JP4350501B2 - プロピレン系樹脂組成物及びその成形体 - Google Patents

プロピレン系樹脂組成物及びその成形体 Download PDF

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本発明は、導電性、塗装性、衝撃強度のバランスに優れた静電塗装向けプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関し、詳しくは、静電塗装が可能な導電性を有し、塗装性と機械物性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物及びその成形体に関する。
ポリプロピレンは、主に射出成形用材料として、自動車部品に代表される工業部品分野で幅広く用いられている。特に、自動車バンパーやインストルメントパネル等の部品は、ポリプロピレン系材料が主要素として使用されている。
これらの部品は意匠性付与のために、表面に塗装を施すケースが多いが、ポリプロピレンは塗膜密着性に乏しいため、ポリプロピレン部品の表面にプライマーを塗布して、塗膜を密着させる工夫がなされている。
しかしながら、このプライマーは有機溶剤を溶媒として含むため、排出VOCの原因となり、環境負荷を増大させている。
このため、ポリプロピレンに塗膜密着性を付与することにより、プライマー成分を塗布することなく塗膜を密着させ、環境負荷を低減させる試みがなされている。
例えば、塗装改質材として、分子中に少なくとも一個の不飽和結合を有し、かつヒドロキシル基を有する化合物(例えば、特許文献1参照。)、スチレン・不飽和グリシジルエステル共重合体とポリプロピレンとのグラフト共重合体(例えば、特許文献2参照。)、末端に水酸基を有するジエンポリマー又はその水素添加物(例えば、特許文献3〜8参照。)等を用い、それらをポリプロピレン、プロピレン−エチレンブロック共重合体、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、無機フィラー等からなるポリプロピレン系樹脂組成物に練り込み、それから得られた成形品にプライマーを塗布すること無く、塗膜を密着させる方法が示されている。しかしながら、これらの方法では、塗膜を密着させるために、多量の塗装改質材を添加しなければならず、これに伴い衝撃強度等の機械物性が大幅に低下してしまうという欠点を持っていた。変成ポリプロピレンを用いる技術も開示されているが、耐衝撃性低下の改善は不十分である。
さらに、近年の環境負荷低減の要望から、塗料溶媒を、従来の有機溶剤から水へと変更することも望まれており、これに伴い、塗料溶媒とポリプロピレンとの濡れ性が低下するため、従来の溶剤系塗料を使用する場合に比べ、更に多量の塗装改質材を添加しなければならず、従来の方法では、水性塗料に対する塗装性を満足させるためには、機械物性を大幅に犠牲にすることが必要であった。このため、水性塗料に対する塗装性と機械物性のバランスに優れた、プライマーレス塗装可能なプロピレン系樹脂組成物の開発が待ち望まれていた。
一方、これら工業部品への塗装方式は、静電塗装法が主流となってきている。元来、ポリプロピレンは、電気絶縁性材料であり、塗料樹脂成分との反応性にも乏しいため、ポリプロピレン樹脂単体では、静電塗装は不可能である。かかる欠点を解決するため、例えば、導電性プライマーを成形品表面に塗布し、ポリプロピレン基材に静電塗装を施す方法(例えば、特許文献9〜10参照。)が提案されている。
しかしながら、この導電性プライマーは、導電性を付与するために配合されている導電性フィラーの分散性に難があり、静電塗装可能であるものの、塗装後の塗装面の品質に課題があった。
特開昭62−257946号公報 特開平9−48885号公報 特開平5−15844号公報 特開平5−179083号公報 特開平5−179100号公報 特開平7−53914号公報 特開平9−71713号公報 特開2000−273271号公報 特開昭58−76265号公報 特開昭61−218639号公報
本発明は、上記問題点に鑑み、水性塗料のプライマーレス塗装を前提とした導電性を有し、塗装性と機械物性のバランスに優れた静電塗装向けプロピレン系樹脂組成物及びその成形体を提供することを課題とする。
本発明者らは、塗装性、導電性、機械物性のバランスに優れたプロピレン系樹脂組成物に関して鋭意検討した結果、プロピレン系樹脂組成物からの成形体表面に対する水滴の接触角と塗装性には相関があり、特定のプロピレン・エチレンブロック共重合体、エチレン系エラストマー、タルク、さらに必要に応じてスチレン系水添ブロック共重合体を含有するポリプロピレン系樹脂組成物に塗装改質成分としてポリヒドロキシポリオレフィンを用い、成形体表面に対する水滴の接触角が65〜80°である場合に被塗装性が大幅に著しく向上し、さらに導電性カーボンを配合することにより導電性も有した静電塗装向けプロピレン系樹脂組成物を得ることが可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、下記(a)〜(c)成分を含有するポリプロピレン系樹脂組成物(A)100重量部に対して、(B)水酸基価が20〜100mgKOH/gのポリヒドキシポリオレフィン1〜10重量部、(C)液体窒素吸着法(ASTM D3037)によって測定した比表面積が80〜1500m /gの導電性カーボンブラック1〜10重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、該プロピレン系樹脂組成物の体積固有抵抗値が10Ωcm以下であり、該プロピレン系樹脂組成物から成形された成形体表面に対する水滴の接触角が65〜80°であることを特徴とする、導電性、塗装性、衝撃強度のバランスに優れた水性塗料の静電塗装向けプロピレン系樹脂組成物が提供される。
