JP5238639B2 - シームレス自動車内装部品用樹脂組成物およびその用途 - Google Patents

シームレス自動車内装部品用樹脂組成物およびその用途 Download PDF

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Description

本発明は、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物およびそれから得られるシームレス自動車内装部品に関し、さらに詳しくは、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性に優れ、かつエアバックキットとの振動溶着特性に極めて優れるため、エアバッグシステムをシームレスに備えることのできる、エアバッグ作動時に確実に展開可能なシームレス自動車内装部品用の樹脂組成物、およびそれから得られるシームレス自動車内装部品に関する。
従来、自動車のエアバッグ装置は、剛性の必要な自動車内装部品(インストルメントパネル、ルーフライニング、サイドピラーなど)と、低温から高温までの広い温度範囲での優れた展開性が必要なエアバッグカバーとが異なる材質のため、両者は別々に成形され、自動車内装部品(インストルメントパネル、ルーフライニング、サイドピラーなど)に組み込まれていた。
そのため、エアバッグカバー部とインストルメントパネルなどの自動車内装部品との境界には継ぎ目が生じていた。
しかし、近年になって、意匠面及びフロントガラスへの写り込みを回避するといった安全面等から、継ぎ目を自動車内装部品例えばインストルメントパネルなどから見えなくするという、シームレス自動車内装部品例えばシームレスインストルメントパネルへの移行に対する要求があった。
この解決手段の一つとして、表皮材で覆う方法(特許文献1)があるが、製造工程が複雑で、コストがかかるといった問題があった。
一方、自動車内装部品例えばインストルメントパネル等とエアバッグキットとの接続は、ネジ止め、フック止めなどが広く行われているが、様々な部品が必要であり、また、重量増加につながる問題があり、そのため、振動溶着で固定することが提案されている。
こうした状況下に、インストルメントパネルとエアバッグカバーとを同一素材で一体的に成形する方法が提案され、それに用いる樹脂組成物が種々開発されている(例えば、特許文献2、3、4、5)。
例えば、特許文献2には、曲げ初期弾性率が500〜1000MPa、−40℃におけるIzod衝撃試験が非破壊であり、ポリプロピレン樹脂40〜70重量部、ムーニー粘度が20〜70のエチレン・プロピレン(・非共役ジエン)共重合体ゴム5〜30重量部、ムーニー粘度が90〜180のエチレン・プロピレン(・非共役ジエン)共重合体ゴム5〜30重量部、MFRが1〜50g/10分のエチレン・オクテン共重合体5〜30重量部、タルク1〜15重量部からなるエアバッグカバーが一体化されたインスツルメントパネル用の熱可塑性樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献3には、ポリプロピレン50〜95質量%、熱可塑性エラストマー0〜20質量%及びタルク5〜30質量%からなり、該タルクのうち、平均粒径が10μmを超えるタルクが組成物基準で5質量%以上であるシームレスエアバッグカバー用樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4には、下記の成分(A)〜(C)を含有し、ホモ成分と共重合成分と成分(C)の合計を100重量%として、ホモ成分の含有量が40〜50重量%であり、共重合体成分の含有量が30〜40重量%であり、成分(C)の含有量が10〜30重量%であるエアバッグカバー一体型インパネ用樹脂組成物が開示されている。
(A):ブロックポリプロピレン(a1)及びホモポリプロピレン(a2)からなるプロピレン系樹脂
(B):密度が870kg/m3未満であり、温度190℃及び21.18Nの条件で測定されるメルトーレートが5g/10min以下であるエチレン−α−オレフィン共重合体
(C):タルク
(ただし、ホモ成分とは(a1)のホモ部と(a2)を合わせたものであり、共重合成分とは(a1)の共重合部と(B)を合わせたものを意味する。)
また、特許文献5には、ポリプロピレン50〜90質量%、熱可塑性エラストマー0〜20質量%及びタルク10〜30質量%からなり、該タルクが15〜25μmの平均粒径、及び粒子径5μm以下のものが10質量%以下、粒子径40μmを超えるものが10質量%以下の粒度分布を有するシームレスエアバッグカバー用樹脂組成物又はエアバッグカバー付きシームレスインストルメントパネル用樹脂組成物が開示されている。
しかしながら、上述のような従来の一体型インパネ用樹脂組成物は、インストルメントパネルとしての剛性と、エアバッグカバーとしての展開性をあわせもつため、振動溶着で固定するときには、依然として溶着部に剥離が起るという問題点をもっていた。すなわち、従来のインストルメントパネル用樹脂組成物を用いたシームレスインストルメントパネルでは、エアバッグキットを振動溶着により固定をしても、振動溶着強度が低く、エアバック作動時にインストルメントパネルとエアバッグキットとの溶着部に剥離が起こり、エアバックカバー部が展開不能であった。
また、エアバック作動時の衝撃により、インストルメントパネル自体が展開予定線以外の部位で破壊してしまう問題があった。
そのため、従来の自動車内装部品(インストルメントパネル等)用樹脂組成物の問題点を解消し、エアバッグシステムをシームレスに備えることのできる新たなシームレス自動車内装部品(シームレスインストルメントパネル等)用樹脂組成物の研究開発が求められていた。
特開2007−176991号公報 特開2003−183459号公報 特開2004−315640号公報 特開2006−257259号公報 WO2006/040825号公報
本発明の目的は、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性に優れ、かつエアバックキットとの振動溶着特性に極めて優れるため、エアバッグシステムをシームレスに備えることのできる、エアバッグ作動時に確実に展開可能なシームレス自動車内装部品(シームレスインストルメントパネル、シームレスルーフライニング、シームレスサイドピラー等)用の樹脂組成物、およびそれから得られるシームレス自動車内装部品(シームレスインストルメントパネル、シームレスルーフライニング、シームレスサイドピラー等)を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)、エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)およびフィラー(E)、さらに必要に応じてプロピレン系重合体(F)からなる樹脂組成物において、各成分の特定化と各成分の含有割合の最適化を同時に行なったところ、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性に優れ、さらに、振動溶着強度を著しく向上させたシームレス自動車内装部品(シームレスインストルメントパネル、シームレスルーフライニング、シームレスサイドピラー等)用樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が50〜130g/10分の結晶性ポリプロピレン成分50〜85重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分15〜50重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が5〜45g/10分の結晶性ポリプロピレン成分70〜95重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分5〜30重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.5〜10g/10分のエチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.5〜10g/10分のエチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)およびフィラー(E)からなるシームレス自動車内装部品用樹脂組成物であって、各成分の含有割合は、(A)が10〜50重量%、(B)が25〜55重量%、(C)が5〜15重量%、(D)が3〜10重量%、(E)が5〜20重量%(ただし(A)〜(E)の合計量は100重量%である。)であり、かつ、フィラー(E)は、フィラー(E)全量に対して5〜100重量%のウィスカー状フィラーと、0〜95重量%のタルクとからなる、ことを特徴とするシームレス自動車内装部品用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が1g/10分以下のプロピレン系重合体(F)を、1〜25重量%(ただし(A)〜(F)の合計量は100重量%である。)含有することを特徴とする、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、シームレス自動車内装部品とエアバッグキットを振動溶着により固定したときの振動溶着強度(最大点荷重)が、60N以上であることを特徴とする、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物が提供される。
