JP2004256808A - ポリプロピレン系樹脂成形体 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂成形体 Download PDF

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幸仁 残華
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章寛 鈴木
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Shigeo Mizukami
茂雄 水上
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Abstract

【課題】射出成形時の成形加工性が良好で、曲げ弾性率、低温耐衝撃性、塗装密着性、特に加熱収縮特性に優れる自動車外装部品等に好適なポリプロピレン系樹脂成形体の提供。
【解決手段】MFRが60g/10分以上のプロピレン単独重合体部分74%以下と、エチレン含量が30〜80重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分26重量%以上からなり、(MFR/MFR)が0.020を超え0.2以下であり、メルトフローレート(MFRBPP)が20g/10分以上である、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体の加熱後の収縮率が16/1000以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂成形体に関し、特に収縮特性に優れた、重合ゴム含量が高いプロピレン・エチレンブロック共重合体、該プロピレン・エチレンブロック共重合体と無機フィラー、又は該プロピレン・エチレンブロック共重合体、無機フィラー及びポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤により構成され、追添するエラストマーが少なくかつ射出成形時の成形加工性が良好で、曲げ弾性率、低温耐衝撃性にも優れる、自動車外装部品等の射出成形品に好適なポリプロピレン系樹脂成形体に関する。
ポリプロピレン樹脂に、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体等のエチレン系熱可塑性エラストマー成分(エチレン・α−オレフィン共重合ゴム)と、タルク等の無機充填剤を配合したポリプロピレン樹脂組成物を自動車用部品に使用することは、従来から、広く知られている。そして、ポリプロピレン樹脂や各種ゴム成分、無機充填剤を種々検討することによって、成形性、機械物性、外観などを向上させることが提案されている。
しかしながら、これらの材料は、高価なエチレン・α−オレフィン共重合ゴムを多量に使用することから、コスト面、製造面において改善が望まれている。
一方、これらの欠点を克服する材料として、共重合ゴム成分が多いプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いた成分が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照。)が、これらの材料は、成形性に乏しく、自動車バンパーの大型部品を成形する際、流動不足で成形出来なかったり、ゲートを多数設定せねばならず大型部品の外観に不具合が生じやすいことから更に改善が要求されているのが現状である。
さらに、これら大型部品は、熱による収縮、膨張の度合いが大きいため、塗装時の焼き付け工程を経た後の寸法精度を向上するためには、より加熱時の寸法安定性に優れた材料が求められており、これら全てを満足するには、未だ課題が多いのが現状である。
一方、これらの課題を解決すべく、線膨張係数の小さな材料が提案されている(例えば、特許文献4参照。)が、自動車外装材等の部品に使用する場合、線膨張率は適度に保ちつつ、収縮率を下げる技術が望まれている。
また、ポリプロピレン単独重合体部と、プロピレン・エチレンランダム重合体部が、特定の粘度比である材料が提案されている(例えば、特許文献5〜7参照。)。しかしながら、これらの材料はフィルム用途を前提としており、フィッシュアイ等の記述はあるものの、上記のような課題およびその解決方法については、何ら述べられていない。
特開平7−82434号公報 特開平7−157607号公報 特開平11−80493号公報 特開2002−97337号公報 特開平6−172465号公報 特開平9−169826号公報 特開平11−71486号公報
本発明は、この様な欠点を解決しつつ、追添するエラストマーが少なくかつ射出成形時の成形加工性が良好で、曲げ弾性率、低温耐衝撃性、塗装密着性、特に加熱収縮特性に優れる、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダーをはじめとする自動車外装部品に好適なポリプロピレン系樹脂成形体を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有する重合ゴム含量が高いプロピレン・エチレンブロック共重合体、又は該プロピレン・エチレンブロック共重合体に無機フィラーを特定の比率で配合したポリプロピレン系樹脂組成物は、追添するエラストマーを少なく出来、かつ射出成形時の成形加工性が良好で、曲げ弾性率、低温耐衝撃性、塗装密着性、特に加熱収縮特性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メルトフローレート(MFR)が60g/10分以上のプロピレン単独重合体部分74%以下と、エチレン含量が30〜80重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分26重量%以上からなり、プロピレン単独重合体部分のMFRに対するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.020を超え0.2以下であり、メルトフローレート(MFRBPP)が20g/10分以上である、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体の加熱後の収縮率が16/1000以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、(A)メルトフローレート(MFR)が60g/10分以上のプロピレン単独重合体部分74%以下と、エチレン含量が30〜80重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分26重量%以上からなり、プロピレン単独重合体部分のMFRに対するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.020を超え0.2以下であり、メルトフローレート(MFRBPP)が20g/10分以上である、プロピレン・エチレンブロック共重合体70〜99重量%、及び
(B)無機フィラー1〜30重量%を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体の加熱後の収縮率が16/1000以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、(A)メルトフローレート(MFR)が60g/10分以上のプロピレン単独重合体部分74%以下と、エチレン含量が30〜80重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分26重量%以上からなり、プロピレン単独重合体部分のMFRに対するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.020を超え0.2以下であり、メルトフローレート(MFRBPP)が20g/10分以上である、プロピレン・エチレンブロック共重合体45〜99重量%、
(B)無機フィラー0〜30重量%、及び
(C)プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン・エチレンブロック共重合体において、プロピレン単独重合体部分が、1段重合もしくは多段重合され、メルトフローレート(MFRH(C))が210g/10分以上、その含有量が50〜98重量%であり、プロピレン・エチレンブロック共重合体全体のメルトフローレート(MFRBPP(C))が100g/10分以上、ダイスウエル比が1.2〜2.5、GPCで測定されるQ値(Mw/Mn)が7〜13であるプロピレン・エチレンブロック共重合体からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤1〜25重量%
