JP2006035516A - ポリプロピレン系積層フィルム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】中間層は結晶性ポリプロピレンとプロピレン・α−オレフィン共重合体からなり、プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度〔η〕RCが1.7〜6.5dl/g、結晶性ポリプロピレンとプロピレン・α−オレフィン共重合体との極限粘度比(〔η〕RC/〔η〕PP)が0.6〜1.2であり、且つ、(〔η〕RC/〔η〕PP)×(WPP/WRC)が0.2〜4.5の範囲にあるポリプロピレン系組成物からなり、表面層の少なくとも一層はメタロセン触媒を用いて重合されたMFRが1〜30g/10分、融解ピーク温度が120〜165℃、40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量が2.0重量%以下の結晶性プロピレン重合体からなることを特徴とするポリプロピレン系積層フィルム。
【選択図】なし
Description
このような問題を解決するため、結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体に低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体をブレンドすることにより耐衝撃性を付与した透明性、耐衝撃性、食品衛生性の改善がなされたレトルト食品包装用フィルムが一般に用いられている。しかしながら、十分な耐衝撃性を付与するため、多くの低結晶性エチレン・α−オレフィン共重合体を結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体にブレンドすると食品衛生性の悪化を招き、耐熱性を更に低下させてしまう。
このような問題を解決する方法として、極限粘度が特定の範囲にあるプロピレン系ブロック共重合体組成物をコア層に、結晶融点が145〜165℃のプロピレン系重合体をスキン層に使用した3層構造からなる、透明性、ヒートシール性、衝撃性および加熱処理後の透明性低下防止効果を有する多層フィルムが開示されている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、上記多層フィルムは、透明性はいまだ充分とは言えず、しかもべたつきがあるため取扱い性に欠けるという問題があった。
(a)ポリプロピレン系組成物:
結晶性ポリプロピレン40〜80重量%と、20〜80重量%のプロピレン重合単位を有するプロピレン・α−オレフィン共重合体60〜20重量%からなるポリプロピレン系組成物であって、プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度〔η〕RCが1.7〜6.5dl/gの範囲で、結晶性ポリプロピレンとプロピレン・α−オレフィン共重合体との極限粘度比(〔η〕RC/〔η〕PP)が0.6〜1.2であり、且つ、該結晶性ポリプロピレンの重量をWPPとし、該プロピレン・α−オレフィン共重合体の重量をWRCとしたときの該結晶性ポリプロピレンと該プロピレン・α−オレフィン共重合体との重量比(WPP/WRC)と該極限粘度比(〔η〕RC/〔η〕PP)との積(〔η〕RC/〔η〕PP)×(WPP/WRC)が0.2〜4.5の範囲にあるポリプロピレン系組成物。
(b)結晶性プロピレン重合体:
メタロセン触媒を用いて重合された、メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜30g/10分、融解ピーク温度(Tm)が120〜165℃、40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量が2.0重量%以下の結晶性プロピレン重合体。
(1)ポリプロピレン系組成物(a)
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの中間層は、積層フィルムに、耐衝撃性等を付与する層であり、結晶性ポリプロピレンとプロピレン・α−オレフィン共重合体からなる(a)ポリプロピレン系組成物から構成される層である。中間層に用いるポリプロピレン系組成物は、結晶性ポリプロピレン40〜80重量%、好ましくは45〜70重量%と、プロピレン・α−オレフィン共重合体60〜20重量%、好ましくは55〜30重量%からなる組成物である。