さらに、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が6〜20g/10分であることを特徴とする、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、シームレス自動車内装部品がシームレスインストルメントパネルであることを特徴とする、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明の樹脂組成物を成形してなるシームレス自動車内装部品が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第5の発明の樹脂組成物を成形してなるシームレスインストルメントパネルが提供される。
本発明によれば、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)、エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)およびフィラー(E)、さらに必要に応じてプロピレン系重合体(F)からなる樹脂組成物において、各成分を特定化するとともにその含有割合を最適化することにより、各成分の分散性が著しく改善され、その結果、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性に優れ、さらに、振動溶着強度を著しく向上させたシームレス自動車内装部品(シームレスインストルメントパネル、シームレスルーフライニング、シームレスサイドピラー等)用樹脂組成物が得られたものと推定される。そして、本発明の樹脂組成物は、シームレス自動車内装部品(シームレスインストルメントパネル、シームレスルーフライニング、シームレスサイドピラー等)用、とりわけシームレスインストルメントパネル用として有用であり、産業上の有用性は非常に高い。
本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物は、メルトフローレート(以下、MFRと記す。)(230℃、荷重21.18N)が50〜130g/10分の結晶性ポリプロピレン成分50〜85重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分15〜50重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)(以下、単に(A)とも言う)を10〜50重量%、MFR(230℃、荷重21.18N)が5〜45g/10分の結晶性ポリプロピレン成分70〜95重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分5〜30重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)(以下、単に(B)とも言う)を25〜55重量%、MFR(230℃、荷重21.18N)が0.5〜10g/10分のエチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)(以下、単に(C)とも言う)を5〜15重量%、MFR(230℃、荷重21.18N)が0.5〜10g/10分のエチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)(以下、単に(D)とも言う)を3〜10重量%、フィラー(E)(以下、単に(E)とも言う)を5〜20重量%(ただし(A)〜(E)の合計量は100重量%である。)、および、さらに必要に応じて、MFR(230℃、荷重21.18N)が1g/10分以下のプロピレン系重合体(F)(以下、単に(F)とも言う)を1〜25重量%(ただし(A)〜(F)の合計量は100重量%である。)含むことを特徴とする。
ここで、フィラー(E)は、フィラー(E)全体100重量%を基準として、ウィスカー状フィラー5〜100重量%と、タルク0〜95重量%からなるものである。
以下、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を構成する構成成分やその製造方法等について詳細に説明する。
1.プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)
本発明で用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、プロピレン重合工程とプロピレン・エチレンランダム共重合工程を含む重合方法によって得ることができる、結晶性ポリプロピレン成分(A−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)とを含むブロック共重合体である。
(1)結晶性ポリプロピレン成分(A−1)
結晶性ポリプロピレン成分(A−1)は、結晶性のプロピレンの単独重合体であることが好ましいが、結晶性を著しく損なわない範囲でプロピレンに少量の他のコモノマーを共重合することによって得られる結晶性の共重合体であってもよい。(A−1)成分の結晶性は、アイソタクチック指数(沸騰n−ヘプタン抽出による不溶分)として、通常90%以上、好ましくは95〜100%である。結晶性が小さいとシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の剛性が低くなる。
上記コモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物等が挙げられる。これらは二種以上共重合されていてもよい。
プロピレンにコモノマーを共重合する際の、コモノマーの量としては、(A−1)成分の全重量を基準として3重量%以下程度である。ここで、コモノマーの含量は、赤外分光分析法(IR)にて求めた値である。
結晶性ポリプロピレン成分(A−1)のMFR(230℃、荷重21.18N)は、50〜130g/10分であり、好ましくは55〜128g/10分であり、より好ましくは60〜125g/10分である。(A−1)成分のMFR(230℃、荷重21.18N)が50g/10分未満、または、130g/10分を超えると、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物の振動溶着強度が低くなり、エアバッグの展開不良が生じる。
本発明においては、(A−1)成分のMFRが上記の範囲にあることが必要であり、これにより、振動溶着強度の優れたシームレス自動車内装部品となる本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることができる。
なお、本発明において、MFRは、JIS−K7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定されたものである。
(2)プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるゴム状成分である。(A−2)には、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1などの直鎖状α−オレフィン、3−メチル1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどの分岐状α−オレフィン等の他のモノマーから導かれる構造単位が含まれていてもよい。
