JP4019748B2 - ポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法及びそれからなる射出成形体 - Google Patents

ポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法及びそれからなる射出成形体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法及びそれからなる射出成形体に関するものである。さらに詳細には、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、ブツの発生が少ない等の外観に優れ、かつ剛性と靭性のバランスに優れるポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法及びそれからなる射出成形体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレン系樹脂組成物は、剛性や耐衝撃性等に優れる材料であり、自動車内外装材や電気部品箱体等の成形体として、広範な用途に利用されている。そのポリプロピレン系樹脂組成物の中でも、プロピレン−エチレンブロック共重合体からなるポリプロピレン系樹脂組成物、例えば、プロピレン−エチレンブロック共重合体とプロピレン単独重合体、または、異なる2種類以上のプロピレン−エチレンブロック共重合体からなるポリプロピレン系樹脂組成物が、剛性や耐衝撃性等に優れ、好適に使用されることは、従来から良く知られている。
【0003】
例えば、特開平7−157626号公報には、多段重合により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体とポリオレフイン系ゴムとを含む熱可塑性樹脂組成物が記載されている。プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合相のエチレン含有量が5〜50重量%であり、その共重合相の極限粘度が4.0〜8.0dl/gであるプロピレン−エチレンブロック共重合体とエチレン含有量が50重量%を超え98重量%以下であり、極限粘度が2.0dl/g以上4.0dl/g未満であるプロピレン−エチレンブロック共重合体からなるものが用いられており、そして、極めて延性の大きい熱可塑性樹脂組成物が得られることが記載されている。
【0004】
特開平7−157627号公報には、多段重合により得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体とポリオレフイン系ゴムとを含む熱可塑性樹脂組成物が記載されている。プロピレン−エチレンブロック共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合相の極限粘度が4.0〜8.0dl/gであるブロック共重合体と極限粘度が2.0dl/g以上4.0dl/g未満であるブロック共重合体(但し、プロピレン−エチレンランダム共重合相の極限粘度が4.0〜8.0dl/gであり、その共重合相のエチレン含有量が5〜50重量%であるプロピレン−エチレンブロック共重合体、および、極限粘度が2.0dl/g以上4.0dl/g未満であり、エチレン含有量が50重量%を超え98重量%以下であるプロピレン−エチレンブロック共重合体を除く)からなるものが用いられており、そして、極めて延性の大きい熱可塑性樹脂組成物が得られることが記載されている。
【0005】
また、特開平7−233305号公報には、ポリプロピレン、無機フイラー、炭素数が15〜20で構成される脂肪酸と亜鉛の金属石鹸からなる向上したメルトインデックスを有するポリプロピレン樹脂組成物が記載されている。ポリプロピレンとしては、プロピレンとエチレンの共重合部の[η]が2〜6dl/gである共重合部と7〜15dl/gである共重合部を含むブロック共重合体が記載され、好ましい態様としては、少なくとも2種類のブロック共重合体からなるものが記載されている。そして、衝撃強さ、剛性、耐熱性等の低下が実用上問題無く、流動性を改良し、薄肉化された成形品を製造するに適し、ペレット化による黄、ピンクヘの変色、金型の表面、射出成形品表面への浮き出し物が少ないポリプロピレン樹脂組成物が得られることが記載されている。
【0006】
ところで、近年、剛性や耐衝撃性等に優れることから好適に使用されるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、製造工程が簡便であり、低価格で製造できる連続式の気相法により製造されるようになってきた。ところが、一般に、気相法で製造されるプロピレン−エチレンブロック共重合体は、そのプロピレン−エチレンランダム共重合部分の極限粘度を高く設定すると、ブツが発生し、成形体の外観が悪くなるという問題を有している。
【0007】
このような外観の問題を解決する方法としては、例えば、特開平7−286075号公報には、連続重合法で製造された23℃n−デカン可溶成分含有量が0〜15重量%未満であり、かつこの23℃n−デカン可溶成分が、エチレンから誘導される構成単位を30〜60モル%の量で含有し、極限粘度[η]が3〜7dl/gであるプロピレン重合体とバッチ式溶媒重合法又は連続式溶媒重合法で製造された23℃n−デカン可溶成分含有量が15〜40重量%であり、かつこの23℃n−デカン可溶成分が、エチレンから誘導される構成単位を30〜60モル%の量で含有し、極限粘度[η]が5〜12dl/gであるプロピレンブロック共重合体からなるプロピレン重合体組成物が記載されており、剛性及び耐衝撃性に優れ、外観にブツを発生することなく成形物を形成することができるようなプロピレン重合体組成物が得られることが記載されているが、ブツの発生については、さらなる改良が望まれていた。
【0008】
一方、WO98/54233号公報には、極限粘度[η]が9〜13dl/gの高分子量ポリプロピレン含有量が15〜30重量%であり、Mw/Mnで示される分子量分布が20以上で、かつMz/Mwで示される分子量分布が7以上であり、射出成形品を成形した場合、この射出成形品の表面に形成されるスキン層の厚みが300μm以上であるポリプロピレン樹脂組成物が記載されており、軽量で、剛性および耐熱性が著しく高く、かつ成形時の流動性もよく加工性に優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供できることが記載されている。
【0009】
しかし、射出成形品の表面に形成されるスキン層の厚みが増加すると、破断伸度(引っ張り伸び)、即ち、靭性が低下することが、例えば、PlasticsAge、5月号、1980年、第93頁、図2.27に記載されており、上記WO98/54233号公報に記載されているポリプロピレン樹脂組成物については、剛性と靭性のバランスの改良が望まれていた。
【0010】
