JP2017036356A - ポリプロピレン系樹脂組成物及び射出成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】機械的物性及び成形性に優れ、臭気の発生及び成形品の反りを抑制できるポリプロピレン系樹脂組成物を提供する。
【解決手段】本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、特定のポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル系造核剤と酸化防止剤とを含有し、前記リン酸エステル系造核剤の含有割合は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.05〜0.30質量部であり、前記酸化防止剤の含有割合は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.02〜0.50質量部である。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物及び射出成形品に関する。
ポリプロピレンを主成分としたポリプロピレン系樹脂組成物は、安価である上に機械的物性に優れることから、様々な用途に使用される。特に、エチレン・α−オレフィン共重合体等のゴム成分を含有して耐衝撃性を向上させたポリプロピレン系樹脂組成物の射出成形品は、自動車内装材、日用品、電気製品の筐体等に広く使用されている。
ポリプロピレン系樹脂組成物においては、曲げ弾性率等の剛性を向上させるために、ポリプロピレンに造核剤を配合することがあった(特許文献1,2)。
特開平11−181182号公報 国際公開第2014/073510号
ポリプロピレン系樹脂組成物においては、成形品の生産性を向上させるために、流動性が高いことが求められる。さらに、成形サイクルを短縮しても所望の成形品形状にできるハイサイクル性、成形品表面に凹みが生じる「ヒケ」と称される成形不良の発生を防止する成形不良発生防止性も求められる。すなわち、流動性、ハイサイクル性及び成形不良発生防止性を兼ね備えた成形性が求められる。
また、ポリプロピレン系樹脂組成物は、臭気が発生することがあるが、臭気が多い成形品は品質が良いとはいえないし、成形作業における作業環境を悪化させることもある。
さらに、ポリプロピレン系樹脂組成物においては、成形サイクルを短縮しても反りの変形を抑制できるものが求められている。
しかし、これまでに、剛性及び耐衝撃性等の機械的物性、成形性、臭気発生防止、成形品の反り抑制の全てを満足させるポリプロピレン系樹脂組成物は知られていなかった。
そこで、本発明は、機械的物性(剛性及び耐衝撃性)及び成形性(流動性、ハイサイクル性、ヒケ防止性)に優れ、臭気の発生及び成形品の反りを抑制できるポリプロピレン系樹脂組成物及び射出成形品を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル系造核剤と酸化防止剤とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、JIS K7210に従い、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトフローレートが65〜110g/10分であり、前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単位が99.5質量%以上のポリプロピレンとエチレン・α−オレフィン共重合体とを含み、エチレン・α−オレフィン共重合体の含有割合が20〜30質量%、キシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が1.6〜2.2dl/g、前記エチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレン単位含有割合が30〜40質量%であり、該ポリプロピレン系樹脂組成物における前記ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマーの含有割合が10質量%以下であり、前記リン酸エステル系造核剤の含有割合は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.05〜0.30質量部であり、前記酸化防止剤の含有割合は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.02〜0.50質量部である、ポリプロピレン系樹脂組成物。
[2]前記ポリプロピレン系樹脂に含まれるポリプロピレンは、多分散指数が4.5〜10である、[1]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[3]前記酸化防止剤として、フェノールリン系酸化防止剤を前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.02〜0.20質量部含有する、[1]または[2]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[4]トリアミノベンゼン誘導体系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、ソルビトール系造核剤、カルボン酸金属塩造核剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[5]前記リン酸エステル系造核剤と併用する他の造核剤として、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤を前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.01〜0.10質量部含有する、[4]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[6]前記リン酸エステル系造核剤と併用する他の造核剤として、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、ソルビトール系造核剤、カルボン酸金属塩造核剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種を、それらの合計量として前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.05〜0.30質量部含有する、[4]に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[7]前記ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマーが、エチレン系重合体である、[1]〜[6]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