結晶性ポリプロピレンが40重量%未満(プロピレン・α−オレフィン共重合体が60重量%を超える)であると、剛性や耐熱性が不足し易くなり、結晶性ポリプロピレンが80重量%を超える(プロピレン・α−オレフィン共重合体が20重量%未満)と、耐衝撃性が不足し易くなる。
該共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン等を挙げることができる。α−オレフィンの中では、エチレン、1−ブテンが好ましい。これらのα−オレフィンは、単独のみならず、他のオレフィンの1種または2種以上の混合物をも含んでいてもよい。
プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度〔η〕RCは、特にフィルムの加工特性(製膜性や剛性)に影響し、プロピレン・α−オレフィン共重合体と結晶性ポリプロピレンの極限粘度比〔η〕RC/〔η〕PPは、プロピレン・α−オレフィン共重合体の結晶性ポリプロピレンへの分散性に影響する。プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度〔η〕RCが大きすぎるとフィルムの製膜性が悪化し、フィルム生産上問題となる。一方〔η〕RCが小さすぎると耐衝撃性が低下し易い。また、結晶性ポリプロピレンとの極限粘度比〔η〕RC/〔η〕PPが、小さすぎると低温での耐衝撃性が不足し、一方、大きすぎると透明性が不十分となり目的とする特性を達成できない。
〔η〕RC={〔η〕WHOLE−(1−WRC/100)〔η〕PP}/(WRC/100)
ここで、連続的に製造するとは、後述する第一段階で結晶性ポリプロピレンを製造し(第1重合工程)、ついで第二段階でプロピレンとα−オレフィンの共重合体を連続的に製造する(第2重合工程)ことを意味する。
該重量比と該極限粘度比との積が上記範囲にあることは、プロピレン・α−オレフィンの共重合体からなる複数のドメインが成形加工時に上記組成物の流れ方向に延在した状態で分散するか、もしくはその分散している任意のドメインが他のドメインと少なくとも1箇所で連結しているという特定分散構造を示すための必須条件であり、その値が上記の数値範囲内であると得られるフィルムの透明性、低温での耐衝撃性が良好となる。
本発明で用いるポリプロピレン系組成物は、上記の諸特性を満足すればいかなる方法で製造してもよく、勿論、別々に製造された本発明に用いる結晶性ポリプロピレンとプロピレン・α−オレフィン共重合体を混合装置を用いて混合してポリプロピレン系組成物を製造しても、結晶性ポリプロピレンを製造し、引き続き結晶性ポリプロピレンの存在下にプロピレンとα−オレフィンの共重合体を製造して、ポリプロピレン系組成物を連続的に製造してもよい。より好適には、下記に示す製造方法を例示することができる。
例えば、マグネシム化合物−アルコール溶液をスプレーし、該固体成分を部分乾燥し、しかる後該部分乾燥固体成分をハロゲン化チタンおよびジ−n−ブチルフタレートなどの電子供与性化合物で処理してなるチタン含有固体触媒成分(特開平3−119003号公報)、マグネシウム化合物をテトラヒドロフラン/アルコール/電子供与体に溶解させ、TiCl4単独または該電子供与体との組み合わせで析出させたマグネシム単体をハロゲン化チタンおよび上記電子供与性化合物で処理してなるチタン含有固体触媒成分(特開平4−103604号公報)などが挙げられる。
さらに、該チタン含有触媒成分(A)は、正規分布における均一度は2.0以下のものが好ましい。均一度が2.0を超えると得られる粉末状ポリプロピレン系組成物の粉体流動性が悪化して連続での安定運転が困難となる場合がある。
これら有機アルミニウム化合物は1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
これらの有機ケイ素化合物は、1種の単独あるいは2種以上の混合物として使用することができる。
チタン含有固体触媒成分(A)の予備活性化処理においては、有機アルミニウム化合物(B’)の使用量は、特に限定されるものではないが、通常チタン含有固体触媒成分中のチタン原子1モルに対して0.1〜40モル、好ましくは0.3〜20モルの範囲で用い、α−オレフィンを10〜80℃で10分〜48時間かけてチタン含有固体触媒成分(A)1グラム当たり0.1〜100グラム、好ましくは0.5〜50グラムを反応させる。
予備活性化処理においては、予め、有機ケイ素化合物(C’)を有機アルミニウム化合物1モルに対して0.01〜10モル、好ましくは0.05〜5モルの範囲で用いてもよい。
