JP3569740B2 - プロピレン系ランダム共重合体並びにそれを用いたフィルム及び積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン系共重合体及びそれからなるフィルムと積層体に関するものである。さらに詳しくは、プロピレン、エチレン及び1−ブテンの三元ランダム共重合体及びそれを製膜したフィルムと該共重合体からなる層を少なくともその表面に有する多層樹脂積層体に関するものである。製膜して得たフィルムは優れたヒートシール特性を発揮しかつアンチブロッキング性も良好である。また剛性、スリップ性、透明性、耐衝撃性にも優れている。また繊維、発泡体、成形体用途にも好適に用いられる。
【0002】
【従来の技術】
結晶性プロピレン系重合体のフィルムは、その優れた剛性、透明性及び防湿性等を生かして広く包装用フィルムとして使用されている。通常、フィルムはヒートシールにより製袋され、内容物を充填した後に袋口は再びヒートシールにより閉じられる。近年、これら一連の製袋包装工程は生産性向上のため高速化が図られており、低温でのヒートシール性に優れる素材の開発が強く要望されている。
【0003】
しかし、プロピレン単独重合体のフィルムは低温ヒートシール性に難点があるため、その改良を目的としてエチレンや他のα−オレフィンとの共重合が広く行われている。しかし充分な低温ヒートシール性改良効果を得るためには多量のエチレンや他のα−オレフィンを共重合させる必要があり、従来技術においては結果としてべとつき成分を多量に副生したり、結晶性が大きく低下したりしてしまい、例えば剛性やアンチブロッキング性が大きく低下したり、ブリード白化による外観不良が起きたりする欠点が生じて実用に耐えるものとはならなかった。
【0004】
またこの問題の解決方法として、従来技術においてはべとつき成分を不活性溶媒中に溶解させて除去するという方法も試みられているが、この際に低温ヒートシール性に寄与する低温融解性結晶成分も除去されてしまうことは避けがたく、結局、低温ヒートシール性の改良効果は不十分なものとなっているというのが現状である。また、フィルムの巻き返し工程を支障なく行うためにスリップ性及びアンチブロッキング性の発現すること及び外観や透明性も重要である。さらに近年のフィルム加工は、生産性を上げるため大型成形機による高速製膜化が行われているので、この場合においてもフィルム品質が低下しないことも要求される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリプロピレンのフィルムが本来有する好ましい特性を損なうことなく、特に低温ヒートシール性、アンチブロッキング性、剛性を有するフィルムを得ることができまたシーラント用途に好適なプロピレン系ランダム共重合体の提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決しようとする手段】
本発明者らは上記課題につき鋭意検討した結果、プロピレン単位のトライアッド(以下PPPと記す)連鎖部の立体規則性を高くし、そこにコモノマーをランダム共重合させることにより、高い結晶性を有し、かつ低い融点を有するプロピレン系ランダム共重合体を得ることができ、また組成分布を狭くできたことによりフィルムのブロッキング原因物質であるべとつき成分を少なくできたということを見出して、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、以下のプロピレン系ランダム共重合体及びそれからなるフィルムと該共重合体からなる層を少なくともその表面に有する多層樹脂積層体を提供するものである。
(I)プロピレン、エチレン及び1−ブテンの共重合体であって、下記の( i )〜( vi )を満足するプロピレン系ランダム共重合体。
( i )共重合体中のエチレン単位の含有量(α mol%)と1−ブテン単位の含有量(β mol%)が(1)式を満たす
4≦α+β≦12.5 ・・・(1)
( ii )共重合体のメルトインデックス(MI(g/10min))が1〜12g/10minである
( iii )沸騰ジエチルエーテル抽出量(E(wt % ))とα+βの関係がα+β≦12の場合には式(2)をα+β>12の場合には式(3)の関係を満たす
E≦0.2(α+β)+0.6 ・・・(2)
E≦3.0 ・・・(3)
( iv )示差走査型熱量計で測定した融点(Tm(℃))とα+βが式(4)の関係を満たす
Tm≦164−3.6(α+β) ・・・(4)
