JP4595316B2 - プロピレン系重合体、その重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物、および、その組成物からなる射出成形体 - Google Patents

プロピレン系重合体、その重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物、および、その組成物からなる射出成形体 Download PDF

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Description

本発明は、プロピレン系重合体、その重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物、および、その組成物からなる射出成形体に関するものである。さらに詳細には、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有させ、前記組成物を射出成形体にした場合に、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、ウエルド外観にも優れ、成形体の表面にヒケ(面歪み)が生じにくく射出充填性に優れ、さらに、ブツの発生を抑えることができるプロピレン系重合体、その重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物、および、その組成物からなる射出成形体に関するものである。
ポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性や耐衝撃性等に優れる材料であるため、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体を始めとして、広範な用途に利用されている。
例えば、特開2002−194023号公報には、プロピレン・エチレンブロック共重合体に少量配合することによりポリプロピレン系樹脂組成物の成形外観特性、成形性をバランスよくコントロール出来るランダム系プロピレン重合体として、ダイスウエル比が1.5〜2.5、ゲルパーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定される重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比(Q値:Mw/Mn)が7〜13であるランダム系プロピレン重合体であって、具体的には、1段目でMFRが150g/10分のプロピレン単独重合体を全重量の70重量%を製造し、次いで、1段目の重合体の存在下、プロピレンとエチレンとの混合ガス(エチレン含有量6重量%)を供給し、全重量の30重量%を製造する2段重合法で得られたランダム系プロピレン重合体が記載されており、そして、そのランダム系プロピレン重合体を含有するポリピロピレン系樹脂組成物、および、その樹脂組成物からなる射出成形体が記載されている。
しかし、射出成形体に用いられるポリピロピレン系樹脂組成物には、フローマークの発生を抑えること、即ち、ダイスウェルを高すること、ウエルド外観の改良、成形体の表面にヒケ(面歪み)が発生することを抑え射出充填性を改良すること、さらに、ブツの発生を抑えることについて、さらなる改良が望まれていた。そして、これらを改良するために、射出成形体に用いられるポリピロピレン系樹脂組成物に用いることができるプロピレン系重合体が求められていた。
特開2002−194023号公報
本発明の目的は、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有させ、前記組成物を射出成形体にした場合に、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、ウエルド外観にも優れ、成形体の表面にヒケ(面歪み)が生じにくく射出充填性に優れ、さらに、ブツの発生を抑えることができるプロピレン系重合体、その重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物、および、その組成物からなる射出成形体を提供することにある。
本発明者らは、かかる実状に鑑み、鋭意検討した結果、本発明が上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、
135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Aが5dl/g以上でありエチレン含有量が8〜20重量%未満であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)51〜75重量%と、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Bが1.2dl/g以下であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(B)25〜49重量%とからなるプロピレン系重合体に係るものである。(但し、成分(A)と成分(B)とからなるプロピレン系重合体の全量を100重量%とする。)
また、本発明は、
下記のプロピレン系重合体0.5〜10重量%と、下記のポリプロピレン系樹脂(C)90〜99.5重量%とを含むポリプロピレン系樹脂組成物、および、その樹脂組成物からなる射出成形体に係るものである。(但し、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする。)
〔プロピレン系重合体〕
135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Aが5dl/g以上でありエチレン含有量が8〜20重量%未満であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)51〜75重量%と、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Bが1.2dl/g以下であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(B)25〜49重量%とからなるプロピレン系重合体。(但し、成分(A)と成分(B)とからなるプロピレン系重合体の全量を100重量%とする。)
〔ポリプロピレン系樹脂(C)〕
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体、または、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体とプロピレン重合体の混合物。
本発明によれば、ポリプロピレン系樹脂組成物に含有させ、前記組成物を射出成形体にした場合に、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、ウエルド外観にも優れ、成形体の表面にヒケ(面歪み)が生じにくく射出充填性に優れ、さらに、ブツの発生を抑えることができるプロピレン系重合体、その重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物、および、その組成物からなる射出成形体を得ることができる。
本発明のプロピレン系重合体は、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)と、プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(B)とからなるものである。
本発明のプロピレン系重合体に含まれるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)は、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体である。
成分(A)のエチレン含有量は、8〜20重量%であり、好ましくは10〜15重量%である。エチレン含有量が8重量%未満の場合、フローマークが目立つことを防止する効果が不十分であったり、成形品の表面に発生するヒケ(面歪み)を防止する効果が不十分なことがあり、20重量%を超えた場合、本発明のプロピレン系重合体を用いて成形体を製造した場合に、成形体において、成分(A)の分散が不十分であるために、ブツが多く発生したりすることがある。
成分(A)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Aは5dl/g以上であり、好ましくは6dl/g以上であり、成分(A)の分散性とウエルド外観の観点から、さらに好ましくは6〜15dl/gである。極限粘度[η]Aが5dl/g未満の場合、高いダイスウェルが得られず、フローマークの発生を防止する効果が不充分なことがある。
本発明のプロピレン系重合体に含まれるプロピレン系重合体成分(B)は、プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体であり、具体的には、(1)プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、(2)プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、(3)プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、(4)プロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられる。
