JP2005047943A - プロピレン・エチレン系樹脂組成物およびそれからなる容器 - Google Patents

プロピレン・エチレン系樹脂組成物およびそれからなる容器 Download PDF

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Masaru Hayakawa
優 早川
Hiroki Kawai
浩樹 河合
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Abstract

【課題】射出成形時の成形加工性が良好で、曲げ弾性率、低温耐衝撃性、特に溶出成分や臭いの発生が少ない、食品や医療用の射出成形容器に好適なポリプロピレン系樹脂組成物及びその容器の提供。
【解決手段】プロピレン系重合部分67〜82重量%とエチレン含量が15〜60重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合部分18〜33重量%からなるプロピレン・エチレンブロック共重合体100重量部に対して、造核剤0.05〜0.7重量部を含有し、MFRが50〜200g/10分、CFC40℃可溶成分の分子量Mw(40)と100〜140℃可溶成分の分子量Mw(140)比が1.5〜5、重量平均分子量が3,000以下の成分含量が1.8重量%以下、tert−Butyl alcohol含量が1ppm以下、DSC結晶化ピーク温度が125℃以上であることを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン・エチレン系樹脂組成物ならびに射出成形容器に関し、落下等の衝撃に対する耐性に優れ、成形をハイサイクルで行うことが可能で、しかも臭気等の悪化を引き起こさず、溶出成分も少ない、食品や医療等の容器に好適なプロピレン・エチレン系樹脂組成物ならびに射出成形容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂を用いた薄肉射出成形品の成形においては、樹脂の流動性を向上させるために、射出成形時の樹脂温度を上げて成形する方法が一般的に用いられているが、樹脂劣化による臭気悪化、変色、冷却固化遅延による生産性低下の問題がある。
このような問題を解決する方法として、成形温度を上げずに成形体を形成することのできる高流動ポリプロピレン樹脂の使用が望まれている。ポリプロピレン樹脂の高流動化方法としては、従来からパーオキサイドによりポリプロピレン分子鎖を切断し低分子量化する方法(以下CR法と呼ぶ。)が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかし、パーオキサイドを用いるCR法は、流動性を改良することは可能であるが、その反面、臭気や色相が悪化するという問題が起き易い。この欠点に対して種々の改良方法が行われており、例えば、有機過酸化物として、1,3−ビス−(ターシャリーブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンを用いることにより、臭気等を低減させる方法(例えば、特許文献2参照。)が知られているが、このような方法では不十分であり、食品容器等に使用した場合、内容物の香り、味を損ない、著しく商品価値を下げてしまう欠点があった。
【0003】
一方、パーオキサイドを使用せず重合のみで高流動ポリプロピレンを製造する方法として、マグネシウム担持型触媒を用いMFRを制御しながら重合する方法が提案されている(例えば、特許文献3参照。)が、その場合は、一般的には衝撃強度の低下が著しく、また低分子量成分をより多く副生成して、成形時のガス発生による成形品外観不良、臭気、低分子量成分の金型への付着・汚染するという問題があった。
【0004】
さらに、成形性を改良する別の方法として、立体規則性触媒を用い最初にプロピレン単独重合を行い、次いでエチレンとプロピレンの共重合を行うブロック共重合体においてMFR、エチレン含量、Mw/Mn等を特定範囲内にすることにより広分子量分布化をした高流動性ポリプロピレン樹脂が提案されている(例えば、特許文献4〜5参照。)が、この場合は、成形時流動性は改善されるが、低分子量成分も同時に増加してしまい、上記と同様に成形時のガス発生による成形品外観不良、臭気、低分子量成分の金型への付着・汚染するという問題が依然解決されておらず、このような問題を解決可能なポリプロピレン組成物が望まれている。
【0005】
一方、ポリプロピレン中の臭気を改良する提案として、炭素数9から21までの炭化水素成分の総量を30ppm以下にしたポリプロピレン樹脂の提案がなされている(例えば、特許文献6参照。)が、より臭気に影響する低分子量成分までは、改善が進められておらず、更なる改良が望まれている。
【0006】
【特許文献1】
特開昭61−174203号公報
【特許文献2】
特開昭62−172045号公報
【特許文献3】
特開平11−140114号公報
【特許文献4】
特開平5−17542号公報
【特許文献5】
特開平5−239149号公報
【特許文献6】
特開平5−194648号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の様な欠点を解決しつつ、射出成形時の成形加工性が良好で、曲げ弾性率、低温耐衝撃性、特に溶出成分や臭いの発生が少ない、食品や医療用の射出成形容器に好適なポリプロピレン系樹脂組成物ならびに、その容器を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の構造を有し、重合ゴム含量が高く、低分子量成分が少ないプロピレン・エチレンブロック共重合体と造核剤からなる組成物が、ハイサイクルで成形可能であり、衝撃強度を保ちつつ、溶出分や臭いの少ない射出成形容器を供給可能になることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、(I)プロピレン単独、もしくは0.1〜5重量%のエチレンを含有するプロピレン系重合部分67〜82重量%と、
(II)エチレン含量が15〜60重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合部分18〜33重量%
からなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))100重量部に対して、
造核剤(成分(B))0.05〜0.7重量部を含有し、下記特性(1)〜(5)を満たすことを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
特性(1)MFR(230℃、荷重2.16kg)が50〜200g/10分
特性(2)CFC40℃可溶成分の分子量Mw(40)とCFC100〜140℃可溶成分の分子量Mw(140)が下記(i)式を満たす。
1.5≦Mw(40)/Mw(140)≦5 (i)
特性(3)重量平均分子量Mwが3,000以下である成分の総含量が1.8重量%以下
特性(4)tert−Butyl alcohol含量が1ppm以下
特性(5)DSC結晶化ピーク温度(Tpc)が125℃以上
【0010】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、さらに、中和剤(成分(C))を成分(A)100重量部に対し、0.01〜0.6重量部含有することを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0011】
また、本発明の第3の発明によれば、第1又は2の発明において、下記特性(6)をさらに満たすことを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
特性(6)ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和が2ppm以下
【0012】
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、2mmt射出成形シートにおける、0℃の面衝撃強度が2J以上であることを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0013】
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、2mmt射出成形シートにおける、動摩擦係数が0.3以下であることを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0014】
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、造核剤(成分(B))が、有機燐酸エステル金属塩または有機ジカルボン酸金属塩化合物であることを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0015】
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、プロピレン・エチレン系重合体が、メタロセン触媒を用いて重合したことを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物が提供される。
【0016】
また、本発明の第8の発明によれば、第1〜7のいずれかの発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物を射出成形して得られる容器が提供される。
【0017】
また、本発明の第9の発明によれば、第8の発明において、容器が、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和が2ppm以下、かつtert−Butyl alcohol含量が1ppm以下の薄肉食品用容器であることを特徴とする容器が提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物ならびに射出成形して得られる容器は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))と造核剤(成分(B))、さらに必要に応じて、中和剤(成分(C))等を含むプロピレン・エチレン系樹脂組成物ならびにプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))と造核剤(成分(B))、さらに必要に応じて、中和剤(成分(C))等を含むプロピレン・エチレン系樹脂組成物を射出成形して得られる容器である。以下に各成分、製造方法、容器の特徴について詳細に説明する。
【0019】
[I]プロピレン・エチレン系樹脂組成物
1.プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))
(1)構成
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物を構成するプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))は、(I)プロピレン単独、もしくは0.1〜5重量%のエチレンを含有するプロピレン系重合部分と、(II)エチレン含量が15〜60重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合部分とから構成されるブロック共重合体であって、該プロピレン系重合部分(I)の比率は、67〜82重量%、好ましくは70〜80重量%の範囲であり、該プロピレン・エチレンランダム共重合部分(II)の比率は、18〜33重量%、好ましくは20〜30重量%である。