を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体の加熱後の収縮率が16/1000以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第2又は3の発明において、無機フィラーが、タルクであることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、ポリプロピレン系樹脂成形体がメルトフローレート(MFR)が20g/10分以上、曲げ弾性率が700MPa以上、−30℃におけるIZOD衝撃強度が4.5kJ/m以上、比重が1.1以下の物性を有することを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体が提供される。
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体は、加熱後の収縮率が小さく成形時の加工性が良好で、さらに、流動性、曲げ弾性率、低温衝撃特性、塗装密着性、線膨張係数に優れた特性を有している。
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を含むポリプロピレン系樹脂組成物、該プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)と無機フィラー(B)及び/又は成形性改質剤(C)を含有するポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体である。以下に各成分、製造方法、成形体の特徴について詳細に説明する。
[I]ポリプロピレン系樹脂組成物
1.プロピレン・エチレンブロック共重合体((A)成分)
(1)物性
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体を構成するプロピレン・エチレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分とから構成されるブロック共重合体であって、該プロピレン単独重合体部分の比率は、74重量%以下、好ましくは50〜74重量%、より好ましくは55〜71重量%であり、該プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率は、26重量%以上、好ましくは26〜50重量%、より好ましくは29〜45重量%である。このプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率が26重量%未満のプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いると、例えば、ドアトリムの成形においては、車両の側面衝突時に乗員を保護すべく、耐衝撃吸収性及び延性破壊性能が、不足となり易く好ましくない。尚、本発明で定義するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率は、後述するCFC−IR法にて求めるものとする。
上記プロピレン単独重合体部分のメルトフローレート(MFR:JIS K−7210−1995、230℃、21.18N荷重)は、60g/10分以上、好ましくは70〜350g/10分、さらに好ましくは80〜250g/10分、特に好ましくは、90〜200g/10分である。プロピレン単独重合体部分のMFRが前記範囲未満であると成形性が不十分となる傾向があり好ましくない。また、過剰に高くなると、力学物性が低下しもろくなる。
さらに、プロピレン単独重合体部分のメルトフローレート(MFR)に対するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)は、0.020を超え0.2以下、好ましくは0.023〜0.14、さらに好ましくは、0.025〜0.1である。MFR/MFRが、上記範囲未満の場合は、成形加熱時の収縮率が大きくなるので好ましくなく、さらに塗膜密着性が劣るので好ましくない、逆に上記範囲を超える場合は、プロピレン単独重合体部分のメルトフローレート及びプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレートともに高くなりすぎ、低温IZOD衝撃値が低くなる傾向があるので好ましくない。
なお、プロピレン単独重合体部分のMFRは、第一反応器におけるプロピレンの単独重合時の運転条件、特に連鎖移動剤である水素濃度の制御により調整することができ、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のMFRは、第二反応器のプロピレン・エチレン共重合時の運転条件、例えば、重合温度、プロピレン・エチレンのモル比、圧力、連鎖移動剤の濃度、添加剤の種類や使用量等の制御、特に連鎖移動剤である水素の濃度、により調整することができる。従って、MFR/MFRは、上記の第一反応器と第二反応器の各運転条件の選択により自在に調製することができる。尚、MFRcは、プロピレン単独重合体部分のMFRと、後述するブロック共重合体のMFRBPPおよびプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率(Wc)から、下記の相関式により算出した。
log(MFRBPP)=(1−Wc/100)×log(MFR)+Wc/100×log(MFRc)
上記プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量は、30〜80重量%、好ましくは32〜70重量%、より好ましくは35〜65重量%である。エチレン含有量が上記範囲外のものは低温IZOD衝撃強度が劣る傾向があり好ましくない。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量は、重合時におけるプロピレンとエチレンの供給量の制御により調製することができる。
ここで、エチレン含有量は、後述するCFC−IR法にて測定する値である。
また、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)のメルトフローレート(MFRBPP)(JIS K−7210−1995、230℃、21.18N荷重)は、20g/10分以上、好ましくは22〜100g/10分、さらに好ましくは、25〜50g/10分、である。プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRBPPが前記範囲未満であると流動性が不足し、バンパー等の大型部品を成形する際に大きな成形内圧がかかるので、大きな型締め力のある成形機を必要とし、生産性に悪影響を及ぼす傾向があり好ましくない。また、MFRを過剰に高くすると、剛性・衝撃強度の低下を起こし、好ましくない。
プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRは、重合時に調整したもの、或いは重合後にジアシルパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド等の有機過酸化物で調整したものであってもよい。
プロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率は、後述のCFC−IR法によって測定される。プロピレン・エチレンランダム共重合体部分(EP)の比率(Wc)は、フィード原料ガスの調整、又は第二反応器の運転条件や滞留時間、添加剤種や使用量などの重合条件を調節して、重合条件の一環として設定する。
本発明においては、当該プロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分の比率(Wc)、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量を以下の方法により求める。
(i)使用する分析装置
(i−1)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(i−2)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(i−3)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
(ii)CFCの測定条件
(ii−1)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii−2)サンプル濃度:4mg/mL