また、特開2000−226478号公報には、極限粘度[η]が6〜11dl/gの高分子量ポリプロピレンと極限粘度[η]が0.6〜1.6dl/gの低分子量ポリプロピレンとを含み、Mw/Mnで示される分子量分布が8以上であるポリプロピレン樹脂組成物が記載され、軽量で、剛性および耐熱性が著しく高く、しかも耐傷付性に優れ、かつ成形時の流動性もよく、成形時に割れが発生しない成形性に優れたポリプロピレン樹脂組成物を提供できることが記載されている。しかし、上記特開2000−226478号公報の実施例に記載されているポリプロピレン樹脂組成物の破断点伸びは8〜16%であり、剛性と靭性のバランスの改良が望まれていた。
【0011】
上述したとおり、成形体にした場合に、成形体の表面にフローマークが発生しにくく、即ち、ダイスウェルが高く、かつブツの発生も実用上問題がないほどに優れた外観特性を有し、かつ剛性と靭性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物の開発が望まれていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、ブツの発生が少ない等の外観に優れ、かつ剛性と靭性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる射出成形体を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、かかる実状に鑑み、鋭意検討した結果、極限粘度が5dl/g以上であり、融解ピーク温度が特定の範囲であり、含有量が一定範囲であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分と、極限粘度が5dl/g未満であり、含有量が一定範囲であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分からなるポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる射出成形体が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、
135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A1が5dl/g以上であり、示差走査熱量計によって測定される融解ピーク温度TmA1が130〜160℃であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(A1)0.5〜10重量%と135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A2が5dl/g未満であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(A2)90〜99.5重量%からなることを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物、その製造方法およびそれからなる射出成形体に係るものである。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるプロピレン系重合体成分(A1)は、プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体であり、例えば、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、プロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体等が挙げられ、好ましくはプロピレン−エチレンランダム共重合体である。
【0016】
プロピレン−エチレンランダム共重合体のエチレン含有量は、通常、0.5〜8重量%であり、好ましくは1〜7重量%である。
【0017】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体で用いられる炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしては、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1、デセン−1等が挙げられ、好ましくはブテン−1である。
α−オレフィンの含有量は、通常、1〜20重量%であり、好ましくは2〜15重量%である。
【0018】
プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体としては、例えば、プロピレン−ブテン−1ランダム共重合体、プロピレン−ヘキセン−1ランダム共重合体等が挙げられ、好ましくはプロピレン−ブテン−1ランダム共重合体である。
【0019】
本発明で用いられるプロピレン系重合体成分(A1)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A1は5dl/g以上であり、好ましくは6dl/g以上であり、成分(A1)の分散性の観点から、さらに好ましくは6〜9dl/gである。極限粘度[η]A1が5dl/g未満の場合、高いダイスウェルが得られず、フローマークの発生防止が不充分である場合がある。
【0020】
本発明で用いられるプロピレン系重合体成分(A1)の示差走査熱量計によって測定される昇温サーモグラムの融解ピーク温度TmA1は130〜160℃であり、好ましくは135〜155℃である。TmA1が130℃未満の場合、高い剛性が得られないことがあり、160℃を超えた場合、十分な引っ張り伸び特性が得られなかったり、成分(A1)の分散が不十分であるために、ブツが多く発生したりすることがある。
【0021】
本発明で用いられるプロピレン系重合体成分(A2)は、プロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体であり、具体的には、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、前述のプロピレン系重合体成分(A1)と同様な共重合組成範囲のプロピレンとエチレンを共重合して得られるプロピレン−エチレンランダム共重合体及びプロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、並びにプロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられ、炭素原子数4〜12のα−オレフィンとしても、前述と同様のものが挙げられる。本発明で用いられるプロピレン系重合体成分(A2)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A2は5dl/g未満であり、好ましくは0.7dl/g以上5dl/g未満であり、より好ましくは0.9〜4dl/gである。
【0022】
本発明で用いられるプロピレン系重合体成分(A1)の含量は0.5〜10重量%であり、好ましくは1〜7重量%である。なお、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン系重合体成分(A2)の合計含量を100重量%とする。
【0023】
プロピレン系重合体成分(A1)の含量が0.5重量%未満の場合、高いダイスウェルが得られず、フローマークの発生防止が不充分である場合があり、プロピレン系重合体成分(A1)の含量が10重量%を超えた場合、ポリプロピレン樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が低下し、流動性が低下することがある。