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)のエチレン含有量は、20〜70重量%が好ましく、25〜50重量%がより好ましく、30〜45重量%がとりわけ好ましい。この範囲であると、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物の衝撃性が良好となる。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)中のエチレン含量は、後述する方法にて測定する値である。
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)の固有粘度[η]は、好ましくは2.5〜7.0dl/gであり、より好ましくは3.0〜6.5dl/gである。[η]が2.5dl/g未満であるとシームレス自動車内装部品にフローマークが発生し外観が劣ることがあり、また7.0dl/gを超えると、成形時の未溶融物がブツとなって、シームレス自動車内装部品の外観を損なうことがある。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)中の[η]は、後述する昇温溶出分別における40℃以下で溶出する成分(フラクション1)の135℃、テトラリン中で測定する値である。
(3)プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の物性
本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物で用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)において、結晶性ポリプロピレン成分(A−1)及びプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)の割合は、結晶性ポリプロピレン成分(A−1)が50〜85重量%、好ましくは60〜80重量%、より好ましくは65〜75重量%で、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(A−2)が15〜50重量%、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。結晶性ポリプロピレン成分(A−1)の割合が50重量%未満では、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物の流動性が劣る。一方、結晶性ポリプロピレン成分(A−1)割合が85重量%を超えると、衝撃性が悪化する。
本発明においては、(A−1)成分と(A−2)成分の割合が、上記の範囲にあることが必要であり、これにより、流動性、外観および衝撃性のバランスの優れた成形品となる本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明で用いる(A)全体のMFR(230℃、荷重21.18N)は、好ましくは10〜40g/10分、より好ましくは15〜30g/10分である。(A)全体のMFRが上記の範囲にあることで、流動性および外観のバランスの取れた材料となる。
なお、(A)は二種以上併用してもよい。
2.プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)
本発明で用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、プロピレン重合工程とプロピレン・エチレンランダム共重合工程を含む重合方法によって得ることができる、結晶性ポリプロピレン成分(B−1)とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)とを含むブロック共重合体である。
(1)結晶性ポリプロピレン成分(B−1)
結晶性ポリプロピレン成分(B−1)は、結晶性のプロピレンの単独重合体であることが好ましいが、結晶性を著しく損なわない範囲でプロピレンに少量の他のコモノマーを共重合することによって得られる結晶性の共重合体であってもよい。(B−1)成分の結晶性は、アイソタクチック指数(沸騰n−ヘプタン抽出による不溶分)として、通常90%以上、好ましくは95〜100%である。結晶性が小さいとシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の剛性が低くなる。
上記コモノマーとしては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどのプロピレン以外のα−オレフィン、スチレン、ビニルシクロペンテン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルナンなどのビニル化合物等が挙げられる。これらは二種以上共重合されていてもよい。
プロピレンにコモノマーを共重合する際の、コモノマーの量としては、(B−1)成分の全重量を基準として3重量%以下程度である。
結晶性ポリプロピレン成分(B−1)のMFR(230℃、荷重21.18N)は、5〜45g/10分であり、好ましくは10〜35g/10分であり、より好ましくは15〜30g/10分である。(B−1)成分のMFRが5g/10分未満であると、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物を射出成形した際に樹脂組成物の成形加工性が劣るという不都合が生じる。一方、45g/10分を超えると、振動溶着強度が低くなり、エアバッグの展開不良を生じる。
本発明においては、(B−1)成分のMFRが上記の範囲にあることが必要であり、これにより、振動溶着強度の優れたシームレス自動車内装部品となる本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることができる。
結晶性ポリプロピレン成分(B−1)のMFRB1としては、結晶性ポリプロピレン成分(A−1)のMFRA1との比(MFRB1/MFRA1)が、0.5以下が好ましく、0.3以下がより好ましい。この範囲であると、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物の振動溶着強度、外観が良好となる。
(2)プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)は、プロピレンとエチレンとのランダム共重合によって得られるゴム状成分である。(B−2)には、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1などの直鎖状α−オレフィン、3−メチル1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどの分岐状α−オレフィン等の他のモノマーから導かれる構造単位が含まれていてもよい。
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)のエチレン含有量は、20〜70重量%が好ましく、25〜50重量%がより好ましく、30〜45重量%がとりわけ好ましい。この範囲であると、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物の衝撃性が良好となる。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)中のエチレン含量は、後述の方法にて測定する値である。
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)の固有粘度[η]は、好ましくは2.5〜9.0dl/gであり、より好ましくは5.0〜8.5dl/gである。[η]が2.5dl/g未満であるとシームレス自動車内装部品にフローマークが発生し外観が劣り、振動溶着強度が不足することがあり、また9.0dl/gを超えると、成形時の未溶融物がブツとなって、シームレス自動車内装部品の外観を損なうことがある。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)中の[η]は、後述する昇温溶出分別における40℃以下で溶出する成分(フラクション1)の135℃、テトラリン中で測定する値である。
(3)プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の物性
