JP4296086B2 - プロピレン系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

プロピレン系樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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Description

本発明は、塗装性に優れたプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関し、詳しくは、塗装性と機械物性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリプロピレンは、主に射出成形用材料として、家電製品の部品に代表される工業部品分野で、幅広く使用されている。特に、テレビ、冷蔵庫、洗濯機や掃除機等の家電製品や便座等のトイレタリー用品等で、ポリプロピレン系材料が主要素材として使用されている。
これらの部品は意匠性付与のために、表面に塗装を施すケースが多いが、ポリプロピレンは、塗膜密着性に乏しいため、ポリプロピレン部品の表面にプライマーを塗布して、塗膜を密着させる工夫がなされている。
しかしながら、このプライマーは、有機溶剤を溶媒として含むため、排出VOCの原因となり、環境負荷を増大させている。
このため、ポリプロピレンに塗膜密着性を付与することにより、プライマー成分を塗布することなく塗膜を密着させ、環境負荷を低減させる試みがなされている。
例えば、塗装改質材として、分子中に少なくとも一個の不飽和結合を有し、かつヒドロキシル基を有する化合物(例えば、特許文献1参照。)、スチレン・不飽和グリシジルエステル共重合体とポリプロピレンとのグラフト共重合体(例えば、特許文献2参照。)、末端に水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加物(例えば、特許文献3〜8参照。)等をポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、無機フィラー等からなるポリプロピレン系樹脂組成物に練り込み、それから得られた成形品にプライマーを塗布すること無く、塗膜を密着させる方法が示されている。しかしながら、これらの方法では、塗膜を密着させるために、多量の塗装改質材を添加しなければならず、これに伴い衝撃強度等の機械物性が大幅に低下してしまうという欠点を持っていた。変成ポリプロピレンの使用や表面変成した無機フィラーを用いて無機フィラーの使用量を削減する提案等も有るものの、耐衝撃性は未だ不十分であり、一層の改良が望まれている。
さらに、近年の環境負荷低減の要望から、塗料溶媒を、従来の有機溶剤から水へと変更することも望まれており、これに伴い、塗料溶媒とポリプロピレンとの濡れ性が低下するため、従来の溶剤系塗料を使用する場合に比べ、更に多量の塗装改質材を添加しなければならず、従来の方法では、水性塗料に対する塗装性を満足させるためには、機械物性を大幅に犠牲にすることが必要であった。このため、水性塗料に対する塗装性と機械物性のバランスに優れた、プライマーレス塗装可能なプロピレン系樹脂組成物の開発が待ち望まれていた。
一方、これら工業部品への塗装方式は、静電塗装法が主流となってきている。元来、ポリプロピレンは、電気絶縁性材料であり、塗料樹脂成分との反応性にも乏しいため、ポリプロピレン樹脂単体では、静電塗装は不可能である。かかる欠点を解決するため、例えば、導電性プライマーを成形品表面に塗布し、ポリプロピレン基材に静電塗装を施す方法(例えば、特許文献9〜10参照。)が提案されている。
しかしながら、この導電性プライマーは、導電性を付与するために配合されている導電性フィラーの分散性に難があり、静電塗装可能であるものの、塗装後の塗装面の品質に課題があった。
さらに、ポリプロピレンに導電性カーボンを添加し、導電性を付与する方法も知られているが、導電性カーボンの添加に伴い、ポリプロピレン系樹脂組成物の流動性が大幅に低下してしまうため、主に射出成形用途では、その成形加工性に問題があった。
特開昭62−257946号公報 特開平9−48885号公報 特開平5−15844号公報 特開平5−179083号公報 特開平5−179100号公報 特開平7−53914号公報 特開平9−71713号公報 特開2000−273271号公報 特開昭58−76265号公報 特開昭61−218639号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、塗料のプライマーレス塗装を前提とした、塗装性、特に静電塗装が可能な導電性と機械物性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物及びそれを用いた成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、導電性と塗装性と機械物性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物に関して鋭意検討した結果、特定の構造を有し機械物性バランスに優れるプロピレン・エチレンブロック共重合体に、末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物を塗装改質成分として使用し、かつ特定の導電性カーボンを使用した樹脂組成物の成形体表面の炭素原子に対する酸素原子濃度が0.2〜2%である場合に、機械物性、成形加工性と塗装性および導電性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物とすることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記の成分(a)、(b)、(c)を必須成分とし、メルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N、以下MFRと記す。)が0.1〜100g/10分である樹脂組成物であって、該樹脂組成物から得られる成形体表面のX線光電子分光法(XPS・ESCA)により測定した炭素原子に対する酸素原子濃度が、0.2〜2%であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物提供される。