【0024】
本発明で用いられるプロピレン系重合体成分(A2)としては、本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の剛性と靭性のバランスの観点から、好ましくは、極限粘度[η]BPが1.5dl/g以下であるプロピレン重合体成分(B)と極限粘度[η]CEPが8dl/g以下でありエチレン含有量が20〜70重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)からなり、極限粘度[η]A2が5dl/g未満である組成物(A2−1)、プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)又は前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)との混合物(iii)から選ばれた、極限粘度[η]BPが1.5dl/g以下であるプロピレン重合体成分(B)と極限粘度[η]CEPが8dl/g以下でありエチレン含有量が20〜70重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)から構成され、極限粘度[η]A2が5dl/g未満であるポリプロピレン系樹脂(組成物(A2−2))、またはプロピレン重合体(ii)およびポリプロピレン系樹脂(D)からなり、極限粘度[η]A2が5dl/g未満である組成物(A2−3)である。
【0025】
▲1▼組成物(A2−1)の説明
組成物(A2−1)は、プロピレン重合体成分(B)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)からなり、極限粘度[η]A2が5dl/g未満の組成物である。
組成物(A2−1)に用いられるプロピレン重合体成分(B)とは、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、または、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である。炭素原子数4〜12のα−オレフィンおよびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体として、具体的には、前述のものが挙げられる。
【0026】
(A2−1)に用いられるプロピレン重合体成分(B)の極限粘度[η]B Pは、ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)や流動性の観点から、1.5dl/g以下が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.5dl/gである。
【0027】
(A2−1)に用いられるプロピレン重合体成分(B)の13C−NMRを用いて測定され、計算されるアイソタクチックペンタッド分率としては、剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.97以上である。
【0028】
(A2−1)に用いられるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)に含有されるエチレンの含量[(C2’)EP]は、耐衝撃性の観点から、20〜70重量%が好ましく、より好ましくは25〜65重量%である。
【0029】
(A2−1)に用いられるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の極限粘度[η]C EPは、成形品にブツが多発することを防止するという観点から、8dl/g以下が好ましく、より好ましくは6dl/g以下、さらに好ましくは1.5〜5dl/g、最も好ましくは1.5〜4dl/gである。
【0030】
上記のブツとは、ポリプロピレン系樹脂組成物においてプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の分散性が悪いために生じる、主にプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)からなる塊状物であり、その大きさは100〜数百μm程度のものである。ブツが多く存在する材料を使用して射出成形等で成形品にした場合、その成形品表面の外観を損なうだけでなく耐衝撃性能等の機械物性にも悪影響を及ぼすことがある。
【0031】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物における組成物(A2−1)の配合割合は、90〜99.5重量%である。すなわち、成分(A1)の配合割合が0.5〜10重量%であり、成分(A1)と(A2−1)の合計量が100重量%である。
【0032】
組成物(A2−1)におけるプロピレン重合体成分(B)およびプロピレン−エチレンランダム重合体成分(C)の配合割合は、それぞれ、好ましくは50〜94.5重量%および5〜40重量%であり、さらに好ましくは、それぞれ、60〜94.5重量%および5〜30重量%である。ここで成分(A1)、成分(B)及び成分(C)成分の合計量が100重量%である。
【0033】
ポリプロピレン系樹脂(組成物(A2−2))の説明
ポリプロピレン系樹脂は、プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)または前記プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)との混合物(iii)であり、極限粘度[η]A2が5dl/g未満の組成物である。
【0034】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)がプロピレン−エチレンブロック共重合体(i)である場合、プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)とは、プロピレン重合体部分(これを共重合体(i)の第1セグメントという。)とプロピレン−エチレンランダム共重合体部分(これを共重合体(i)の第2セグメントという。)とからなるプロピレン−エチレンブロック共重合体である。
【0035】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)がプロピレン−エチレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)との混合物(iii)である場合、プロピレン重合体(ii)とは、プロピレンを単独重合して得られるプロピレン単独重合体、または、プロピレンと炭素原子数4〜12のα−オレフィンを共重合して得られるプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体である。炭素原子数4〜12のα−オレフィンおよびプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体として、具体的には、前述のものが挙げられる。