本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物で用いるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)において、結晶性ポリプロピレン成分(B−1)及びプロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)の割合は、結晶性ポリプロピレン成分(B−1)が70〜95重量%、好ましくは75〜94重量%、より好ましくは80〜93重量%である。プロピレン・エチレンランダム共重合体成分(B−2)が5〜30重量%、好ましくは6〜25重量%、より好ましくは7〜20重量%である。結晶性ポリプロピレン成分(B−1)の割合が70重量%未満であると、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物の流動性が劣る。一方、結晶性ポリプロピレン成分(B−1)割合が95重量%を超えると、衝撃性が低下する。
本発明においては、(B−1)成分と(B−2)成分の割合が、上記の範囲にあることが必要であり、これにより、流動性、外観、衝撃性および振動溶着強度のバランスに優れたシームレス自動車内装部品となる本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることができる。
また、本発明で用いる(B)全体のMFR(230℃、荷重21.18N)は、好ましくは5〜40g/10分、より好ましくは7〜35g/10分、さらに好ましくは8〜30g/10分である。(B)のMFRが上記の範囲にあることで、シームレス自動車内装部品用樹脂組成物は振動溶着強度と流動性のバランスに優れる。
なお、(B)は二種以上併用してもよい。
(4)プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、(B)の物性の分析法
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、(B)のプロピレン・エチレンランダム共重合体部分(ゴム成分)の比率(Wc)、およびゴム成分中のエチレン含量の測定は、下記の装置、条件を用い、下記の手順で測定する。
(a)使用する分析装置
(i)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(ii)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(iii)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
(b)CFCの測定条件
(i)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(ii)サンプル濃度:4mg/mL
(iii)注入量:0.4mL
(iv)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(v)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位 重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(vi)溶出時溶媒流速:1mL/分
(c)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(i)検出器:MCT
(ii)分解能:8cm−1
(iii)測定間隔:0.2分(12秒)
(iv)一測定当たりの積算回数:15回
(d)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
(i)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(ii)プロピレン・エチレンブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレンラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
(e)プロピレン・エチレンランダム共重合体成分の比率(Wc)
本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分の比率(Wc)は、下記式(I)で理論上は定義され、以下のような手順で求められる。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100…(I)
式(I)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は後述する。
(I)式の意味は以下の通りである。すなわち、(I)式右辺の第一項はフラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体成分の量を算出する項である。フラクション1がプロピレン・エチレンランダム共重合体成分のみを含み、結晶性ポリプロピレン成分を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のプロピレン・エチレンランダム共重合体成分含有量に寄与するが、フラクション1にはプロピレン・エチレンランダム共重合体成分由来の成分のほかに少量の結晶性ポリプロピレン成分由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分由来の量を算出する。
例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体のエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はプロピレン・エチレンランダム共重合体由来、1/4は結晶性ポリプロピレン成分由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からプロピレン・エチレンランダム共重合体の寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、プロピレン・エチレンランダム共重合体の寄与を算出して加え合わせたものがプロピレン・エチレンランダム共重合体成分含有量となる。
(i)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜2に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
(ii)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では実質的にB100=100と定義する。B40、B100は各フラクションに含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由はフラクションに混在する結晶性ポリプロピレン成分とプロピレン・エチレンランダム共重合体を完全に分離・分取する手段がないからである。
種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。また、B100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体の量がフラクション1に含まれるプロピレン・エチレンランダム共重合体の量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=100として解析を行うこととしている。
(iii)上記の理由からプロピレン・エチレンランダム共重合体成分の比率(Wc)を以下の式に従い、求める。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100…(II)
つまり、(II)式右辺の第一項であるW40×A40/B40は結晶性を持たないプロピレン・エチレンランダム共重合体含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は結晶性を持つプロピレン・エチレンランダム共重合体成分含有量(重量%)を示す。
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1および2の平均エチレン含有量A40、A100は、次のようにして求める。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40となる。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和がフラクション1の平均エチレン含有量A40となる。フラクション2の平均エチレン含有量A100も同様に求める。
