JP3777203B2 - プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体及びその製造方法 - Google Patents
プロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体及びその製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、低分子量非晶成分の量が少なく、分子量分布が広く、且つ共重合体中に含まれる触媒残渣が極めて少ないプロピレンエチレンブテン−1三元共重合体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来よりプロピレンとエチレンをランダム共重合することにより得られる共重合体は、プロピレンの単独重合体に比べ、耐衝撃性、透明性に優れ、更に、比較的低融点となるためにヒートシール性が優れるなどの特徴を有しており、各種フィルムよりなる包装材料の分野で幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら、従来技術によるプロピレンエチレンランダム共重合体は、上記用途分野でその品質面で十分満足すべきものとは言えず、未だ用途によってはその使用が制限される課題があった。例えば、耐衝撃性、ヒートシール性をより向上させる手段と一般にランダム共重合体中のエチレン含有量を高くする方法が知られているが、エチレン含有量を高くすることにより、低分子量非晶性成分の副生量が著しく増加し、フィルムのべたつき性が増加し、ブロッキング現象を引き起こすため商品価値を損ねるという課題があった。一方、該ランダム共重合体の製造に於いても、プロピレンを媒体としたスラリー重合により製造する際には、共重合体粒子の互着、重合系の粘度の増加により生産性が低下するばかりか、生産上の重大なトラブルとなる課題があった。
【0004】
このような課題を解決する手段についてもこれまでに種々提案されている。特開昭59ー47210号公報には、プロピレンとエチレン及びブテン−1をランダム共重合することにより、ヒートシール性に優れ、且つ溶剤可溶性重合体の副生を抑える方法が開示されている。
【0005】
しかしながら、この方法で得られた三元共重合体では低分子量非晶性成分の量は比較的低減されているもののフィルムに成形された際の耐ブロッキング性は未だ満足のいくものではなく、更に共重合体の分子量分布が狭く、溶融張力が低下することで、成形性、フィルムのヤング率において改良の余地があった。
【0006】
一方、ポリプロピレン、及び、プロピレン系共重合体は、一般に、ハロゲン化チタン化合物、有機アルミニウム化合物よりなる触媒を用いて製造されることは周知のことである。これら触媒残渣が重合体中に多量に残存した場合には、成形品の色調が黄色となる外観不良の問題が生じ、特に、重合体中に塩素原子が多量に残存している場合には、重合体に加工助剤、塩素捕捉剤として一般に用いられるステアリン酸カルシウム等の金属石鹸が配合された際、塩素原子と反応してステアリン酸などの脂肪酸を遊離し、フィルムに成形する場合のロール汚れや目やに現象を生じフィルムの等の品質を損なうという問題を生じていた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、フィルムに成形する際の成形性、及び得られたフィルムのヒートシール性、耐ブロッキング性に優れ、更にヤング率、透明性、外観等の品質バランスを十分に満足するプロピレン系の共重合体が望まれていた。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、低分子量非晶成分の量が少なく、分子量分布が広く、且つ触媒残渣の少ない共重合体を得ることに成功し、上記の課題を解決できることを見い出し本発明を完成した。
【0009】
即ち、本発明によれば、メルトフローレイトが0.1〜30g/10分、エチレンに基づく単量体単位が1〜10モル%、プロピレンに基づく単量体単位が84〜98モル%、ブテン−1に基づく単量体単位が1〜6モル%であるプロピレン−エチレン−ブテン−1三元ランダム共重合体であって、該エチレンに基づく単量体単位E(モル%)と低温トルエン可溶分S(wt%)との関係が、式
S≦0.37×E+1.5
を満足し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が6以上であり、且つ、共重合体中に含有されるチタン原子が3ppm以下、塩素原子が30ppm以下であることを特徴とするプロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体が提供される。
【0010】
