JP2017019975A - ポリプロピレン系樹脂組成物および射出成形体 - Google Patents

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ゆり恵 久米田
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Abstract

【課題】自動車内外装材などに用いられる成形体において、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、成形収縮率異方性が小さい射出成形体を与えるポリプロピレン系樹脂組成物、及びそれを用いて得られる射出成形体を提供すること。
【解決手段】プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)[室温デカン可溶部量5-15質量%,室温デカン可溶部のη1.0-5.0dl/g,MFR1-20g/10分]5-30質量部]、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)[室温デカン可溶部量5-15質量%,室温デカン可溶部のη5.0-10.0dl/g,MFR21-150g/10分]30-80質量部、エチレン・α−オレフィン(C4-8)共重合体(C)[MFR0.3-40g/10分]3-20質量部、板状フィラー(D)10-25質量部、及び繊維状フィラー(E)1質量部超え5質量部未満[但し(A)-(E)の合計100質量部]を含有するポリプロピレン系樹脂組成物;及びこの樹脂組成物から得られる射出成形体。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物およびこの樹脂組成物から得られる射出成形体に関する。更に詳しくは、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、成形収縮率異方性が小さい射出成形体を与えるポリプロピレン系樹脂組成物およびこの樹脂組成物から得られる射出成形体に関する。
ポリプロピレン樹脂組成物を射出成形することにより得られる成形体は、その優れた機械物性や成形性、そして他材料に比べて相対的に有利なコストパーフォーマンス等が後押しして、自動車部品や家電部品など様々な分野での利用が進んでいる。
しかし、近年はポリプロピレン系樹脂組成物の用途がますます拡大化しており、用途によっては既存のポリプロピレン系樹脂組成物では剛性と耐衝撃性がいまだ不十分である場合があった。そこで、無機フィラーとして繊維状のものを使用することによって、剛性と特に面衝撃試験から得られる面衝撃エネルギーを高めてタフネス(靱性)を発現させるための手法がいくつか開示されているが(例えば特許文献1〜3)、安全性を極限にまで求められる自動車産業界ではその貪欲な改善欲求はとどまることを知らない。
また、特に大型の成形体にしばしば見られる変形やそり等の発生を抑制するための有効な解決策がいまだ開発されていない。大型成形体の変形やそり現象は成形収縮率の異方性が原因であることが分かってきているが、この点の更なる改良が産業界から求められている。
特開2011−214002号公報 特開平10−265630号公報 特開2008−208304号公報
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものであって、例えば自動車内外装材などに用いられる成形体において、剛性と耐衝撃性のバランスに優れ、成形収縮率異方性が小さい射出成形体を与えるポリプロピレン系樹脂組成物、およびこの樹脂組成物から得られる射出成形体を提供することを目的としている。
本発明者は、かかる実情に鑑み鋭意検討した結果、特定のポリプロピレン系樹脂組成物が前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明の要旨は次の通りである。
[1]下記成分(A)を5〜30質量部、下記成分(B)を30〜80質量部、下記成分(C)を3〜20質量部、下記成分(D)を10〜25質量部、および下記成分(E)を1質量部を超え5質量部未満[但し成分(A)〜(E)の合計を100質量部とする]含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
(A)下記要件(a1)〜(a3)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体:
(a1)室温デカン可溶部量が5〜15質量%
(a2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が1.0〜5.0dl/g
(a3)MFR(230℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分、
(B)下記要件(b1)〜(b3)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体:
(b1)室温デカン可溶部量が5〜15質量%
(b2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が5.0〜10.0dl/g