プロピレン−エチレンランダム共重合体(2)の場合、エチレン含有量は、通常、0.5〜10重量%であり、好ましくは0.5〜7量%である。
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体(3)で用いられる炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられ、α−オレフィンの含有量は、通常、1〜20重量%であり、好ましくは2〜15重量%である。
成分(B)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Bは1.2dl/g以下であり、好ましくは0.6〜1.2dl/gであり、より好ましくは0.8〜1.1dl/gである。
成分(B)の極限粘度[η]Bが1.2dl/gを超えた場合、本発明のプロピレン系重合体、または、本発明のプロピレン系重合体を含むポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が低下し、流動性が低下することがある。
本発明のプロピレン系重合体に含まれるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)の含量は51〜75重量%であり、好ましくは51〜70重量%である。(すなわち、プロピレン系重合体成分(B)の含量は25〜49重量%であり、好ましくは49〜30重量%である。)但し、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)とプロピレン系重合体成分(B)からなるプロピレン系重合体の全量を100重量%とする。
成分(A)の含量が51重量%未満の場合、成分(A)の分散が不十分であるために、ブツが多く発生したりすることがあったり、高いダイスウェルが得られず、フローマークの発生を防止する効果が不充分なことがある。
成分(A)の含量が75重量%を超えた場合、本発明のプロピレン系重合体、または、本発明のプロピレン系重合体を含むポリプロピレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が低下し、流動性が低下することがある。
本発明のプロピレン系重合体のメルトフローレート(MFR)は、通常、3g/10分以下であり、分散性の観点から、好ましくは0.01〜2g/10分である。
本発明のプロピレン系重合体の製造方法は、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって、プロピレン系重合体を製造する方法が挙げられる。
本発明のプロピレン系重合体の製造に用いられる公知の重合触媒として、好ましくは(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体成分から形成される触媒が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報や特開平10−212319号公報に記載されている製造方法等が挙げられる。
本発明のプロピレン系重合体の製造に用いられる公知の重合方法としては、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重、気相重合等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも良く、また、これらの重合方法を任意に組合せても良い。
より具体的な製造方法としては、前述の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)からなる触媒の存在下に少なくとも2槽からなり直列に配置された重合槽を用いて、1つの重合槽で成分(A)を得た後、得られた成分(A)を次の重合槽に移し、その重合槽でプロピレンを主体とする単量体を重合して成分(B)を得る連続的な重合法等が挙げられる。工業的かつ経済的な観点から、好ましくは連続式の気相重合法である。
上記の重合方法における固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法によって、適宜、決めることができる。
重合温度は、通常、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いても良い。
本発明のプロピレン系重合体の製造において、重合(本重合)を実施する前に、公知の方法によって、予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(a)および有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して、溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法等が挙げられる。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、前述の本発明のプロピレン系重合体と、下記のポロプロピレン系樹脂(C)とを含むものである。
〔ポロプロピレン系樹脂(C)〕
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)、または、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)の混合物。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物で用いられる前述の本発明のプロピレン系重合体の含有量は、0.5〜10重量%であり、ポロプロピレン系樹脂(C)の含有量は90〜99.5重量%である。但し、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする。本発明のプロピレン系重合体の含有量が0.5重量%未満の場合、高いダイスウェルが得られず、フローマークの発生を防止する効果が不充分なことがあり、10重量%を超えた場合、メルトフローレート(MFR)が低下し、流動性が低下することがある。
ポリプロピレン系樹脂(C)が、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)である場合、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)とは、プロピレン重合体部分(これを共重合体(i)の第1セグメントという。)とエチレン−プロピレンランダム共重合体部分(これを共重合体(i)の第2セグメントという。)とからなるエチレン−プロピレンブロック共重合体である。
ポリプロピレン系樹脂(C)が、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)との混合物である場合、プロピレン重合体(ii)とは、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、または、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)としては、それぞれ、必要に応じて、2種類以上のプロピレン−エチレンブロック共重合体、2種類以上のプロピレン重合体を用いてもよい。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)の第1セグメントの極限粘度[η]Pは、ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)や流動性の観点から、1.5dl/g以下が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.5dl/gである。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)の第1セグメントの13C−NMRを用いて測定され、計算されるアイソタクチックペンタッド分率は、剛性や耐熱性等の観点から、通常、0.95以上であり、好ましくは0.97以上である。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)の第2セグメントの極限粘度[η]EPは、成形品にブツが多発することを防止するという観点から、7dl/g以下が好ましい。より好ましくは6dl/g以下であり、さらに好ましくは1.5〜4dl/gである。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)の第2セグメントに含有されるエチレン単位の含量[(C2’)EP]は、耐衝撃性の観点から、20〜70重量%が好ましい。より好ましくは25〜65重量%である。残りはプロピレン単位である。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)の第1セグメントと第2セグメントの割合は、成形品の耐衝撃性、剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは、エチレン−プロピレンランダム共重合体部分である第2セグメントの割合が5〜50重量%(即ち、プロピレン重合体成分である第1セグメントの割合が95〜50重量%)であり、さらに好ましくは、第2セグメントの割合が5〜40重量%(即ち、プロピレン重合体成分(B)の割合が95〜60重量%)である。