また予備活性化処理に必要に応じて用いられる有機ケイ素化合物(C’)としては、前記例示した有機ケイ素化合物(C)と同種のものを挙げることができる。この有機ケイ素化合物(C’)としても、本重合に使用される有機ケイ素化合物(C)と同種のものでも、また異なるものを使用でき、好ましくは、ジイソブチルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシランおよびジフェニルジメトキシシランを用いる。
チタン含有固体触媒成分(A)の予備活性化処理に用いられる不活性溶剤は、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカンおよび流動パラフィン等の液状飽和炭化水素やジメチルポリシロキサンの構造を持ったシリコンオイル等の重合反応に著しく影響を及ぼさない不活性溶剤である。これらの不活性溶剤は、1種の単独溶剤または2種以上の混合溶剤のいずれでもよい。これらの不活性溶剤の使用に際しては重合に悪影響を及ぼす水分、イオウ化合物等の不純物は取り除いた後で使用することが好ましい。
該第1重合工程は気相重合法に限定されるものではなく、スラリー重合法や塊状重合法を採用してもよいが、それに連続する第2重合工程が気相重合法であることが好ましいことから、第1重合工程も気相重合法を採用することが好ましい。第2重合工程としてスラリー重合法や塊状重合法を採用した場合、得られる共重合体が溶液中に溶出し、安定運転の継続が困難となる。
有機アルミニウム化合物(B)とチタン含有固体触媒成分(A)との使用比率はAl/Ti=1〜500(モル比)、好ましくは10〜300である。この場合、チタン含有固体触媒成分(A)のモル数とは実質的にチタン含有固体触媒成分(A)中のTiグラム原子数をいう。有機ケイ素化合物(C)と有機アルミニウム成分(B)の使用率はB/C=1〜10(モル比)、好ましくは1.5〜8である。(B)/(C)のモル比が過大な場合、結晶性ポリプロピレンの結晶性が低下し、得られるポリプロピレン系組成物の剛性が不十分となる。また、該B/Cモル比が過小な場合には重合活性が著しく低下し、生産性が低下する。
結晶性ポリプロピレンの分子量の調節には、重合時に水素のような分子量調節剤の使用が可能であり、結晶性ポリプロピレンの極限粘度が本発明の要件を満たすように実施される。結晶性ポリプロピレンを重合後、生成した粉末状重合体の一部を抜き出し、極限粘度、メルトフローレート、触媒単位重量当たりの重合収量の測定に供する。
一方、結晶性ポリプロピレンの重量に対するプロピレン・α−オレフィン共重合体の重量は、重合時間の調節や一酸化炭素や硫化水素等の触媒の重合活性調節剤を使用して、プロピレン・α−オレフィン共重合体の重量が20〜60重量%になるよう調節する。さらに、プロピレン・α−オレフィン共重合体の分子量は、プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度が本発明で用いるポリプロピレン系組成物の要件を満たすように水素のような分子量調節剤を共重合時に加えて調節される。また、水素の供給方法は、得られるポリプロピレン系組成物が本発明の要件を満たす様に供給される。重合方式は、回分式、半連続式もしくは連続式のいずれでも採用できるが、工業的には連続式の重合方式が好ましい。
本発明で用いるポリプロピレン系組成物には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常ポリオレフィンに使用する酸化防止剤、中和剤、耐候剤、無機充填剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤等を配合することができる。
該酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤及びリン系酸化防止剤等を、該中和剤としてはステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸塩類を例示でき、該無機充填剤及びブロッキング防止剤としては炭酸カルシウム、シリカ、ハイドロタルサイト、ゼオライト、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム等を、該滑剤としてはステアリン酸アマイド等の高級脂肪酸アマイド類を、帯電防止剤および防曇剤としてはグリセリンモノステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル等の非イオン性界面活性剤類をそれぞれ例示できる。