成分(a)MFRが50〜400g/10分で、アイソタクチックペンタッド分率が0.98以上のプロピレン単独重合体部分と、プロピレン含量が50〜85重量%、ガラス転移温度が−40℃以下、クロス分別クロマトグラフにより測定される固有粘度[η]が5〜9dl/gのプロピレン・エチレンランダム共重合体部分とからなり、MFRが25〜80g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体 100重量部
成分(b)末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物 0.1〜15重量部
成分(c)粒子径10〜100nm、DBP吸収量50〜600ml/100g、比表面積80〜1500m/gの導電性カーボン 1〜25重量部
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、電極間距離が90mmとなるように銀ペーストを塗布した短冊状の試験片(340mm×20mm×3mm)を、絶縁抵抗試験機を用いて、印加電圧10Vの条件下で測定した体積固有抵抗値が10Ωcm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、曲げ弾性率(JIS K7203)が1400MPa以上、曲げ強度(JIS K7203)が20MPa以上、23℃および−30℃で測定されるアイゾッド衝撃強度(JIS K7110)が、それぞれ200、および40J/m以上、荷重たわみ温度(JIS K7207)が、4.6kgf/cmの条件下で、100℃以上であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明のプロピレン系樹脂組成物を使用してなり、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、中空成形、及び押出成形が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第4の発明において、成形体表面に、直接塗装した塗料の塗装密着率が、碁盤目剥離試験の碁盤目残存率で100%であることを特徴とする成形体が提供される。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、衝撃強度、曲げ剛性等の強度バランスに優れ、且つ、溶剤プライマーを塗布すること無く塗膜を密着せしめることが可能であり、また、水性塗料に対してプライマーレスで塗膜密着を実現でき、プライマーに起因する有機溶媒のみならず、塗料溶媒に起因する有機溶媒の使用量削減を実現せしめ、さらに、成形品の薄肉化を実現し、エネルギー資源の節約、地球環境の保護といった近年の社会的問題を解決する一つの有効な手段となる。
以下に本発明を詳細に説明する。
1.プロピレン系樹脂組成物
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体と、(b)末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物、(c)導電性カーボンを必須成分とするプロピレン系樹脂組成物である。以下に各配合成分について説明する。
(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体
本発明で用いる(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分とからなる共重合体である。
上記プロピレン単独重合体部分のMFRは、50〜400g/10分であり、好ましくは100〜300g/10分、さらに好ましくは100〜200g/10分である。また、プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは、25〜80g/10分、好ましくは30〜75g/10分、さらに好ましくは35〜70g/10分である。
プロピレン単独重合体部分のMFRとブロック共重合体のMFRの組合せが上記範囲を逸脱した場合、成形加工性や耐衝撃性が不良となる。
プロピレン単独重合体部分のMFRは、プロピレン単独重合体部分の重合時に水素濃度を制御することにより、調整することができる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは、プロピレン単独重合体部分の分子量調整、及び/又はプロピレン・エチレン共重合体部分の分子量を重合条件(重合温度、水素濃度、重合時間など)により制御することができる。
ここで、MFRは、JIS−K7210に準拠し、温度230℃、荷重21.18N、で測定される値である。
また、プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、0.98以上、好ましくは0.980〜0.995、より好ましくは0.985〜0.995である。アイソタクチックペンタッド分率が0.98未満では成形体の剛性や耐熱性が劣る。
プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、重合触媒の電子供与体(外部及び/又は内部ドナー)の添加量を制御し、さらにこれらの重合過程での欠落を防止することにより側鎖の立体配置を制御することにより、調整することができる。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率とは、Macromolecules,6,925(1973 年)記載の方法、すなわち13C−NMR を使用する方法で測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個接続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975 年)に記載の方法に基づいて行った。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmm ピークの強度分率としてアイソタクチックペンタッド単位を測定する。
プロピレン単独重合体部分のMw/Mnは、好ましくは2.8〜10、さらに好ましくは3〜8である。Mw/Mnが2.8未満では、高剪断領域の流動性が不良となるため、それぞれ相応しくない。
プロピレン単独重合体部分のMw/Mnは、連続重合においては単独重合体を多段に分けて重合したり、バッチ式重合では重合初期と後期の水素濃度を変えることにより、調整することができる。
ここで、Mw、Mnはゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で下記の条件で測定する値である。
装置 :Waters社製HLC/GPC 150C
カラム温度:135℃
溶媒 :o−ジクロロベンゼン
流量 :1.0ml/min
カラム :東ソー株式会社製 GMHHR−H(S)HT 60cm×1
注入量 :0.15ml(濾過処理無し)
溶液濃度 :5mg/3.4ml
試料調整 :o−ジクロロベンゼンを用い、5mg/3.4mlの溶液に調整し、140℃で1〜3時間溶解させる。
検量線 :ポリスチレン標準サンプルを使用
検量線次数:1次
PP分子量:PS×0.639
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のプロピレン含量は、50〜85重量%、好ましくは65〜85重量%、より好ましくは67〜80重量%、さらに好ましくは67〜75重量%である。共重合体部分のプロピレン含量が上記範囲を逸脱した場合、共重合体部分の分散性が悪化したり、靭性が低下したりしてしまうため、好ましくない。
プロピレン・エチレン共重合体部分のプロピレン含量は、プロピレン・エチレン共重合体部分の重合時にプロピレンとエチレンの濃度比を制御することにより、調整することができる。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のガラス転移温度は、−40℃以下であり、好ましくは−40〜−60℃であり、より好ましくは−41〜55℃である。ガラス転移温度が−40℃を超えると、低温での耐衝撃特性が急激に低下してしまうため、好ましくない。
プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、エチレンと共重合モノマーの共重合比により操作することが出来る。
ここで、プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、動的固体粘弾性測定装置により測定する値である。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のクロス分別クロマトグラフにより測定される固有粘度[η]は、5〜9dl/gであり、好ましくは5.5〜8.5dl/gであり、より好ましくは6〜8dl/gである。固有粘度が5dl/g未満の場合、共重合体成分そのものの靭性が劣り、9dl/gを超えると共重合体成分の分散性が低下し、それぞれ耐衝撃性の低下要因となる。
プロピレン・エチレン共重合体部分の固有粘度は、共重合体成分を重合する際に添加する水素の添加量を調整することにより、制御される。
ここで、プロピレン・エチレン共重合体部分の固有粘度は、クロス分別(CFC)で分離した40℃可溶性分をプロピレン・エチレン共重合体部分と定義し、その分別成分をゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)で測定する値であり、下記の条件で測定する値である。
(i)CFC測定で使用する分析装置
(イ)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(ii)CFCの測定条件
(イ)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ロ)サンプル濃度:4mg/mL
(ハ)注入量:0.4mL
(ニ)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(ホ)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は、40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(ヘ)溶出時溶媒流速:1mL/分
(ii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFCで分別した後、CFC後段部分に連結しているGPCのカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の分子量については、特に制約はないが、分散性や耐衝撃性を考慮し、好ましくは重量平均分子量(Mw)が20万〜300万、より好ましくは30万〜250万、さらに好ましくは40万〜200万である。
また、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMw/Mnは、2.6以上であり、好ましくは2.8〜4.5である。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の重量平均分子量は、上記プロピレン単独重合体部分の測定と同じ条件で行う値である。
プロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の量は、ポリプロピレン単独重合体部分がマトリックス相となる範囲で選択する必要があり、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。
プロピレン・エチレン共重合体部分の量は、プロピレン単独重合体部分の重合量とプロピレン・エチレン共重合体部分の重合量の比率を重合時間などにより制御し、調整することができる。
この共重合体部分の濃度は、赤外分光スペクトル法や13C−NMR法等の常法に従って測定される値である。
このプロピレン・エチレンブロック共重合体は、従来公知の任意の方法により重合することができるが、例えば気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、スラリー重合法などを挙げることができ、1つの反応器でバッチ式に重合したり、複数の反応器を組み合わせて連続式に重合してもよい。
重合触媒は、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、バナジウム化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルコキシアルミニウム−マグネシウム錯体のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体や、アルキルアルミニウム或いはアルキルアルミニウムクロリドなどの有機金属化合物との組合せによるいわゆるチーグラー型触媒、もしくはWO−91/04257号公報等に示されるようなメタロセン系触媒が挙げられる。なお、メタロセン系触媒と称せられる触媒は、アルモキサンと組み合わせるいわゆるカミンスキー触媒が一般的であるが、アルモキサン以外の助触媒、例えば硼素系化合物や粘土鉱物と組み合わせた触媒も含まれる。
(b)末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物
本発明のプロピレン系樹脂組成物で用いる(b)末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物は、分子末端に少なくとも一個の水酸基を有し、分子量が好ましくは10,000以下、より好ましくは、1,000〜5,000の低分子量ポリオレフィンであり、常温で液体、半固体、固体のポリマーが含まれる。
成分(b)の1分子当たりの平均水酸基数は、1.0〜10.0、特に1.5〜5.0のものが好ましく、水酸基価(mgKOH/g)は、20〜100が好ましい。水酸基価が20未満では塗膜との反応性が不足で、100を超えると樹脂との相溶性が悪化するため、それぞれ塗膜との密着性が低下し、好ましくない。
末端に水酸基を有するジエンポリマーは、1,3−ジエンを原料に用いて、周知の方法、例えば、ラジカル重合法、アニオン重合法等によって製造することができる。具体的には、例えば、特開昭51−71391号公報に記載の方法等を挙げることができる。上記ラジカル重合法により製造する場合には、過酸化水素を重合開始剤として用いてジエン系モノマーを重合することにより容易に得られる。また、上記アニオン重合法により製造する場合には、共役ジエンを周知の方法に従って、アニオン重合触媒、例えば、アルカリ金属又は有機アルカリ金属化合物を用いて重合させることにより得られた両末端の少なくとも一つにアルカリ金属が結合した構造のリビングポリマーに、例えば、モノエポキシ化合物、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、若しくはハロゲノアルキレンオキシド、ポリエポキシ化合物を反応させれば良い。これらのポリマーの原料モノマーとしては、少なくとも1種類の共役ジエンモノマーが使用される。共役ジエンモノマーとしては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1−フェニル−1,3−ブタジエン等を挙げることができる。
末端に水酸基を有するジエンポリマーの水素添加物としては、前述の末端に水酸基を有するジエンポリマーを、通常の方法、例えば、特開昭51−71391号公報に記載の方法等で水素添加することによって得られるものである。水素添加の程度については、ポリマー中に含まれる二重結合を全部又は部分的に水素添加したものであっても良いが、特に沃素価が0〜20.0、特に0〜5.0(g/100g)のものが好ましい。
これらの末端に水酸基を有するジエンポリマー及びその水素添加物は、それぞれ単独でも、複数の混合物としても使用することができる。
末端に水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加物の具体例としては、例えば、ポリテールH(三菱化学社製)、ポリテール−A(三菱化学社製)のポリヒドロキシポリブタジエン等を挙げることができる。
成分(b)の配合量は、成分(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、0.1〜15重量部であり、好ましくは1〜12重量部であり、さらに好ましくは3〜10重量部である。配合量が0.1重量部未満では、塗装性と機械物性バランスの改善効果が不十分で、15重量部を超えると、剛性、耐熱性等の物性低下が著しいため、好ましくない。
(c)導電性カーボン
本発明のプロピレン系樹脂組成物で用いる(c)導電性カーボンは、静電塗装を行うための必須成分であるため、通常の着色用や充填用配合剤として用いられる無定形構造で導電性の極めて劣るカーボンではなく、表面層がグラファイト構造を有する導電性カーボンである。導電性カーボンの形状は、ストラクチャーを形成したり、チューブ状であるなどして、断面径に対する長さの比が大きく、又、細孔が多く比表面積が大きいことが導電化効率の観点から必要である。
