JP2010106172A - 射出成形用プロピレン系樹脂組成物およびその射出成形体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】重量平均分子量(Mw)が140000〜380000であるメタロセン触媒を用いて重合された高分子量エチレン−プロピレンランダム共重合体(A)50〜99重量%及び重量平均分子量(Mw)が29000〜120000であるメタロセン触媒を用いて重合された超低分子量エチレン−プロピレンランダム共重合体(B)1〜50重量%とからなり、230℃、2.16Kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が2.0〜200g/10分であり、エチレン含量が0.5〜6.0重量%の範囲にあるプロピレン系樹脂混合物を用いることを特徴とする射出成形用プロピレン系樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
プロピレン系重合体は、剛性や耐熱性、ガスバリヤー性の点ではプロピレン単独重合体が、透明性や耐衝撃性の点ではエチレン、ブテン等とプロピレンとのランダム共重合体が、耐熱性、耐衝撃性ではエチレン、ブテン等とプロピレンとのブロック共重合体が好適であり、状況に応じて適宜選択的に用いられている。
しかし、メタロセン触媒より得られるプロピレン系樹脂は、分子量分布が狭いことに起因して成形性に劣るという問題点を有しており、射出成形においては溶融時の樹脂流動性が悪いという問題点がある。
メタロセン触媒により得られたプロピレン系(共)重合体が有する成形性の悪さを改善する技術として、メタロセン触媒により得られる極限粘度[η]の比較的低いプロピレン単独重合体に対し、メタロセン触媒により得られる極限粘度[η]の比較的高いプロピレン単独重合体を配合したポリプロピレン系樹脂組成物に関する発明(例えば、特許文献3参照。)が挙げられる。しかし、プロピレン単独重合体では耐衝撃性が不足する、透明性が悪いという問題がある。
メタロセン触媒により得られる極限粘度[η]の異なる2種以上のプロピレン共重合体を使用するという考え方もあるが、射出成形においては、単に極限粘度[η]の低いプロピレン共重合体をブレンドし、溶融流動性を向上させても、得られる射出成形品の外観性を悪化させるだけであった。
高分子量プロピレン系重合体(A):重量平均分子量(Mw)が140000〜380000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体
超低分子量プロピレン系重合体(B):重量平均分子量(Mw)が29000〜120000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体
(1)高分子量プロピレン系重合体(A)
本発明に用いる高分子量プロピレン系重合体(A)は、重量平均分子量(Mw)が140000〜380000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体である。本発明において高分子量プロピレン系重合体(A)は、プロピレン系樹脂混合物の対衝撃強度を高めるのに効果的である。
本発明で用いる高分子量プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量(Mw)は、140000〜380000であり、好ましくは145000〜265000のものである。さらに好ましくは145000〜230000のものである。
重量平均分子量(Mw)が140000未満では、耐衝撃性が低下し、成形品として使用した際に破損が懸念される。逆に、重量平均分子量(Mw)が380000を超えると、溶融時の樹脂流動性が低下することにより、射出成形性が著しく損なわれる。
保持容量から分子量への換算は、予め作成しておいた標準ポリスチレンによる検量線を用いて行う。
使用する標準ポリスチレンは、何れも東ソー(株)製の以下の銘柄である、F380、F288、F128、F80、F40、F20、F10、F4、F1、A5000、A2500、A1000を用い、各々が0.5mg/mLとなるようにODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)に溶解した溶液を0.2mL注入して較正曲線を作成する。較正曲線は、最小二乗法で近似して得られる三次式を用いる。分子量への換算に使用する粘度式[η]=K×Mαは以下の数値を用いる。
PS:K=1.38×10−4、α=0.7
PP:K=1.03×10−4、α=0.78
なお、GPCの測定条件は以下の通りである。
装置:Waters社製GPC(ALC/GPC 150C)
検出器:FOXBORO社製MIRAN 1A IR検出器(測定波長:3.42μm)
カラム:昭和電工社製AD806M/S(3本)
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
測定温度:140℃
流速:1.0ml/分
注入量:0.2ml
試料の調製:試料はODCB(0.5mg/mLのBHTを含む)を用いて1mg/mLの溶液を調製し、140℃で約1時間を要して溶解させる。