【0036】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)が混合物(iii)である場合、ポリプロピレン系樹脂(A2−2)のプロピレン重合体成分(B)とは、プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)の第1セグメントであるプロピレン重合体部分とプロピレン重合体(ii)の両方を指し、ポリプロピレン系樹脂(A2−2)のプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)とは、プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)の第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分を指す。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)に用いられるプロピレン−エチレンブロック共重合体(i)とプロピレン重合体(ii)としては、それぞれ、必要に応じて、2種類以上のプロピレン−エチレンブロック共重合体、2種類以上のプロピレン重合体を用いてもよい。
【0038】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)を構成するプロピレン重合体成分(B)の極限粘度[η]BPは、ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)や流動性の観点から、1.5dl/g以下が好ましく、さらに好ましくは0.7〜1.5dl/gである。
【0039】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)を構成するプロピレン重合体成分(B)の13C−NMRを用いて測定され、計算されるアイソタクチックペンタッド分率としては、剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは0.95以上であり、さらに好ましくは0.97以上である。
【0040】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の極限粘度[η]CEPは、成形品にブツが多発することを防止するという観点から、8dl/g以下が好ましい。より好ましくは6dl/g以下であり、さらに好ましくは1.5〜4dl/gである。
【0041】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)を構成するプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)に含有されるエチレン単位の含量[(C2’)EP]は、耐衝撃性の観点から、20〜70重量%が好ましい。より好ましくは25〜65重量%である。残りはプロピレン単位である。
【0042】
ポリプロピレン系樹脂(A2−2)を構成するプロピレン重合体成分(B)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の割合は、成形品の耐衝撃性、剛性、耐熱性等の観点から、好ましくは、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の割合が5〜40重量%(即ち、プロピレン重合体成分(B)の割合が95〜60重量%)であり、さらに好ましくは、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の割合が5〜30重量%(即ち、プロピレン重合体成分(B)の割合が95〜70重量%)である。但し、プロピレン重合体成分(B)とプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の合計を100重量%とする。
【0043】
組成物(A2−3)の説明
組成物(A2−3)はプロピレン重合体(ii)およびポリプロピレン系樹脂(D)からなり、極限粘度[η]A2が5dl/g未満の組成物である。
【0044】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物に組成物(A2−3)を用いる場合の配合割合は、好ましくは、プロピレン系重合体成分(A1)が0.52〜9.8重量%であり、プロピレン重合体(ii)が0.78〜4.2重量%であり、ポリプロピレン系樹脂(D)が98.7〜86重量%である。(但し、成分(A1)とプロピレン重合体(ii)と樹脂(D)の合計量が100重量%である。)
【0045】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)は、成形性、フローマーク発生の抑制、または耐衝撃性の観点から、好ましくは5〜150g/10分であり、より好ましくは10〜120g/10分である。
【0046】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)で測定した分子量分布Q値(Mw/Mn)は、引張り伸びの観点から、好ましくは10未満であり、より好ましくは3〜8であり、さらに好ましくは3〜7である。
【0047】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物のダイスウェルは、成形体表面に発生するフローマーク抑制の観点から好ましくは1.6以上である。
【0048】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、プロピレン系重合体成分(A1)を有するプロピレン系重合体を得る方法、好ましくは前述のプロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン重合体成分(B)、およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)を有するプロピレン系重合体としてポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法(I)、プロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン重合体成分(B)、およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)を部分的に有するプロピレン系重合体を溶融ブレンドしてポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法(II)等が挙げられる。また、プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)及び混合物(iii)に用いられるプロピレン重合体(ii)の製造方法としても、特に限定されるものではないが、好ましくは、上記方法(I)が挙げられる。これらの代表的な例を以下に示す。
【0049】
▲1▼ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法(I)