本発明の三元共重合体のメルトフローレイトは、0.1〜30g/10分である。即ち、0.1g/10分以下では溶融流動性に劣り、また30g/10分以上では、溶融張力に劣り、いずれも成形性が低下するために好ましくない。成形性を勘案すると、好ましい範囲は、0.3〜25g/10分、更に好ましくは、0.5〜20g/10分である。
【0011】
本発明の三元共重合体は、実質的にプロピレン、エチレン及びブテン−1に基づく単量体単位から構成されるランダム共重合体であり、共重合体中に含有されるエチレンに基づく単量体単位(以下、単に「エチレン単位」ともいう)は、1〜10モル%、ブテン−1に基づく単量体単位(以下、単に「ブテン−1単位」ともいう)は、1〜6モル%である。即ち、上記組成の範囲外では、フィルムに成形した場合のヒートシール性と耐ブロッキング性を勘案したバランスが十分に発揮されないために好ましくない。例えば、エチレン単位又はブテン−1単位がそれぞれ1モル%未満では、これを使用して得られるフィルムにおけるヒートシール性、透明性に劣り、一方、エチレン単位が10モル%を越える場合、又はブテン−1単位が6モル%を越える場合には、耐ブロッキング性、ヤング率が低下するために好ましくない。上記の品質バランスを勘案し、より好ましい組成範囲は、エチレン単位が、1.2〜8モル%、更に好ましくは、1.5〜6モル%であり、ブテン−1単位は、1.5〜5.5モル%、更に好ましくは、2〜5モル%の範囲である。
【0012】
尚、本願明細書において、フィルムは厚みについて厳密な意味を有するものではなく、シートをも包含するものである。
【0013】
本発明の三元共重合体は、後述する予備重合工程に於いて重合されるプロピレンまたは、他のαーオレフィンの単独重合体成分を微量含むことができる。この場合、該単独重合体成分の含有量は、予備重合倍率により異なるが、通常、0.5重量%以下である。上記プロピレン以外のαーオレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ヘキセン−1等の直鎖状αーオレフィン、3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ビニルシクロアルカン等の分岐状αーオレフィンを挙げることができる。
【0014】
本発明の三元共重合体は、低分子量非晶性成分の量が少ない点が特徴である。本発明の三元共重合体の低温トルエン可溶分S(wt%)の値は、エチレンに基づく単量体単位E(モル%)との関係において、式
S≦0.37×E+1.5
を満足することが重要である。即ち、低温トルエン可溶分が上記の関係式の範囲外では、成形品のべたつき性、特にフィルムの耐ブロッキング性が低下するために好ましくない。
【0015】
上記の低温トルエン可溶分Sのより好ましい範囲は、
S≦0.37×E+1.0
であり、更に好ましくは、
S≦0.35×E+1.0
である。
【0016】
尚、本発明において、三元共重合体の低温トルエン可溶分の値は、三元共重合体をトルエンに100℃で完全に溶かした後、−18℃に冷却後、静置して析出した成分は濾別し、トルエン溶液を完全に濃縮することにより得られた可溶分の量より下記式により求めた値である。
【0017】
S=(可溶分の量(g)/使用した三元共重合体の量(g))×100
また、本発明の三元共重合体は、ゲルパエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表される分子量分布が6以上である。Mw/Mnが6未満では、溶融張力が低下し、加工性が低下するばかりか、フィルム、シートとなった場合のヤング率が低下し好ましくない。Mw/Mnの好ましい値は、6.5以上である。
【0018】
本発明の三元共重合体は、重合体中に残存する触媒残渣が少ないことも特徴とする。即ち、重合体中に残存する触媒残渣が少ないことにより塩素捕捉剤として金属石鹸を用いた場合の脂肪酸の遊離によるロール汚れがなく、且つ色調、外観にも優れるという効果を有する。本発明の三元共重合体では、残存するチタン原子が3ppm以下、好ましくは、2ppm以下である。一方、塩素原子の濃度は30ppm以下であり、好ましくは、20ppm以下である。
【0019】
上記チタン原子の濃度が3ppmを越える場合には、成形品となった場合の色調が黄色くなり好ましくない。また、塩素原子の濃度が、30ppmを越えた場合は、添加した金属石鹸から脂肪酸が遊離しロール汚れを生じ、フィルム、シートの外観不良の原因となるために好ましくない。
【0020】
これらの原子の濃度は、蛍光X線法または原子吸光法によって測定することができる。
【0021】
本発明の三元共重合体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば以下の方法で製造することができる。
【0022】
即ち、下記成分〔A〕、〔B〕、〔C〕の触媒の存在下にプロピレンとエチレンとブテン−1をランダム共重合する方法である。
【0023】
〔A〕マグネシウム、チタン、及びハロゲンを必須成分として含有する固体チタン化合物
