明 細 書
ポリプロピレン系ブロック共重合体、その用途、及びそれからなるポリプロ ピレン系樹脂組成物
技術分野
[0001] 本発明は、高流動性の結晶性プロピレン重合体部分と高分子量かつ含量の多い プロピレン'エチレンランダム共重合体部分とからなり、広分子量分布を有するプロピ レン系ブロック共重合体、及び該プロピレン系ブロック共重合体を含むポリプロピレン 系榭脂用成形品外観改質剤、並びに該ポリプロピレン系榭脂用成形品外観改質剤 を所定量配合した成形品外観に優れるポリプロピレン系榭脂組成物であって、成形 加工性が良好で、成形時のフローマーク特性に優れ、自動車外装部品等の射出成 形品に好適なポリプロピレン系榭脂組成物に関する。
背景技術
[0002] ポリプロピレン系榭脂は、軽量でリサイクル性にも優れることから、 自動車用部品へ の需要が高まっている。具体的には、結晶性ポリプロピレン榭脂に、エチレン 'プロピ レン共重合体、エチレン ·ブテン共重合体等のエチレン系熱可塑性エラストマ一成分 と、タルク等の無機充填剤を配合したポリプロピレン榭脂組成物が挙げられる。そして 、ポリプロピレン榭脂ゃ各種エラストマ一成分、無機充填剤を目的に応じて、適宜選 択すること〖こよって、成形性、機械物性、外観などを向上させることが提案されている 特に、結晶性ポリプロピレン榭脂中へのエチレン系熱可塑性エラストマ一成分 (特 にエチレン.プロピレン共重合体)の分散性を高めるためには、 V、わゆる「重合プレン ド」が有効であることがわ力つており、重合の第一工程で結晶性プロピレン榭脂(以下 、結晶成分と称する場合がある。)を製造し、第二工程でエチレン 'プロピレンランダム 共重合体 (以下、ゴム成分と称する場合がある。)を続けて製造することによって得ら れる、プロピレン 'エチレンブロック共重合体 (以下、 ICPと称する場合がある。)を使 用することが効果的であることは、当業者のよく知るところである。
[0003] 最近では、より薄肉な成形品を、より短 ヽ成形時間で成形が可能なポリプロピレン
系榭脂組成物が要望されている。この課題を解決する手段の一つとして、 ICPのメル トフローレート (MFR)を大きくした、 V、わゆる「高流動材料」を使用する技術が挙げら れる。力かる高流動材料は成形性が改良され、薄肉成形品も得られるようになつたが 、フローマークが生じやすいという問題があった。フローマークとは、成形品の表面外 観に現れる虎縞(トラシマ)状の模様のことであり、フローマークが生じた成形品は、商 品としての意匠性を損ない、製品価値が著しく低くなる。
フローマークの改良技術は、例えば、特許文献 特許文献 2あるいは特許文献 3 に開示されている。
[0004] 特許文献 1では、成形性と、剛性、衝撃強度などの物性バランスに優れたプロピレ ン系榭脂組成物の提供が課題とされている。この解決手段の中で、全体の MFRが 1
0〜130gZlO分で、ゴム成分の重量平均分子量が 20万〜 100万である ICP (成分 a)が開示されている。また、この ICPとは異なる全体の MFRが 0. l〜8gZlO分で、 ゴム成分の重量平均分子量が 30万〜 90万である ICP (成分 b)も開示されている。さ らに、これら成分 a、成分 bに加えて、無機充填材 (成分 c)、ポリエチレン (成分 d)、お よび脂肪酸アミド又はその誘導体 (成分 e)を特定割合で配合する技術も開示されて いる。し力しながら、特許文献 1では、結晶性プロピレン重合体部分の流動性、結晶 性プロピレン重合体部分とエチレン 'プロピレンランダム共重合体部分の粘度比とフ ローマーク特性に代表される成形品外観との関係については開示も示唆もない。
[0005] 特許文献 2では、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくぐブッの発 生の少な!/ヽ、外観に優れるポリプロピレン系榭脂組成物の提供が課題とされて 、る。 この解決手段として、極限粘度 [ r? ]A
Pが 1. 3dlZg以下であるプロピレン単独重合体 部分と極限粘度 [ r? ]A が 3. Odl/g以下であるプロピレン 'エチレンランダム共重合
EP
体部分を有するポリプロピレン系榭脂 (A)が開示されている。また、この榭脂 Aと、榭 脂 Aとは物性の異なる ICP (榭脂 B)とを特定の割合で配合したポリプロピレン系榭脂 組成物が開示されている。しかし特許文献 2においては、フローマークが満足行くレ ベルまで改良されたとは言 、がたぐ機械物性や成形性をも犠牲にするものであった
[0006] 特許文献 3では、良好な外観を発現し、成形加工に優れたポリプロピレン系榭脂組
成物の提供が課題とされている。この解決手段として、特定の物性を有する ICPから なる成形性改質剤を使用することが開示されている。具体的には、プロピレン単独重 合体部分(結晶成分)の MFRが 500gZlO分以上であり、 ICP全体の MFRが lOOg ZlO分以上で、ダイスゥエル比が 1. 2〜2. 5である ICPが開示されている。しかし特 許文献 3では、フローマークが満足行くレベルまで改良されたとは言いがたぐ機械 物性 (特に低温衝撃強度)や成形性をも犠牲にするものであった。
特許文献 1 :特開 2001— 288331号公報
特許文献 2:特開 2002— 12734号公報
特許文献 3 :特開 2004— 18647号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0007] 本発明は、上記公知技術およびその問題点に鑑みてなされたものであり、その目 的はバンパー等の大型成形部品を高品質で効率よく製造するために、フローマーク の発生を起こしにくいプロピレン系ブロック共重合体、及び汎用的な榭脂成分に、少 量配合することで、成形品外観を改良することができるポリプロピレン系榭脂用成形 品外観改質剤を提供することにある。
さらに、該成形品外観改質剤を用いて、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、 オーバーフェンダーをはじめとする自動車外装部品に好適な、良好な外観を発現し 、成形加工性に優れた、ポリプロピレン系榭脂組成物を提供することにある。
課題を解決するための手段
[0008] 本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、高流動性の結 晶性プロピレン重合体部分と、エチレン含有量が高ぐ高分子量、かつ含量の多いプ ロピレン ·エチレンランダム共重合体部分を有する分子量分布の広 、プロピレン系ブ ロック共重合体が、汎用的な榭脂成分に少量配合することで上記課題を解決できる 成形品外観の改質剤として用いることができることを見出し本発明を完成させた。
[0009] すなわち、本発明の第 1の発明によれば、結晶性プロピレン重合体部分とプロピレ ン.エチレンランダム共重合体部分とからなり、下記 (a)〜 (d)の要件を満たすことを 特徴とするプロピレン系ブロック共重合体が提供される。
(a)結晶性プロピレン重合体部分の 135°Cでデカリンを溶媒として測定した固有粘度
[ 7? ] は、
homo 1. 2dlZg以下であること
(b)プロピレン.エチレンランダム共重合体部分は、そのエチレン含量が 30〜70重量 %であり、その固有粘度 [ 7? ] が 2. 5〜7. OdlZgであり、かつプロピレン系ブロッ