(a)成分:メルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N、以下MFRと記す。)が120〜200g/10分であり、かつアイソタクチックペンタッド分率が0.98以上であるプロピレン単独重合体部分90〜93重量%と、プロピレン含有量が65〜85重量%、ガラス転移温度が−40℃以下であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分7〜10重量%とからなり、MFRが40〜70g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体 100重量部
(b)成分:コモノマー含量が21重量%以上で、MFRが5〜75g/10分であるエチレン・オクテンランダム共重合体及び/又はエチレン・ブテンランダム共重合体 20〜50重量部
(c)成分:レーザー回折法によって測定した平均粒径が10μm以下であるタルク 33〜42重量部
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、ポリプロピレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(d)成分を、成分(a)100重量部に対して、1〜20重量部含有する組成物であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
(d)成分:ポリスチレン構造を有するAセグメントの含量が1〜25重量%である下記構造を有するスチレン系水添ブロック共重合ゴム
A−B 又は、A−B−A
(但し、Aセグメントはポリスチレン構造を示し、Bセグメントはエチレン・ブテン又はエチレン・プロピレン構造を示す)
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、(C)導電性カーボンブラックが、粒子径10〜100nm、DBP吸収量250〜600ml/100gであることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、MFRが10〜50g/10分、曲げ弾性率(JIS K7203)が1600MPa以上、23℃で測定されるアイゾッド衝撃強度(JIS K7110)が500J/m以上、引張伸び(JIS K7113)が200%以上、比重が0.9〜1.25であり、且つ、成形体表面の前処理を施さずに塗装したメラミン系水性塗料の塗膜密着性が、碁盤目剥離試験の碁盤目残存率で100%であることを特徴とするプロピレン系樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明のプロピレン系樹脂組成物を使用してなり、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、中空成形、及び、押出成形からなる群から選ばれる成形加工方法により、賦型される成形体が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第5の発明の成形体に、プライマー成分を塗布することなく、水性塗料の静電塗装により塗装された塗装成形体が提供される。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、衝撃強度、曲げ剛性等の強度バランスに優れ、且つ、溶剤プライマーを塗布すること無く塗膜を密着せしめることが可能であり、プライマーに起因する有機溶媒のみならず、塗料溶媒に起因する有機溶媒の使用量削減を実現せしめ、さらに、成形品の薄肉化を実現し、軽量化に伴う燃費効率の向上にも繋げることができる。
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体と、(b)エチレン・オクテンランダム共重合体及び/又はエチレンブテンランダム共重合体のエチレン系エラストマー、及び(c)タルク、さらに必要に応じて、(d)スチレン系水添ブロック共重合体ゴムを含有するポリプロピレ系樹脂組成物(A)と、ポリヒドロキシポリオレフィン(B)、導電性カーボン(C)を含有する樹脂組成物及びその成形体である。以下に各配合成分、製造方法、成形体について説明する。
(A)ポリプロピレ系樹脂組成物
(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体
本発明で用いる(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分とからなるブロック共重合体である。
上記プロピレン単独重合体部分のアイソタクチックペンタッド分率は、0.98以上、好ましくは0.980〜0.995、より好ましくは0.985〜0.995である。アイソタクチックペンタッド分率が0.98未満では成形体の剛性や耐熱性が劣る。
ここで、アイソタクチックペンタッド分率とは、Macromolecules,6,925(1973 年)記載の方法、すなわち13C−NMR を使用する方法で測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック分率である。換言すれば、アイソタクチックペンタッド分率は、プロピレンモノマー単位が5個接続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、ピークの帰属に関しては、Macromolecules,8,687(1975 年)に記載の方法に基づいて行った。具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmm ピークの強度分率としてアイソタクチックペンタッド単位を測定する。