[8][1]〜[7]のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物を含有する射出成形品。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物及び成形品は、機械的物性(剛性及び耐衝撃性等)及び成形性(流動性、ハイサイクル性、ヒケ防止性)に優れ、臭気の発生及び成形品の反りを抑制できる。
本発明の一態様のポリプロピレン系樹脂組成物は、ポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル系造核剤と酸化防止剤とを含有する。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、JIS K7210に従い、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトフローレート(以下、「MFR」という。)が65〜110g/10分であり、80〜100g/10分であることが好ましく、80〜95g/10分であることがより好ましい。ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRが前記下限値未満であると、該ポリプロピレン系樹脂組成物のハイサイクル性及び成形不良防止性が低下することがある。一方、MFRが前記上限値を超えるポリプロピレン系樹脂組成物の製造は困難である。
(ポリプロピレン系樹脂)
ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンと、エチレン単位及び一種類以上の炭素3〜12のα−オレフィン単位を有するエチレン・α−オレフィン共重合体とを含む。ポリプロピレン系樹脂におけるエチレン・α−オレフィン共重合体はゴム成分主体であり、ポリプロピレンのマトリックス中に分散している。
また、ポリプロピレン系樹脂は、ポリプロピレンの存在下でエチレンモノマー及びα−オレフィンモノマーを重合してエチレン・α−オレフィン共重合体を形成して得た混合樹脂であることが好ましい。このような混合樹脂によれば、ポリプロピレン系樹脂組成物の機械的物性をより向上させることができ、ポリプロピレンとエチレン・α−オレフィン共重合体との単なるブレンド物よりも機械的物性が高くなる。
なお、前記混合樹脂においては、ポリプロピレン中にエチレン・α−オレフィン共重合体が分子レベルに近い状態で混じり合ってエチレン・α−オレフィン共重合体の分散性が高くなるため、機械的物性が向上すると推測されるが、具体的にエチレン・α−オレフィン共重合体の分散性を高精度で調べる分析手段は、出願時において知られていない。したがって、前記混合樹脂については、その構造又は特性により直接特定することが不可能であるか、又はおよそ実際的でない。
ポリプロピレンは、プロピレン単位が99.5質量%以上のプロピレン重合体であり、プロピレン単位が100質量%のプロピレン単独重合体であってもよい。
プロピレン単位が99.5〜100質量%未満の場合、プロピレン単位以外の単量体単位としては、エチレン単位、α−オレフィン単位(例えば、1−ブテン単位、1−オクテン単位等)が挙げられる。
ポリプロピレンにおけるプロピレン単位が99.5質量%未満であると、ハイサイクル性が低下することがある。
ポリプロピレンは、多分散指数が4.5以上であることが好ましく、5.0以上であることがより好ましく、5.5以上であることがさらに好ましい。ポリプロピレンの分子量分布が4.5以上であれば、成形流動性がより高くなる。
一方、ポリプロピレンの多分散指数は、製造容易である点では、10以下であることが好ましい。
エチレン・α−オレフィン共重合体におけるα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン等が挙げられる。機械的物性が高く、より安価である点では、α−オレフィンはプロピレンであることが好ましい。すなわち、エチレン・α−オレフィン共重合体がエチレン・プロピレン共重合体であることが好ましい。
エチレン・α−オレフィンの共重合体におけるエチレン単位割合は30〜40質量%であり、30〜35質量%であることが好ましい。エチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレン単位含有量が前記下限値未満のポリプロピレン系樹脂組成物の製造は困難である。一方、エチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレン単位含有量が前記上限値を超えると、耐衝撃性が低下する傾向にある。
ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度は1.6〜2.2dl/gであり、1.8〜2.0dl/gであることが好ましい。ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度が前記下限値未満であっても、前記上限値を超えても、耐衝撃性が低くなる傾向にある。