(b3)MFR(230℃、2.16kg荷重)が21〜150g/10分、
(C)MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.3〜40g/10分であるエチレン・α−オレフィン共重合体(但しα−オレフィンの炭素原子数は4〜8である)、
(D)板状フィラー、および
(E)繊維状フィラー
[2]板状フィラー(D)がタルクであり、該タルクのレーザー回折法で測定した平均粒子径が1〜10μmの範囲にある前記[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[3]繊維状フィラー(E)が塩基性硫酸マグネシウム無機繊維であり、該塩基性硫酸マグネシウム無機繊維の平均繊維直径が0.5〜1.0μmの範囲にあり、平均アスペクト比が5〜50の範囲にある前記[1]または[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[4]さらに核剤(Y)を、成分(A)〜(E)の合計100質量部に対して0.05〜0.5質量部含む前記[1]〜[3]の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[5]ポリプロピレン系樹脂組成物のMFR(230℃、2.16kg荷重)が25〜50g/10分である前記[1]〜[4]の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[6]水中置換法により測定される比重(ASTM D1505)が1.05以下である前記[1]〜[5]の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[7]前記[1]〜[6]の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物から得られる射出成形体。
[8]自動車内外装材である前記[7]に記載の射出成形体。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、射出成形性に優れ、成形収縮率異方性が小さいと共に、剛性および低温下における面衝撃性などの機械的特性に優れた成形体を製造することができ、例えば自動車内外装用部品用途に特に好適に用いることができ、かつ経済的である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、以下に説明する特定のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)、板状フィラー(D)、および繊維状フィラー(E)を含有する組成物である。
[プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、下記要件(a1)〜(a3)を満たす。
(a1)室温デカン可溶部量が5〜15質量%
(a2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が1.0〜5.0dl/g
(a3)MFR(230℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分
上記要件(a1)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の室温デカン可溶部量が5質量%未満では、成形体の耐衝撃性が不十分となったり、またフローマークの開始点が短くなり成形体外観が悪くなる場合がある。一方、15質量%を超えると、樹脂流動性が低下し成形性が悪くなる場合がある。さらに、室温デカン可溶部量は好ましくは7〜14質量%、より好ましくは8〜13質量%である。その具体的な測定条件は実施例の欄に記載する。
上記要件(a2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の室温デカン可溶部の極限粘度[η]が1.0dl/g未満では、成形体の目標とする耐衝撃性を得ることができない場合がある。一方、5.0dl/gを超えると、樹脂流動性の低下や混練時に他の樹脂と混ざり難くなるため、成形体にてブツが発生して外観が悪化する、或いは機械物性を低下させる可能性がある。さらに、極限粘度[η]は好ましくは2.0〜5.0dl/g、より好ましくは2.5〜4.5dl/gである。その具体的な測定条件は実施例の欄に記載する。
上記要件(a3)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)が1g/10分未満では、樹脂流動性が低下し成形がし難くなる。一方、20g/10分を超えると、成形体の耐衝撃性が低下する場合がある。さらに、MFRは好ましくは3〜15g/10分、より好ましくは5〜15g/10分である。このMFRはISO 1133に準拠し、荷重2.16kg、温度230℃の条件で測定した値である。