本発明に用いる高分子量プロピレン系重合体(A)のエチレン含量は、剛性、耐衝撃性、透明性の制御するため0.5〜6.0重量%の範囲がよく、好ましくは0.5〜5.0重量%であり、より好ましくは0.8〜4.5重量%である。エチレン含量が0.5重量%未満の場合、プロピレン系重合体の結晶性が高くなるため、耐衝撃性、透明性が悪化する恐れがある。また、エチレン含量が6.0重量%を超えると、結晶性が減少するために剛性が低下、ベタツキ感の増加を招くため好ましくない。
機種:日本電子(株)製 GSX−400又は同等の装置(炭素核共鳴周波数100MHz以上)
溶媒:o−ジクロベンゼン+重ベンゼン(4:1(体積比))
濃度:100mg/mL
温度:130℃
パルス角:90°
パルス間隔:15秒
積算回数:5,000回以上
スペクトルの帰属は、例えば、Macromolecules 17,1950 (1984)などを参考に行えばよい。上記条件により測定されたスペクトルの帰属は、表1の通りである。表1中Sαα等の記号はCarmanら(Macromolecules 10,536(1977))の表記法に従い、Pはメチル炭素、Sはメチレン炭素、Tはメチン炭素をそれぞれ表わす。
[PPP]=k×I(Tββ) …(1)
[PPE]=k×I(Tβδ) …(2)
[EPE]=k×I(Tδδ) …(3)
[PEP]=k×I(Sββ) …(4)
[PEE]=k×I(Sβδ) …(5)
[EEE]=k×{I(Sδδ)/2+I(Sγδ)/4} …(6)
ここで[ ]はトリアッドの分率を示し、例えば[PPP]は全トリアッド中のPPPトリアッドの分率である。したがって、
[PPP]+[PPE]+[EPE]+[PEP]+[PEE]+[EEE]=1 … (7)
である。また、kは定数であり、Iはスペクトル強度を示し、例えば、I(Tββ)はTββに帰属される28.7ppmのピークの強度を意味する。上記(1)〜(7)の関係式を用いることにより、各トリアッドの分率が求まり、さらに下式によりエチレン含有量が求まる。
エチレン含有量(モル%)=([PEP]+[PEE]+[EEE])×100
なお、本発明のプロピレンランダム共重合体には少量のプロピレン異種結合(2,1−結合及び/又は1,3−結合)が含まれ、それにより、表2の微小なピークを生じる。
エチレン含有量のモル%から重量%への換算は以下の式を用いて行う。
エチレン含有量(重量%)=(28×X/100)/{28×X/100+42×(1−X/100)}×100
ここで、Xはモル%表示でのエチレン含有量である。
本発明で用いる高分子量プロピレン系重合体(A)は、メタロセン触媒を用いて重合されたものである。従来公知のチーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合されたものよりも、分子量分布が狭く、低結晶性成分の生成量が小さく、結晶性分布が狭いために、透明性が高く、ベタツキ感が抑制されたエチレン−プロピレンランダム共重合体を製造することができる。
これらの内、インデニル基あるいはアズレニル基を珪素あるいはゲルミル基で架橋したメタロセン化合物が好ましい。
具体的な製造方法としては、メタロセン触媒の存在下に温度50〜150℃、好ましくは、50〜100℃、プロピレンおよびエチレンの各分圧0.3〜4.5MPa、好ましくは0.5〜3.5MPaの条件である。また、水素の供給量は、重合温度やプロピレンおよびエチレンの各分圧によって、所望の分子量が得られるように調節するが、0.01〜1000molppm、好ましくは、0.05〜800molppm、さらに好ましくは、0.1〜500molppmの条件である。
本発明に用いる超低分子量プロピレン系重合体(B)は、重量平均分子量(Mw)が29000〜120000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体である。
本発明において超低分子量プロピレン系重合体(B)は、ポリプロピレン系樹脂組成物の樹脂流動性を向上させ、スパイラルフロー長を大きくするのに効果的である。
本発明で用いる超低分子量プロピレン系重合体(B)の重量平均分子量(Mw)は、29000〜1200000であり、好ましくは35000〜110000のものである。さらに好ましくは42000〜100000のものである。重量平均分子量(Mw)が290000未満では、成形品の耐衝撃性が低下し、成形品として使用した際に破損が懸念される。逆に、重量平均分子量(Mw)が120000を超えると、高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)との間の流動性の格差が小さくなり、溶融時の流動性の改良効果が発揮されない。
ここで、重量平均分子量(Mw)は、上述の方法によって測定する値である。
本発明に用いる超低分子量プロピレン系重合体(B)のエチレン含量は、剛性、耐衝撃性、透明性の制御するため0.5〜6.0重量%の範囲がよく、好ましくは0.5〜5.0重量%であり、より好ましくは0.8〜4.5重量%である。エチレン含量が0.5重量%未満の場合、プロピレン系重合体の結晶性が高くなるため、耐衝撃性、透明性が悪化する恐れがある。また、エチレン含量が6.0重量%を超えると、結晶性が減少するために剛性が低下、ベタツキ感の増加を招くため好ましくない。