プロピレン単独重合体部分の高アイソタクチックペンタッド分率の重合体は、高立体規則性触媒を用いて製造することができる。高立体規則性触媒としては、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、さらに各種の電子供与体および電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物並びに芳香族カルボン酸エステルを組み合わせた触媒、および、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させた担持型触媒などを例示することができる。
また、上記プロピレン単独重合体部分のMFRは、120〜200g/10分であり、好ましくは140〜180g/10分である。さらに、プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは、35〜80g/10分、好ましくは40〜70g/10分である。
プロピレン単独重合体部分のMFRとブロック共重合体のMFRの組合せが上記範囲を逸脱した場合、流動性や耐衝撃性、引張伸びが不良となる。
プロピレン単独重合体部分のMFRは、プロピレン単独重合体部分の重合時に水素濃度を制御することにより、調整することができる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは、プロピレン単独重合体部分の分子量調整、及び/又はプロピレン・エチレン共重合体部分の分子量を重合条件(重合温度、水素濃度、重合時間など)により制御することができる。
ここで、MFRは、JIS−K7210 条件14に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定する値である。
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のプロピレン含有量は、65〜85重量%、好ましくは67〜80重量%、さらに好ましくは67〜75重量%である。共重合体部分のプロピレン含量が上記範囲を逸脱した場合、共重合体部分の分散性が悪化したり、靭性が低下したりしてしまうため、好ましくない。
プロピレン・エチレン共重合体部分のプロピレン含量は、プロピレン・エチレン共重合体部分の重合時にプロピレンとエチレンの濃度比を制御することにより、調整することができる。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のガラス転移温度は、−40℃以下、好ましくは−40〜−60℃、より好ましくは−41〜−55℃である。ガラス転移温度が−40℃を超えると、低温での耐衝撃特性が急激に低下してしまうため、好ましくない。
プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、エチレンと共重合モノマーの共重合比により操作することが出来る。
ここで、プロピレン・エチレン共重合体部分のガラス転移温度は、動的固体粘弾性測定装置により測定する値である。
プロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の量は、ポリプロピレン単独重合体部分がマトリックス相となる範囲で選択する必要があり、好ましくは5〜15重量%、より好ましくは7〜10重量%である。この共重合体部分の濃度は、赤外分光スペクトル法や13C−NMR法等の常法に従って測定される値である。
プロピレン・エチレン共重合体部分の量は、プロピレン単独重合体部分の重合量とプロピレン・エチレン共重合体部分の重合量の比率を重合時間などにより制御し、調整することができる。
本発明で用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体は、従来公知の任意の方法により重合することができるが、例えば気相重合法、塊状重合法、溶液重合法、スラリー重合法などを挙げることができ、1つの反応器でバッチ式に重合したり、複数の反応器を組み合わせて連続式に重合してもよい。
重合触媒は、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、バナジウム化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルコキシアルミニウム−マグネシウム錯体のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体や、アルキルアルミニウム或いはアルキルアルミニウムクロリドなどの有機金属化合物との組合せによるいわゆるチーグラー型触媒、もしくはWO−91/04257号公報等に示されるようなメタロセン系触媒が挙げられる。なお、メタロセン系触媒と称せられる触媒は、アルモキサンを含まなくてもよいが、好ましくはメタロセン化合物とアルモキサンとを組み合わせた触媒、いわゆるカミンスキー系触媒のことである。
(b)エチレン・オクテンランダム共重合体及び/又はエチレン・ブテンランダム共重合体
本発明で使用される(b)エチレン・オクテン共重合体及び/又はエチレン・ブテンランダム共重合体成分は、耐衝撃性を向上しつつ、かつ良好な成形性、物性、収縮特性を発現させる目的で用いるものであり、1種類である必要はなく、2種類以上の混合物であってもよい。また、下記(d)成分と併用することにより、さらに高度な物性バランスと成形性が発現される。
成分(b)のエチレンと共重合されるコモノマーは1−オクテン又は1−ブテンであり、そのコモノマー含量は21重量%以上、好ましくは21〜60重量%、さらに好ましくは22〜50重量%である。コモノマー含量が18重量%未満では、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性や引張伸び、脆化温度等が不十分となる。
また、成分(b)のMFRは、5〜75g/10分であり、好ましくは7〜70g/10分、特に好ましくは9〜65g/10分である。MFRが上記範囲を逸脱した場合、プロピレン系樹脂組成物の耐衝撃性や引張伸び、脆化温度等が不十分となる。
ここで、MFRは、JIS−K7210 条件14に準拠し、温度230℃、荷重21.18Nで測定する値である。