copoly
ク共重合体全体に占める当該部分の割合力 0〜80重量%であること
(c)プロピレン系ブロック共重合体の全体のメルトフローレートは、 0. 1〜: LOgZlO分 の範囲にあること
(d)結晶性プロピレン重合体部分の固有粘度 [ r? ] に対するプロピレン ·エチレン
homo
ランダム共重合体部分の固有粘度 [ 7? ] の比([ 7? ] / [ 7? ] )は、2. 5〜1
copoly copoly homo
0の範囲にあること
[0010] また、本発明の第 2の発明によれば、結晶性プロピレン重合体部分とプロピレン'ェ チレンランダム共重合体部分とからなり、下記 (a)〜 (d)の要件を満たすことを特徴と するプロピレン系ブロック共重合体を有効成分とする成形品外観改質剤が提供され る。
(a)結晶性プロピレン重合体部分の 135°Cでデカリンを溶媒として測定した固有粘度
[ 7? ] は、 1. 2dlZg以下であること
homo
(b)プロピレン.エチレンランダム共重合体部分は、そのエチレン含量が 30〜70重量 %であり、その固有粘度 [ 7? ] が 2. 5〜7. OdlZgであり、かつプロピレン系ブロッ
copoly
ク共重合体全体に占める当該部分の割合力 0〜80重量%であること
(c)プロピレン系ブロック共重合体の全体のメルトフローレートは、 0. 1〜: LOgZlO分 の範囲にあること
(d)結晶性プロピレン重合体部分の固有粘度 [ r? ] に対するプロピレン ·エチレン
homo
ランダム共重合体部分の固有粘度 [ 7? ] の比([ 7? ] / [ 7? ] )は、2. 5〜1
copoly copoly homo
0の範囲にあること
[0011] また、本発明の第 3の発明によれば、ポリプロピレン系榭脂被改質材料 100重量部 と、第 2の発明の (A)成形品外観改質剤 1〜25重量とを含有することを特徴とするポ リプロピレン系榭脂組成物が提供される。
[0012] また、本発明の第 4の発明によれば、第 3の発明において、ポリプロピレン系榭脂被
改質材料が、(B)プロピレン エチレンブロック共重合体を含有することを特徴とする ポリプロピレン系榭脂組成物が提供される。
[0013] また、本発明の第 5の発明によれば、第 3の発明において、ポリプロピレン系榭脂被 改質材料が、
(B)プロピレン エチレンブロック共重合体 65〜99重量0 /0、及び
(C)無機充填剤 1〜35重量%
を含有するポリプロピレン榭脂組成物であることを特徴とするポリプロピレン系榭脂組 成物が提供される。
[0014] また、本発明の第 6の発明によれば、第 3の発明において、ポリプロピレン系榭脂被 改質材料が、
(B)プロピレン エチレンブロック共重合体 65〜99重量0 /0、及び
(D)エチレン系エラストマ一又はスチレン系エラストマ一 1〜35重量0 /0
を含有するポリプロピレン榭脂組成物であることを特徴とするポリプロピレン系榭脂組 成物が提供される。
[0015] また、本発明の第 7の発明によれば、第 3の発明において、ポリプロピレン系榭脂被 改質材料が、
(B)プロピレン エチレンブロック共重合体 45〜98重量0 /0、
(C)無機充填剤 1〜40重量%、及び
(D)エチレン系エラストマ一又はスチレン系エラストマ一 1〜40重量0 /0
を含有するポリプロピレン榭脂組成物であることを特徴とするポリプロピレン系榭脂組 成物が提供される。
発明の効果
[0016] 本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、少量の添加で、物性、成形性を損なう ことなくポリプロピレン榭脂組成物の成形外観を改良することが出来る成形品外観改 質剤として用いることができる。また、該ポリプロピレン系榭脂用成形品外観改質剤を 配合したポリプロピレン系榭脂組成物は、成形加工性、フローマーク特性に優れ、特 に、自動車外装用部品等の大型の射出成形品用材料として好適である。
発明を実施するための最良の形態
[0017] 本発明は、結晶性プロピレン重合体部分とプロピレン 'エチレンランダム共重合体 部分とからなり、特定の物性値を有するプロピレン系ブロック共重合体、それを含む 成形品外観改質剤、該成形品外観改質剤を含むポリプロピレン系榭脂組成物である 。以下に詳細に説明する。
[0018] [I]プロピレン系ブロック共重合体
1.プロピレン系ブロック共重合体の物性
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、結晶性プロピレン重合体部分 (結晶成 分)とプロピレン 'エチレンランダム共重合体部分 (ゴム成分)とからなり、それぞれの 成分、および全体が下記の(a)〜 (d)の要件を満たすことを特徴とする。
[0019] (a)結晶性ポリプロピレン重合体部分の固有粘度 [ r? ]
homo
本発明のプロピレン系ブロック共重合体を構成する結晶性ポリプロピレン重合体部 分の固有粘度 [ r? ] は、 1.
homo 2dlZg以下であり、好ましくは 0. 7〜1. 2dlZgであり
、より好ましくは 0. 9〜1. ldlZgである。 [ r? ] が
homo 1. 2dlZgを超えると、プロピレン 系ブロック共重合体を成形品外観改質剤としてプロピレン系榭脂等に添加した際の フローマーク改良効果が低いので好ましくない。一方 0. 7dlZg未満であると、耐衝 撃性が劣る傾向があるので好ましくな 、。
結晶性ポリプロピレン重合体部分の固有粘度 [ r? ] は、プロピレン単独重合体部
homo
分の重合 (ただし、結晶性を失わない程度にごく少量、例えば 0. 5重量%以下のコ モノマーを共重合させてもよい)を終えた時の固有粘度である。プロピレン単独重合 体は、単段で重合されたものでもよぐ多段で重合されたものでもよ 、。 [ 7? ] は、
homo 多段重合を行う場合には、最終の重合槽から取り出される結晶性ポリプロピレン重合 体部分の固有粘度である。固有粘度を調整するためには、重合時に水素を添加し分 子量を制御し調整することができる。
ここで、固有粘度 [ 7? ] は、後述する方法にて測定する値である。
homo
[0020] (b)プロピレン ·エチレンランダム共重合体部分 (ゴム成分)
(b— 1)プロピレン.エチレン共重合体部分中のエチレン含量
本発明のプロピレン系ブロック共重合体を構成するプロピレン 'エチレン共重合体 部分(ゴム成分)のエチレン含量は、 30〜70重量0 /0であり、好ましくは 30〜60重量
%であり、特に好ましくは 40〜60重量%である。エチレン含量が 30重量%未満であ ると成形品外観改質剤としての効果が低く(フローマーク外観が改良されず)、 70重 量%を超えると共重合体そのものを、ある ヽは成形品外観改質剤として添加したもの を射出成形した際に改質剤成分が被改質材中に均一に分散しない傾向があるので 好ましくない。
ここで、プロピレン 'エチレンランダム共重合体部分中のエチレン含量は、後述する 方法にて測定する値である。
[0021] (b— 2)プロピレン 'エチレンランダム共重合体部分の固有粘度 [ 7? ]
copoly
プロピレン 'エチレンランダム共重合体部分 (ゴム成分)の固有粘度 [ 7? ] は、 2.