ここで、エチレン含量は、上述の方法によって測定する値である。
本発明で用いる超低分子量プロピレン系重合体(B)は、メタロセン触媒を用いて重合されたものである。従来公知のチーグラー・ナッタ系触媒を用いて重合されたものよりも、分子量分布が狭く、低結晶性成分の生成量が小さく、結晶性分布が狭いために、透明性が高く、ベタツキ感が抑制されたエチレン−プロピレンランダム共重合体を製造することができる。
このようなメタロセン触媒には、前記高分子量プロピレン系重合体(A)を得る際に用いたものと同様のものを使用することができる。
重合法としては、上記触媒の存在下に、不活性溶媒を用いたスラリー法、溶液法、実質的に溶媒を用いない気相法や、あるいは重合モノマーを溶媒とするバルク重合法等が挙げられる。本発明で用いる超低分子量プロピレン系重合体(B)を得る方法としては、例えば、重合温度やコモノマー量、分子量調節剤としての水素の供給量など適宜調節して、分子量および分布を適宜制御することにより、所望のポリマーを得ることができる。
具体的な製造方法としては、メタロセン触媒の存在下に温度50〜150℃、好ましくは、50〜100℃、プロピレンおよびエチレンの各分圧0.3〜4.5MPa、好ましくは0.5〜3.5MPaの条件である。また、水素の供給量は、重合温度やプロピレンおよびエチレンの各分圧によって、所望の分子量が得られるように調節するが、0.01〜1000molppm、好ましくは、0.05〜800molppm、さらに好ましくは、0.1〜500molppmの条件である。
本発明で用いる射出成形用プロピレン系樹脂組成物は、高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)とから成る。
高分子量プロピレン系重合体(A)に対し、配合する超低分子量プロピレン系重合体(B)の分子量を小さいものにすればする程、また、超低分子量プロピレン系重合体(B)の配合割合を増やせば増やすほど、溶融流動性は小さく(MFRが大きく)なり、射出成形による流れ性(スパイラルフロー長)は向上する。しかし、単純に、MFRを大きくし、スパイラルフロー長を向上させても、得られる射出成形品のソリ、ヒケおよびフローマークの発生は抑えられない。これは、図1に示されるMFRとスパイラルフロー長との相関図からも明らかであり、同程度のMFRに対して、スパイラルフロー長を向上させる条件でなければ、ソリ、ヒケおよびフローマークの発生のない射出成形性の優れた射出成形用プロピレン系樹脂組成物を得ることができない。本発明においては、同程度のMFRに対して、スパイラルフロー長をどれだけ向上させることができる条件にするかがポイントとなる。
本発明で用いるプロピレン系樹脂混合物は、高分子量プロピレン系重合体(A)50〜99重量%と超低分子量プロピレン系重合体(B)1〜50重量%からなる。高分子量プロピレン系重合体(A)60〜95重量%と超低分子量プロピレン系重合体(B)5〜40重量%が好ましく、高分子量プロピレン系重合体(A)65〜90重量%と超低分子量プロピレン系重合体(B)10〜35重量%がより好ましい。
高分子量プロピレン系重合体(A)の配合量が99重量%を超える(超低分子量プロピレン系重合体(B)の配合量が1重量%未満である)と、溶融時の樹脂流動性が悪化し、射出成形性が悪くなる。逆に、高分子量プロピレン系重合体(A)の配合量が50重量%未満である(超低分子量プロピレン系重合体(B)の配合量が50重量%を超える)と、耐衝撃性が低下し、成形品として使用した際に破損が懸念される。
本発明に用いるプロピレン系樹脂混合物のエチレン含量は、剛性、耐衝撃性、透明性の制御するため0.5〜6.0重量%の範囲であり、好ましくは0.5〜5.0重量%であり、より好ましくは0.8〜4.5重量%である。エチレン含量が0.5重量%未満の場合、プロピレン系樹脂混合物の結晶性が高くなるため、耐衝撃性、透明性が悪化する恐れがある。また、エチレン含量が6.0重量%を超えると、結晶性が減少するために剛性が低下、ベタツキ感の増加を招くため好ましくない。
ここで、エチレン含量は、上述の方法によって測定する値である。
本発明で用いるプロピレン系樹脂混合物は、高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)とを逐次重合により製造したものであっても良い。つまり、メタロセン触媒存在下に、プロピレンとエチレンとの混合モノマーの共重合を通じて重合条件を段階的に変化させる方法によって得たものであっても良い。
この方法によって得たプロピレン系樹脂混合物は、高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)とが、均一に分散されているので、高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)とを単純ブレンドしたものに比べ、不均一分散による破壊の起点を減少させることができるため、耐衝撃性が良好となる点で効果的である。
本発明の効果を阻害しない範囲で、プロピレン系樹脂混合物を得るための製造条件として、その重合段数や重合順序に限定はない。