ポリプロピレン系樹脂が、ポリプロピレンとエチレン・α−オレフィン共重合体とを重合時に混合した混合樹脂である場合には、多段重合により製造することができる。例えば、1段目の重合反応器にて、ポリプロピレンを重合し、得られたポリプロピレンを2段目の重合反応器に移送すると共に2段目の重合反応器にてエチレンモノマー及びα−オレフィンモノマーを重合してエチレン・α−オレフィン共重合体を形成することでポリプロピレン系樹脂を得ることができる。この方法では、2段目の重合反応器にて、ポリプロピレンに、生成するエチレン・α−オレフィン共重合体を混合するため、ポリプロピレン中のエチレン・α−オレフィン共重合体の分散性を向上させることができる。
なお、多段重合は上記の方法に限らず、目的の多分散指数を得るため、ポリプロピレンを複数の重合反応器にて重合してもよいし、触媒のショートパスや1個の重合反応器の反応量を抑えて、ファウリング(反応器の目詰まり)を防止するため、エチレン・αオレフィン共重合体を複数の重合反応器にて重合してもよい。また、プロピレン系樹脂を得る方法として、モノマー濃度や重合条件の勾配を有する重合器を用いて行う方法が挙げられる。このような重合器では、例えば、少なくとも2つの重合領域が接合されたものを使用し、気相重合でモノマーを重合することができる。具体的には、触媒の存在下、上昇管からなる重合領域にてモノマーを供給して重合し、上昇管に接続された下降管にてモノマーを供給して重合し、上昇管と下降管とを循環しながら、ポリマー生成物を回収する。この方法では、上昇管中に存在する気体混合物が下降管に入るのを全面的または部分的に防止する手段を備える。また、上昇管中に存在する気体混合物とは異なる組成を有する気体および/または液体混合物を下降管中に導入する。この重合方法は、例えば、特表2002−520426号公報に記載された方法を適用することができる。
また、重合の際には、必要に応じて、分子量の調整のために、水素を添加してもよい。
プロピレン系樹脂を重合する際に用いられる触媒としては特に制限されないが、(A)マグネシウム、チタン、ハロゲン及び電子供与体化合物を含有する固体触媒;(B)有機アルミニウム化合物;(C)外部電子供与体化合物を含むものが好ましい。この(A),(B)及び(C)を含む触媒を用いると、スウェルが大きくなり、ヒケが少くなって均一な肉厚の成形品を容易に得ることができ、本発明の効果がより発揮される。本発明のポリプロピレン樹脂の製造で使用する固体触媒成分(A)の調製に用いられる電子供与体化合物は、一般には「内部電子供与体」と称される。このような電子供与体化合物として、アルコール、フェノール類、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、有機酸又は無機酸のエステル、エーテル、酸アミド、酸無水物等の含酸素電子供与体、アンモニア、アミン、ニトリル、イソシアネート等の含窒素電子供与体などが知られているが、本発明における電子供与体化合物はジカルボン酸ジエステルを含むことが好ましい。ジカルボン酸とは2つのカルボキシル基を有する化合物である。例えば、コハク酸、コハク酸の1位または2位にアルキル基等の置換基を持つ置換コハク酸もジカルボン酸に含まれる。ジカルボン酸ジエステルの中でコハク酸、置換コハク酸、フタル酸、マレイン酸、置換マロン酸のジエステルがより好ましく、目的の多分散指数を容易に得られ、さらに高分子量成分と低分子量成分が分子レベルに近い状態で混ざり合うことから、コハク酸エステル(スクシネート)系の電子供与体化合物が特に好ましい。
(ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマー)
ポリプロピレン系樹脂組成物においては、前記ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマーが含まれても構わない。ただし、他のポリマーの含有割合は、ポリプロピレン系樹脂と他のポリマーとの合計を100質量%とした際の、10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましく、0質量%であってもよい。ポリプロピレン系樹脂組成物における他のポリマーの含有割合が10質量%を超えると、ポリプロピレン系樹脂組成物の生産性が低下する傾向にある。
他のポリマーは、前記ポリプロピレン系樹脂とは別に製造され、例えば、前記ポリプロピレン系樹脂以外のポリオレフィン、ポリスチレン、アクリル樹脂等が挙げられ、ポリプロピレン系樹脂との相溶性が高い点では、ポリオレフィンが好ましい。
ポリオレフィンとしては、高密度ポリエチレン、分岐状低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体等のエチレン単位を含有するエチレン系重合体を用いることがさらに好ましい。これらのなかでも、機械的物性向上の機能を有することから、高密度ポリエチレン、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−オクテン共重合体が特に好ましい。
他のポリマーは1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
(リン酸エステル系造核剤)
ポリプロピレン系樹脂組成物に含まれるリン酸エステル系造核剤は、リン酸エステル構造を有する化合物である。ポリプロピレン系樹脂組成物が該リン酸エステル系造核剤を含有することによって、ポリプロピレン結晶核の形成を促進させ、結晶化度を向上させることができ、その結果、成形品の剛性を向上させることができる。また、ハイサイクル性も向上する。さらにリン酸エステル系造核剤は成形品の反りの低減効果があることが知られている。
リン酸エステル系造核剤の具体例としては、2−ヒドロキシ−2−オキソ−4,6,10,12−テトラ−tert−ブチル−1,3,2−ジベンゾ[d,g]ペルヒドロジオキサホスファロシンのナトリウム塩、リン酸−2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)アルミニウム塩系化合物等が挙げられる。
市販のリン酸エステル系造核剤として、例えば、アデカスタブNA−11(2−ヒドロキシ−2−オキソ−4,6,10,12−テトラ−tert−ブチル−1,3,2−ジベンゾ[d,g]ペルヒドロジオキサホスファロシンのナトリウム塩)、アデカスタブNA−18、アデカスタブNA−27、アデカスタブNA−21、アデカスタブNA−71(いずれも株式会社ADEKA製)などが挙げられる。