copoly
5〜7. OdlZgであり、好ましくは 3. 0〜7. OdlZgであり、特に好ましくは、 4. 5〜6. 5dlZgである。 [ r? ] が
copoly 2. 5dlZg未満であると改質剤として添加したものを射出 成形した際のフローマーク外観が劣り、また 7. OdlZgを超えると、プロピレン系ブロッ ク共重合体全体の MFRの低下を伴 ヽ、射出成形した際に榭脂組成物の成形加工 性が劣るという不都合が生じる。
ここで、プロピレン'エチレンランダム共重合体部分の固有粘度 [ 7? ] は、後述す
copoly
る方法にて測定する値である。
[0022] (b 3)プロピレン'エチレンランダム共重合体部分の割合
プロピレン.エチレンランダム共重合体部分(ゴム成分)のプロピレン系ブロック共重 合体全体に占める割合は、 40〜80重量%であり、好ましくは 45〜75重量%であり、 より好ましくは 45〜60重量0 /0である。プロピレン 'エチレンランダム共重合体部分が 4 0重量%未満であるとフローマーク外観の改良が不十分となる。 80重量%を超えると 共重合体そのものを、あるいは改質剤として添加したものを射出成形した際に被改質 材料中に均一に分散しなく外観を損ねるので好ましくない。
ここで、プロピレン 'エチレンランダム共重合体部分 (ゴム成分)の割合は、後述の方 法によって測定する値である。
[0023] (c) MFR
本発明のプロピレン系ブロック共重合体の MFRは、 0. l〜10gZlO分であり、好 ましくは 0. l〜9gZlO分である。 MFRが 0. lgZlO分未満では、射出成形の際に
榭脂組成物としての成形カ卩ェ性が劣り、また lOgZio分を超えるとフローマーク外観 の改良が不十分となる。
ここで、 MFRは、 JIS K7210に準拠して、温度 230°C、荷重 21. 18Nで測定する 値である。
[0024] (d)固有粘度比
本発明のプロピレン系ブロック共重合体を構成する結晶性プロピレン重合体部分の 固有粘度 [ r? ] に対するプロピレン'エチレンランダム共重合体部分 (ゴム成分)の
homo
固有粘度 [ ] の比([ ] / [ r? ] )は、 2. 5〜: L0であり、好ましくは 3〜9
copoly copoly homo
、特に好ましくは 4〜8である。 [ 7? ] / [ τ? ] が 2. 5未満であると成形品外観改
copoly homo
質剤としての効果が低く(フローマーク外観が改良されず)、 10を超えると、ゴム成分 の分散不良に起因するゲルが発生するので好ましくない。
[0025] 2.プロピレン系ブロック共重合体の物性の分析法
本発明のプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレン 'エチレンランダム共重合体 部分 (ゴム成分)の比率 (Wc)、及びゴム成分中のエチレン含量、固有粘度の測定は
、下記の装置、条件を用い、下記の手順で測定する。
[0026] (1)使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスッノレメンッ社製 CFC T- 100 (CFCと略す)
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT—IR、パーキンエルマ一社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外し て代わりに FT— IRを接続し、この FT— IRを検出器として使用する。 CFCから溶出し た溶液の出口力も FT— IRまでの間のトランスファーラインは lmの長さとし、測定の 間を通じて 140°Cに温度保持する。 FT— IRに取り付けたフローセルは光路長 lmm 、光路幅 5mm φのものを用い、測定の間を通じて 140°Cに温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーシヨンクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分の GPCカラムは、昭和電工社製 AD806MSを 3本直列に接続して 使用する。
[0027] (2) CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度: 4mgZmL
(iii)注入量: 0. 4mL
(iv)結晶化: 140°Cから 40°Cまで約 40分かけて降温する。
(V)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は 40、 100、 140°Cとし、全部で 3つのフラクションに 分別する。なお、 40°C以下で溶出する成分 (フラクション 1)、 40〜100°Cで溶出する 成分 (フラクション 2)、 100〜140°Cで溶出する成分 (フラクション 3)の溶出割合 (単 位 重量0 /0)を各々 W 、W 、W と定義する。 W +W +W = 100である。
40 100 140 40 100 140
また、分別した各フラクションは、そのまま FT— IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速: lmLZ分
[0028] (3) FT— IRの測定条件
CFC後段の GPC力も試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件で FT— IR測定 を行い、上述した各フラクション 1〜3について、 GPC— IRデータを採取する。
(i)検出器: MCT
(ii)分解能: 8cm_1
(iii)測定間隔: 0. 2分 (12秒)
(iv)—測定当たりの積算回数:15回
[0029] (4)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、 FT— IRによって得られる 2945 cm—1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出 量の合計が 100%となるように規格ィ匕する。保持容量から分子量への換算は、予め 作成してお!、た標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー (株)製の以下の銘柄である。 F380、 F288、 F128、 F80、 F40、 F20、 F10、 F4、 Fl、 A5000、 A2500、 A100
た溶液を 0. 4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して 得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィ 一」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([ r? ] =K Χ Μα)には以下の数値を用いる。
(i)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0. 000138、 a =0. 70
(ii)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時
K=0. 000103、 a =0. 78
各溶出成分のエチレン含有量分布 (分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は 、 FT— IRによって得られる 2956cm_1の吸光度と 2927cm_1の吸光度との比を用い 、ポリエチレンやポリプロピレンや13 C— NMR測定等によりエチレン含有量が既知と なって 、るエチレン プロピレンラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め 作成しておいた検量線により、エチレン含有量 (重量%)に換算して求める。
[0030] (5)プロピレン.エチレンランダム共重合体部分の比率 (Wc)
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレン 'エチレンランダム共 重合体部分の比率 (Wc)は、下記式 (I)で理論上は定義され、以下のような手順で求 められる。
Wc (重量%) =W X A /B +W X A /B
40 40 40 100 100 100
式 (I)中、 W 、 W は、上述した各フラクションでの溶出割合 (単位:重量%)であ
40 100
り、 A 、A は、 W 、W に対応する各フラククシヨンにおける実測定の平均ェチ
40 100 40 100
レン含有量(単位:重量0/ 0)であり、 B 、 B は、各フラクションに含まれるプロピレン ·
40 100
エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量 (単位:重量0 /0)である。 A 、 A
40 100
、B 、B の求め方は後述する。
40 100
[0031] (I)式の意味は以下の通りである。すなわち、(I)式右辺の第一項はフラクション 1 ( 40°Cに可溶な部分)に含まれるプロピレン 'エチレンランダム共重合体部分の量を算 出する項である。フラクション 1がプロピレン 'エチレンランダム共重合体のみを含み、 プロピレン単独重合体を含まな 、場合には、 W がそのまま全体の中に占めるフラク
40
シヨン 1由来のプロピレン 'エチレンランダム共重合体部分含有量に寄与する力 フラ
クシヨン 1にはプロピレン 'エチレンランダム共重合体由来の成分のほかに少量のプロ ピレン単独重合体由来の成分 (極端に分子量の低 、成分及びァタクチックポリプロピ レン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこで W に A ZB を乗