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは結晶性を持たないポリマー(例えば、プロピレン・エチレンランダム共重合体の大部分、もしくは結晶性ポリプロピレン成分部分の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えばプロピレン・エチレンランダム共重合体中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低い結晶性ポリプロピレン成分)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば結晶性ポリプロピレン成分中特に結晶性の高い成分、およびプロピレン・エチレンランダム共重合体中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。
なお、W140にはプロピレン・エチレンランダム共重合体成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることからプロピレン・エチレンランダム共重合体の比率やプロピレン・エチレンランダム共重合体のエチレン含有量の計算からは排除する。
(f)プロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量
本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体におけるプロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量は、上述で説明した値を用い、次式から求められる。
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc
(但し、Wcは先に求めたプロピレン・エチレンランダム共重合体成分の比率(重量%)である。)
本発明においては、上述のように相互に相違する二種類のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、(B)を特定の割合で用いることにより、分子量分布が広がり、低分子量成分及び高分子量成分の比率が相対的に増加する。低分子量成分は振動溶着時に早く溶ける事で溶着速度がアップし、一方で、高分子量成分は分子鎖の絡み合い効果が起こり、その結果、振動溶着強度が向上すると考えられる。
3.エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)
本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物で用いるエチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)は、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、ゴム的な性質を有する重合体である。α−オレフィンとしては、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル1−ペンテンなどが挙げられる。これらは二種以上共重合されていてもよい。好ましくはプロピレン、1−ブテンである。
本発明においては、(C)全体の重量を基準として、α−オレフィン含有量を10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%とすることが、ゴム的な性質が発現しやすい点で好ましい。
本発明で用いる(C)は、モノマーであるエチレンとα−オレフィンを触媒の存在下で共重合することにより製造することができる。触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物触媒等を使用することができる。
重合法としては、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等の製造プロセスを適用して重合することができる。好ましい製造法としては高圧バルク重合や溶液法が挙げられる。
本発明で用いる(C)の具体例としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(EPR)、エチレン・ブテン共重合体(EBR)、エチレン・ヘキセン共重合体(EHR)等が挙げられる。本発明において、これら(C)は、1種類に限定されるものではなく、密度、MFRなどの異なる2種類以上の混合物の使用であっても良い。
本発明で用いる(C)として使用できる市販品を例示すれば、ジェイエスアール社製EPシリーズ、三井化学社製タフマーPシリーズおよびタフマーAシリーズなどを挙げることができる。
本発明で用いる(C)のMFR(230℃、荷重21.18N)は、0.5〜10g/10分、好ましくは1〜9g/10分、より好ましくは2〜7g/10分であることが必要である。MFRが0.5g/10分未満であると本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の流動性の低下が生じ、10g/10分を超えると外観が悪化する。MFRは、重合に際して水素など分子量調整剤、β水素引き抜きの速度制御などにより適宜調整することが可能である。
本発明においては、(C)のMFRが上記の範囲にあることにより、外観を維持しつつ、流動性を向上させることができ、衝撃性や振動溶着強度を含めた良好なバランスの本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることができる。
4.エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)
本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物で用いるエチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)は、エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとのランダム共重合体であって、ゴム的な性質を有する重合体である。α−オレフィンとしては、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン等が挙げられる。これらは二種以上共重合されていてもよい。好ましくは1−オクテンである。
本発明においては、(D)全体の重量を基準として、α−オレフィン含有量を10〜60重量%、好ましくは15〜50重量%とすることが、ゴム的な性質が発現しやすい点で好ましい。
本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物で用いる(D)は、モノマーであるエチレンとα−オレフィンを触媒の存在下で共重合することにより製造することができる。
触媒としては、ハロゲン化チタンのようなチタン化合物、アルキルアルミニウム−マグネシウム錯体、のような有機アルミニウム−マグネシウム錯体、アルキルアルミニウム、又はアルキルアルミニウムクロリド等のいわゆるチーグラー型触媒、WO91/04257号公報等に記載のメタロセン化合物触媒等を使用することができる。
重合法としては、触媒成分と各モノマーが効率よく接触するならば、あらゆる様式の方法を採用することができる。具体的には、これらの触媒の存在下でのスラリー法、気相流動床法や溶液法、あるいは圧力が200kg/cm2以上、重合温度が100℃以上での高圧バルク重合法等の製造プロセスを適用して重合することができる。好ましい製造法としては高圧バルク重合や溶液法が挙げられる。
本発明で用いる(D)の具体例としては、例えば、エチレン・オクテン共重合体(EOR)等が挙げられる。本発明において、これら(D)は、1種類に限定されるものではなく、密度、MFRなどの異なる2種類以上の混合物の使用であっても良い。
本発明で用いる(D)として使用できる市販品を例示すれば、ダウケミカル日本社製エンゲージEGシリーズ・アフィニティーシリーズ、三井化学社製タフマーHシリーズなどを挙げることができる。
本発明において、(D)のMFR(230℃、荷重21.18N)は、0.5〜10g/10分、好ましくは1〜9g/10分、より好ましくは2〜7g/10分であることが必要である。MFRが0.5g/10分未満であると流動性不足となり、10g/10分を超えると衝撃性が低下する。MFRは、重合に際して水素など分子量調整剤、β水素引き抜きの速度制御などにより適宜調整することが可能である。
本発明においては、(D)のMFRが上記の範囲にあることにより、衝撃性を向上させることができ、外観や振動溶着強度を含めた良好なバランスの本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることができる。
5.フィラー(E)
