JP4514248B2 - プロピレン系樹脂組成物及びそのフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プロピレン系樹脂組成物及びそのフィルムに関するものである。詳しくは、プロピレン、エチレン及び/又はブテン−1のプロピレン系ランダム共重合体とそれより結晶化温度の高いプロピレン系重合体からなり、成形性やフイルム物性の改良された樹脂組成物及びそのフイルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
結晶性プロピレン系重合体のフィルムは、その優れた剛性、透明性及び防湿性等を生かし、広く包装用フィルムとして使用されている。そして、プロピレン単独重合体では低温ヒートシール性に難点があるため、通常、エチレンや1−ブテンその他αオレフィンとの共重合体が広く用いられている。ところが、充分な低温ヒートシール性を得るためには多量のエチレンや1−ブテンを共重合させる必要があり、その結果、ベトつき成分が多量に副成して、アンチブロッキング性が大きく低下したり、ブリード白化による外観不良が生じたりしていた。
【0003】
このようなプロピレン系ランダム共重合体を改良するため、本出願人は、チーグラー系触媒を用いた種々の提案をしてきた(特開平9−222356号公報、特願平10−110377号公報、特願平10−246850号公報など)。 また、メタロセン系触媒を用いたプロピレン系重合体についてもいくつか提案されている。
【0004】
しかし、いずれにしても分子量分布や組成分布が狭く、特に成形性が不充分であり、工業的にフイルム用途及びその成形法に適する樹脂を得ることは困難である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ポリプロピレンフィルムの本来有する好ましい特性(剛性、透明性、耐衝撃性)を損なうことなく、優れた低温ヒートシール性を発揮し、かつスリップ性、アンチロッキング性、成形性も良好なプロピレン系樹脂及びそのフィルムの提供を目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題につき鋭意検討した結果、(A)成分のプロピレン、エチレン及び/又は1−ブテンからなるプロピレン系ランダム共重合体に(B)成分のプロピレン系重合体を加えることにより成形性とフィルム物性が改良されること見いだし、以下に示す内容を要旨とする発明を完成させた。
〔1〕(A)プロピレン、エチレン及び/又は1−ブテンからなるプロピレン系ランダム共重合体55〜99重量部、(B)示差走査型熱量計により測定した結晶化温度TCB(℃)が(A)成分の同結晶化温度TCA(℃)より高いプロピレン系重合体45〜1重量部からなる樹脂組成物であって、示差走査型熱量計により測定した結晶化曲線における最高温度側のピークトップ温度TC (℃)と融解曲線における最低温度側のピークトップ温度Tm (℃)とが式(1)
TC ≧0.75×Tm −5 ・・・(1)
の関係を満たし、かつ昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0(wt%)が6wt% 以下であるプロピレン系樹脂組成物。
〔2〕(A)成分が、昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTp (℃)とし、(Tp −5)℃〜(Tp +5)℃の温度範囲で溶出する量をWp(wt%)とした場合、式(2)
20≦Wp ≦65 ・・・(2)
の関係を満足するプロピレン、エチレン及び/又は1−ブテンからなるプロピレン系ランダム共重合体である上記〔1〕記載のプロピレン系樹脂組成物。
〔3〕示差走査型熱量計により測定した(B)成分の結晶化温度TCB(℃)が(A)成分の同結晶化温度TCA(℃)より10℃以上高い上記〔1〕又は〔2〕に記載のプロピレン系樹脂組成物。
〔4〕(A)成分が、下記(a1)〜(a3)の性状を有するプロピレン、エチレン及び1−ブテンからなるプロピレン系三元ランダム共重合体である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
(a1)13C−NMRにより測定した共重合体中のエチレン単位の含有量α(モル%)及び1−ブテン単位の含有量β(モル%)の和(α+β)(モル%)が0.1〜15モル%であり、
(a2)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTpt(℃)とした場合、(Tpt−5)℃〜(Tpt+5)℃の温度範囲で溶出する量Wpt(wt%) が20wt% 以上であり、及び
(a3)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0t(wt%) と(α+β)(モル%)が下記式(3)〜(5)の関係を満たす。
【0007】
0.1≦(α+β)<2の場合、W0t≦1 ・・・(3)
2≦(α+β)<12の場合、W0t≦(α+β)/2 ・・・(4)
12≦(α+β)≦15の場合、W0t≦6 ・・・(5)
〔5〕(A)成分が、下記(a'1)〜(a'3)の性状を有するプロピレンとエチレンからなるプロピレン系ランダム共重合体である上記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
(a'1)13C−NMRにより測定した共重合体中のエチレン単位の含有量α' (wt%) が0.2〜10wt% であり、
(a'2)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTpr(℃)とし、(Tpr−5)℃〜(Tpr+5)℃の温度範囲で溶出する量Wpr(wt%) が20wt% 以上であり、及び
(a'3)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0r(wt%) とα'(wt%)が式(6)の関係を満たす。
【0008】
W0r≦(3+2α')/4 ・・・(6)
〔6〕(B)成分が、示差走査型熱量計により測定した融解曲線における示差熱量△HB (J/g) と融点TmB(℃) が式(7)の関係を満たすプロピレン系重合体である上記〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物。
△HB ≧TmB/2+10 ・・・(7)
〔7〕上記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物からなるフイルム。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明について、以下に詳細に説明する。
〔1〕本発明の樹脂組成物は、
(A)プロピレン、エチレン及び/又は1−ブテンからなるプロピレン系ランダム共重合体、好ましくは更に昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTp (℃)とし、(Tp −5)℃〜(Tp +5)℃の温度範囲で溶出する量をWp(wt%)とした場合に式(2)
20≦Wp ≦65 ・・・(2)
の関係を満足するプロピレン系ランダム共重合体55〜99重量部、好ましくは65〜98.5重量部、より好ましくは75〜98重量部、
(B)示差走査型熱量計により測定した結晶化温度TCB(℃)が(A)成分の同結晶化温度TCA(℃)より高い、好ましくは10℃以上高い、より好ましくは20℃以上高い、更に好ましくは30℃以上高いプロピレン系重合体、好ましくは更に示差走査型熱量計により測定した融解曲線における示差熱量△HB (J/g) と融点TmB(℃) が式(7)
△HB ≧TmB/2+10 ・・・(7)
を満たすプロピレン系重合体45〜1重量部、好ましくは35〜1.5重量部、より好ましくは25〜2重量部からなる樹脂組成物であって、
示差走査型熱量計により測定した結晶化曲線における最高温度側のピークトップ温度TC (℃) と融解曲線における最低温度側のピークトップ温度Tm (℃)と式(1)
を満たし、かつ昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0(wt%)が6wt% 以下、好ましくは5wt% 以下、より好ましくは4wt% 以下であるプロピレン系樹脂組成物である。
【0010】
(A)成分のプロピレン、エチレン及び/又は1−ブテンのプロピレン系ランダム共重合体については、コモノマー含量、全体のメルトインデックス等のポリマー特性や重合触媒の種類、重合方法に特に制限はない。これらを特定したものについて〔2〕、〔3〕に後述する。なお、好ましくは昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTp (℃)とし、(Tp −5)℃〜(Tp +5)℃の温度範囲で溶出する量をWp(wt%)とした場合に式(2)
を満たし、更に好ましくは式(2−2)に加えて、コモノマー(エチレン、1−ブテン)量(α+β)(モル%)もしくはコモノマー(エチレン)量α'(wt%)と関係式(2−3)もしくは式(2−3)’
を満たし、
より更に好ましくは式(2−4)と式(2−5)もしくは式(2−5)’の両式
を満たすプロピレン系ランダム共重合体がよい。
【0011】
なお、昇温分別クロマトグラフィー(TREF)による測定方法については、実施例にて述べる。
(B)成分のプロピレン系重合体については、示差走査型熱量計により測定した結晶化温度TCB(℃)が(A)成分の同結晶化温度TCA(℃)より高いプロピン系重合体であればよい。従って、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。この(B)成分の結晶化温度TCB(℃)が(A)成分の同結晶化温度TCA(℃)より高くなければ、成形性やフイルム物性の改良効果が不充分となる。
【0012】
また、好ましくは更に示差走査型熱量計により測定した融解曲線における示差熱量△HB (J/g) と融点TmB(℃) が式(7)
を満たすプロピレン系重合体がよい。
【0013】
式(7)の関係を満たすプロピレン系重合体は、融点が低いわりに結晶性の高い樹脂を意味する。なお、示差走査型熱量計による結晶化温度、示差熱量、融点等の測定法については、実施例にて述べる。
さらに、(A)成分のプロピレン、エチレン及び/又は1−ブテンのプロピレン系ランダム共重合体は55重量部より少なければ、低温ヒートシール性が不充分となり、99重量部より多ければ成形性やフイルム物性の改良効果が不充分となる。
【0014】
得られた樹脂組成物のTC とTm が式(1)の関係を満たさなければ、成形性やフイルム物性の改良効果が不充分となる。
また、昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0(wt%)が6wt% を越えるとフイルム、シート、繊維等成形品はベトつきが顕著になり、併せて添加剤や低分子量成分のブリードによる外観トラブルが起こりやすくなる。
〔2〕上記〔1〕で説明した本発明の樹脂組成物に用いる下記(a1)〜(a3)の性状を有するプロピレン、エチレン及び1−ブテンのプロピレン系三元ランダム共重合体である(A)成分について説明する。
(a1)13C−NMRにより測定した共重合体中のエチレン単位の含有量α(モル%)及び1−ブテン単位の含有量β(モル%)の和(α+β)(モル%)が0.1〜15モル%であり、
好ましくは式(a1−2)、より好ましくは式(a1−3)、更に好ましくは式(a1−4)
−5≦(α−β)≦5 ・・・(a1−2)
2α≧β、かつα≦2β ・・・(a1−3)
α≧6、かつα≧β、かつα≦2β ・・・(a1−4)
を満足し、
より更に好ましくは走査型熱量計により測定した共重合体の融点Tmt(℃) と(α+β)とが式(a1−5)、より好ましくは式(a1−6)
Tmt≦164−3.6(α+β) ・・・(a1−5)
Tmt≦160−3.6(α+β) ・・・(a1−6)
を満足し、
(a2)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTpt(℃)とし、(Tpt−5)℃〜(Tpt+5)℃の温度範囲で溶出する量Wpt(wt%) が20wt% 以上であり、好ましくは式(a2−2),より好ましくは式(a2−3)