本発明で用いる成分(b)は、その重合法として、例えば気相流動床法、溶液法、スラリー法や高圧重合法などにより、エチレンと共重合コモノマーを共重合することにより得られる。重合触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、バナジウム化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルコキシアルミニウム−マグネシウム錯体のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体や、アルキルアルミニウム或いはアルキルアルミニウムクロリドなどの有機金属化合物との組合せによるいわゆるチーグラー型触媒、もしくはWO−91/04257号公報等に示されるようなメタロセン系触媒が挙げられる。なお、メタロセン系触媒と称せられる触媒は、アルモキサンを含まなくてもよいが、好ましくはメタロセン化合物とアルモキサンとを組み合わせた触媒、いわゆるカミンスキー系触媒のことである。
成分(b)の配合量は、成分(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、20〜50重量部、好ましくは25〜35重量部である。成分(b)の配合量が上記範囲を逸脱した場合、曲げ弾性率や収縮特性が悪化する。
(c)タルク
本発明で使用する(c)タルクは、平均粒径が10μm以下、好ましくは0.5〜8μmである。平均粒径が上記範囲を逸脱すると、剛性が劣る。
該平均粒径の測定は、レーザー回折法(例えば堀場製作所製LA920W)や、液層沈降方式光透過法(例えば島津製作所製CP型等)によって測定した粒度累積分布曲線から読み取った累積量50重量%の粒径値より求めることができる。本発明の値は、前者の方法により測定された平均粒径値である。
成分(c)は、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化することにより得られたものをさらに精密に分級することによって得られる。又、この分級操作は複数回重ねて行ってもよい。機械的に粉砕する方法としては、ジョークラッシャー、ハンマークラッシャー、ロールクラッシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いる方法が挙げられる。これらの粉砕されたタルクは、本発明で示される平均粒径に調整するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、シャープカットセパレーター等の装置で、1回又は繰り返し湿式又は乾式分級する。本発明で用いるタルクを製造する際は、特定の粒径に粉砕した後、シャープカットセパレーターにて分級操作を行うのが好ましい。これらのタルクは、重合体との接着性或いは分散性を向上させる目的で、各種有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよい。
成分(c)の配合量は、成分(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、20〜60重量部であり、好ましくは30〜45重量部である。さらに好ましくは33〜42重量部である。成分(c)の配合量が上記範囲を逸脱した場合、剛性や脆化特性が劣る。
(d)スチレン系水添ブロック共重合ゴム
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物においては、必要に応じて、(d)スチレン系水添ブロック共重合ゴムを配合することができる。成分(d)は、上記成分(b)と併用することにより、さらに高度な物性バランスと成形性を発現させることができる。
成分(d)は、ポリスチレン構造を有するAセグメントとエチレン・ブテン又はエチレン・プロピレン構造を示すBセグメントとからなる下記構造を構成するブロック共重合体である。
A−B 又は、A−B−A
上記構造式のブロック共重合体において、ポリスチレン構造を有するAセグメントの含量は、1〜25重量%、好ましくは5〜25重量%、さらに好ましくは7〜22重量%であり、エチレン・ブテン又はエチレン・プロピレン構造を示すBセグメントの含量は、75〜99重量%、好ましくは75〜95重量%、さらに好ましくは78〜93重量%である。Aセグメントの含有量が25重量%を超えると、脆化温度が劣る。
なお、ポリスチレン構造単位の含有量は、赤外スペクトル分析法、13C−NMR法などの常法によって測定される値である。
成分(d)の具体例としては、スチレン・エチレン・ブテン・スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン・エチレン・プロピレン・スチレンブロック共重合体(SEPS)が挙げられる。該ブロック構造を有するエラストマー共重合体は、上記構造式に示すようなトリブロック構造とジブロック構造の混合物であってもよい。これらのブロック共重合体は、一般的なアニオンリビング重合法で製造することができる。これには、逐次的にスチレン、ブタジエン、スチレンを重合しトリブロック体を製造した後に水添する方法(SEBSの製造方法)と、スチレン−ブタジエンのジブロック共重合体を始めに製造した後、カップリング剤を用いてトリブロック体にした後水添する方法がある。また、ブタジエンの代わりにイソプレンを用いることにより、スチレン−イソプレン−スチレントリブロック体の水素添加物(SEPS)も製造することができる。
成分(d)の配合量は、成分(a)プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、1〜20重量部であり、好ましくは1〜18重量部、特に好ましくは12〜16重量部である。成分(d)の配合量が上記範囲を逸脱した場合、剛性や脆化特性が劣る。
(B)ポリヒドロキシポリオレフィン