製造方法(I)は、プロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン重合体成分(B)、およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)を有するプロピレン系重合体としてポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法である。
上記方法(I)としては、特に制限されるものではなく、公知の重合触媒を用いて、公知の重合方法によりプロピレン系重合体を得る方法が挙げられる。
公知の重合触媒の例としては、好ましくは(a)マグネシウム、チタン、ハロゲンおよび電子供与体を必須成分として含有する固体触媒成分、(b)有機アルミニウム化合物、および(c)電子供与体成分から形成される触媒系が挙げられる。この触媒の製造方法としては、例えば、特開平1−319508号公報、特開平7−216017号公報や特開平10−212319号公報に記載されている製造方法が挙げられる。
【0050】
本発明のプロピレン系重合体の重合方法としては、公知の重合方法が挙げられ、例えば、バルク重合、溶液重合、スラリー重、気相重合等が挙げられる。これらの重合方法は、バッチ式、連続式のいずれでも可能であり、また、これらの重合方法を任意に組合せもよい。より具体的な製造方法としては、前述の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及び電子供与体成分(c)からなる触媒系の存在下に少なくとも3槽からなる重合槽を直列に配置し、成分(A1)の重合後生成物を次の重合槽に移し、ついでその重合槽で成分(B)を、ついで次の重合槽で成分(C)を連続的に重合する重合法などがあげられる。工業的かつ経済的な観点から、好ましくは連続式の気相重合法である。
【0051】
上記の重合方法における固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)および電子供与体成分(c)の使用量や、各触媒成分を重合槽へ供給する方法は、公知の触媒の使用方法によって、適宜、決めることができる。
【0052】
重合温度は、通常、−30〜300℃であり、好ましくは20〜180℃である。重合圧力は、通常、常圧〜10MPaであり、好ましくは0.2〜5MPaである。分子量調整剤として、例えば、水素を用いることができる。
【0053】
本発明のプロピレン系重合体の製造において重合(本重合)の実施前に、公知の方法によって、予備重合を行っても良い。公知の予備重合の方法としては、例えば、固体触媒成分(a)および有機アルミニウム化合物(b)の存在下、少量のプロピレンを供給して溶媒を用いてスラリー状態で実施する方法が挙げられる。
【0054】
ポリプロピレン系樹脂組成物の製造方法(II)
製造方法(II)は、プロピレン重合体成分(B)、およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)を部分的に有するプロピレン系重合体を溶融ブレンドしてポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法である。
上記方法(II)としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、ポリプロピレン系樹脂(D)98.7〜86重量%と、プロピレン系重合体成分(A1)40〜70重量%およびプロピレン重合体(ii)60〜30重量%からなるプロピレン系重合体マスターバッチ(E)1.3〜14重量%を混合する方法が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂(D)とプロピレン系重合体マスターバッチ(E)の配合割合として、より好ましくは、ポリプロピレン系樹脂(D)が98〜88重量%であり、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)が2〜12重量%である。
【0055】
プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に用いられるプロピレン系重合体成分(A1)およびプロピレン重合体成分(B)としては、前述のものが挙げられる。
【0056】
プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に用いられるプロピレン系重合体成分(A1)およびプロピレン重合体(ii)の配合割合は、プロピレン系重合体成分(A1)の分散性の観点から、好ましくはプロピレン系重合体成分(A1)が40〜70重量%であり、より好ましくはプロピレン系重合体成分(A1)が45〜65重量%である。(但し、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン重合体(ii)の合計量が100重量%である。)
【0057】
プロピレン系重合体マスターバッチ(E)の製造方法としては、特に制限されるものではないが、好ましくは、前述のプロピレン系重合体成分(A1)、プロピレン重合体成分(B)、およびプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)を有するプロピレン系重合体としてポリプロピレン系樹脂組成物を得る方法(I)で示した触媒系及び重合方法と同様のものを用いる製造方法が挙げられる。
【0058】
より具体的には、例えば、前述の固体触媒成分(a)、有機アルミニウム化合物(b)及び電子供与体成分(c)からなる触媒系の存在下に少なくとも2槽からなる重合槽を直列に配置し、プロピレン系重合体成分(A1)を重合した後、生成物を次の重合槽に移し、その重合槽でプロピレン重合体(ii)を連続的に重合する方法等が挙げられる。
【0059】
ポリプロピレン系樹脂(D)とプロピレン系重合体マスターバッチ(E)を混合する方法としては、例えば、一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、熱ロール等の混練機を用いる方法等が挙げられる。より具体的には、以下に示す方法等が挙げられる。
(1)ポリプロピレン系樹脂(D)とプロピレン系重合体マスターバッチ(E)のそれぞれの重合パウダーを上記混練機を用いて混練する方法。
(2)ポリプロピレン系樹脂(D)の重合パウダーとプロピレン系重合体マスターバッチ(E)の重合パウダーをそれぞれ個別に一軸または二軸押出機を用いて混練してペレットを製造し、その後、ポリプロピレン系樹脂(D)のペレットとプロピレン系重合体(E)のペレットを一軸または二軸押出機を用いて混練する方法。
(3)一軸または二軸押出機を用いて予めペレット化されたプロピレン系重合体マスターバッチ(E)を、ポリプロピレン系樹脂(D)の重合パウダーをペレット化する工程において混練機に定量フィーダーを用いて添加し混練する方法。
好ましくは、予め一軸または二軸押出機を用いて混練されたプロピレン系重合体マスターバッチ(E)のペレットを用いる、上記(2)または(3)の方法である。
【0060】
