットセパレーター等の装置で1回で又は繰返して湿式又は乾式分級する。本発明で用いるタルクを製造する際は、特定の粒度分布のタルクを得るために、特定の粒径に粉砕した後、シャープカットセパレーターにて分級操作を行うのが好ましい。
【0026】
また、本発明で用いられるタルクは、無処理であっても予め表面処理されていてもよい。この表面処理の例としては、具体的には、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、樹脂酸、ポリエチレングリコールなどの処理剤を用いる化学的または物理的処理が挙げられる。このような表面処理が施されたタルクを用いると、さらに成形加工性、衝撃強度等にも優れたプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0027】
4.成分(a1)〜(a3)の配合比
成分(A)中の、成分(a2)の配合割合は、成分(a1)100重量部に対し、〜10重量部である。成分(a2)を配合することにより衝撃強度が向上するという利点がある。一方、成分(a2)の割合が成分(a1)100重量部に対し10重量部を超えると、曲げ強度が不足するので好ましくない。成分(a2)の好ましい配合割合は、2〜6重量部である。
【0028】
成分(A)中の、成分(a3)の配合割合は、成分(a1)100重量部に対し、0〜200重量部、好ましくは0〜100重量部、さらに好ましくは0〜60重量部である。すなわち、成分(a3)は必要に応じて用いればよい任意成分であり成分(A)中に配合されていなくてもよいが、成分(a3)を配合することにより膨張係数をさらに小さくすることができ、また、収縮率が低減される、良好な低光沢の外観が得られる等の利点がある。ただし、成分(a1)100重量部に対し200重量部を超えるとタルクの分散が不良となるので好ましくない。
【0029】
5.成分(A)の製造
成分(A)は、上記成分(a1)〜(a3)を混合することにより得られる。混合方法は特に限定されず、成分(a1)〜(a3)を上記配合割合で配合し、従来公知のヘンシェルミキサー、タンブラー、リボンブレンダー等の混合機を用いる方法で混合すればよい。
【0030】
前記成分(A)としては、上記混合を行った後さらに溶融混練し、さらに場合により造粒してペレット状に成形したものが好ましい。この場合、混練・造粒は、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用い、設定温度100〜200℃程度にて行うことができる。これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。なお、この溶融混練・造粒の際には、上記各成分を予め配合したものを混練してもよく、また各成分を分割して混練する、すなわち例えば先ず成分(a1)の一部と、成分(a2)及び場合により成分(a3)とを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
【0031】
(2)成分(B)
本発明の成分(B)は、下記成分(b1)と(b2)とからなるプロピレン系樹脂材料である。
【0032】
1.成分(b1):
本発明で用いられる成分(b1)は、プロピレン単独重合体又はプロピレン・エチレンブロック共重合体であって、オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が10%以上のものである。すなわち、前記成分(b1)をオルトジクロルベンゼンを溶媒として溶解したときに、100℃まで昇温した場合の不溶な成分を「100℃不溶分」とし、さらに120℃まで昇温した場合の不溶な成分を「120℃不溶分」とすると、120℃不溶分は、100℃不溶分全量に対し10重量%以上、好ましくは13重量%以上、さらに好ましくは15重量%以上である。前記120℃不溶分の割合が10重量%未満では、曲げ強度や曲げ弾性率が不足するので好ましくない。
【0033】
また、本発明の成分(b1)は、前記100℃不溶分の重量平均分子量(Mw)が200,000以上、好ましくは250,000〜500,000である。成分(b1)のMwが上記範囲未満では衝撃強度が低くなるので好ましくない。
【0034】
また、前記成分(b1)は、MFRが0.3〜20g/10分、好ましくは0.5〜15g/10分、さらに好ましくは0.7〜10g/10分である。MFRが上記範囲未満では成形外観が不良となるので好ましくない。一方、MFRが上記範囲を超えると衝撃強度が不足するので好ましくない。
【0035】
かかる成分(b1)はプロピレン単独重合体でもプロピレン・エチレンブロック共重合体でもよいが、プロピレン・エチレンブロック共重合体の場合、エチレン含量は好ましくは1〜10重量%、より好ましくは2〜8重量%程度である。かかる特定の性状を有するプロピレン単独重合体又はプロピレン・エチレンブロック共重合体は、上記成分(a1−1)と同様の方法で製造することができる。
【0036】
2.成分(b2)
本発明においては、上記成分(b1)に加え、さらに必要に応じて成分(b2)としてタルクを配合することもできる。本発明で用いられるタルクは、好ましくは平均粒径が0.5〜15μm、より好ましくは2〜10μmものである。
【0037】
本発明において、平均粒径が上記範囲内のタルクを用いれば、膨張係数を小さくすることができ、また、収縮率が低減される、良好な低光沢の外観が得られる等の利点がある。なお、タルクの平均粒径は、レーザー回折散乱方式の粒度分布計(たとえば堀場製作所LA−920型)を用いて測定することができる。
【0038】