20≦Wpt、かつ90−7(α+β)≦Wpt ・・・(a2−2)
30≦Wpt、かつ100−7(α+β)≦Wpt・・・(a2−3)
を満足し、
より更に好ましくは(Tpt+5)℃以上の溶出成分Wht(wt%) が、式(a2−4)、好ましくは式(a2−5)、より好ましくは式(a2−6)
0.1≦Wht≦(α+β) ・・・(a2−4)
0.1≦Wht≦(α+β)−3 ・・・(a2−5)
0.5≦Wht≦(α+β)−5 ・・・(a2−6)
を満足し、及び
(a3)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0t(wt%) と(α+β)(モル%)が下記式(3)〜(5)
0.1≦(α+β)<2の場合、W0t≦1 ・・・(3)
2≦(α+β)<12の場合、W0t≦(α+β)/2 ・・・(4)
12≦(α+β)≦15の場合、W0t≦6 ・・・(5)
の関係を満たし、
好ましくは式(a3−2)、式(a3−3)、式(a3−4)
0.1≦(α+β)<4の場合、W0t≦1 ・・・(a3−2)
4≦(α+β)<14の場合、W0t≦(α+β−2)/2・・・(a3−3)
14≦(α+β)≦15の場合、W0t≦6 ・・・(a3−4)
を満たし、
より好ましくは式(a3−5)、式(a3−6)
0.1≦(α+β)<4の場合、W0t≦0.5 ・・・(a3−5)
4≦(α+β)≦15の場合、W0t≦(α+β−3)/2・・・(a3−6)
を満たし、
更に好ましくは式(a3−7)、式(a3−8)
0.1≦(α+β)<5の場合、W0t≦0.5 ・・・(a3−7)
5≦(α+β)≦15の場合、W0t≦(α+β−4)/2・・・(a3−8)
満たし、
より更に好ましくは、共重合体中の沸騰ジエチルエーテル抽出量E(wt%)と(α+β)(モル%)が、式(a3−9)、式(a3−10)
0.1≦(α+β)<12のときE≦0.2(α+β)+0.6・・・(a3−9)
12≦(α+β)≦15のときE≦3 ・・・(a3−10)
を満たし、
好ましくは式(a3−11)、(a3−12)
0.1≦(α+β)<10のときE≦0.2(α+β)+0.3・・・(a3−11)
10≦(α+β)≦15のときE≦2.3・・・(a3−12)
を満たし、
より好ましくは式(a3−13)、(a3−14)、(a3−15)
0.1≦(α+β)<1.5のときE≦0.3 ・・・(a3−13)
1.5≦(α+β)<10のときE≦0.2(α+β)・・・(a3−14)
10≦(α+β)のときE≦2 ・・・(a3−15)
を満たす。
〔2−1〕上記プロピレン系三元ランダム共重合体は、先ず、上記(a1)で示すエチレン単位の含有量と1−ブテン単位の含有量との和(α+β)が0.1モル%より少なければヒートシール性の改良効果が望めないし、15モル%より多ければフイルムの剛性が不充分となる。
【0015】
更に、上式(a1−2)を満たさない場合、すなわち(α−β)<−5であると気相重合においてリアクター内で1−ブテンが液化し、塊が発生し易くなる場合がある。(α−β)>5であると1−ブテン単位によるベとつき成分のブリード抑制効果が小さくなる、特にアンチブロッキング性の経時的な低下が起こり易くなる場合がある。
【0016】
また、(α+β)の増加に合わせて共重合体の融点は低下している事が好ましいので、Tmtと(α+β)の関係が上記式(a1−5)を満たさなければヒートシール性やアンチブロッキング性が不充分となる場合がある。すなわち、コモノマーがプロピレン主鎖にランダムに結合し、かつ全体として結晶性を失わない(ゴム状ではない)プロピレン系三元ランダム共重合体が望ましいことを意味する。
〔2−2〕上記プロピレン系三元ランダム共重合体は、上記(a2)で示す昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTpt(℃)とし、(Tpt−5)℃〜(Tpt+5)℃の温度範囲で溶出する量Wpt(wt%) が20wt% より少なければ、主溶出ピークの裾が高温側或いは低温側に大きく伸びていることを示す。
すなわち、それぞれ高温側、低温側の成分が多くなることを意味し、高温側成分が多いとヒートシール性を不十分になり、透明性の成形条件依存性が大きくなるし、低温側の成分が多いとフイルム、繊維、シート、成形体等がベトついたものになり易い。
【0017】
また、主溶出ピークの高温側の成分は、キャスト成形におけるチルロールリリースなどの成形性やフイルムの剛性を高める作用があり、併せて(B)成分のプロピレン系重合体との相溶性を維持する上でも有効である。従って、(Tp +5)℃以上の溶出成分Wht(wt%) が、式(a2−4)の関係を満たすのが好ましい。
〔2−3〕上記プロピレン系三元ランダム共重合体は、上記(a3)で示す昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0t(wt%) と(α+β)(モル%)が上式(3)〜(5)の関係を満たさなければフイルム、シート、繊維等の成形体がベトついたものになり、添加剤、低分子量成分のブリードなどによるトラブルが起こり易くなり好ましくない。
【0018】
また、共重合体中の沸騰ジエチルエーテル抽出量E(wt%)と(α+β)(モル%)が上記式(a3−9)、式(a3−10)の関係を満たす場合は、フイルム、シート、繊維等の成形体がベトついたものにならず好ましい。
〔2−4〕上記プロピレン系三元ランダム共重合体は、メルトインデックス(MI)0.1〜200g/10分であるのが好ましい。MIがこの範囲から外れると成形性に劣るものになりやすく好ましくない。より好ましくは1〜40g/10分である。
〔2−5〕上記プロピレン系三元ランダム共重合体は、13C−NMRにより測定した共重合体中の立体規則性指標P(モル%)は98モル%以上であるのが好ましい。立体規則性が低下するとフイルムの剛性、アンチブロッキング性が不満足なものになり易い。より好ましくは98.5モル%以上である。
〔2−6〕上記プロピレン系三元ランダム共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された重合平均分子量Mw と数平均分子量Mn との比(Mw /Mn )はフイルムの透明性の観点から6以下であることが好ましく、また成形性の観点から2以上であることが好ましい。特に2.5≦Mw /Mn ≦5が好適である。
〔3〕上記〔1〕で説明した本発明の樹脂組成物に用いる下記(a'1)〜(a'3)の性状を有する特定なプロピレンとエチレンのプロピレン系ランダム共重合体である(A)成分について説明する。
(a'1)13C−NMRにより測定した共重合体中のエチレン単位の含有量α' (wt%) が0.2〜10wt% であり、好ましくは0.5〜9wt% 、より好ましくは1〜8wt% 、更に好ましくは3〜7wt% であり、
最も好ましくは、示差走査型熱量計により測定した共重合体の融点(Tmr( ℃))とα' とが式(a'1−2)
Tmr≦160−5α' ・・・(a'1−2)
を満たし、
好ましくは式(a'1−3)
Tmr≦160−6α' ・・・(a'1−3)
を満たし、
(a'2)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTpr(℃)とし、(Tpr−5)℃〜(Tpr+5)℃の温度範囲で溶出する量(Wpr(wt%) )が20wt% 以上であり、
好ましくは式(a'2−2)
20≦Wpr、かつ80−15α' ≦Wpr・・・(a'2−2)
を満たし、
より好ましくは式(a'2−3)
30≦Wpr、かつ90−12α' ≦Wpr・・・(a'2−3)
を満たし、
更に好ましくは主溶出ピーク温度の高温側の成分、すなわち(Tpr+5)℃以上の溶出成分(Whr(wt%) )が式(a'2−4)
0.1≦Whr≦3α' ・・・(a'2−4)
を満たし、
好ましくは式(a'2−5)
0.1≦Whrかつ3α' −15≦Whr≦3α' −3・・・(a'2−5)
を満たし、及び
(a'3)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0r(wt%) とα'(wt%)が式(6)
W0r≦(3+2α')/4 ・・・(6)
を満たし、
好ましくは式(a'3−2)
W0r≦(2+2α')/4 ・・・(a'3−2)
を満たし、
更に好ましくは共重合体中の沸騰ジエチルエーテル抽出量Er(wt%)) とα'(wt%)が式(a'3−3)
Er ≦2.5かつ Er ≦(2α' +15)/10・・・(a'3−3)
を満たし、
好ましくは式(a'3−4)
Er ≦2.0かつ Er ≦(α' +5)/5・・・(a'3−4)
を満たす。
〔3−1〕上記のプロピレン系ランダム共重合体は、上記(a'1) で示す共重合体中のエチレン単位の含有量α’が0.2wt% より少なければヒートシール性の改良効果が望めないし、10wt% より多ければフイルムの剛性が不充分となる。更に、エチレン単位の含有量に合わせて共重合体の融点Tmr( ℃) が低下していることが望ましい。従って、Tmrとα’が上記式(a'1−2)を満たしていない場合はヒートシール性が不充分になり易く、またアンチブロッキング性が低くなり易い。
〔3−2〕上記プロピレン系ランダム共重合体は、上記(a'2) で示す昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTpr(℃)とし、(Tpr−5)℃〜(Tpr+5)℃の温度範囲で溶出する量Wpr(wt%) が20wt% より少なければ、主溶出ピークの裾が高温側或いは低温側に大きく伸びていることを示す。
すなわち、それぞれ高温側、低温側の成分が多くなることを意味し、高温側成分が多いとヒートシール性が不十分になり、透明性の成形条件依存性が大きくなるし、低温側の成分が多いとフイルム、繊維、シート、成形体等がベトついたものになり易い。
【0019】
また、主溶出ピークの高温側の成分は、キャスト成形におけるチルロールリリースなどの成形性やフイルムの剛性を高める作用があり、併せて(B)成分のプロピレン系重合体との相溶性を維持する上でも有効である。従って、(Tpr+5)℃以上の溶出成分Whr(wt%) が、式(a'2−4)の関係を満たせばよい。
〔3−3〕上記プロピレン系ランダム共重合体は、上記(a'3)で示す昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0r(wt%) とα'(wt%)が上記式(6)の関係を満たさなければフイルム、シート、繊維等の成形体がベトついたものになり、添加剤、低分子量成分のブリードなどによるトラブルが起こり易くなり好ましくない。
【0020】
また、共重合体中の沸騰ジエチルエーテル抽出量Er(wt%)とα'(wt%)が上記式(a'3−3)を満たす場合は、フイルム、シート、繊維等の成形体がベトついたものにならず好ましい。
〔3−4〕上記プロピレン系ランダム共重合体は、メルトインデックス(MIr )0.1〜200g/10分であるのが好ましい。MIr がこの範囲から外れると成形性に劣るものになりやすく好ましくない。より好ましくは1〜40g/10分である。更に好ましくは2〜20g/10分である。
〔3−5〕上記プロピレン系ランダム共重合体は、13C−NMRにより測定した共重合体中の立体規則性指標Pr(モル%)は98モル%以上であるのが好ましい。立体規則性が低下するとフイルムの剛性、アンチブロッキング性が不満足なものになり易い。より好ましくは98.5モル%以上である。
〔3−6〕上記プロピレン系ランダム共重合体は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定された重合平均分子量Mw と数平均分子量Mn との比Mw /Mn はフイルムの透明性の観点から6以下であることが好ましく、また成形性の観点から2以上であることが好ましい。特に2.5≦Mw /Mn ≦5が好適である。
【0021】
なお、沸騰ジエチルエーテル抽出量、コモノマー含量、立体規則性指標、MI及びMw/Mnの測定方法については実施例にて述べる。
〔4〕上記〔1〕、〔2〕、〔3〕で示されるプロピレン系ランダム共重合体の製造法について以下に示す。