リン酸エステル系造核剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリプロピレン系樹脂組成物において、リン酸エステル系造核剤の含有割合は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.05〜0.30質量部であり、0.05〜0.10質量部であることが好ましい。リン酸エステル系造核剤の含有割合が前記下限値未満であると、剛性やハイサイクル性の向上が充分でなく、また成形品の反りを防止できないことがある。一方、リン酸エステル系造核剤の含有割合が前記上限値を超えると、前記の向上効果や防止効果が頭打ちとなるため、無駄が多くなる。
(他の有機造核剤)
ポリプロピレン系樹脂組成物には、上記リン酸エステル系造核剤以外の他の有機造核剤が含まれても構わない。
他の有機造核剤の具体例としては、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、ソルビトール系造核剤、カルボン酸金属塩造核剤等が挙げられる。これらのうち、臭気発生をより防止できる点では、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤が好ましい。
他の有機造核剤は1種をリン酸エステル系造核剤と併用してもよいし、2種以上をリン酸エステル系造核剤と併用してもよい。他の有機造核剤を併用することにより、成形品の反りをより防止できる。
トリアミノベンゼン誘導体系造核剤としては、例えば、1,3,5−トリス(2,2−ジメチルプロパンアミド)ベンゼン等が挙げられる。
ノニトール系造核剤としては、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールが挙げられる。
キシリトール系造核剤としては、例えば、ビス−1,3:2,4−(5’,6’,7’,8’−テトラヒドロ−2−ナフトアルデヒドベンジリデン)1−アリルキシリトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1−プロピルキシリトールが挙げられる。
ソルビトール系造核剤として、例えば、ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−メチル−4’−フルオロ−ベンジリデン)1−プロピルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1’−メチル−2’−プロペニルソルビトール、ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’,3’−ジブロモプロピルソルビトール、ビス−1,3,2,4−ジベンジリデン2’−ブロモ−3’−ヒドロキシプロピルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、モノ2,4−(3’−ブロモ−4’−エチルベンジリデン)−1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(4’−エチルベンジリデン)1−アリルソルビトール、ビス−1,3:2,4−(3’,4’−ジメチルベンジリデン)1−メチルソルビトール、ビス(p−メチルベンジリデン)ソルビトール、1,3:2,4−ビス−o−(4−メチルベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−o−(ベンジリデン)−D−ソルビトール、1,3:2,4−ビス−o−(3,4−ジメチルベンジリデン)−D−ソルビトール等が挙げられる。
カルボン酸金属塩造核剤として、1,2−シクロヘキサンジカルボキシル酸カルシウム塩等が挙げられる。
市販されているトリアミノベンゼン誘導体系造核剤として、例えば、イルガクリア XT386(BASFジャパン株式会社製)などが挙げられる。
市販されているノニトール系造核剤としては、例えば、1,2,3―トリデオキシ−4,6:5,7−ビス−[(4−プロピルフェニル)メチレン]−ノニトールを含むMillad NX8000、NX8000K、NX8000J(以上ミリケンジャパン株式会社製)が挙げられる。
市販されているソルビトール系造核剤としては、例えば、RiKAFAST R−1(新日本理化株式会社製)、Millad 3988(ミリケンジャパン株式会社製)、ゲルオールE−200(新日本理化株式会社製)、ゲルオールMD(新日本理化株式会社製)等が挙げられる。
市販のカルボン酸金属塩造核剤として、例えばHyperform HPN−20E(ミリケンジャパン株式会社製)などが挙げられる。
ポリプロピレン系樹脂組成物において、他の有機造核剤の含有割合は、法的規制やコスト等の制約によりポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、0.30質量部以下である必要がある。臭気発生をより防止できる点では少ない方が好ましい。トリアミノベンゼン誘導体系造核剤の場合には、その含有割合は0.01〜0.10質量部が好ましく、0.01〜0.05質量部がより好ましく、0.015〜0.03質量部であることがさらに好ましい。前記リン酸エステル系造核剤と併用する他の造核剤として、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、ソルビトール系造核剤、カルボン酸金属塩造核剤の少なくとも一種用いる場合には、それらの合計量として前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.05〜0.30質量部が好ましい。前記含有割合の範囲で他の有機造核剤を含めば、成形品の反りをより防止できる。なお、反りをある程度許容できる場合には、ポリプロピレン系樹脂組成物は他の有機造核剤を含有しなくてもよい。すなわち、他の有機造核剤の含有割合は0質量部であってもよい。
(酸化防止剤)