導電性カーボンは、一次粒子径が10〜100nm、比表面積が80〜1500m/g、細孔率を示すDBP吸油量が50〜600cm/100gのカーボンブラックや、直径10〜100nm、管長0.1〜1000ミクロンのカーボンナノチューブ、炭素数60〜540のフラーレン、から選ばれた少なくとも1種の導電性カーボンであり、中でもカーボンブラックが最も好ましい。
特にカーボンブラックの特徴は、粒子径が、好ましくは10〜100nm、より好ましくは15〜60nm、さらに好ましくは20〜40nmであり、DBP吸収量は、好ましくは50〜600ml/100g、より好ましくは80〜550ml/100g、さらに好ましくは100〜500ml/100gであり、比表面積は、好ましくは100〜1500m/g、より好ましくは150〜1500m/g、さらに好ましくは200〜1500m/gである。
粒子径、DBP吸収量、比表面積がそれぞれ上記範囲を逸脱すると、ストラクチャーの発達が不十分となったり、カーボン単体の導電性が低下したり、カーボン同士の相互作用が増大したりして、その結果、導電性カーボンの分散性が低下したり、樹脂組成物の導電効率や流動性が低下してしまうため、好ましくない。
ここで、粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定する値であり、DBP吸収量は、ジブチルフタレートアブソーブドメーターにより、JIS K6221に準拠して測定する値であり、比表面積は、液体窒素吸着法(ASTM D3037)に準拠して測定する値である。
これら導電性カーボンブラックは、市販のものから適宜選んで使用することができる。例えば、三菱化学社から市販されているファーネス法カーボンブラック「三菱カーボン#3150」や、ケッチェンブラックインターナショナル社から市販されているシェル法カーボンブラック「ケッチェンEC」等を挙げることができる。これらの導電性カーボンは、必要に応じて、2種以上併用してもよい。
成分(c)の配合量は、成分(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、1〜25重量部であり、好ましくは2〜25重量部、さらに好ましくは3〜20重量部である。上記範囲を逸脱すると、十分な導電性が得られなかったり、成形加工性が大幅に低下してしまうため、それぞれ好ましくない。
(d)任意成分
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、上述した成分の他に、必要に応じて、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内で、その他の成分が配合されていてもよい。この様なその他の配合成分としては、着色するための顔料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミ・タルク等の各種核剤、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤等の添加剤、無機フィラー、エチレン系エラストマー、スチレン系エラストマー等のエラストマー等を挙げることができる。なお、変成ポリプロピレン等を添加することにより接着性を改良することができるが、本発明の組成物においては、耐衝撃性が悪化する傾向があり、好ましくない。
2.プロピレン系樹脂組成物の製造方法
本発明のプロピレン系樹脂組成物の製造法は、特に制限無く、従来公知の方法で、各配合成分を混合し、溶融混練することにより製造される。
すなわち、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、各配合成分を上記配合割合で配合し、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒することによって、本発明のプロピレン系樹脂組成物が得られる。
このようにして得られた本発明のプロピレン系樹脂組成物は、公知の各種方法による成形に用いることができる。例えば射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等にて成形することによって各種成形品を得ることができる。このうち、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形がより好ましい。
3.プロピレン系樹脂組成物の特徴及びその効果
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、該樹脂組成物から得られる成形体表面のX線光電子分光法(XPS・ESCA)により測定した炭素原子に対する酸素原子濃度が、0.2〜2%である。
成形体表面の炭素原子に対する酸素原子濃度が0.2%未満である場合には、成形体表面における官能基の濃度が低いことを示し、塗膜の接着強度が弱いために界面剥離を起こしてしまう。一方、官能基濃度が2%を超える場合には、成形体表面の基材の強度が劣化することから基材剥離を起こしてしまう。
ここで、表面酸素原子濃度は、X線電子分光法(XPS・ESCA)に基づき、例えば島津製作所製ESCA1000 X線光電子分光装置により、X線源としてMgKαを用いて材料表面の元素分析を行うことにより求められる。このときの酸素原子濃度は、酸素(O)原子と炭素(C)原子の存在比(O/C)を意味し、C1Sの感度係数を1.00、O1Sの感度係数を2.85として表面解析用データ処理システムESPA 1000を用いてデータを処理して算出する。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物のMFRは、0.1〜100g/10分、好ましくは5〜80g/10分、より好ましくは10〜50g/10分である。MFRが0.1g/10分未満であると、実質的に射出成形ができず、塗装性と導電性と成形加工性のバランスに劣り、100g/10分を超えると塗装性、成形性、剛性、衝撃強度のバランスが悪化し、特に衝撃強度の低下が顕著になる。
