JP4384782B2 - プロピレン系樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、優れた成形(射出成形、射出圧縮成形)性、物性バランス(高い剛性、衝撃強度と表面硬度)と共に、耐傷付性に優れた新規なプロピレン系樹脂組成物に関するものであり、特に各種工業部品、自動車部品、とりわけ自動車内装部品用の素材として好適なプロピレン系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、工業部品分野における各種成形品、例えばバンパー、インストルメントパネル、ファンシュラウド、グローブボックス等の自動車部品、テレビ、VTR、洗濯機等の家電機器製品の部品用などとして、プロピレン系樹脂組成物がその優れた成形性、機械的強度や経済性の特徴を活かし多く実用に供されてきている。
しかしながら、近年上記各用途は、益々高機能化や製品大型化が進みつつあり、それに伴いプロピレン樹脂組成物には、例えば自動車内装部品分野においては、高度な成形性、高度な物性バランス(高い剛性、衝撃強度及び成形品表面硬度)と、それに加え高度な耐傷付性が求められている。
【0003】
プロピレン樹脂組成物の耐傷付性の改良に関しては、特定のポリエチレンを添加する技術(特開昭57−73034号公報)、特定の粒径を有するフィラーを利用する技術(特開昭57−8235号公報)や、核剤の添加、結晶性向上により表面硬度を向上させて改良する技術が知られている。
しかし、これらは、ある程度の改良は達成されるものの未だ十分な改良とはならず、成形品シボ模様の多様化に伴い、さらに高度な耐傷付性の水準が求められつつある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、この様な状況下で、成形(射出成形、射出圧縮成形)性、物性バランス(高い剛性、衝撃強度と表面硬度)に優れ、その上耐傷付性にも優れているプロピレン系樹脂組成物の提供と、それを用いることにより、低コストで高性能な工業部品、自動車部品とりわけ自動車内装部品を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために、種々の研究を重ねた結果、衝撃強度向上には有効であるが、その反面柔軟であるため、硬度と耐傷付性の付与には不利なエチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−オクテン−1共重合ゴム等のいわゆるエチレン−α−オレフィン共重合体(ゴム)を適用しない手法にて高度な物性バランスと耐傷付性の両者を発現させる樹脂組成物として、特定の2種類のプロピレン・エチレン−ブロック共重合体に、無機充填材と、場合により特定のポリエチレン、脂肪酸アミド又はその誘導体を特定の比率で配合することにより得られるプロピレン系樹脂組成物が、優れた成形(射出成形、射出圧縮成形)性、物性バランス(高い剛性、衝撃強度と表面硬度)と、耐傷付性を発現することを見出し、本発明を完成するに至ったものである。
【0006】
すなわち、本発明は、下記の成分(a)〜(e)からなることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物である。
(a)結晶性ポリプロピレン単独重合部分(A単位部)を70〜80重量%と、エチレン含量が30重量%以上で、且つ重量平均分子量(Mw)が370,000〜1,000,000であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)を20〜30重量%含有し、この成分(a)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が10〜130g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体:100重量部
(b)結晶性ポリプロピレン単独重合部分(A単位部)を35〜55重量%と、エチレン含量が30〜42重量%で、且つ重量平均分子量(Mw)が400,000〜900,000であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)を45〜65重量%含有し、この成分(b)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.1〜8g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体:10〜50重量部
(c)無機充填材:0.3〜80重量部
(d)密度が0.920g/cm以上のポリエチレン:0〜20重量部
(e)脂肪酸アミド又はその誘導体:0〜2重量部
【0007】
【発明の実施の形態】
[I]プロピレン系樹脂組成物
1.構成成分
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、下記の成分(a)、成分(b)、成分(c)、さらに場合により、成分(d)、成分(e)、成分(f)からなる。それぞれの成分について以下に説明する。