上記要件(a1)〜(a3)に加えて、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の室温デカン可溶部のエチレン含量は、好ましくは35〜50モル%、より好ましくは36〜46モル%である。このエチレン含量が35モル%以上であれば、成形体光沢が上昇し過ぎない傾向にある。一方、50モル%以下であれば、共存するエチレン・α−オレフィン共重合体(C)の如きゴムの分散性を担保でき、成形体表面にブツが発生し難くなる傾向にある。その具体的な測定条件は実施例の欄に記載する。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。例えば2種のプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)を併用することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRを調整することもできる。
[プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、下記要件(b1)〜(b3)を満たす。
(b1)室温デカン可溶部量が5〜15質量%
(b2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が5.0〜10.0dl/g
(b3)MFR(230℃、2.16kg荷重)が21〜150g/10分
上記要件(b1)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の室温デカン可溶部量が5質量%未満では、成形体の耐衝撃性が低下する。一方、15質量%を超えると、引張弾性率が低下する場合がある。さらに、室温デカン可溶部量は好ましくは7〜12質量%である。
上記要件(b2)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の室温デカン可溶部の極限粘度[η]が5.0dl/g未満では、フローマーク開始点が短くなり、成形体外観が悪くなり、また光沢性も高くなる。一方、10.0dl/gを超えると、樹脂流動性が低下したり、混練時に他の樹脂と混ざり難くなり、成形体にブツが生じて外観が悪くなる場合がある。さらに、極限粘度[η]は好ましくは6.5〜8.5dl/gである。
上記要件(b3)について、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)のMFRが21g/10分未満では、樹脂流動性が低下し成形し難くなる。一方、150g/10分を超えると、成形体の耐衝撃性が低下する。さらに、MFRは好ましくは21〜120g/10分、より好ましくは50〜120g/10分である。
上記要件(b1)〜(b3)に加えて、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の室温デカン可溶部のエチレン含量は、好ましくは20〜40モル%、より好ましくは25〜40モル%である。このエチレン含量が20モル%以上であれば、成形体光沢が上昇し過ぎない傾向にある。一方、50モル%以下であれば、成形体の耐衝撃性が低下し難くなる傾向にある。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)は、1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。例えば2種のプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)を併用することにより、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRを調整することもできる。
なお、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、以上説明したプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)と共に、プロピレン単独重合体(X)を含有してもよい。プロピレン単独重合体(X)は、実質的にプロピレンのみを重合したポリマーであれば良く、例えばプロピレンのみを重合したホモポリマー、あるいは、プロピレンと6モル%以下、好ましくは3モル%以下のα−オレフィンとを共重合した結晶性のポリマーが挙げられる。中でも、プロピレンのみを重合したホモポリマーが好ましい。プロピレン単独重合体(X)の含有量は、成分(A)〜(E)の合計100質量部に対して、好ましくは10質量部以下である。
以上説明したプロピレン・エチレンブロック共重合体(A)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)およびプロピレン単独重合体(X)は、従来公知の重合方法により得ることができる。例えば国際公開第2012/102050号に開示されているように、固体状チタン触媒成分(I)と有機金属化合物触媒成分(II)とを含むオレフィン重合用触媒存在下に、プロピレンを重合(前段重合)し、次いでプロピレンとエチレンを共重合(後段重合)させる方法によってブロック共重合体を製造することができ、またプロピレン単独またはプロピレンを主とするモノマー類を重合することによってプロピレン単独重合体を製造することができる。ただし本発明においては、成分(A)、(B)および(X)として、市場から入手できる市販品を用いることを何ら制限するものではない。
プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)およびプロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の各種の物理性状パラメーター、例えばMFR、室温デカン可溶部量(通常、ブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合体量と同義である)、室温デカン可溶部の極限粘度[η]などは、当業者にとって公知の重合反応因子、例えば前段と後段の重合温度、重合時間、水素ガスの共存量、固体状チタン触媒成分を調製するための各種原料種の変更等によって容易に制御できる。
[エチレン・α−オレフィン共重合体(C)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有されるエチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、エチレンと炭素原子数4〜8のα−オレフィンとの共重合体であり、そのMFR(230℃、2.16kg荷重)は0.3〜40g/10分である。このエチレン・α−オレフィン共重合体(C)は、組成物中においてゴム成分として機能する重合体であることが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)のMFRが0.3g/10分未満では、樹脂流動性の低下や混練時の分散不良が起こり易く、成形体の耐衝撃性等の物性の低下や表面外観の悪化に繋がる場合がある。一方、40g/10分を超えると、十分な耐衝撃性を有さない場合がある。さらに、MFRは好ましくは1〜35g/10分、より好ましくは1.5〜30g/10分である。
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)を構成する炭素原子数4〜8のα−オレフィンとしては、1−ブテン、1−へキセン、1−オクテン等が好ましい。α−オレフィンは1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、1−オクテン、1−ブテンが特に好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の密度は、好ましくは850〜890kg/m、より好ましくは850〜880kg/m、特に好ましくは855〜875kg/mである。
[板状フィラー(D)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有される板状フィラー(D)は、通常、鱗片状の形状を有するフィラーであり、その面長と厚さの比(面長/厚さ)は100/1以上が好ましい。板状フィラー(D)の具体例としては、タルク、マイカ、ガラスフレーク等が挙げられる。中でも、タルクが好ましい。
板状フィラー(D)としてタルクを用いる場合、その平均粒子径は、通常1〜10μm、好ましくは3〜5μmである。このタルクの平均粒子径は、JIS R1620およびJIS R1622に準拠してレーザー回折法によって測定した粒度累積曲線から読み取った累積量50質量%の粒径値である。タルクは無処理のまま使用しても良く、あるいは、ポリプロピレン系樹脂との界面接着性を向上させ、ポリプロピレン系樹脂に対する分散性を向上させるために、公知のシランカップリング剤、チタンカップリング剤や界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。界面活性剤としては、例えば、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類等が挙げられる。
[繊維状フィラー(E)]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に含有される繊維状フィラー(E)は、繊維状の形状を有するフィラーである。特に、繊維状フィラー(E)の長径と短径の比(長径/短径)が2以上であることが、剛性改良の観点から好ましい。繊維状フィラー(E)の具体例としては、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、ワラストナイト、ウイスカー、ゾノトライト等が挙げられる。中でも、塩基性硫酸マグネシウム繊維、ワラストナイトが好ましい。
繊維状フィラー(E)として塩基性硫酸マグネシウム繊維を用いる場合は、例えば、原料として硫酸マグネシウムと水酸化マグネシウムまたは酸化マグネシウムを用いて、水熱合成により得た繊維が絡み凝集した状態である塩基性硫酸マグネシウムのスラリーを、せん断効果の高い分散装置を使用して湿式で処理し、繊維が絡み凝集した状態である塩基性硫酸マグネシウム繊維を解繊して分散すると同時に20μm以上の繊維を折損させて平均繊維長を7〜12μmに調整した後、濾過、脱水、乾燥して得られる塩基性硫酸マグネシウム繊維などを好適に使用できる。