本発明におけるプロピレン系ランダム共重合体は(A)マグネシウム化合物とチタン化合物とを電子供与性化合物および必要に応じてケイ素化合物の存在下、120〜150℃の温度にて接触させた後、100〜150℃の温度にて不活性溶媒により洗浄したものからなる固体触媒成分、(B)有機アルミニウム化合物および必要に応じて(C)第3成分として電子供与性化合物からなる触媒を用いてプロピレンとエチレン及び/又は1−ブテンを共重合することにより製造することができる。
【0022】
以下に、各触媒成分、調整方法、重合方法等について説明する。
〔I〕各触媒成分
(A) 固体触媒成分
固体触媒成分は、マグネシウム、チタンおよび電子供与体を含有するものであり、以下の(a)マグネシウム化合物、(b)チタン化合物、(c)電子供性化合物および必要に応じてケイ素化合物(d)からなる固体触媒成分から形成されるものである。
(a)マグネシウム化合物
マグネシウム化合物としては、特に制限はないが、一般式(I)
MgR1 R2 ・・・(I)
で表されるマグネシウム化合物を好ましく用いることができる。
【0023】
上記の一般式(I)において、R1 およびR2 は、炭化水素基、OR3 基(R3 は炭化水素基)またはハロゲン原子を示す。ここで、R1 およびR2 の炭化水素基としては、炭素数1〜12個のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等を、OR3 基としては、R3 が炭素数1〜12個のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基等を、ハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素、フッ素等を挙げることができる。また、R1 およびR2 は、同一でも異なってもよい。
【0024】
上記の一般式(I)で示されるマグネシウム化合物の具体例としては、ジメチルマグネシウム,ジエチルマグネシウム,ジイソプロピルマグネシウム,ジブチルマグネシウム,ジヘキシルマグネシウム,ジオクチルマグネシウム,エチルブチルマグネシウム,ジフェニルマグネシウム,ジシクロヘキシルマグネシウム等のアルキルマグネシウム,アリールマグネシウム;ジメトキシマグネシウム,ジエトキシマグネシウム,ジプロポキシマグネシウム,ジブトキシマグネシウム,ジヘキシロキシマグネシウム,ジオクトキシマグネシウム,ジフェノキシマグネシウム,ジシクロヘキシロキシマグネシウム等のアルコキシマグネシウム,アリロキシマグネシウム;エチルマグネシウムクロリド,ブチルマグネシウムクロリド,ヘキシルマグネシウムクロリド,イソプロピルマグネシウムクロリド,イソブチルマグネシウムクロリド,t−ブチルマグネシウムクロリド,フェニルマグネシウムブロミド,ベンジルマグネシウムクロリド,エチルマグネシウムブロミド,ブチルマグネシウムブロミド,フェニルマグネシウムクロリド,ブチルマグネシウムイオダイド等のアルキルマグネシウムハライド,アリールマグネシウムハライド;ブトキシマグネシウムクロリド,シクロヘキシロキシマグネシウムクロリド,フェノキシマグネシウムクロリド,エトキシマグネシウムブロミド,ブトキシマグネシウムブロミド,エトキシマグネシウムイオダイド等のアルコキシマグネシウムハライド,アリロキシマグネシウムハライド;塩化マグネシウム,臭化マグネシウム,ヨウ化マグネシウム等のハロゲン化マグネシウム等を挙げることができる。
【0025】
これらのマグネシウム化合物の中でも、重合活性および立体規則性の面から、マグネシウムハライド、アルコキシマグネシウム、アルキルマグネシウム、アルキルマグネシウムハライドが好適に使用できる。
上記のマグネシウム化合物は、金属マグネシウム、またはマグネシウムを含有する化合物から調製することができる。
【0026】
一例としては、金属マグネシウムにハロゲンおよびアルコール類を接触させる方法が挙げられる。ここで、ハロゲンとしては、ヨウ素、塩素、臭素、フッ素が挙げられる。これらの中ではヨウ素が好ましい。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール等が挙げられる。
また、他の一例として、Mg(OR4 )2 で表されるマグネシウムアルコキシ化合物(式中、R4 は、炭素数1〜20個の炭化水素基を示す。)にハロゲン化物を接触させる方法が挙げられる。
【0027】
上記のハロゲン化物としては、四塩化ケイ素、四臭化ケイ素、四塩化スズ、四臭化スズ、塩化水素等が挙げられる。これらの中では四塩化ケイ素が好ましい。
上記のR4 としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基、アリル基、プロペニル基、ブテニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基、フェネチル、3−フェニルプロピル基等のアラルキル基等が挙げられる。これらの中では特に炭素数1〜10個のアルキル基が好ましい。
【0028】
さらに、マグネシウム化合物は、シリカ、アルミナ、ポリスチレン等の担体に担持されていてもよい。以上のマグネシウム化合物は単独で用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。また、ヨウ素などのハロゲン、珪素、アルミニウム等の他の元素を含有してもよく、アルコール、エーテル、エステル類などの電子供与体を含有してもよい。
(b)チタン化合物
チタン化合物としては、特に制限はないが、一般式(II)
TiX1 p (OR5 )4-p ・・・(II)
で表されるチタン化合物を好ましく用いることができる。
【0029】
上記の一般式(II)において、X1 はハロゲン原子を示し、その中でも塩素原子および臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。R5 は炭化水素基であって、飽和基や不飽和基であってもよく、直鎖状のものや分枝鎖を有するもの、あるいは環状のものであってもよく、さらにはイオウ、窒素、酸素、ケイ素、リンなどのヘテロ原子を含むものであってもよい。好ましくは炭素数1〜10個の炭化水素基、特にアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基などが好ましく、直鎖または分岐鎖のアルキル基が特に好ましい。−OR5 が複数存在する場合にはそれらは互いに同じでも異なってもよい。R5 の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、アリル基、ブテニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。pは0〜4の整数を示す。
【0030】
上記の一般式(II)で示されるチタン化合物の具体例としては、テトラメトキシチタン,テトラエトキシチタン,テトラ−n−プロポキシチタン,テトライソプロポキシチタン,テトラ−n−ブトキシチタン,テトライソブトキシチタン,テトラシクロヘキシロキシチタン,テトラフェノキシチタン等のテトラアルコキシチタン;四塩化チタン,四臭化チタン,四ヨウ化チタン等のテトラハロゲン化チタン;メトキシチタントリクロリド,エトキシチタントリクロリド,プロポキシチタントリクロリド,n−ブトキシチタントリクロリド,エトキシチタントリブロミド等のトリハロゲン化アルコキシチタン;ジメトキシチタンジクロリド,ジエトキシチタンジクロリド,ジイソプロポキシチタンジクロリド,ジ−n−プロポキシチタンジクロリド,ジエトキシチタンジブロミド等のジハロゲン化ジアルコキシチタン;トリメトキシチタンクロリド,トリエトキシチタンクロリド,トリイソプロポキシチタンクロリド,トリ−n−プロポキシチタンクロリド,トリ−n−ブトキシチタンクロリド等のモノハロゲン化トリアルコキシチタンなどを挙げることができる。これらの中で、重合活性の面から、高ハロゲン含有チタン化合物、特に四塩化チタンが好ましい。これらのチタン化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(c)電子供与性化合物
電子供与性化合物としては、アルコール類、フェノール類、ケトン類、アルデヒド類、有機酸もしくは無機酸のエステル類、モノエーテル、ジエーテルもしくはポリエーテル等のエーテル類等の含酸素電子供与性化合物や、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネート等の含窒素電子供与性化合物を挙げることができる。前記の有機酸としては、カルボン酸が挙げられ、具体的にはマロン酸等が挙げられる。これらの中では、多価カルボン酸のエステル類が好ましく、さらに好ましくは、芳香族多価カルボン酸のエステル類である。重合活性の面から、特に芳香族ジカルボン酸のモノエステルおよび/またはジエステルが好ましい。また、エステル部の有機基が直鎖、分岐または環状の脂肪族炭化水素が好ましい。
【0031】
具体的には、フタル酸、ナフタレン−1, 2−ジカルボン酸,ナフタレン−2,3−ジカルボン酸、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−1,2−ジカルボン酸、5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2,3−ジカルボン酸、インダン−4,5−ジカルボン酸、インダン−5,6−ジカルボン酸等のジカルボン酸のメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、n−ペンチル、1−メチルブチル、2−メチルブチル、3−メチルブチル、1,1−ジメチルプロピル、1−メチルペンチル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、4−メチルペンチル、1−エチルブチル、2−エチルブチル、n−ヘキシル、シクロヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、n−ノニル、2−メチルヘキシル、3−メチルヘキシル、4−メチルヘキシル、2−エチルヘキシル、3−エチルヘキシル、4−エチルヘキシル、2−メチルペンチル、3−メチルペンチル、2−エチルペンチル、3−エチルペンチル等のジアルキルエステルが挙げられる。これらの中では、フタル酸ジエステル類が好ましく、また、エステル部の有機基の炭素数が4個以上の直鎖または分岐の脂肪族炭化水素が好ましい。
【0032】
この具体例としては、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジ−n−ヘプチル、フタル酸ジエチルなどを好ましく挙げることができる。
また、これらの化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(d)ケイ素化合物
固体触媒成分の調製に、前記(a)、(b)および(c)成分に加えて、場合により(d)成分として、下記の一般式(III)、
Si(OR6 )q X1 4-q ……(III)
(R6 は炭化水素基、X1 はハロゲン原子、qは0〜3の整数を示す。)
で表されるケイ素化合物を用いることができる。ケイ素化合物を用いることにより、触媒活性および立体規則性の向上ならびに生成ポリマー中の微粉量の低減が図れることがある。
【0033】
上記の一般式(III)において、X1 はハロゲン原子を示し、これらの中で塩素原子および臭素原子が好ましく、塩素原子が特に好ましい。R6 は炭化水素基であって、飽和基や不飽和基であってもよく、直鎖状のものや分枝鎖を有するもの、あるいは環状のものであってもよく、さらにはイオウ、窒素、酸素、ケイ素、リンなどのヘテロ原子を含むものであってもよい。好ましくは炭素数1〜10個の炭化水素基、特にアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アリール基およびアラルキル基などが好ましい。−OR6 が複数存在する場合にはそれらは互いに同じでも異なってもよい。R6 の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−デシル基、アリル基、ブテニル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘキセニル基、フェニル基、トリル基、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。qは0〜3の整数を示す。