(ii−3)注入量:0.4mL
(ii−4)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(ii−5)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(ii−6)溶出時溶媒流速:1mL/分
(iii)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(iii−1)検出器:MCT
(iii−2)分解能:8cm−1
(iii−3)測定間隔:0.2分(12秒)
(iii−4)一測定当たりの積算回数:15回
(iv)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
(iv−1)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(iv−2)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレン−ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
(v)プロピレンエチレンランダム共重合体部分(EP)の比率(Wc)
本発明におけるプロピレン系ブロック共重合体中のプロピレンエチレンランダム共重合体部分の比率(Wc)は、下記式(I)で理論上は定義され、以下のような手順で求められる。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100…(I)
式(I)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は後述する。
式(I)の意味は以下の通りである。すなわち、式(I)右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるEPの量を算出する項である。フラクション1がEPのみを含み、プロピレン単独重合体部分(PP)を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のEP含有量に寄与するが、フラクション1にはEP由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、EP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるEPのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はEP由来、1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からEPの寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、EPの寄与を算出して加え合わせたものがEP含有量となる。
(v−1)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜2に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
(v−2)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では実質的にB100=100と定義する。B40、B100は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPとEPを完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。すなわち、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量である。また、B100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるEPの量がフラクション1に含まれるEPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=100として解析を行うこととした。
(v−3)上記の理由からEPの比率(Wc)を下記式(II)に従い、求める。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100…(II)
つまり、式(II)右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たないEP含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は、結晶性を持つEP含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1および2の平均エチレン含有量A40、A100は、次のようにして求める。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40とする。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和をフラクション1の平均エチレン含有量A40とする。フラクション2の平均エチレン含有量A100も同様に求める。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、EPの大部分、もしくはプロピレン単独重合体部分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、EP中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、およびEP中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140にはEP成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることから、EPの比率やEPのエチレン含有量の計算からは排除する。
(vi)EPのエチレン含有量
EPのエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc
(ただし、Wcは先に求めたEPの比率(重量%)である。)
(2)プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、高立体規則性触媒の存在下にプロピレンとエチレンを共重合して得ることができる。
高立体規則性触媒としては、有機アルミニウム化合物と、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須とする固体成分とからなるものが好適である。
ここで、有機アルミニウム化合物としては、この種の重合において公知の、一般式R AlX3−m(式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基、Xはハロゲンを示し、mは1〜3の数である。)で表される化合物、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド等のジアルキルアルミニウムハライド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のアルキルアルミニウムジハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。また、メチルアルモキサン、ブチルアルモキサン等のアルモキサン類も使用可能である。
また、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須とする固体成分としては、やはりこの種の重合において公知であって、チタンの供給源となるチタン化合物としては、一般式Ti(OR4−n(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素残基、Xはハロゲンを示し、nは0〜4の数である。)で表わされる化合物が挙げられ、中でも、四塩化チタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン等が好ましい。
マグネシウムの供給源となるマグネシウム化合物としては、例えば、ジアルキルマグネシウム、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド等が挙げられ、中でもマグネシウムジハライド等が好ましい。なお、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、中でも、塩素が好ましく、これらは、通常、前記チタン化合物或いはマグネシウム化合物から供給されるが、アルミニウムのハロゲン化物、珪素のハロゲン化物、タングステンのハロゲン化物等の他のハロゲン供給源から供給されてもよい。