塩基性硫酸マグネシウムのSEM(走査型電子顕微鏡)採寸によって求められる平均繊維直径は好ましくは0.1〜1.0μm、より好ましくは0.5〜1.0μmであり、平均アスペクト比は好ましくは5〜50である。また、塩基性硫酸マグネシウム繊維の一次繊維に含まれる繊維の平均繊維長は、好ましくは7〜12μmである。モンタン蝋等により表面が処理された塩基性硫酸マグネシウム繊維を用いることも可能である。
塩基性硫酸マグネシウム繊維の製造方法は特に限定されない。例えば、特開2003−73524号公報に開示された方法により製造しても良いし、市販品をそのまま使用しても良い。好適な市販品としては、例えば、宇部マテリアルズ社から販売されている「モスハイジ」(登録商標)がある。
[その他の任意成分]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて核剤(Y)を含有してもよい。この核剤(Y)は、例えば、ポリプロピレン系樹脂組成物およびその成形体のさらなる寸法安定性の向上(線膨張係数の低減)や衝撃強度の向上などの目的で用いられる。核剤(Y)の具体例としては、下記化学構造式(1)で表される化合物や、無機系、ソルビトール系、カルボン酸金属塩系や有機リン酸塩系などの各種の核剤が挙げられる。
Figure 2017019975
[式(1)中、nは0〜2の整数であり、R〜Rは互いに同一または異なっていても良く、水素原子もしくは炭素原子数が1〜20のアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、カルボニル基、ハロゲン基またはフェニル基であり、Rは炭素原子数が1〜20のアルキル基である。]
また無機系核剤としては、例えばシリカ等が挙げられる。ソルビトール系核剤としては、例えば1,3,2,4−ジベンジリデン−ソルビトール、1,3,2,4−ジ−(p−メチル−ベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ−(p−エチル−ベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ−(2',4'−ジ−メチル−ベンジリデン)ソルビトール、1,3−p−クロロベンジリデン−2,4−p−メチル−ベンジリデン−ソルビトール、1,3,2,4−ジ−(p−プロピルベンジリデン)ソルビトール等が挙げられる。カルボン酸金属塩系核剤としては、例えばアルミニウム−モノ−ヒドロキシ−ジ−p−t−ブチルベンゾエート、安息香酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム等が挙げられる。有機リン酸塩系核剤としては、例えばソジウムビス(4−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ソジウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2'−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート等が挙げられる。核剤(Y)は1種を単独で使用しても良いし、2種以上を併用しても良い。
核剤(Y)の含有量は特に限定されないが、成分(A)〜(E)の合計100質量部に対して、通常は0.05〜0.5質量部、好ましくは0.1〜0.4質量部である。
[ポリプロピレン系樹脂組成物]
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)5〜30質量部、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)30〜80質量部、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)3〜20質量部、板状フィラー(D)10〜25質量部、および繊維状フィラー(E)1質量部超え5質量部未満[但し成分(A)〜(E)の合計を100質量部とする]を含有する。
さらに、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)の含有量は好ましくは10〜25質量部、より好ましくは10〜20質量部であり、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)の含有量は好ましくは40〜75質量部、より好ましくは40〜60質量部であり、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の含有量は好ましくは8〜20質量部、より好ましくは10〜15質量部であり、板状フィラー(D)の含有量は好ましくは10〜23質量部、より好ましくは12〜20質量部であり、繊維状フィラー(E)の含有量は好ましくは2〜4質量部である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、上述した各成分(A)〜(E)、および必要に応じて成分(X)や成分(Y)などの任意成分を配合することにより製造できる。各成分は、任意の順番で逐次配合しても良いし、同時に混合しても良い。また、一部の成分を混合した後に他の成分を混合するような多段階の混合方法を採用してもよい。具体的には、例えば、ポリプロピレン系樹脂組成物中の樹脂成分(有機化合物成分)である成分(A)〜(C)および必要に応じて成分(X)を最初に配合した後、次いで成分(D)〜(E)および必要に応じて成分(Y)を添加して配合することによっても製造できる。