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、フェノールリン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。これらのなかでも、リン酸エステル系造核剤と併用する効果が高く、成形品の臭気発生をより防止できることから、フェノールリン系酸化防止剤が好ましい。ここで、フェノールリン系酸化防止剤は、フェノール構造と3価のリン原子を一分子中に含むものであり、フェノール系酸化防止剤はフェノール構造を含むが、リン原子を含まないものであり、硫黄系酸化防止剤は、硫黄原子を含むものである。
市販されているフェノールリン系酸化防止剤としては、住友化学株式会社製スミライザーGPが挙げられる。なお、住友化学株式会社製スミライザーGPは、6−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピンである。
酸化防止剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤の合計の含有割合は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、0.02〜0.50質量部であり、0.05〜0.50質量部であることが好ましく、0.05〜0.30質量部であることがさらに好ましい。酸化防止剤の含有割合が前記下限値未満であると、臭気の発生を抑制できないことがある。フェノールリン系酸化防止剤の含有割合は、ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して、0.02〜0.20質量部であることが好ましく、0.04〜0.15質量部であることがさらに好ましい。フェノールリン系酸化防止剤の含有割合が前記下限値未満であると、臭気の発生を抑制できないことがある。一方、酸化防止剤の含有割合を前記上限値より多くしても、臭気抑制効果が頭打ちとなるため、無駄が多くなるのみでなく、添加剤自身が臭気発生要因となるので好ましくない。
(その他添加剤)
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、任意成分として、例えば、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、内部滑剤、外部滑剤、難燃剤、分散剤、銅害防止剤、中和剤、可塑剤、発泡剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物および顔料(有機または無機)等のその他の添加剤が含まれてもよい。
また、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、無機充填剤が含まれても構わない。
無機充填剤としては、例えば、タルク、カオリナイト、焼成クレー、バイロフィライト、セリナイト、ウォラストナイトなどの天然珪酸または珪酸塩;沈降性炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどの水酸化物;酸化亜鉛、酸化マグネシウムなどの酸化物;及び、含水珪酸カルシウム、含水珪酸アルミニウム、含水珪酸、無水珪酸などの合成珪酸または珪酸塩などの粉末状フィラー、マイカなどのフレーク状フィラー;塩基性硫酸マグネシウムウィスカー、チタン酸カルシウムウィスカー、ホウ酸アルミニウムウィスカー、セピオライト、PMF(Processed Mineral Filler)、ゾノトライト、チタン酸カリウム、及びエレスタダイトなどの繊維状フィラー;並びに、ガラスバルン、フライアッシュバルンなどのバルン状フィラー等を用いることができる。
一般に、ポリプロピレン用の造核剤として、タルク等の造核効果を示す無機充填剤を用いることもあるが、本発明においては、無機充填剤の含有割合は、0.50質量%以下であることが好ましく、0.30質量%以下であることがより好ましく、0.10質量%以下であることがさらに好ましい。無機充填剤の含有割合が前記上限値を超えると、成形流動性が不充分になることがある。
(製造方法)
ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、前記ポリプロピレン系樹脂と前記リン酸エステル系造核剤と前記酸化防止剤とを混合し、溶融混練する方法が挙げられる。必要に応じて、ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマー、他の有機造核剤、添加剤等をさらに混合してもよい。各成分の添加の順序には制限はない。ただし、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造する際には、MFR(JIS K7210、温度230℃、荷重21.18N)が65〜110g/10分になるように、ポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル系造核剤、酸化防止剤、ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマーを配合する。
溶融混練の方法としては特に制限はなく、例えば、ヘンシェルミキサー、タンブラーミキサー等のミキサーを用いる方法が挙げられる。
混合した後、得られた混合物を溶融混練し、さらにペレット化してもよい。溶融混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ロールミル等を用いることができる。
溶融混練やペッレト化は、前記ポリプロピレン系樹脂の重合装置に連結された溶融混練装置で行ってもよい。
(作用効果)
本態様のポリプロピレン系樹脂組成物では、結晶化度を充分に高めつつ、樹脂の劣化を防止でき、しかも臭気の発生も抑制できる。また、成形サイクルを短縮しても容易に所望の成形品形状にできるハイサイクル性が高く、ヒケ等の成形不良も抑制できる。さらに、リン酸エステル系造核剤を含む本ポリプロピレン系樹脂組成物では、成形品の反りを抑制できる。
(成形品)