〔B〕有機アルミニウム化合物
〔C〕ジシクロペンチルジメトキシシラン
本発明で用いられるチタン化合物〔A〕は、オレフィンの重合に使用されることが公知の化合物が何ら制限なく採用される。特に、チタン、マグネシウム及びハロゲンを成分とする触媒活性の高いチタン化合物が好適である。このような触媒活性の高いチタン化合物は、ハロゲン化チタン、特に四塩化チタンを種々のマグネシウム化合物に担持させたものとなっている。この触媒の製法は公知の方法が何ら制限なく採用される。例えば、四塩化チタンを塩化マグネシウムなどのマグネシウム化合物と共粉砕する方法、アルコール、エーテル、エステル、ケトン又はアルデヒド等の電子供与体の存在下にハロゲン化チタンとマグネシウム化合物とを共粉砕する方法、または、溶媒中でハロゲン化チタン、マグネシウム化合物及び電子供与体を接触させる方法等が挙げられる。そのようなチタン化合物の製法は、例えば、特開昭56−155206号公報、同56−136806、同57−34103、同58−8706、同58−83006、同58−138708、同58−183709、同59−206408、同59−219311、同60−81208、同60−81209、同60−186508、同60−192708、同61−211309、同61−271304、同62−15209、同62−11706、同62−72702、同62−104810等に示されている方法が採用される。
【0024】
次に有機アルミニウム化合物〔B〕も、オレフィンの重合に用いられることが公知の化合物を何等制限なく使用できる。例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ−nプロピルアルミニウム、トリ−nブチルアルミニウム、トリ−iブチルアルミニウム、トリ−nヘキシルアルミニウム、トリ−nオクチルアルミニウム、トリ−nデシルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム類、エチルアルミニウムジクロライド、エチルアルミニウムセスキクロライド、ジエチルアルミニウムクロライド、ジエチルアルミニウムブロマイド、ジエチルアルミニウムアイオダイド、ジイソブチルアルミニウムクロライド、ジn−プロピルアルミニウムクロライド、エチルアルミニウムジブロマイド、エチルアルミニウムジアイオダイド、イソブチルアルミニウムジクロライド、イソブチルアルミニウムジブロマイド、イソブチルアルミニウムジアイオダイド等のハロゲン原子含有のアルキルアルミニウム類を用いることが出来る。また、モノエトキシジエチルアルミニウム、ジエトキシモノエチルアルミニウム等のアルコキシアルミニウム類を用いることもできる。
【0025】
本発明の成分〔C〕としては、ジシクロペンチルジメトキシシランが用いられる。ジシクロペンチルジメトキシシラン以外の化合物では、得られる三元共重合体の分子量分布が十分に広くならないために好ましくない。
【0026】
本発明のランダム共重合体は、上記の触媒成分の存在下にプロピレンとエチレンとブテン−1の三元ランダム共重合を施すことにより得られるが、三元共重合体の低温トルエン可溶分をより低減させ、且つ重合により得られる重合体粒子の粒子性状を向上させるためには三元ランダム共重合を施すに先立ってチタン化合物〔A〕をプロピレンまたは他のαーオレフィンにより予備重合を施すことが有効である。
【0027】
該予備重合の条件は特に限定されるものではないが、下記の条件で行われることがより好ましい。即ち、
〔A〕チタン化合物
〔B〕有機アルミニウム化合物
〔D〕一般式〔I〕
R1R2Si(OR3)2 〔I〕
(ここで、R1、R2およびR3は、同一または異なる炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で示される有機ケイ素化合物
および、必要に応じ、
〔E〕一般式〔II〕
R4I 〔II〕
(ここで、R4は、ヨウ素原子であるかあるいは炭素数1〜20の炭化水素基である。)
で示されるヨウ素化合物
の存在下にプロピレンまたは他のα−オレフィンを〔A〕チタン化合物の1g当たり0.1〜50gを予備重合せしめる方法が好適である。
【0028】
予備重合で用いられる〔B〕有機アルミニウム化合物は、上記に示した化合物をそのまま採用することができる。
【0029】
予備重合で使用する有機アルミニウム化合物〔B〕の使用量は特に制限されるものではないが、一般にチタン化合物中のTi原子に対しAl/Ti(モル比)で1〜100であることが好ましく、さらに3〜10であることが好ましい。
【0030】
さらに、有機ケイ素化合物〔D〕は、前記一般式〔I〕で示される化合物を何ら制限なく採用されるが、ランダム共重合に用いられるジシクロペンチルジメトキシシラン以外の化合物を用いることが得られる三元共重合体粒子の互着を防止でき、粒子性状をより向上させることができるためにより好ましい態様となる。
【0031】