各成分の配合方法としては、例えば、バンバリーミキサー、単軸押出機、2軸押出機、高速2軸押出機などの混合装置を用いて、各成分を同時にあるいは逐次に混合または溶融混練する方法が挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のMFR(230℃、2.16kg荷重)は、成形性の観点から、好ましくは25〜50g/10分、より好ましくは26〜40g/10分である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の水中置換法により測定される比重は、通常は1.05以下、好ましくは1.04以下、より好ましくは1.04未満である。自動車の燃費性能は消費者が最も注目する性能項目の一つであり、自動車内外装材についてもこのような低い比重を自動車メーカーから求められる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物中のゴム成分としては、例えば、プロピレン・エチレンブロック共重合体(A)中の室温デカン可溶成分(この成分は、通常、プロピレン・エチレンランダム共重合体成分と同義である)、プロピレン・エチレンブロック共重合体(B)中の室温デカン可溶成分、エチレン・α−オレフィン共重合体(C)の三成分が挙げられる。これらゴム成分の合計量がポリプロピレン系樹脂組成物100質量%中に占める割合は、好ましくは16〜23質量%、より好ましくは17〜22質量%、特に好ましくは18〜21質量%である。ゴム成分量がこの範囲に納まることによって、ポリプロピレン系樹脂組成物の射出成形性が優れ、成形体の成形収縮率異方性を示さないと共に、剛性および低温下における面衝撃性などの機械的特性が優れるという効果がより顕著になる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の成形法は特に限定されず、樹脂組成物の成形法として公知の様々な方法を用いることができる。特に、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形体は、温度変化による寸法変化が小さく寸法安定性に優れている。その成形法としては、特に射出成形が好ましい。
[射出成形体]
本発明の射出成形体は、以上説明した本発明のポリプロピレン系樹脂組成物から得られる射出成形体である。例えば自動車内外装材として用いる場合は、次のような物理特性を満たす射出成形体であることが好ましい。
射出成形体の曲げ弾性率(23℃)は、通常は2500MPa以上、好ましくは2600MPa以上、より好ましくは2700MPa以上である。曲げ弾性率の具体的な測定条件は実施例の欄に記載する。
射出成形体のアイゾット衝撃強さ(23℃)は、通常は9kJ/m以上、好ましくは10kJ/m以上である。アイゾット衝撃強さの具体的な測定条件は実施例の欄に記載する。
射出成形時の成形収縮率は、異方性を持たないことが望ましい。具体的には、次の式(1)で定義される収縮率異方性が、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下である。収縮率異方性の具体的な測定条件は実施例の欄に記載する。
Figure 2017019975
射出成形体の面衝撃試験(HRIT)における面衝撃エネルギー(23℃、ISO 6603−2)は、好ましくは25J以上、より好ましくは30J以上である。面衝撃エネルギーの具体的な測定条件は実施例の欄に記載する。
本発明の射出成形体は、例えば、自動車内外装部品、家電部品などの種々の分野に好適に用いることができる。これらの用途の中では自動車内外装部材が好ましい。自動車内外装部材としては、例えば、ドアトリム、サイドモール、フェンダー、オーバーフェンダー、サイドシルガーニッシュ、バンパースカート、スポイラー、マッドガード、インナーパネル、ピラー、インストルメンタルパネル、バックドア、バックパネルおよびバンパー等が挙げられる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例および比較例において、各物性の測定および評価は以下の方法により行った。
[極限粘度[η]]
サンプル約20mgをデカリン15mlに溶解し、135℃のオイルバス中で比粘度ηspを測定した。このデカリン溶液にデカリン溶媒を5ml追加して希釈後、同様にして比粘度ηspを測定した。この希釈操作をさらに2回繰り返し、濃度(C)を0に外挿した時のηsp/Cの値を極限粘度[η]として求めた。
[η]=lim(ηsp/C) (C→0)
[室温デカン可溶部量(Dsol)および不溶部量(Dinsol)]