本発明の一態様の成形品は、上記ポリプロピレン系樹脂組成物が成形されたものであり、上記ポリプロピレン系樹脂組成物を含有する。成形方法としては、射出成形、押出成形、プレス成形、真空成形等の公知の成形方法を適用できるが、上記ポリプロピレン系樹脂組成物は射出成形に好適である。
上記ポリプロピレン系樹脂組成物は成形流動性に優れるため、薄肉成形品を射出成形によって得る場合でも、樹脂が金型キャビティ内の一部に行き渡らない、いわゆるショートショットと称される成形不良が生じにくい。
また、上記ポリプロピレン系樹脂を射出成形して得る成形品は、表面に凹みが形成されるヒケが発生しにくい。ヒケが発生しにくくなると、成形品の厚みの不均一化を抑制できるため、成形品の割れを防ぐことができる。上記ポリプロピレン系樹脂組成物から得られる成形品は、反りの成形不良も生じにくい。
また、上記ポリプロピレン系樹脂組成物を含有する成形品は、機械的性能が高く、臭気の発生も抑制されている。
上記のような成形品は、例えば、自動車内装材、日用品、電気製品の筐体、食品包装容器等として好適に使用することができる。
以下に、実施例及び比較例を示すが、本発明は以下の実施例に限定されない。
各例における、ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン共重合体(ゴム成分)におけるエチレン単位又はプロピレン単位の含有割合、プロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ポリプロピレンの多分散指数は以下のように測定した。
1)ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン共重合体成分のエチレン単位又はプロピレン単位の含有割合:
ポリプロピレン及びエチレン・プロピレン共重合体成分のエチレン単位又はプロピレン単位の含有割合は、1,2,4−トリクロロベンゼン/重水素化ベンゼンの混合溶媒に溶解した試料について、日本電子社製JNM LA−400(13C共鳴周波数100MHz)を用い、13C−NMR法で測定した。
2)ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度:
ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分は、以下の方法によって得た。
ポリプロピレン系樹脂のサンプル2.5gを、o−キシレン(溶媒)を250ml入れたフラスコに入れ、ホットプレートおよび還流装置を用いて、135℃で、窒素パージを行いながら、30分間撹拌し、樹脂組成物を完全溶解させた後、25℃で1時間、冷却した。これにより得られた溶液を、濾紙を用いて濾過した。濾過後の濾液を100ml採取し、アルミニウムカップ等に移し、窒素パージを行いながら、140℃で蒸発乾固を行い、室温で30分間静置して、キシレン可溶分を得た。
極限粘度は、テトラヒドロナフタレン中、135℃において毛細管自動粘度測定装置(SS−780−H1、柴山科学器械製作所製)を用いて測定した。
3)ポリプロピレン系樹脂組成物のMFR:
ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRは、JIS K7210に準拠して、温度230℃、荷重:21.18Nの条件で測定した。
4)ポリプロピレンの多分散指数:
ポリプロピレンの多分散指数は、溶融樹脂の複素弾性率より求めた。
すなわち、粘弾性測定装置(PaarPhysica社製UDS200)を用い、190℃の温度において、振動数を0.1rad/秒から100rad/秒に増加させて、貯蔵弾性率G’及び損失弾性率G”を測定した。G’=G”のときのクロスオーバー弾性率(単位:Pa)をGcとし、下記式より多分散指数PIを求めた。
PI=10/Gc
(各実施例及び各比較例)
(1)固体触媒成分の調製
特開2011−500907号の実施例に記載の調製法に従い、固体触媒成分を調製した。具体的には以下の通りである:
窒素でパージした500mLの4つ口丸底フラスコ中に、250mLのTiCl4を0℃において導入した。撹拌しながら、10.0gの微細球状MgCl2・1.8C2H5OH(USP−4,399,054の実施例2に記載の方法にしたがって、しかしながら10000rpmに代えて3000rpmで運転して製造した)、及び9.1ミリモルのジエチル−2,3−(ジイソプロピル)スクシネートを加えた。温度を100℃に上昇させ、120分間保持した。次に、撹拌を停止し、固体生成物を沈降させ、上澄み液を吸い出した。次に、以下の操作を2回繰り返した:250mLの新しいTiCl4を加え、混合物を120℃において60分間反応させ、上澄み液を吸い出した。固体を、60℃において無水ヘキサン(6×100mL)で6回洗浄した。
(2)重合および組成物の製造
本発明のポリプロピレン樹脂組成物は、以下の方法で製造した:
上記固体触媒と、トリエチルアルミニウム(TEAL)及びジシクロペンチルジメトキシシラン(DCPMS)を、固体触媒に対するTEALの質量比が18であり、TEAL/DCPMSの質量比が10となるような量で、室温において5分間接触させた。得られた触媒系を、液体プロピレン中において懸濁状態で20℃において5分間保持することによって予備重合を行った。
得られた予備重合物を、1段目の重合反応器に導入してプロピレン単独重合体を得た後、得られた重合体を2段目の重合反応器に導入してエチレン・プロピレン共重合体を重合させた。その際、1段目の重合反応器中のエチレン濃度と水素濃度(ポリプロピレンのエチレン含量とMFR調整の目的で使用)、2段目の重合反応器中のエチレン濃度と水素濃度(エチレン・プロピレン共重合体のエチレン含量とポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度の調整の目的で使用)、1段目と2段目の滞留時間分布(ポリプロピレン系樹脂中の共重合体含有割合の調整の目的で使用)、重合温度、重合圧力を調整することによって、実施例のポリプロピレン系樹脂を得た。