但し、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)の全量を100重量%とする。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられるプロピレン重合体(ii)の極限粘度[η]Pは、ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)や流動性の観点から、2.0dl/g以下が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.5dl/gである。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられるプロピレン重合体(ii)として、好ましくは、剛性、耐熱性等の観点から、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体であり、さらに好ましくは13C−NMRを用いて測定され、計算されるアイソタクチックペンタッド分率が0.95以上であるプロピレン単独重合体である。
ポリプロピレン系樹脂(C)に用いられる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)の製造方法は、前述の本発明のプロピレン系重合体の製造方法と同様な、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によって製造する方法が挙げられる。
また、ポリプロピレン系樹脂(C)には、必要に応じて、結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)以外の樹脂、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム等を加えても良い。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物として、好ましくは、剛性や耐衝撃性などの機械物性の観点から、前記の本発明のプロピレン系重合体と、前記のポリプロピレン系樹脂(C)と、さらに、プロピレン単独重合体(D)と、エラストマー(E)と、無機充填剤(F)とを含むポリプロピレン系樹脂組成物である。
前記の好ましいポリプロピレン系樹脂組成物に含まれる前記の本発明のプロピレン系重合体の含有量は0.5〜10重量%であり、前記のポリプロピレン系樹脂(C)の含有量は5〜99.2重量%であり、プロピレン単独重合体(D)の含有量は0.1〜20重量%であり、エラストマー(E)の含有量は0.1〜35重量%であり、無機充填剤(F)の含有量は0.1〜30重量%である。但し、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする。
それぞれの含有量として好ましくは、前記の本発明のプロピレン系重合体の含有量として好ましくは0.5〜7.0重量%であり、前記のポリプロピレン系樹脂(C)の含有量として好ましくは30〜90重量%であり、プロピレン単独重合体(D)の含有量として好ましくは5〜20重量%であり、エラストマー(E)の含有量として好ましくは5〜30重量%であり、無機充填剤(F)の含有量として好ましくは5〜25重量%である。
前記の好ましいポリプロピレン樹脂組成物で用いられるプロピレン単独重合体(D)の極限粘度[η]Dとして、好ましくは2dl/g以下である。
前記の好ましいポリプロピレン樹脂組成物で用いられるエラストマー(E)として、好ましくは、ゴム成分を含有するエラストマーであり、例えば、(1)ビニル芳香族化合物含有ゴム、(2)エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム、(3)エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム、または、これらの混合物からなるエラストマー等が挙げられる。
エラストマー(E)に用いられるビニル芳香族化合物含有ゴム(1)としては、例えば、(A)ビニル芳香族化合物重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、または、これらを水添したブロック共重合体、
(B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、または、これらを水添したブロック共重合体等が挙げられる。また、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)にスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させたゴムも挙げられる。そして、ビニル芳香族化合物含有ゴム(1)としては、前記の重合体やゴムを単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
(A)ビニル芳香族化合物重合体ブロックとオレフィン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、または、これらを水添したブロック共重合体としては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)等のブロック共重合体、または、これらを水添したブロック共重合体等が挙げられる。
(B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体、または、これらを水添したブロック共重合体としては、例えば、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体、または、これらを水添したブロック共重合体等が挙げられる。(B)ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体を水添したブロック共重合体において、共役ジエンに由来する構造に含まれる二重結合の水素添加率として、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。
ビニル芳香族化合物含有ゴム(1)のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法によって求められる分子量分布(Q値)として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
ビニル芳香族化合物含有ゴム(1)に含有されるビニル芳香族化合物の含有量として、好ましくは10〜20重量%であり、より好ましくは12〜19重量%である。
ビニル芳香族化合物含有ゴム(1)のメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、230℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
ビニル芳香族化合物含有ゴム(1)の製造方法としては、例えば、オレフィン系共重合体ゴムまたは共役ジエンゴムにビニル芳香族化合物を、重合や反応等によって結合させる方法等が挙げられる。
エラストマー(E)に用いられるエチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム(2)のGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法によって求められる分子量分布(Q値)として、好ましくは2.7以下であり、より好ましくは2.5以下である。
エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム(2)のプロピレン含有量として、好ましくは20〜30重量%であり、より好ましくは22〜28重量%である。
エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム(2)のメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
エラストマー(E)に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(3)のα−オレフィンとしては炭素原子数4〜12のα−オレフィンであり、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン等が挙げられ、好ましくは、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1である。
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(3)としては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムまたはエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムである。また、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(3)を、単独で用いても良く、少なくとも2種類を併用しても良い。