更には、最終生成物が本発明の範囲内になるならば、流動性調整用の過酸化物等を添加する、いわゆるレオロジーコントロール操作を行っても差し支えない。
ポリプロピレン系組成物と上記各安定剤等を配合する方法は、ヘンシェルミキサー(商品名)等の高速撹拌機付混合機及びリボンブレンダー並びにタンブラーミキサー等の通常の配合装置により配合する方法を例示でき、更に通常の単軸押出機又は二軸押出機等を用いてペレット化する方法を例示することができる。
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの両表面層は、中間層のベタツキを抑えてブロッキングを改良し、さらに透明性を促進する層であり、結晶性プロピレン重合体からなり、その内少なくとも一層は、下記の結晶性プロピレン重合体(b)からなる。好ましくは両表面層が下記の結晶性プロピレン重合体(b)からなる。
本発明のポリプロピレン系積層フィルムの表面層に使用される結晶性プロピレン重合体(b)は、メタロセン触媒を用いて重合され、メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜30g/10分であり、融解ピーク温度(Tm)が120〜165℃であり、40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量が2.0重量%以下の結晶性プロピレン重合体である。
上記のような物性を有する結晶性プロピレン重合体としては、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン単独重合体若しくは結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム重合体が挙げられるが、透明性、ヒートシール性、剛性、耐ブロッキング性のバランスの観点から結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体が好ましい。
ここで、融解ピーク温度(Tm)は、DSCによる融解ピーク温度である。
また、前記オルソジクロルベンゼンを溶媒としたときの40℃における溶出量が2.0重量%を超えるものは、透明性が悪化し易い。40℃における溶出成分は結晶構造に隙間を生じさせる成分であり、中間層のポリプロピレン系組成物中のプロピレン・α−オレフィン共重合体に由来する低規則性成分等が表面層の結晶性プロピレン共重合体に浸透し易くなると考えられ、透明性に悪影響を及ぼすものと考えられる。
本発明の積層フィルムの表面層に用いる結晶性プロピレン重合体(b)として用いるプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体は、メタロセン触媒により重合されたものであることが必要である。メタロセン触媒としては、ジメチルシリレンビス(2−メチルインデニル)ジルコニウムジクロリド等のシクロペンタジエニル骨格を有する配位子を含む周期表第4族の遷移金属化合物(いわゆるメタロセン化合物)、メチルアルモキサン等の有機アルミニウムオキシ化合物若しくはN,N−ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等のホウ素化合物若しくはイオン交換性層状珪酸塩等のメタロセン化合物と反応して安定なイオン状態に活性化しうる助触媒と、必要に応じ使用するトリエチルアルミニウム等の有機アルミニウム化合物とからなる触媒が挙げられる。
マグネシウム、チタン、ハロゲン、電子供与体を必須成分とするいわゆるチーグラーナッタ触媒などのメタロセン触媒以外の触媒により重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体を用いると透明性と剛性、耐衝撃性のバランスが悪化しやすい。
本発明で用いる結晶性プロピレン重合体(b)には、本発明の目的を損なわない範囲で、通常ポリオレフィンに使用する酸化防止剤、中和剤、耐候剤、無機充填剤、滑剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤等を配合することができ、ポリプロピレン系組成物(a)で用いたものと同様のもの、さらに、エチレン・α−オレフィンランダム共重合体エラストマー、ポリエチレンもしくはポリエチレンワック、添加剤等を含有させることができる。