プロピレン・エチレンランダム共重合部分の比率が18重量%未満のプロピレン・エチレンブロック共重合体を用いると、耐衝撃性が不足し、容器に食品充填後、低温流通過程で落下による商品破損が増大する。一方、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分が33重量%を超えると、剛性が不足し、容器をフィルムでシールした蓋を剥がす際に、容器が変形して剥離が困難となる。
また、油性の食品内容物と接した場合、当該共重合体の一部が抽出されて内容物へ移行し風味を損なう。
なお、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の比率は、後述の重合時にフィード原料ガスの調整、又は第二反応器の運転条件や滞留時間、添加剤種や使用量などの重合条件を調節して、重合条件の一環として設定することができる。
ここで、プロピレン・エチレンランダム共重合部分の比率は、後述のCFC−IR法によって測定する値である。
【0020】
また、全体のプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))のMFRBCは、50〜200g/10分が好ましく、より好ましくは60〜150g/10分である。MFRが前記範囲未満であると成形性が不十分となる傾向があり好ましくない。また、過剰に高くなると、力学物性が低下しもろくなる。
ここで、MFRは、JIS K−7210−1995(230℃、21.18N荷重)に準拠して測定する値である。
【0021】
プロピレン・エチレンランダム共重合部分(II)のエチレン含量は、15〜60重量%、好ましくは20〜55重量%、さらに好ましくは、25〜40重量%である。エチレン含量が15重量%未満では、低温衝撃が不足し、プロピレン系重合体結晶部分への溶け込みによる剛性低下が起こりやすく、60重量%を超えるとゴムドメインが粗大化し衝撃不足を引き起こすため、好ましくない。
なお、プロピレン・エチレンランダム共重合部分(II)のエチレン含量は、後述の重合時におけるプロピレンとエチレンの供給量の制御によって調製することができる。
ここで、エチレン含有量は、以下のCFC−IR法によって測定する値である。
【0022】
本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体において、上記プロピレン・エチレンランダム共重合部の比率(Wc)、プロピレン・エチレンランダム共重合体部分のエチレン含有量は、以下のCFC−IR法により求める。
(i)使用する分析装置
(a)クロス分別装置
ダイヤインスツルメンツ社製CFC T−100(CFCと略す)
(b)フーリエ変換型赤外線吸収スペクトル分析
FT−IR、パーキンエルマー社製 1760X
CFCの検出器として取り付けられていた波長固定型の赤外分光光度計を取り外して代わりにFT−IRを接続し、このFT−IRを検出器として使用する。CFCから溶出した溶液の出口からFT−IRまでの間のトランスファーラインは1mの長さとし、測定の間を通じて140℃に温度保持する。FT−IRに取り付けたフローセルは光路長1mm、光路幅5mmφのものを用い、測定の間を通じて140℃に温度保持する。
(c)ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)
CFC後段部分のGPCカラムは、昭和電工社製AD806MSを3本直列に接続して使用する。
【0023】
(ii)CFCの測定条件
(a)溶媒:オルトジクロルベンゼン(ODCB)
(b)サンプル濃度:4mg/mL
(c)注入量:0.4mL
(d)結晶化:140℃から40℃まで約40分かけて降温する。
(e)分別方法:
昇温溶出分別時の分別温度は40、100、140℃とし、全部で3つのフラクションに分別する。なお、40℃以下で溶出する成分(フラクション1)、40〜100℃で溶出する成分(フラクション2)、100〜140℃で溶出する成分(フラクション3)の溶出割合(単位:重量%)を各々W40、W100、W140と定義する。W40+W100+W140=100である。また、分別した各フラクションは、そのままFT−IR分析装置へ自動輸送される。
(f)溶出時溶媒流速:1mL/分
【0024】
(iii)FT−IRの測定条件
CFC後段のGPCから試料溶液の溶出が開始した後、以下の条件でFT−IR測定を行い、上述した各フラクション1〜3について、GPC−IRデータを採取する。
(a)検出器:MCT
(b)分解能:8cm−1
(c)測定間隔:0.2分(12秒)
(d)一測定当たりの積算回数:15回
【0025】
(iv)測定結果の後処理と解析
各温度で溶出した成分の溶出量と分子量分布は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用して求める。溶出量は各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である。
F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000。
各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.4mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算は森定雄著「サイズ排除クロマトグラフィー」(共立出版)を参考に汎用較正曲線を用いる。その際使用する粘度式([η]=K×Mα)には以下の数値を用いる。
(a)標準ポリスチレンを使用する較正曲線作成時
K=0.000138、α=0.70
(b)プロピレン系ブロック共重合体のサンプル測定時
K=0.000103、α=0.78
【0026】
上記溶出分別された各溶出部分の分子量は、Mw(40)、Mw(100)、Mw(140)と定義される。全体の分子量分布は、3分別で得られたデータを合計し、計算で求めた。これより、後述の重量平均分子量が3,000以下の成分の含量(重量%)は、積算して求められる。
【0027】
また、各溶出成分のエチレン含有量分布(分子量軸に沿ったエチレン含有量の分布)は、FT−IRによって得られる2956cm−1の吸光度と2927cm−1の吸光度との比を用い、ポリエチレンやポリプロピレンや13C−NMR測定等によりエチレン含有量が既知となっているエチレン−プロピレン−ラバー(EPR)及びそれらの混合物を使用して予め作成しておいた検量線により、エチレン含有量(重量%)に換算して求める。
【0028】
本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合部(EP)の比率(Wc)は、上記の方法で測定した結果を用い、下記式(I)で理論上は定義され、以下のような手順で求められる。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/B100…(I)
式(I)中、W40、W100は、上述した各フラクションでの溶出割合(単位:重量%)であり、A40、A100は、W40、W100に対応する各フラククションにおける実測定の平均エチレン含有量(単位:重量%)であり、B40、B100は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量(単位:重量%)である。A40、A100、B40、B100の求め方は後述する。
【0029】
式(I)の意味は、以下の通りである。すなわち、式(I)右辺の第一項は、フラクション1(40℃に可溶な部分)に含まれるEPの量を算出する項である。フラクション1がEPのみを含み、プロピレン単独重合体部分(PP)を含まない場合には、W40がそのまま全体の中に占めるフラクション1由来のEP含有量に寄与するが、フラクション1にはEP由来の成分のほかに少量のPP由来の成分(極端に分子量の低い成分及びアタクチックポリプロピレン)も含まれるため、その部分を補正する必要がある。そこでW40にA40/B40を乗ずることにより、フラクション1のうち、EP成分由来の量を算出する。例えば、フラクション1の平均エチレン含有量(A40)が30重量%であり、フラクション1に含まれるEPのエチレン含有量(B40)が40重量%である場合、フラクション1の30/40=3/4(即ち75重量%)はEP由来、1/4はPP由来ということになる。このように右辺第一項でA40/B40を乗ずる操作は、フラクション1の重量%(W40)からEPの寄与を算出することを意味する。右辺第二項も同様であり、各々のフラクションについて、EPの寄与を算出して加え合わせたものがEP含有量となる。
【0030】
ここで、さらに次の条件を考慮して計算を行う。
(a)上述したように、CFC測定により得られるフラクション1〜2に対応する平均エチレン含有量をそれぞれA40、A100とする(単位はいずれも重量%である)。平均エチレン含有量の求め方は後述する。
(b)フラクション1の微分分子量分布曲線におけるピーク位置に相当するエチレン含有量をB40とする(単位は重量%である)。フラクション2については、ゴム部分が40℃ですべて溶出してしまうと考えられ、同様の定義で規定することができないので、本発明では実質的にB100=100と定義する。B40、B100は、各フラクションに含まれるEPのエチレン含有量であるが、この値を分析的に求めることは実質的には不可能である。その理由は、フラクションに混在するPPとEPを完全に分離・分取する手段がないからである。種々のモデル試料を使用して検討を行った結果、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量を使用すると、材料物性の改良効果をうまく説明することができることがわかった。すなわち、B40はフラクション1の微分分子量分布曲線のピーク位置に相当するエチレン含有量である。また、B100はエチレン連鎖由来の結晶性を持つこと、および、これらのフラクションに含まれるEPの量がフラクション1に含まれるEPの量に比べて相対的に少ないことの2点の理由により、100と近似する方が、実態にも近く、計算上も殆ど誤差を生じない。そこでB100=100として解析を行うこととした。
【0031】
(c)上記の理由からEPの比率(Wc)を下記式(II)に従い、求める。
Wc(重量%)=W40×A40/B40+W100×A100/100…(II)
つまり、式(II)右辺の第一項であるW40×A40/B40は、結晶性を持たないEP含有量(重量%)を示し、第二項であるW100×A100/100は、結晶性を持つEP含有量(重量%)を示す。
【0032】
ここで、B40およびCFC測定により得られる各フラクション1および2の平均エチレン含有量A40、A100は、次のようにして求める。
微分分子量分布曲線のピーク位置に対応するエチレン含有量がB40とする。また、測定時にデータポイントとして取り込まれる、各データポイント毎の重量割合と各データポイント毎のエチレン含有量の積の総和をフラクション1の平均エチレン含有量A40とする。フラクション2の平均エチレン含有量A100も同様に求める。
【0033】
なお、上記3種類の分別温度を設定した意義は次の通りである。本発明のCFC分析においては、40℃とは、結晶性を持たないポリマー(例えば、EPの大部分、もしくはプロピレン単独重合体部分(PP)の中でも極端に分子量の低い成分およびアタクチックな成分)のみを分別するのに必要十分な温度条件である意義を有する。100℃とは、40℃では不溶であるが100℃では可溶となる成分(例えば、EP中、エチレン及び/またはプロピレンの連鎖に起因して結晶性を有する成分、および結晶性の低いPP)のみを溶出させるのに必要十分な温度である。140℃とは、100℃では不溶であるが140℃では可溶となる成分(例えば、PP中特に結晶性の高い成分、およびEP中の極端に分子量が高くかつ極めて高いエチレン結晶性を有する成分)のみを溶出させ、かつ分析に使用するプロピレン系ブロック共重合体の全量を回収するのに必要十分な温度である。なお、W140にはEP成分は全く含まれないか、存在しても極めて少量であり実質的には無視できることから、EPの比率やEPのエチレン含有量の計算からは排除する。