また、必要に応じて、一軸または二軸押出機のダイスにスクリーンパックを装着してもよい。装着するスクリーンパックとしては、好ましくは金属繊維焼結フィルターであり、例えば「機械設計(1981年3月号第25巻第3号第109〜113頁)」に記載されているものである。
混練温度は、通常、170〜250℃であり、好ましくは190〜240℃である。
【0061】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物として、より好ましくはプロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン系重合体成分(A2)からなるポリプロピレン系樹脂組成物35〜88重量%、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]Fが2以下であるプロピレン単独重合体(F)0〜20重量%、エラストマー(G)10〜35重量%、無機充填剤(H)2〜30重量%からなるポリプロピレン系樹脂組成物である。
【0062】
本発明で用いられるプロピレン単独重合体(F)の極限粘度[η]Fが2以下である。
【0063】
本発明で用いられるエラストマー(G)とは、特に制限されるものではないが、好ましくは、ゴム成分を含有するエラストマーであり、例えば、ビニル芳香族化合物含有ゴム、エチレン−プロピレンランダム共重合体ゴム、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴム、または、これらの混合物からなるエラストマー等が挙げられる。
【0064】
エラストマー(G)に用いられるビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、ビニル芳香族化合物重合体ブロックと共役ジエン系重合体ブロックからなるブロック共重合体等が挙げられ、その共役ジエン部分の二重結合の水素添加率として、好ましくは80%以上であり、より好ましくは85%以上である。
【0065】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムのGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法による分子量分布(Q値)として、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.3以下である。
【0066】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムに含有されるビニル芳香族化合物の平均含有量として、好ましくは10〜20重量%であり、より好ましくは12〜19重量%である。
【0067】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、230℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
【0068】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムとしては、例えば、スチレン−エチレン−ブテン−スチレン系ゴム(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン系ゴム(SEPS)、スチレン−ブタジエン系ゴム(SBR)、スチレン−ブタジエン−スチレン系ゴム(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン系ゴム(SIS)等のブロック共重合体又はこれらのゴム成分を水添したブロック共重合体等が挙げられる。さらに、エチレン−プロピレン−非共役ジエン系ゴム(EPDM)にスチレン等のビニル芳香族化合物を反応させたゴムも挙げられる。また、2種類以上のビニル芳香族化合物含有ゴムを併用しても良い。
【0069】
上記のビニル芳香族化合物含有ゴムの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、オレフィン系共重合体ゴムもしくは共役ジエンゴムに対し、ビニル芳香族化合物を重合、反応等により結合させる方法等が挙げられる。
【0070】
エラストマー(G)に用いられるエチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムのGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法による分子量分布(Q値)として、好ましくは2.7以下であり、より好ましくは2.5以下である。
【0071】
上記のエチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムに含有されるプロピレンの含有量として、好ましくは20〜30重量%であり、より好ましくは22〜28重量%である。
【0072】
上記のエチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
【0073】
エラストマー(G)に用いられるエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムとしては、特に制限されるものではなく、エチレンとα−オレフィンからなるランダム共重合体ゴムであればよい。α−オレフィンとしては炭素原子数4〜12のα−オレフィンであり、例えば、ブテン−1、ペンテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1、オクテン−1、デセン等が挙げられ、好ましくは、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1である。
【0074】
エチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムとしては、例えば、エチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−ヘキセン−1ランダム共重合体ゴム、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴム等が挙げられ、好ましくは、エチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムまたはエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムである。また、2種類以上のエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムを併用しても良い。
【0075】
エラストマー(G)に用いられるエチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムのGPC(ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー)法による分子量分布(Q値)が2.5以下であるものが好ましく、さらに好ましくは2.3以下のものである。
【0076】
上記のエチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムに含有されるオクテン−1の含有量として、好ましくは15〜45重量%であり、より好ましくは18〜42重量%である。