【0034】
上記の一般式(III)で示されるケイ素化合物の具体例としては、四塩化ケイ素、メトキシトリクロロシラン、ジメトキシジクロロシラン、トリメトキシクロロシラン、エトキシトリクロロシラン、ジエトキシジクロロシラン、トリエトキシクロロシラン、プロポキシトリクロロシラン、ジプロポキシジクロロシラン、トリプロポキシクロロシランなどを挙げることができる。これらの中で特に四塩化ケイ素が好ましい。これらのケイ素化合物は、それぞれ単独で用いてもよく、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)有機アルミニウム化合物
本発明におけるプロピレンランダム共重合体の製造に用いられる(B)有機アルミニウム化合物としては、特に制限はないが、アルキル基、ハロゲン原子、水素原子、アルコキシ基を有するもの、アルミノキサンおよびそれらの混合物を好ましく用いることができる。具体的には、トリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリイソプロピルアルミニウム,トリイソブチルアルミニウム,トリオクチルアルミニウム等のトリアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムモノクロリド,ジイソプロピルアルミニウムモノクロリド,ジイソブチルアルミニウムモノクロリド,ジオクチルアルミニウムモノクロリド等のジアルキルアルミニウムモノクロリド;エチルアルミニウムセスキクロリド等のアルキルアルミニウムセスキハライド;メチルアルミノキサン等の鎖状アルミノキサン等を挙げることができる。これらの有機アルミニウム化合物の中では、炭素数1〜5個の低級アルキル基を有するトリアルキルアルミニウム、特にトリメチルアルミニウム,トリエチルアルミニウム,トリプロピルアルミニウムおよびトリイソブチルアルミニウムが好ましい。また、これらの有機アルミニウム化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(C)第3成分(電子供与性化合物)
本発明におけるプロピレンランダム共重合体を製造するには、(C)電子供与性化合物が用いられる。この(C)電子供与性化合物としては、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物、酸素含有化合物を用いることができる。このうち、重合活性および立体規則性の面から、Si−O−C結合を有する有機ケイ素化合物、エーテル類およびエステル類を用いることが好ましく、特にSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物を用いることが好ましい。
【0035】
このSi−O−C結合を有する有機ケイ素化合物の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、エチルイソプロピルジメトキシシラン、プロピルイソプロピルジメトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、ジイソブチルジメトキシシラン、イソプロピルイソブチルジメトキシシラン、ジ−t−ブチルジメトキシシラン、t−ブチルメチルジメトキシシラン、t−ブチルエチルジメトキシシラン、t−ブチルプロピルジメトキシシラン、t−ブチルイソプロピルジメトキシシラン、t−ブチルブチルジメトキシシラン、t−ブチルイソブチルジメトキシシラン、t−ブチル(s−ブチル)ジメトキシシラン、t−ブチルアミルジメトキシシラン、t−ブチルヘキシルジメトキシシラン、t−ブチルヘプチルジメトキシシラン、t−ブチルオクチルジメトキシシラン、t−ブチルノニルジメトキシシラン、t−ブチルデシルジメトキシシラン、t−ブチル(3,3,3−トリフルオロメチルプロピル)ジメトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、シクロヘキシルエチルジメトキシシラン、シクロヘキシルプロピルジメトキシシラン、シクロペンチル−t−ブチルジメトキシシラン、シクロヘキシル−t−ブチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、ジシクロヘキシルジメトキシシラン、ビス(2−メチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ビス(2,3−ジメチルシクロペンチル)ジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、t−ブチルトリメトキシシラン、s−ブチルトリメトキシシラン、アミルトリメトキシシラン、イソアミルトリメトキシシラン、シクロペンチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、ノルボルナントリメトキシシラン、インデニルトリメトキシシラン、2−メチルシクロペンチルトリメトキシシラン、シクロペンチル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、イソプロピル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、t−ブチル(イソブトキシ)ジメトキシシラン、t−ブチル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、テキシルトリメトキシシラン、テキシルイソプロポキシジメトキシシラン、テキシル(t−ブトキシ)ジメトキシシラン、テキシルメチルジメトキシシラン、テキシルエチルジメトキシシラン、テキシルイソプロピルジメトキシシラン、テキシルシクロペンチルジメトキシシラン、テキシルミリスチルジメトキシシラン、テキシルシクロヘキシルジメトキシシラン等が挙げられる。
【0036】
また、有機ケイ素化合物として下記の一般式(IV)、
【0037】
【化1】
【0038】
(式中、R7 〜R9 は水素原子または炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なってもよく、隣接する基と互いに結合して環を形成していてもよい。R10及びR11は炭化水素基を示し、それらは互いに同一でも異なってもよく、隣接する基と互いに結合して環を形成していてもよい。R12及びR13は炭素数が1〜20のアルキル基を示し、それらは互いに同一でも異なってもよい。mは2以上の整数であり、nは2以上の整数である。)で表される有機ケイ素化合物が挙げられる。具体的には、R7 〜R9 としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、テキシル基等の分岐状炭化水素基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和環状炭化水素基、フェニル基、ペンタメチルフェニル基等の不飽和環状炭化水素基が挙げられる。これらのうち、好ましくは水素、炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基であり、特に好ましくは水素、メチル基、エチル基である。
【0039】
R10およびR11としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基等の直鎖状炭化水素基、イソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、テキシル基等の分岐状炭化水素基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の飽和環状炭化水素基、フェニル基、ペンタメチルフェニル基等の不飽和環状炭化水素基が挙げられる。また、これらは同じでも良く、異なっていても良い。これらのうち、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基、エチル基である。
【0040】
R12およびR13としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等の直鎖状もしくは分岐状のアルキル基が挙げられる。また、これらは同じでも良く、異なっていても良い。これらのうち、好ましくは炭素数1〜6の直鎖状炭化水素基であり、特に好ましくはメチル基である。
【0041】
上記の一般式(IV)で示される有機ケイ素化合物の好ましい化合物としては具体的に、ネオペンチルn−プロピルジメトキシシラン、ネオペンチルn−ブチルジメトキシシラン、ネオペンチルn−ペンチルジメトキシシラン、ネオペンチルn−ヘキシルジメトキシシラン、ネオペンチルn−ヘプチルジメトキシシラン、イソブチルn−プロピルジメトキシシラン、イソブチルn−ブチルジメトキシシラン、イソブチルn−ペンチルジメトキシシラン、イソブチルn−ヘキシルジメトキシシラン、イソブチルn−ヘプチルジメトキシシラン、2−シクロヘキシルプロピルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロヘキシルブチルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロヘキシルペンチルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロヘキシルヘキシルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロヘキシルヘプチルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロペンチルプロピルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロペンチルブチルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロペンチルペンチルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロペンチルヘキシルn−プロピルジメトキシシラン、2−シクロペンチルヘプチルn−プロピルジメトキシシラン、イソペンチルn−プロピルジメトキシシラン、イソペンチルn−ブチルジメトキシシラン、イソペンチルn−ペンチルジメトキシシラン、イソペンチルn−ヘキシルジメトキシシラン、イソペンチルn−ヘプチルジメトキシシラン、イソペンチルイソブチルジメトキシシラン、イソペンチルネオペンチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジイソヘプチルジメトキシシラン、ジイソヘキシルジメトキシシラン等が挙げられる。特に好ましい化合物の具体例としては、ネオペンチルn−プロピルジメトキシシラン、ネオペンチルn−ペンチルジメトキシシラン、イソペンチルネオペンチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシラン、ジイソヘプチルジメトキシシラン、ジイソヘキシルジメトキシシランが挙げられ、さらに好ましい化合物の具体例としては、ネオペンチルn−ペンチルジメトキシシラン、ジイソペンチルジメトキシシランが挙げられる。
【0042】
上記の一般式(IV)で示される有機ケイ素化合物は、任意の方法によって合成することができる。代表的な合成経路は、下記のとおりである。
【0043】
【化2】
【0044】
この合成経路において、原料化合物〔1〕は市販されているか、または公知のアルキル化、ハロゲン化等により得ることができる。化合物〔1〕に対して、公知のグリニャール反応により、一般式(IV)で表される有機ケイ素化合物を得ることができる。
これらの有機ケイ素化合物はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
窒素含有化合物の具体例としては、2,6−ジイソプロピルピペリジン,2,6−ジイソプロピル−4−メチルピペリジン,N−メチル2,2,6,6−テトラメチルピペリジンなどの2,6−置換ピペリジン類;2,5−ジイソプロピルアゾリジン,N−メチル2,2,5,5−テトラメチルアゾリジンなどの2,5−置換アゾリジン類;N,N,N’,N’−テトラメチルメチレンジアミン,N,N,N’,N’−テトラエチルメチレンジアミンなどの置換メチレンジアミン類;1,3−ジベンジルイミダゾリジン,1,3−ジベンジル−2−フェニルイミダゾリジンなどの置換イミダゾリジン類等が挙げられる。