本発明のプロピレン系樹脂組成物で使用する(B)ポリヒドロキシポリオレフィンは、重合体分子中に複数個の水酸基を有するポリオレフィンであれば良いが、好ましくは末端に水酸基を有するポリオレフィンであり、分子量が好ましくは1000〜5000の低分子量ポリオレフィンであり、例えば共役ジエンモノマーを公知の方法、例えばアニオン重合等により重合させ、それを加水分解して得たポリマーを水素添加することにより得られる。具体的には、三菱化学社製の商品名ポリテールH(Polytail H)が挙げられる。
また、成分(B)の水酸基価(mgKOH/g)は、20〜100が好ましい。水酸基価が20未満では塗膜との反応性が不足で、100を超えると樹脂との相溶性が悪化するため、それぞれ塗膜との密着性が低下し、好ましくない。
成分(B)の配合量は、成分(A)ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、1〜10重量部であり、好ましくは3〜10重量部である。成分(B)の配合量が1重量部未満では、塗装性の改善効果が不十分で、10重量部を超えると、剛性などの物性低下および塗装界面における基材剥離がおこるため好ましくない。なお、ヒドロキシポリオレフィンの種類、量、水酸基価等は、成型後の成型体の外表面に水酸基が出ている構造を取りやすい性質から、好ましいものが選択される。
(C)導電性カーボン
本発明のプロピレン系樹脂組成物で使用する(C)導電性カーボンは、導電性を付与しつつ、かつ良好な成形性、物性を発現させる目的のために用いるものである。この導電性カーボンは、通常の着色用や充填用配合剤として用いられる無定形構造で導電性の極めて劣るカーボンではなく、表面層がグラファイト構造を有する導電性カーボンである。導電性カーボンの形状は、ストラクチャーを形成したり、チューブ状であるなどして、断面径に対する長さの比が大きく、又、細孔が多く非表面積が大きいことが導電化効率の観点から必要である。
成分(C)導電性カーボンは、一次粒子径が10〜100nm、比表面積が80〜1500m/g、細孔率を示すDBP吸油量が250〜600cm/100gのカーボンブラックや、直径10〜100nm、管長0.1〜1000ミクロンのカーボンナノチューブ、炭素数60〜540のフラーレン、から選ばれた少なくとも1種の導電性カーボンであり、中でもカーボンブラックが最も好ましい。
特にカーボンブラックの特徴は、粒子径が、好ましくは10〜100nm、より好ましくは15〜60nm、さらに好ましくは20〜40nmであり、DBP吸収量は、好ましくは250〜600ml/100g、より好ましくは300〜550ml/100g、さらに好ましくは300〜500ml/100gであり、比表面積は、好ましくは80〜1500m/g、より好ましくは100〜1500m/g、さらに好ましくは300〜1500m/gである。
粒子径、DBP吸収量、比表面積がそれぞれ上記範囲を逸脱すると、ストラクチャーの発達が不十分となったり、カーボン単体の導電性が低下したり、カーボン同士の相互作用が増大したりして、その結果、導電性カーボンの分散性が低下したり、樹脂組成物の導電効率や流動性が低下してしまうため、好ましくない。
ここで、粒子径は、透過型電子顕微鏡により測定し、DBP吸収量は、ジブチルフタレートアブソーブドメーターにより、JIS K6221に準拠して測定し、比表面積は、液体窒素吸着法(ASTM D3037)に準拠して測定する値である。
これら導電性カーボンブラックは、市販のものから適宜選んで使用することができる。例えば、ケッチェンブラックインターナショナル社から市販されているシェル法カーボンブラック「ケッチェンEC」等を挙げることができる。これらの導電性カーボンは、必要に応じて、2種以上併用してもよい。
成分(C)の配合量は、成分(A)ポリプロピレン系樹脂組成物100重量部に対して、1〜10重量部であり、好ましくは1〜8重量部、さらに好ましくは2〜8重量部である。成分(C)の配合量が上記範囲を逸脱すると、十分な導電性が得られなかったり、成形性や物性が大幅に悪化してしまう。
(D)任意成分
本発明のプロピレン系樹脂組成物には、上述した成分の他に、必要に応じて、本発明の効果が著しく損なわれない範囲内で、その他の成分が配合されていてもよい。この様なその他の配合成分としては、着色するための顔料、フェノール系、イオウ系、リン系などの酸化防止剤、帯電防止剤、ヒンダードアミン等光安定剤、紫外線吸収剤、有機アルミ・タルク等の各種核剤、分散剤、中和剤、発泡剤、銅害防止剤、滑剤、難燃剤、等を挙げることができる。なお、変成ポリプロピレン等を添加することにより接着性を改良することができるが、本発明の組成物においては、耐衝撃性が悪化する傾向があり、好ましくない。
2.ポリプロピレン系樹脂組成物、プロピレン系樹脂組成物の製造
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂組成物(A)は、上記成分(a)〜(c)、必要に応じて成分(d)を、従来公知の方法で、各配合成分を上記配合割合で配合・混合し、溶融混練することにより製造できる。
また、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、上記成分(A)〜(C)、必要に応じて任意成分(D)を、従来公知の方法で、各配合成分を上記配合割合で配合・混合し、溶融混練することにより製造できる。なお、成分(a)〜(d)、(B)、(C)、(D)を同時に上記配合割合で配合・混合して溶融混練することにより製造することもできる。
溶融混練は、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサー、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等の通常の混練機を用いて混練・造粒することによって、本発明のプロピレン系樹脂組成物が得られる。