40 40 40 ずることにより、フラクション 1のうち、プロピレン 'エチレンランダム共重合体成分由来 の量を算出する。例えば、フラクション 1の平均エチレン含有量 (A )が 30重量%で
40
あり、フラクション 1に含まれるプロピレン ·エチレンランダム共重合体のエチレン含有 量(B )が 40重量%である場合、フラクション 1の 30Z40 = 3Z4 (即ち 75重量%)
40
はプロピレン 'エチレンランダム共重合体由来、 1Z4はプロピレン単独重合体由来と いうことになる。このように右辺第一項で A ZB を乗ずる操作は、フラクション 1の重
40 40
量0 /0 (w )力 プロピレン ·エチレンランダム共重合体の寄与を算出することを意味
40
する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、プロピレン 'エチレンラ ンダム共重合体の寄与を算出してカ卩ぇ合わせたものがプロピレン 'エチレンランダム 共重合体部分含有量となる。
[0032] (i)上述したように、 CFC測定により得られるフラクション 1〜2に対応する平均ェチレ ン含有量をそれぞれ A 、 A とする(単位は 、ずれも重量%である)。平均エチレン
40 100
含有量の求め方は後述する。
[0033] (ii)フラクション 1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含 有量を B とする(単位は重量0 /0である)。フラクション 2については、ゴム部分力 0°C
40
ですベて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本 発明では実質的に B = 100と定義する。 B 、B は各フラクションに含まれるプロ
100 40 100
ピレン.エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量である力 この値を分析的 に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在するプロピ レン単独重合体とプロピレン ·エチレンランダム共重合体を完全に分離 ·分取する手 段がな!ヽからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、 B はフラク
40 シヨン 1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用する と、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわ力 た。また、 B はェ
100 チレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるプロピ レン.エチレンランダム共重合体の量がフラクション 1に含まれるプロピレン.エチレン
ランダム共重合体の量に比べて相対的に少ないことの 2点の理由により、 100と近似 する方が、実態にも近ぐ計算上も殆ど誤差を生じない。そこで B = 100として解析
100
を行うこととしている。
[0034] (iii)上記の理由力 プロピレン.エチレンランダム共重合体部分の比率 (Wc)を以下 の式に従い、求める。
Wc (重量%) =W X A /B +W X A /100
40 40 40 100 100
つまり、(Π)式右辺の第一項である W X A / は結晶性を持たないプロピレン
40 40 40
•エチレンランダム共重合体含有量 (重量%)を示し、第二項である W X A /10
100 100
0は結晶性を持つプロピレン 'エチレンランダム共重合体部分含有量 (重量0 /0)を示 す。
ここで、 B および CFC測定により得られる各フラクション 1および 2の平均エチレン
40
含有量 A 、A は、次のようにして求める。
40 100
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量が B となる。また、
40
測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各デー タポイント毎のエチレン含有量の積の総和がフラクション 1の平均エチレン含有量 A
40 となる。フラクション 2の平均エチレン含有量 A も同様に求める。
100
[0035] なお、上記 3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明の CFC分 祈においては、 40°Cとは結晶性を持たないポリマー(例えば、プロピレン 'エチレンラ ンダム共重合体の大部分、もしくはプロピレン単独重合体部分の中でも極端に分子 量の低 、成分およびァタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件 である意義を有する。 100°Cとは、 40°Cでは不溶であるが 100°Cでは可溶となる成 分 (例えばプロピレン 'エチレンランダム共重合体中、エチレン及び Zまたはプロピレ ンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いプロピレン単独重合 体)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。 140°Cとは、 100°Cでは不溶であ るが 140°Cでは可溶となる成分 (例えばプロピレン単独重合体中特に結晶性の高い 成分、およびプロピレン 'エチレンランダム共重合体中の極端に分子量が高くかつ極 めて高 、エチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロ ピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、 W
にはプロピレン 'エチレンランダム共重合体成分は全く含まれないか、存在しても極
0
めて少量であり実質的には無視できることからプロピレン 'エチレンランダム共重合体 の比率やプロピレン.エチレンランダム共重合体のエチレン含有量の計算からは排除 する。
[0036] (6)プロピレン'エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体におけるプロピレン 'エチレンランダ ム共重合体部分のエチレン含有量は、上述で説明した値を用い、次式から求められ る。
プロピレン'エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量 (重量0 /0) = (W X
40
A +W XA ) /Wc
40 100 100
但し、 Wcは先に求めたプロピレン 'エチレンランダム共重合体部分の比率 (重量% )である。
[0037] (7)固有粘度の測定
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体における結晶性プロピレン重合体部 分とプロピレン 'エチレンランダム共重合体部分の固有粘度 [ 7? ] 、 [ 7? ] は、ゥ homo copoly ベローデ型粘度計を用いてデカリンを溶媒として温度 135°Cで測定する。
まず、結晶性プロピレン重合体部分の重合終了後、一部を重合槽よりサンプリング し、固有粘度 [ V ] を測定する。次に、結晶性プロピレン重合体部分を重合した後 homo
、プロピレン 'エチレンランダム共重合体を重合して得られた最終重合物 (F)の固有 粘度 [ 7? ] を測定する。 [ 7? ] は、以下の関係力も求める。
F copoly
[ r? ] = (100-Wc) /100 X [ r} ] +Wc/100 X [ r? ]
F homo copoly
[0038] 3.プロピレン系ブロック共重合体の製造方法
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、結晶性プロピレン重合体部分とプロピ レン.エチレンランダム共重合体部分との反応混合物である。これは、結晶性プロピレ ン重合体部分であるプロピレン単独重合部分の重合 (前段)と、この後に続ぐプロピ レン .ェチレンランダム共重合部分の重合 (後段)の製造工程により得られる。結晶性 プロピレン重合体は、 1段又は 2段以上 (各段の反応条件は同一又は異なる)の重合 工程で製造され、プロピレン 'エチレンランダム共重合体部分も 1段又は 2段以上 (各
段の反応条件は同一又は異なる)の重合工程で製造される。従って、本発明のプロ ピレン系ブロック共重合体の全製造工程は、少なくとも 2段の逐次の多段重合工程と なる。
[0039] 上記重合に用いられる触媒としては、特に限定されるものではなぐ有機アルミ-ゥ ム化合物成分と、チタン原子、マグネシウム原子、ハロゲン原子及び電子供与性ィ匕 合物を必須とする固体成分とを組合わせた、いわゆるチーグラー'ナッタ触媒、メタ口 セン触媒等公知の触媒をいずれも使用できる。ゴム成分の固有粘度が高い方が改 質剤として添加した際成形外観改良効果が高いため、一般的に重合時連鎖移動の 少な 、チーダラー ·ナッタ触媒の方がより好まし 、。
[0040] 上記少なくとも 2段の逐次の多段重合工程においては、前段重合工程で、プロピレ ン、連鎖移動剤として水素を供給して、前記触媒の存在下に温度 50〜150°C、好ま しくは 50〜70。C、プロピレンの分圧 0. 5〜4. 5MPa、好ましくは 1. 0〜3. OMPaの 条件で、プロピレン単独重合を行い、結晶性プロピレン重合体部分を製造する。 この際、本発明のプロピレン系ブロック共重合体における結晶性プロピレン重合体部 分の固有粘度 [ r? ] を 1. 2dlZg以下にする必要があるため、プロセス、触媒の種