電子供与性化合物としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、エーテル類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸及びその誘導体等の含酸素化合物、アンモニア、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素化合物等、有機珪素化合物、有機燐化合物等が挙げられ、中でも、エーテル類、無機酸エステル、有機酸エステル、有機酸ハライド、有機珪素化合物等が好ましく、珪酸エステル、置換コハク酸エステル、フタル酸エステル等の多価カルボン酸エステル、酢酸セロソルブエステル、フタル酸ハライド、ジエーテル、有機アルコキシ珪素化合物等が更に好ましく、例えば、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン、t−ブチル−メチル−ジエトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジメトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジエトキシシラン等の一般式R 3−pSi(OR(式中、Rは炭素数3〜20、好ましくは4〜10の分岐状脂肪族炭化水素残基、又は、炭素数5〜20、好ましくは6〜10の環状脂肪族炭化水素残基を示し、Rは炭素数1〜20、好ましくは1〜10の分岐又は直鎖状脂肪族炭化水素残基を示し、Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜4の脂肪族炭化水素残基を示し、pは1〜3の数である。)で表される有機珪素化合物、例えば、2,2−ジイソプロピル、1,3−ジエーテル、2,2−ジイソブチル、1,3−ジエーテル、等の2,2−置換基を有する1,3−ジエーテル類、フタル酸ブチル、フタル酸オクチル、1,2−ジイソプロピルコハク酸ジブチル等多価カルボン酸エステル、フタル酸クロリド等のフタル酸ハライドが特に好ましい。また、これらを複数種併用することも可能である。
なお、例えば、特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号、特開昭57−63310号、特開昭58−145707号、特開昭60−23404号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号、特開昭63−235307号、特開平2−163104号、特開平7−258328号、特開平8−20607号、等の各公報に記載の触媒を好適に使用できる。
本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の具体的な製造方法としては、第一段階で、プロピレンを供給して、前記触媒の存在下に温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃、プロピレンの分圧0.5〜4.5MPa、好ましくは1.0〜3.5MPaの条件で、プロピレンの単独重合を実施して、プロピレン単独重合体部分を製造する。引き続いて、第二段階で、プロピレンとエチレンを供給して、前記触媒の存在下に温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.3〜4.5MPa、好ましくは0.5〜3.5MPaの条件で、プロピレン・エチレンの共重合を実施してプロピレン・エチレンランダム共重合体部分を製造する。
なお、その際の重合は、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよく、第一段階の重合は気相又は液相中、特には気相中で実施するのが好ましく、また、第二段階の重合は気相中で実施するのが好ましく、各段階の滞留時間は各々0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間とする。
本発明に用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体のごとく、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分の量が多いものは、とりわけ気相流動床法、および横型攪拌式気相法にて重合することが好ましい。
また、前記重合方法により製造されるプロピレン・エチレンブロック共重合体の粉体粒子のベタツキ等をなくして流動性を付与するために、第一段階でのプロピレン単独重合体部分の重合後、第二段階でのプロピレン・エチレンブランダム共重合体部分の重合開始前又は重合途中に活性水素含有化合物や酸素含有化合物等の添加剤を、触媒の固体成分中のチタン原子に対して10〜1000倍モル、あるいは、重合系内に存在する有機アルミニウム化合物に対して0.5〜5倍モルの範囲で添加することが好ましい。ここで、活性水素含有化合物としては、例えば、水、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、カルボン酸類、酸アミド類、アンモニア、アミン類等、含酸素化合物としてアセトン、エチルエーテル、エチルセロソルブ、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
2.無機フィラー((B)成分)
本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に、必要に応じて、無機フィラー(B)を配合したポリプロピレン系樹脂組成物から成形することができる。
本発明のポリプロピレン樹脂成形体で用いる無機フィラー(B)は、曲げ弾性率の向上、及び収縮率、線膨張係数を低下させるために好ましく使用される。無機フィラーとしては、例えば、タルク、マイカ等の板状フィラー、短繊維ガラス繊維、長繊維ガラス繊維、炭素繊維、アラミド繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維等の繊維状フィラー、チタン酸カリウム、マグネシウムオキシサルフェート、窒化珪素、ホウ酸アルミニウム、塩基性硫酸マグネシウム、酸化亜鉛、ワラストナイト、炭酸カルシウム等の針状(ウイスカー)フィラー等を挙げることができる。中でも、タルク、ガラス繊維、マイカが好ましく、特に、物性・コスト面のバラスよりタルクが好ましい。
上記タルクとしては、平均粒径が15μm以下、好ましくは0.5〜12μmのものが好ましい。平均粒径が上記範囲外のものでは曲げ弾性率が低下するので好ましくない。
タルクの平均粒径は、レーザー回折法(例えば、堀場製作所製LA920W)や、液層沈降方式光透過法(例えば、島津製作所製CP型等)によって測定した粒度累積分布曲線から読みとった累積量50重量%の粒径値より求めることができる。本発明の値は、前者の方法にて測定を行った平均粒径値である。
これらタルクは、天然に産出されたものを機械的に微粉砕化することにより得られたものを更に精密に分級することによって得られる。また、一度粗分級したものを更に分級してもかまわない。
タルクを機械的に粉砕する方法としては、ジョークラシャ−、ハンマークラシャ−、ロールクラシャー、スクリーンミル、ジェット粉砕機、コロイドミル、ローラーミル、振動ミル等の粉砕機を用いる方法があげられる。
これらの粉砕されたタルクは、上記に示される平均粒径に調節するために、サイクロン、サイクロンエアセパレーター、ミクロセパレーター、サイクロンエアセパレーター、シャープカットセパレーター、等の装置で1回又は繰り返し湿式又は乾式分級する。本発明のタルクを製造する際は、特定の粒径に粉砕した後シャープカットセパレーターにて分級操作を行うことが好ましい。
また、これらのタルクは、重合体との接着性或いは分散性を向上させる目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、又はその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよい。
上記ガラス繊維としては、ガラスチョップドストランドを用いるのが一般的であり、これらチョップドストランドの長さは、通常3〜50mm、好ましくは3〜30mm、繊維の径は3〜25μm程度、好ましくは8〜14μmのものである。このガラスチョップドストランドはシラン系化合物による表面改質及びポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、エポキ樹脂若しくはオレフィン系成分等の集束剤等による表面処理を施したものを用いることが好ましい。