本発明で用いるプロピレン系樹脂混合物の分子量分布(Mw/Mn)は、4〜20が好ましい。さらに好ましくは4〜15のものである。分子量分布が4未満では射出成形時の溶融流動性が低下し、射出成形性が悪化してフローマーク発生するという問題が起こる恐れがある。分子量分布が20を超えると低分子量成分が多くなることによりベタツキが発生する懸念がある。
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物には、透明性を付与するため、造核剤(C)が配合されていることが望ましい。
造核剤(C)としては、一般な各種の公知の造核剤が使用可能であり、具体的には、有機燐酸エステル金属塩、有機モノカルボン酸金属塩、有機ジカルボン酸金属塩、ポリマー核剤、ジベンジリデンソルビトールもしくはその誘導体、ジテルペン酸類の金属塩等を挙げることができる。
上記有機ジカルボン酸金属塩としては、例えば、コハク酸、グルタール酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、フタル酸、シクロヘキサンカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸およびこれらのLi、Na、Mg、Ca、Ba、Al塩などを挙げることができる。
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物は、プロピレン系樹脂混合物100重量部に対して造核剤(C)を0.05〜0.7重量部配合することが好ましく、0.1〜0.5重量部配合することがより好ましい。造核剤(C)の配合量が0.05重量部未満であると剛性の改良効果が不十分となる恐れがあり、0.7重量部を超えると前記効果は飽和し、余分なコストがかかる場合がある。なお、これら造核剤は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物には、本発明の効果を妨げない限り、プロピレン系樹脂に添加できる酸化防止剤などの添加剤、エラストマー、脂環式炭化水素樹脂などの改質剤を適宜加えることができる。
具体的には、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール(BHT)、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン(IRGANOX 1010)やn−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート(IRGANOX 1076)で代表されるフェノール系安定剤、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトやトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどで代表されるホスファイト系安定剤、高級脂肪酸アミドや高級脂肪酸エステルで代表される滑剤、炭素原子数8〜22の脂肪酸のグリセリンエステルやソルビタン酸エステル、ポリエチレングリコールエステルなどの帯電防止剤、シリカ、炭酸カルシウム、タルクなどで代表されるブロッキング防止剤、エチレン−α−オレフィン共重合体、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレンなどで代表されるポリエチレン系樹脂、石油樹脂、テルペン樹脂、ロジン系樹脂、クマロンインデン樹脂、並びにそれらの水素添加誘導体等に代表される脂環式炭化水素樹脂などを添加しても良い。
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物は、上記の高分子量プロピレン系重合体(A)、超低分子量プロピレン系重合体(B)および必要に応じて他の添加剤をヘンシェルミキサー、vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーブレンダー等で混合後、単軸押出機、多軸押出機、ニーダー、バンバリミキサー等の混練機により混練する方法により得られる。
本発明の射出成形用プロピレン系樹脂組成物は、JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して求めたMFRが、2.0〜200g/10分であることが必要であり、好ましくは5.0〜100g/10分、更に好ましくは、10〜80g/10分である。MFRが2.0g/10分未満では、成形時の流動性が劣ることにより、射出成形が困難となる恐れがある。MFRが200g/10分を超えると、耐衝撃性が低下し、成形品として使用した際に破損する恐れがある。
本発明の射出成形体は、上記の射出成形用プロピレン系樹脂組成物を、公知の射出成形機により成形することにより得られる。
本発明の射出成形体としては、具体的には、食品容器(プリン容器、ゼリー容器、ヨーグルト容器、その他のデザート容器、惣菜容器、茶碗蒸し容器、インスタントラーメン容器、米飯容器、レトルト容器、弁当容器等)、飲料容器(飲料ボトル、チルドコーヒー容器、ワンハンドカップ容器、その他の飲料容器等)、キャップ(ペットボトルキャップ、1ピースキャップ、2ピースキャップ、インスタントコーヒーのキャップ、調味料キャップ、化粧品容器キャップ等)、医薬品容器(プレフィルドシリンジ、キット製剤、目薬容器、薬液容器、薬剤容器、液体の長期保存容器、プラスチックバイアル等)、その他各種容器(インク容器、化粧品容器、シャンプー容器、洗剤容器等)、日用品(衣装ケース、バケツ、洗面器、筆記用具、コンテナ、玩具、調理器具、その他各種ケース等)などが挙げられる。