エラストマー(E)に用いられるエチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムのGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法によって求められる分子量分布(Q値)として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
上記のエチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムのオクテン−1含有量として、好ましくは15〜45重量%であり、より好ましくは18〜42重量%である。
上記のエチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
エラストマー(E)に用いられるエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムのGPC法によって求められる分子量分布(Q値)として、好ましくは2.7以下であり、より好ましくは2.5以下である。
上記のエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムのブテン−1含有量として、好ましくは15〜35重量%であり、より好ましくは17〜33重量%である。
上記のエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
上記のエチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム(2)およびエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム(3)の製造方法としては、公知の触媒を用いて、公知の重合方法によって、エチレンとプロピレン、または、エチレンと各種のα−オレフィンを共重合させる製造方法が挙げられる。
公知の触媒としては、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒系、チーグラーナッタ触媒系、またはメタロセン触媒系等が挙げられる。
公知の重合方法としては、例えば、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法、または気相重合法等が挙げられる。
本発明で用いられる無機充填剤(F)とは、通常、剛性を向上させるために用いられるものであり、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、結晶性ケイ酸カルシウム、タルク、硫酸マグネシウム繊維等が挙げられ、好ましくはタルクまたは硫酸マグネシウム繊維である。これらの無機充填剤は、単独で用いても良く、少なくとも2種を併用しても良い。
無機充填剤(F)に用いられるタルクとして、好ましくは含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶構造はパイロフィライト型三層構造であり、タルクはこの構造が積み重なったものである。タルクとして、より好ましくは、含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶を単位層程度にまで微粉砕した平板状のものである。
上記のタルクの平均粒子径として、好ましくは3μm以下である。ここでタルクの平均粒子径とは遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
上記のタルクは無処理のまま使用しても良く、または、ポリプロピレン系樹脂(C)との界面接着性および分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類、または、その他の界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。
無機充填剤(F)に用いられる硫酸マグネシウム繊維は、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長として、好ましくは5〜50μmであり、さらに好ましくは10〜30μmである。また、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径として、好ましくは0.3〜2μmであり、さらに好ましくは0.5〜1μmである。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、成形性、フローマーク発生の抑制、または耐衝撃性の観点から、好ましくは5〜150g/10分であり、より好ましくは10〜120g/10分である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のダイスウェルは、成形体表面に発生するフローマーク抑制の観点から、好ましくは1.5以上である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法としては、本発明のプロピレン系重合体とポリプロピレン系樹脂(C)とを混合する方法が挙げられ、その混合方法としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いて混合する方法等が挙げられる。より具体的には、以下に示す(1)〜(3)の方法等が挙げられる。
(1)本発明のプロピレン系重合体とポリプロピレン系樹脂(C)のそれぞれの重合パウダーを上記混練機を用いて混練する方法。
(2)本発明のプロピレン系重合体とポリプロピレン系樹脂(C)のそれぞれの重合パウダーを、それぞれ個別に一軸または二軸押出機を用いて混練して、それぞれのペレットを製造し、その後、プロピレン系重合体のペレットとポリプロピレン系樹脂(C)のペレットを一軸または二軸押出機を用いて混練する方法。
(3)一軸または二軸押出機を用いて予めペレット化されたプロピレン系重合体を、ポリプロピレン系樹脂(C)の重合パウダーをペレット化する工程において混練機に定量フィーダーを用いて添加し混練する方法。
好ましくは、予め一軸または二軸押出機を用いて混練されたプロピレン系のペレットを用いる上記(2)または(3)の方法である。
また、必要に応じて、一軸または二軸押出機のダイスにスクリーンパックを装着しても良い。装着するスクリーンパックとして、好ましくは金属繊維焼結フィルターであり、例えば「機械設計(1981年3月号第25巻第3号第109〜113頁)」に記載されているものである。
混練温度は、通常、170〜250℃であり、好ましくは190〜240℃である。
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、必要に応じて、各種の添加剤を加えても良い。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。耐熱性、耐候性、耐酸化安定性を向上させるためには、酸化防止剤または紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
これらの添加剤、上記のエラストマー(E)または上記の無機充填剤(F)を配合する方法としては、予め溶融混練されペレット化されたポリプロピレン系樹脂組成物と、これらの添加剤、上記のエラストマー(E)または上記の無機充填剤(F)を混練することによって配合する方法が挙げられる。
また、ポリプロピレン系樹脂組成物をペレット化する時に、本発明のプロピレン系重合体の重合パウダーまたはポリプロピレン系樹脂(C)の重合パウダーと、これらの添加剤、上記のエラストマー(E)または上記の無機充填剤(F)を混練することによって配合する方法が挙げられる。
本発明の射出成形体は、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物からなるものであって、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物を公知の射出成形方法によって成形して得られるものである。射出成形体の用途として、好ましくは自動車用射出成形体であり、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、バンパー等が挙げられる。
以下、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた重合体及び組成物の物性は、以下に示した方法に従って測定した。
(1)極限粘度(単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。
(1−1)ポリプロピレン系樹脂(C)に用いた結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体の極限粘度
(1−1a)プロピレン単独重合体部分(共重合体の第1セグメント)の極限粘度:[η]P
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の極限粘度([η]P)は、その製造時に、第1工程であるプロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]Pを測定して求めた。