本発明のポリプロピレン系積層フィルムは、上記の中間層、表面層を有するように、通常工業的に用いられている方法、例えばTダイ法、インフレーション法など溶融押し出し成型法によりポリプロピレンフィルムが製造される方法であれば特に限定されないが、大型製膜機により高速製膜が可能なTダイ法や、Tダイ法に比べフィルム製造設備費が安価な水冷インフレーション法や空冷インフレーション法が好ましい。また、本発明のポリプロピレン積層フィルムは、その目的を損なわない限り、テンター製膜法等により延伸して使用することもできる。
以下の実施例及び比較例において得られた諸物性の測定方法及び用いた樹脂材料の製造方法は、次の通りである。
(1)極限粘度:溶媒としてテトラリン(テトラクロロナフタレン)を用い135℃の温度条件下、自動粘度測定装置(AVS2型、三井東圧(株)製)を使用して測定した。
尚、結晶性ポリプロピレン及びプロピレン・α−オレフィン共重合体を連続的に製造してポリプロピレン系組成物を得る場合、該組成物中のプロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度〔η〕RCは直接測定できないので、直接測定可能な結晶性ポリプロピレンの極限粘度〔η〕PPとポリプロピレン系組成物全体の極限粘度〔η〕WHOLE、並びにプロピレン・α−オレフィン共重合体の重量%WRCから、下記式により求めた。
〔η〕RC={〔η〕WHOLE−(1−WRC/100)〔η〕PP}/(WRC/100)
(2)MFR:JIS K−7210−1995に準拠し、230℃、荷重21.18Nで測定した。
(3)融解ピーク温度:示差走査型熱量計(セイコー社製DSC)を用い、サンプル量5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/分の降温スピードで結晶化させ、さらに10℃/分の昇温スピードで融解させたときの融解ピーク温度Tmを測定した。
(4)40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量:試料を140℃でオルソジクロロベンゼンに溶解し溶液とする。これを140℃のTREFカラムに導入した後8℃/分の降温速度で100℃まで冷却し、引き続き4℃/分の降温速度で40℃まで冷却後、10分間保持する。その後、溶媒であるオルソジクロロベンゼンを1ml/分の流速でカラムに流し、TREFカラム中で40℃のオルソジクロロベンゼンに溶解している成分を10分間溶出させ、次に昇温速度100℃/時間にてカラムを140℃までリニアに昇温し、溶出曲線を得る。
カラムサイズ:4.3mmφ×150mm
カラム充填材:100μm表面不活性処理ガラスビーズ
溶媒:オルソジクロルベンゼン
試料濃度:5mg/ml
試料注入量:0.2ml
溶媒流速:1ml/分
検出器:波長固定型赤外検出器 FOXBORO社製MIRAN 1A
測定波長:3.42μm
(1)ヘイズ(単位:%):JIS K7105−1981に準拠し、測定した。
(2)ブロッキング強度(単位:g/10cm2):得られたフィルムより、2cm(幅)×15cm(長)の試料フィルムのコロナ処理を施された表面同士を長さ5cmにわたり重ね、50g/cm2の荷重下、40℃の雰囲気下で7日間放置した後、荷重を除き、23℃の温度に十分調整した後、ショッパー型引張試験機を用いて500mm/分の速度で試料の剪断剥離に要する力を測定した。数値が小さい方が良好である。
(1)ポリプロピレン系組成物(a)
ポリプロピレン系組成物(a)として以下の製造例に示す方法で(BC1〜BC4)を得た。また、通常用いられているプロピレン・エチレンブロック共重合体(BC5)を比較物として用いた。それらの物性を表1に示す。
(i)チタン含有固体触媒成分
窒素置換したステンレス製オートクレーブに、無水塩化マグネシウム(MgCl2)を95.3g、乾燥エタノール(EtOH)352mlを入れ、この混合物を攪拌下に105℃に加熱し、溶解させた。1時間攪拌後、この溶液を105℃に加熱した加圧窒素(1.1MPa)で二流体スプレーノズルに送入した。窒素ガスの流量は38リットル(0℃、1気圧のガスの標準状態)/分であった。
スプレー塔中には冷却用として液体窒素を導入し、塔内温度を−15℃に保持した。生成物は塔内底部に導入した冷却ヘキサン中に集められ、256gを得た。生成物の分析結果から、この担体の組成は出発溶液と同じMgCl2・6EtOHであった。
上記で得られた担体の篩い分けを行い、45〜212μmの粒径で球形な担体205gを得た。得られた担体を室温で、181時間、3リットル(0℃、1気圧のガスの標準状態)/分の流量の窒素を用いて通気乾燥して組成がMgCl2・1.7EtOHの乾燥担体を得た。