(1)重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn):前述の条件のゲル・パーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定した。
(2)13C−NMRによるエチレン含量:前述の方法で測定した。
(3)メルトフローレート(MFR):JIS K7210(230℃、2.16kg荷重)に準拠して求めた。
(4)融点(Tm):セイコー社製DSCを用いて測定した。サンプル5.0mgを採り、200℃で5分間保持した後、40℃まで10℃/minの降温速度で結晶化させてその熱履歴を消去し、更に10℃/minの昇温速度で融解させた時の融解曲線のピーク温度を融点(Tm)とした。
(5)曲げ弾性率:射出成形により試験片を成形し、成形後に室温23℃、湿度50%に調節された恒温室に24時間放置した後、JIS K−7171(ISO178)に準拠して求めた。
(6)IZOD衝撃強度:射出成形により試験片を成形し、成形後に室温23℃、湿度50%に調節された恒温室に24時間放置した後、JIS K−7110に準拠して求めた。
(7)透明性(ヘイズ):射出成形により厚さ2mmの平板を成形し、成形後に室温23℃、湿度50%に調節された恒温室に24時間放置した後、JIS K−7136(ISO14782)JIS K−7361−1に準拠して求めた。
(8)ベタツキ:射出成形により得られた厚さ2mmの平板を重ね合わせ、40℃雰囲気下で24時間放置した後、重ね合わせた試験片を引き離すときの挙動により評価を行った。2枚の試験片がまったく張り付き合わない場合は○、2枚の試験片が張り付き合うが、容易に引き剥がすことが出来る場合は△、2枚の試験片が強く張り付き合う場合は×と判定した。
(9)スパイラルフロー長:成形温度240℃、金型冷却水温度40℃、射出時間10秒、射出一次圧力75MPaの条件で成形し、射出された樹脂長を測定した。
(10)成形性(外観):射出成形により得られた厚さ1mmの平板を目視にて観察し、ソリ、ヒケおよびフローマークが発生していないものを○、ソリ、ヒケおよびフローマークが軽度に発生しているもの、もしくはいずれか1つが発生しているものを△、ソリ、ヒケおよびフローマークが全て発生しているもの、もしくはいずれか1つが重度に発生しているものを×と判定した。
以下の触媒製造例で得られた触媒を用いて製造例1〜11で得られたプロピレン系樹脂混合物を用いた。プロピレン系樹脂混合物の重合条件、重合結果を表3に示す。
(i)メタロセン化合物の合成
特開平11−240909号公報に記載の方法に準じて、(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウムの合成を行った。
(ii)化学処理
撹拌翼と還流装置を取り付けた5Lセパラブルフラスコに、純水1,700gを投入し、98%硫酸500gを滴下した。そこへ、さらに造粒モンモリロナイト(水澤化学社製、ベンクレイSL、平均粒径:18.5μm)を300g添加後撹拌した。その後90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、洗浄した。
回収したケーキに硫酸リチウム1水和物325gの水900mL水溶液を加え90℃で2時間反応させた。このスラリーをヌッチェと吸引瓶にアスピレータを接続した装置にて、pH>4まで洗浄した。
回収したケーキを120℃で終夜乾燥した。その結果、270gの化学処理体を得た。その後、2Lフラスコに全量投入し、200℃にて6hr減圧乾燥を行った。
(iii)固体触媒の調製
内容積13リットルの攪拌機の付いた金属製反応器に、上記で得た乾燥珪酸塩0.223kgとヘプタン1.45リットルの混合物を導入し、さらにトリイソブチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.71M)0.79リットルを加え、系内温度を25℃に維持した。1時間の反応後、ヘプタンにて十分に洗浄し、珪酸塩スラリーを3.1リットルに調製した。
上記スラリーにトリノルマルオクチルアルミニウムのヘプタン溶液(0.39M)を34.4ミリリットル加えて10分間攪拌した。さらに予め(r)−ジクロロ[1,1’−ジメチルシリレンビス{2−メチル−4−(4−クロロフェニル)−4H−アズレニル}]ハフニウム2.73gにヘプタンを0.55リットルを添加した混合物を導入して、室温にて1時間反応させた後、ヘプタンを追加して5.6リットルに調整した。
続いて、温度40℃にて、プロピレンを111.8g/時間の速度で供給し、4時間予備重合を行った。さらに1時間、後重合した。
予備重合終了後、残モノマーをパージした後、触媒をヘプタンにて十分に洗浄した。続いて、トリイソブチルアルミニウム(0.71M)のヘプタン溶液95mL添加した後に、40℃で減圧乾燥を実施した。この操作により、乾燥したメタロセン系重合触媒Aを0.688kg得た。