【0046】
リン含有化合物の具体例としては、トリエチルホスファイト、トリn−プロピルホスファイト、トリイソプロピルホスファイト、トリn−ブチルホスファイト、トリイソブチルホスファイト、ジエチルn−ブチルホスファイト、ジエチルフェニルホスファイトなどの亜リン酸エステル類等である。
酸素含有化合物の具体例としては、2,2,6,6−テトラメチルテトラヒドロフラン,2,2,6,6−テトラエチルテトラヒドロフランなどの2,6−置換テトラヒドロフラン類;1,1−ジメトキシ−2,3,4,5−テトラクロロシクロペンタジエン,9,9−ジメトキシフルオレン,ジフェニルジメトキシメタンなどのジメトキシメタン誘導体等が挙げられる。
〔II〕固体触媒成分の調製
前記(A)の固体触媒成分の調製方法としては、上記の(a)マグネシウム化合物、(b)チタン化合物、(c)電子供与体、および必要に応じて(d)ケイ素化合物を、温度を除き通常の方法で接触させればよく、接触手順については特に問わない。例えば、各成分を炭化水素などの不活性溶媒の存在下で接触させてもよいし、予め炭化水素などの不活性溶媒で各成分を希釈して接触させてもよい。この不活性溶媒としては、例えば、オクタン、デカン、エチルシクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素またはこれらの混合物を挙げることができる。
【0047】
ここで、チタン化合物は、上記のマグネシウム化合物のマグネシウム1モルに対して、通常、0.5〜100モル、好ましくは、1〜50モル使用する。このモル比が前記範囲を逸脱すると触媒活性が不十分となることがある。また、上記の電子供与体は、上記のマグネシウム化合物のマグネシウム1モルに対して、通常、0.01〜10モル、好ましくは、0.05〜1.0モル使用する。このモル比が前記範囲を逸脱すると触媒活性や立体規則性が不十分となることがある。さらに、ケイ素化合物を用いるときは、上記のマグネシウム化合物のマグネシウム1モルに対して、通常、0.001〜100モル、好ましくは、0.005〜5.0モル使用する。このモル比が前記範囲を逸脱すると触媒活性や立体規則性の向上効果が十分に発揮されず、かつ生成ポリマー中の微粉量が多くなることがある。
【0048】
上記の(a)〜(d)成分の接触は、全成分を加えた後、120〜150℃、好ましくは125〜140℃の温度範囲にて行う。この接触温度が前記範囲外では、触媒活性や立体規則性の向上効果が十分に発揮されない。また、接触は、通常、1分〜24時間、好ましくは、10分〜6時間行われる。このときの圧力は、溶媒を使用する場合はその種類、接触温度などにより、その範囲は変化するが、通常、0〜50kg/cm2 G、好ましくは0〜10kg/cm2 Gの範囲にて行う。また、接触操作中は、接触の均一性および接触効率の面から攪拌を行うことが好ましい。
【0049】
さらに、チタン化合物の接触を2回以上行い、触媒担体としての役割をするマグネシウム化合物に十分担持させることが好ましい。
接触操作において溶媒を使用するときは、チタン化合物1モルに対して、通常、5000ミリリットル以下、好ましくは、10〜1000ミリリットルの溶媒を使用する。この比が前記範囲を逸脱すると接触の均一性や接触効率が悪化することがある。
【0050】
以上の接触で得られた固体触媒成分は、100〜150℃、好ましくは120〜140℃の温度にて不活性溶媒で洗浄する。この洗浄温度が上記範囲外では、触媒活性や立体規則性の向上効果が十分に発揮されない。この不活性溶媒としては、例えば、オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、テトラクロロエタン、クロロフルオロ炭素類などのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物を挙げることができる。これらのなかでは、脂肪族炭化水素が好ましく使用される。
【0051】
洗浄方法としては、特に制限はないが、デカンテーション、濾過などの方式が好ましい。不活性溶媒の使用量、洗浄時間、洗浄回数についても特に制限はないが、マグネシウム化合物1モルに対して、通常、100〜100000ミリリットル、好ましくは、1000〜50000ミリリットルの溶媒を使用し、通常、1分〜24時間、好ましくは、10分〜6時間行われる。この比が前記範囲を逸脱すると洗浄が不完全になることがある。
【0052】
このときの圧力は、溶媒の種類、洗浄温度などにより、その範囲は変化するが、通常、0〜50kg/cm2 G、好ましくは、0〜10kg/cm2 Gの範囲にて行う。また、洗浄操作中は、洗浄の均一性および洗浄効率の面から攪拌を行うことが好ましい。
なお、得られた固体触媒成分は、乾燥状態または炭化水素などの不活性溶媒中で保存することもできる。
〔III〕重合方法
本発明におけるプロピレン系ランダム共重合体を製造する際の触媒成分の使用量については、特に制限はないが、前記(A)成分の固体触媒成分は、チタン原子に換算して、反応容積1リットル当たり、通常0.00005〜1ミリモルの範囲になるような量が用いられ、(B)成分の有機アルミニウム化合物は、アルミニウム/チタン原子比が通常1〜1000、好ましくは10〜500の範囲になるような量が用いられる。この原子比が前記範囲を逸脱すると触媒活性が不十分となることがある。また、(C)第3成分として有機ケイ素化合物等の電子供与性化合物を用いるときは、(C)電子供与性化合物/(B)有機アルミニウム化合物モル比が、通常0.001〜5.0、好ましくは0.01〜2.0、より好ましくは0.05〜1.0の範囲になるような量が用いられる。このモル比が前記範囲を逸脱すると十分な触媒活性および立体規則性が得られないことがある。ただし、予備重合を行う場合は、さらに低減することができる。
【0053】
本発明におけるプロピレン系ランダム共重合体の重合においては、重合活性、立体規則性および重合体パウダー形態の面から、所望に応じ、先ずオレフィンの予備重合を行ったのち、本重合を行ってもよい。この場合、前記(A)固体触媒成分、(B)有機アルミニウム化合物および必要に応じて(C)電子供与性化合物を、それぞれ所定の割合で混合してなる触媒の存在下に、オレフィンを通常1〜100℃の範囲の温度において、常圧ないし50kg/cm2 G程度の圧力で予備重合させ、次いで触媒と予備重合生成物との存在下に、プロピレンとコモノマーであるエチレン及び/又は1−ブテンを本重合させる。
【0054】
予備重合に用いられるオレフィンとしては、一般式(V)
R14−CH=CH2 ・・・(V)
で表されるα−オレフィンが好ましい。
上記の一般式(V)において、R14は水素原子または炭化水素基であって、炭化水素基は飽和基や不飽和基であってもよい。具体的にはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、ビニルシクロヘキサン、ブタジエン、イソプレン、ピペリレン等を挙げることができる。これらのオレフィンは1種用いてもよいし、2種以上組み合わせて用いてもよい。前記オレフィンの中で、特にエチレン、プロピレンが好適である。
【0055】
この本重合における重合形式については特に制限はなく、溶液重合、スラリー重合、気相重合、バルク重合等のいずれにも適用可能であり、さらに、回分式重合や連続重合のどちらにも適用可能であり、異なる条件での2段階重合や多段重合にも適用可能である。
さらに、反応条件については、その重合圧は、特に制限はなく、重合活性の面から、通常、大気圧〜80kg/cm2 G、好ましくは2〜50kg/cm2 G、重合温度は、通常、0〜200℃、好ましくは、20〜90℃、さらに好ましくは、40〜90℃の範囲で適宜選ばれる。重合時間は原料のプロピレンとエチレン及び/又は1−ブテンの重合温度によって左右され一概に定めることができないが、通常、5分〜20時間、好ましくは、10分〜10時間程度である。プロピレンとエチレン及び/又は1−ブテンの混合比は、重合温度、圧力などにより左右され一概に定めることができないが、通常、エチレンが0.1〜20モル%及び/又は1−ブテンが0.1〜20モル%、好ましくはエチレンが1〜15モル%及び/又は1−ブテンが1〜15モル%程度である。分子量は、連鎖移動剤の添加、好ましくは水素の添加を行うことで調節することができる。また、窒素等の不活性ガスを存在させてもよい。
【0056】
異なる重合条件で、2段階以上にわたって重合することもできる。
また、本発明におけるプロピレン系ランダム共重合体を製造する重合においては、前記触媒成分については、(A)成分と(B)成分と(C)成分とを所定の割合で混合し、接触させたのち、ただちにプロピレンとエチレン及び/又は1−ブテンを導入して重合をおこなってもよいし、接触後、0.2〜3時間程度熟成させたのち、プロピレンとエチレン及び/又は1−ブテンを導入して重合を行ってもよい。さらに、この触媒成分は不活性溶媒やプロピレンなどに懸濁して供給することができる。
【0057】
本発明におけるプロピレン系ランダム共重合体においては、重合後の後処理は常法により行うことができる。すなわち、気相重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマー粉体に、その中に含まれるオレフィンなどを除くために、窒素気流などを通過させてもよいし、また、所望に応じて押出機によりペレット化してもよく、その際、触媒を完全に失活させるために、少量の水、アルコールなどを添加することもできる。また、バルク重合法においては、重合後、重合器から導出されるポリマーから完全にモノマーを分離したのち、ペレット化することができる。
〔4〕樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、(A)成分の前記プロピレン系ランダム共重合体と(B)成分の前記プロピレン系重合体を所定の割合で配合し、さらに必要に応じて酸化防止剤、中和剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、帯電防止剤、核剤などの各種添加剤を処方し、二軸混練機等を用いて混練・造粒することにより得ることができる。
【0058】
所望に応じて用いられる各種添加剤としては、酸化防止剤、中和剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、又は帯電防止剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。例えば、酸化防止剤としては、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及びイオウ系酸化防止剤等が挙げられる。
【0059】
リン系酸化防止剤の具体例としては、
トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4−ビフェニレン−ジ−ホスホナイト、アデカスタブ1178(旭電化(製))、スミライザーTNP(住友化学(製))、JP−135(城北化学(製))、アデカスタブ2112(旭電化(製))、JPP−2000(城北化学(製))、Weston618(GE(製))、アデカスタブPEP−24G(旭電化(製))、アデカスタブPEP−36(旭電化(製))、アデカスタブHP−10(旭電化(製))、SandstabP−EPQ(サンド(製))、フォスファイト168(チバスペシャルティケミカルズ社(製))等が挙げられる。
【0060】
フェノール系酸化防止剤の具体例としては、