【0034】
本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体中のプロピレン・エチレンランダム共重合部(EP)のエチレン含有量は、上記の方法で測定した結果を用い、下記式(III)で求められる。
EPのエチレン含有量(重量%)=(W40×A40+W100×A100)/Wc…(III)
(ただし、Wcは先に求めたEPの比率(重量%)である。)
【0035】
(2)プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
本発明におけるプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))は、高立体規則性触媒の存在下にプロピレンとエチレンを共重合して得ることができる。
高立体規則性触媒としては、三塩化チタン固体成分とハロゲン含有有機アルミニウム化合物からなる触媒、有機アルミニウム化合物と、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須とする固体成分とからなる触媒等のいわゆるチーグラーナッタ触媒、メタロセン錯体と、有機アルミニウムオキシ化合物、ルイス酸、アニオン性化合物、あるいは粘土鉱物からなるいわゆるメタロセン触媒、が用いられる。この中でも、有機アルミニウムとチタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須とする固体成分とからなるチーグラーナッタ触媒ならびに立体規則性の高いメタロセン化合物を用いたメタロセン触媒が好適である。
【0036】
チーグラーナッタ触媒の場合の有機アルミニウム化合物としては、この種の重合において公知の、一般式R AlX3−m(式中、Rは炭素数1〜12の炭化水素基、Xはハロゲンを示し、mは1〜3の数である。)で表される化合物、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムハライド、ジエチルアルミニウムハイドライド等のアルキルアルミニウムハイドライド等が挙げられる。また、メチルアルモキサン、ブチルアルモキサン等のアルモキサン類も使用可能である。
【0037】
また、チタン、マグネシウム、ハロゲン及び電子供与性化合物を必須とする固体成分としては、やはりこの種の重合において公知であって、チタンの供給源となるチタン化合物としては、一般式Ti(OR4−n(式中、Rは炭素数1〜10の炭化水素残基、Xはハロゲンを示し、nは0〜4の数である。)で表わされる化合物が挙げられ、中でも、四塩化チタン、テトラエトキシチタン、テトラブトキシチタン等が好ましい。
【0038】
マグネシウムの供給源となるマグネシウム化合物としては、例えば、ジアルキルマグネシウム、マグネシウムジハライド、ジアルコキシマグネシウム、アルコキシマグネシウムハライド等が挙げられ、中でもマグネシウムジハライド等が好ましい。なお、ハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられ、中でも、塩素が好ましく、これらは、通常、前記チタン化合物或いはマグネシウム化合物から供給されるが、アルミニウムのハロゲン化物、珪素のハロゲン化物、タングステンのハロゲン化物等の他のハロゲン供給源から供給されてもよい。
【0039】
電子供与性化合物としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、エーテル類、アルデヒド類、カルボン酸類、有機酸又は無機酸及びその誘導体等の含酸素化合物、アンモニア、アミン類、ニトリル類、イソシアネート類等の含窒素化合物等、有機珪素化合物、有機燐化合物等が挙げられ、中でも、エーテル類、無機酸エステル、有機酸エステル、有機酸ハライド、有機珪素化合物等が好ましく、珪酸エステル、置換コハク酸エステル、フタル酸エステル等の多価カルボン酸エステル、酢酸セロソルブエステル、フタル酸ハライド、ジエーテル、有機アルコキシ珪素化合物等が更に好ましく、例えば、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン、t−ブチル−メチル−ジエトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジメトキシシラン、シクロヘキシル−メチル−ジエトキシシラン等の一般式R 3−pSi(OR(式中、Rは炭素数3〜20、好ましくは4〜10の分岐状脂肪族炭化水素残基、又は、炭素数5〜20、好ましくは6〜10の環状脂肪族炭化水素残基を示し、Rは炭素数1〜20、好ましくは1〜10の分岐又は直鎖状脂肪族炭化水素残基を示し、Rは炭素数1〜10、好ましくは1〜4の脂肪族炭化水素残基を示し、pは1〜3の数である。)で表される有機珪素化合物、例えば、2,2−ジイソプロピル、1,3−ジエーテル、2,2−ジイソブチル、1,3−ジエーテル、等の2,2−置換基を有する1,3−ジエーテル類、フタル酸ブチル、フタル酸オクチル、1,2−ジイソプロピルコハク酸ジブチル等多価カルボン酸エステル、フタル酸クロリド等のフタル酸ハライドが特に好ましい。また、これらを複数種併用することも可能である。
【0040】
上記のような触媒としては、例えば、特開昭56−100806号、特開昭56−120712号、特開昭58−104907号、特開昭57−63310号、特開昭58−145707号、特開昭60−23404号、特開昭63−43915号、特開昭63−83116号、特開昭63−235307号、特開平2−163104号、特開平7−258328号、特開平8−20607号、等の各公報に記載の触媒を好適に使用できる。
【0041】
メタロセン触媒における高立体規則性を有するメタロセン化合物としては、炭素架橋、あるいは珪素、ゲルマン架橋基を有し、かつ置換あるいは非置換のシクロペンタジエン、インデン、フルオレン、アズレンを配位子とする4族の遷移金属化合物を挙げることができる。以下に非限定的な具体例を挙げる。
(1)炭素架橋としては、エチレンビス(2、4−ジメチルインデニル)ジルコニウムクロリド、エチレンビス(2,4,7−トリメチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、イソプロピリデン(シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムクロリド、イソプロピリデン(3−メチルインデニル)(フルオレニル)ジルコニウムクロリド、イソプロピリデン(2−メチルシクロペンタジエニル)(3−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。
(2)珪素架橋としては、ジメチルシリレンビス(2−メチル、4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジフェニルシリレン(2−エチル、4−フェニルインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−メチルベンゾインデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−イソプロピル、4−(3,5−ジイソプロピルフェニル)インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−プロピル、4−フェナントリル、インデニル)ジルコニウムジクロリド、ジメチルシリレンビス(2−エチル、4−(4−tertブチル、3−クロロ、フェニル)アズレニル)ジルコニウムジクロリド、等が挙げられる。(3)ゲルマン架橋としては、上記の(2)の珪素架橋のシリレンをゲルミレンに置き換えた化合物が用いられる.また、ジルコニウムをハフニウムに置き換えた化合物は、そのまま、好適な化合物として例示される。さらに、例示化合物のジクロリドは、その他のハライドや、メチル基、イソブチル基、フェニル基、ヒドリド基、ジメチルアミド、ジエチルアミド基等に置き換えた化合物も,好適化合物として例示可能である。
【0042】
メタロセン触媒系に用いる有機アルミニウムオキシ化合物、ルイス酸、イオン性化合物、粘土鉱物が助触媒として使用可能であり、以下のようなものを挙げることができる。
非限定的な(1)有機アルミニウムオキシ化合物の例としては、メチルアルモキサン、イソブチルアルモキサン、メチルイソブチルアルモキサン、ブチルボロン酸アルミニウムテトライソブチルメチルアルミニウムビスペンタフルオロフェノキシド、等があげられる。(2)ルイス酸としては、BR(式中、Rはフッ素原子、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素原子である。)で示される化合物が挙げられ、例えば、トルフルオロボラン、トリフェニルボラン、トリス(4−フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5−ジフルオロフェニル)ボラン、トリス(4−フルオロメチルフェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボラン、トリス(p−トリル)ボラン、トリス(o−トリル)ボラン、トリス(3,5−ジメチルフェニル)ボランなどが挙げられ、また、塩化マグネシウム、酸化アルミニウム、等の無機化合物も例示される。(3)イオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N−ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることができる。具体的に、トリアルキル置換アンモニウム塩としては、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレート、トリ(n−ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ボレートなどが挙げられる。ジアルキルアンモニウム塩としては、たとえばジ(1−プロピル)アンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ボレートなどが挙げられる。さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、等が例示される。(4)粘土鉱物としては,モンモリロナイト、マイカ、テニオライト、ヘクトライト、あるいはそれらの酸・塩基処理した変性体、その他の無機酸化物との複合体、等が例示される。
【0043】
本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))の具体的な製造方法としては、第一段階で、プロピレンを供給して、前記の重合触媒の存在下に温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃、プロピレンの分圧0.5〜4.5MPa、好ましくは1.0〜3.5MPaの条件で、プロピレンの単独あるいはエチレン0.1〜5重量%を含有するプロピレン系重合部を製造する。引き続いて、第二段階で、プロピレンとエチレンを供給して、前記の重合触媒の存在下に温度50〜150℃、好ましくは50〜100℃、プロピレン及びエチレンの分圧各0.3〜4.5MPa、好ましくは0.5〜3.5MPaの条件で、プロピレン・エチレンの共重合を実施してプロピレン・エチレンランダム共重合部を製造する。この際、各段階におけるエチレンとプロピレンの使用比率は、目的のエチレン含量に応じて、エチレン量を増減させることで、制御される。なお、触媒系によってその比率は異なり、いわゆるチーグラーナッタ触媒の場合は、重合体の含量とほぼ近い重量比で行われ、メタロセン触媒の場合は、相対的に重合体中のエチレン含量より重合時のエチレン重量比の方が、一般的には高めである。また、各段階における分子量、MFRは、連鎖移動剤、特に好ましくは水素を共存させることで、制御される。後述する組成物の40℃と110℃のTREF可溶分の粘度比は、この前段と後段で生成する分子量と密接な関係が有り、従って目的の組成物を得るためには、重合段階で目的に応じて製造した重合体を適宜使用することが可能である。