homo
類にもよるが、連鎖移動剤の水素を比較的高い濃度に調整し [ 7? ] をコントロール homo
する必要がある。
また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体においては、プロピレン 'エチレンラン ダム共重合体部分 (ゴム成分)の割合が高いことを特徴とする。そのため、後段のゴム 成分の重合では、触媒活性を高く維持出来るようにするため、前段の重合において は、重合温度、プロピレン分圧が低ぐ重合時間が短い、触媒の活性を抑制する条 件が好まれる。
結晶性プロピレン重合体部分には本発明の効果を損なわない範囲でプロピレン以 外の aーォレフインが共重合されていても構わない。
[0041] 引き続いて、後段重合工程で、プロピレン、エチレンと水素を供給して、前記触媒( 前記第 1段目重合工程で使用した当該触媒)の存在下に温度 50〜150°C、好ましく は 50〜90°C、プロピレン及びエチレンの分圧各 0. 3〜4. 5MPa、好ましくは 0. 5〜 3. 5MPaの条件で、プロピレンとエチレンのランダム共重合を行い、プロピレン'ェチ
レンランダム共重合体部分を製造し、最終的な生成物として、プロピレン系ブロック共 重合体を得る。
プロピレン 'エチレンランダム共重合体部分には本発明の効果を損なわない範囲で プロピレン、エチレン以外の aーォレフインが共重合されていても構わない。
[0042] この際、本発明のプロピレン系ブロック共重合体におけるプロピレン.エチレンラン ダム共重合体部分の固有粘度 [ η ] を 2. 5〜7. Odl/g,固有粘度の比 [ r? ]
copoly copol
/ [ η ] を 2. 5〜: L0にする必要があるため、プロセス、触媒の種類にもよる力 連 y homo
鎖移動剤の水素を比較的低い濃度に調整し [ η ] をコントロールする必要がある
copoiy また、本発明のプロピレン系ブロック共重合体におけるプロピレン 'エチレンランダム 共重合体部分 (ゴム成分)中のエチレン含量を特定の範囲内に維持することを特徴と する。そのため、後段のプロピレン濃度に対するエチレン濃度を調整し、ゴム中のェ チレン含量をコントロールする必要がある。
さらに、本発明のプロピレン系ブロック共重合体におけるプロピレン 'エチレンランダ ム共重合体部分 (ゴム成分)含量を高くする必要があるため、後段のゴム重合にお 、 ては、触媒の活性が高くなる条件 (重合温度、プロピレン、エチレン分圧が高ぐ重合 時間が長い条件)が好まれる。し力しながら、重合温度に関しては高くしすぎると粉体 粒子の流動性が悪ィ匕するため、粉体粒子の流動性を良く維持するためには比較的 低い温度が好まれる。
[0043] なお、重合は、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよぐ第 1段目重合 工程の重合は、気相又は液相中、また、第 2段目重合工程以降の重合も気相又は液 相中、特には気相中で実施するのが好ましぐ各段階の滞留時間は、各々 0. 5〜10 時間、好ましくは 1〜5時間が好ましい。
[0044] さらに、上記少なくとも 2段の逐次の多段重合工程により製造される組成物の粉体 粒子に流動性を付与する目的で、また本共重合体を射出成形した際ゴムの分散不 良であるゲル発生を防止する目的で、前段重合工程での重合後、後段重合工程で の重合開始前又は重合途中に、活性水素含有化合物を、触媒の固体成分中の中心 金属原子(チーダラーナッタ触媒の場合はチタン原子)に対して 100〜1000倍モル
で、かつ、触媒の有機アルミニウム化合物に対して 2〜5倍モルの範囲で添加するこ とが好ましい。
[0045] ここで、活性水素含有ィ匕合物としては、例えば、水、アルコール類、フエノール類、 アルデヒド類、カルボン酸類、酸アミド類、アンモニア、アミン類等が挙げられる。
[0046] [Π]ポリプロピレン系榭脂組成物
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物は、上記のプロピレン系ブロック共重合体を 成形品外観改質剤として、汎用的なポリプロピレン系榭脂被改質材料に第 3成分とし て配合することにより得られる成形品外観に優れるポリプロピレン系榭脂組成物であ つて、主にフローマーク特性に代表される成形品外観等が改良されたポリプロピレン 系榭脂組成物である。
具体的には、 (A)上記のプロピレン系ブロック共重合体を有効成分とする成形品外 観改質剤とポリプロピレン系榭脂被改質材料とのポリプロピレン榭脂組成物として表 すことができ、ポリプロピレン系榭脂被改質材料としては、(B)プロピレン一エチレン ブロック共重合体を挙げることができ、さらに必要に応じて、(C)無機充填剤、及び Z 又は(D)エチレン系エラストマ一又はスチレン系エラストマ一を含有するポリプロピレ ン榭脂組成物を挙げることができる。以下、各成分を詳細に説明する。
[0047] 1.ポリプロピレン系榭脂組成物の各 'BR〉 分
(A)成分:成形品外観改質剤
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物に用いる (A)成形品外観改質剤は、上記の プロピレン系ブロック共重合体を有効成分として含む。
(A)成形品外観改質剤中の、上記のプロピレン系ブロック共重合体の含有量は、( A)成形品外観改質剤の全重量に対して、 20重量%〜100重量%が好ましぐより好 ましくは 50重量%〜100重量%、更に好ましくは 70重量%〜100重量%であり、特 に好ましくは 100重量%である。
(A)成形品外観改質剤は、上記のプロピレン系ブロック共重合体以外に他の成分 を含んでいてもよい。そのような他の成分としては、本発明の効果が達せられる限り 特に限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレン、変 性ポリプロピレン等のポリオレフイン系榭脂や、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエス
テル等の、ポリオレフイン系榭脂以外の熱可塑性榭脂等が挙げられる。
[0048] (B)成分:プロピレン エチレンブロック共重合体
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物に用いるプロピレン エチレンブロック共重 合体 )としては、結晶性ポリプロピレン重合体部 (A単位部)とエチレン 'プロピレン ランダム共重合体部(B単位部)とを含有するブロック共重合体が好ましい。上記 A単 位部は、通常プロピレンの単独重合、場合によってはプロピレンに少量の他の a ォレフィンを共重合することによって得られる結晶性の重合体であり、その密度は高 いことが好ましい。 A単位部の結晶性は、ァイソタクチック指数 (沸騰 n—ヘプタン抽 出による不溶分)として、通常 90%以上、好ましくは 95〜: LOO%である。結晶性が小 さいとポリプロピレン系榭脂 (B)の機械的強度、特に曲げ弾性率に劣るものとなる。 一方、上記 B単位部はプロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるゴ ム状成分である。
[0049] A単位部は、通常全重合量の 50〜95重量%、好ましくは 60〜90重量%であり、 B 単位部は、通常全重合量の 5〜50重量%、好ましくは 10〜40重量%となるように調 整される。 A単位部は、オルトジクロルベンゼンによる抽出において、 100°C以下で 溶出しないが、 B単位部は容易に溶出する。従って、製造後の重合体に対しては、 上記したオルトジクロルベンゼンによる抽出分析によりプロピレン エチレンブロック 共重合体 (B)の組成を判定することができる。
[0050] 本発明のポリプロピレン系榭脂組成物で用いるプロピレン エチレンブロック共重 合体(B)の MFRは、 10〜200gZlO分力好ましく、より好ましくは、 15〜150gZlO 分である。 MFRが lOgZlO分未満であると、成形性が劣り、 200gZlO分を超えると 耐衝撃性が低下するので好ましくな 、。
また、(B)成分のダイスゥエル比は、 0. 98-1. 2力好ましく、より好ましくは、 1. 0 〜1. 2である。ダイスゥエル比が 0. 9未満であると、成形カ卩ェ性が悪ィ匕する傾向があ り、 1. 2を超えると汎用的な製造プロセスにおいて安価に製造することが困難となる 傾向がある。
さらに、(B)成分の Q値は、 3〜7力 子ましく、より好ましくは、 3. 5〜6. 5である。 Q 値が 3未満であると、成形加工性や衝撃特性が低下する傾向があり、 7を超えると汎
用的な製造プロセスにおいて安価に製造することが困難となる傾向がある。
なお、(B)成分における MFRは、前記プロピレン系ブロック共重合体と同様にして 測定した値であり、 Q値は、 GPCを用いて測定する重量平均分子量、数平均分子量 から求める値であり、ダイスゥエル比は、下記の方法で求める値である。
メルトインデクサ一のシリンダー内温度を 190°Cに設定する。オリフィスは長さ 8. 00 mm、径 1. 00mm φ、 LZD = 8を用いる。また、オリフィス直下にエチルアルコール を入れたメスシリンダーを置く(オリフィスとエチルアルコール液面との距離は、 20± 2 mmにする。 ) oこの状態でサンプルをシリンダー内に投入し、 1分間の押出量が 0. 1 0±0. 03gになるように荷重を調節する。 6分後から 7分後の押出物をエタノール中 に落とし、固化して力 採取する。採取した押出物のストランド状サンプルの直径を上 端から lcm部分と、下端力 lcm部分、及び中央部分の 3箇所で最大値、最小値を 測定し、計 6箇所測定した直径の平均値をもってダイスゥエル比とする。