これらタルクは、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化することにより得られたものをさらに精密に分級することによって得られる。また、一度粗分級したものをさらに分級してもかまわない。機械的に粉砕する方法としては、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いて粉砕することができる。これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調節するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、シャープカットセパレーター等の装置で1回で又は繰返して湿式又は乾式分級する。本発明で用いるタルクを製造する際は、特定の粒度分布のタルクを得るために、特定の粒径に粉砕した後、シャープカットセパレーターにて分級操作を行うのが好ましい。
【0039】
また、本発明で用いられるタルクは、無処理であっても予め表面処理されていてもよい。この表面処理の例としては、具体的には、シランカップリング剤、高級脂肪酸、脂肪酸金属塩、不飽和有機酸、有機チタネート、樹脂酸、ポリエチレングリコールなどの処理剤を用いる化学的または物理的処理が挙げられる。このような表面処理が施されたタルクを用いると、さらに成形加工性、衝撃強度等にも優れたプロピレン系樹脂組成物を得ることができる。
【0040】
3.成分(b1)と(b2)の配合比
成分(B)中における成分(b2)の割合は、上記成分(b1)100重量部に対し、20〜200重量部、好ましくは20〜100重量部、さらに好ましくは20〜60重量部である。成分(b2)を配合することによりさらに膨張係数を小さくすることができ、また、収縮率が低減される、良好な低光沢の外観が得られる等の利点がある。ただし、成分(b1)100重量部に対し200重量部を超えるとタルクの分散が不良となるので好ましくない。
【0041】
4.成分(B)の製造
成分(B)が上記成分(b2)とを含む場合、該成分(B)は成分(b1)と(b2)とを混合することにより得られるが、混合後溶融混練し、場合によりさらに造粒してペレット状に成形したものであってもよい。混合、及び溶融混練・造粒の方法は、上記成分(A)の製造の際に用いられる方法と同様の方法を採用することができる。
【0042】
(4)成分(A)と(B)の配合比
本発明のプロピレン系樹脂組成物中における成分(A)と成分(B)の割合は、該プロピレン系樹脂組成物中、成分(A)が90〜40重量%、好ましくは85〜45重量%、さらに好ましくは55〜80重量%であり、成分(B)が10〜60重量%、好ましくは15〜55重量%、さらに好ましくは20〜45重量%である。成分(A)の割合が上記範囲未満で成分(B)の割合が上記範囲を超えると衝撃強度が低下するので好ましくない。一方、成分(B)の割合が上記範囲未満で成分(A)の割合が上記範囲を超えると剛性が低下するので好ましくない。
【0043】
本発明では、上述したゴム成分の割合が多い高流動性のプロピレン系樹脂(成分(A))に対し、かかる高分子量で高結晶性のプロピレン系樹脂(成分(B))を配合することにより、十分に高い剛性を有し、且つ曲げ強度の向上した樹脂成形材料が得られる。したがって、タルク等の無機充填剤を配合しても、また配合しなくても、同様に高剛性で且つ曲げ強度等の曲げ特性に優れた樹脂成形材料を得ることができる。
【0044】
(5)その他の付加的成分
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、上記成分(A)及び(B)に加え、さらに本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的成分(任意成分)を添加することができる。
【0045】
このような付加的成分としては、フェノール系及びリン系等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の耐候劣化防止剤;有機アルミニウム化合物、有機リン化合物等の核剤;キナクリドン、ベリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック、アゾ系顔料、ベンガラ、群青等の着色物質;繊維状チタン酸カリウム、繊維状マグネシウムオキシサルフェート、繊維状ホウ酸アルミニウム、炭酸カルシウム等のウィスカー;炭素繊維やガラス繊維等のフィラー成分;高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン等の高分子成分;その他、紫外線吸収剤、帯電防止剤、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤等を適宜用いることができる。
【0046】
これらの付加的成分は、成分(A)及び成分(B)の各構成成分[(a1)〜(a3)及び(b1)〜(b2)]に予め添加しておいてもよく、また該構成成分を各々混合及び必要に応じて溶融混練して成分(A)及び(B)を調製する際に添加してもよい。また、成分(A)及び成分(B)を混合・溶融混練してプロピレン系樹脂組成物を製造する際に配合してもよい。
【0047】
(6)製造方法
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造方法は特に限定されず、従来公知の方法で上述した成分(A)及び成分(B)並びに必要に応じて用いられる付加的成分(任意成分)等を上記配合割合で配合し、混合することにより製造することができる。混合は、一般的に行われるヘンシェルミキサー、タンブラー、リボンブレンダー等の混合機を用いる方法で行うことができる。
【0048】