【0044】
上記に示した重合は、回分式、連続式、半回分式のいずれによってもよく、第一段階の重合は気相又は液相中、特には不活性溶媒を用いないプロピレンバルク液相中、あるいは気相中で実施するのが好ましく、また、第二段階の重合は気相中で実施するのが好ましく、各段階の滞留時間は各々0.5〜10時間、好ましくは1〜5時間とする。
【0045】
なお、前記重合方法により製造されるプロピレン・エチレンブロック共重合体の粉体粒子のベタツキ等をなくして流動性を付与するために、第一段階でのプロピレン系重合部分の重合後、第二段階でのプロピレン・エチレンランダム共重合部分の重合開始前又は重合途中に活性水素含有化合物や酸素含有化合物等の添加剤を、触媒の固体成分中のチタン原子あるいはメタロセン触媒の4族遷移金属に対して10〜1000倍モル、あるいは、重合系内に存在する有機アルミニウム化合物に対して0.5〜5倍モルの範囲で添加することが好ましい。ここで、活性水素含有化合物としては、例えば、水、アルコール類、フェノール類、アルデヒド類、カルボン酸類、酸アミド類、アンモニア、アミン類等、含酸素化合物としてアセトン、エチルエーテル、エチルセロソルブ、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
【0046】
2.造核剤(成分(B))
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物において、プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))と共に使用する造核剤(成分(B))は、一般に使用される各種の公知の造核剤が使用可能である。
造核剤としては、有機燐酸エステル金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、有機ジカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩等が使用される。
【0047】
上記有機燐酸エステル金属塩としては、例えば、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−i−プロピル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、リチウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−ブチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−t−オクチルメチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス−(2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、マグネシウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、バリウム−ビス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4−m−ブチル−6−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−メチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−エチルフェニル)フォスフェート、カリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、カルシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フオスフェート)、マグネシウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、バリウム−ビス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、アルミニウム−トリス[2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェル)フォスフェート]、アルミニウム−トリス[2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート)、等が例示される。
【0048】
上記有機モノカルボン酸金属塩としては、例えば、安息香酸、アリル置換酢酸、等の元素周期律表第I、II、III族に属する金属の塩であり、具体的には、安息香酸、p−イソプロピル安息香酸、o−第3級ブチル安息香酸、p−t−ブチル安息香酸、モノフェニル酢酸、ジフェニル酢酸、フェニルジメチル酢酸、アジピン酸およびこれらのLi、Na、Mg、Ca、Ba、Al塩、等が例示される。
【0049】
上記有機ジカルボン酸金属塩としては、例えば、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、シクロヘキサンカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸およびこれらのLi、Na、Mg、Ca、Ba、Al塩などを挙げることができる。
【0050】
上記ポリマー核剤としては、例えば、ポリビニルシクロヘキサン、ポリー3−メチルーブテンー1、等が例示される。
【0051】
上記ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体としては、例えば、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−i−プロピルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−n−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−s−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−t−ブチルベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−エトキシベンジリデン)ソルビトール、1,3−ベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−ベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−エチルベンジリデンソルビトール、1,3−p−メチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトール、1,3−p−エチルベンジリデン−2,4−p−クロルベンジリデンソルビトールもしくは1,3,2,4−ジ(p−クロルベンジリデン)ソルビトールなどを例示することができる。特に、1,3,2,4−ジベンジリデンソルビトール、1,3,2,4−ジ(p−メチルベンジリデン)ソルビトールまたは1,3−p−クロルベンジリデン−2,4−p−メチルベンジリデンソルビトール、等が例示される。
【0052】
上記ジテルペン酸類の金属塩は、ジテルペン酸類とマグネシウム化合物、アルミニウム化合物等の所定の金属化合物との反応生成物である。ジテルペン酸は、一般に、松科植物から得られる天然樹脂として知られているロジン、具体的には、ガムロジン、トール油ロジン、ウッドロジンなどの天然ロジン;不均化ロジン、水素化ロジン、脱水素化ロジン、重合ロジン、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸変性ロジンなどの各種変性ロジン;および前記天然ロジンや変性ロジンの精製物などを原料として得られる。ジテルペン酸類としては、例えば、ピマル酸、サンダラコピマル酸、パラストリン酸、イソピマル酸、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、ジヒドロピマル酸、ジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸などが挙げられる。
【0053】
これらのうち,好ましい造核剤は、有機燐酸エステル金属塩、有機ジカルボン酸金属塩であり、更に好ましくは、ナトリウム−2,2’−メチレン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、ナトリウム−2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)フォスフェート、のような架橋した置換芳香族基を有する燐酸エステル金属塩、あるいは、2−シクロヘキサンジカルボン酸ナトリウム、1,2−ノルボルナンジカルボン酸ナトリウム、1,2−ノルボルナンジカルボン酸マグネシウムのような脂環式炭化水素ジカルボン酸金属塩があげられる。金属塩としては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、アルミニウム塩等が例示され、より好ましくはナトリウム、カリウム等の1族金属である。
【0054】
造核剤(成分(B))の使用量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))100重量部に対して、0.05〜0.7重量部であり、好ましくは0.1〜0.5重量部である。成分(B)の使用量が0.05重量部未満であると剛性の改良効果が不十分であり、0.7重量部を超えると前記効果は飽和し、余分なコストがかかる場合がある。なお、これら造核剤を二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
3.中和剤(成分(C))
本発明のプロピレン・エチレンブロック共重合体組成物には、必要に応じて、中和剤(成分(C))を含有させることが可能である。
【0056】
中和剤としては,各種の公知の金属石鹸、ハイドロタルサイト類、ケイ酸アルミニウムカルシウム、周期律表第II族の金属の酸化物及び水酸化物、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩等の中和剤が使用可能である。これらの中では、金属石鹸及び/又はハイドロタルサイト類化合物の使用が好ましい。
【0057】
上記金属石鹸としては、高級脂肪酸若しくは脂肪酸オキシ酸とマグネシウム、カルシウム、バリウム、亜鉛、アルミニウム、錫、鉛等の金属との金属塩等が挙げられる。高級脂肪酸としては、炭素数10〜22の鎖状モノカルボン酸が挙げられ、ステアリン酸、ラウリン酸等が好ましい。また、脂肪酸オキシ酸としては、脂肪族カルボン酸の側鎖にアルコール性水酸基を有するものが挙げられ、乳酸、クエン酸、ヒドロキシステアリン酸等が好ましい。金属石鹸の好ましい例としては、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、12ヒドロキシステアリン酸カルシウム、ステアリル乳酸カルシウム、ラウリル乳酸カルシウム等が挙げられる。
【0058】