上記ガラス繊維表面の改質用シラン系化合物としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニル−トリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β−(2,4−エポキシシクロヘキシル)エトキシメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。
また、ガラス繊維の集束剤としてのオレフィン系成分としては、不飽和カルボン酸変性ポリオレフィン、又はポリオレフィン低分子量物等が挙げられる。不飽和カルボン酸としては、例えば、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、アンゲリカ酸、ソルビン酸等や、これら不飽和カルボン酸の金属塩、アミド、イミド、エステル等を挙げることができる。これらは単独で、若しくは、その誘導体によって変性されたポリオレフィン樹脂を用いることが好ましく、特にポリプロピレン樹脂を母体として変性したものが好ましく、変性率が0.1〜10重量%のものを用いることが好ましい。ポリオレフィン低分子量物としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、プロピレン・エチレンブロック共重合体、エチレン・ブテン共重合体、エチレン・ペンテン共重合体の等低分子量物を挙げることができる。
上記マイカは、平均粒径が2〜100μmで、平均アスペクト比が10以上のものが好ましく、とりわけ平均粒径が2〜80μmで、平均アスペクト比が15以上のものが好ましい。マイカの平均粒径が上記範囲より大きいものを用いると、成形品の耐傷性、外観、衝撃強度が劣り、上記範囲より小さい場合には分散がかえって悪化し、成形品の耐傷性、外観や、衝撃強度が低下する。
該マイカは、いわゆる白マイカ、金マイカ、黒マイカ等いずれでも構わないが、中でも金マイカ、白マイカが好ましく、とりわけ白マイカが好ましい。
マイカの製造方法は、特に限定されず、前述のタルクに準じた方法で製造されるが、中でも乾式粉砕・湿式分級又は湿式粉砕・湿式分級方式で製造されたものが好ましく、とりわけ湿式粉砕・湿式分級方式が好ましい。
これらのマイカは、界面活性剤、カップリング剤等で表面処理を施したものでもよい。表面処理したフィラーは成形品の強度や耐熱剛性をさらに向上させる効果を有する。
本発明の無機フィラー(B)を配合したポリプロピレン樹脂組成物を用いる場合の各成分の配合量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が好ましくは70〜99重量%、より好ましくは75〜96重量%、さらに好ましくは80〜90重量%であり、無機フィラー(B)が好ましくは1〜30重量%、より好ましくは4〜25重量%、さらにに好ましくは10〜20重量%である。(A)の配合量が上記未満であると低温衝撃特性が劣り、逆に上記範囲を超える場合は剛性の低下が起こるので好ましくない。また、無機フィラーの配合量が上記範囲未満では曲げ弾性率が不足し、上記範囲を超える場合は比重が大きくなるので好ましくない。
3.成形性改質剤((C)成分)
本発明のポリプロピレン樹脂成形体は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)に、必要に応じて、無機フィラー(B)を配合したうえに、成形性改質剤(C)を配合したポリプロピレン系樹脂組成物から成形することができる。
本発明のポリプロピレン樹脂成形体で用いる成形性改質成分(C)は、高い流動特性と、良好なフローマーク外観と、低い成形内圧を発現させる目的で用いられる。この成形性改質剤は、極めて流動性に優れるプロピレン単独重合体部分、及び、極めて分子量が大きなエチレン・プロピレン共重合体部分からなるプロピレン・エチレンブロック共重合体からなり、両者を兼ね備えることによりその性能が達成される。
成形性改質剤を構成するプロピレン・エチレンブロック共重合体におけるプロピレン単独重合体部分の重合は、プロピレンの1段重合であっても、多段重合であってもかまわないが、成形特性を発現するためには、多段重合により得ることがより好ましい。また、そのメルトフローレート(MFRH(C))は、210g/10分以上、好ましくは300〜3000g/10分、更に好ましくは600〜2000g/10分である。プロピレン単独重合体部のMFRH(C)が、210g/10分未満であると、フローマーク外観の改良効果が劣るので好ましくない。プロピレン単独重合体部のMFRH(C)は、プロピレン単独重合体部分の重合を終えた時のMFRであり、多段重合を行う場合には、最終の重合槽から取り出されるプロピレン単独重合体部のMFRである。
プロピレン単独重合体部分のメルトフローレートを調整するためには、重合時に水素を添加し分子量を制御して調整することができる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体全体のMFRBPP(C)は、100g/10分以上であり、好ましくは100〜250g/10分である。MFRBPP(C)が100g/10分未満では、射出成形時の成形加工性が劣り、また250g/10分を超えると衝撃特性、機械的強度などが不足する。
プロピレン・エチレンブロック共重合体のMFRBPP(C)は、構成するプロピレン単独重合体部分及びエチレン・プロピレンランダム共重合体部分の重合比率及びそれぞれの分子量を制御することにより、調整することができる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体のダイスウエル比は、1.2〜2.5であり、好ましくは1.25〜2.4であり、更に好ましくは、1.35〜2.25である。ダイスウエル比が1.2未満であると、プロピレン・エチレンブロック共重合体をポリプロピレン系樹脂に成形性改質剤として配合したポリプロピレン系樹脂組成物からの成形品におけるフローマーク外観の改良効果が乏しく、一方2.5を超えるものは工業的に製造が難しいので実用的でない。
なお、本発明における成形性改質剤のダイスウエル比は、プロピレン・エチレンブロック共重合体を、190℃の加熱シリンダーに挿填した後、6分間加熱保持し、直径1mm、長さ8mmのオリフィスから0.1g/分の速度で押し出して、そのストランド径を測定し、ストランド直径/オリフィス直径により算出し求めた値である。
プロピレン・エチレンブロック共重合体のダイスウエル比は、構成するエチレン・プロピレンランダム共重合部分の重合時において、なるべく低濃度の水素雰囲気下もしくは、実質的に水素の存在しない状態で重合を行い、分子量を高く制御することにより調整することができる。
プロピレン・エチレンブロック共重合体の成形性改質剤として、重要なもう一つの物性は分子量分布である。プロピレン・エチレンブロック共重合体の分子量分布(Q値)は、重合体の重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Mw/Mn)で表現することができる。本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体のQ値は、7〜13が好ましく、より好ましくは8〜12である。Q値が7未満であると、成形性改質剤としての改良効果が劣り、プロピレン・エチレンブロック共重合体をポリプロピレン系樹脂に成形性改質剤として配合したポリプロピレン系樹脂組成物からの成形品におけるフローマーク外観が劣る。一方、13を超えると、極めて製造が困難になるので好ましくない。
なお、本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体の分子量分布(Q値)は、赤外検出器を装備したGPC装置(ミリポア社製150C)を用いて重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、Mw/Mnとして算出する値である。測定条件は、移動相溶媒としてオルソジクロロベンゼンを、標準物質として、Mn=18,000、Mw=52,200の高密度ポリエチレンを使用し、カラムおよび試料注入部の設定温度を140℃として測定する。