( v ) 13C−NMRで測定した立体規則性指標P(mol%)が98mol%以上である
( vi )ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2.5〜5である
(II)上記の(I)に記載のプロピレン系ランダム共重合体からなるフィルム。
(III)上記の(I)に記載のプロピレン系ランダム共重合体からなる層を少なくとも表面に有する多層樹脂積層体。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下に詳細に説明する。
本発明のプロピレン系ランダム共重合体は、プロピレンとエチレンと1ーブテンをランダム共重合したものであって、下記の▲1▼〜▲6▼を満足するものである。
▲1▼共重合体中のエチレン単位の含有量(α mol%)と1−ブテン単位の含有量(β mol%)が(1)式を満たすことが必要である。
【0009】
4≦α+β≦15・・・(1)
α+βが4未満では低温ヒートシール性が不充分となりまたα+βが15を越えると剛性、アンチブロッキング性が低下する。ここで、さらにαとβの関係が次式を満たすことが好ましい。
−5≦(α−β)≦5・・・(6)
α−βが−5より小さいと気相重合を行った場合リアクタ−内で1−ブテンが液化し塊が発生しやすくなる。またコストも上昇するので好ましくない。α−βが5より大きいと1−ブテン単位によるべとつき成分のブリード抑制効果か小さくなり、特に経時アンチブロッキング性が低下し易くなる。より好ましくは2α≧βかつα≦2βを満たす範囲であり、さらに好ましくはα≧6かつ2α≧βかつα≦2βを満たす範囲である。
▲2▼共重合体のメルトインデックス(MI(g/10min))が1〜12g/10min である。MIがこの範囲を外れると成形不良現象が起きやすく好ましくない。
▲3▼沸騰ジエチルエーテル抽出量(E)とα+βの関係がα+β≦12の場合には式(2)をα+β> 12の場合には式(3)の関係を満たす
E≦ 0.2(α+β)+0.6 ・・・(2)
E≦ 3.0 ・・・(3)
Eがこの範囲を越えるとアンチブロッキング性が低下する。またブリード白化により透明性の低下が起こりやすくなる。好ましくは、α+β≦11の時に(7)式をまたα+β>11の時に(8)式を満たすときである。
【0010】
E≦ 0.2(α+β)+0.4 ・・・(7)
E≦ 2.6 ・・・(8)
さらに好ましいのはα+β≦10のとき(9)式を、α+β>10のとき(10)式を満たすときである。
E≦ 0.2(α+β)+0.3 ・・・(9)
E≦ 2.3 ・・・(10)
▲4▼示差走査型熱量計で測定した融点(Tm(℃))とα+βが式(4)の関係を満たす
Tm ≦ 164−3.6 (α+β)・・・(4)
Tm がこの範囲を越えると低温ヒートシール性が不充分となる。好ましい範囲は(9) 式を満たすときである。
【0011】
Tm ≦ 160−3.6 (α+β)・・・(11)
▲5▼13C−NMRで測定した立体規則性指標P(mol%) が98 mol% 以上である。98mol% 以下では、剛性、アンチブロッキング性の低下が大きい。好ましくは、98.5 mol% 以上である。ここで、立体規則性指標Pは共重合体分子鎖のPPP連鎖、PPB連鎖及びBPB連鎖におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率である。
▲6▼ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが6以下である。さらには、Mw/Mnが2.5〜5の場合が好ましい。Mw/Mnが6以上ではフィルムの透明性が低下し易くなる。また2.5以下ではフィルムの成形性が低下し易くなり好ましくない。
【0012】
上記のプロピレン系ランダム共重合体は、ポリプロピレンのフィルムが本来有る好ましい特性を損なうことなく優れた低温ヒートシール性、アンチブロッキング性、剛性を有するフィルムを提供できる。また、シーラント用途に好適なプロピレン系ランダム共重合体を提供できる。
上記のプロピレン系ランダム共重合体は、実施例に示すような製造方法で初めて得られたものであるが、これに限定されるものではなく、上記のプロピレン系ランダム共重合体が得られる製造方法であればよい。
【0013】
製造に使用する触媒としては、マグネシウム、チタン、及びハロゲンを必須成分とする固体触媒成分、有機アルミニウム化合物等の有機金属化合物触媒成分、及び有機ケイ素化合物等の電子供与体化合物触媒成分から形成することができるが、代表的なものとして、以下のような触媒成分が使用できる。