上記ハイドロタルサイト類としては、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、ビスマス等の含水塩基性炭酸塩または結晶水を含まないもので、天然物及び合成品が含まれる。天然物としては、MgAl(OH)16CO・4HOの構造のものが挙げられる。また、合成品としては、Mg0.7Al0.3(CO0.16・0.54HO、Mg4.5Al(OH)12CO・3.5HO、Mg4.2Al(OH)12.4CO、ZnAl(OH)16CO・4HO、CaAl(OH)16CO・4HO、Mg14Bi(OH)29.6・4.2HO等が挙げられる。
【0059】
その他の中和剤としては、ケイ酸アルミニウムカルシウム、周期律表第II族の亜鉛、アルミニウム、錫、鉛等の金属の酸化物及び水酸化物、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩等を挙げることができる。周期律表第II族の金属の酸化物及び水酸化物としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が挙げられる。また、リチウムアルミニウム複合水酸化物塩とは、一般的には下記一般式
[LiAl(OH)X・mH
(式中において、Xは、CO、SOまたはHPOであり、mは0〜3の数である。)
で示される化合物である。好適に使用されるリチウムとアルミニウムとの複合水酸化物塩を例示すると、例えば
[LiAl(OH)CO・1.6H
[LiAl(OH)SO・1.2H
[LiAl(OH)HPO・1.4H
などを挙げることができる。かかるリチウムとアルミニウムの複合水酸化物塩は、上記の各種の造核剤に対して効果的に作用し、プロピレン・エチレン系樹脂組成物の剛性を高める。
【0060】
中和剤(成分(C))の使用量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))100重量部に対して、好ましくは0.01〜0.6重量部、より好ましくは0.02〜0.5重量部、特に好ましくは0.04〜0.15重量部である。成分(C)の配合量が0.01重量部未満では、耐酸化発熱性が劣り、0.6重量部を超えると効果が飽和しコストアップになる上、過剰な分が成形加工時に金型表面に移行して汚染したり、容器等の内容物へ移行して風味を損なったりして好ましくない。
【0061】
4.付加的成分(任意成分)
本発明で用いるポリプロピレン系樹脂組成物には、さらに、必要に応じて、上記成分(A)、成分(B)、成分(C)以外に本発明の効果を著しく損なわない範囲で、その他の付加的成分(任意成分)を添加することができる。
この様な付加的成分(任意成分)としては、エチレン・プロピレン共重合体エラストマー、エチレン・ブテン共重合体エラストマー、エチレン・ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン・オクテン共重合体エラストマー等のエチレン・α−オレフィン共重合体エラストマー、エチレン・プロピレン・エチリデンノルボルネン共重合体等のエチレン・α−オレフィン・ジエン三元共重合体エラストマー、SEBS、SEPS等のスチレン系エラストマーなどのエラストマー成分、フェノール系及びリン系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、ベンゾトリアゾール系の耐候劣化防止剤、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド等の滑剤、キナクリドン、ペリレン、フタロシアニン、酸化チタン、カーボンブラック等の着色物質、タルク、無機フィラー、ガラス繊維、等の無機充填剤、化学発泡剤、物理発泡剤などの各種発泡剤を挙げることができる。
【0062】
[II]プロピレン・エチレン系樹脂組成物
1.プロピレン・エチレン系樹脂組成物の製造
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物は、上記構成成分(A)、成分(B)、任意成分(C)、およびその他の任意成分を通常の押出機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ、ニーダー等を用いて、設定温度180〜250℃にて混練することにより製造されるが、これらの中でも押出機、特に二軸押出機を用いて製造することが好ましい。
【0063】
2.プロピレン・エチレン系樹脂組成物の物性
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物は、以下の特性(1)〜(5)を満たし、さらに必要に応じて、特性(6)を満たす必要がある。
【0064】
特性(1)MFR
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物のメルトフローレートMFR(JIS K−7210−1995、230℃、21.18N荷重)は、50〜200g/10分、好ましくは60〜150g/10分である。MFRが前記範囲未満であると成形性が不十分となる傾向があり好ましくない。また、過剰に高くなると、力学物性が低下しもろくなる。
【0065】
特性(2)CFC40℃可溶成分の分子量Mw(40)とCFC100〜140℃可溶成分の分子量Mw(140)の関係
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物は、CFC40℃可溶成分の分子量Mw(40)とCFC100〜140℃可溶成分の分子量Mw(140)が下記(i)式を満たし、好ましくは(i’)式、さらに好ましくは(i”)式を満たす。
1.5≦Mw(40)/Mw(140)≦5 (i)
2≦Mw(40)/Mw(140)≦4.5 (i’)
2.2≦Mw(40)/Mw(140)≦4.2 (i”)
Mw(40)/Mw(140)が1.5未満では、成分(B)/ゴムの低粘度化による耐衝撃性が不足し、成形品表面がべたつきやすくなり、成形時の生産性低下を引き起こし好ましくない.また、5を超えると分散不良(ゲル)による外観不良ならびに衝撃性の低下を引き起こし、好ましくない。
ここで、CFCは、前述のプロピレン・エチレンランダム共重合体の比率ならびにエチレン含量を測定する際に用いた装置、手法により測定する値である。
【0066】
特性(3)重量平均分子量Mwが3,000以下成分の総含量
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物の重量平均分子量Mwが3,000以下である成分の総含量は、1.8重量%以下、好ましくは1.5重量%以下である。
重量平均分子量が3,000以下の成分は、成形時の揮発性成分となり、金型へのブリード付着物や、ガス発生、外観不良、臭気悪化等を引き起こす。また、金型への付着物除去のため、生産を中断することとなり、生産性を低下させる。特に、ハイサイクル薄肉射出容器の場合、揮発性分によるガス発生は、金型内で急速なガスの断熱圧縮による発熱となり、成形時の焼けトラブルを引き起こす。
なお、重量平均分子量が3,000以下の成分量は、プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造時に使用する触媒の選択,重合方法、組成物の製造方法等、各種の工程で制御可能である。
ここで、重量平均分子量Mwが3,000以下である成分の総含量は、FT−IRによって得られる2945cm−1の吸光度をクロマトグラムとして使用し、各溶出成分の溶出量の合計が100%となるように規格化する。その総量中から重量平均分子量が3,000以下となる部分を計算により積算して求める値である。
【0067】
特性(4)tert−Butyl alcohol含量
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物のtert−Butyl alcohol含量は、1ppm以下、好ましくは0.5ppm以下である。tert−Butyl alcohol含量が1ppmを超えると臭気が悪くなり、食品容器として敬遠される。なお、この化合物が残存する理由は、明確ではないが、各種添加剤の分解や、組成物あるいは容器製造時、酸素共存で熱酸化劣化により生成する。従って、成形法や、成分(B)、成分(C)、任意成分の量や選択の各種工程で制御が可能である。その有効な手段は、酸素不存在下での組成物製造、溶融成形、局所的高温下での成形の排除等である。
ここで、tert−Butyl alcohol含量の測定は、後述の方法による。
【0068】
特性(5)DSC結晶化ピーク温度(Tpc)
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物のDSC結晶化ピーク温度(Tpc)は、125℃以上、好ましくは130〜140℃である。
射出成形で容器等を成形する際、金型内に充填された溶融樹脂は、冷却工程で固化し、取り出し時の形を保つ必要があるが、生産効率向上のため、ハイサイクルで連続成形する場合は、樹脂の冷却固化時間が短いことが求められている。一方、プロピレン系樹脂等の結晶性樹脂では、結晶化による製品の反りが発生し易く、金型から取り出すまでに十分な結晶化を促進する必要があるが、特に、薄肉射出成形容器は、製品肉厚が薄いために製品の面剛性が低く、取り出し後の後収縮によって反りが発生し易い。このため、良品を製造するためには、結晶化ピーク温度を一定以上に管理することが重要であり、鋭意検討した結果、造核剤を配合した樹脂組成物の結晶化ピーク温度が125℃以上であると、様々な形状の食品容器で上記要求を満たすことができることを発見するに至った。
【0069】
ここで、DSCの測定は、JIS K7122−1987に従って、以下の測定条件で結晶化ピーク温度を求め、これをTpcとした。
測定条件:
セイコー社製DSC測定装置を用い、試料(約5mg)を採り200℃で5分間融解させた後、40℃まで10℃/分の速度で冷却し、結晶化ピーク温度を測定した。
【0070】
特性(6)ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物中のガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和は、2ppm以下が好ましく、より好ましくは1.5ppm以下である。
造粒、押出、射出成形等の加工工程において、有酸素環境による樹脂劣化によってカルボン酸等の酸素含有化合物が生成し、臭気悪化の原因となる。この発生を抑制するには酸化防止剤の強化があるが、過剰配合となると、容器から内容物へ添加剤が移行し、臭い、味の変化を引き起こす。これを防止するために、成形機を窒素雰囲気下に置く方法や、低温成形等が提案されているが、完全な窒素雰囲気下にすることが困難かつ、生産効率向上に足枷となる。また、低温成形では、樹脂の溶融流動性が著しく低下し、充填不足、流動むら等の外観不良を引き起こす。本発明の樹脂組成物を使用した場合、射出成形による容器、特に薄肉容器において、良流動性であるが故に成形加工温度を低下せしめ、かつハイサイクルでの生産継続が可能であるため、上記のような酸素含有物生成を抑制できる。
【0071】
ここで、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したtert−ブタノール及び飽和直鎖脂肪族カルボン酸含量の測定は、以下の方法による。
(i)測定および評価概要
組成物あるいは成形容器を所定の重量切り出し200℃で加熱し、そこで発生する揮発成分を−150℃で捕集した後、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で各揮発成分の分離・検出および同定を行う。
各揮発成分の定量はn−エイコサンを標準とした値で計算する。ここで、対象揮発成分は、炭素数13までの飽和直鎖脂肪族カルボン酸およびtert−ブタノールである。
【0072】
(ii)装置および測定方法
(a)加熱追い出し(ダイナミックヘッドスペース)装置:ゲステル社製 TDS−A
試料0.3±0.03gを加熱追い出し管に充填し、ヘリウムを20ml/minの流量で通気させながら、200℃で30分間加熱および揮発成分を熱抽出する。