前記一般式中、R1、R2およびR3で示される炭素数1〜20の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、および後述するようなシクロペンチル基、アルキル基置換シクロペンチル基、シクロヘキシル基、アルキル基置換シクロヘキシル基、t−ブチル基、t−アミル基、フェニル基、アルキル置換フェニル基等が挙げられる。
【0032】
本発明において好適に用いられる有機ケイ素化合物を例示すると次の通りである。例えば、ジt−ブチルジメトキシシラン、ジt−アミルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ジ(2−メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(3−メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2−エチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,3−ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,4−ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,5−ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,3−ジエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4−トリメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,5−トリメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4−トリエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(テトラメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(テトラエチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジ(2−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(3−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(4−メチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2−エチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,4−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,5−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,6−ジメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3−ジエチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4−トリメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,5−トリメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,6−トリメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,4,5−トリメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,4,6−トリメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4−トリエチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4,5−テトラメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4,6−テトラメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,5,6−テトラメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(2,3,4,5−テトラエチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(ペンタメチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、ジ(ペンタエチルシクロヘキシル)ジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−アミルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルメチルジメトキシシラン、シクロペンチルエチルジメトキシシラン、シクロペンチルイソブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルイソブチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシランなどを挙げることができる。