[0051] 上記 (B)成分の製造は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用い られる。重合方法としては従来公知の方法がいずれも採用できる。プロピレン'ェチレ ンランダム共重合体部(B単位部)の多 、 (B)成分の製造にお!、ては、特に気相流動 床法が好ましい。また、後段反応において新たに電子供与体ィ匕合物を添加すること により、粘着、閉塞のトラブルを回避し、重合の操作性を改良することができる。
[0052] (C)成分:無機充填剤
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物においては、必要に応じて、無機充填剤 (C) を配合することができる。(C)成分は、ポリプロピレン系榭脂組成物の曲げ弾性率を 向上させ、線膨張係数を低下させるために使用する。
本発明において、無機充填剤 (C)としては、組成、形状等は特に限定されない。ポ リマー用充填剤として市販されているものはいずれも使用できる。
具体的には、タルク、マイ力、モンモリロナイト等の板状無機充填剤、短繊維ガラス 繊維、長繊維ガラス繊維、炭素繊維、ァラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ゾノラ イト等の繊維状無機充填剤、チタン酸カリウム、マグネシウムォキシサルフェート、窒 化珪素ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、炭 酸カルシウム等の針状 (ゥイスカー)無機充填剤、沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸
カルシウム、炭酸マグネシウム等の粒状無機充填剤、ガラスバルーンのようなバルン 状無機充填剤が例示される。その中でも、物性'コスト面のバランスより、タルクが特に 好ましい。
[0053] タルクは、重合体との接着性或いは分散性を向上させる目的で、各種の有機チタ ネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無 水物をグラフトした変性ポリオレフイン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等に よって表面処理したものを用いてもょ 、。
[0054] (D)成分:エチレン系エラストマ一又はスチレン系エラストマ一
本発明のポリプロピレン系榭脂糸且成物においては、必要に応じて、エチレン系エラ ストマー又はスチレン系エラストマ一(D)を配合することができる。エチレン系エラスト マー又はスチレン系エラストマ一(D)の具体例としては、例えば、エチレン.プロピレ ン共重合エラストマ一(EPR)、エチレン 'ブテン共重合エラストマ一(EBR)、ェチレ ン .へキセン共重合エラストマ一(EHR)、エチレン ·オタテン共重合エラストマ一(EO R)等のエチレン. aーォレフイン共重合体エラストマ一;エチレン 'プロピレン'ェチリ デンノルボルネン共重合体エラストマ一、エチレン ·プロピレン'ブタジエン共重合体 エラストマ一、エチレン 'プロピレン 'イソプレン共重合体エラストマ一等のエチレン' a ーォレフイン'ジェン三元共重合体エラストマ一(EPDM);スチレン 'ブタジエン'スチ レントリブロック体(SBS)、スチレン 'イソプレン'スチレントリブロック体(SIS)、スチレ ン ·ブタジエン ·スチレントリブロック体の水素添カ卩物(SEBS)、スチレン'イソプレン' スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)等のスチレン系エラストマ一等が使用 できる。
なお、上記したスチレン 'ブタジエン 'スチレントリブロック体の水素添カ卩物は、ポリマ 一主鎖をモノマー単位で見ると、スチレン エチレンーブテン スチレンとなるので、 通常、 SEBSと略称されるものである。
また、これらのエチレン系エラストマ一又はスチレン系エラストマ一(D)は、 2種類以 上を混合して使用することができる。
[0055] 上記エチレン' α—ォレフィン共重合体エラストマ一は、各モノマーを触媒の存在下 重合することにより製造される。触媒としては、ハロゲンィ匕チタンのようなチタンィ匕合物
、アルキルアルミニウム一マグネシウム錯体、のような有機アルミニウム一マグネシゥ ム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチー ダラー型触媒、 WO 91Z04257号公報等に記載のメタ口センィ匕合物触媒を使用 することができる。重合法としては、気相流動床、溶液法、スラリー法等の製造プロセ スを適用して重合することができる。市販品を例示すれば、ジェイエスアール社製 ED シリーズ、三井化学社製タフマー Pシリーズ及びタフマー Aシリーズ、デュポンダウ社 製エンゲージ EGシリーズ、旭化成社製タフテック Hシリーズなどを挙げることができ、 これらは 、ずれも本発明にお 、て使用することができる。
[0056] ここで、上記スチレン系エラストマ一におけるトリブロック共重合体の水素添加物(S EBS、 SEPS)の製造法の概要を述べる。これらのトリブロック共重合体は、一般的な ァ-オンリビング重合法で製造することができ、逐次的にスチレン、ブタジエン、スチ レンを重合しトリブロック体を製造した後に、水添する方法 (SEBSの製造法)と、スチ レン ブタジエンのジブロック共重合体をはじめに製造した後、カップリング剤を用い てトリブロック体に、水添する方法がある。また、ブタジエンの代わりにイソプレンを用 いることによってスチレン一イソプレン一スチレントリブロック体の水素添カ卩物(SEP S)も同様に製造することができる。
[0057] 本発明のポリプロピレン系榭脂組成物で用いるエチレン系エラストマ一又はスチレ ン系エラストマ一(D)の MFR (230°C、 2. 16kg荷重で測定)は、 0. 5〜150gZlO 分が好ましぐより好ましくは 0. 7〜150gZlO分、特に好ましくは 0. 7〜80gZlO分 である。本発明の成形外観に優れたポリプロピレン系榭脂組成物の主要用途である 自動車外装材を考慮した場合、 MFRが上記の範囲であるものが特に好ま U、。
[0058] (E)付加的成分 (任意成分)
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物中には、上記 (A)〜(D)成分以外に、さらに 、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的成分 (任意成分)を添加する ことができる。この様な付加的成分 (任意成分)としては、フエノール系及びリン系の酸 化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフエノン系、ベンゾトリアゾール系の耐候劣化 防止剤、有機アルミ化合物、有機リン化合物等の核剤、ステアリン酸の金属塩に代表 される分散剤、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック
等の着色物質、を例示できる。
[0059] 2.ポリプロピレン系榭脂組成物の成分組成
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物は、上記各 (A)〜(D)成分を組み合わせて 得られる。代表的には、成分 (A)と (B)の組成物、成分 (A)、 (B)及び (C)の組成物 、成分 (A)、 (B)及び (D)の組成物、成分 (A)、 (B)、 (C)及び (D)の組成物などで あり、更に必要に応じて成分 (E)が配合される。
[0060] (1)成分 (A)と (B)力もなるポリプロピレン系榭脂組成物
成分 (A)と (B)力もなるポリプロピレン系榭脂組成物にあっては、 (A)成形品外観 改質剤は、(B)エチレン 'プロピレンブロック共重合体 100重量部に対して、 1〜25重 量部であり、好ましくは 2〜20重量部であり、より好ましくは 2〜 15重量部であり、特に 好ましくは 2〜9重量部であり、最も好ましくは 3〜7重量部である。(A)成形品外観改 質剤が 1重量部未満であると成形外観効果が劣り、逆に 25重量部を超えると流動性 が低下する。
[0061] (2)成分 (A)、 (B)及び (C)力 なるポリプロピレン系榭脂組成物
成分 (A)、(B)及び (C)からなるポリプロピレン系榭脂組成物にあっては、(A)成形 品外観改質剤は、成分 (B)及び (C)の合計 100重量部に対して、 1〜25重量部であ り、好ましくは 2〜20重量部であり、より好ましくは 2〜 15重量部であり、特に好ましく は 2〜9重量部であり、最も好ましくは 3〜7重量部である。ポリプロピレン系榭脂被改 質材料全体に対しての成分 (B)と成分 (C)の割合は、成分 )は、 65〜99重量%、 好ましくは 70〜98重量%、より好ましくは 75〜98重量%、特に好ましくは 80〜97重 量%であり、成分 (C)は、 1〜35重量%、好ましくは 2〜30重量%、より好ましくは 2 〜25重量%、特に好ましくは 3〜20重量%である。成分 (C)が 1重量%未満であると 添加効果が充分発揮されず曲げ弾性率が不足し、逆に 35重量%を超えると脆ィ匕温 度が悪化し、成形性も低下する。
[0062] (3)成分 (A)、 (B)及び (D)力もなるポリプロピレン系榭脂組成物