【0077】
上記のエチレン−オクテン−1ランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
【0078】
エラストマー(G)に用いられるエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムのGPC法によるQ値として、好ましくは2.7以下であり、より好ましくは2.5以下である。
【0079】
上記のエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムに含有されるブテン−1の含有量として、好ましくは15〜35重量%であり、より好ましくは17〜33重量%である。
【0080】
上記のエチレン−ブテン−1ランダム共重合体ゴムのメルトフローレート(MFR、JIS−K−6758、190℃)として、好ましくは1〜15g/10分であり、より好ましくは2〜13g/10分である。
【0081】
上記のエチレン−プロピレンランダム共重合体ゴムおよびエチレン−α−オレフィンランダム共重合体ゴムの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の触媒を用いて、公知の重合方法により、エチレンとプロピレン、または、エチレンと各種のα−オレフィンを共重合させることによって製造することができる。公知の触媒としては、例えば、バナジウム化合物と有機アルミニウム化合物からなる触媒系、チーグラーナッタ触媒系又はメタロセン触媒系等が挙げられ、公知の重合方法としては、溶液重合法、スラリー重合法、高圧イオン重合法又は気相重合法等が挙げられる。
【0082】
本発明で用いられる無機充填剤(H)とは、特に限定されるものではなく、通常、剛性を向上させるために用いられるものであり、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、マイカ、結晶性ケイ酸カルシウム、タルク、硫酸マグネシウム繊維等が挙げられ、好ましくはタルクまたは硫酸マグネシウム繊維である。これらの無機充填剤は、2種以上を併用しても良い。
【0083】
無機充填剤(H)に用いられるタルクとして、特に限定されるものではないが、好ましくは含水ケイ酸マグネシウムを粉砕したものである。含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶構造はパイロフィライト型三層構造であり、タルクはこの構造が積み重なったものである。タルクとして特に好ましくは、含水ケイ酸マグネシウムの分子の結晶を単位層程度にまで微粉砕した平板状のものである。
【0084】
上記のタルクの平均粒子径として、好ましくは3μm以下である。ここでタルクの平均粒子径とは遠心沈降式粒度分布測定装置を用いて水、アルコール等の分散媒中に懸濁させて測定した篩下法の積分分布曲線から求めた50%相当粒子径D50のことを意味する。
【0085】
上記のタルクは無処理のまま使用しても良く、または、プロピレン系重合体成分(A1)とプロピレン系重合体成分(A2)からなるポリプロピレン系樹脂組成物との界面接着性および分散性を向上させるために、公知の各種シランカップリング剤、チタンカップリング剤、高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸塩類あるいは他の界面活性剤で表面を処理して使用しても良い。
【0086】
無機充填剤(H)に用いられる硫酸マグネシウム繊維は、特に制限されるものではないが、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維長として、好ましくは5〜50μmであり、さらに好ましくは10〜30μmである。また、硫酸マグネシウム繊維の平均繊維径として、好ましくは0.3〜2μmであり、さらに好ましくは0.5〜1μmである。
【0087】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物には、その目的、効果を損なわない範囲で、各種添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、滑剤、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、造核剤、気泡防止剤、架橋剤等が挙げられる。耐熱性、耐候性、耐酸化安定性を向上させるためには、酸化防止剤または紫外線吸収剤を添加することが好ましい。
【0088】
これらの添加剤、上記のエラストマー(G)および上記の無機充填剤(H)は、予め溶融混練されたポリプロピレン系樹脂組成物のペレットと配合してもよく、ポリプロピレン系樹脂組成物をペレット化する段階で配合してもよい。
【0089】
本発明のポリプロピレン系樹脂組成物は、公知の射出成形方法により射出成形体に成形することができる。射出成形体の用途として、特に好ましくは自動車用射出成形体であり、例えば、ドアートリム、ピラー、インストルメンタルパネル、バンパー等が挙げられる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例および比較例によって本発明を説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例及び比較例で用いた重合体及び組成物の物性は、以下に示した方法に従って測定した。
【0091】
(1)極限粘度(単位:dl/g)
ウベローデ型粘度計を用いて濃度0.1、0.2および0.5g/dlの3点について還元粘度を測定した。極限粘度は、「高分子溶液、高分子実験学11」(1982年共立出版株式会社刊)第491頁に記載の計算方法すなわち、還元粘度を濃度に対しプロットし、濃度をゼロに外挿する外挿法によって求めた。テトラリンを溶媒として用いて、温度135℃で測定した。
【0092】
(1−1)プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)の極限粘度
(1−1a)プロピレン単独重合体部分(共重合体(i)の第1セグメント)の極限粘度:[η]P
プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)の第1セグメントであるプロピレン単独重合体部分の極限粘度[η]Pは、その製造時に、第1工程であるプロピレン単独重合体の重合後に重合槽内よりプロピレン単独重合体を取り出し、取り出されたプロピレン単独重合体の[η]Pを測定して求めた。
【0093】
(1−1b)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分(共重合体(i)の第2セグメント)の極限粘度:[η]EP
プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)の第2セグメントであるプロピレン−エチレンランダム共重合体部分の極限粘度:[η]EPは、プロピレン単独重合体部分の極限粘度:[η]Pとプロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度:[η]Tをそれぞれ測定し、プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xを用いて次式から計算により求めた。(プロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:Xは、下記(2)の測定方法により求めた。)