【0008】
(1):プロピレン・エチレン−ブロック共重合体a[成分(a)]
本発明において用いられる成分(a)のプロピレン・エチレン−ブロック共重合体aは、プロピレンの単独重合によって得られる結晶性ポリプロピレン単独重合部分(A単位部)を70〜80重量%、好ましくは72〜79重量%、特に好ましくは73〜78重量%と、エチレン含量が30重量%以上、好ましくは35重量%以上、特に好ましくは40重量%以上で、且つ重量平均分子量(Mw)が370,000〜1,000,000、好ましくは370,000〜900,000、特に好ましくは370,000〜700,000であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)を20〜30重量%、好ましくは21〜28重量%、特に好ましくは22〜27重量%とを含有し、この成分(a)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が10〜130g/10分、好ましくは15〜50g/10分、特に好ましくは20〜40g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体である。これらは、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。ここで、結晶性プロピレン単独重合部分(A単位部)の密度は、剛性等の点から0.9071g/cm以上、特に0.9081g/cm以上であることが好ましい。
【0009】
結晶性プロピレン単独重合部分(A単位部)の含有割合が上記範囲未満であると、剛性、成形品表面硬度や耐傷付性が不足し、一方上記範囲を超えると衝撃強度が不足する。
さらに、エチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)の含有割合が上記範囲未満であると、衝撃強度が不足し、一方上記範囲を超えると、剛性、成形品表面硬度や耐傷付性が不足する。
また、該B単位部のエチレン含量が上記範囲未満であると、成形品表面硬度や耐傷付性が不足し、悪化する。
また、該B単位部のMwが上記範囲を超えると、外観を著しく損ねたり、衝撃強度が低下し、また上記範囲未満であると、成形品の表面硬度が低下する。
さらに、該プロピレン・エチレン−ブロック共重合体全体のMFRが上記範囲未満であると、成形性や外観が劣り、一方上記範囲を超えると衝撃強度が不足する。
【0010】
上記プロピレン・エチレン−ブロック共重合体中のB単位部含量は、1gの試料を沸騰キシレン300ml中に30分間浸漬して溶解させた後、室温まで冷却して、それをガラスフィルターで濾過乾燥して求めた固相重量から逆算して測定した値である。
エチレン含量は、赤外スペクトル分析法等により測定したものである。
さらに、B単位部のMwは、上記のガラスフィルターで濾過(通過)した溶解物を別途濃縮乾燥し、それをゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)に供して測定したたものである。
MFRは、JIS−K7210(230℃、2.16kg)に準拠して測定したものである。
【0011】
本発明で用いる成分(a)のプロピレン・エチレン−ブロック共重合体は、高立体規則性触媒を用いてスラリー重合、気相重合あるいは液相塊状重合により製造されるもので、重合方式としてはバッチ重合、連続重合どちらの方式も採用することができる。該プロピレン・エチレン−ブロック共重合体を製造するに際しては、最初にプロピレンの単独重合によって結晶性ポリプロピレン部分(A単位部)を形成し、次にプロピレンとエチレンとのランダム共重合によってエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)を形成したものが品質上から好ましい。例えば、塩化マグネシウムに四塩化チタン及び有機酸ハライドを接触させて形成した固体成分に、有機アルミニウム化合物や有機珪素化合物を組合せた触媒やメタロセン触媒を用いてプロピレンの単独重合を行い、次いでエチレンとプロピレンとのランダム共重合を行うことによって製造する。
【0012】
(2):プロピレン・エチレン−ブロック共重合体b[成分(b)]