(1−1b)エチレン−プロピレンランダム共重合体部分(共重合体の第2セグメント)の極限粘度:[η]EP
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体の第2セグメントであるエチレン−プロピレンランダム共重合体部分の極限粘度([η]EP)は、プロピレン単独重合体部分の極限粘度([η]P)と結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体の極限粘度([η]T)をそれぞれ測定し、エチレン−プロピレンランダム共重合体部分の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。(結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率(X)は、下記(2)の測定方法により求めた。)
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η]T:結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
(1−2)プロピレン単独重合体の極限粘度:[η]P
ポリプロピレン系樹脂(C)またはポリプロピレン系樹脂組成物に用いたプロピレン単独重合体の極限粘度([η]P)は、プロピレン単独重合体を用いて、上記(1)の方法に従って測定した。
(1−3)プロピレン系重合体の極限粘度
(1−3a)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A)の極限粘度:[η]A
プロピレン系重合体の第1セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度([η]A)は、その製造時に、第1工程であるプロピレン−エチレンランダム共重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン−エチレンランダム共重合体を取り出し、取り出されたプロピレン−エチレンランダム共重合体の[η]Aを測定して求めた。
(1−3b)プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体部分(B)の極限粘度:[η]B
プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体部分(B)の極限粘度([η]B)は、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A)の極限粘度([η]A)とプロピレン系重合体全体の極限粘度([η]T)をそれぞれ測定し、プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体部分(B)のプロピレン系重合体全体に対する重量比率(XB)を用いて次式から計算により求めた。(プロピレン系重合体全体に対する重量比率(X)は、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A)とプロピレン系重合体全体それぞれの単位時間あたりの重合量より求めた。)
[η]B=[η]T/XB−(1/XB−1)[η]A
[η]A:プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A)の極限粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン系重合体全体の極限粘度(dl/g)
(2)エチレン−プロピレンランダム共重合体部分の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率:X
エチレン−プロピレンランダム共重合体部分の結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体に対する重量比率(X)はプロピレン単独重合体部分(第1セグメント)と結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体の結晶融解熱量をそれぞれ測定し、次式を用いて計算により求めた。結晶融解熱量は、示唆走査型熱分析(DSC)により測定した。
X=1−(ΔHf)T/(ΔHf)P
(ΔHf)T:ブロック共重合体全体の融解熱量(cal/g)
(ΔHf)P:プロピレン単独重合体部分の融解熱量(cal/g)
(3)ポリプロピレン系樹脂(C)に用いた結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体のエチレン−プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量:(C2')EP
結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体のエチレン−プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量((C2')EP)は、赤外線吸収スペクトル法により結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体全体のエチレン含量((C2')T(重量%))を測定し、次式を用いて計算により求めた。
(C2')EP=(C2')T/X
(C2')T:ブロック共重合体全体のエチレン含量(重量%)
(C2')EP:エチレン−プロピレンランダム共重合体部分のエチレン含量(重量%)
(4)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(A)のエチレン含量(単位:重量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定し求めた。
(5)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定した。
(6)ダイスウェル
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、下記条件で測定した。
測定温度:220℃
L/D:40
せん断速度:2.432×103sec-1
(7)外観評価用射出成形体の製造
下記(8)〜(11)の外観評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って作成した。
射出成形機として、住友重機械工業製 NEOMAT515/150、型締力150トン、金型として、100mm×400mm×3.0mmt、平行2点ゲートを用いて、成形温度200℃で成形を実施し、図1に示した平板成形体を得た。図1において、1及び2は2点ゲート、3はウェルド、4は端面側に発生したフローマークA、5は中央部に発生したフローマークBを表す。
(8)フローマーク外観
前記(7)の方法で作成した平板成形体を用いて、目視によりフローマークを観察した。図1に示したフローマークが発生し始めるゲート端面からの距離(フローマーク発生位置A(端面側の発生位置)、フローマーク発生位置B(中央部の発生位置)、単位:mm)と目立ちの程度を観察した。この場合、フローマーク発生位置が長いほど、また目立ちにくいほど、外観性能が良好であることを示す。
(9)ウエルド外観
前記(7)の方法で作成した平板成形体を用いて、目視によりウエルドを観察した。図1に示したウエルドライン長さを観察した。この場合、ウエルドライン長さが短いほど、外観性能が良好であることを示す。
(10)成形品ブツ外観
前記(7)の方法で作成した平板成形体を用いて、目視によりブツの有無を観察した。
(11)流動末端でのヒケ(面歪み)外観
前記(7)の方法で作成した平板成形体を用いて、目視によりゲートから離れた流動末端の成形品裏面に生じた凹凸程度を観察した。また、成形品裏面に凹凸(ヒケ)がない状態となる保持圧力(必要充填保圧、単位:kg/cmG)を求めた。この場合、必要充填保圧が小さいほど、外観性能が良好であることを示す。
実施例および比較例で用いた重合体の製造に用いた3種類の固体触媒成分(I)、(II)および(III)の合成方法を以下に示した。
(1)固体触媒成分(I)
攪拌機付きの200LSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モル、およびテトラエトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを、反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後5℃で1時間、室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.2Kg/Lになるようにトルエン量を調整した後、105℃で1時間攪拌した。その後、95℃まで冷却し、フタル酸ジイソブチル47.6モル加え、95℃で30分間反応を行った。反応後固液分離し、トルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、フタル酸ジイソブチル3.1モル、n−ジブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン274モルを加え、105℃で3時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン90Lで2回洗浄を行った。スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、n−ジブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、さらにヘキサン70Lで3回洗浄した後減圧乾燥して固体触媒成分11.4Kgを得た。固体触媒成分はチタン原子1.83重量%、フタル酸エステル8.4重量%、エトキシ基0.30重量%、ブトキシ基0.20重量%を含有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(I)と呼ぶ。