【0033】
予備重合で用いる有機ケイ素化合物の使用量は特に制限されるものではないが、一般にはチタン化合物中のTi原子に対しSi/Ti(モル比)で0.1〜100であることが好ましく、0.5〜10であることが好ましい。
【0034】
更に、予備重合に於いて、得られる三元共重合体の低温トルエン可溶分量をより低下させるためにヨウ素化合物〔E〕を用いることが好ましい。
【0035】
ヨウ素化合物〔E〕は、前記一般式〔II〕で示される化合物が何等制限なく採用される。前記一般式〔II〕中のR4は、ヨウ素原子であるかあるいは炭素数1〜20の炭化水素基であり、炭化水素基の場合はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基等の炭化水素基である。本発明において好適に使用できるヨウ素化合物を具体的に例示すれば、例えば、ヨウ素、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ヨウ化プロピル、ヨウ化ブチル、ヨウドベンゼン、p−ヨウドトルエン等である。中でもヨウ素、ヨウ化メチル、ヨウ化エチルなどが好ましい。
【0036】
予備重合で用いるヨウ素化合物の使用量は特に制限されないが、一般にはチタン化合物中のTi原子に対し、I/Ti(モル比)で0.1〜100であることが好ましく、さらに0.5〜50であることが好ましい。
【0037】
予備重合で用いる上記の各成分は逐次添加されてもよく、一括混合されたものを用いても良い。逐次添加の場合の添加順序は特に限定されない。
【0038】
予備重合でのプロピレンまたはα−オレフィンの重合量は、チタン化合物1g当り0.1〜50g、好ましくは1〜20gの範囲であり、工業的には1〜10gの範囲が好適である。予備重合で用いられるプロピレン以外のα−オレフィンとしては、エチレン、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1等の直鎖状α−オレフィンの他に3−メチルブテン−1、4−メチルペンテン−1、ビニルシクロアルカン等の分岐αーオレフィンが挙げられる。また、上記のプロピレンまたはα−オレフィンを2種類以上同時に使用することも可能である。また、予備重合で水素を共存させることも可能である。
【0039】
予備重合は通常スラリー重合を適用させるのが好ましく、溶媒として、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエンなどの飽和脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水素を単独で、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。予備重合温度は、一般に−20〜100℃、特に0〜60℃の温度が好ましく、予備重合を多段階に行う場合には各段で異なる温度の条件下で行ってもよい。予備重合時間は、予備重合温度及び予備重合での重合量に応じ適宜決定すればよく、予備重合における圧力は限定されるものではないが、スラリー重合の場合は、一般に大気圧〜5kg/cm2程度である。予備重合は、回分、半回分、連続のいずれの方法で行ってもよい。予備重合終了時には、ヘキサン、ヘプタン、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン等の飽和脂肪族炭化水素もしくは芳香族炭化水素を単独で、又は混合溶媒で洗浄することが好ましく、洗浄回数は通常の場合5〜6回が好ましい。
【0040】
本発明において、プロピレンとエチレンとブテン−1の三元ランダム共重合は上記予備重合を行った場合、得られる予備重合触媒、〔B〕有機アルミニウム化合物及び〔C〕ジシクロペンチルジメトキシシラン
【0041】
【化1】
【0042】
の存在下に本重合が行われる。
【0043】
上記製造方法において、触媒成分として該ジシクロペンチルジメトキシシランを使用することにより、得られる三元共重合体は、重合後、溶剤による抽出、分別、洗浄等の後処理をしない場合においても、低温トルエン可溶分が前記範囲の低い値を示す。また、かかる方法により得られる三元共重合体は、重合後、溶剤による抽出、分別、洗浄等の後処理をしない場合でも、原子の濃度が前記した低い値を示す。
【0044】