ここで、MFRは、JIS−K7210に準拠し、230℃、21.18N荷重で測定する値である。
さらに、プロピレン系樹脂組成物の体積固有抵抗値VR(Ωcm)は、好ましくは10Ωcm以下、より好ましくは10〜5×10Ωcm、特に好ましくは10〜2×10Ωcmである。
体積固有抵抗値が10Ωcmを超えると、十分な導電性能を得ることができず、塗着効率が低下するため導電性プライマーを使用せずには実質的に静電塗装を施すことができない。
ここで、体積固有抵抗値VR(Ωcm)は、絶縁抵抗試験器を用いて、試験片に銀ペーストを塗布し、印加電圧10Vの条件で、測定される値である。具体的には、射出成形にて、厚み3mmの平板シート(340mm×100mm)を成形し、平板シートの長手方向に、幅20mmとなるように切削する。切削シートの中央部に、電極間距離が90mmとなるように、予め酢酸ブチルに溶解させた銀ペーストを、刷毛を用いて塗布する。このように銀ペーストを塗布した短冊状の試験片を、絶縁抵抗試験器(横河ヒューレットパッカード社製4329Aハイレジスタンスメーター)を用いて、印加電圧10Vの条件で、体積固有抵抗値を測定する。
さらにまた、プロピレン系樹脂組成物の曲げ弾性率(JIS K7203)は、1400MPa以上が好ましく、より好ましくは1450MPa以上であり、曲げ強度(JIS K7203)は、20MPa以上が好ましく、より好ましくは25MPa以上であり、比重は、0.9〜1.05が好ましく、23℃および−30℃で測定されるアイゾッド衝撃強度(JIS K7110)は、それぞれ200、および40J/m以上が好ましく、より好ましくは220、および42J/m以上であり、荷重たわみ温度(JIS K7207)は、4.6kgf/cmの条件下で、100℃以上が好ましく、より好ましくは110℃以上である。それぞれの値が上記範囲を逸脱すると工業部品としての物性が劣る。
4.プロピレン系樹脂組成物の成形体
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、公知の各種方法による成形に用いることができる。例えば射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等にて成形することによって各種成形体を得ることができる。このうち、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形による成形体が好ましい。
これらの成形方法により得られた成形体は、導電性に優れるため、静電塗装が可能であり、成形体表面にプライマー成分を塗布することなく、静電塗装法により塗装された塗装成形体を得ることができる。
このようにして得られる本発明のプロピレン系樹脂組成物の成形体の成形体表面に、直接塗装した塗料の塗装密着率は、碁盤目剥離試験の碁盤目残存率で100%である。尚、使用する塗料は油性塗料、水性塗料いずれも使用可能であるが、水性塗料を用いた場合に、本発明の効果はより有効である。
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた塗装成形体は、剛性、耐衝撃性、塗装性において高度な物性バランスを有し、各種工業部品分野、特に薄肉化、高機能化、大型化された各種成形品、例えば、テレビケースや冷蔵庫外板、洗濯機外板などの家電機器部品、便座蓋や浴槽などのバス・トイレタリー製品等の各種工業部品用成形体として、実用に十分な性能を有している。
以下、実施例及び比較例をあげて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない
なお、実施例における各種物性の測定方法及び用いた原材料は、以下の通りである。
1.物性測定方法
(1)MFR(単位:g/10分):JIS−K7210に準拠し、230℃、21.18N荷重で行った。
(2)曲げ弾性率(単位:MPa):JIS−K7203に準拠して23℃で測定した。
(3)曲げ強度(単位:MPa):JIS−K7203に準拠して23℃で測定した。
(4)アイゾット(IZOD)衝撃強度(単位:J/m):JIS−K7110に準拠し、23℃、及び−30℃で測定した。
(5)荷重たわみ温度(単位:℃):JIS−K7207に準拠して、4.6kgf/cmの条件で測定した。
(6)体積固有抵抗(単位:Ωcm):前述の欄落[0037]に記載の測定方法により測定した。
(7)表面酸素濃度(単位:%):X線電子分光法(XPS・ESCA)に基づき、島津製作所製 ESCA 1000 X線光電子分光装置により、X線源としてMgKαを用いて材料表面の元素分析を行うことにより求めた。このときの酸素原子濃度は、酸素(O)原子と炭素(C)原子の存在比(O/C)を意味し、C1Sの感度係数を1.00、O1Sの感度係数を2.85として表面解析用データ処理システムESPA 1000を用いて処理して算出した。
(8)塗装性(単位:%):射出成形により成形した平板に、前処理を全く施すこと無く、エアースプレーガンを用いて、直接、日本ペイント社製オーデリサイクルS−700を、膜厚が10ミクロンとなるようにスプレー塗布し、150℃で20分焼付け乾燥し、その後室温で48時間放置する。この後、試験片表面に片刃カミソリを用い、直交する縦横11本ずつの平行線を2mm間隔で引き、碁盤目を100個作る。その上にセロハン粘着テープ(JIS−Z1522)を充分圧着し、塗装面と粘着テープの角度を約30度に保ちながら一気に引き剥がす作業を5回繰り返し、碁盤目で囲まれた部分の状態を観察して、剥離しなかった碁盤目の数を評価する。