(2)固体触媒成分(II)
攪拌機付きの200LSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モル、およびテトラエトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを、反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.6Kg/Lになるようにトルエンを抜出した後、n−ジブチルエーテル8.9モルと四塩化チタン274モルの混合液を加えた後、更にフタル酸クロライドを20.8モル加え110℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃でトルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6Kg/Lに調整した後、フタル酸ジイソブチル3.13モル、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、95℃でトルエン90Lで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6Kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6Kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、さらにヘキサン90Lで3回洗浄した後減圧乾燥して固体触媒成分11.0Kgを得た。固体触媒成分はチタン原紙1.89重量%、マグネシウム原子20重量%、フタル酸エステル8.6重量%、エトキシ基0.05重量%、ブトキシ基0.21重量%を含有し、微粉のない良好な粒子性状を有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(II)と呼ぶ。
(3)固体触媒成分(III)
200リットルの円筒型反応器(直径0.35mの攪拌羽根を3対持つ撹拌機および幅0.05mの邪魔板4枚を備えた直径0.5mのもの)を窒素置換し、ヘキサン 54リットル、ジイソブチルフタレート 100g、テトラエトキシシラン 20.6kg及びテトラブトキシチタン 2.23kgを投入、撹拌した。次に、前記攪拌混合物に、ブチルマグネシウムクロリドのジブチルエーテル溶液(濃度2.1モル/リットル)51リットルを反応器内の温度を7℃に保ちながら4時間かけて滴下した。この時の攪拌回転数は150rpmであった。滴下終了後、20℃で1時間撹拌したあと濾過し、得られた固体について室温下トルエン 70リットルでの洗浄を3回実施し、トルエンを加え、固体触媒成分前駆体スラリーを得た。該固体触媒成分前駆体は、Ti:1.9重量%、OEt(エトキシ基):35.6重量%、OBu(ブトキシ基):3.5重量%を含有していた。その平均粒径は39μmであり、16μm以下の微粉成分量は0.5重量%であった。次いでスラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、80℃で1時間攪拌し、その後、スラリーを40℃以下となるように冷却し、攪拌下、テトラクロロチタン 30リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入、さらにオルトフタル酸クロライド 4.23kgを投入した。反応器内の温度を110℃として3時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を3回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgと、ジイソブチルフタレート 0.87kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を2回実施した。トルエンを加え、スラリーとし、静置後、スラリーの体積が49.7リットルとなるようにトルエンを抜き出し、攪拌下、テトラクロロチタン 15リットルと、ジブチルエーテル 1.16kgとの混合液を投入した。反応器内の温度を105℃として1時間攪拌した後、濾過し、得られた固体について95℃にてトルエン 90リットルでの洗浄を3回、ヘキサン 90リットルでの洗浄を2回実施した。得られた固体成分を乾燥し、固体触媒成分を得た。該固体触媒成分は、Ti:2.1重量%、フタル酸エステル成分:10.8重量%を含有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(III)と呼ぶ。
〔重合体の重合〕
(1)プロピレン単独重合体(HPP)の重合
(1−1)HPP−1の重合
(1−1a)予備重合
SUS製3L攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水,脱気したヘキサンにトリエチルアルミニウム(以下TEAと略す)25mmol/L、電子供与体成分としてシクロヘキシルエチルジメトキシシラン(以下CHEDMSと略す)をCHEDMS/TEA=0.1(mol/mol)および固体触媒成分(I)を15g/Lを添加し、15℃以下の温度を保持しながらプロピレンを固体触媒当たり2.5g/gに達するまで連続的に供給し予備重合を実施した。得られた予備重合体スラリーは120LのSUS製攪拌機付きの希釈槽へ移送し充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し10℃以下の温度で保存した。
(1−1b)本重合
内容積1m3の攪拌機付き流動床反応器において、重合温度80℃、重合圧力1.8MPa−G、気相部の水素濃度を対プロピレン比で21.5vol%を保持するようにプロピレンと水素を供給し、TEAを33mmol/h、CHEDMSを3.3mmol/hおよび(1−1a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.24g/hを連続的に供給して連続の気相重合を行い、19.6Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]Pは0.70dl/gであった。
(1−2)HPP−2の重合
(1−2a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(III)とし、電子供与体化合物をt-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン(以下tBunPrDMSと略す。)とした以外は、HPP−1と同様の方法で実施した。
(1−2b)本重合
本重合における電子供与体化合物をtBunPrDMSとし、気相部の水素濃度と固体触媒成分の供給量を、表1に示した重合体が得られるように調整した以外はHPP−1と同様の方法で実施した。得られた重合体の分析結果を表1に示した。
(1−3)HPP−3の重合
気相部の水素濃度と固体触媒成分の供給量を、表1に示した重合体が得られるように調整した以外はHPP−1と同様の方法で実施した。得られた重合体の分析結果を表1に示した。
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(BCPP)の重合
(2−1)BCPP−1の重合
(2−1a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(III)とし、電子供与体化合物をt-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン(以下tBunPrDMSと略す。)とした以外は、HPP−1と同様の方法で実施した。
(2−1b)本重合
内容積1m3の攪拌機付き流動床気相反応器を2槽直列に配置し、第1槽目においてプロピレン重合体部分を重合後、生成ポリマーを失活することなく第2槽目に移送し、第2槽目においてプロピレン−エチレン共重合体部分を連続的に気相重合する方法で実施した。前段第1槽目において、重合温度80℃、重合圧力1.8MPa-G、気相部の水素濃度を対プロピレン比で18.8vol%を保持するようにプロピレンおよび水素を供給した条件下、TEAを43mmol/h、tBunPrDMSを6.8mmol/hおよび(2−1a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.13g/h供給し連続重合を行い、15.3Kg/hのポリマーが得られ、ポリマーの極限粘度[η]Pは0.79dl/gであった。排出された生成ポリマーは失活することなく後段第2槽目に連続的に供給した。後段第2層目は重合温度65℃、重合圧力1.4MPa-G、気相部の水素濃度を対モノマー(プロピレ+エチレン)比で9.8vol%、エチレン濃度を対プロピレン比で50vol%を保持するようにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した条件下で連続重合を継続し、22.1Kg/hのポリマーが得られた。得られたポリマーの極限粘度[η]Tは1.12dl/gであり、後段部での重合体含量(EP含量)は31重量%であったので、後段部(EP部)で生成したポリマーの極限粘度[η]EPは1.9dl/gであった。又、EP部でのエチレン含量は41重量%であった。