ここで、試料から発生した揮発成分は、加熱中、ガスクロマトグラフに用いたカラム先端を液体窒素で−150℃に冷却することにより捕集する。
また、捕集した成分は、捕集カラム部分を12℃/sの速度で250℃に加熱することにより脱着して分離カラムに導入する。
(b)ガスクロマトグラフ(GC):アジレント社製 HP6890
用いたカラムはアジレント社製のHP−INNO Wax(長さ:60m、内径:0.25mm、液相膜厚:0.5μm)である。
カラムの昇温条件は、40℃×15min〜5℃/min〜250×30minであり、カラム流量は1.4ml/minである。
(c)マススペクトロメーター(MS):アジレント社製 5973
測定成分のイオン化には電子衝撃(EI)法を用いる。
【0073】
(iii)評価方法
(a)1−2の測定によって得られたクロマトグラムから、下記に示す特定質量(m/z)イオンを用いて各成分のピーク面積(A)を算出する。
(a−1)飽和直鎖脂肪族カルボン酸:ギ酸はm/z46、プロピオン酸はm/z74、これ以外の物質はm/z60
(a−2)tert−ブタノール:m/z59
(b)既知量のn−エイコサンを試料と同条件で測定し、マススペクトロメーターの感度[n−エイコサンのトータルイオン面積]/[n−エイコサンの注入重量](B)を求める。
(c)(a)の各成分の面積を(b)の感度および測定に供した試料重量でそれぞれ除することにより、各成分のn−エイコサン換算発生濃度(C)を計算する。
(d)各成分の標準物質のGC/MS測定を行ない、各成分の[特定質量イオン]/[トータルイオン]の強度比(D)を算出する。
(e)(c)の特定質量イオンを用いたn−エイコサン換算濃度を(d)の強度比で除して(C/D)、トータルイオン強度におけるn−エイコサン換算発生濃度(E)を算出する。
【0074】
3.プロピレン・エチレン系樹脂組成物の機械物性
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物は、以下の機械物性(1)〜(2)を満たすものが好ましい。
【0075】
機械物性(1):0℃の面衝撃強度
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物の0℃の面衝撃強度は、2mm厚みの射出成形シートにおいて、好ましくは1.5J以上、より好ましくは2.0J以上、特に好ましくは2.5J以上である。
樹脂組成物から成形される容器の内容物が食品である場合、流通過程は低温が一般的であるが、取扱い時に落下させた場合、容器の破損を防ぐことがが重要である。特に、飲料容器、デザート容器、乳製品容器等の多くが人の扱う範囲では、おおむね50cm、望ましくは80cmくらいからの落下で破損しないことが求められている。したがって、2mm厚みの射出成形シートを使用した0℃の面衝撃強度値が1.5J以上、特に薄肉容器としては2.5J以上であれば、様々な形状の食品容器で上記要求を満たすことができる。
【0076】
機械物性(2):動摩擦係数
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物の動摩擦係数は、2mmt射出成形シートにおいて、好ましくは0.3以下である。
樹脂組成物から射出成形で容器等を連続生産している際、通常その容器は、梱包及び輸送効率化の観点から複数個積み重ねるが、自動化されたラインで、容器自体の滑りが悪いとラインの途中で引っ掛かり、停止させたり、容器の積み重ねがうまくできず、著しく生産効率を落とす。したがって、2mm厚みの射出成形シートを使用した動摩擦係数が0.3以下であれば様々な形状の食品容器で上記要求を満たすことができる。
【0077】
[III]射出成形体(容器)
1.製造
本発明のプロピレン・エチレン系樹脂組成物の射出成形体容器の成形加工法は、特に限定されるものではないが、通常の射出成形法、射出圧縮成形法又は射出発泡成形法を用いることが可能である。
例えば、型締め力50〜300tonの中〜小型射出成形機において、直径50〜150mm、容量30〜500cc、平均肉厚0.2〜2mmのカップ状容器を、成形温度150〜250℃、射出圧力20〜200MPa等の条件で成形することができる。
【0078】
2.成形体の物性
本発明の成形体(容器)は、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和は、2ppm以下が好ましく、より好ましくは1.5ppm以下である。
容器中のC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸は、押出、射出成形等の加工工程において、有酸素環境による樹脂劣化によってカルボン酸等の酸素含有化合物が生成し、臭気悪化の原因となる。この発生を抑制するには酸化防止剤の強化があるが、過剰配合となると、容器から内容物へ添加剤が移行し、臭い、味の変化を引き起こす。これを防止するために、成形機を窒素雰囲気下に置く方法や、低温成形等が提案されているが、完全な窒素雰囲気下にすることが困難かつ、生産効率向上に足枷となる。また、低温成形では、樹脂の溶融流動性が著しく低下し、充填不足、流動むら等の外観不良を引き起こす。本発明の樹脂組成物を使用した場合、射出成形による容器、特に薄肉容器において、良流動性であるが故に成形加工温度を低下せしめ、かつハイサイクルでの生産継続が可能であるため、上記のような酸素含有物生成を抑制できる。
ここで、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の測定は、前述の方法による。
【0079】
また、容器中のtert−Butyl alcohol含量は、1ppm以下が好ましく、より好ましくは0.5ppm以下である。tert−Butyl alcohol含量が1ppmを超えると容器の臭気が悪くなり、食品容器として敬遠される。なお、この化合物が残存する理由は、明確ではないが、各種添加剤の分解や、組成物あるいは容器製造時、酸素共存で熱酸化劣化により生成する。従って、成形法や、成分(B)、成分(C)、任意成分の量や選択の各種工程で制御が可能である。その有効な手段は、酸素不存在下での組成物製造、溶融成形、局所的高温下での成形の排除等である。
ここで、tert−Butyl alcohol含量の測定は、前述の方法による。
【0080】
3.成形体の用途
本発明のポリプロピレン系樹脂成形体は、上記の性能を発現できる素材であることから、種々の成形品に成形して用いることができるが、中でもプリン、ヨーグルト等のデザート容器、もずく容器、ジュース容器等食品を入れる容器が好ましい。
【0081】
【実施例】
本発明を以下に実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、物性測定法および使用材料は、以下の通りである。
【0082】
1.物性、評価方法
(1)動摩擦係数:新東科学社製スリップテスター HEIDON―14型を用いて測定した。
射出成形で得られた1辺120mm、肉厚2mmシートを35mm×65mmに打ち抜き、それを約200gの荷重底面に貼り付ける(荷重底面のサイズも打ち抜きシートと同じ)。シートを貼り付けた面を下にして同じ樹脂組成物の1辺120mmのシート上で150mm/分の速度で移動させ、その際の動摩擦係数を測定した。
(2)面衝撃強度:射出成形で得られた1辺120mm、肉厚2mmシートを、0℃に調整した低温恒温槽で2時間状態調整した。その後、一つずつシートを取り出して、素早く計装化落錘衝撃試験機にセットし、荷重〜たわみ曲線を測定し、この曲線から破壊エネルギーを求めた。
受け台径 40mm
ダート径 20mm
ダート先端形状 フラット
落錘荷重 4kg
落下高さ 200cm
(3)臭気:射出成形で得られたカップ状容器を数mm角にカットし、約80gを容量300mLの清潔な共栓付き三角フラスコに封入し,80℃に昇温・保持された熱風循環乾燥機内で2時間加熱した後,パネラーによる官能評価を行った。パネラーは事前テストにより選定された5名とした。臭気の判定基準は,下記の6段階とし,5人の平均値で表した。
0級 無臭
1級 やっと感じられる
2級 感じられる(臭いの質が分かる)
3級 かなり臭う(楽に感じる)
4級 強く臭う
5級 激しく臭う(耐えられないほど強烈)
(4)色相:射出成形で得られたカップ状容器の側面を切り出し、平らに固定した後、JIS−K7105に準拠して、光電色彩計を用いて黄色度(YI)を求めた。
(5)落下衝撃:射出成形で得られたカップ状容器に水を約180ml(200mlの90%)入れ、口部を食品包装用ラップフィルムと輪ゴムでシールし、5℃に調整した低温恒温槽で2時間状態調整した。その後、一つずつ容器を取り出して、素早く落下させ、破壊数が50%の確率になる高さを求めた。落下に供した容器は一度限りの使用として、繰り返し使用はしない。
(6)外観(ブツ):射出成形で得られたカップ状容器の外面を、目視観察によって0.2mm以上サイズを有するブツの総数を数え、3段階で評価した。
1点:0〜5個/容器 (ほとんど目立たない)
2点:5〜20個/容器 (わずかに目立つ)
3点:20個/容器 以上 (非常に目立つ)
(7)反り:射出成形で得られた箱型容器を、平らな台盤に開口部上になるように精置する。その状態で側面の反り具合を目視で観察し、3段階に評価した。
1点:反りがほとんど目立たない
2点:反りがわずかに目立つ
3点:反りが非常に目立つ
(8)スタック性:射出成形で得られたカップ状容器を平らな台盤上で一つずつ重ねていき、20個積み重ねた時の高さを目視で観察し、3段階に評価した。積み重ねていく際は、余分な力をかけず、新たに重ねる容器と重ねられる容器の中心位置を合わせ、その口部高さから垂直に自然落下させた。
1点:浮き上がりがほとんど目立たない
2点:浮き上がりがわずかに目立つ
3点:浮き上がりが非常に目立つ
(9)金型汚染:樹脂組成物を東芝射出成形機IS170に供給し、成形温度230℃、金型冷却水温度40℃、1辺120mm、肉厚2mmのシートの約50%まで充填されるよう、射出1次圧力を10〜50MPa、充填時間2秒±0.4秒で調整し、連続で100ショット成形した。その後、金型表面の付着物の程度を目視観察し、3段階評価した。
1点:ほとんど目立たない
2点:わずかに目立つ
3点:非常に目立つ
【0083】
2.使用材料
(1)プロピレン・エチレンブロック共重合体
下記の製造例1−12で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1〜PP−12)を用いた。各重合体の特性を表1に示す。
【0084】
製造例1(プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造法)
(i)固体成分触媒の製造 窒素置換した内容積50リットルの撹拌機付槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン20リットルを導入し、次いで、塩化マグネシウム10モルとテトラブトキシチタン20モルとを導入して95℃で2時間反応させた後、温度を40℃に下げ、メチルヒドロポリシロキサン(粘度20センチストークス)12000ミリリットルを導入して更に3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン5リットルを導入し、次いで、上記で合成した固体成分をマグネシウム原子換算で3モル導入した。ついで、n−ヘプタン2.5リットルに、四塩化珪素5モルを混合して30℃、30分間かけて導入して、温度を70℃に上げ、3時間反応させた後、反応液を取り出し、生成した固体成分をn−ヘプタンで洗浄した。