本発明において用いられる成分(b)のプロピレン・エチレン−ブロック共重合体bは、プロピレンの単独重合によって得られる結晶性ポリプロピレン単独重合部分(A単位部)を35〜55重量%、好ましくは38〜53重量%、特に好ましくは40〜51重量%と、エチレン含量が30〜42重量%、好ましくは35〜42重量%で、且つその重量平均分子量(Mw)が400,000〜900,000、好ましくは400,000〜800,000、特に好ましくは400,000〜700,000であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)を45〜65重量%、好ましくは47〜62重量%、特に好ましくは49〜60重量%とを含有し、この成分(b)全体のMFR(230℃、2.16kg荷重)が0.1〜8g/10分、好ましくは0.2〜7g/10分、特に好ましくは0.5〜6g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体である。これらは、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。ここで、結晶性プロピレン単独重合部分(A単位部)の密度は、剛性等の点から0.9071g/cm以上、特に0.9081g/cm以上であることが好ましい。
【0013】
結晶性プロピレン単独重合部分(A単位部)の含有割合が上記範囲未満であると、剛性、成形品表面硬度や耐傷付性が不足し、一方上記範囲を超えると衝撃強度が不足する。
さらに、エチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)の含有割合が上記範囲未満であると、衝撃強度が不足し、一方上記範囲を超えると、剛性、成形品表面硬度や耐傷付性が不足する。
また、該B単位部のエチレン含量が上記範囲未満であると、成形品表面硬度や耐傷付性が不足し、悪化する。
また、該B単位部のMwが上記範囲を超えると、外観を著しく損ねたり、衝撃強度が低下し、また、上記範囲未満であると、成形品の表面硬度が低下する。
さらに、該プロピレン・エチレン−ブロック共重合体全体のMFRが上記範囲未満であると、成形性や外観が劣り、一方上記範囲を超えると衝撃強度が不足する。
なお、プロピレン・エチレン−ブロック共重合体中のB単位部含量、エチレン含量、B単位部のMw、MFRは、成分(a)と同一手法で測定されたものであり、成分(b)は、成分(a)と同様の方法で、反応条件を変更して製造することができる。
【0014】
(3):無機充填材[成分(c)]
本発明において用いられる成分(c)の無機充填材としては、タルク、ワラストナイト、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、ガラス繊維などが挙げられ、中でもタルク、ワラストナイトが好ましく、特にタルクが好ましい。タルクは、剛性の向上、成形品の寸法安定性及びその調整等に有効である。
【0015】
タルクとしては、好ましくは平均粒径が1.5〜15μm、より好ましくは1.5〜10μm、特に好ましくは2〜8μmのものである。タルクの平均粒径が1.5μm未満であると凝集して外観が低下し、一方、15μmを超えると衝撃強度が低下するので、いずれも好ましくない。さらに、該タルクは、平均アスペクト比が4以上、特に5以上のものがより好ましい。
【0016】
該タルクは、先ず例えばタルク原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕して製造したり、更にジェットミルなどで微粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレーター等で分級調整する等の方法で製造する。ここで原石は中国産が金属不純物成分が少ないので好ましい。
また、該タルクは、各種金属塩などで表面処理したものでも良く、さらに見掛け比容を2.50ml/g以下にしたいわゆる圧縮タルクを用いても良い。
上記タルクの平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計を用いて測定した値であり、測定装置としては、例えば、堀場製作所製LA−920型が測定精度において優れているので好ましい。また、上記タルクの直径や長さ及びアスペクト比の測定は、顕微鏡等により測定された値より求められる。
【0017】
(4):ポリエチレン[成分(d)]
本発明において、場合により用いられる成分(d)のポリエチレンは、密度が0.920g/cm以上、好ましくは0.940g/cm以上、特に好ましくは0.950〜0.970g/cmのものである。また、このポリエチレンのMFR(190℃、2.16kg)は、好ましくは2g/10分以上、より好ましくは4g/10分以上、特に好ましくは15〜30g/10分のものである。上記範囲外の密度やMFRのものは、外観や耐傷付性が劣り不適である。
なお、密度は、JIS−K7112に、MFRは、JIS−K7210に準拠してそれぞれ測定されたものである。
【0018】
(5)脂肪酸アミド又はその誘導体[成分(e)]
本発明において、場合により用いる成分(e)の脂肪酸アミド又はその誘導体としては、ラウリン酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、ベヘン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド等が挙げられる。これらは、1種単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0019】