【0014】
固体触媒成分の好ましい担体となるものは、金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物から得られる。この場合、金属マグネシウムは、顆粒状、リボン状、粉末状等のマグネシウムを用いることができる。また、この金属マグネシウムは、表面に酸化マグネシウム等の被覆が生成されていないものが好ましい。
【0015】
アルコールとしては、炭素数1〜6の低級アルコールを用いるのが好ましく、特に、エタノールを用いると、触媒性能の発現を著しく向上させる上記担体が得られる。
【0016】
ハロゲンとしては、塩素、臭素、又はヨウ素が好ましく、特にヨウ素を好適に使用できる。また、ハロゲン含有化合物としては、MgCl2 、MgI2 が好適に使用できる。
アルコールの量は、金属マグネシウム1モルに対して好ましくは2〜100モル、特に好ましくは5〜50モルである。
【0017】
ハロゲン又はハロゲン含有化合物の使用量は、金属マグネシウム1グラム原子に対して、ハロゲン原子又はハロゲン含有化合物中のハロゲン原子が、0.0001グラム原子以上、好ましくは0.0005グラム原子以上、さらに好ましくは、0.001グラム原子以上である。ハロゲン及びハロゲン含有化合物はそれぞれ1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/又はハロゲン含有化合物との反応方法は、例えば、金属マグネシウムとアルコールとハロゲン及び/またはハロゲン含有化合物とを、還流下(約79℃)で水素ガスの発生が認められなくなるまで(通常20〜30時間)反応させて、担体を得る方法である。これは、不活性ガス(例えば窒素ガス、アルゴンガス)雰囲気下で行うことが好ましい。
【0019】
得られた担体を次の固体触媒成分の合成に用いる場合、乾燥させたものを用いてもよく、また濾別後ヘプタン等の不活性溶媒で洗浄したものを用いてもよい。
【0020】
また、この担体は粒状に近く、しかも粒径分布がシャープである。さらには、粒子一つ一つをとってみても、粒形度のばらつきは非常に小さい。
固体触媒成分の製造のため、上記の担体に少なくともチタン化合物を接触させる。
【0021】
このチタン化合物としては、一般式(12)
TiX1 n (OR1 )4−n ・・・(12)
(式中、X1 はハロゲン原子、特に塩素原子が好ましく、R1 は炭素数1〜10の炭化水素基、特に直鎖または分岐鎖のアルキル基であり、R1 が複数存在する場合にはそれらは互いに同じでも異なってもよい。nは0〜4の整数である。)で表されるチタン化合物を用いることができる。具体的には、Ti(O−i−C3 H7 )4 、Ti(O−C4 H9 )4 、TiCl(O−C2 H5 )3 、TiCl(O−i−C3 H7 )3 、TiCl(O−C4 H9 )3 、TiCl2 (O−C4 H9 )2 、TiCl2 (O−i−C3 H7 )2 、TiCl4 等を挙げることができるが、特にTiCl4 が好ましい。
【0022】
固体触媒成分は、上記の担体にさらに電子供与性化合物を接触させて得られる。この電子供与性化合物としては、フタル酸ジ−n−ブチルを用いる。
また、上記の担体にチタン化合物と電子供与性化合物を接触させる際に、四塩化ケイ素等のハロゲン含有ケイ素化合物を接触させるとよい。
【0023】
上記の固体触媒成分は、公知の方法で調製することができる。例えば、ペンタン、ヘキサン、ペプタン又はオクテン等の不活性炭化水素を溶媒に、上記の担体、電子供与性化合物及びハロゲン含有ケイ素化合物を投入し、攪拌しながらチタン化合物を投入する方法である。通常は、マグネシウム原子換算で担体1モルに対して電子供与性化合物は、0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モルを加え、また、マグネシウム原子換算で担体1モルに対してチタン化合物は、1〜50モル、好ましくは2〜20モルを加え、0〜200℃にて、5分〜10時間の条件、好ましくは30〜150℃にて30分〜5時間の条件で接触反応を行えばよい。
【0024】
なお、反応終了後は不活性炭化水素(例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン)で、生成した固体触媒成分を洗浄するのが好ましい。
また、触媒成分の内、有機金属化合物触媒成分としては、有機アルミニウム化合物を好適に用いることができる。
【0025】
この有機アルミニウム化合物としては、一般式(13)