ガラスフラスコ中において、乾燥担体20g、四塩化チタン160ml、精製1,2−ジクロルエタン240mlを混合し、攪拌下に100℃に加熱した後、ジイソブチルフタレート6.8mlを加え、さらに100℃で2時間加熱した後、デカンテーション法により液相部を除き、固相部の担体に再び四塩化チタン160ml、精製1,2−ジクロルエタン320mlを加えた。100℃で1時間加熱保持した後、デカンテーションにより液相部を除き、精製ヘキサンで固相部を洗浄した後、乾燥してチタン含有固体触媒成分を得た。得られたチタン含有固体触媒成分の平均粒径は115μmであり、その分析値は、Mg19.5重量%、Ti1.6重量%、Cl59.0重量%、ジイソブチルフタレート4.5重量%であった。
(ii)チタン含有固体触媒成分の予備活性化処理
内容積15lの傾斜羽根付きのステンレス製反応器を窒素ガスで置換した後、40℃での動粘度が7.3センチストークスである飽和炭化水素溶剤(CRYSTOL−52、エッソ石油(株)製)8.3リットル、トリエチルアルミニウム525ミリモル、ジイソプロピルジメトキシシラン80ミリモル、前項で調製したチタン含有固体触媒成分700gを室温で加えた後、40℃まで加温し、プロピレン分圧0.15MPaで7時間反応させ、予備活性化処理を行った。分析の結果、チタン含有固体触媒成分1g当りプロピレン3.0gが反応していた。
(2)第1重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器(L/D=6、内容積100リットル)に上記予備活性化処理したチタン含有固体触媒成分を0.5g/hr、有機アルミニウム化合物としてトリエチルアルミニウムおよび有機ケイ素化合物としてジイソプロピルジメトキシシランを連続的に供給した。反応温度70℃、反応圧力2.5MPa、攪拌速度40rpmの条件を維持するようにプロピレンを連続供給し、さらに得られる結晶性ポリプロピレンの分子量を調節するために水素ガスを循環配管より連続的に供給し、反応器の気相中の水素濃度にて生成ポリマーの極限粘度を制御した。
反応熱を原料プロピレンモノマーの気化熱により除去し、重合器から排出される未反応ガスは配管を通して反応器系外で冷却、凝縮させて本重合器に還流した。本重合器で得られた結晶性ポリプロピレンは、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となる様に重合器から連続的に抜き出し、第2重合工程の重合器に供給した。この時、結晶性ポリプロピレンの一部を間欠的に抜き出して、極限粘度および重合体中のMg分の高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP法)による触媒単位重量当りの重合体収量を求める試料とした。
(3)第2重合工程
攪拌羽根を有する横型重合器(L/D=6、内容積100リットル)に第1重合工程からの結晶性ポリプロピレンおよびエチレン、プロピレンの混合モノマーガスを連続的に供給し、エチレンとプロピレンの共重合を行った。反応条件は攪拌速度40rpm、温度60℃、圧力2.1MPa、気相のエチレン/プロピレンモル比により、コポリマー成分中のプロピレン単位含有量を調節した。コポリマー成分の重合量を調節するために重合活性抑制剤として一酸化炭素、またコポリマー成分の分子量を調節するため水素ガスを供給し、反応熱は供給される原料液状プロピレンの気化熱で除去した。
重合器から排出される未反応ガスは、反応器系外で冷却、凝縮させて本共重合工程に還流させた。生成されたポリプロピレン系組成物は、重合体の保有レベルが反応容積の50容積%となるように重合器から抜き出してポリプロピレン系組成物を得た。その生産速度は8〜12kg/hrであった。
抜き出されたポリプロピレン系組成物は、未反応モノマーを除去し(BC1)とした。その一部は極限粘度、赤外によるコポリマー成分中のエチレンの測定に、またコポリマー成分の重合比率を求めるため重合体中のMg分を高周波誘電結合プラズマ発光分光分析法(ICP法)による測定に供した。
製造例1における重合条件を変更して、製造例1と同様にして表1に示す(BC2)〜(BC5)を得た。すなわち第1重合工程の水素ガス供給量、第2重合工程の水素ガス供給量、一酸化炭素供給量及びエチレン/プロピレンモル比を調節して〔η〕PP、〔η〕RC、WPP、WRC、コポリマー成分中のプロピレン含有量を変化させた(BC−2、BC−5)。さらに第1重合工程に所定のプロピレン含有量となるようエチレンを供給しBC−4を得た。また、第1重合工程に所定のプロピレン含有量となるようエチレンを供給し、第2重合工程はプロピレン、エチレン、1−ブテン含有量がそれぞれ75、20、5重量%となるように、コモノマーにエチレン、ブテン−1を供給し、BC−3を得た。