引き続いて、前記撹拌機付槽を用いて該槽に脱水及び脱酸素したn−ヘプタン2.5リットルを導入し、フタル酸クロライド0.3モルを混合して90℃、30分間で導入し、95℃で1時間反応させた。反応終了後、n−ヘプタンで洗浄した。次いで、四塩化珪素0.6リットル、n−ヘプタン8リットルを導入し固体成分を得た。この固体成分中にはチタンが1.55重量パーセント含まれていた。
次に、窒素置換した前記撹拌機付槽にn−ヘプタン8リットル、上記で得た固体成分を400gと、t−ブチル−メチル−ジメトキシシラン0.27モル、ビニルトリメチルシラン0.27モルを導入し、30℃で1時間接触させた。次いで15℃に冷却し、n−ヘプタンに希釈したトリエチルアルミニウム1.5モルを15℃条件下30分かけて導入、導入後30℃に昇温し2時間反応させ、反応液を取り出し、n−ヘプタンで洗浄して固体成分触媒390gを得た。
得られた固体成分触媒中には、チタンが1.35重量%含まれていた。
【0085】
(ii)プロピレン・エチレンブロック共重合体の製造
内容積400リットルの第一段反応器に、温度65℃で、圧力は使用温度での液状プロピレンの蒸気圧に相当する圧力(65℃においては約2.8MPa)に分子量調節剤としての水素の分圧を加えた圧力において、プロピレンと、トリエチルアルミニウムを16g/hr、及び、重合体生成速度が20kg/時間となるような量比の固体成分触媒(平均0.4g/Hr)を連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/プロピレンのモル比で0.14となるように連続的に供給して液相中で重合を実施し、プロピレン単独重合体を製造した(第一段階重合)。
【0086】
引き続いて、生成重合体を、プロピレンパージ槽を経由させて、内容積780リットルの第二段反応器に導入し、温度70℃で、圧力1.8MPaになるように、プロピレンとエチレンをエチレン/プロピレンのモル比で0.43となるように連続的に供給し、更に、分子量制御剤としての水素を、水素/(プロピレン+エチレン)のモル比で0.15となるように連続的に供給すると共に、活性水素化合物としてエチルアルコールを、トリエチルアルミニウムに対して1.0倍モルになるように供給して気相中で共重合を実施した後、生成重合体を連続的にベッセルに移し、水分を含んだ窒素ガスを導入して反応を停止させプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)を得た(第二段階重合)。
【0087】
得られたれたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)を分析したところ、MFRは101g/10分、成分(II)量は20.3重量%、成分(II)中のエチレン含量は41重量%であった。
【0088】
製造例2
(1)ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル]}ハフニウムの合成
(a)ラセミ・メソ混合物の合成
2−フルオロ−4−ブロモビフェニル(4.63g,18.5mmol)をジエチルエーテル(40mL)とヘキサン(40mL)の混合溶媒に溶かし、t−ブチルリチウムのペンタン溶液(22.8mL,36.9mmol,1.62N)を−78℃で滴下し、−5℃で2時間撹拌した。この溶液に2−エチルアズレン(2.36g,16.6mmol)を加え室温で1.5時間撹拌した。0℃に冷却しテトラヒドロフラン(40mL)を加えた。N−メチルイミダゾール(40μL)とジメチルジクロロシラン(1.0mL,8.30mmol)を加え、室温まで昇温し、室温で1時間撹拌した。この後、希塩酸を加え、分液した後有機相を硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下溶媒を留去すると、ジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−1,4−ジヒドロアズレン)の粗精製物(6.3g)が得られた。
【0089】
次に、上記で得られた粗精製物をジエチルエーテル(23mL)に溶かし、−78℃でn−ブチルリチウムのヘキサン溶液(10.3mL,16.6mmol,1.56mol/L)を滴下し、徐々に昇温して室温で2時間撹拌した。さらに、トルエン(185mL)を加え、−78℃に冷却し、四塩化ハフニウム(2.65g,8.3mmol)を加え、徐々に昇温し室温で一夜撹拌した。得られたスラリー溶液から減圧下大部分の溶媒を留去し、濾過したのち、トルエン(4mL)、ヘキサン(9mL)、エタノール(20mL)、ヘキサン(10mL)で洗浄すると、ジクロロ{1,1’−ジメチルシリレンビス[2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニリル)−4H−アズレニル]}ハフニウムのラセミ・メソ混合物(1.22mg,収率16%)が得られた。
【0090】
(b)ラセミ体の精製
上記で得られたラセミ・メソ混合物の粗精製物(1.1g)をジクロロメタン(30mL)に懸濁し、高圧水銀灯(100W)を用いて30分光照射した。この溶液を減圧下溶媒を留去した。得られた固体にジクロロメタン(40mL)を加え懸濁させ、濾過した。ヘキサン(3mL)で洗浄し、減圧下乾燥するとラセミ体の精製物(577mg,52%)が得られた。同定結果は下記の通りであった。
H−NMR(300MHz,CDCl)δ1.02(s,6H,SiMe),1.08(t,J=8Hz,6H,CHCH),2.54(sept,J=8Hz,2H,CHCH),2.70(sept,J=8Hz,2H,CHCH),5.07(brs,2H,4−H),5.85−6.10(m,8H),6.83(d,J=12Hz,2H),7.30−7.6(m,16H,arom).
【0091】
(2)イオン交換性層状珪酸塩の化学処理
攪拌翼、還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、イオン交換水500gを投入し硫酸リチウム611g(5.93mol)を投入して攪拌する。
別に、硫酸581g(5.93mol)をイオン交換水500gで希釈し、滴下ロートを用いて上記硫酸リチウム水溶液に滴下し混合する。
ついで、市販の造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:28.0μm)を350g添加し攪拌する。その後30分かけて108℃まで昇温し150分維持する。その後、1時間かけて50℃まで冷却した。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、減圧ろ過を実施した。ケーキを回収し、純水を5.0L加え再スラリー化し、ろ過を行った。この操作をさらに5回繰り返した。ろ過は、いずれも数分かからずに終了した。最終の洗浄液(ろ液)のpHは、5であった。
回収したケーキを窒素雰囲気下110℃で終夜乾燥した。その結果、290gの化学処理体を得た。蛍光X線により組成分析を行ったところ、主成分であるケイ素に対する構成元素のモル比は、Al/Si=0.18、Mg/Si=0.042、Fe/Si=0.020であった。
【0092】
(3)触媒の調製/予備重合
以下の操作は、不活性ガス下、脱酸素、脱水処理された溶媒、モノマーを使用して実施した。先に製造した化学処理されたイオン交換性層状珪酸塩造粒体を減圧下、200℃、4時間乾燥した。
内容積10Lのオートクレーブに上記で得た化学処理モンモリロナイト200gを導入し、ヘプタン1160mL、さらにトリエチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.6mmol/mL)840mL(0.5mol)を30分かけて投入し、25℃で1時間攪拌した。その後、スラリーを静止沈降させ、上澄み1300mLを抜き出した後に2500mLのヘプタンにて2回洗浄し最終的にヘプタン全量が1200mLになるようにヘプタンを足して調整した。
次に、2Lフラスコにジメチルシリレンビス(2−エチル−4−(2−フルオロ−4−ビフェニル)−4H−アズレニル)ハフニウムジクロリド 5.93g(6mol)とヘプタン516mLを投入し、よく攪拌した後に、トリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(140mg/mL)を84mL(11.8g)を室温にて加え、60分攪拌した。
続いて、先にオートクレーブ中に調製したモンモリロナイトスラリーに上記溶液を導入し、60分攪拌し、更にヘプタンを全容積が5Lになるまで導入して、30℃に保持した。
そこにプロピレンを100g/hrの定速で、40℃で4時間導入し、引き続き50℃で2時間維持した。サイホンにて予備重合触媒スラリーを回収し、上澄み除去後、40℃にて減圧下乾燥した。この操作により固体触媒1g当たりポリプロピレンを1.7g含む予備重合触媒が得られた。
【0093】
(4)重合/プロピレン系ブロック共重合体の製造
内容積0.4mの攪拌装置付き液相重合槽並びに0.5mの攪拌式気相重合槽の間に、沈降液力分級器、濃縮器(液体サイクロン)、および向流ポンプからなる分級システム、および脱ガス槽を組み込んだプロセスにより、プロピレン・エチレンブロック共重合体の連続製造を実施した。
液相重合槽には、液化プロピレン、水素、トリイソブチルアルミニウム(TIBA)を連続的にフィードした。なお、液化プロピレン、TIBAのフィード量は、それぞれ、90kg/hr、10.6g/hrであり、水素は、モル濃度[H]が380ppmになるようにフィードした。
さらに、上記で得た予備重合触媒を、固体触媒成分換算で2.21g/hrとなるようにフィードした。また、重合温度が65℃となるように、重合槽を冷却した。
【0094】
この重合槽で重合したスラリーは、分級システムを通して、該スラリーに含まれるポリプロピレン粒子として約16.5kg/hrで、脱ガス槽に抜き出した。該ポリプロピレン粒子の液相重合槽ならび循環ラインにおける平均滞留時間は1.20時間であった。
また、該ポリプロピレン粒子の平均粒径Dp50は555μm、触媒効率CEは7400g/gであった。なお、触媒効率CEは、固体触媒成分(A)中に含まれる固体成分1gあたりのポリプロピレン収量(g)で定義するものである。
【0095】
脱ガス槽においては、下部より加熱したプロピレンガスをフィードしながら、槽内温度を65℃に維持した。ここで得られた固体状ポリプロピレン粒子を、気相重合槽に送り、プロピレンとエチレンの共重合(EPR重合)を行った。エチレンとプロピレンの分圧の和が1.4MPaG、かつ、エチレンのモル分率が60mol%、水素濃度が60ppmで一定となるようにコントロールして、重合を行った。さらに、活性水素化合物としてエタノールをフィードした。エタノールのフィード量は、気相重合槽に供給される重合体粒子に随伴して供給されるTIBA中のアルミニウムに対して、モル比で0.46となるようにした。重合温度は65℃で、気相重合槽7から抜き出したプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)の抜き出しレートが、約20.5kg/hrになるように調節した。気相重合槽における平均滞留時間は、1.6hrであった。
【0096】
気相重合槽から抜き出された重合体粒子(PP−2)を分析したところ、MFRは51g/10分、かさ密度(BD)は0.486g/cc、成分(II)量は20.4重量%、成分(II)中のエチレン含量は40重量%であった。なお、プロピレン・エチレンブロック共重合体の触媒効率CEは、9300g/gであった。
【0097】
製造例3〜12
第一段階重合における重合温度を65℃または70℃にし、分子量制御剤としの水素量を、目的とするMFRに応じて水素/プロピレンのモル比で0.04〜0.2に変化させ、2段目の共重合体製造量の調節で滞留時間を一部変化させる以外は製造例1と同様にしてプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−3〜PP−12)を得た。各重合体の物性値を表1に示す。