本発明における本重合における重合条件は、本発明の効果が認められる限り特に制限されず、公知の方法を採用することができるが、一般には次の条件が好ましい。
【0045】
有機アルミニウム化合物〔B〕の使用量は特に制限されないが、一般には、予備重合で得られたチタン化合物中のTi原子に対しAl/Ti(モル比)で10〜1000であることが好ましく、さらには20〜500であることが好適である。
【0046】
ジシクロペンチルジメトキシシラン〔C〕の使用量は特に制限されるものではないが、一般にはチタン化合物のTi原子に対しSi/Ti(モル比)で0.1〜1000であることが好ましく、さらに1〜100であることが好ましい。これら本重合に用いられる成分の添加順序はとくに制限されず。有機アルミニウム化合物と有機ケイ素化合物を混合して用いても差し支えない。
【0047】
重合温度は20〜200℃、好ましくは50〜150℃であり、分子量調節剤として水素を共存させることもできる。また、重合は、スラリー重合、無溶媒重合、及び気相重合にも適用でき、回分式、半回分式、連続式のいずれの方法でもよく、更に重合を上記の範囲内で条件の異なる2段以上に分けて行うこともできる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の三元共重合体は、低温トルエン可溶分が少なく、分子量分布が広く、且つ重合体中に残存する触媒残渣が少ないために、これをフィルムに成形する場合の成形性が良好で、また、耐ブロッキング性に優れた特性を有するフィルムが得られるために、各種延伸フィルム、無延伸フィルム、シート材料として好適に用いることができる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例を掲げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例において用いた測定方法について説明する。
【0050】
(1)メルトフロ−レイト(以下、MFRと略す)
ASTM D−790に準拠した。
【0051】
(2)エチレン含有量
赤外分光法により測定した。
【0052】
(3)低温トルエン可溶分量
ポリマー1gをトルエン100CCに加え攪拌しながら100℃まで昇温した後、更に30分攪拌を続け、ポリマーを完全に溶かした後、トルエン溶液を−18℃、24時間放置した。析出物は濾別し、トルエン溶液を完全に蒸発することで可溶分を得た。
【0053】
低温トルエン可溶分量(wt%)=(トルエン可溶分(g)/ポリマー1g)×100
で表される。
【0054】
(4)分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した。即ち、ウォーターズ社製GPC−150Cにより、o−ジクロロベンゼンを溶媒として135℃で測定を行った。用いたカラムは、東ソ−社製TSK−gel GMH6−HT、ゲルサイズ10〜15μmである。較正曲線は、標準試料として、重量平均分子量が、950、2900、一万、5万、270万、490万のポリスチレンを用いた。
【0055】
(5)重合体中の残存チタン濃度、塩素濃度の測定
ポリマー約10gを230℃でプレス成形を行い、円盤状のシートを作成した後、理学電機社製全自動蛍光X線分析装置システム3080を用い測定を行った。
【0056】
(6)嵩比重
JIS K6721に準拠した。
【0057】
(7)ヤング率
JIS K6758に準拠し、樹脂の流れ方向のヤング率を測定した。
【0058】
(8)ブロッキング値
2枚のフィルムまたはシート(12cm×12cm)を重ね合わせ、10kgの荷重をかけて温度40℃、湿度90%RHの雰囲気に24時間放置後、4cm×4cmにサンプルを切り出し、引張り試験機(速度:100mm/分)で剥離強度を測定した。
(9)ロールの汚れ
8時間連続製膜後、目視により判定した。
【0059】
実施例1
〔チタン化合物の調製〕
チタン成分の調製法は、特開昭58−83006号公報の実施例1の方法に準じて行った。即ち、無水塩化マグネシウム0.95g(10mmol)、デカン10ml、及び2−エチルヘキシルアルコール4.7ml(30mmol)を125℃で2時間加熱攪拌した。この溶液中に無水フタル酸0.55g(6.75mmol)を添加し、125℃にて更に1時間攪拌混合を行い均一溶液とした。室温まで冷却した後、120℃に保持された四塩化チタン40ml(0.36mol)中に1時間にわたって全量滴下装入した。その後、この混合溶液の温度を2時間かけて110℃に昇温し、110℃に達したところでジイソブチルフタレート0.54mlを添加し、これより2時間110℃にて攪拌下に保持した。
【0060】
2時間の反応終了後、濾過し固体部を採取し、この固体部を200mlのTiCl4にて再懸濁させた後、再び110℃で2時間の加熱反応を行った。反応終了後、再び熱濾過にて固体部を採取し、デカン及びヘキサンにて、洗液中に遊離のチタン化合物が検出されなくなるまで十分洗浄した。固体Ti触媒の組成はチタン2.1重量%、塩素57重量%、マグネシウム18.0%、及びジイソブチルフタレート21.9重量%であった。