(6):その他の配合成分(任意成分)[成分(f)]
本発明のプロピレン系樹脂組成物においては、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、或いは、更に性能の向上を図るために、上記成分(a)、(b)、(c)、(d)及び(e)以外に、以下に示す任意の添加剤や配合材成分を配合することができる。
具体的には、着色するための顔料、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、核剤、難燃剤、分散剤、上記成分(a)〜(e)以外のポリスチレン等の各種樹脂、EPR、EPDM、EBR、EOR、SEBS、SEP、SEPS等の各種ゴム、各種フィラー等の配合材を挙げることができる。
【0020】
また、帯電防止剤、例えば非イオン系、カチオン系などの帯電防止剤は、本発明の樹脂組成物や成形品の帯電防止性の付与、向上に有効である。
具体例としては、グリセリン脂肪酸エステル、アルキルジエタノールアミン、アルキルジエタノールアミド、アルキルジエタノールアミンエステル等が挙げられる。
【0021】
さらに、光安定剤や紫外線吸収剤、例えばヒンダードアミン化合物、ベンゾエート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物やホルムアミジン系化合物等は、本発明の樹脂組成物や成形品の耐候性の付与、向上に有効である。
【0022】
さらに、核剤、例えばタルクなどの無機系、または芳香族カルボン酸の金属塩、ソルビトール系または芳香族リン酸金属塩などの有機系の核剤は、本発明の樹脂組成物の成形品の剛性、硬度や耐傷付性の付与、向上に有効である。
【0023】
さらに、分散剤としての各種金属塩は、無機フィラーや着色顔料の分散性を高め、本発明組成物の成形品の剛性、耐熱性、硬度、外観や耐傷付性の向上に有効である。
【0024】
2.成分の配合割合
本発明のプロピレン系樹脂組成物中に配合される成分(b)、成分(c)、成分(d)、成分(e)の各成分は、成分(a)100重量部を基準として配合される。
【0025】
(1)成分(b):プロピレン・エチレンブロック共重合体b
本発明のプロピレン系樹脂組成物中に配合される成分(b)のプロピレン・エチレンブロック共重合体bの配合割合は、成分(a)100重量部に対して、10〜50重量部である。配合割合が10重量部未満では、衝撃強度が不足し、50重量部を超えると、硬度、剛性、成形性や耐傷付性が劣り各々不適である。
【0026】
(2)成分(c):無機充填材
本発明のプロピレン系樹脂組成物中に配合される成分(c)の無機充填材の配合割合は、成分(a)100重量部に対して、0.3〜80重量部、好ましくは10〜80重量部、特に好ましくは20〜50重量部である。
配合割合が0.3重量部未満では、剛性や耐熱性が不足し、80重量部を超えると、外観、衝撃強度、成形性や耐傷付性が劣るようになり不適である。
【0027】
(3)成分(d):ポリエチレン
本発明のプロピレン系樹脂組成物中に、必要に応じて配合される成分(d)のポリエチレンの配合割合は、成分(a)100重量部に対して、0〜20重量部、好ましくは1〜12重量部、特に好ましくは2〜8重量部である。
配合割合が上記範囲を超えると、外観、剛性や耐熱性が劣るようになり不適である。
【0028】
(4)成分(e):脂肪酸アミド又はその誘導体
本発明のプロピレン系樹脂組成物中に、必要に応じて配合される成分(e)の脂肪酸アミド又はその誘導体の配合割合は、成分(a)100重量部に対して、0〜2重量部、好ましくは0.1〜1.5重量部、特に好ましくは0.2〜1重量部である。
配合割合が上記範囲を超えると、剛性、硬度や耐熱性が劣るようになり不適である。
【0029】
3.プロピレン系樹脂組成物の製造
(1)混練・造粒
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)、場合により、成分(d)、成分(e)、成分(f)を上記配合割合で配合して、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒することによって得られる。
この場合、各成分の分散を良好にすることが出来る混練・造粒方法を選択することが好ましく、通常は二軸押出機を用いて混練・造粒が行われる。この混練・造粒の際には、上記成分(a)、成分(b)、成分(c)、場合により、成分(d)、成分(e)、成分(f)の配合物を同時に混練しても良く、また性能向上を図るべく各成分を分割、例えば先ず成分(a)及び成分(c)の一部または全部を混練し、その後に残り成分を混練・造粒することもできる。
【0030】
(2)プロピレン系樹脂組成物の成形
上記の様にして得られたプロピレン系樹脂組成物は、射出成形(ガス射出成形も含む)または射出圧縮成形(プレスインジェクション)にて成形することによって各種成形品を得ることができる。
【0031】
[II]プロピレン系樹脂組成物の物性