AlR2 n X2 3−n ・・・(13)
(式中、R2 は炭素数1〜10のアルキル基、シクロアルキル基またはアリール基であり、X2 はハロゲン原子であり、塩素原子または臭素原子が好ましい。nは1〜3の整数である。)で表される化合物が広く用いられる。具体的には、トリアルキルアルミニウム化合物、例えば、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムモノクロリド、ジイソブチルアルミニウムモノクロリド、ジエチルアルミニウムモノエトキシド、エチルアルミニウムセスキクロリド等が挙げることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
さらに、触媒成分の内、重合系に供する電子供与性化合物成分としては、ジシクロペンチルジメトキシシランを用いる。
上記の固体触媒成分は、前処理してから、重合に用いるとよい。例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン又はオクテン等の不活性炭化水素を溶媒に、上記の固体触媒成分、有機金属化合物触媒成分及び電子供与性化合物成分を投入し、攪拌しながら、プロピレンを供給し、反応させる。また、通常、有機金属化合物触媒成分は、固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モルを加え、電子供与性化合物成分は、固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.01〜20モル、好ましくは0.1〜5モルを加えるとよい。プロピレンは、大気圧よりも高いプロピレンの分圧下で供給し、0〜100℃にて、0.1〜24時間前処理するとよい。なお、反応終了後は不活性炭化水素(例えば、n−ヘキサン、n−ヘプタン)で、前処理したものを洗浄するのが好ましい。
【0027】
重合条件は、特に制限されず、公知の方法と同様の条件を用いることができる。例えば、大気圧よりも高いプロピレンの分圧下で、−80〜150℃の温度下で、製造することができる。好ましくは、20〜150℃の温度下で、プロピレンの分圧は大気圧〜40 kg/cm2 G の範囲である。また、通常、有機金属化合物媒成分は、固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.1〜400モル、好ましくは1〜200モルを加え、電子供与性化合物成分は、固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.1〜100モル、好ましくは1〜50モルを加えるとよい。
【0028】
また、エチレン分圧は所望のエチレン含量になるようにエチレン供給量で調節し、1−ブテン分圧は所望の1−ブテン含量になるように1−ブテン供給量で調節し、共重合体の分子量は所望の分子量になるように水素供給量で調節する。
本発明のプロピレン系ランダム共重合体には、常用される酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤または耐電防止剤などを必要に応じて配合することができる。
【0029】
また、本発明のプロピレン系ランダム共重合体は、溶融押出成形法によりフィルムに製膜できる。例えば、Tダイキャスト製膜法において、引取速度が50 m/minまたはこれ以上の高速製膜条件においても、厚みが 10 〜500 μm のフィルムの製膜に好適に使用できる。また、前述した好ましい特性を有することから、共押出製膜法による積層フィルムの製造に際して、その少なくとも一層成分としても好適に使用できる。
【0030】
製膜法は大型製膜機により高速製膜が実施されるTダイキャスト製膜法が好ましいが、特にこれに限らず、溶融押出成形法によりフィルムを製造する方法であれば、どのような製膜法においても本発明のプロピレン系ランダム共重合体は好適に使用できる。
【0031】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、樹脂特性の評価方法、フィルムの製膜方法及びフィルムの品質の評価方法について、説明する。
(ア)樹脂特性の評価方法
1) 共重合体中のエチレン単位の含有量(α(mol%))
13C−NMRで測定したスペクトルからKang−Bong Lee et.al,Polymer J.28,696−702頁(1996年)に記載の方法で算出した。13C−NMRスペクトルは日本電子社製のJNM−EX400 型NMR 装置を用い以下の条件で測定した。