成分 (A)、(B)及び (D)からなるポリプロピレン系榭脂組成物にあっては、(A)成形 品外観改質剤は、成分 (B)及び (D)の合計 100重量部に対して、 1〜25重量部であ り、好ましくは 2〜20重量部であり、より好ましくは 2〜 15重量部であり、特に好ましく
は 2〜9重量部であり、最も好ましくは 3〜7重量部である。ポリプロピレン系榭脂被改 質材料全体に対しての成分 (B)と成分 (D)の割合は、成分 )は、 65〜99重量%、 好ましくは 70〜98重量%、より好ましくは 75〜98重量%、特に好ましくは 83〜97重 量%であり、成分 (D)は、 1〜35重量%、好ましくは 2〜30重量%、より好ましくは 2 〜25重量%、特に好ましくは 3〜17重量%である。成分 (D)が 1重量%未満であると 添加効果が充分発揮されず、逆に 35重量%を超えると剛性低下が懸念され、またコ スト的にも問題がある。しかし目的、用途によっては各種の配合があり、エラストマ一 の種類により、上記に限定されるものではなぐ用途や目的に応じて選択することも重 要である。
[0063] (4)成分 (A)、 (B)、 (C)及び (D)力もなるポリプロピレン系榭脂組成物
成分 (A)、(B)、(C)及び (D)からなるポリプロピレン系榭脂組成物にあっては、 (A )成形品外観改質剤は、成分 (B)、(C)及び (D)の合計 100重量部に対して、 1〜2 5重量部であり、好ましくは 2〜20重量部であり、より好ましくは 2〜15重量部であり、 特に好ましくは 2〜9重量部であり、最も好ましくは 3〜7重量部である。ポリプロピレン 系樹脂被改質材料全体に対しての成分 (B)と成分 (C)と成分 (D)の割合は、成分( B)は、 45〜98重量0 /0、好ましくは 47〜96重量0 /0、より好ましくは 50〜92重量0 /0で あり、成分 (C)は、 1〜40重量%、好ましくは 2〜35重量%、より好ましくは 4〜32重 量%であり、成分 (D)は、 1〜40重量%、好ましくは 2〜35重量%、より好ましくは 4 〜32重量%である。
[0064] 3.ポリプロピレン系榭脂組成物の製造
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物の製造は、上記の各構成成分を、上記の割 合で、混合又は、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリ一ミキサー、ロール 、ブラベンダープラストグラフ、ニーダ一等通常の混練機を用いて、設定温度 180°C 〜250°Cにて混練することにより製造できる。これらの混練機の中でも、押出機、特に 二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
[0065] 4.ポリプロピレン系榭脂組成物の成形カロェ
本発明のポリプロピレン系榭脂組成物は、所望の成型品に加工される。成形加工 法は、特に限定されるものではなぐ目的に応じて各種の成形方法で成形できる。例
えば、射出成形法、押出成形法など適用できるが、大型射出成形法に適用した場合 、成形加工性、フローマーク特性、ウエルド外観などに優れ、効果が大きい。従って、 バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダーをはじめとする自動車 外装部品の用途に好適である。
実施例
[0066] 本発明を実施例により、更に詳細に説明するが、本発明はその旨を超えない限り以 下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例で用いた物性測定法及び用いた榭脂の製造例は以下の通りである。
[0067] 1.物性測定法
(1)メルトフローレート(MFR): ASTM— D1238に準拠し、 2. 16kg荷重にて 230 °Cの温度で測定した。
(2) Izod衝撃強度: JIS— K7110に準拠して、—30°Cの温度下にてノッチ付で測定 し、下記基準で判定した。
〇:被改質材料と同等
X:被改質材料より 1割以上低下
(3)成形品外観:型締め圧 170トンの射出成形機で、短辺に幅 2mmのフィルムゲー トをもつ金型を用いて、 350mm X 100mm X 2mmtなる成形シートを成形温度を 22 0°Cとして射出成形した。フローマークの発生を目視で観察し、ゲートからフローマー クが発生した部分までの距離を測定し、下記の基準で判定した。
〇:発生距離が 200mmを超える
X:発生距離が 200mm以下
[0068] 2.プロピレン系ブロック共重合体 (A)
下記の製造例 1〜製造例 7で製造されたプロピレン系ブロック共重合体を (改質剤 —1)〜(改質剤— 7)として用いた。各重合工程の反応条件、得られた結晶性プロピ レン重合体並びにエチレン 'プロピレンランダム共重合体の諸物性を表 1に示した。
[0069] (製造例 1)
(i)固体触媒成分 (a)の製造 窒素置換した内容積 50リットルの撹拌機付槽に脱水 及び脱酸素した n—ヘプタン 20リットルを導入し、次いで、塩化マグネシウム 10モル
とテトラブトキシチタン 20モルとを導入して 95°Cで 2時間反応させた後、温度を 40°C に下げ、メチルヒドロポリシロキサン (粘度 20センチスト一タス) 12リットルを導入して更 に 3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分を n—ヘプタンで洗浄 した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素した n—ヘプタン 5リ ットルを導入し、次いで、上記で合成した固体成分をマグネシウム原子換算で 3モル 導入した。ついで、 n—ヘプタン 2. 5リットルに、四塩化珪素 5モルを混合して 30°C、 30分間かけて導入して、温度を 70°Cに上げ、 3時間反応させた後、反応液を取り出 し、生成した固体成分を n—ヘプタンで洗浄した。
[0070] さらに、引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素した n—へ プタン 2. 5リットルを導入し、フタル酸クロライド 0. 3モルを混合して 90°C、 30分間で 導入し、 95°Cで 1時間反応させた。反応終了後、 n—ヘプタンで洗浄した。次いで、 室温下四塩ィ匕チタン 2リットルを追加し、 100°Cに昇温した後 2時間反応した。反応終 了後、 n—ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化珪素 0. 6リットル、 n—ヘプタン 8リット ルを導入し 90°Cで 1時間反応し、 n—ヘプタンで十分洗浄し、固体成分を得た。この 固体成分中にはチタンが 1. 30重量%含まれて 、た。
[0071] 次に、窒素置換した前記撹拌機付槽に n—ヘプタン 8リットル、上記で得た固体成 分を 400gと、 t—ブチル一メチル一ジメトキシシラン 0. 27モル、ビニルトリメチルシラ ン 0. 27モルを導入し、 30°Cで 1時間接触させた。次いで 15°Cに冷却し、 n—ヘプタ ンに希釈したトリェチルアルミニウム 1. 5モルを 15°C条件下 30分かけて導入、導入 後 30°Cに昇温し 2時間反応させ、反応液を取り出し、 n—ヘプタンで洗浄して固体触 媒成分 (a) 390gを得た。
得られた固体触媒成分 (a)中には、チタンが 1. 22重量%含まれていた。 更に、 n—ヘプタンを 6リットル、 n—ヘプタンに希釈したトリイソブチルアルミニウム 1 モルを 15°C条件下 30分かけて導入し、次!、でプロピレンを 20°Cを越えな!/、ように制 御しつつ約 0. 4kgZ時間で 1時間導入して予備重合した。その結果、固体 lg当たり 0. 9gのプロピレンが重合したポリプロピレン含有の固体触媒成分 (a)が得られた。
[0072] (ii)プロピレン'エチレンブロック共重合体の製造
内容積 230リットルの流動床式反応器を 2個連結してなる連続反応装置を用いて重 合を行った。まず第 1反応器で、重合温度 55°C、プロピレン分圧 18kg/cm2 (絶対 圧)、分子量制御剤としての水素を、水素 Zプロピレンのモル比で 0. 056となるよう に連続的に供給するとともに、トリェチルアルミニウムを 5. 25gZhrで、固体触媒成 分 (a)として、上記記載の触媒をポリマー重合速度が 14kgZhrになるように供給した 。第 1反応器で重合したパウダー (結晶性プロピレン重合体)は、反応器内のパウダ 一保有量を 40kgとなるように連続的に抜き出し、第 2反応器に連続的に移送した (前 段重合工程)。
[0073] 重合温度 80°Cで、圧力 2. OMPa〖こなるよう〖こ、プロピレンとエチレンをエチレン Z プロピレンのモル比で 0. 50となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤として の水素を、水素 Zプロピレンのモル比で 0. 0013となるように連続的に供給すると共 に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリェチルアルミニウムに対して 2. 1 倍モルになるように供給した。第 2反応器で重合したパウダーは、反応器内のパウダ 一保有量を 50kgとなるように連続的にベッセルに抜き出し、水分を含んだ窒素ガス を供給して反応を停止させ、プロピレン ·エチレンブロック共重合体を得た (後段重合 工程)。得られたプロピレン 'エチレンブロック共重合体を (改質剤一 1)とした。
[0074] (製造例 2〜4、 6〜9)
製造例 1で使用した触媒並び重合方法を用い、上記前段重合工程におけるプロピ レンと及び水素量、後段重合工程におけるプロピレンとエチレンの供給量及び水素 量、各段階の重合時間、重合温度を表 1のように変更し、プロピレン 'エチレンブロッ ク共重合体 (改質剤 2〜4、 6〜9)を製造した。