本発明に用いるフィラー(E)は、フィラー(E)全体100重量%を基準として、ウィスカー状フィラー5〜100重量%と、タルク0〜95重量%からなるものである。
ここで(E)は、ウィスカー状フィラー10〜100重量%と、タルク0〜90重量%からなるものが好ましく、ウィスカー状フィラー15〜100重量%と、タルク0〜85重量%からなるものがより好ましく、ウィスカー状フィラー20〜100重量%と、タルク0〜80重量%からなるものがさらに好ましく、ウィスカー状フィラー30〜100重量%と、タルク0〜70重量%からなるものがとりわけ好ましい。
本発明においては、この(E)を使用することにより、剛性、耐衝撃性、外観および振動溶着強度のバランスを高度に発現し、絶対重量および剛性見合での軽量化も図れるシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることができる。
ここで、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の振動溶着強度が著しく向上する一因として、用いる(E)の分散状態が微細で均一になり易いため、振動溶着時における、振動溶着強度発現に不可欠な樹脂成分相互などの溶着領域が、(E)の多点・微細化などを通じて、増大することが挙げられる。このため、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物は、種々の用途による高度な振動溶着強度ニーズに応えることができる。
ここで、ウィスカー状フィラーは、その具体例として塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ケイ酸カルシウム繊維、炭酸カルシウム繊維、炭素繊維などが挙げられ、このなかで、塩基性硫酸マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、炭酸カルシウム繊維、極細炭素繊維が好ましく、塩基性硫酸マグネシウム繊維がとりわけ好ましい。
これらのウィスカー状フィラーの平均繊維直径は特に限定されないが、1μ以下のものが好ましい。
また、これらの平均繊維長さも、特に限定されないが、0.1μm〜100μmが好ましく、0.5μm〜50μmがより好ましく、1μm〜20μmがとりわけ好ましい。
これらのウィスカー状フィラーの製造方法は、特に限定されたものではなく、公知の各種製造方法等にて製造される。例えば、塩基性硫酸マグネシウム繊維の場合、水酸化マグネシウムと硫酸マグネシウムを原料に、水熱合成するなどの方法で製造する。
また、該ウィスカー状フィラーは一般には、微細粉状である場合が多いが、混合作業性を高めるなどの目的で製造された圧縮魂状、顆粒状に固めたものや造粒したものなどの形態のものを用いてもよい。
これらのウィスカー状フィラーは、前述の(A)、(B)との接着性あるいは分散性を向上させるなどの目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよい。
これらのウィスカー状フィラーを用いることで、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物において、剛性、耐衝撃性、外観、振動溶着強度のバランス向上に加え、絶対重量および剛性見合での軽量化、および線膨張係数のさらなる低減化(寸法安定性の向上)も図ることが出来る。
本発明で必要に応じて用いるタルクは、特に限定されないが、その平均粒径が1〜8μmのものが好ましく、とりわけ2〜6μmのものが好ましい。ここで、平均粒径は、レーザー回折散乱方式粒度分布計等を用いて測定した値であり、測定装置としては、例えば、堀場製作所LA−920型が挙げられる。また、その平均アスペクト比は4以上のものが好ましく、5以上のものがより好ましい。タルクのアスペクト比の測定は、顕微鏡等により測定された値より求められる。
タルクの製造方法は、特に限定されたものではなく、公知の各種製造方法等にて製造される。例えば、その原石を衝撃式粉砕機やミクロンミル型粉砕機で粉砕して製造したり、更にジェットミルなどで粉砕した後、サイクロンやミクロンセパレータ等で分級調整する等の方法で製造する。
該タルクは、一般には、粉状であるが、圧縮魂状、顆粒状等の形態のものを用いてもよい。
該タルクは、前述の(A)、(B)、後述の(F)との接着性あるいは分散性を向上させるなどの目的で、各種の有機チタネート系カップリング剤、有機シランカップリング剤、不飽和カルボン酸、またはその無水物をグラフトした変性ポリオレフィン、脂肪酸、脂肪酸金属塩、脂肪酸エステル等によって表面処理したものを用いてもよい。
該タルクを用いることで、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物において、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性、振動溶着強度のバランス向上を、線膨張係数の低減化(寸法安定性の向上)も含めて、より経済的に行うことが出来る。
なお、前述のウィスカー状フィラーやタルクは、各々二種以上併用してもよい。
6.プロピレン系重合体(F)
本発明で必要に応じて用いるプロピレン系重合体(F)は、全体のMFR(230℃、荷重21.18N)が、1g/10分以下、好ましくは0.8g/10分以下、より好ましくは0.6g/10分以下のプロピレン系重合体である。MFRが1g/10分を超えると、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の振動溶着強度や耐衝撃性が低下する傾向にある。
本発明において、(F)は、上記範囲のMFR値を有すること等により、振動溶着強度などをより向上させ、耐衝撃性などとのバランスに優れたシームレス自動車内装部品用樹脂組成物を得ることを可能とする。これらの効果は、前記の(A)および(B)との相乗で、高く発現される。
なお、(F)は二種以上併用してもよい。
プロピレン系重合体(F)としては、具体的には、プロピレン単独重合体およびプロピレン・α−オレフィン共重合体(ブロック共重合体およびランダム共重合体を含む)から選ばれる1種以上の結晶性ポリプロピレン、又は該結晶性ポリプロピレンとプロピレン以外のα−オレフィンの単独重合体若しくは共重合体との混合物が挙げられる。
なかでも、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の振動溶着強度と耐衝撃性のバランスなどから、プロピレン・エチレンブロック共重合体、プロピレン単独重合体が好ましく、プロピレン・エチレンブロック共重合体がより好ましい。
プロピレン・エチレンブロック共重合体の場合、そのプロピレン・エチレンランダム共重合体成分が10重量%以下のものが好ましく、2〜8重量%のものがより好ましい。さらに、そのプロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量は50重量%以上のものが好ましく、70重量%以上のものがより好ましい。
プロピレン・エチレンランダム共重合体成分が10重量%を超えると、本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の剛性が低下する傾向にあり、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量が50重量%未満の場合、耐衝撃性が低下する傾向にある。
ここで、エチレンランダム共重合体成分の比率やエチレン含有量は、前述の(A)および(B)と同一の測定方法による値である。
(F)は、高立体規則性触媒を用いて重合する方法が好ましく用いられて製造される。具体的な重合方法、触媒、重合形式、重合用反応器は、前述の(A)および(B)を製造する場合と同様の方式が採用できる。すなわち、重合方法としては、チーグラー・ナッタ触媒、メタロセン触媒等の、従来公知のポリプロピレン用の重合触媒の存在下、水素等のMFR調整剤の存在下または非存在下で、気相重合法、液相塊状重合法、スラリー重合法、またはこれらを組み合わせた方法等の製造プロセスを適用して、プロピレンを単独重合またはプロピレンとコモノマーとを共重合することにより得られる。
7.構成成分の配合比率