試料濃度:220mg/NMR溶媒 3ml
NMR 溶媒 1、2 、4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6 (90/10 vol%)
測定音頭 130°C
パルス幅 45 °
パルス繰り返し時間 4 秒
積算回数 400回
2) 共重合体中の1−ブテン単位の含有量(β(mol%))
13C−NMRで測定したスペクトルからKang−Bong Lee et.al,Polymer J.28,696−702頁(1996年)に記載の方法で算出した。測定装置、測定条件は1)エチレンの場合と同じに行った。
3) メルトインデックス(MI(g/10min) )
JIS K7210に従い、温度230 ℃、荷重2160gで測定した。
4) 沸騰ジエチルエーテル抽出量(E(wt%))
1 mmφメッシュパスの大きさに粉砕したペレットを円筒濾紙に3 g 、抽出溶剤のジエチルエーテルを平底フラスコに160 ml入れ、リフラックス頻度を1 回/5 min 程度にしてソックスレー抽出器で 10 時間抽出する。抽出後、ジエチルエーテルをエバポレーターで回収し、さらに真空乾燥器で、恒量になるまで乾燥し、その重量から沸騰ジエチルエーテル抽出量を求めた。
5) 示差走査型熱量計で測定した共重合体の融点(Tm ( ℃))
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製 DSC7)を用いて、あらかじめ試料 10 mgを窒素雰囲気下230 ℃で3 min 溶融した後、 10 ℃/minで 40 ℃まで降温する。この温度で3 min 保持した後、 10 ℃/minで昇温させて得られた融解吸熱カーブの最大ピークのピークトップを融点とした。
6) 13C−NMRで測定した立体規則性指標P (mol %)
プロピレン系共重合体の立体規則性指標Pは共重合体分子鎖のPPP連鎖、PPB連鎖及びBPB連鎖におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率であり、13C−NMRスペクトルから求めた。具体的には、特許公開公報平成8 年208909号を参考に次式より求めた。
【0032】
【数1】
【0033】
但し、Iは19.8〜22.2ppmnのシグナル強度、Imは21.4〜22.2ppmのシグナル強度、Tδδは33.3ppmのシグナル強度、Sαγは38.0ppmのシグナル強度である。
13C−NMRスペクトルは、日本電子社製のJNM−EX400型NMR装置を用いて測定した。測定条件は、上記1) と同じである。
7)分子量分布の測定方法
下記の測定条件で行った。
カラム:TOSO GMHHR−H(S)HT
溶媒:1,2,4トリクロロベンゼン
温度:145°C
流速:1.0ミリリットル/分
検量線:Universal Calibration
検出器:RI(Waters 150C)
解析プログラム:HT−GPC(Ver.1.0)
(イ)フィルムの製膜方法
以下の実施例及び比較例で得たプロピレン系ランダム共重合体及びプロピレン重合体のペレットから、三菱重工製 75 mmφ成形機を用い、膜厚 30 μm のフィルムを以下の成形条件で製膜した。
【0034】
加工温度 :243 ℃
チルロール温度: 25 ℃
引取速度 :125 m/min
(ウ)フィルムの品質の評価方法
フィルムの品質は全て試料を温度23±2 ℃、湿度50±10%で、 16 時間以上状態調節した後、同じ温度、湿度条件下にて、測定を行った。
8) ヒートシール特性
JIS K−1707に準拠して測定した。融着条件を以下に記す。なお、ヒートシールバーの温度は表面温度計により較正されている。シール後、室温で一昼夜放置し、その後室温で剥離速度を 200 mm/min にしてT型剥離法で剥離強度を測定した。ヒートシール温度は剥離強度が300 g/15mmになる温度をシール強度−剥離強度曲線から計算して求めた。
【0035】
シール時間:1 sec
シール面積:15×10 mm
シール圧力:2.0 kg/cm2
シール温度:ヒートシール温度を内挿できるように数点。
9)アンチブロッキング性
長方形(30cm x 10cm) のフィルムを接着面積が10cm x 10cm の治具にそれぞれ固定し以下の条件で密着させた後の引剥強度により評価した。
【0036】
密着条件1 温度:60℃、時間:3時間、荷重:36 g/cm2 、面積:10cm x 10cm