2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、4,4’−ブチリデンビス−(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート〕、3,9−ビス{2−〔3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、スミライザーBHT(住友化学(製))、ヨシノックスBHT(吉富製薬(製))、アンテージBHT(川口化学(製))、イルガノックス1076(チバスペシャルティケミカルズ社(製))、イルガノックス1010(チバスペシャルティケミカルズ社(製))、アデカスタブAO−60(旭電化(製))、スミライザーBP−101(住友化学(製))、トミノックスTT(吉富製薬(製))、TTHP(東レ(製))、イルガノックス3114(チバスペシャルティケミカルズ社(製))、アデカスタブAO−20(旭電化(製))、アデカスタブAO−40(旭電化(製))、スミライザーBBM−S(住友化学(製))、ヨシノックスBB(吉富製薬(製))、アンテージW−300(川口化学(製))、イルガノックス245(チバスペシャルティケミカルズ社(製))、アデカスタブAO−70(旭電化(製))、トミノックス917(吉富製薬(製))、アデカスタブAO−80(旭電化(製))、スミライザーGA−80(住友化学(製))等が挙げられる。
【0061】
イオウ系酸化防止剤の具体例としては、
ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)、スミライザーTPL(住友化学(製))、ヨシノックスDLTP(吉富製薬(製))、アンチオックスL(日本油脂(製))、スミライザーTPM(住友化学(製))、ヨシノックスDMTP(吉富製薬(製))、アンチオックスM(日本油脂(製))、スミライザーTPS(住友化学(製))、ヨシノックスDSTP(吉富製薬(製))、アンチオックスS(日本油脂(製))、アデカスタブAO−412S(旭電化(製))、SEENOX 412S(シプロ化成(製))、スミライザーTDP(住友化学(製))等が挙げられる。
【0062】
これらのなかで好ましいフェノール系酸化防止剤としては、
チバスペシャルティケミカルズ社(製)イルガノックス1010:物質名:ペンタエリスリチル−テトラキス[ 3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]
チバスペシャルティケミカルズ社(製)イルガノックス1076:物質名:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート
チバスペシャルティケミカルズ社(製)イルガノックス1330:物質名:1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン
チバスペシャルティケミカルズ社(製)イルガノックス3114:物質名:トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレイト等が挙げられる。
また、好ましいリン系酸化防止剤としては、
チバスペシャルティケミカルズ社(製)イルガフォス168:物質名:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
チバスペシャルティケミカルズ社(製)P−EPQ:物質名:テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4' −ビフェニレン−ジ−フォスファイト
等が挙げられる。
【0063】
本発明において酸化防止剤を用いる場合は、前記プロピレン系ランダム共重合体100重量部に対し0.001〜1重量部程度添加すればよい。これにより、黄変等を防ぐことができて好ましい。
中和剤としては、
ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ハイドロタルサイト類(例えば、協和化学工業(製)のDHT−4A:組成式:Mg4.5 Al2 (OH)13CO3 ・3.5H2 O)、リチウムアルミニウム複合水酸化物(例えば、水澤化学工業(製)のミズカラック:組成式:[Li2 Al4 (OH)12]CO3 ・mH2 O,ただしm≒3)等が特に好ましい。
【0064】
アンチブロッキング剤としては、
富士シリシア(製)の合成シリカ系アンチブロッキング剤「サイリシア」:や水澤化学工業(製)の合成シリカ系アンチブロッキング剤「ミズカシル」等が特に好ましい。
スリップ剤としては、
エルカ酸アミド、オレイン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ステアリルエルカアミド、オレイルパルミトアミドが特に好ましい。
【0065】
また、本発明の樹脂組成物は、主にフイルム用途に用いられることからそのフイルム用途の添加剤処方の具体例としては、下記の例を挙げることができる。
添加剤処方例(A)
▲1▼酸化防止剤
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガノックス1010:1000ppm
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガフォス168:1000ppm
▲2▼中和剤
ステアリン酸カルシウム:1000ppm
▲3▼アンチブロッキング剤
富士シリシア社のシリカ系アンチブロッキング剤:1000ppm
▲4▼スリップ剤
エルカ酸アミド:250ppm
添加剤処方例(B)
▲1▼酸化防止剤
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガノックス1010:1000ppm
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガフォス168:1000ppm
▲2▼中和剤
ステアリン酸カルシウム:1000ppm
▲3▼アンチブロッキング剤
富士シリシア社のシリカ系アンチブロッキング剤:2300ppm
▲4▼スリップ剤
エルカ酸アミド:500ppm
〔5〕フイルム
本発明のフィルムは、前記プロピレン系樹脂組成物を用いて製膜したフィルムである。フィルムを製造する方法には特に制限はなく、溶融押出成形法によりフィルムを製造できる方法であればどのような製膜法でもよいが、大型製膜機により高速製膜が実施されるTダイキャスト製膜法が好ましい。
【0066】
通常、Tダイキャスト製膜法により、引取速度が50m/minまたはこれ以上の高速製膜条件において、厚みが10〜500μm程度のフィルムを得ることができる。また、前述した好ましい特性を有することから、共押出製膜法等による積層フィルムの製造に際して、その少なくとも一層成分として好適に使用できる。
【0067】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
まず、樹脂特性の評価方法及びフィルム品質の評価方法について、説明する。
〔樹脂特性の評価方法〕
▲1▼コモノマー含量、及び立体規則性指標
ア)プロピレン、エチレン及び1−ブテンからなるプロピレン系三元ランダム共重合体 共重合体中のエチレン単位の含有量α(モル%))、及び1−ブテン単位の含有量β(モル%)は、13C- NMRスペクトルからKang-Bong Lee et.al ,Polymer J.,28 ,696 〜702 (1996) に記載の方法に従い算出した。以下に具体的に示す。
α=(Ety/S)×100
β=(Bu/S)×100
但し、S=Pro+Ety+Bu
Pro={a+(b+d+e)/2+(h+i+m+r+s+t)}/3
Ety={(d+e)/2+(j+k+L+p+q)}/2
Bu={(b/2+(c+f+n+o+u)}/4
上記a,b,c等は、表1に示すシグナルの強度である。例えばaは表中の番号aのシグナル強度である。
【0068】
【表1】
【0069】
また特開平8年208909号公報を参考として、13C- NMRスペクトルから立体規則性指標P(モル%)を次式から算出した。このP値は共重合体分子鎖のプロピレン単位、及び/又は1−ブテン単位が頭―尾結合している領域におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率である。
P={Imm/(I−Ia−Ib)}×100
但し、Immは21.4〜22.2ppmのシグナル強度、Iは19.8〜22.2ppmのシグナル強度である。また、Iaは33.3ppmppmのシグナル強度、Ibは38.0ppmのシグナル強度である。
【0070】
なお、13C- NMRスペクトルは何れも日本電子社製のJNM−EX400型NMR装置を使用し、以下の条件にて測定して得た。
NMR測定条件
試料濃度:220mg/NMR溶媒3ml
NMR溶媒:1、2、4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6=90/10(体積比)
測定温度:130℃
パルス幅:45°
パルス繰り返し時間:4秒
積算回数:4000回
イ)プロピレンとエチレンからなるプロピレン系ランダム共重合体
NMR装置および測定条件は、上記ア)と同じである。得られたプロピレン系ランダム共重合体の各シグナルの帰属を表2に示す。化学シフト値は、シグナル(1)、(11)、(12)、(13)については、計算範囲で示し、それ以外のシグナルについては、ピークトップ位置で示した。全シグナルを計算範囲で示すと表3のように表される。なお、Pはプロピレン単位、Eはエチレン単位を示す。従って、PPPは、プロピレン単位が3個連続していることを、また、EEEは、エチレン単位が3個連続していることを示している。
【0071】
【表2】
【0072】
【表3】
【0073】
プロピレン系ランダム共重合体中のエチレン単位の含有量α'(wt%)は各シグナル強度から次式に従い算出した。
α' =2X/(300―X)
X=Et/S×100
Et=IEEE +2/3 (IPEE +IEPE )+1/3 (IPPE +IPEP )
S=IEPE +IPPE +IEEE +IPPP +IPEE +IPEP
IEPE =I(4) IPPP =I(8)
IPPE =I(5) IPEE =I(9)
IEEE =I(7) /2+I(6) /4 IPEP =I(10)
但し、例えばI(1) は表2又は表3におけるシグナル番号(1)のシグナル強度である。
また、立体規則性指標Pr (モル%)は次式から算出した。
Pr =I(11)/(I(11 )+I(12)+I(13)−I(2) −I(4)) ×100
このPr 値は共重合体分子鎖のプロピレン連鎖領域におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率である。なお、この式においてはmr領域に現れるPPE連鎖の中央のプロピレン単位のメチル炭素のシグナル強度をSαγ(2番のシグナル)のシグナル強度により、rr領域に現れるEPE連鎖中のプロピレン単位のメチル炭素のシグナル強度をTδδ(4番のシグナル)のシグナル強度により代用している。
▲2▼昇温分別クロマトグラフィー(TREF)
温度135℃に調節したTREFカラムに試料溶液を導入し、次いで速度5℃/hrにて徐々に0℃まで降温し、試料を充填剤に吸着させる。その後カラムを速度40℃/hrにて135℃まで昇温し、溶出曲線を得た。これより、W0 ,Wp,Wh等を求めた。
以下に測定装置、及び測定条件を示す。
【0074】
1)測定装置
TREFカラム:GLサイエンス社製シリカゲルカラム(4.6φ×150mm)
フローセル:GLサイエンス社製 光路長 1mm KBrセル
送液ポンプ:センシュウ科学社製 SSC−3100ポンプ
バルブオーブン:GLサイエンス社製 MODEL554オーブン
TREFオーブン:GLサイエンス社製
二系列温調器:理学工業社製 REX−C100温調器
検出器:液体クロマトグラフィー用赤外検出器
FOXBORO社製 MIRAN 1A CVF
10方バルブ:バルコ社製 電動バルブ
ループ:バルコ社製 500μリットルループ
2)測定条件
溶媒:オルトジクロルベンゼン
試料濃度:7.5g/リットル
注入量:500μリットル
ポンプ流量:2.0ミリリットル/分
検出波数:3.41μm
カラム充填剤:クロモソルブP(30〜60メッシュ)
カラム温度分布:±2.0℃以内
▲3▼示差走査型熱量計(DSC)による共重合体の融点Tm (℃)、示差熱量ΔHB (J/g)および樹脂組成物の結晶化温度Tc (℃)、融点Tm (℃)