(1)第一工程
撹拌および温度制御装置を有する内容積3Lのオートクレーブをプロピレンで充分置換した後に、トリエチルアルミニウム・n−ヘプタン溶液3.3ml(4.0mmol)を加え、エチレン水素80ml、続いて液体プロピレン750gを導入し、70℃に昇温しその温度を維持した。上記のメタロセン系重合触媒をn−ヘプタンでスラリー化し、触媒として15mgを圧入し、重合を開始した。槽内温度を70℃に維持して60分重合を継続した。その後、常圧まで残モノマーをパージし、さらに精製した窒素で完全に置換した。生成したポリマーを得た後、引き続いて第二工程を行った。一部ポリマーをサンプリングして分析したところ、エチレン含量4.1重量%、融点124.2℃、MFRは4.2g/10分であった。
(2)第二工程
温度を40℃に制御し、水素を100ml導入し、さらに比例制御装置を使用し、エチレンとプロピレンとの混合ガスに対するエチレンのガス組成が17mol%になるように調整して導入した。昇温し、温度が70℃、圧力が1.8MPaとなったのち、第二工程の重合を開始した。60分間重合を継続した。その間、圧力が1.8MPaを下回らないように7mol%のガス組成のエチレン、プロピレン混合ガスを導入した。その後、エタノールを10ml導入して重合を停止した。残存ガスをパージした。回収したポリマーは60℃減圧乾燥機にて乾燥した。収量は430gであった。生成したポリマーを一部サンプリングして分析したところ、第一工程で製造したポリプロピレン系重合体を80重量%と第二工程で製造したポリプロピレン系重合体を20重量%含有する、MFRが8.7g/10min、Mw/Mnが5.2、エチレン含量が4.2重量%のプロピレン系樹脂混合物を得た。
製造例1の重合条件を表3の条件に代えた以外は、製造例1に準拠し、製造例2〜11の重合条件によって各種プロピレン系樹脂混合物を得た。
(1)射出成形用プロピレン系樹脂組成物の製造
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物100重量部に対して、酸化防止剤:テトラキス{メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート}メタン(商品名=イルガノックス1010)0.05重量部、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト(商品名=イルガフォス168)0.05重量部、中和剤:ステアリン酸カルシウム0.05重量部、造核剤として有機燐酸エステル金属塩(商品名=NA21)0.20重量部をスーパーミキサーで窒素シール後、3分間混合した。その後、パウダーは東芝機械社製2軸押出機TEM35を用いホッパーを窒素シールしながらシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpm、押出量15kg/hで造粒することにより、射出成形用プロピレン系樹脂組成物を得た。
(2)射出成形品の製造
上記で得られた樹脂組成物ペレット試料を東芝射出成形機EC100に供給し、射出1次圧力50Mpa、成形温度200℃、金型冷却水温度40℃、成形サイクル15秒で試験片、試験用平板を成形した。
また、同じく東芝射出成形機EC100に供給し、成形温度240℃、金型冷却水温度40℃、射出時間10秒、射出一次圧力75MPaの条件で成形し、スパイラルフロー長を測定した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しており、溶融時の樹脂流動性(スパイラルフロー長)は、同程度のMFRである比較例1と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例2によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しており、溶融時の樹脂流動性は、同程度のMFRである比較例1、2と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例3によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しており、溶融時の樹脂流動性は、同程度のMFRである比較例1、2と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例4によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しており、溶融時の樹脂流動性は、同程度のMFRである比較例2と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例5によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しているため、溶融時の樹脂流動性は、同程度のMFRである比較例2、3と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例6によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表4に示す。