本発明においては、組成物を構成する成分(A)〜(E)の配合割合は、(A)〜(E)の合計量100重量%を基準として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)が10〜50重量%、好ましくは15〜45重量%、より好ましくは20〜40重量%、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)が25〜55重量%、好ましくは30〜52重量%、より好ましくは34〜50重量%、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)が5〜15重量%、好ましくは6〜13重量%、より好ましくは7〜11重量%、エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)が3〜10重量%、好ましくは4〜9重量%、より好ましくは5〜8重量%、フィラー(E)が5〜20重量%、好ましくは8〜18重量%、より好ましくは10〜17重量%である(ただし(A)〜(E)の合計量は100重量%である。)。
ここで、フィラー(E)は、フィラー(E)全体100重量%を基準として、ウィスカー状フィラー5〜100重量%と、タルク0〜95重量%からなるものである。
また、必要に応じて、プロピレン系重合体(F)を配合する場合は、プロピレン系重合体(F)が、1〜25重量%、好ましくは3〜15重量%、より好ましくは5〜10重量%である(ただし(A)〜(F)の合計量は100重量%である。)。
上記した成分(A)〜(F)の配合割合の臨界的な意義は以下のとおりである。
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の割合が10重量%未満であるとシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の流動性が低下し、50重量%を超えると振動溶着強度が低下する。
(2)プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の割合が25重量%未満であると振動溶着強度が低下し、55重量%を超えると流動性が低下する。
(3)エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)の割合が5重量%未満であると、外観や衝撃性が悪化し、15重量%を超えると流動性が低下する。
(4)エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)の割合が3重量%未満であると衝撃性が低下し、10重量%を超えると流動性が低下する。
(5)フィラー(E)の割合が5重量%未満であると剛性が低下し、20重量%を超えると振動溶着強度や外観が低下する。
(6)ウィスカー状フィラーが(E)全体の5重量%未満であると振動溶着強度および剛性が低下する。
(7)プロピレン系重合体(F)の割合が1重量%未満であると振動溶着強度が低下する傾向があり、25重量%を超えると流動性や成形品外観が低下する傾向がある。
本発明者らの検討では、溶着部品の剥離試験においてマトリックスである樹脂成分(主に結晶性ポリプロピレン成分)とフィラーとの界面から破壊が生じていることを確認した。そして、フィラーの量が多いと破壊の起点が多くなるため、振動溶着強度が低下すると推定された。そのため、本発明では、破壊の起点数を臨界値以下にすることを念頭に、フィラー配合の本来の目的である剛性、耐熱性等の付与効果に加え、振動溶着強度の著しい向上、さらに軽量化や寸法安定性の向上を発揮するような量として、上記配合割合を定めた。
8.その他の添加剤
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて、本発明の効果を著しく損なわない範囲で、たとえば所期の効果をさらに向上させたり、他の効果を付与するなどのため、酸化防止剤(フェノール系、イオウ系、燐系、ラクトン系、ビタミン系など)、熱安定剤、紫外線吸収剤(ベンゾトリアゾール系、トリジアミン系、アニリド系、ベンゾフェノン系など)、光安定剤(ヒンダードアミン系、ベンゾエート系など)、帯電防止剤、造核剤、顔料、吸着剤(金属酸化物(酸化亜鉛、酸化マグネシウム等)、金属塩化物(塩化鉄、塩化カルシウム等)、ハイドロタルサイト、アルミン酸塩等)、滑剤(金属石鹸、脂肪酸アミド、シリコーンオイル、シリコーンガム等)、前述の(A)〜(F)以外のポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミドやポリエステルなどの熱可塑性樹脂、フィラー、共重合体ゴム(エラストマー)などを配合してもよい。これらの成分は、二種以上併用してもよく、組成物に添加してもよいし、各成分に添加されていてもよく、それぞれの成分においても二種以上併用してもよい。
9.シームレス自動車内装部品用樹脂組成物の製造
本発明のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物の製造は、上記の各構成成分を、上記の割合で、混合又は、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等通常の混練機を用いて、例えば樹脂温度180℃〜250℃にて混練することにより製造できる。これらの混練機の中でも、押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
各成分の混合・混練は、同時に行ってもよく、また分割して行ってもよい。分割添加の方法として、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびプロピレンエチ・レンブロック共重合体(B)とフィラー(E)とを混練した後、エチレンとα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)、(D)を添加する方法、予め(A)、(B)および(F)と(E)とを、(E)の濃度を高濃度に混練してマスターバッチとし、それを別途(A)および(B)や(C)、(D)等で希釈しながら混練する方法や、予め(A)および(B)と(E)、(A)および(B)と(C)、(D)とをそれぞれ混練しておき、最後にすべてをあわせて混練する方法等があり、また同様の方法で成形することもできる。
10.シームレス自動車内装部品の製造
上記の方法で得られた樹脂組成物は、成形加工性の面から、MFRが6〜20g/10分であることが好ましく、8〜18g/10分であることがより好ましい。そして、本発明の樹脂組成物は、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性に優れ、振動溶着強度が高いので、シームレス自動車内装部品とりわけシームレスインストルメントパネル用に好適である。シームレス自動車内装部品、例えばシームレスインストルメントパネルの製造には、本発明の樹脂組成物を公知の方法、例えば射出成形法、射出圧縮成形法などを用いることができる。
得られたシームレス自動車内装部品部、例えばインストルメントパネル部とエアバッグカバー部とは、一体的に成形できるので、シームレスインストルメントパネルとなる。
そして、その際、シームレス自動車内装部品、例えばシームレスインストルメントパネルと、エアバッグキットを振動溶着により固定したときの振動溶着強度(最大点荷重)は、実用上の観点から、60N以上であることが好ましく、80N以上であることがより好ましく、100N以上であることがさらに好ましく、120N以上であることがとりわけ好ましい。
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に制約されるものではない。なお、実施例で用いた測定方法や、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)、エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)、フィラー(E)、プロピレン系重合体(F)等の材料は以下の通りである。
1.測定方法
(1)MFR:JIS−K7210に準拠して、温度230℃、荷重21.18Nで測定した。
(2)密度:JIS−K7112に準拠して測定した。
(3)振動溶着強度(最大点荷重):120×15×2mmの試験片と、三菱化学製サーモランを用いて別に成形した120×15×2mmの試験片とを重ね合わせ、30×15mmにわたって重ね合わせ、振動溶着をおこなった。
ここで、振動溶着は、ブランソン社製2800J−DCを使用し、周波数240Hz、振幅1.5mm、溶着時間5秒、溶着厚0.5mm、溶着圧力4.8MPaの条件で行った。 振動溶着強度(最大点荷重)の測定は、振動溶着サンプルの溶着面を剥がす様に引張り、その際の最大点荷重を振動溶着強度とした。引張試験はチャック間距離60mm、引張速度20mm/分で行った。この振動溶着強度(最大点荷重)の単位はNである。