パーキンエルマー社製のDSC7型示差走査型熱量計を用いて測定した。あらかじめ試料10mgを窒素雰囲気化230℃で3min溶融した後、10℃/minで20℃まで降温する。この温度で3min保持した後、10℃/minで昇温させて得られた融解吸熱曲線の最大ピークのピークトップ温度を融点とした。また、同じ方法でプロピレン系樹脂組成物のDSC測定を行い得られた結晶化曲線から最高温度側のピークトップ温度を結晶化温度Tc (℃)とし、融解吸熱曲線の最低温度側のピークトップ温度を融点Tm (℃)とし、そのときの融解熱量をΔHB とした。
▲4▼共重合体中の沸騰ジエチルエーテル抽出量E(重量%)
1mmφメッシュパスの大きさに粉砕したペレットを円筒ろ紙に3g、抽出溶剤のジエチルエーテルを平底フラスコに160ml入れ、リフラックス頻度を1回/5min程度にして10時間のソックスレー抽出を行う。抽出終了後、ロータリーエバポレーターによりジエチルエーテルを回収し、さらに真空乾燥器により恒量になるまで乾燥し沸騰ジエチルエーテル抽出量とした。
▲5▼メルトインデックスMI(g/10min)
JIS K7210に従い、温度230℃、荷重2160gで測定した。
▲6▼ 分子量分布(Mw/Mn)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィーは以下の条件にて測定した。重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比を分子量分布(Mw/Mn)として求めた
カラム:TOSO BMHHR−H(S)HT
溶媒:1,2,4トリクロロベンゼン
カラム温度:145℃
流速:1.0ミリリットル/分
検量線:Universal Calibration
検出器:RI(Waters 150C)
解析プログラム:HT−GPC(Ver .1.0 )
〔フィルム品質の評価法〕
製膜したフィルムは全て温度40℃にて24時間のアニール処理を行い、更に温度23±2℃、湿度50±10%で16時間以上の状態調節した後に同じ温度、湿度条件下で測定を行った。
▲1▼ヒートシール温度
JIS Z−1707に準拠して測定した。具体的には表面温度計により較正されたヒートシールバーにより以下の条件にてシールし、室温で一昼夜放置した後、室温で剥離速度を200mm/ minにしたT型剥離法により剥離強度を測定した。ヒートシール温度は剥離強度が300g/ 15mmになる温度と定義し、シール温度―剥離強度曲線から計算により求めた。
【0075】
シール条件
シール面:金属ロール面/金属ロール面
シール面積:15×10mm
シール圧力:2.0Kg/ cm2
シール時間:1秒
シール温度:ヒートシール温度を内挿できるように数点
▲2▼アンチブロッキング性
2枚のフィルムについて、一枚の金属ロール面ともう一枚の反金属ロール面とを以下の条件にて密着させ、10×10cmの治具にそれぞれを固定し、10×10cmの面積の密着強度を以下の条件の引剥試験により測定した。
【0076】
密着条件
温度50℃、7日間、荷重15g/ cm2 、面積10×10cm
引剥試験条件
テストスピード:20mm/ min
ロードセル:2Kg
▲3▼スリップ性
フィルムを張ったスレットを、フィルムを張ったガラス板の上に静置した後、ガラス板を傾けてゆき、スレットが滑り出したときのガラス板の傾き角θのtanで評価した。測定には東洋精機製作所製の摩擦角測定器を使用した。以下に条件を示す。
【0077】
測定面:金属ロール面/金属ロール面
傾斜速度:2.7°/ sec
スレッド重量:1Kg
スレッド断面積:65cm2
面間圧力:15g/ cm2
▲4▼透明性(ヘイズ)
JIS K7105に従い測定した。
▲5▼耐衝撃性
東洋精機製作所製のフィルムインパクトテスターにおいて1/2インチ衝撃頭を用いた衝撃破壊強度により評価した。
▲6▼引張弾性率
JIS K7127に準拠した引張試験により以下の条件にて測定した。
【0078】
クロスヘッド速度:500mm/ min
ロードセル:10Kg
測定方向:マシン方向(MD)
〔プロピレン系重合体の製造〕
(1)プロピレン・エチレン・1−ブテン三元ランダム共重合体(A−1)
(マグネシウム化合物の調製)
攪拌機付反応層(内容積80L)を窒素ガスで十分に置換し、脱水エタノール20L、金属マグネシウム1.06kg及びヨウ素106gを投入し、攪拌しながら還流条件下で系内から水素ガスの発生が無くなるまで反応させ、固体状反応生成物を得た。この固体状反応生成物を含む反応物を減圧乾燥することにより目的のマグネシウム化合物(固体触媒の担体)を得た。
(固体触媒成分の調製)
窒素で置換した攪拌機付反応層(内容積80L)に前記マグネシウム化合物4.0kgを投入し、さらに、脱水処理したヘプタンを20L加えた。40℃に加熱し四塩化珪素600mlを加え、20分攪拌し、ジ−n−ブチルフタレートを850ml加えた。溶液を70℃まで昇温し、引き続き四塩化チタンを19.25L投入した。内温を125℃とし2時間接触反応させた。その後、125℃の脱水ヘプタンを用いて充分洗浄を行った。さらに四塩化チタンを30.50L加え、内温を125℃とし2時間接触反応させた。その後125℃の脱水ヘプタンを用いて充分洗浄を行い固体触媒成分[A]を得た。
(予備重合)
窒素で置換した攪拌機付反応層(内容積80L)に固体成分[A]を1.0kgを投入し、さらに脱水処理したヘプタンを8.4L加えた。40℃に加熱しトリエチルアルミニウム43mlとジシクロペンチルジメトキシシランを116ml加えた。これにプロピレンを常圧で流通させ2 時間反応させた。その後、固体成分を脱水ヘプタンを用いて充分洗浄を行い触媒成分を得た。
(本重合)
内容積200Lの攪拌器付重合槽に前記の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/kg−PPで、トリエチルアルミニウムを4mmol/kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.4mmol/kg−PPでそれぞれ供給し、重合温度75℃、重合圧力(全圧)24kg/cm2 Gでプロピレン、エチレン及び1−ブテンを反応させた。この時所定のエチレン含量なるようにエチレン供給量を、また所定の1−ブテン含量になるように1−ブテン供給量を、さらに所定の分子量になるように分子量調節剤の水素供給量を調節した。またこの時の重合装置内ガス組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エチレン濃度は3.5mol%、1−ブテン濃度は3.5mol%、水素濃度は11.0mol%であった。
【0079】
得られたポリマーの樹脂特性を測定し、表4に示した。
(2)プロピレン−エチレン・ランダム共重合体(A−2)
本重合を以下のように変更した以外は全て(A−1)と同様に行った。
内容積200Lの攪拌器付重合槽に前記の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/kg−PPで、トリエチルアルミニウムを4mmol/kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを1mmol/kg−PPでそれぞれ供給し、重合温度80℃、重合圧力(全圧)28kg/cm2 Gでプロピレンとエチレンを反応させた。この時、所定のエチレン含量になるようにエチレン供給量を、所定の分子量になるように分子量調整剤の水素供給量を調整した。また、この時の重合装置内ガス組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エチレン濃度は7.5mol%、水素濃度は12.2mol%であった。
【0080】
得られたポリマーの樹脂特性を測定し、表4に示した。
(3)プロピレン−エチレン−1−ブテン・ランダム共重合体(A−3)
本重合を以下のように変更したこと、及び立体規則性指標Pを下記の算出方法により求めたこと以外は(A−1)と同様に行った。
内容積200Lの攪拌器付重合槽に前記の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/kg−PPで、トリエチルアルミニウムを4mmol/kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.4mmol/kg−PPでそれぞれ供給し、重合温度75℃、重合圧力(全圧)24kg/cm2 Gでプロピレン、エチレン及び1−ブテンを反応させた。この時、所定のエチレン含量になるようにエチレン供給量を、所定の分子量になるように分子量調整剤の水素供給量を調整した。また、この時の重合装置内ガス組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エチレン濃度は3.3mol%、1−ブテン濃度は3.8mol%、水素濃度は11.5mol%であった。
【0081】
得られたポリマーの樹脂特性を測定し、表5に示した。
立体規則性指標P(モル%)は、特開平8−208909号公報を参考として、13C−NMRスペクトルから次式を用いて算出した。このP値は共重合体分子鎖のプロピレン単位、及び/又は1−ブテン単位が頭―尾結合している領域におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率である。
P={r/(r+s+t−h−i)}×100
上記r,s,t等は、表1に示すシグナルの強度である。例えばrは表中の番号rのシグナル強度である。なお、プロピレン−エチレン−1−ブテン・ランダム共重合体におけるPの算出方法については、前記〔樹脂特性の評価方法〕の▲1▼のア)、具体例としては(A−1)において記載した方法と本例において記載した方法があるが、実質的には多くの場合同一の結果を示すものである。両者が異なる場合には、本例の算出方法を用いることがより適切である。
(4)プロピレン−エチレン・ランダム共重合体(A−4)
本重合を以下のように変更したこと、及び立体規則性指標Prを下記の算出方法により求めたこと以外は(A−1)と同様に行った。
【0082】
内容積200Lの攪拌器付重合槽に前記の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/kg−PPで、トリエチルアルミニウムを4mmol/kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを1mmol/kg−PPでそれぞれ供給し、重合温度80℃、重合圧力(全圧)28kg/cm2 Gでプロピレンとエチレンを反応させた。この時、所定のエチレン含量になるようにエチレン供給量を、所定の分子量になるように分子量調整剤の水素供給量を調整した。また、この時の重合装置内ガス組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エチレン濃度は7.9mol%、水素濃度は12.2mol%であった。
【0083】
得られたポリマーの樹脂特性を測定し、表5に示した。
立体規則性指標Prは、次式から算出した。
Pr=I(11)/(I(11 )+I(12)+I(13)−I(4) −I(5)) ×100
但し、例えばI(1) は表2におけるシグナル番号1のシグナル強度である。
このPr値は共重合体分子鎖のプロピレン連鎖領域におけるトライアッド単位のアイソタクチック分率である。なお、この式においてはmr領域に現れるPPE連鎖の中央のプロピレン単位のメチル炭素のシグナル強度はTβδ(5番のシグナル)のシグナル強度により代用している。また、rr領域に現れるEPE連鎖中のプロピレン単位のメチル炭素のシグナル強度をTδδ(4番のシグナル)のシグナル強度により代用している。ところで、プロピレン−エチレン・ランダム共重合体におけるPrの算出方法には、前記〔樹脂特性の評価方法〕の▲1▼のイ)、具体例としては(A−2)において記載した方法と本例において記載した方法があるが、実質的には多くの場合同一の結果を示すものである。両者が異なる場合には、本例の算出方法を用いることがより適切である。
(5)プロピレン系重合体(B−1)
本重合を以下のように変更した以外は(A−1)と同様に行った。
【0084】