(2−2)BCPP−2〜BCPP−4の重合
気相部の水素濃度とエチレン濃度、及び、固体触媒成分の供給量を、表1に示した重合体が得られるように調整した以外は、BCPP−1と同様の方法で実施し、表1に示した重合体を得た。得られた重合体の分析結果を表1に示した。
表1に示した[η]P、[η]EP、EP中のエチレン含量及びEP含量は、それぞれ、上述の重合により得られたプロピレン単独重合体(HPP−1〜HPP−3)およびプロピレン−エチレンブロック共重合体(BCPP−1〜BCPP−4)のパウダーの分析値である。
(3)プロピレン系重合体(HMS)の製造
(3−1)HMS―1の製造
(3−1a)予備重合
SUS製3L攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水,脱気したヘキサンにトリエチルアルミニウム(以下TEAと略す)35mmol/L、電子供与体成分としてt-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン(以下tBunPrDMSと略す。)をtBunPrDMS/TEA=0.15(mol/mol)および固体触媒成分(I)を14.7g/Lを添加し、15℃以下の温度を保持しながらプロピレンを固体触媒当たり1.0g/gに達するまで連続的に供給し予備重合を実施した。得られた予備重合体スラリーは120LSUS製攪拌機付きの希釈槽へ移送し充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し10℃以下の温度で保存した。
(3−2b)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持するように液化プロピレンを45Kg/h供給し、更に気相部のエチレン濃度を対プロピレン比でを2.7vol%を保持するようにエチレンを供給し、TEAを2.6mmol/h、tBunPrDMSを0.4mmol/hおよび上記(3−9a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.1g/h供給し、実質的に水素の不存在下でプロピレン−エチレンの連続共重合を行い、1.2Kg/hの重合体を得た。得られた重合体は失活することなく第2槽目に連続的に移送した。第2槽目は内容積1m3のSUS製攪拌機付き流動床気相反応器において、重合温度65℃、重合圧力1.8MPa−Gおよび気相部のエチレン濃度を対プロピレン比で7.4vol%を保持するように、プロピレンとエチレンを連続的に供給し、水素の実質的に不存在下で第1槽目より移送された固体触媒成分含有重合体で連続気相重合を継続し、13.54Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーがプロピレン―エチレンランダム共重合体成分(A)に相当し、その極限粘度[η]Aは12.1dl/gであり、エチレン含量は11.6重量%であった。次いで、得られた重合体は失活することなく第3槽目に連続的に移送した。第3槽目は内容積1m3のSUS製攪拌機付き気相流動床反応器において、重合温度75℃、重合圧力1.4MPa−Gおよび気相部の水素濃度を対プロピレ比で18vol%に保持するようにプロピレンおよび水素を連続的に供給し、第2槽目より供給された固体触媒成分を含有する重合体でプロピレンの連続気相重合を継続する事により26.5Kg/hの重合体を得た。得られた重合体がHMS−1であり、本願のプロピレン系重合体に相当し、その重合体の極限粘度[η]は6.6dl/gであった。以上の結果から、第1槽目+第2槽目の重合量と第3槽目の重合体比は51:49であり、第3槽目で重合された重合体の極限粘度[η]は0.93dl/gと求められた。分析結果を表2に示した。
(3−2)HMS―2の製造
(3−2a)予備重合
SUS製3L攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水,脱気したヘキサンにトリエチルアルミニウム(以下TEAと略す)20mmol/L、電子供与体成分としてt-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン(以下tBunPrDMSと略す。)をtBunPrDMS/TEA=0.05(mol/mol)および固体触媒成分(II)を5.04g/Lを添加し、15℃以下の温度を保持しながらプロピレンを固体触媒当たり2.5g/gに達するまで連続的に供給し予備重合を実施した。得られた予備重合体スラリーは120LのSUS製攪拌機付きの希釈槽へ移送し充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し10℃以下の温度で保存した。
(3−2b)本重合
内容積1m3の攪拌機付き流動床気相反応器を2槽直列に配置し、連続的に気相重合する方法で実施した。前段第1槽目において、重合温度65℃、重合圧力1.8MPa−G、実質的に水素の不存在下でエチレン濃度を対プロピレ比で5.0vol%を保持するようにプロピレンとエチレンを連続的に供給した条件下にTEAを1.6mmol/h、tBunPrDMSを0.08mmol/hおよび(2−1a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として0.41g/h供給し連続重合を行い、8.8Kg/hの重合体が得られた。得られたポリマーがプロピレン―エチレンランダム共重合体成分(A)に相当し、その極限粘度[η]Aは10.3dl/gであり、エチレン含量は10.6重量%であった。次いで、得られた重合体は失活することなく後段第2槽目に連続的に供給した。後段第2層目は重合温度80℃、重合圧力1.4MPa−Gおよび気相部の水素濃度を対プロピレ比で15.2vol%に保持するようにプロピレンおよび水素を連続的に供給した条件下に、第1槽目より供給された固体触媒成分を含有する重合体でプロピレンの連続気相重合を継続する事により13.5Kg/hの重合体を得た。得られた重合体がHMS−2であり、本願のプロピレン系重合体に相当し、その重合体の極限粘度[η]は7.0dl/gであった。以上の結果から、第1槽目の重合量と第3槽目の重合体比は65:35であり、第2槽目で重合された重合体の極限粘度[η]は0.91dl/gと求められた。
(3−3)HMS−3の重合
本重合における、第1槽目、第2槽目の気相部のエチレン濃度および固体触媒成分の供給量および第3槽目の気相部水素濃度を変更した以外はHMS−1と同様の方法で実施し、HMS−3を得た。第2槽目までに生成した重合体がプロピレン―エチレンランダム共重合体成分(A)に相当し、その極限粘度[η]は7.8dl/g、エチレン含量は2.8重量%であり、第1槽目+第2槽目の重合量と第3槽目の重合量の比は72:28で有り、第3槽目で重合された重合体の極限粘度0.9dl/gである重合体を得た。
表2に示したMFRは、得られた重合体を20mmφ単軸押し出し機(220℃、スクリーンパック:100メッシュ)を用いてパウダー100重量部に、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加し造粒したペレットMFRである。また表2に示したブツ数は上記ペレットをTダイ押し出し機を用いて加工したフィルムのブツ数である。
実施例1
プロピレン単独重合体パウダー(HPP−1)12重量%とプロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP―1)82重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加しドライブレンドした後、40mmφ単軸押し出し機(220℃)で造粒し、ポリプロピレン系樹脂(C1)を作成した。
このポリプロピレン系樹脂(C1)69重量%、プロピレン系重合体(HMS―1)ペレット2.0重量%、エラストマー(E)としてエチレン−ブテン−1ランダム共重合体(三井化学社製、商品名:タフマーA4050)12重量%、無機充填材(F)として平均粒子径2.7μmのタルク(林化成社製、商品名:MWHST)17重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(C1)に用いた安定剤と同じ安定剤を同じ配合量で添加し、顔料マスターバッチ(大日精化社製、商品名:PPM8Q3461)2.0重量部を添加しタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(テクノベル社製KZW31−30)を用いて、230℃、スクリュー回転数を300rpmで混練押出して、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。