【0098】
【表1】
Figure 2005047943
【0099】
(2)造核剤
(i)造核剤(B−1):有機燐酸エステル金属塩(旭電化工業社製;NA11)
(ii)造核剤(B−2):有機ジカルボン酸金属塩(Milliken Chemical社製;HPN−68)
(iii)造核剤(B−3):タルク(林化成社製;ミクロホワイト#5000S)
(iv)造核剤(B−4):ソルビトール(三井化学ファイン社製;NC−6)
【0100】
実施例1
(1)樹脂組成物の製造
プロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))として、製造例1で得られた(PP−1)パウダー100重量部に対して、造核剤(B−1)0.15重量部、中和剤のステアリン酸カルシウム0.05重量部、フェノール系酸化防止剤のペンタエリスチル−テトラキス[3−(3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](チバスペシャルティケミカルズ(株)社製;以下RA1010と略す。)0.02重量部、リン系酸化防止剤のトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファィト(チバスペシャルティケミカルズ(株)社製;以下RA168と略す。)0.02重量部、スリップ剤としてオレイン酸アミド0.15重量部を添加し、スーパーミキサーで窒素シール後、3分間混合した。その後、パウダーは東芝機械社製2軸押出機TEM35を用いホッパーを窒素シールしながらシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpm,押出量15kg/hで造粒し、プロピレン・エチレン系樹脂組成物のペレットを得た。
得られたプロピレン・エチレン系樹脂組成物のペレットの物性等を表2に示す。
【0101】
(2)射出成形による容器の製造
上記で得られた樹脂組成物ペレット試料を東芝射出成形機IS170に供給し、射出1次圧力80Mpa、充填時間1秒±0.2秒で成形できるように成形温度170℃〜280℃で調整し、金型冷却水温度40℃、成形サイクル15秒で容量200ml、肉厚0.7mmのカップ状容器を成形した。
また、同じく東芝射出成形機IS170に供給し、射出1次圧力60MPa、成形温度230℃、金型冷却水温度40℃、成形サイクル30秒で1辺120mm、肉厚2mmのシートを成形した。
また、同じく東芝射出成形機IS170に供給し、射出1次圧力60MPa、2次圧力50MPa、成形温度230℃、金型冷却水温度40℃、成形サイクル10秒で長辺110mm、短辺70mm、高さ45mm、肉厚2mmの箱型成形品を成形した。
射出成形したカップ状容器、箱型容器及びシートを、恒温恒湿状態(温度23±2℃、湿度50±5%)で48時間状態調整し、各種評価を行った。その結果を表2に示す。
【0102】
実施例2〜3
造核剤(成分(B))として、造核剤(B−2)、造核剤(B−3)を表2に記載の量を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表2に示す。
【0103】
実施例4
成分(A)として、製造例2で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−2)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表2に示す。
【0104】
実施例5
成分(A)として、製造例3で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−3)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表2に示す。
【0105】
実施例6
成分(A)として、製造例4で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−4)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表2に示す。
【0106】
実施例7
成分(A)として、製造例5で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−5)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表2に示す。
【0107】
実施例8
実施例1で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−1)ペレットを、東洋精機製ギアーオーブンを用い、窒素を微量(約毎分1000mL)流しながら110℃で4時間、乾燥処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表2に示す。
【0108】
比較例1
造核剤(B−1)を添加しない以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0109】
比較例2
成分(A)として、製造例6で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−6)を、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンで造粒後のMFRが100g/10分になるよう調整した以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0110】
比較例3
成分(A)として、製造例6で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−6)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0111】
比較例4
成分(A)として、製造例7で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−7)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0112】
比較例5
成分(A)として、製造例8で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−8)を用いる以外は、比較例2と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0113】
比較例6
成分(A)として、製造例9で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−9)を用いる以外は、比較例2と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0114】
比較例7
成分(A)として、製造例10で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−10)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0115】
比較例8
成分(A)として、製造例11で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−11)を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0116】
比較例9
成分(A)として、製造例12で得られたプロピレン・エチレンブロック共重合体(PP−12)を、2,5−ジメチル−2,5ジ−(t−ブチルパーオキシ)ヘキサンで造粒後のMFRが50g/10分になるよう調整した以外は、比較例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0117】
比較例10
造核剤(成分(B))として、造核剤(B−4)を表3に記載の量を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂組成物、容器を得た。その結果を表3に示す。
【0118】
【表2】
Figure 2005047943
【0119】
【表3】
Figure 2005047943
【0120】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物は、射出成形時の成形加工性が良好で、曲げ弾性率、低温耐衝撃性、特に溶出成分や臭いの発生が少ないので、食品や医療用の射出成形容器例えば、プリン、ヨーグルト等のデザート容器、もずく容器、ジュース容器等食品を入れる容器等に好適に用いることができる。

Claims (9)

  1. (I)プロピレン単独、もしくは0.1〜5重量%のエチレンを含有するプロピレン系重合部分67〜82重量%と、
    (II)エチレン含量が15〜60重量%であるプロピレン・エチレンランダム共重合部分18〜33重量%
    からなるプロピレン・エチレンブロック共重合体(成分(A))100重量部に対して、
    造核剤(成分(B))0.05〜0.7重量部を含有し、下記特性(1)〜(5)を満たすことを特徴とするプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
    特性(1)MFR(230℃、荷重2.16kg)が50〜200g/10分
    特性(2)CFC40℃可溶成分の分子量Mw(40)とCFC100〜140℃可溶成分の分子量Mw(140)が下記(i)式を満たす。
    1.5≦Mw(40)/Mw(140)≦5 (i)
    特性(3)重量平均分子量Mwが3,000以下である成分の総含量が1.8重量%以下
    特性(4)tert−Butyl alcohol含量が1ppm以下
    特性(5)DSC結晶化ピーク温度(Tpc)が125℃以上
  2. さらに、中和剤(成分(C))を成分(A)100重量部に対し、0.01〜0.6重量部含有することを特徴とする請求項1に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
  3. 下記特性(6)をさらに満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
    特性(6)ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和が2ppm以下
  4. 2mmt射出成形シートにおける、0℃の面衝撃強度が2J以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
  5. 2mmt射出成形シートにおける、動摩擦係数が0.3以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
  6. 造核剤(成分(B))が、有機燐酸エステル金属塩または有機ジカルボン酸金属塩化合物であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
  7. プロピレン・エチレン系重合体が、メタロセン触媒を用いて重合したことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか1項に記載のプロピレン・エチレン系樹脂組成物を射出成形して得られる容器。
  9. 容器が、ガスクロマトグラフ(GC)/マススペクトロメーター(MS)で測定したC1〜C13の直鎖状脂肪族カルボン酸含量の総和が2ppm以下、かつtert−Butyl alcohol含量が1ppm以下の薄肉食品用容器であることを特徴とする請求項8に記載の容器。
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