この場合、各成分の分散を良好にすることができる混練・造粒方法を選択することが好ましく、通常は二軸押出機を用いて行われる。この混練・造粒の際には、上記各成分の配合物を同時に混練してもよく、また性能向上をはかるべく各成分を分割して混練する、すなわち、例えば先ずプロピレン系重合体の一部又は全部とエラストマーとを混練し、その後に残りの成分を混練・造粒するといった方法を採用することもできる。
3.プロピレン系樹脂組成物の特徴および効果
上記のようにして製造された本発明のプロピレン系樹脂組成物は、次の特徴を有している。
(1)体積固有抵抗値
本発明のプロピレン系樹脂組成物の体積固有抵抗値は、10Ωcm以下であり、好ましくは10〜10Ωcm、さらに好ましくは10〜10Ωcmである。体積固有抵抗値が1010Ωcmを超えると、十分な導電性能を得ることができず、導電性プライマーを使用せずに静電塗装を施すことができない。
ここで、体積固有抵抗値(Ωcm)は、絶縁抵抗試験器を用いて、試験片に銀ペーストを塗布し、印加電圧10Vの条件で、測定される値である。具体的には、射出成形にて、厚み3mmの平板シート(340mm×100mm)を成形し、平板シートの長手方向に、幅50mmとなるように切削する。、予め酢酸ブチルに溶解させた銀ペーストを、刷毛を用いて塗布する。このように銀ペーストを塗布した短冊状の試験片を、絶縁抵抗試験器(横河ヒューレットパッカード社製4329Aハイレジスタンスメーター)を用いて、印加電圧10Vの条件で、体積固有抵抗値を測定する。
(2)水滴の接触角
本発明のプロピレン系樹脂組成物を用いた成形体表面に対する水滴の接触角は、65〜80°である。接触角が80°を超えると、成形体表面と塗膜との密着性を得ることができず、界面剥離を起こすこととなる。
ここで、水滴接触角測定は、成形体表面を清浄なイソプロパノールで洗浄した後、23℃中に2時間放置することにより乾燥させた。23℃、湿度48〜52%の雰囲気下で成形体表面に、1μlの蒸留水の液滴をシリンジを用いてのせ、液滴をのせてから5分後の水滴の接触角を接触角計(協和科学(株)製 Pタイプ)を用いて測定する値である。
(3)MFR、曲げ弾性率、アイゾッド衝撃強度、引張伸び、比重、塗膜密着性
本発明のプロピレン系樹脂組成物のMFRは、10〜50g/10分が好ましく、より好ましくは10〜30g/10分である。
また、曲げ弾性率(JIS K7203)は1600MPa以上が好ましく、更に好ましくは1650MPa以上であり、23℃で測定されるアイゾッド衝撃強度(JIS K7110)は500J/m以上が好ましく、更に好ましくは550J/m以上であり、引張伸び(JIS K7113)は200%以上が好ましく、比重は0.9〜1.25が好ましい。さらに、成形体表面の溶剤洗浄・プライマー塗布等の前処理を施さずに塗装したメラミン系水性塗料の塗膜密着性は、碁盤目剥離試験の碁盤目残存率で100%であることが好ましい。このような特徴を有する本発明のプロピレン系樹脂組成物は、導電性、塗装性、成形性、物性のバランスに優れている。
4.成形体
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、公知の各種方法による成形に用いることができる。例えば、射出成形(ガス射出成形も含む)、射出圧縮成形(プレスインジェクション)、押出成形、中空成形、カレンダー成形、インフレーション成形、一軸延伸フィルム成形、二軸延伸フィルム成形等にて成形することによって各種成形品を得ることができる。このうち、射出成形、射出圧縮成形がより好ましい。
本発明のプロピレン系樹脂組成物から成形された成形体は、剛性、耐衝撃性、塗装性において高度な物性バランスを有し、成形体とした場合、成形体表面の溶剤洗浄・プライマー塗布等の前処理を施さずに塗装しても優れた塗膜密着性を得ることができ、さらに導電性に優れ静電塗装処理が可能である。このようにして得られた本発明のプロピレン系樹脂組成物からなる塗装成形体は、メラミン系水性塗料の塗膜密着性が、碁盤目剥離試験の碁盤目残存率で100%である。
したがって、本発明のプロピレン系樹脂組成物は、各種工業部品分野、特に薄肉化、高機能化、大型化された各種自動車用成形品、例えばバンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダー、バックドア、インストルメントパネル、ガーニッシュなどの自動車部品用成形材料として、実用に十分な性能を有している。
以下に、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はその趣旨を逸脱しない限り、これによって限定されるものではない。
尚、実施例における各種物性の測定及び使用した原料は、下記の通りである。
1.物性測定方法
(1)MFR:JISK7210に準拠し、230℃、2.16kg荷重で行った。
(2)曲げ弾性率(単位:MPa):JIS−K7203に準拠して23℃で測定した。
(3)アイゾット(IZOD)衝撃強度(単位:J/m):JIS−K7110に準拠し、23℃で測定した。
(4)引張伸び(単位:%):JIS K7113に準拠し、23℃で測定した。
(5)塗装性:射出成形により成形した平板に、前処理を全く施すこと無く、エアースプレーガンを用いて、直接水性メラミン系塗料を厚さ約15ミクロンとなるようにスプレー塗布し、120℃で1時間焼付け乾燥した後、室温で48時間放置する。この後、試験片表面に片刃カミソリを用い、直交する縦横11本ずつの平行線を2mm間隔で引き、碁盤目を100個作る。その上にセロハン粘着テープ(JIS−Z1522)を充分圧着し、塗装面と粘着テープの角度を約30度に保ちながら一気に引き剥がす作業を5回繰り返し、碁盤目で囲まれた部分の状態を観察して、剥離しなかった碁盤目の数を評価する。
(6)体積固有抵抗値(単位:Ωcm):射出成形にて、厚み3mmの平板シート(340mm×100mm)を成形し、平板シートの長手方向に、幅50mmとなるように切削し、予め酢酸ブチルに溶解させた銀ペーストを、刷毛を用いて塗布する。銀ペーストを塗布した短冊状の試験片を、絶縁抵抗試験器(横河ヒューレットパッカード社製4329Aハイレジスタンスメーター)を用いて、印加電圧10Vの条件で、体積固有抵抗値を測定した。