得られた射出成形品は、本発明の特定物性を全て満足しているため、溶融時の樹脂流動性は、同程度のMFRである比較例3、5と比べ高く、成形性に優れ、透明性が高く、ベタツキが少ないものであった。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例7によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表5に示す。該樹脂組成物に超低分子量プロピレン系重合体(B)を用いない結果、プロピレン系樹脂組成物のMFRに対するスパイラルフロー長が小さく、溶融時の樹脂流動性が不足し、ソリ、フローマークが発生した。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例8によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表5に示す。該樹脂組成物に超低分子量プロピレン系重合体(B)を用いない結果、プロピレン系樹脂組成物のMFRに対するスパイラルフロー長が小さく、溶融時の樹脂流動性が不足しフローマークが発生した。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例9によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表5に示す。該樹脂組成物に超低分子量プロピレン系重合体(B)を用いない結果、プロピレン系樹脂組成物のMFRに対するスパイラルフロー長が小さく、溶融時の樹脂流動性が不足しフローマークの発生が確認された。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例10によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表5に示す。高分子量プロピレン系重合体(A)の重量平均分子量が大きい結果、超低分子量プロピレン系重合体(B)を用いてもプロピレン系樹脂組成物のスパイラルフロー長が小さく、溶融時の樹脂流動性が不足し、フローマークの発生が確認された。
製造例1によって得たプロピレン系樹脂混合物の代わりに、製造例11によって得たプロピレン系樹脂混合物を用いた以外は、実施例1と同様に造粒し、射出成形品を製造した。
得られた試験片、試験用平板、スパイラルフロー長の評価結果を表5に示す。超低分子量プロピレン系重合体(B)の重量平均分子量が大きい結果、溶融時の樹脂流動性の改質効果が得られないことからプロピレン系樹脂組成物のMFRに対するスパイラルフロー長が小さく、溶融時の樹脂流動性が不足し、フローマークの発生が確認された。
Claims (5)
- 下記条件を満たす高分子量プロピレン系重合体(A)50〜99重量%と下記条件を満たす超低分子量プロピレン系重合体(B)1〜50重量%とからなる、230℃、2.16Kg荷重で測定されたメルトフローレート(MFR)が2.0〜200g/10分であり、エチレン含量が0.5〜6.0重量%の範囲にあるプロピレン系樹脂混合物を用いることを特徴とする射出成形用プロピレン系樹脂組成物。
高分子量プロピレン系重合体(A):重量平均分子量(Mw)が140000〜380000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体
超低分子量プロピレン系重合体(B):重量平均分子量(Mw)が29000〜120000であるメタロセン触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレンランダム共重合体 - プロピレン系樹脂混合物100重量部に対して造核剤(C)0.05〜0.7重量部を含有することを特徴とする請求項1に記載の射出成形用プロピレン系樹脂組成物。
- プロピレン系樹脂混合物の分子量分布(Mw/Mn)が4〜20の範囲であることを特徴とする請求項1又は2に記載の射出成形用プロピレン系樹脂組成物。
- プロピレン系樹脂混合物が、高分子量プロピレン系重合体(A)と超低分子量プロピレン系重合体(B)とを逐次重合により製造したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の射出成形用プロピレン系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の射出成形用プロピレン系樹脂組成物を用いることを特徴とする射出成形体。
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WO2012133876A1 (ja) * | 2011-03-31 | 2012-10-04 | 住友化学株式会社 | 偏光板 |
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- 2008-10-31 JP JP2008280720A patent/JP2010106172A/ja active Pending
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