密着条件2 温度:50℃、時間:1週間、荷重:15 g/cm2 、面積:10cm x 10cm 引剥試験の条件は次のとおりである。
【0037】
テストスピード : 20 mm/min
ロードセル : 2 kg
10) スリップ性
フィルムを張ったスレットを、フィルムを張ったガラス板の上に静置した後、ガラス板を傾けていきスレットが滑り出したときの傾き角θのtanで評価する。東洋精機製作所製の摩擦角測定機を用い、以下の条件にて測定した。
【0038】
測定面 :金属ロール面/金属ロール面
傾斜速度 :2.7 °/sec
スレッド重量 :1 kg
スレッド断面積:65 cm2
面間圧力 :15 g/cm2
11) 透明性(ヘイズ)
JIS K7105に従い測定した。
12) 耐衝撃性(フィルムインパクト)
東洋精機製作所製フィルムインパクトテスターにおいて1/2 インチ衝撃ヘッドを用いた衝撃破壊強度により評価した。
13) 引張弾性率
JIS K7127に準拠した引張試験により以下の条件にて測定した。
【0039】
クロスヘッド速度:500mm/分
ロードセル :10Kg
測定方向 :マシン方向(MD)
〔実施例1〕
(1)マグネシウム化合物の調整
攪拌機付き反応槽(内容積500 リットル) 窒素ガスで充分に置換し、エタノール 97.2 kg、ヨウ素640 g 、及び金属マグネシウム6.4 kgを投入し、攪拌しながら還流条件下で系内から水素ガスの発生が無くなるまで反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応生成物を含む反応液を減圧乾燥させることにより目的のマグネシウム化合物(固体触媒の担体)を得た。
(2)固体触媒成分の調整
窒素ガスで充分に置換した攪拌機付き反応槽(内容積500 リットル)に、前記マグネシウム化合物(粉砕していないもの) 30 kg、精製ヘプタン(n−ヘプタン)150 リットル、四塩化ケイ素 4.5 リットル 、及びフタル酸ジ−n−ブチル 5.4 リットル を加えた。系内を 90 ℃に保ち、攪拌しながら四塩化チタン144 リットルを投入して110 ℃で2 時間反応させた後、固体成分を分離して 80 ℃の精製ヘプタンで洗浄した。さらに、四塩化チタン228 リットルを加え、110 ℃で2 時間反応させた後、精製ヘプタンで充分に洗浄し、固体触媒成分を得た。
(3)前処理
内容積500 リットルの攪拌機付き反応槽に精製ヘプタン230 リットルを投入し、前記の固体触媒成分を 25 kg、トリエチルアルミニウムを固体触媒成分中のチタン原子に対して1.0 mol/mol 、ジシクロペンチルジメトキシシランを1.8 mol/mol の割で供給した。その後、プロピレンをプロピレン分圧で 0.3 kg/cm2Gになるまで入し、 25 ℃で4 時間反応させた。反応終了後、固体触媒成分を精製ヘプタンで数回洗浄し、更に二酸化炭素を供給し 24 時間攪拌した。
(4)重合
内容積200 リットルの攪拌機付き重合装置に前記処理済の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3 m mol/hrで、トリエチルアルミニウムを4 m mol/ kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを1 m mol/ kg−PPでそれぞれ供給し、重合温度 80 ℃、重合圧力(全圧)28kg/cm 2 G でプロピレンとエチレンを反応させた。この時、所望のエチレン、1−ブテンの含有量及び分子量となるようにエチレン、1−ブテンの供給量、及び水素供給量をそれぞれ調節した。重合装置内ガス部の組成分析値(ガス・クロマト分析)のエチレン濃度が、2.2 mol %、1−ブテンの濃度が、3.5 mol %、水素濃度が、2.9 mol %であった。
(5)添加剤処方
こうして得たプロピレン系共重合体パウダーに以下の添加剤を処方し、混練機にて押出造粒した。
【0040】
1) 酸化防止剤
チバガイギー社製のイルガノックス1010:1000 ppm
及びチバガイギー社製のイルガフォス168:1000 ppm
2) 中和剤 ステアリン酸カルシウム:1000 ppm
3) アンチブロッキング剤 シリカ系:2300 ppm
4) スッリプ剤 エルカ酸アミド: 500 ppm
こうして得たプロピレン系ランダム共重合体ペレットの樹脂特性を上記の(ア)の方法で評価した。また、上記の(イ)の方法で製膜し、そのフィルム品質は(ウ)の方法で評価した。その結果は第1表に示す。
〔実施例 2−6〕