ガラス製の測定容器に試料(プロピレン・エチレンブロック共重合体)約3g(10-4gの単位まで測定した。また、この質量を下式においてy(g)と表した。)、n−デカン500ml、およびn−デカンに可溶な耐熱安定剤を少量装入し、窒素雰囲気下、スターラーで攪拌しながら2時間で150℃に昇温して試料を溶解させ、150℃で2時間保持した後、8時間かけて23℃まで徐冷した。得られた析出物を含む液を、磐田ガラス社製25G−4規格のグラスフィルターで減圧ろ過した。ろ液の100mlを採取し、これを減圧乾燥してデカン可溶成分の一部を得、この質量を10-4gの単位まで測定した(この質量を下式においてx(g)と表した)。この測定値を用いて、室温(すなわち23℃)におけるデカン可溶部量(Dsol)および不溶部量(Dinsol)を下記式によって決定した。
sol(質量%)=100×(500×x)/(100×y)
insol(質量%)=100−Dsol
[室温デカン可溶部のエチレン含量]
フーリエ変換赤外線分光法(FT−IR)により測定した。
[成分(D)の平均粒径、成分(E)の平均繊維径および平均アスペクト比]
成分(D)の平均粒径は、JIS R1620およびJIS R1622に準拠してレーザー回折法によって測定した粒度累積曲線から読み取った累積量50質量%の粒径値である。また、成分(E)の平均繊維径および平均アスペクト比はSEM(走査型電子顕微鏡)採寸によって求めた。
[MFR(メルトフローレート)]
ISO 1133に準拠し、荷重2.16kg、温度230℃の条件で測定した。
[比重]
水中置換法によりJIS K7112(1999)に準拠し、温度23℃で測定した。
[曲げ強度、曲げ弾性率]
ISO 178に準拠して以下の条件で測定した。
温度:23℃
試験片:10mm(幅)×4mm(厚さ)×80mm(長さ)
曲げ速度:2mm/min
スパン間:64mm
[シャルピー衝撃強さ]
ISO 179に準拠し、ノッチ付、ハンマー容量4J、温度23℃の条件で測定した。
[アイゾット衝撃強さ]
JIS K7110(1999)に準拠して、試験片の厚み3.2mm、温度−30℃および23℃の条件で、射出成型の後にノッチ加工されたノッチ付きのアイゾット衝撃強さ(kJ/m)を測定した。
[面衝撃エネルギー]
ISO 6603−2に準拠して、高速面衝撃試験(HRIT)における面衝撃エネルギー(23℃)を次のように測定した。まず、レオメトリックス社(米国)製、High Rate Impact Tester(RIT−8000型)を用い射出成形された120×130×3(mm)の平板試験片を2インチの円形保持具で固定し、直径1/2インチ(先端球面の半径1/4インチ)のインパクトプローブを用い、このインパクトプローブを速度5m/秒で試験片にあて、試験片の変形量と応力を検出し、面積積分値を算出することによって面衝撃強度を求めた。また、材料が破壊するまでに要するエネルギー値である全エネルギー(TE)を計測し、これを面衝撃エネルギー(J)とした。状態調整は装置に付属の恒温槽によって行った。具体的には、あらかじめ所定温度(23℃)に調節された恒温槽に試験片を入れ、2時間状態調整をした後に上記試験を行った。
[成形収縮率]
成形収縮率は、成形後48時間放置した後にマグネスケールを用いて、射出成形体の樹脂組成物の流動方向(MD)と流動方向に対して直角方向(TD)の寸法を測定し、金型寸法を基準に収縮率を求めた。具体的には、樹脂組成物を120mm×130mm×3mm厚の平板に射出成形して測定を行った。ゲートは120mm側面の中央部に設置されており、130mmの方向がMD、120mm側の方向がTDである。異方性は下式(1)に定義される収縮率異方性によって評価した。この数値が0%に近いほど異方性は小さく、寸法安定性に優れる。
Figure 2017019975
[配合成分]
実施例および比較例においては、以下の各成分を配合成分として使用した。
<成分(A)>
プライムポリマー社製の「プライムポリプロ(登録商標)」として市販されている各種のプロピレン・エチレンブロック共重合体(bPP)のうち、以下の特性を有するbPP(A1)およびbPP(A2)を用いた。
「bPP(A1)」:MFR(230℃、2.16kg荷重)=12g/10分、室温デカン可溶部量=10.5質量%、室温デカン可溶部の極限粘度[η]=3.8dl/g、室温デカン可溶部のエチレン含量=41モル%
「bPP(A2)」:MFR(230℃、2.16kg荷重)=40g/10分、室温デカン可溶部量=13.8質量%、室温デカン可溶部の極限粘度[η]=2.2dl/g、室温デカン可溶部のエチレン含量=35モル%
<成分(B)>
プライムポリマー社製の「プライムポリプロ(登録商標)」として市販されている各種のbPPのうち、以下の特性を有するbPP(B)を用いた。
「bPP(B)」:MFR(230℃、2.16kg荷重)=90g/10分、室温デカン可溶部量=9質量%、室温デカン可溶部の極限粘度[η]=7.5dl/g、室温デカン可溶部のエチレン含量=32モル%
<成分(C)>
三井化学社製の「タフマーA(登録商標)1050」として市販されている以下の特性を有するエチレン・ブテン共重合体[PE(C)]を用いた。
「PE(C)」:MFR(230℃、2.16kg荷重)=2.4g/10分、密度=0.864g/cm