内容積200Lの攪拌器付重合槽に前記の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/kg−PPで、トリエチルアルミニウムを4mmol/kg−PPで供給し、本重合時にはジシクロペンチルジメトキシシランを供給せず、重合温度80℃、重合圧力(全圧)28kg/cm2 Gでプロピレンの単独重合を行った。この時、所定の分子量になるように分子量調整剤の水素供給量を調整した。また、この時の重合装置内ガス組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、水素濃度は4.4mol%であった。また、JIS K 7210に準拠し測定したメルトインデックスは5.8g/10minであった。
【0085】
得られたポリマーの樹脂特性を測定し、表4に示した。
(6)その他のプロピレン系重合体(C−1)
(マグネシウム化合物の調整)
全て(A−1)と同様に行った。
(固体触媒成分Aの調整)
接触反応温度を125℃から110℃に変更し、脱水ヘプタンによる洗浄温度を125℃から80℃に変更した以外は(A−1)と同様に行った。
(予備重合)
全て(A−1)と同様に行った。
(本重合)
内容積200Lの攪拌器付重合槽に前記の固体触媒成分を成分中のチタン原子換算で3mmol/kg−PPで、トリエチルアルミニウムを4mmol/kg−PPで、ジシクロペンチルジメトキシシランを0.4mmol/kg−PPでそれぞれ供給し、重合温度75℃、重合圧力(全圧)24kg/cm2 Gでプロピレン、エチレン及び1−ブテンを反応させた。この時所定のエチレン含量なるようにエチレン供給量を、また所定の1−ブテン含量になるように1−ブテン供給量を、さらに所定の分子量になるように分子量調節剤の水素供給量を調節した。またこの時の重合装置内ガス組成をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、エチレン濃度は5.4mol%、1−ブテン濃度は1.3mol%、水素濃度は9.5mol%であった。
【0086】
得られたポリマーの樹脂特性を測定し、表4に示した。
【0087】
【表4】
【0088】
【表5】
【0089】
〔実施例1〕
(1)プロピレン系樹脂組成物
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)90重量部とプロピレン重合体(B−1)10重量部を配合した樹脂組成物に、下記の添加剤を加え、東芝機械のModel35B押出機を用いて混練造粒した。
▲1▼酸化防止剤
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガノックス1010:1000ppm
チバスペシャルティケミカルズ社のイルガフォス168:1000ppm
▲2▼中和剤
ステアリン酸カルシウム:1000ppm
▲3▼アンチブロッキング剤
富士シリシア社のシリカ系アンチブロッキング剤:2300ppm
▲4▼スリップ剤
エルカ酸アミド:500ppm
【0090】
(2)フィルム製膜
このようにして得たプロピレン系樹脂組成物のペレットから三菱重工業製75mmφ押出機を用い、Tダイ出口における樹脂温度243℃、チルロール温度40℃、引取速度150m/minの条件にて膜厚30μmのフィルムに成形した。
【0091】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔比較例1〕
プロピレン系重合体(B−1)を配合しなかった以外は、実施例1と同様に行った。しかし、耳部のチルロールリリース性が悪くなり、きれいなフィルムを得ることが出来なかった。
【0092】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔実施例2〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)98重量部とプロピレン重合体(B−1)2重量部に配合比を変更した以外は全て実施例1と同様に行った。
【0093】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔実施例3〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)94重量部とプロピレン重合体(B−1)6重量部に配合比を変更した以外は全て実施例1と同様に行った。
【0094】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔実施例4〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)80重量部とプロピレン重合体(B−1)20重量部に配合比を変更した以外は全て実施例1と同様に行った。
【0095】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔比較例2〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)50重量部とプロピレン重合体(B−1)50重量部に配合比を変更した以外は全て実施例1と同様に行った。
【0096】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔実施例5〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)の代わりにプロピレン系ランダム共重合体(A−2)を使用した以外は全て実施例1と同様に行った。
【0097】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔実施例6〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)の代わりに(A−3)を使用した以外は全て実施例1と同様に行った。
【0098】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表7に示した。
〔比較例3〕
プロピレン系重合体(B−1)を配合しなかった以外は、実施例5と同様に行った。しかし、耳部のチルロールリリース性が悪くなり、きれいなフィルムを得ることが出来なかった。
【0099】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔比較例4〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−1)の代わりにその他のプロピレン系重合体(C−1)を使用した以外は全て実施例1と同様に行った。
【0100】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表6に示した。
〔比較例5〕
プロピレン系重合体(B−1)を配合しなかった以外は、実施例6と同様に行った。しかし、耳部のチルロールリリース性が悪くなり、きれいなフィルムを得ることが出来なかった。
【0101】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表7に示した。
〔実施例7〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−3)98重量部とプロピレン重合体(B−1)2重量部に配合比を変更した以外は全て実施例6と同様に行った。 樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表7に示した。
〔実施例8〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−3)94重量部とプロピレン重合体(B−1)6重量部に配合比を変更した以外は全て実施例6と同様に行った。 樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表7に示した。
〔実施例9〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−3)80重量部とプロピレン重合体(B−1)20重量部に配合比を変更した以外は全て実施例6と同様に行った。
【0102】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表7に示した。
〔実施例10〕
プロピレン系三元ランダム共重合体(A−3)の代わりプロピレン系二元ランダム共重合体(A−4)を使用したこと以外は全て実施例6と同様に行った。 樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表7に示した。
〔比較例6〕
(B−1)を配合しなかったこと以外は全て実施例10と同様に行った。しかし、耳部のチルロールリリース性が悪くなり、きれいなフィルムを得ることが出来なかった。
【0103】
樹脂組成物を構成する配合比、樹脂特性及び得られたフィルムの特性について表7に示した。
【0104】
【表6】
【0105】
【表7】
【0106】
【発明の効果】
本発明により、ポリプロピレンのフィルムが本来有する剛性、透明性及び耐衝撃性などの好ましい特性を損なうことなく、優れた低温ヒートシール性を有し、かつアンチブロッキング性にも優れたフィルムが得られるという特徴を有するとともに、成形性が大幅に改良された。
Claims (4)
- (A)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)において主溶出ピーク温度をTp(℃)とし、(Tp−5)℃〜(Tp+5)℃の温度範囲で溶出する量をWp(wt%)とした場合、20≦Wp≦65の関係を満足する、以下の(A−I)共重合体又は(A−II)共重合体55〜99重量部、
(B)示差走査型熱量計により測定した結晶化温度TCB(℃)が(A)成分の同結晶化温度TCA(℃)より高いプロピレン単独重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体又はプロピレン−αオレフィン共重合体45〜1重量部
からなる樹脂組成物であって、
示差走査型熱量計により測定した結晶化曲線における最高温度側のピークトップ温度TC(℃)と融解曲線における最低温度側のピークトップ温度Tm(℃)とが式(1)
TC≧0.75×Tm−5・・・(1)
の関係を満たし、かつ
昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0(wt%)が6wt%以下である樹脂組成物であって、
前記(A)成分は、マグネシウム化合物とチタン化合物とを電子供与性化合物およびケイ素化合物の存在下、120〜150℃の温度にて接触させた後、100〜150℃の温度にて不活性溶媒により洗浄したものからなる固体触媒成分、有機アルミニウム化合物および電子供与性化合物からなる触媒を用いて製造したものである、プロピレン系樹脂組成物。
[(A−I)共重合体]
下記(a1),(a3)の性状を有するプロピレン、エチレン及び1−ブテンからなるプロピレン系三元ランダム共重合体
(a1) 13 C−NMRにより測定した共重合体中のエチレン単位の含有量α(モル%)及び1−ブテン単位の含有量β(モル%)の和(α+β)(モル%)が2≦(α+β)<12であり、
(a3)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0t(wt%)と(α+β)(モル%)が、W0t≦(α+β)/2の関係を満たす。
[(A−II)共重合体]
下記(a’1),(a’3)の性状を有するプロピレンとエチレンからなるプロピレン系ランダム共重合体
(a’1) 13 C−NMRにより測定した共重合体中のエチレン単位の含有量α’(wt%)が0.2〜10wt%であり、
(a’3)昇温分別クロマトグラフィー(TREF)の0℃以下の温度範囲において溶出する量W0r(wt%)とα’(wt%)が、W0r≦(3+2α’)/4の関係を満たす。 - 示差走査型熱量計により測定した(B)成分の結晶化温度TCB(℃)が(A)成分の同結晶化温度TCA(℃)より10℃以上高い請求項1に記載のプロピレン系樹脂組成物。
- (B)成分が、示差走査型熱量計により測定した融解曲線における示差熱量△HB(J/g)と融点TmB(℃)が式(7)の関係を満たす請求項1又は2に記載のプロピレン系樹脂組成物。
△HB≧TmB/2+10・・・(7) - 請求項1〜3のいずれかに記載のプロピレン系樹脂組成物からなるフイルム。
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