所望のエチレン、1−ブテンの含有量及び分子量となるようにエチレン、1−ブテンの供給量、及び水素供給量をそれぞれ第1表記載のように調節した以外は実施例1と同様に行った。
〔比較例1〕
重合時にジシクロペンチルジメトキシシランを用いなかったことおよび所望のエチレン、1−ブテンの含有量及び分子量となるようにエチレン、1−ブテンの供給量、及び水素供給量をそれぞれ第1表記載のように調節した以外は実施例1と同様に行った。得られた共重合体は実施例1と同様に添加剤処方を行い評価した。その結果は第1表に示す。
〔比較例2〕
固体触媒成分を調製時にフタル酸ジ−n−ブチルをフタル酸ジエチルに代えて調製したことおよび重合時にジシクロペンチルジメトキシシランをシクロヘキシルメチルジメトキシシランに代えて重合したことおよび所望のエチレン、1−ブテンの含有量及び分子量となるようにエチレン、1−ブテンの供給量、及び水素供給量をそれぞれ第1表記載のように調節した以外は実施例1と同様に行った。得られた共重合体は実施例1と同様に添加剤処方を行い評価した。その結果は第1表に示す。
〔比較例3〕
所望のエチレンの含有量および分子量となるようにエチレンの供給量および水素供給量を第1表記載のようにそれぞれ調節した以外はすべて比較例2と同様に行った。得られた共重合体は実施例1と同様に添加剤処方を行い評価した。その結果は第1表に示す。
〔比較例4〕
重合時にエチレンを用いなかったことおよび所望の1−ブテンの含有量および分子量となるように1−ブテンの供給量および水素供給量を第1表記載のようにそれぞれ調節した以外はすべて実施例1と同様に行った。得られた共重合体は実施例1と同様に添加剤処方を行い評価した。その結果は第1表に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
【表2】
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【発明の効果】
本発明により、ポリプロピレンのフィルムが本来有する好ましい特性を損なうことなく、特に低温ヒートシール性、アンチブロッキング性および剛性に優れたィルムを得ることができるプロピレン系ランダム共重合体を提供することができる。また、これを用いてなるフィルムは、上記の好ましい特性を有することから、ラミネートや共押出した積層フィルムのシーラント層として好適に使用可能である。さらに、繊維、発砲体や各種の成形体用途にも好ましく使用できる。
Claims (5)
- プロピレン、エチレン及び1−ブテンの共重合体であって、下記の( i )〜( vi )を満足するプロピレン系ランダム共重合体。
( i )共重合体中のエチレン単位の含有量(α mol%)と1−ブテン単位の含有量(β mol%)が(1)式を満たす
4≦α+β≦12.5 ・・・(1)
( ii )共重合体のメルトインデックス(MI(g/10min))が1〜12g/10minである
( iii )沸騰ジエチルエーテル抽出量(E(wt % ))とα+βの関係がα+β≦12の場合には式(2)をα+β>12の場合には式(3)の関係を満たす
E≦0.2(α+β)+0.6 ・・・(2)
E≦3.0 ・・・(3)
( iv )示差走査型熱量計で測定した融点(Tm(℃))とα+βが式(4)の関係を満たす
Tm≦164−3.6(α+β) ・・・(4)
( v ) 13C−NMRで測定した立体規則性指標P(mol%)が98mol%以上である
( vi )ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)により測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比Mw/Mnが2.5〜5である - 請求項1に記載のプロピレン系ランダム共重合体からなるフィルム。
- 請求項1に記載のプロピレン系ランダム共重合体からなる層を少なくともその表面に有する多層樹脂積層体。
- 以下の触媒(A),(B),(C)を用いて、プロピレン、エチレン、1−ブテンを共重合する、請求項1に記載のプロピレン系ランダム共重合体の製造方法。
(A)担体、チタン化合物、四塩化ケイ素、フタル酸ジ−n−ブチルを接触させて得られる、マグネシウム、チタン、ハロゲンを必須成分とする固体触媒成分
(B)有機アルミニウム化合物
(C)ジシクロペンチルジメトキシシラン - 前記チタン化合物が、四塩化チタンである請求項4に記載のプロピレン系ランダム共重合体の製造方法。
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