<成分(D)>
浅田製粉社製のタルク[商品名JM−209、平均粒径(レーザー回折法)=4.3μm、アスペクト比(SEM採寸)=6.7]を用いた。
<成分(E)>
宇部マテリアルズ社製の塩基性硫酸マグネシウム無機繊維[モスハイジ(登録商標)A、平均繊維径=0.7μm、平均アスペクト比(SEM採寸)=30]を用いた。
<成分(X)>
プライムポリマー社製の「プライムポリプロ(登録商標)」として市販されている各種のプロピレン単独重合体(ホモPP)のうち、以下の特性を有するホモPP(1)およびホモPP(2)を用いた。
「ホモPP(1)」:MFR(230℃、2.16kg荷重)=200g/10分
「ホモPP(2)」:MFR(230℃、2.16kg荷重)=30g/10分
[実施例1、比較例1〜6]
表1に示す各成分を混合し、二軸押出機((株)日本製鋼所製、TEX(登録商標)30α)を用いて、シリンダ温度180℃、スクリュー回転600rpm、押出し量60kg/hの条件で押出し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。得られた各ポリプロピレン系樹脂組成物から製造した射出成形体(試験片)の物性を表1に示す。
Figure 2017019975
表1に示す結果から、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を用いて得た実施例1の射出成形体は、本発明の要件を満たさない比較例1〜6の成形体と比較して、成形収縮率の異方性が小さい(寸法安定性に優れる)と共に、耐衝撃性(面衝撃エネルギー、シャルピー衝撃強さ、アイゾット衝撃強さ)と機械特性(曲げ弾性率)をバランス良く発現していることが分かる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、先に詳述した自動車内外装用部品、家庭用品、家電部品などの種々の分野の成形体材料として用いることができ、特に自動車外装部品として好適に用いることができる。

Claims (8)

  1. 下記成分(A)を5〜30質量部、下記成分(B)を30〜80質量部、下記成分(C)を3〜20質量部、下記成分(D)を10〜25質量部、および下記成分(E)を1質量部を超え5質量部未満[但し成分(A)〜(E)の合計を100質量部とする]含有するポリプロピレン系樹脂組成物。
    (A)下記要件(a1)〜(a3)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体:
    (a1)室温デカン可溶部量が5〜15質量%
    (a2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が1.0〜5.0dl/g
    (a3)MFR(230℃、2.16kg荷重)が1〜20g/10分、
    (B)下記要件(b1)〜(b3)を満たすプロピレン・エチレンブロック共重合体:
    (b1)室温デカン可溶部量が5〜15質量%
    (b2)室温デカン可溶部の極限粘度[η]が5.0〜10.0dl/g
    (b3)MFR(230℃、2.16kg荷重)が21〜150g/10分、
    (C)MFR(230℃、2.16kg荷重)が0.3〜40g/10分であるエチレン・α−オレフィン共重合体(但しα−オレフィンの炭素原子数は4〜8である)、
    (D)板状フィラー、および
    (E)繊維状フィラー
  2. 板状フィラー(D)がタルクであり、該タルクのレーザー回折法で測定した平均粒子径が1〜10μmの範囲にある請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 繊維状フィラー(E)が塩基性硫酸マグネシウム無機繊維であり、該塩基性硫酸マグネシウム無機繊維の平均繊維直径が0.5〜1.0μmの範囲にあり、平均アスペクト比が5〜50の範囲にある請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. さらに核剤(Y)を、成分(A)〜(E)の合計100質量部に対して0.05〜0.5質量部含む請求項1〜3の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. ポリプロピレン系樹脂組成物のMFR(230℃、2.16kg荷重)が25〜50g/10分である請求項1〜4の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  6. 水中置換法により測定される比重(JIS K7112)が1.05以下である請求項1〜5の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  7. 請求項1〜6の何れかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物から得られる射出成形体。
  8. 自動車内外装材である請求項7に記載の射出成形体。
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