(4)曲げ弾性率:厚さ4mmの試験片を用いて、JIS−K7171に準拠して測定した。試験温度は23℃とした。
(5)IZOD衝撃強度:厚さ4mmの試験片を用いて、JIS−K7110に準拠して測定した。試験温度は23℃とした。
(6)外観:短辺に幅2mmのフィルムゲートをもつ金型を用いて射出成形(成形温度220℃)した350mm×100mm×2mmの成形シートにおけるフローマークの発生を目視で観察し、ゲートからフローマークが発生した部分までの距離を測定し、下記の基準で判定した。
○:フローマークがゲートから200mm以上
×:フローマークがゲートから200mm未満
2.材料類
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、(B)
A1:MFRh120g/10分、Cv30重量%、Gv35重量%、[η]3.2dl/g、MFR30g/10分
B1:MFRh19g/10分、Cv9重量%、Gv45重量%、[η]8.2dl/g、MFR9g/10分
ここで、MFRhは結晶性ポリプロピレン成分のMFR、Cvはプロピレン・エチレンランダム共重合体成分の割合、Gvはプロピレン・エチレンランダム共重合体成分中のエチレン含有量、[η]はプロピレン・エチレンランダム共重合体成分の固有粘度、MFRはプロピレン・エチレンブロック共重合体全体のMFRを表す。
(2)エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)
C1:三井化学社製エチレン・ブテン共重合体ゴム(MFR2g/10分)
(3)エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)
D1:ダウケミカル日本社製エチレン・オクテン共重合体ゴム(MFR2g/10分)
(4)フィラー(E)
E1:宇部マテリアルズ社製塩基性硫酸マグネシウム繊維(平均繊維直径=0.5μm、平均繊維長さ=10μm、真比重=2.3)(ウィスカー状のものを顆粒状に固めたもの)
E2:前述のE1=75重量%と、後述のE4=25重量%からなるもの
E3:前述のE1=50重量%と、後述のE4=50重量%からなるもの
E4:富士タルク工業社製微粉タルク(平均粒径5.2μm、平均アスペクト比6)
(5)プロピレン系重合体(F)
F1:プロピレン・エチレンブロック共重合体(全体のMFRが0.5g/10分、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分の比率が7重量%、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分のエチレン含有量が80重量%)
[実施例1]
表1に示す通りプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)A1 31重量%、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)B1 40重量%、エチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)C1 8重量%、エチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)D1 5重量%、フィラー(E)E1 16重量%を配合して、ヘンシェルミキサーで3分間混合した後、二軸混練機(神戸製鋼所社製:2FCM)にて210℃の設定温度で混練造粒することにより樹脂組成物を得た。
その後、型締め圧100トンの射出成形機にて成形温度210℃で各種試験片を作成し、この成形体について、前述した各種測定法に従って測定を行った。評価結果を表1に示す。
[実施例2〜4、比較例1〜2]
前述材料を表1に示す組成の割合で配合し、実施例1と同様にして、樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物について実施例1と同様の物性評価を行った。評価結果を表1に示す。
Figure 0005238639
表1からわかるように、実施例1〜4では、得られた樹脂組成物のすべては、成形加工性、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性に優れ、かつ振動溶着特性に優れていた。
一方、比較例1〜2では、得られた樹脂組成物は、本発明の要件の少なくとも一部を欠如し、実施例の場合に較べて、上記した特性の一部が劣っていた。比較例1は、フィラーとしてタルクのみを用いた例であるが、振動溶着強度および剛性が劣っている。比較例2は、プロピレン・エチレンブロック共重合体としてA1のみを用いた例であるが、やはり振動溶着強度が劣っている。プロピレン・エチレンブロック共重合体として(A)、(B)に(必要に応じさらに(F)に)該当する樹脂を併用し、かつフィラーとしてウィスカー状フィラーを必須とすることの重要性が認められる一例である。
以上から明らかなように、本発明によれば、剛性、耐衝撃性、外観、軽量性に優れ、かつエアバックキットとの振動溶着特性に優れるため、エアバッグシステムをシームレスに備えることのできる、エアバッグ作動時に確実に展開可能なシームレス自動車内装部品用例えばシームレスインストルメントパネル用の樹脂組成物、およびそれから得られるシームレス自動車内装部品例えばシームレスインストルメントパネルを提供することができ、産業上の有用性は極めて高い。

Claims (7)

  1. メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が50〜130g/10分の結晶性ポリプロピレン成分50〜85重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分15〜50重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が5〜45g/10分の結晶性ポリプロピレン成分70〜95重量%とプロピレン・エチレンランダム共重合体成分5〜30重量%とからなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.5〜10g/10分のエチレンと炭素数3〜6のα−オレフィンとの共重合体ゴム(C)、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が0.5〜10g/10分のエチレンと炭素数7〜18のα−オレフィンとの共重合体ゴム(D)およびフィラー(E)からなるシームレス自動車内装部品用樹脂組成物であって、
    各成分の含有割合は、(A)が10〜50重量%、(B)が25〜55重量%、(C)が5〜15重量%、(D)が3〜10重量%、(E)が5〜20重量%(ただし(A)〜(E)の合計量は100重量%である。)であり、かつ、フィラー(E)は、フィラー(E)全量に対して5〜100重量%のウィスカー状フィラーと、0〜95重量%のタルクとからなる、ことを特徴とするシームレス自動車内装部品用樹脂組成物。
  2. さらに、メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が1g/10分以下のプロピレン系重合体(F)を、1〜25重量%(ただし(A)〜(F)の合計量は100重量%である。)含有することを特徴とする、請求項1に記載のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物。
  3. シームレス自動車内装部品とエアバッグキットを振動溶着により固定したときの振動溶着強度(最大点荷重)が、60N以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物。
  4. メルトフローレート(230℃、荷重21.18N)が6〜20g/10分であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物。
  5. シームレス自動車内装部品がシームレスインストルメントパネルであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載のシームレス自動車内装部品用樹脂組成物。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の樹脂組成物を成形してなるシームレス自動車内装部品。
  7. 請求項5に記載の樹脂組成物を成形してなるシームレスインストルメントパネル。
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