【0061】
〔予備重合〕
N2置換を施した内容積1lのオートクレーブに、精製n−ヘキサン200ml、トリエチルアルミニウム50mmol、ジフェニルジメトキシシラン10mmol、ヨウ化エチル50mmol、及び固体Ti触媒成分をTi原子換算で5mmol装入した後、プロピレンを固体触媒成分1gに対し3gとなるように30分間連続的にオートクレーブに導入した。なお、この間の温度は15℃に保持した。30分後に反応を停止し、オートクレーブ内をN2で充分に置換した。得られたスラリーの固体部分を精製n−ヘキサンで4回洗浄し、チタン含有ポリプロピレンを得た。分析の結果、固体Ti触媒成分1gに対し2.1gのプロピレンが重合されていた。
【0062】
〔本重合〕
内容積2m3の重合槽にプロピレンを545kg及びブテン−1を55kg装入し、トリエチルアルミニウム612mmol、ジシクロペンチルジメトキシシラン306mmol、更に水素ガスを導入した後、重合槽の内温を55℃に昇温した。ついでエチレンを導入し、チタン含有ポリプロピレンをTi原子として1.5mmol装入した。続いてオートクレーブの内温を70℃まで昇温しエチレンガス濃度を一定に保つようにエチレンを供給しながら2時間重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、白色顆粒状の重合体を得た。得られた重合体は70℃で1時間の乾燥を行った。結果を表1に示した。
【0063】
〔造粒〕
得られたプロピレンエチレンブテン−1ランダム共重合体100重量部に、酸化防止剤として2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール0.1重量部、塩素補足剤としてステアリン酸カルシウム0.05重量部、ブロッキング防止剤としてサイロイド55(平均粒径2.73μm)0.15重量部、滑剤としてエルカ酸アミド0.06重量部を添加し、ヘンシェルミキサーで5分間混合した後、スクリュ−径65mmφの押出造粒機を用いて230℃で押し出し、ペレットを造粒し原料ペレットを得た。
【0064】
〔フィルムの作成〕
造粒したプロピレンエチレンブテン−1共重合体ペレットを用いて以下の方法で無延伸フィルムを作成した。原料ペレットをスクリュー径40mmφのTダイ製膜機でダイ温度230℃で溶融押出しを行い、表面温度37℃の冷却ロールで冷却し厚み30μmの無延伸フィルムを得た。得られたフィルムは成形後、24時間後に物性測定を行った。結果を表2に示した。
【0065】
〔シートの作成〕
造粒したプロピレンエチレンブテン−1共重合体ペレットを用いて以下の方法で無延伸シートを作成した。原料ペレットをスクリュー径40mmφのTダイ製膜機でダイ温度230℃で溶融押出しを行い、表面温度20℃の冷却ロールで冷却し厚み1.0mmの無延伸シートを得た。得られたシートは成形後、24時間後に物性測定を行った。結果を表3に示した。
【0066】
実施例2
実施例1の予備重合においてヨウ化エチルに変えてヨウ素を50mmol用いた以外は、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1、2、3に示した。
【0067】
実施例3
実施例1の予備重合においてヨウ化エチルを用いなかったほかは、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1、2、3に示した。
【0068】
実施例4〜6
実施例1の本重合においてエチレンガス濃度を変え、ポリマー中のエチレン含量を1.5モル%(実施例4)、3.5モル%(実施例5)、6.0モル%(実施例6)とした以外は、実施例1と同様の方法で行った。結果を表1、2、3に示した。
【0069】
実施例7、8
実施例1の本重合においてブテン−1装入量を変え、ポリマー中のブテン−1含量を1.5モル%(実施例7)、5.0モル%(実施例8)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1、2、3に示した。
【0070】
実施例9、10
実施例1において水素ガス濃度を変え、MFRを0.5g/分(実施例9)、20g/分(実施例10)とした以外は実施例1と同様の方法で行った。結果を表1、2、3に示した。
【0071】
比較例1
〔予備重合〕
N2置換を施した内容積1lのオートクレーブに、精製n−ヘキサン200ml、ジエチルアルミニウムクロライド50mmol、及び丸紅ソルベー社製三塩化チタンを3.5g挿入した後、プロピレンを固体触媒成分1gに対し3gとなるように30分間連続的にオートクレーブに導入した。なお、この間の温度は15℃に保持した。30分後に反応を停止し、オートクレーブ内をN2で充分に置換した。得られたスラリーの固体部分を精製n−ヘキサンで4回洗浄し、チタン含有ポリプロピレンを得た。分析の結果、三塩化チタン触媒成分1gに対し2.1gのプロピレンが重合されていた。