2.原材料
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体
製造例1〜6で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(BPP−1〜BPP−6)を用いた。物性を表1に示す。
(製造例1)
(i)チーグラー触媒の製造
充分に窒素置換した10L反応器に、脱水および脱酸素したn−ヘプタン4000mlを導入し、次いでMgClを8モル、Ti(O−n−Cを16モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークスのもの)を960ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換した10L反応器に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で4.8モル導入した。次いでn−ヘプタン500mlにSiCl8モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン500mlにフタル酸クロライド0.48モルを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、SiCl200mlを導入して80℃で6時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し固体成分を得た。このもののチタン含量は1.3重量%であった。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分を100グラム導入し、(t−C)Si(CH)(OCH24ml、Al(C34グラムを30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする固体触媒成分を得た。このもののチタン含量は1.1重量%であった。
(ii)プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
上記で得た固体触媒成分及びトリエチルアルミニウムを使用し、第1重合工程として反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器を用い、重合温度85℃、プロピレン分圧22kg/cmの条件下プロピレン単独重合を連続的に行った。この時、固体触媒成分は1.8g/hrの速度で、またトリエチルアルミニウムを5.5g/hrの速度で連続的に供給した。第1重合工程より抜き出されるパウダーを25kg/hrで連続的に第2重合工程として用いる反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器に送り、プロピレンとエチレンの共重合を連続的に行った。第2重合工程から連続的に27kg/hrのポリマーを抜き出した。各重合工程での水素濃度は、1槽目でH/プロピレン=0.05モル比、2槽目でH/(エチレン+プロピレン)=0.01モル比にコントロールすることにより分子量を制御した。ゴム状プロピレン・エチレン共重合体部のエチレン組成は、第2重合工程でのプロピレンとエチレンのガス組成をプロピレン/エチレン=1/1モル比にコントロールすることによりプロピレン・エチレンブロック共重合体(BPP−1)を得た。1段重合槽から抜き出したプロピレン単独重合体の[mmmm]は、0.986、MFRは180g/10分、2段目重合槽から抜き出したプロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは60g/10分であった。プロピレン・エチレン共重合体部の固有粘度はCFCにより測定した。CFCの測定は、ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100を用い、測定条件として、
(イ)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ロ)サンプル濃度:4mg/mL
(ハ)注入量:0.4mL
(ニ)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(ホ)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。
(ヘ)溶出時溶媒流速:1mL/分
分別した各フラクションを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用した。
ガラス転移点(Tg)は、動的粘弾性測定装置(レオメトリックス社製 RSA−II)により測定した。
(製造例2〜4)
第1重合工程の水素量を、H/プロピレンモル比で0.03〜0.07の範囲で適宜変更する以外は全て製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(BPP−2〜BPP−4)を得た。なお、製造例4では第2重合工程の水素量をH/(エチレン+プロピレン)=0.005モル比で重合した。
(製造例5)
第1重合工程の重合温度を90℃にする以外は製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(BPP−5)を得た。
(製造例6)
第1重合工程の水素量を、H/プロピレン=0.04モル比、第2重合工程の水素量をH/(エチレン+プロピレン)=0.02モル比にする以外は製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(BPP−6)を得た。
Figure 0004296086
(2)末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物