上記方法によって製造された本発明のプロピレン系樹脂組成物は、射出成形性、射出圧縮成形性が良好であるほか、曲げ弾性率が、好ましくは1800MPa以上、とりわけ好ましくは2100MPa以上、ノッチ付Izod衝撃強度(23℃)が、好ましくは25KJ/m以上、とりわけ好ましくは30KJ/m以上、成形品表面のロックウェル硬度が、好ましくは65以上、とりわけ好ましくは70以上に制御されて、物性バランスに優れると共に、フローマークが発生し難い高度な外観と、良好な耐傷付性を発現することができる。
【0032】
[III]プロピレン系樹脂組成物の用途
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記性能を発現出来るため、各種の生活資材用製品、自動車部品や家電機器部品など各種工業部品用等の成形材料としての実用性能を有しており、なかでも、自動車用内外装部品、とりわけ、インストルメントパネル、コンソール、トリム、ピラー、ドアトリム等の内装部品用成形材料として好適である。
【0033】
【実施例】
本発明のプロピレン系樹脂組成物を更に詳細に説明するために、以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、実施例、比較例で用いた原材料と評価方法は、以下の通りである。
【0034】
[I]原材料
実施例および比較例で用いた原材料は次に示す通りである。
(1)成分(a)(いずれも酸化防止剤を含有している。)
a−1:密度が0.9092g/cmのA単位部を76重量%、エチレン含量が41重量%、重量平均分子量(Mw)が370,000のB単位部を24重量%各々含有し、且つ成分(a)全体のMFRが32g/10分である気相重合で製造したプロピレン・エチレン−ブロック共重合体(ペレット)
a−2:密度が0.9091g/cmのA単位部を88重量%、エチレン含量が47重量%、Mwが610,000のB単位部を12重量%各々含有し、且つ成分(a)全体のMFRが45g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体(ペレット)
【0035】
(2)成分(b)(いずれも酸化防止剤を含有している。)
b−1:密度が0.9092g/cmのA単位部を47重量%、エチレン含量が42重量%、Mwが570,000のB単位部を53重量%各々含有し、且つ成分(b)全体のMFRが0.8g/10分である気相重合で製造したプロピレン・エチレン−ブロック共重合体(ペレット)
b−2:密度が0.9092g/cmのA単位部を49重量%、エチレン含量が40重量%、Mwが510,000のB単位部を51重量%各々含有し、且つ成分(b)全体のMFRが5g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体(ペレット)
【0036】
(3)成分(c)
c−1:平均粒径5.4μm、平均アスペクト比が6のタルク
【0037】
(4)成分(d)(酸化防止剤含有済み)
d−1:MFR(190℃、2.16kg)が20g/10分、密度が0.958g/cmの高密度ポリエチレン
【0038】
(5)成分(e)
e−1:エルカ酸アミド
e−2:エチレンビスステアリン酸アミド
【0039】
(6)成分(f)
f−1:プロピレンを26重量%含有(赤外法)し、MFRが0.9g/10分、密度が0.860g/cm、ガラス転移点が−53℃のバナジウム系触媒を用いて溶液重合法で製造されたエチレン・プロピレン共重合ゴム
f−2:プロピレンを27重量%含有(赤外法)し、MFRが3.1g/10分、密度が0.860g/cm、ガラス転移点が−52℃のバナジウム系触媒を用いて溶液重合法で製造されたエチレン・プロピレン共重合ゴム
【0040】
[II]評価方法
評価は次に示す通りの方法で行った。
(1)MFR:JIS−K7210に準拠して、ポリプロピレン系樹脂およびエチレン・プロピレン共重合ゴムについては、230℃・2.16kg荷重にて測定し、ポリエチレン系樹脂については、190℃・2.16kg荷重にて測定した。
【0041】
(2)成形性:射出成形機にて100×360×2.5mmtのシートを成形し、その際の成形流動性、成形品外観を評価し、次の基準で判定した。
良好:充填性、外観ともに問題ないもの。
不良:充填が不可能であったり、フローマークが目立つもの。
【0042】
(3)剛性、曲げ弾性率:JIS−K7203に準拠して、23℃の温度下にて測定した。本値は耐熱性の目安ともなる。
【0043】
(4)Izod衝撃強度:JIS−K7110に準拠して、23℃の温度下にてノッチ付で測定した。
【0044】
(5)ロックウェル硬度:JIS−K7202に準拠して、Rスケールにて、23℃の温度下にて測定した。
【0045】
(6)耐傷付性:120×120×3mmtの射出成形シート(シボ付)の中央部表面を、1mmφ(先端半径0.3mm)の鋼製針を用いて、荷重500g、20mm/secの条件下で擦過し、該針傷跡部分を目視観察して下記の基準で判定した。