表3に各成分の配合割合と造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク外観及び成形性の指標として必要充填保圧の評価結果を示した。
実施例2
ポリプロピレン系樹脂(C1)の替わりにポリプロピレン系樹脂(C2)を用いた以外は表3に示した各成分の配合割合で、実施例1と同様の方法でドライブレンドした後、造粒してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。MFR、ダイスウェル、フローマーク外観及び成形性の指標として必要充填保圧の評価結果を表3に示した。
ポリプロピレン系樹脂(C2)はプロピレン単独重合体パウダー(HPP−1)7重量%とプロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP―2)93重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(C1)に用いた安定剤と同じ安定剤を同じ配合量で添加し、同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得た。
比較例1〜2
プロピレン系重合体(HMS―1)の替わりにプロピレン系重合体(HMS―3)を用い、表3に示した各成分の配合割合とした以外は、実施例1または実施例2と同様の方法でドライブレンドした後、造粒してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。MFR、ダイスウェル、フローマーク外観及び成形性の指標として必要充填保圧の評価結果を表3に示した。
実施例3
ポリプロピレン系樹脂(C3)72.5重量%、プロピレン系重合体(HMS―1)ペレット2.5重量%、プロピレン単独重合体(HPP−3)5重量%、エラストマー(E)としてエチレン−ブテン−1ランダム共重合体(三井化学社製、商品名:タフマーA4050)10重量%、無機充填材(H)として平均粒子径2.5μmのタルク(林化成社製、商品名:MWHST)10重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(C1)に用いた安定剤と同じ安定剤を同じ配合量で添加し、顔料マスターバッチ(大日精化社製、商品名:PPM8Q3461)2.0重量部を添加しタンブラーで均一に予備混合した後、40mmφ単軸押し出し機(220℃、ダルメージタイプスクリュー、スクリーンパック:日本精線製金属繊維焼結フィルターNF15N)を用いて混練押出して、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。
ポリプロピレン系樹脂(C3)はプロピレン単独重合体パウダー(HPP−1)23重量%とプロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP―3)70重量%及び、エチレン−プロピレン共重合体(三井化学社製、商品名:タフマーS4030)7重量%、からなる樹脂組成物100重量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(C1)に用いた安定剤と同じ安定剤を同じ配合量で添加し、同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得た。
表4に各成分の配合割合と造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク外観及びウエルドライン長さ、成形性の指標として成形品のヒケレベルの評価結果を示した。
実施例4
プロピレン系重合体(HMS―1)に替わりにプロピレン系重合体(HMS―2)を用い、表4に示した各成分の配合割合とした以外は、実施例3と同様の方法でドライブレンドした後、造粒してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。表4にMFR、ダイスウェル、フローマーク外観及びウエルドライン長さ、成形性の指標として成形品のヒケレベルの評価結果を示した。
実施例5
ポリプロピレン系樹脂(C1)の替わりにポリプロピレン系樹脂(C4)を用いた以外は、表4に示した各成分の配合割合で、実施例3と同様の方法でドライブレンドした後、造粒してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。表4にMFR、ダイスウェル、フローマーク外観及びウエルドライン長さ、成形性の指標として成形品のヒケレベルの評価結果を示した。
ポリプロピレン系樹脂(C4)はプロピレン単独重合体パウダー(HPP−2)20重量%とプロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP―4)80重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、ポリプロピレン系樹脂(C1)に用いた安定剤と同じ安定剤を同じ配合量で添加し、同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得た。
比較例3
プロピレン系重合体(HMS―1)の替わりにプロピレン系重合体(HMS―3)を用いた以外は、表4に示した各成分の配合割合で、実施例3と同様の方法でドライブレンドした後、造粒してポリプロピレン系樹脂組成物を得た。MFR、ダイスウェル、フローマーク外観及びウエルドライン長さ、成形性の指標として成形品のヒケレベルの評価結果を表4に示した。
Figure 0004595316
Figure 0004595316
Figure 0004595316
*1)フローマークの目視による目立ち易さ
○:フローマークが目立たなかった。
△:フローマークがやや目立った。
×:フローマークが目立った。
Figure 0004595316
*1)フローマークの目立ち易さ
◎:フローマークがほとんどなかった。
○:フローマークが目立たなかった。
△:フローマークがやや目立った。
×:フローマークが目立った。
*2)成形品裏面の凹凸程度
○:ほとんどヒケがなかった。
△:流動末端にややヒケがあった。
×:ほぼ全面にヒケがあった。
*3)成形品ブツ外観目視
○:ブツの存在は確認されなかった。
×:ブツの存在が確認された。
本発明の要件を満足する実施例1〜5は、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、フローマークとウエルド外観のバランスにも優れ、かつ成形品表面にヒケ(面歪み)が生じにくく射出充填性に優れ、ブツの発生が少なく外観に優れたものであることが分かる。
これに対して、比較例1〜3はプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)のエチレン含有量が本発明の要件を満足しないため、フローマークの目立ちを防止する効果と成形品表面のヒケ(面歪み)を防止する効果が不十分であることが分かる。
外観を評価するための平板成形体の平面図を示す。
符号の説明
1 ゲート1
2 ゲート2
3 ウエルド
4 フローマークA
5 フローマークB

Claims (2)

  1. 下記のプロピレン系重合体0.5〜10重量%と、下記のポリプロピレン系樹脂(C)90〜99.5重量%とを含むポリプロピレン系樹脂組成物。(但し、ポリプロピレン系樹脂組成物の全量を100重量%とする。)
    〔プロピレン系重合体〕
    135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Aが5dl/g以上でありエチレン含有量が10〜20重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(A)51〜75重量%と、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Bが1.2dl/g以下であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(B)25〜49重量%とからなるプロピレン系重合体。(但し、成分(A)と成分(B)とからなるプロピレン系重合体の全量を100重量%とする。)
    〔ポリプロピレン系樹脂(C)〕
    135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Pが1.5dl/g以下であるプロピレン重合体成分と135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]EPが7dl/g以下でありエチレン含有量が2〜44重量%であるエチレン−プロピレンランダム共重合体成分からなる結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体、
    または、前記結晶性エチレン−プロピレンブロック共重合体とプロピレン単独重合体の混合物。
  2. 請求項1に記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなる射出成形体。
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