成形性改質剤のプロピレン・エチレンブロック共重合体の製造法は、特に限定されるものではなく、公知の方法、条件の中から適宜に選択される。プロピレンの重合触媒としては、通常、高立体規則性触媒が用いられる。例えば、四塩化チタンを有機アルミニウム化合物で還元し、更に各種の電子供与体及び電子受容体で処理して得られた三塩化チタン組成物と有機アルミニウム化合物及び芳香族カルボン酸エステルを組み合わせた触媒(特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号の各公報参照)、及び、ハロゲン化マグネシウムに四塩化チタンと各種の電子供与体を接触させた担持型触媒(特開昭57−63310号、同63−43915号、同63−83116号の各公報参照)等を例示することができる。
本発明の成形性改質剤(C)を配合したポリプロピレン樹脂組成物を用いる場合の各成分の配合量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が好ましくは45〜99重量%、より好ましくは55〜95重量%、さらに好ましくは60〜90重量%であり、無機フィラー(B)が好ましくは0〜30重量%、より好ましくは4〜25重量%、さらに好ましくは10〜20重量%であり、成形性改質剤(C)が好ましくは1〜25重量%、より好ましくは5〜22重量%、さらに好ましくは10〜20重量%である。(A)の配合量が上記未満であると低温衝撃特性が劣り、逆に上記範囲を超える場合は剛性の低下が起こるので好ましくない。また、(B)の配合量が上記範囲未満では曲げ弾性率が不足し、上記範囲を超える場合は比重が大きくなるので好ましくない。(C)の配合量が上記未満であるとフローマーク等の成形外観改良効果が低く、逆に上記範囲を超える場合は衝撃性の低下が起こるので好ましくない。
4.付加的成分(任意成分)
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂組成物には、上記(A)、(B)、(C)以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲で、他の付加的成分(任意成分)を添加することができる。
この様な付加的成分(任意成分)としては、エチレン・プロピレン共重合エラストマー、エチレン・ブテン共重合エラストマー、エチレン・ヘキセン共重合エラストマー、エチレン・オクテン共重合エラストマー等のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー、SEBS、SEPS等のスチレン系エラストマーなどのエラストマー成分、フェノール系及びリン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系の耐候劣化防止剤、有機アルミニウム合物、有機リン化合物等の造核剤、ステアリン酸の金属塩に代表される金属石鹸分散剤、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の滑剤、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック等の着色物質、化学発泡剤、物理発泡剤などの各種発泡剤をあげることができる。
[II]ポリプロピレン系樹脂成形体
1.ポリプロピレン系樹脂組成物の製造
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体を構成するポリプロピレン系樹脂組成物は、上記構成成分の(A)、(B)、(C)、任意成分等を通常の押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、設定温度180〜250℃にて混練することにより製造されるが、これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
2.ポリプロピレン系樹脂成形体の製造
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体の成形加工法は、特に限定されるものではないが、奏される発明の効果からみて、射出成形法、射出圧縮成形法又は射出発泡成形法を用いることが適している。
3.ポリプロピレン系樹脂成形体の物性
上記方法によって製造される本発明のポリプロピレン系樹脂成形体は、加熱後の収縮率が16/1000以下、好ましくは5〜16/1000、より好ましくは8〜15.5/1000、さらに好ましくは10〜15.5/1000である。加熱後の収縮率が16/1000を超えると、寸法安定性に欠ける不具合が生じる。
ポリプロピレン系樹脂成形体における加熱後の収縮率の調製は、プロピレン・エチレンランダム共重合体又はエラストマーの含有量を増やす、プロピレン・エチレンランダム共重合体又はエラストマーの溶融粘度を低くする、前記MFR/MFRを高くする、などの方法により加熱後の収縮率を低くすることができる。
ここで、加熱後の収縮率は、次により定義される。
型締め圧100トンの射出成形機を使用し、成形温度220℃にて120mm×120mm×3mmtなる形状で標線が刻印された金型を使用してテストピースを成形し、23℃で48時間状態調節を行い、その後ギアオーブン内にて、120℃×40分加熱し、23℃で48時間状態調節を行う、その後、テストピースの標線間距離を測定し、金型に刻印された標線間距離に対する加熱収縮率を測定し1000分率[1/1000]で表記するものである。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂成形体は、射出成形時の加工性が良好で、流動性、曲げ弾性率、低温衝撃特性、線膨張係数、塗装性に優れた特性を有し、好ましくは、下記の(a)〜(d)の物性を有し、特に、(C)を含有する組成物からの成形体にあっては、成形外観にすぐれたものである。
(a)MFR
ポリプロピレン系樹脂成形体のメルトフローレート(MFR)(230℃、21.18N荷重)は、好ましくは20g/10分以上、より好ましくは20〜120g/10分、さらに好ましくは25〜100g/10分である。
ここで、MFRの測定はJIS K−7210−1995に準拠し、21.18N荷重にて230℃の温度で測定する値である。
(b)曲げ弾性率
ポリプロピレン系樹脂成形体の曲げ弾性率は、好ましくは700MPa以上、より好ましくは700〜2000MPa、さらに好ましくは800〜1500Paである。
ここで、曲げ弾性率はJIS K−7203−1982に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/minで測定する値である。
(c)低温IZOD衝撃強度
ポリプロピレン系樹脂成形体の低温IZOD衝撃強度は、好ましくは4.5kJ/m以上、より好ましくは4.5〜20kJ/m、さらに好ましくは5〜15kJ/mである。
ここで、IZOD衝撃強度はJIS K−7110−1984に準拠し、−30℃において測定する値である。
(d)線膨張係数
ポリプロピレン系樹脂成形体の線膨張係数は、好ましくは14.5×10−5/℃以下、より好ましくは7×10−5〜14.5×10−5/℃、さらに好ましくは10×10−5〜14.5×10−5/℃、特に好ましくは13×10−5を超え14.5××10−5/℃以下である。
ここで、線膨張係数は、JIS K−7197−1991に類似した手法により測定する値である。具体的には、予め100℃にて30分アニール処理した10mm×4mm×2mmの試験片を2℃/minの条件で昇温加熱し、23℃〜80℃における、長さ方向の平均膨張率を測定する。
4.成形体の用途
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体は、上記の性能を発現できる素材であることから、種々の成形品に成形して用いることができるが、中でもバンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダーをはじめとする自動車外装部品に用いることが好ましい。
本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、物性測定法および使用材料は、以下の通りである。
1.測定法
(1)MFR:JIS K−7210−1995に準拠し、21.18N荷重にて230℃の温度で測定した。
(2)曲げ弾性率:JIS K−7203−1982に準拠し、23℃において曲げ速度2mm/minで測定した。
(3)低温IZOD衝撃強度:JIS K−7110−1984に準拠し、−30℃において測定した。
(4)収縮率:型締め圧100トンの射出成形機を使用し、成形温度220℃にて、120mm×120mm×3mmtなる形状で標線が刻印されたテストピースを成形し、23℃で48時間状態調節を行い、その後ギアオーブン内にて、120℃×40分加熱し、23℃で48時間状態調節を行った。その後、テストピースの標線間距離を測定し、加熱収縮率を測定した。