(7)水滴接触角測定:成形体表面を清浄なイソプロパノールで洗浄した後、23℃中に2時間放置することにより乾燥させた。23℃、湿度48〜52%の雰囲気下で成形体表面に、1μlの蒸留水の液滴をシリンジを用いてのせ、液滴をのせてから5分後の水滴の接触角を接触角計(協和科学(株)製 Pタイプ)を用いて測定した。
2.原材料
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体
製造例1〜5で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1〜PP−5)を用いた。物性を表1に示す。
(製造例1)
(i)チーグラー触媒の製造
充分に窒素置換した10L反応器に、脱水および脱酸素したn−ヘプタン4000mlを導入し、次いでMgClを8モル、Ti(O−n−Cを16モル導入し、95℃で2時間反応させた。反応終了後、40℃に温度を下げ、次いでメチルヒドロポリシロキサン(20センチストークス)を960ml導入し、3時間反応させた。生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。次いで、充分に窒素置換した10L反応器に、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分をMg原子換算で4.8モル導入した。次いでn−ヘプタン500mlにSiCl8モルを混合して30℃、30分間でフラスコへ導入し、70℃で3時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いでn−ヘプタン500mlにフタル酸クロライド0.48モルを混合して、70℃、30分間でフラスコへ導入し、90℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、SiCl200mlを導入して80℃で6時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し固体成分を得た。このもののチタン含量は1.3重量%であった。
次いで、充分に窒素置換したフラスコに、上記と同様に精製したn−ヘプタンを1000ml導入し、上記で合成した固体成分を100グラム導入し、(t−C)Si(CH)(OCH24ml、Al(C34グラムを30℃で2時間接触させた。接触終了後、n−ヘプタンで充分に洗浄し、塩化マグネシウムを主体とする固体触媒成分を得た。このもののチタン含量は1.1重量%であった。
(ii)プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
上記で得た固体触媒成分及びトリエチルアルミニウムを使用し、第1重合工程として反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器を用い重合温度85℃、プロピレン分圧22kg/cm の条件下プロピレン単独重合を連続的に行った。この時、固体触媒成分は1.8g/hrの速度で、またトリエチルアルミニウムを5.5g/hrの速度で連続的に供給した。第1重合工程より抜き出されるパウダーを25kg/hrで連続的に第2重合工程として用いる反応部容積280Lを有する流動床式気相反応器に送り、プロピレンとエチレンの共重合を連続的に行った。第2重合工程から連続的に27kg/hrのポリマーを抜き出した。各重合工程での水素濃度は1槽目でH/プロピレン=0.045モル比、2槽目でH/(エチレン+プロピレン)=0.01モル比にコントロールすることにより分子量を制御した。ゴム状プロピレン・エチレン共重合体部のエチレン組成は第2重合工程でのプロピレンとエチレンのガス組成をプロピレン/エチレン=55/45モル比にコントロールすることによりプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)を得た。1段重合槽から抜き出したプロピレン単独重合体のアイソタクチックペンタッド分率は0.985、MFRは130g/10分、2段目重合槽から抜き出したプロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは60g/10分であった。
(製造例2)
製造例1の第1重合工程の水素量を0.047(モル比)、第2重合工程の水素量を0.015(モル比)にする以外は製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)を得た。
(製造例3)
第1重合工程の重合温度を90℃にし、第1重合工程の水素量を0.035(モル比)にする以外は製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−3)を得た。
(製造例4、5)
第1重合工程の水素量を、各々0.032(モル比)、0.015(モル比)にし、第2重合工程の水素量を0.01(モル比)にする以外は製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−4、PP−5)を得た。
Figure 0004350501
(2)エチレン系エラストマー
表2に示すエチレン系エラストマーを用いた。
Figure 0004350501
(3)タルク
表3に示すタルクを用いた。
Figure 0004350501
(4)スチレン系エラストマー
表4に示すスチレン系エラストマーを用いた。
Figure 0004350501
(5)ポリヒドロキシポリオレフィン
ポリヒドロキシポリオレフィンとして、三菱化学社製ポリテールH(Polytail H)を用いた。
(6)導電性カーボン
表5に示す導電性カーボンを用いた。
Figure 0004350501