また、本発明においては、上記各成分の混合後、さらに溶融混練・造粒し、ペレット状に成形することもできる。混練造粒は、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用い、設定温度180〜240℃程度にて行うことができる。これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。なお、この混合/混練・造粒の際には、上記各成分を予め配合したものを混合/混練してもよく、また各成分を分割して混合/混練する、すなわち例えば先ず成分(A)の一部と、成分(B)及び必要に応じて用いられる付加的成分とを混合/混練し、その後に残りの成分を混合/混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
また、上記成分(A)及び成分(B)並びに任意成分を、そのまま射出成形機のホッパー等に投入して成形に供することもできる。
【0049】
本発明の方法では、予め混練造粒してペレット状に成形した成分(A)と成分(B)とを混合し、そのまま射出成形機に投入する。
【0050】
このように、本発明においては、タルクの使用が必要な場合には予め成分(A)又は成分(B)の調製時(好ましくはペレット製造時)にタルクを配合しておくことができる。特に好ましくは、成分(B)側にタルクを配合しておく。
このように予めタルクを成分(A)及び/又は成分(B)に配合しておくことにより、成分(A)及び成分(B)の混合比を変えることで任意のタルク量の製品を得ることができる。
【0051】
(7)用途
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、公知の各種方法による成形に供することができる。例えば射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等にて成形することによって各種成形品を得ることができる。このうち、射出成形、射出圧縮成形がより好ましい。
【0052】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、剛性と曲げ特性がともに優れており、高度な物性バランスを有しているため、各種工業部品分野、特に例えばバンパー、インストルメントパネル、ガーニッシュなどの自動車用部品やテレビケースなどの家電機器部品などの各種工業部品用成形材料として、実用に十分な性能を有している。
【0053】
【実施例】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はその要旨を逸脱しない限りこれらの実施例によって制約をうけるものではない。
なお、実施例における各種の物性測定は下記の要領で実施した。
【0054】
(1)MFR
MFR(単位:g/10分)はJIS−K7210(230℃、2.16kg荷重)に従って測定した。
【0055】
(2)ゴム成分
プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(a))中のエチレン・プロピレンランダム共重合体成分(a1−1単位部)の含有量は、2gの試料を沸騰キシレン300g中に20分間浸漬して溶解させた後、室温まで冷却して、それによって析出した固相をガラスフィルターで濾過乾燥して求めた固相重量から逆算して求めた値である。また、前記ゴム成分中のエチレン比率は、赤外スペクトル分析法により測定された値である。
【0056】
(3)重量平均分子量
重量平均分子量(Mw)は、GPCにより測定した。
(4)ゲル数
25cm(面積)×0.5mm(厚み)の成形品におけるゲルサイズ50μm以上のゲル数を、次の方法により求めた。すなわち、射出成形で上記寸法の試験片を作製し、この試験片の反対側から光を投射し、実体顕微鏡で拡大写真を撮り、それを画像処理装置で平均直径50μm以上のものに分別積算した方法にて数え、ゲル数を求めた。
【0057】
(5)不溶分の測定
100℃不溶分及び120℃不溶分は、オルトジクロルベンゼンを溶媒として用い、クロス分別法によって以下に示す条件で測定した。
装置 :三菱化学(株)製、CFC・T150A型
カラム:昭和電工(株)製、AD80M/S・・・3本
濃度 :40mg/19ml
溶媒 :オルトジクロルベンゼン
【0058】
(6)曲げ特性
曲げ弾性率(単位:MPa)及び曲げ強度(単位:MPa)は、JIS−K7171に準拠し、23℃下で測定した。
【0059】
(7)アイゾット衝撃強度
アイゾット(IZOD)衝撃強度(単位:kJ/m)は、JIS−K7110に準拠して23℃下で測定した。
【0060】
(8)成形性
射出成形機(型締め圧170トン、成形温度210℃)で、35cm×10cm×0.2cmのプレートを射出成形し、以下の基準で成形性を評価した。
○:成形良好
×:ヒケ又はショートショット発生
【0061】
【実施例1〜、比較例1〜
(1)各成分の製造
1.成分(A)の製造
下記成分(a1)と(a2)(いずれも酸化防止剤配合済み)を、ヘンシェルミキサーで2分間混合した後、二軸混練機(製造元;(株)神戸製鋼所、商品名;KCM50)にて設定温度200℃で混練造粒し、成分(A)ペレット(イ)及び(ロ)を作製した。
【0062】
イ)
(a1)結晶性プロピレン単独重合部分(a1−1単位部)を74重量%、及びエチレン含量が40重量%で且つ重量平均分子量が366,000であるエチレン・プロピレンランダム共重合部分(a1−2単位部)を26重量%含有し、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が32g/10分、ゲルサイズ50μm以上のゲル数が28個の、プロピレン・エチレンブロック共重合体;100重量部
(a2)1−ブテンを32重量%含有し、且つMFRが8g/10分のエチレン・1−ブテン共重合ゴム;4重量部
【0063】
ロ)