[0075] (製造例 5)
内容積 200リットルのステンレス製オートクレーブをプロピレンガスで十分置換した 後、 n—ヘプタン 60リットル、製造例 1で使用した触媒 5g及びトリェチルアルミニウム 1 5gを加え、 75°Cに昇温し、プロピレンを 10Kg/Hrの速度で 3. 4Hr供給した。なお 、この間、水素も連続的に MFRが 160gZl0minになるように供給した。この時点で 反応器内の圧力は 0. 55MPaであった力 プロピレン、水素の供給を停止し 30分か けて反応器内圧力が 0. 20MPaまで下げ前段重合工程を終了した。
次いで、反応器内のガスを反応器内圧力が 0. 02MPaになるまでパージし水素を 取り除き、温度を 65°Cに変更し、前段重合部の存在下、プロピレンを 1. 65Kg/Hr 、エチレンを 1. 20KgZHrの速度で 1. 3Hr供給した。この時点で反応器内の圧力 は 0. 03MPaであり、プロピレン、エチレンの供給を停止し反応器内圧力が 0. 02M Paになった時点で反応を終了した (後段重合工程)。
得られたブロック共重合体にブタノールを 1. 8リットル添加し、 70°Cにて 3時間かけ て触媒を分解した後、水洗により触媒を除去した。更に、遠心分離と乾燥工程を経て 、プロピレン'エチレンブロック共重合体 (改質剤 - 5)を得た。
[表 1]
製造例 1 製造例 2 製造例 3 製造例 4 製造例 5 製造例 6 製造例 7 製造例 8 製造例 9 重合様式 気相 気相 気相 気相 スラリー 気相 気相 気相 気相 A:
/ ix. 。C 55 55 55 55 75 55 75 55 75 前段重合
結晶性プロピレ 平均滞留時間 Hr 2.7 2.8 2.8 2.7 3.9 2.8 2.7 2.9 2.8 ン重合体
水素/プロピレン モル比 0.056 0.058 0.057 0.021 - 0.058 0.057 0.157 0.157 鱼 a imfk. C 80 80 60 80 65 60 80 80 80 後段重合 平均滞留時間 Hr 1.6 1.6 1.5 1.5 1.4 1.6 1.5 1.5 1.6 フ°ロヒレンエチレン
共重合体 水素/プロピレン モル比 0.0013 0.0019 0.038 0.0013 ― 0.069 0.0013 0.0007 0.0D03 エチレン /フ°ロビレン モル比 0.50 0.95 0.51 0.50 - 0.51 0.54 0.52 0.56
[ 」 dl/g 1.03 1.03 1.03 1.48 1.02 1.03 1.03 0.61 0.61 」 dl/g 5.77 5.08 3.05 6.10 7.93 2.21 5.70 6.42 7.03
[ " I dl/g 5.60 4.93 2.96 4.12 7.77 2.15 5.53 10.50 11.50 プロピレン'エチレン共重合体
重量% 55 53 52 55 8.5 50 30 55 25 含有量
プロピレン 'エチレン共重合体
重量% 40 58 45 40 43 40 45 44 46 エチレン含量
MFR g/ Ο分 0.41 0.27 8.0 0.37 65 19 11.2 2.75 78.1 フ 'ロビレン'エチレンフ'ひ:/ク共重合体 改質剤一 1 改莨剤一 2 改質 ^一 3 改質剤一 4 改質剤一 5 改質剤一 6 改 g剤一 7 改質剤一 8 改莨剤一 9
[0077] 3.成分 (B)〜(D)
成分 (B)プロピレン エチレンブロック共重合体として表 2に示す (PP— 1)と(PP— 2)、成分 (C)無機充填剤として表 3に示す (タルク 1)と (タルク 2)、成分 (D)ェチ レン系エラストマ一又はスチレン系エラストマ一として表 4に示す(エラストマ^—— 1)〜 (エラストマ一一 4)を用いた。
なお、表 2〜4に示す成分 (B)〜(D)からなる組成物を、予め表 5に示す割合で配 合し、更に、酸ィ匕防止剤として、テトラキス [メチレン— 3— (3, 5,—ジ— t—プチル— 4,ーヒドロキシフエニル)プロピオネート]メタン (チバガイギ一社製、商品名:ィルガノ ックス 1010) 0. 1重量部、トリス(2, 4 ジー t ブチルフエ-ル)フォスファイト(チバ ガイギ一社製、商品名:ィルガホス 168) 0. 05重量部を配合して、ヘンシェルミキサ 一で 5分間混合した後、二軸混練機 (神戸製鋼社製 : 2FCM)にて 210°Cの設定温 度で混練造粒して被改質材料 (ベース材ー 1〜ベース材ー 8)とした。
[0078] [表 2]
結晶性ポリプヨピレン部 プロピレン'ェチレンランダム
MFR
(B)成分 含 更 共重合体部含有量
(g/ 10m in) (重量%) (重量%)
PP-1 80 20 25
PP-2 93 7 110
[0080] [表 4]
[0081] [表 5]
(B)成分 (C)成分 (D)成分
配合
種類 重量% 種類 重量% 種類 重量% ベ一ス材ー 1 PP-1 76 タ レクー 1 12 エラストマ一一 1 12 ベ一ス材ー 2 PP-1 76 タリレク一 1 12 エラストマ—— 2 12 ベ一ス材ー 3 PP-1 70 タノレクー 1 9 エラストマ—— 3 21 ベース材ー 4 PP-2 60 タ レクー 1 20 エラストマ 4 20 ベース材ー 5 PP-1 65 タソレクー 1 20 エラストマ一一 1 15 ベース材一 6 PP-1 65 タリレクー 2 15 エラストマ一一 1 20 ベ一ス材ー 7 PP-1 90 タリレクー 1 10 ― ― ベース材ー 8 PP-1 83 ― ― エラストマ一一 1 17
ベース材ー 1 (100重量部)と改質剤 1 (5重量部)との混合物 100重量部に対し て、酸ィ匕防止剤として、テトラキス [メチレン一 3— (3, 5,一ジ一 t ブチル 4,一ヒド ロキシフエ-ル)プロピオネート]メタン (チバガイギ一社製、商品名:ィルガノックス 10 10) 0. 1重量部、トリス(2, 4 ジー t ブチルフエ-ル)フォスファイト(チバガイギー 社製、商品名:ィルガホス 168) 0. 05重量部を配合して、ヘンシェルミキサーで 5分 間混合した後、二軸混練機 (神戸製鋼社製: 2FCM)にて 210°Cの設定温度で混練 造粒することによりポリプロピレン系榭脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系榭 脂組成物について物性評価(MFR、フローマーク発生距離、—30°C下における Izo d衝撃強度)を行った。評価結果を表 6に示す。
[0083] (実施例 2〜10、比較例 1〜14)
表 1に示した改質剤と表 5に示したベース材を表 6に示す組成の割合で配合し、実 施例 1と同様にして、酸化防止剤を配合して、混練造粒することによりポリプロピレン 系榭脂組成物を得た。得られたポリプロピレン系榭脂組成物にっ ヽて物性評価 (MF R、フローマーク発生距離、 30°C下における Izod衝撃強度)を行った。評価結果を 表 6に示す。
[0084] [表 6]
表 6より明らかなように、本発明の改質剤を用いたポリプロピレン系榭脂組成物(実 施例 1 3、実施例 4 5 6 7 8 9 10)は、対応するベース材 (比較例 4 5 6 7 8 9 10 11 12 14)と比べてフローマーク発生距離が伸び、 200mm以上であ り、成形品外観が改良され、物性への影響も少ない(実施例 1 10)。また、比較例 1 3では、フローマーク発生距離が伸びるものの、ゲルが成形品表面に見られた。 [ η ] が大きいとフローマーク発生距離がほとんど伸びな力つた (比較例 1)。プロピレン
'エチレン含有量が少なぐ MFRが高い場合には、フローマーク発生距離はやや伸 びたが充分ではなぐ物性も低下した (比較例 2)。 [ η ] が小さぐ [ 7? ] / [ η
copoly copoly
] 力 、さぐ MFRが高い場合には、フローマーク発生距離がほとんど伸びなかつ homo
た (比較例 3)。 本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲 を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明ら かである。
本出願は、 2005年 1月 13日出願の日本特許出願 (特願 2005— 006059号)に基 づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
産業上の利用可能性
本発明のプロピレン系ブロック共重合体は、汎用のポリプロピレン系榭脂に配合す るだけで、ポリプロピレン系榭脂組成物の射出成形時の成形加工性、成形時のフロ 一マーク特性をコントロールすることができる成形品外観改質剤とすることができ、該 ポリプロピレン系榭脂用成形品外観改質剤を配合したポリプロピレン系榭脂組成物 は、成形加工性、フローマーク特性に優れ、特に、バンパー、ロッカーモール、サイド モール、オーバーフェンダーをはじめとする自動車外装用部品等の大型射出成形に 好適である。したがって、現在すでに使われている自動車外装部品等の射出成形品 においても、成形外観が問題になるケースに添加することで改良効果が期待できる。 特に、経済活動のグローバルィ匕が進む中で、世界のどこでも入手可能である汎用的 な榭脂をベース (主成分)とする榭脂組成物において、前述の問題を解決する榭脂 材料が強く求められているが、世界のどこでも入手可能な汎用的な成形品外観改質 用榭脂は添加量が多ぐ物性への影響が大きいことが現状であり、本発明は、これを 克服する必要不可欠な革新的な技術となるものである。