得られたポリプロピレン系樹脂と、他のポリマー(エチレン−オクテン共重合体(デュポン・ダウ社製 EG8407))と、リン酸エステル系造核剤(株式会社ADEKA製アデカスタブNA−11)、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤(BASF社製イルガクリアXT386)、ソルビトール系造核剤(ミリケンジャパン株式会社製Millad 3988)と、酸化防止剤(フェノールリン系酸化防止剤、住友化学株式会社製スミライザーGP)とを、表1〜3に示す配合で混合して混合物を得た。表1〜3には、ポリプロピレンのプロピレン単位含有割合、ポリプロピレン樹脂組成物中のエチレン・プロピレン共重合体(ゴム)の含有割合、エチレン・プロピレン共重合体(ゴム)中のエチレン単位含有割合、ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度、ポリプロピレンの多分散指数、ポリプロピレン系樹脂組成物のMFRも示す。
その後、混合物を、スクリュー温度を180℃、スクリュー回転数300rpmに設定した同方向二軸押出機(神戸製鋼社製KTX−30)を用いて溶融混練し、ペレット化して、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
Figure 2017036356
Figure 2017036356
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<評価>
各実施例及び各比較例について、工場生産性、曲げ弾性率(23℃)、シャルピー衝撃強度(23℃、−20℃)、面衝撃強度(−20℃)、成形流動性、ハイサイクル性、ヒケ防止性、臭気、反りを、下記のように測定又は評価した。これらの結果を表1〜3に示す。
[工場生産性]
ポリプロピレン系樹脂組成物の工場での生産性を下記の基準で評価した。
○:ポリプロピレン系樹脂組成物を支障なく製造できた。
×:ポリプロピレン系樹脂組成物の製造が困難であった。
[曲げ弾性率]
ポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(FANUC(株)社製FANUC ROBOSHOT S2000i 射出成形機)を用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、冷却時間20秒の条件で成形し、幅10.0mm、厚み4.0mm、長さ80mmの測定用試験片を得た。
その測定用試験片を用い、JIS K7171に準拠し、島津製作所製全自動試験機(AG−X10KN)を用い、温度23℃、相対湿度50%、スパン間64mm、曲げ速度2.0mm/分の条件で曲げ弾性率を測定した。曲げ弾性率の値が高い程、剛性に優れる。
[シャルピー衝撃強度]
ポリプロピレン系樹脂組成物を、射出成形機(FANUC(株)社製FANUC ROBOSHOT S2000i 射出成形機)を用い、シリンダー温度200℃、金型温度40℃、平均射出速度200mm/秒、冷却時間20秒の条件で成形し、幅10.0mm、厚み4.0mm、長さ80mmの測定用試験片を得た。
その測定用試験片を用い、JIS K7111−1に準拠し、東洋精機製作所製デジタル衝撃試験機(DG−UB2)を用い、温度23℃、−20℃の各温度条件でシャルピー衝撃強度を測定した。シャルピー衝撃強度の値が高い程、耐衝撃性に優れる。
[面衝撃強度]
パンクチャー衝撃試験機(島津製作所製ハイドロショットHITS−P10)を用い、JIS K7211−2に準拠し、前記試験片の−20℃における面衝撃強度を測定した。面衝撃強度の値が大きい程、耐衝撃性に優れる。
[成形流動性]
成形流動性は、スパイラルフロー流動長により評価した。
スパイラル流動長は、アルキメデススパイラルが形成されたスパイラルフロー金型(流路断面:上辺8mm、下辺10mm×高さ2mmの台形)を取り付けた射出成形機(α−100C(FANUC社製))を用いて測定した。下記成形条件での測定値である。
シリンダー温度:230℃
金型温度:40℃
射出圧力:75MPa
射出速度:10mm/秒
保圧:75MPa(3秒保持)
冷却時間:8秒
[ハイサイクル性]
射出成形機(SE230HY、住友重機(株)製)を用い、シリンダー設定温度250℃、金型温度15℃の条件で、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形し、外径71mm、高さ110mm、厚さ0.5mmの容器を得た。
そして、容器の外観を目視により観察し、下記の基準で評価した。
○:成形品に座屈が見られず、ハイサイクル性が高かった。
×:成形品に座屈が見られ、ハイサイクル性が低かった。
[ヒケ発生防止性]
射出成形機(α100C、(株)ファナック製)を用い、シリンダー設定温度230℃、金型温度40℃の条件で、ポリプロピレン系樹脂組成物を、130mm角で且つ厚さが 2mmの平板に成形し、その平板を試験片とした。その試験片は、試験に供する前に、温度23±2℃、相対湿度50±5%の室内に48時間保管して状態調整した。
試験片を成形した際の成形品を目視により観察し、下記の基準で評価した。
○:ヒケの成形不良が見られない。
×:ヒケの成形不良が見られる。
[臭気]
射出成形機(SE230HY、住友重機(株)製)を用い、シリンダー設定温度250℃、金型温度15℃の条件で、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形し、外径71mm、高さ110mm、厚さ0.5mmの容器を得た。
そして、試験者が容器の臭いを嗅いで臭気を下記の基準で評価した。
○:臭気の発生はない。
△:臭気の発生は極微量。
×:臭気の発生がある。
[円盤の反り量]
射出成形機(α100C、(株)ファナック製)を用い、シリンダー設定温度230℃、金型温度40℃の条件で、ポリプロピレン系樹脂組成物を成形して、直径200mmで厚さが0.5mmの円盤を得た。
そして、円盤の変形量(mm)を測定し、最大の変形量(mm)−最小の変形量(mm)の値を反り量(mm)とした。その反り量は13mm以下であることが好ましく、11mm以下であることがさらに好ましい。
本願請求項1で規定の範囲内の実施例1〜8のポリプロピレン系樹脂組成物は、容易に製造でき、曲げ弾性率、シャルピー衝撃強度、面衝撃強度、成形流動性が高く、ハイサイクル性、ヒケ防止性、反り防止性に優れ、臭気の発生を抑制していた。また、実施例8は、ソルビトール系の造核剤を用いたにもかかわらず、臭気の発生は微量であった。