(5)線膨張係数:JIS K−7197−1991に類似した手法により測定した。すなわち、予め100℃にて30分アニール処理した10mm×4mm×2mmの試験片を2℃/minの条件で昇温加熱し、23℃〜80℃における、長さ方向の平均膨張率を測定した。
(6)塗装性:型締め圧100トンの射出成形機で、成形温度220℃にて、120mm×120mm×3mmtなる形状で標線が刻印されたテストピース(TP)を成形し、TPの半分をマスキングテープでマスキングし、プライマーとして、プライマック1500(日本油脂社製:膜厚設定10μm)塗布した後、さらにプライマック4000(日本油脂社製:膜厚設定40μm)を塗布し、100℃で2時間過熱し塗膜を硬化させた。その後TPを放冷し23℃で48時間保持した後、塗膜をオートグラフで引っ張り、塗膜ピール強度を測定し、下記の基準で判定した。
○:800kg/cm以上
△:600kg/cmを超え〜800kg/cm未満
×:600kg/cm以下
(7)成形外観:型締め圧100トンの射出成形機で、成形温度を220℃にて、350mm×100mm×2mmtなる形状のシートを成形し、そのフローマークの発生距離を測定し、下記の基準で判定した。
○:発生距離が200mmを超える
△:発生距離が150mmを超え、200mm以下
×:発生距離が150mm以下
2.使用材料
(1)(A)成分のプロピレン・エチレンブロック共重合体
下記の製造例1〜11で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1〜PP−11)を用いた。
(製造例1)
(i)固体成分触媒の製造 窒素置換した内容積50リットルの撹拌機付槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン20リットルを導入し、次いで、塩化マグネシウム10モルとテトラブトキシチタン20モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(粘度20センチストークス)12000ミリリットルを導入して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン5リットルを導入し、次いで、上記で合成した固体成分をマグネシウム原子換算で3モル導入した。ついで、n−ヘプタン2.5リットルに、四塩化珪素5モルを混合して30℃、30分間かけて導入して、温度を70℃に上げ、3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン2.5リットルを導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して90℃、30分間で導入し、95℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、四塩化珪素0.6リットル、n−ヘプタン8リットルを導入し固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが1.55重量パーセント含まれていた。
次に、窒素置換した前記撹拌機付槽にn−ヘプタン8リットル、上記で得た固体成分を400gと、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン0.27モル、ビニルトリメチルシラン0.27モルを導入し、30℃で1時間接触させた。次いで15℃に冷却し、n−ヘプタンに希釈したトリエチルアルミニウム1.5モルを15℃条件下30分かけて導入、導入後30℃に昇温し2時間反応させ、反応液を取り出し、n−ヘプタンで洗浄して固体成分触媒390gを得た。
得られた固体成分触媒中には、チタンが1.35重量%含まれていた。
(ii)プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
内容積550リットルの第一段反応器に、温度70℃で、圧力は使用温度での液状プロピレンの蒸気圧に相当する圧力(70℃においては約3.2MPa)において、プロピレンと、トリエチルアルミニウムを10g/hr、及び、重合体生成速度が20kg/時間となるような量比の固体成分触媒(平均0.7g/Hr)を連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.21となるように連続的に供給して液相中で重合を実施し、平均滞留時間30分でプロピレン単独重合体を製造した(第一段階重合)。第一反応器から抜き出したポリマーのMFRとして測定した。
引き続いて、生成重合体を、プロピレンパージ槽を経由させて、内容積1900リットルの第二段反応器に導入し、温度60℃で、圧力3.0MPaになるように、プロピレンとエチレンをプロピレン/エチレンのモル比で0.43となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.064となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して2.6倍モルになるように供給して気相中で平均滞留時間150分で共重合を実施した後、生成重合体を連続的にベッセルに移し、水分を含んだ窒素ガスを導入して反応を停止させプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)を得た(第二段階重合)。
(製造例2〜11)
製造例1で製造した触媒並び重合方法を用い、上記第一段階重合における水素量、第二段階重合におけるプロピレンとエチレンの供給量及び水素量、各段階の重合時間を表1のように変更し、表2に示すPP−2〜PP−11のプロピレン・エチレンブロック共重合体を製造した。
Figure 2004256808
Figure 2004256808
(2)タルク−1:平均粒径7μmのタルク(富士タルク社製MT7)を用いた。
(3)(C)成分のプロピレン・エチレンブロック共重合体
下記の製造例12〜15で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(成形性改質剤−1〜成形性改質剤−4)を用いた。
(製造例12)
内容積200リットルのステンレス製オートクレーブに、n−ヘプタン60リットル、マグネシウム担持型チタン触媒5g及びトリエチルアルミニウム15gを加え、75℃に昇温し、気相部水素濃度を18体積%に調整しながらプロピレンを9Kg/時間のフィード速度で供給することにより、MFRH(C)が634g/10分のプロピレン単独重合体(1段目重合部)を全重量の90重量%製造した。
1段目重合終了後、気相部の水素濃度をパージし、次いで、1段目重合部の存在下で温度を65℃まで降温した後に、エチレン0.7Kg/時間、プロピレン1.6Kg/時間のフィード速度で供給し、2段目重合部としてのエチレン・プロピレンランダム共重合体を全重量の10重量%製造し、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる成形性改質剤−1を得た。得られた成形性改質剤のMFR、ダイスウエル比、Q値を測定した。その結果を表3に示す。
(製造例13)
内容積200リットルのステンレス製オートクレーブに、n−ヘプタン60リットル、マグネシウム担持型チタン触媒5g及びトリエチルアルミニウム15gを加え、75℃に昇温し、気相部水素濃度を21体積%に調整しながらプロピレンを9Kg/時間のフィード速度で供給することにより、MFRH(C)が891g/10分のプロピレン単独重合体(1段目重合部)を全重量の85.5重量%製造した。
1段目重合終了後、気相部の水素濃度をパージし、次いで、1段目重合部の存在下で温度を75℃まで降温した後に、プロピレンを2.3Kg/時間のフィード速度で供給し、2段目重合部としての高分子プロピレン重合体を全重量の4.5重量%製造し、1段、2段あわせて全重量の90重量%のプロピレン単独重合体を得た。
2段目重合終了後、1段目重合部の存在下で温度を65℃まで降温した後に、続いて、エチレン0.85Kg/時間、プロピレン1.45Kg/時間のフィード速度で供給し、2段目重合部としてのエチレン・プロピレンランダム共重合体を全重量の10重量%製造し、プロピレン・エチレンブロック共重合体からなる成形性改質剤−2を得た。得られた成形性改質剤のMFR、ダイスウエル比、Q値を測定した。その結果を表3に示す。
(製造例14〜15)
プロピレン及び水素の供給量、並びに重合時間を変更して、製造例12と同様してにプロピレンエチレンブロック共重合体からなる成形性改質剤−3及び成形性改質剤−4を得た。得られた成形性改質剤のMFR、ダイスウエル比、Q値を測定した。その結果を表3に示す。