(実施例1〜9)
表6に示した配合組成により、プロピレン・エチレンブロック共重合体、エチレン系エラストマー、スチレン系エラストマー、タルク、ポリヒドロキシポリオレフィン、導電性カーボンを配合し、フェノール系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製IRGANOX1010)0.1重量部、リン系酸化防止剤(チバスペシャルティケミカルズ社製Irgafos168)0.05重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部と共に混合した後、2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用いて、スクリュー回転数300rpm、押出レート15kg/hで溶融混練し、プロピレン系樹脂組成物ペレットを得た。得られたペレットを用いて、金型温度30℃、シリンダ温度220℃の条件で射出成形し、プロピレン系樹脂組成物の各種試験片とした。得られた試験片を用いて、上述の方法により、各種物性を評価した。評価結果は表8に示す通りであった。
(比較例1〜14)
表7に示した配合組成により、実施例と同様の方法で実験を行い、表9に示す評価結果を得た。評価結果は表9に示した通りであり、一部の試料ではヒドロキシポリオレフィンの過剰充填により基材が脆弱化し、基材と塗膜の界面で塗膜が剥がれているのではなく、基材が破壊することにより塗膜が剥がれる、基材破壊現象が確認された。
Figure 0004350501
Figure 0004350501
Figure 0004350501
Figure 0004350501
本発明のプロピレン系樹脂組成物は、衝撃強度、曲げ剛性等の強度バランスに優れ、且つ、溶剤プライマーを塗布すること無く塗膜を密着せしめることが可能である。また、水性塗料に対してプライマーレスで塗膜密着を実現でき、プライマーに起因する有機溶媒のみならず、塗料溶媒に起因する有機溶媒の使用量削減を実現せしめることが可能である。さらに、強度バランスにも優れ、成形品の薄肉化を実現し、軽量化に伴う燃費効率の向上にも繋がる。したがって、エネルギー資源の節約、地球環境の保護といった近年の社会的な問題を解決する一つの有効な手段であり、さらに、環境負荷の低減に多大な効果をもたらし、工業的に非常に有用なものである。

Claims (6)

  1. 下記(a)〜(c)成分を含有するポリプロピレン系樹脂組成物(A)100重量部に対して、(B)水酸基価が20〜100mgKOH/gのポリヒドキシポリオレフィン1〜10重量部、(C)液体窒素吸着法(ASTM D3037)によって測定した比表面積が80〜1500m /gの導電性カーボンブラック1〜10重量部を含有するプロピレン系樹脂組成物であって、該プロピレン系樹脂組成物の体積固有抵抗値が10Ωcm以下であり、該プロピレン系樹脂組成物から成形された成形体表面に対する水滴の接触角が65〜80°であることを特徴とする、導電性、塗装性、衝撃強度のバランスに優れた水性塗料の静電塗装向けプロピレン系樹脂組成物。
    (a)成分:メルトフローレート(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N、以下MFRと記す。)が120〜200g/10分であり、かつアイソタクチックペンタッド分率が0.98以上であるプロピレン単独重合体部分90〜93重量%と、プロピレン含有量が65〜85重量%、ガラス転移温度が−40℃以下であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分7〜10重量%とからなり、MFRが40〜70g/10分であるプロピレン・エチレンブロック共重合体 100重量部
    (b)成分:コモノマー含量が21重量%以上で、MFRが5〜75g/10分であるエチレン・オクテンランダム共重合体及び/又はエチレン・ブテンランダム共重合体 20〜50重量部
    (c)成分:レーザー回折法によって測定した平均粒径が10μm以下であるタルク 33〜42重量部
  2. ポリプロピレン系樹脂組成物(A)が、さらに下記(d)成分を、成分(a)100重量部に対して、1〜20重量部含有する組成物であることを特徴とする請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
    (d)成分:ポリスチレン構造を有するAセグメントの含量が1〜25重量%である下記構造を有するスチレン系水添ブロック共重合ゴム
    A−B 又は、A−B−A
    (但し、Aセグメントはポリスチレン構造を示し、Bセグメントはエチレン・ブテン又はエチレン・プロピレン構造を示す)
  3. (C)導電性カーボンブラックが、粒子径10〜100nm、DBP吸収量250〜600ml/100gであることを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  4. MFRが10〜50g/10分、曲げ弾性率(JIS K7203)が1600MPa以上、23℃で測定されるアイゾッド衝撃強度(JIS K7110)が500J/m以上、引張伸び(JIS K7113)が200%以上、比重が0.9〜1.25であり、且つ、成形体表面の前処理を施さずに塗装したメラミン系水性塗料の塗膜密着性が、碁盤目剥離試験の碁盤目残存率で100%であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン系樹脂組成物を使用してなり、射出成形、圧縮成形、射出圧縮成形、中空成形、及び、押出成形からなる群から選ばれる成形加工方法により、賦型される成形体。
  6. 請求項5に記載の成形体に、プライマー成分を塗布することなく、水性塗料の静電塗装により塗装された塗装成形体。
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