A:針傷跡が殆ど認められず目立たない。
B:針傷跡がわずかに認められが、目立たない。
C:針傷跡が認められるが、比較的目立ち難い。
D:針傷跡が深くまたは白化して、はっきり認められ目立つ。
この場合、Dは成形品として、実用不可能のレベルである。
【0046】
実施例1〜6及び比較例1〜5
上記の成分(a)、成分(b)、成分(c)、成分(d)、成分(e)および成分(f)を、ベヘン酸カルシウム含有黒灰ドライ顔料2重量部(成分(a)〜成分(f)合計100重量部当たり)と共に、表1に示す割合で配合し、タンブラーミキサーにて充分混合し、(株)神戸製鋼所製高速二軸押出機(KCM50)を用い混練造粒した。
その後、得られたペレットを射出成形機へ供し、評価試験片およびシートを成形し、物性評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【0047】
【表1】
Figure 0004384782
【0048】
【表2】
Figure 0004384782
【0049】
表2に示す様に実施例1〜6に示す組成を有する樹脂組成物は、何れも良好な成形性、良好な物性(剛性、衝撃強度と硬度)バランスを示すと共に耐傷付性も実用十分な水準を示した。一方、比較例1〜5に示したものは、これらの性能バランスが不良であった。
また、実施例5の組成物で、1300mm×420mm×305mm×3.5mmt(概略寸法)の自動車インストルメントパネルを(株)日本製鋼所製J4000EV成形機を用い、成形温度220℃、金型温度40℃、射出圧力800kg/cmで成形した処、良好な成形性、機械的強度バランス、良好な外観を発現すると共に、耐傷付性も良好であった。
【0050】
【発明の効果】
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、優れた成形(射出成形、射出圧縮成形)性、物性バランス(高い剛性、衝撃強度と表面硬度)を有し、外観性能と耐傷付性にも優れるため、各種の生活資材用製品、工業部品用等、なかでも、自動車部品、とりわけドアトリム、ピラー、インストルメントパネル、コンソール等の内装部品用射出圧縮成形材料として重要な素材である。

Claims (6)

  1. 下記の成分(a)〜(e)からなることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
    (a)結晶性ポリプロピレン単独重合部分(A単位部)を70〜80重量%と、エチレン含量が30重量%以上で、且つ重量平均分子量(Mw)が370,000〜1,000,000であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)を20〜30重量%含有し、この成分(a)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が10〜130g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体:100重量部
    (b)結晶性ポリプロピレン単独重合部分(A単位部)を35〜55重量%と、エチレン含量が30〜42重量%で、且つ重量平均分子量(Mw)が400,000〜900,000であるエチレン・プロピレン−ランダム共重合部分(B単位部)を45〜65重量%含有し、この成分(b)全体のメルトフローレート(MFR:230℃、2.16kg)が0.1〜8g/10分であるプロピレン・エチレン−ブロック共重合体:10〜50重量部
    (c)無機充填材:0.3〜80重量部
    (d)密度が0.920g/cm以上のポリエチレン:0〜20重量部
    (e)脂肪酸アミド又はその誘導体:0〜2重量部
  2. 成分(b)の全体のMFRが、0.2〜7g/10分である請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  3. 成分(c)が、平均粒径1.5〜15μmのタルクである請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. 成分(d)が、MFR(190℃、2.16kg)2g/10分以上の高密度ポリエチレンであり、且つ該成分を1〜12重量部含有する請求項1乃至3のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
  5. 成分(e)を0.1〜1.5重量部含有する請求項1乃至4のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
  6. 請求項1乃至5のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物を用いて射出成形法又は射出圧縮成形法を用いて成形加工された自動車用部品。
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