表面層に用いる(b)成分として、メタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(RC1、RC2)とチーグラー触媒で重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(RC3;比較例)を用いた。
(i)RC1:メタロセン触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)WFX4T(融解ピーク温度Tm:124.3℃、MFR:7.2g/10分、オルトジクロルベンゼン可溶分:40℃で0.7wt%)
(ii)RC2:メタロセン触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)WXK1195(融解ピーク温度Tm:134.7℃、MFR:6.2g/10分、オルトジクロルベンゼン可溶分:40℃で0.3wt%)
(iii)RC3:チーグラー触媒で重合したプロピレン・α−オレフィンランダム共重合体(日本ポリプロ(株)FW4B(融解ピーク温度Tm:138.5℃、MFR:6.0g/10分、オルトジクロルベンゼン可溶分:40℃で5.8wt%)
なお、RC1〜RC3の使用に当たっては、それぞれの未造粒パウダー97重量部、合成シリカ(富士シリシア社製、商品名サイリシア430)3重量部、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガノックス1010)を0.05重量部、トリス−(2,4−ジ−t―ブチルフェニル)ホスファイト(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ製、商品名イルガフォス168)0.05重量部の混合物をヘンシェルミキサーにて750rpm、2分間混合後、池貝製作所製PCM30mmφ二軸押出機を用い、押出温度200℃にてペレット化したものを準備し、RC1〜RC3ペレットに合成シリカ濃度が0.15重量部となるよう適宜添加したペレット混合物として用いた。
中間層用樹脂として、BC1をプラコー社製20mmφ、35mmφ、20mmφ三種三層Tダイ成形機の35mmφ押出機(中間層用)に投入し、両表面層(表面層1及び表面層2)用樹脂としてRC1を20mmφ押出機2基に投入し、押出温度220℃で幅300mmのTダイから溶融押出し、40℃に調整された直径300mmのチルロールに巻き付けながら冷却固化し、毎分10mの速度で厚さ50μmのキャストフィルムを製造した。引き続きフィルムのエアナイフ面に成形直後のJIS K6768による濡れ張力が42mN/mとなるようにコロナ処理を施し、このコロナ処理面を表面層1、反対面を表面層2し、フィルムの物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
実施例1の中間層用樹脂において、BC1をBC2に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
実施例1の両表面層用樹脂において、RC1をRC2に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
実施例1の中間層用樹脂において、BC1をBC3に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
実施例1の中間層用樹脂において、BC1をBC4に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
実施例4の両表面層用樹脂において、RC1をRC3に代えた以外は実施例4と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
実施例1の中間層用樹脂において、BC1をBC5に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
実施例1の両表面層用樹脂において、RC1をBC1に代えた以外は実施例1と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
比較例2の両表面層用樹脂において、RC1をRC3に代えた以外は比較例2と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表2にフィルムの評価結果を示す。