(a1)結晶性プロピレン単独重合部分(a1−1単位部)を86重量%、及びエチレン含量が55重量%で且つ重量平均分子量が403,000であるエチレン・プロピレンランダム共重合部分(a1−2単位部)を14重量%含有し、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が31g/10分、ゲルサイズ50μm以上のゲル数が5個の、プロピレン・エチレンブロック共重合体;100重量部
(a2)なし
【0064】
2.成分(B)の製造
下記成分(b1)(いずれも酸化防止剤配合済み)と(b2)とを、ヘンシェルミキサーで2分間混合した後、二軸混練機(製造元;(株)神戸製鋼所、商品名;KCM50)にて設定温度200℃で混練造粒し、成分(B)ペレット(イ)〜(ホ)を作製した。
【0065】
イ)
(b1)オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が17.3重量%であり、100℃未満で不溶な成分の重量平均分子量が270,000であり、且つMFRが10g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体
【0066】
ロ)
(b1)オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が7.4重量%であり、100℃未満で不溶な成分の重量平均分子量が150,000であり、且つMFRが30g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体
【0067】
ハ)
(b1)オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が23.5重量%であり、100℃未満で不溶な成分の重量平均分子量が346,000であり、且つMFRが3g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体;70重量部
(b2)平均粒径が5.2μmのタルク;30重量部
【0068】
ニ)
(b1)オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が7.4重量%であり、100℃未満で不溶な成分の重量平均分子量が150,000であり、且つMFRが30g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体;70重量部
(b2)平均粒径が5.2μmのタルク;30重量部
【0069】
ホ)
(b1)オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が22.9重量%であり、100℃未満で不溶な成分の重量平均分子量が412,000であり、且つMFRが0.2g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体;70重量部
(b2)平均粒径が5.2μmのタルク;30重量部
【0070】
(2)プロピレン系樹脂組成物の製造
上記で得られた成分(A)及び成分(B)を、表1〜2に示す組成でヘンシェルミキサーで2分間混合して、プロピレン系樹脂組成物ペレットを作製した。
【0071】
(3)テストピースの成形
得られたペレットを用いて射出成形機(型締め圧170トン、成形温度210℃)で射出成形し、35cm×10cm×0.2cmのプレート、JIS−K6921の三点曲げ試験用、アイゾット衝撃試験用の各テストピースを成形した。得られたテストピースについて、曲げ特性、アイゾット衝撃強度等を測定し、成形性を評価した。その結果を表3に示す。
【0072】
Figure 0003678338
【0073】
Figure 0003678338
【0074】
Figure 0003678338
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、高剛性でありながら且つ曲げ特性、特に曲げ強度にも優れたプロピレン系樹脂成形材料を得ることができる。

Claims (1)

  1. 以下に示すペレット状の成分(A)及びペレット状の成分(B)を混合し、そのまま射出成形機に投入し、射出成形又は射出圧縮成形することを特徴とする、成形品の製造方法。
    (A)下記成分(a1)と(a2)と(a3)とからなるプロピレン系樹脂材料:90〜40重量%
    (a1)結晶性プロピレン単独重合部分(a1−1単位部)を60〜83重量%、及びエチレン含量が30〜52重量%で且つ重量平均分子量が230,000〜600,000であるエチレン・プロピレンランダム共重合部分(a1−2単位部)を17〜40重量%含有し、メルトフローレート(230℃、2.16kg荷重)が20〜150g/10分、且つ25cm2(面積)×0.5mm(厚み)の成形品におけるゲルサイズ50μm以上のゲル数が100個以下である、プロピレン・エチレンブロック共重合体;100重量部
    (a2)炭素数3〜8のα−オレフィンを20〜50重量%含有し、且つMFRが0.3〜15g/10分のエチレン・α−オレフィン共重合ゴム;〜10重量部
    (a3)平均粒径が0.5〜15μmのタルク;0〜200重量部
    (B)下記成分(b1)と(b2)とからなるプロピレン系樹脂材料;10〜60重量%
    (b1)オルトジクロルベンゼンによる分別において、100℃未満で不溶な成分中における120℃未満で不溶な成分の割合が10重量%以上であり、100℃未満で不溶な成分の重量平均分子量が200,000以上であり、且つMFRが0.3〜20g/10分であるプロピレン単独重合体又はプロピレン・エチレンブロック共重合体:100重量部
    (b2)平均粒径が0.5〜15μmのタルク;20〜200重量部
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