Figure 2004256808
(実施例1〜6、比較例1〜5)
表2に示すプロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に、テトラキス[メチレン−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製IRGANOX1010)0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバガイギー社製IRGAFOS168)0.05重量部、核剤としてタルク(松村産業製タルクP7)0.3重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部を配合して、川田製作所製スーパーミキサーで5分間混合した後、神戸製鋼社製二軸混練機(2FCM)にて210℃の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
その後、型締め圧100トンの射出成形機にて物性測定用試験片を作成し、上記各種測定法に従って測定を行った。評価結果を表4に示す。
Figure 2004256808
(実施例7〜9、比較例6)
表2に示すプロピレン・エチレンブロック共重合体及びタルク−1を、表5に示す割合で配合し、さらに、プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対し、テトラキス[メチレン−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製IRGANOX1010)0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバガイギー社製IRGAFOS168)0.05重量部、核剤としてタルク(松村産業製タルクP7)0.3重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部を配合して、川田製作所製スーパーミキサーで5分間混合した後、神戸製鋼社製二軸混練機(2FCM)にて210℃の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
その後、型締め圧100トンの射出成形機にて物性測定用試験片を作成し、上記各種測定法に従って測定を行った。評価結果を表5に示す。
Figure 2004256808
(実施例10〜13、比較例7〜8)
表2に示すプロピレン・エチレンブロック共重合体、タルク−1、及び表3に示す成形性改質剤を、表6に示す割合で配合し、さらに、プロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対し、テトラキス[メチレン−3−(3’5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバガイギー社製IRGANOX1010)0.1重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(チバガイギー社製IRGAFOS168)0.05重量部、核剤としてタルク(松村産業製タルクP7)0.3重量部、ステアリン酸カルシウム0.3重量部を配合して、川田製作所製スーパーミキサーで5分間混合した後、神戸製鋼社製二軸混練機(2FCM)にて210℃の設定温度で混練造粒することによりポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
その後、型締め圧100トンの射出成形機にて物性測定用試験片を作成し、上記各種測定法に従って測定を行った。評価結果を表6に示す。
Figure 2004256808
表4、5及び6より明らかなように、本発明によると低収縮率、低線膨張係数である寸法特性に優れ、塗装性、成形外観に優れた成形体が得られている。なお、比較例1は射出成型時の樹脂圧が高くなり、成型しづらいという問題があった。
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体は、加熱後の収縮率が小さく成形時の加工性が良好で、さらに、流動性、曲げ弾性率、低温衝撃特性、線膨張係数に優れた特性を有していることから、種々の成形品に成形して用いることができ、特に、バンパー、ロッカーモール、サイドモール、オーバーフェンダーをはじめとする自動車外装部品に好適に用いることができる。

Claims (5)

  1. メルトフローレート(MFR)が60g/10分以上のプロピレン単独重合体部分74%以下と、エチレン含量が30〜80重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分26重量%以上からなり、プロピレン単独重合体部分のMFRに対するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.020を超え0.2以下であり、メルトフローレート(MFRBPP)が20g/10分以上である、プロピレン・エチレンブロック共重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体の加熱後の収縮率が16/1000以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体。
  2. (A)メルトフローレート(MFR)が60g/10分以上のプロピレン単独重合体部分74%以下と、エチレン含量が30〜80重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分26重量%以上からなり、プロピレン単独重合体部分のMFRに対するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.020を超え0.2以下であり、メルトフローレート(MFRBPP)が20g/10分以上である、プロピレン・エチレンブロック共重合体70〜99重量%、及び
    (B)無機フィラー1〜30重量%
    を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体の加熱後の収縮率が16/1000以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体。
  3. (A)メルトフローレート(MFR)が60g/10分以上のプロピレン単独重合体部分74%以下と、エチレン含量が30〜80重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合体部分26重量%以上からなり、プロピレン単独重合体部分のMFRに対するプロピレン・エチレンランダム共重合体部分のメルトフローレート(MFR)の比(MFR/MFR)が0.020を超え0.2以下であり、メルトフローレート(MFRBPP)が20g/10分以上である、プロピレン・エチレンブロック共重合体45〜99重量%、
    (B)無機フィラー0〜30重量%、及び
    (C)プロピレン単独重合体部分とプロピレン・エチレンランダム共重合体部分とを含有するプロピレン・エチレンブロック共重合体において、プロピレン単独重合体部分が、1段重合もしくは多段重合され、メルトフローレート(MFRH(C))が210g/10分以上、その含有量が50〜98重量%であり、プロピレン・エチレンブロック共重合体全体のメルトフローレート(MFRBPP(C))が100g/10分以上、ダイスウエル比が1.2〜2.5、GPCで測定されるQ値(Mw/Mn)が7〜13であるプロピレン・エチレンブロック共重合体からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂用成形性改質剤1〜25重量%
    を含むポリプロピレン系樹脂組成物からなる成形体であって、前記成形体の加熱後の収縮率が16/1000以下であることを特徴とするポリプロピレン系樹脂成形体。
  4. 無機フィラーが、タルクであることを特徴とする請求項2又は3に記載のポリプロピレン系樹脂成形体。
  5. ポリプロピレン系樹脂成形体が、MFRが20g/10分以上、曲げ弾性率が700MPa以上、−30℃におけるIZOD衝撃強度が4.5kJ/m以上、比重が1.1以下の物性を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン系樹脂成形体。
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