中間層用樹脂として、BC1を50mmφ、50mmφ、50mmφ三種三層空冷インフレーション成形機の中間層用押出機に投入し、両表面層用樹脂(表面層1及び表面層2)として、RC1を表面層用押出機に投入し、中間層用押出機の押出温度200℃で、両表面層用押出機の押出温度180℃で直径200mmのリングダイから溶融押出し、毎分12mの速度、ブロー比1.5倍で厚さ50μmのフィルムを製造した。表3にフィルムの評価結果を示す。
実施例6の中間層用樹脂において、BC1をBC2に代えた以外は実施例6と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表3にフィルムの評価結果を示す。
実施例6の両表面層用樹脂において、RC1をRC3に代えた以外は実施例6と同様な操作を行い、フィルムを得、その物性を測定した。表3にフィルムの評価結果を示す。
また、表3より明らかな通り、本発明のプロピレン系積層フィルムは、空冷インフレーション法によっても実用可能レベルの透明性を発現する。
従来の多層フィルムでは同じ層構成でありながらTダイ法(比較例1)と比較して空冷インフレーション法(比較例5)では透明性が大きく悪化するが、本発明の多層フィルムでは透明性の低下はほとんど見られない(実施例1と実施例6、実施例2と実施例7)。
更には本発明の範囲外の中間層を用いた場合、本発明の表面層を用いても本発明範囲外の表面層を用いても共に同程度の透明性を示すが(比較例2、比較例4)、本発明の中間層を用いた場合にのみ特異的に透明性に差が見られることが分かる(実施例4、比較例1)。
Claims (6)
- 表面層と中間層の三層から構成されるポリプロピレン系積層フィルムであって、中間層が下記(a)ポリプロピレン系組成物からなり、両表面層が結晶性プロピレン重合体からなり、且つ表面層の少なくとも一層は下記(b)結晶性プロピレン重合体からなることを特徴とするポリプロピレン系積層フィルム。
(a)ポリプロピレン系組成物:
結晶性ポリプロピレン40〜80重量%と、20〜80重量%のプロピレン重合単位を有するプロピレン・α−オレフィン共重合体60〜20重量%からなるポリプロピレン系組成物であって、プロピレン・α−オレフィン共重合体の極限粘度〔η〕RCが1.7〜6.5dl/gの範囲で、結晶性ポリプロピレンとプロピレン・α−オレフィン共重合体との極限粘度比(〔η〕RC/〔η〕PP)が0.6〜1.2であり、且つ、該結晶性ポリプロピレンの重量をWPPとし、該プロピレン・α−オレフィン共重合体の重量をWRCとしたときの該結晶性ポリプロピレンと該プロピレン・α−オレフィン共重合体との重量比(WPP/WRC)と該極限粘度比(〔η〕RC/〔η〕PP)との積(〔η〕RC/〔η〕PP)×(WPP/WRC)が0.2〜4.5の範囲にあるポリプロピレン系組成物。
(b)結晶性プロピレン重合体:
メタロセン触媒を用いて重合された、メルトフローレート(MFR:230℃、21.18N荷重)が1〜30g/10分、融解ピーク温度(Tm)が120〜165℃、40℃のオルソジクロルベンゼン可溶分量が2.0重量%以下の結晶性プロピレン重合体。 - (a)ポリプロピレン系組成物のプロピレン・α−オレフィン共重合体が45〜80重量%のプロピレン重合単位を含有するプロピレンとα−オレフィンとの共重合体であることを特徴とする請求項1に記載のポリプロピレン系積層フィルム。
- (a)ポリプロピレン系組成物のプロピレン・α−オレフィン共重合体がプロピレンとエチレンおよび/又は1−ブテンとの共重合体であることを特徴とする請求項1又は2に記載のポリプロピレン系積層フィルム。
- (a)ポリプロピレン系組成物の結晶性ポリプロピレンがプロピレン単独重合体又は90重量%以上のプロピレンと10重量%以下のエチレンおよび/若しくは1−ブテンとの共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリプロピレン系積層フィルム。
- (b)結晶性プロピレン重合体が融解ピーク温度(Tm)120〜145℃である結晶性プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリプロピレン系積層フィルム。
- (b)結晶性プロピレン重合体が結晶性プロピレン・エチレンランダム共重合体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のポリプロピレン系積層フィルム。
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