【0072】
〔本重合〕
内容積2m3の重合槽にプロピレンを545kg、及びブテン−1を55kg装入し、ジエチルアルミニウムクロライド612mmol、更に水素ガスを導入した後、重合槽の内温を60℃に昇温した。ついでエチレンを導入し、チタン含有ポリプロピレンを三塩化チタン換算で20g装入した。続いてオートクレーブの内温を70℃まで昇温しエチレンガス濃度を一定に保つようにエチレンを供給しながら2時間重合を行った。重合終了後、未反応のプロピレンをパージし、白色顆粒状の重合体を得た。得られた重合体は70℃で1時間の乾燥を行った。結果を表1、2、3に示した。
【0073】
実施例11〜15
実施例1の予備重合においてジフェニルジメトキシシランの代わりにシクロヘキシルメチルジメトキシシラン(実施例11)、ジシクロヘキシルジメトキシシラン(実施例12)、フェニルメチルジメトキシシラン(実施例13)、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン(実施例14)、ジシクロペンチルジメトキシシラン(実施例15)を用いたほかは、実施例1と同様に行った。結果を表1、2、3に示した。
【0074】
比較例2〜6
実施例1の本重合で用いたジシクロペンチルジメトキシシランの代わりに、表2に示したシラン化合物を用いた以外は実施例1と同様に行った。結果を表1、2、3に示した。
【0075】
比較例7
実施例1の本重合において、エチレンガス濃度を変え、ポリマー中のエチレン含量を0.8モル%とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示すが、得られたポリマーを実施例1と同様に造粒を行った後に、フィルム及びシートの成形を行ったが、ヒートシール性及び耐衝撃性に劣り実用的で無かった。
【0076】
比較例8
実施例1の本重合において、エチレンガス濃度を変え、ポリマー中のエチレン含量を12モル%とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1、2、3に示した。
【0077】
比較例9
実施例1の本重合において、ブテン−1装入量を変え、ポリマー中のブテン−1含量を7モル%とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1、2、3に示した。
【0078】
比較例10、11
実施例1の本重合において、水素濃度を変え、MFRが0.05g/分(比較例10)、60g/分(比較例11)とした以外は、実施例1と同様の操作を行った。結果を表1に示すが、得られたポリマーを実施例1と同様に造粒を行った後に、フィルム、及びシートの成形を行ったが安定した製膜が困難であった。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【0081】
【表3】
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の代表的な重合手順を示すフローチャートである。
Claims (3)
- メルトフローレイトが0.1〜30g/10分、エチレンに基づく単量体単位が1〜10モル%、プロピレンに基づく単量体単位が84〜98モル%、ブテン−1に基づく単量体単位が1〜5.5モル%であるプロピレン−エチレン−ブテン−1三元ランダム共重合体であって、該エチレンに基づく単量体単位E(モル%)と低温トルエン可溶分S(wt%)との関係が、式
S≦0.37×E+1.5
を満足し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定される重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)が6以上であり、且つ、共重合体中に含有されるチタン原子が3ppm以下、塩素原子が30ppm以下であることを特徴とするプロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体。 - 下記成分〔A〕、〔B〕、〔C〕の触媒の存在下にプロピレン、エチレン、ブテン−1をランダム共重合することを特徴とする請求項1に記載のプロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体の製造方法。
〔A〕マグネシウム、チタン、及びハロゲンを必須成分として含有する固体チタン化合物
〔B〕有機アルミニウム化合物
〔C〕ジシクロペンチルジメトキシシラン - 請求項1に記載のプロピレン−エチレン−ブテン−1三元共重合体よりなるフィルム。
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