酸化防止剤を含まない比較例1〜3,15のポリプロピレン系樹脂組成物は、臭気の発生を抑制できなかった。
マトリックスとなるポリプロピレンのプロピレン単位が99.5質量%未満(エチレン0.7質量%含有のランダム共重合体)の比較例4のポリプロピレン系樹脂組成物は、ハイサイクル性が不充分であった。
比較例5においては、エチレン−オクテン共重合体(デュポン・ダウ社製 EG8407)を10質量%超含み、共重合体の合計量のポリプロピレン系樹脂組成物に対する割合を保つためポリプロピレン系樹脂中の共重合体含有量が12質量%であったので、製造が容易でなく実用的ではなかった。
共重合体含有割合が20質量%未満の比較例6のポリプロピレン系樹脂組成物は、反り量が大きかった。
共重合体含有割合が30質量%超の比較例7のポリプロピレン系樹脂組成物は、製造が困難であり、実用的ではなかった。
共重合体中のエチレン単位含有割合が30質量%未満の比較例8のポリプロピレン系樹脂組成物は、製造が困難であり、実用的ではなかった。
共重合体中のエチレン単位含有割合が40質量%超の比較例9のポリプロピレン系樹脂組成物は、面衝撃強度が低かった。
ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度が1.6dl/g未満の比較例10のポリプロピレン系樹脂組成物は、面衝撃強度が低かった。
ポリプロピレン系樹脂のキシレン可溶分の極限粘度が2.2dl/g超の比較例11のポリプロピレン系樹脂組成物は、面衝撃強度が低かった。
MFRが65g/10分未満の比較例12のポリプロピレン系樹脂組成物は、成形流動性、ハイサイクル性及びヒケ防止性が低かった。
MFRが110g/10分超の比較例13のポリプロピレン系樹脂組成物は、製造が困難であり、実用的ではなかった。
リン酸エステル系造核剤含有割合が0.05質量部未満の比較例14のポリプロピレン系樹脂組成物は、成形品の反りを防止できなかった。
トリアミノベンゼン誘導体系造核剤の代わりにソルビトール系造核剤(ミリケンジャパン株式会社製 Millad 3988)を用い、酸化防止剤を添加しなかった比較例15のポリプロピレン系樹脂組成物は、臭気が強かった。

Claims (8)

  1. ポリプロピレン系樹脂とリン酸エステル系造核剤と酸化防止剤とを含有するポリプロピレン系樹脂組成物であって、
    JIS K7210に従い、温度230℃、荷重21.18Nの条件で測定したメルトフローレートが65〜110g/10分であり、
    前記ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン単位が99.5質量%以上のポリプロピレンとエチレン・α−オレフィン共重合体とを含み、エチレン・α−オレフィン共重合体の含有割合が20〜30質量%、キシレン可溶分の、135℃のテトラヒドロナフタレン中での極限粘度が1.6〜2.2dl/g、前記エチレン・α−オレフィン共重合体におけるエチレン単位含有割合が30〜40質量%であり、
    該ポリプロピレン系樹脂組成物における前記ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマーの含有割合が10質量%以下であり、
    前記リン酸エステル系造核剤の含有割合は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.05〜0.30質量部であり、前記酸化防止剤の含有割合は、前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.02〜0.50質量部である、ポリプロピレン系樹脂組成物。
  2. 前記ポリプロピレン系樹脂に含まれるポリプロピレンは、多分散指数が4.5〜10である、請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  3. 前記酸化防止剤として、フェノールリン系酸化防止剤を前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.02〜0.20質量部含有する、請求項1または2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. トリアミノベンゼン誘導体系造核剤、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、ソルビトール系造核剤、カルボン酸金属塩造核剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種をさらに含有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. 前記リン酸エステル系造核剤と併用する他の造核剤として、トリアミノベンゼン誘導体系造核剤を前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.01〜0.10質量部含有する、請求項4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  6. 前記リン酸エステル系造核剤と併用する他の造核剤として、ノニトール系造核剤、キシリトール系造核剤、ソルビトール系造核剤、カルボン酸金属塩造核剤よりなる群から選ばれる少なくとも一種を、それらの合計量として前記ポリプロピレン系樹脂100質量部に対して0.05〜0.30質量部含有する、請求項4に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  7. 前記ポリプロピレン系樹脂以外の他のポリマーが、エチレン系重合体である、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリプロピレン系樹脂組成物を含有する射出成形品。
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