末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物として、三菱化学社製ポリテールH(PolytailH)及びポリテール−Aを用いた。
(3)導電性カーボン
導電性カーボンとして、(C−1)〜(C−2)を用い、その物性を表2に示す。
(C−1):ケッチェンEC(日本ケッチェンブラック(株)製)
(C−2):三菱カーボン#3030(三菱化学(株)製)
Figure 0004296086
(4)任意成分
その他の任意成分として、表3に示した、エチレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、タルク、を用いた。
Figure 0004296086
(実施例1〜5、参考例1〜4
表4に示した配合組成により、プロピレン・エチレンブロック共重合体、導電性カーボン、末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物、フェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製IRGANOX1010)0.1重量部、リン系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製Irgafos168)0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部と共に混合した後、2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用いて、スクリュー回転数300rpm、押出レート15kg/hで溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて、金型温度40℃、シリンダ温度220℃の条件で射出成形し、プロピレン系樹脂組成物の各種試験片とした。得られた試験片を用いて、上述の方法により、各種物性を評価した。評価結果は表4に示す通りであった。
(比較例1〜7)
表5に示した配合組成により、実施例と同様の方法で実験を行い、表5に示す評価結果を得た。評価結果は表に示した通りであり、一部の試料では末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物の過剰充填により基材が脆弱化し、基材と塗膜の界面で塗膜が剥がれているのではなく、基材が破壊することにより塗膜が剥がれる、基材破壊現象が確認された。
Figure 0004296086
Figure 0004296086
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、衝撃強度、曲げ剛性等の強度バランスに優れ、且つ、溶剤プライマーを塗布すること無く塗膜を密着せしめることが可能であるため、水性塗料に対してプライマーレスで塗膜密着を実現することができ、プライマーに起因する有機溶媒のみならず、塗料溶媒に起因する有機溶媒の使用量削減を実現せしめることが可能となるため、各種工業部品分野、特に薄肉化、高機能化、大型化された各種成形品、例えば、テレビケースや冷蔵庫外板、洗濯機外板などの家電機器部品、便座蓋や浴槽などのバス・トイレタリーなどの各種工業部品用成形材料として、実用に十分な性能を有し、工業的に非常に有用なものである。

Claims (4)

  1. 下記の成分(a)、(b)、(c)を必須成分とし、メルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N、以下MFRと記す。)が0.1〜100g/10分である樹脂組成物であって、該樹脂組成物から得られる成形体表面のX線光電子分光法(XPS・ESCA)により測定した炭素原子に対する酸素原子濃度が、0.2〜2%であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物。
    成分(a)MFRが50〜400g/10分で、アイソタクチックペンタッド分率が0.98以上のプロピレン単独重合体部分と、プロピレン含量が50〜85重量%、ガラス転移温度が−40℃以下、クロス分別クロマトグラフにより測定される固有粘度[η]が5〜9dl/gのプロピレン・エチレンランダム共重合体部分とからなり、MFRが25〜80g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体 100重量部
    成分(b)末端に水酸基を有するジエンポリマーまたはその水素添加物 0.1〜15重量部
    成分(c)粒子径10〜100nm、DBP吸収量50〜600ml/100g、比表面積80〜1500m/gの導電性カーボン 1〜25重量部
  2. 電極間距離が90mmとなるように銀ペーストを塗布した短冊状の試験片(340mm×20mm×3mm)を、絶縁抵抗試験機を用いて、印加電圧10Vの条件下で測定した体積固有抵抗値が10Ωcm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  3. 曲げ弾性率(JIS K7203)が1400MPa以上、曲げ強度(JIS K7203)が20MPa以上、23℃および−30℃で測定されるアイゾッド衝撃強度(JIS K7110)が、それぞれ200、および40J/m以上、荷重たわみ温度(JIS K7207)が、4.6kgf/cmの条件下で、100℃以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を使用してなり、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、中空成形、及び押出成形からなる群から選ばれる成形加工方法により、賦型されるプロピレン系樹脂組成物の成形体。
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