[η]EP=[η]T/X−(1/X−1)[η]P
[η]P:プロピレン単独重合体部分の極限粘度(dl/g)
[η]T:プロピレン−エチレンブロック共重合体全体の極限粘度(dl/g)
【0094】
(1−2)プロピレン単独重合体の極限粘度:[η]P
混合物(iii)に用いたプロピレン単独重合体の極限粘度[η]Pは、プロピレン単独重合体を用いて、上記(1)の方法に従って測定した。
【0095】
(1−3)プロピレン系重合体成分(A1)の極限粘度:[η]1、[η]2
1段階の重合で得たものは上記(1)の方法に従って測定した([η]1)。
2段階の重合で得たものは、1段階重合工程後に重合曹より抜き出したサンプルと2段階重合工程後の最終サンプルをそれぞれ上記(1)の方法で測定した([η]1、[η]T)。2段階目の工程で重合された成分の極限粘度[η]2は下記式から計算して求めた。
[η]2=([η]T−[η]1×X1)/X2
[η]T:2段階重合工程後の最終サンプルの極限粘度(dl/g)
[η]1:1段階重合工程後に重合曹より抜き出したサンプルの極限粘度(dl/g)
1:1段階目の工程で重合された成分の重量比
2:2段階目の工程で重合された成分の重量比
尚、X1、X2は重合時の物質収支から求めた。X1とX2の合計は1である。
【0096】
(2)プロピレン−エチレンランダム共重合体部分のプロピレン−エチレンブロック共重合体全体に対する重量比率:X及びプロピレン−エチレンブロック共重合体中のプロピレン−エチレンランダム共重合体部分のエチレン含量:(C2’)EPは、下記の条件で測定した13C−NMRスペクトルから、Kakugoらの報告(Macromolecules 1982,15,1150-1152)に基づいて求めた。
10mmΦの試験管中で約200mgのプロピレン−エチレンブロック共重合体を3mlのオルソジクロロベンゼンに均一に溶解させて試料を調整し、その試料の13C−NMRスペクトルを下記の条件下で測定した。
測定温度:135℃
パルス繰り返し時間:10秒
パルス幅:45°
積算回数:2500回
【0097】
(3)アイソタクチック・ペンタッド分率
アイソタクチック・ペンタッド分率とは、A.ZambelliらによってMacromolecules, 6, 925 (1973)に発表されている方法、すなわち13C−NMRを使用して測定されるポリプロピレン分子鎖中のペンタッド単位でのアイソタクチック連鎖、換言すればプロピレンモノマー単位が5個連続してメソ結合した連鎖の中心にあるプロピレンモノマー単位の分率である。ただし、NMR吸収ピークの帰属に関しては、その後発刊されたMacromolecules, 8, 687 (1975)に基づいて行った。
【0098】
具体的には13C−NMRスペクトルのメチル炭素領域の全吸収ピーク中のmmmmピークの面積分率としてアイソタクチック・ペンタッド分率を測定した。この方法により英国 NATIONAL PHYSICAL LABORATORYのNPL標準物質 CRM No.M19-14 Polypropylene PP/MWD/2のアイソタクチック・ペンタッド分率を測定したところ、0.944であった。
【0099】
(4)プロピレン系重合体成分(A1)のコモノマー含量(単位:重量%)
高分子ハンドブック(1995年、紀伊国屋書店発行)の第616頁以降に記載されている方法により、赤外分光法で測定し求めた。
【0100】
(5)分子量分布(Q値、Mw/Mn)
GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ)により、下記条件で測定した。
機種:150CV型(ミリポアウォーターズ社製)
カラム:Shodex M/S 80
測定温度:145℃
溶媒:オルトジクロロベンゼン
サンプル濃度:5mg/8mL
検量線は標準ポリスチレンを用いて作成した。この条件で測定された標準ポリスチレン(NBS706:Mw/Mn=2.0)のMw/Mnは1.9〜2.0であった。
【0101】
(6)融解ピーク温度(Tm、単位:℃)
示差走査型熱量計(パーキンエルマー社製DSC−7)を用い、ポリマーを220℃で5分間熱処理後、降温速度300℃/分で150℃まで冷却して150℃において1分間保温し、さらに降温速度5℃/分で50℃まで冷却して50℃において1分間保温し、さらに50℃から180℃まで昇温速度5℃/分で加熱した際の融解ピーク温度をTmとして求めた。
【0102】
(7)メルトフローレート(MFR、単位:g/10分)
JIS−K−6758に規定された方法に従って、測定した。特に断りのない限り、測定温度は230℃で、荷重は2.16kgで測定した。
【0103】
(8)ダイスウェル
(株)東洋精機製作所製キャピログラフ1Bを使用して、下記条件で測定した。
測定温度:220℃
L/D:40
せん断速度:2.432×103sec-1
【0104】
(9)ブツ数−1(単位:個/10cm2
Tダイ押し出し機を用いて、下記条件で加工したフィルムを画像解析装置を用いて、下記の方法に従って定量解析した。
フィルム加工条件
田辺プラスティック機械株式会社製 押し出し機V−20とフィルム引き取り装置で50mm幅、厚さ50ミクロンのフィルムを作成した。
定量解析方法
EPSON社製 スキャナーGT−9600でフィルムの画像(900dpi、8bit)をコンピューターに取り込み、その画像を旭エンジニアリング社製画像解析ソフト A像君 で2値化した。ブツは周辺より明るい部分として認識された。ブツの形状は不定形であるので、ブツと同じ面積となる円の直径をブツの大きさであるとして、フィルム10cm2当たり、直径が200μm以上であるブツの数を求めた。
【0105】
(10)ブツ数−2(単位:個/43cm2
上記(9)に記載と同様な方法でフイルムを作成し以下方法で解析した。
定量解析方法
EPSON社製 スキャナーGT−9600でフィルムの画像(200dpi、8bit)をコンピューターに取り込み、その画像を旭エンジニアリング社製画像解析ソフト A像君 で2値化した。ブツは周辺より明るい部分として認識された。ブツの形状は不定形であるので、ブツと同じ面積となる円の直径をブツの大きさであるとして、フィルム43cm2当たり、直径が200μm以上であるブツの数を求めた。
【0106】
(11)引っ張り試験(UE、単位:%)
ASTM D638に規定された方法による。射出成形により成形された厚みが3.2mmである試験片を用いて測定した。引っ張り速度は10mm/分、50mm/分または70mm/分であり、破断伸び(UE)を評価した。
【0107】
(12)曲げ弾性率(FM、単位:kg/cm2
JIS−K−7203に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが6.4mmであり、スパン長さが100mmである試験片を用いて、荷重速度は2.0mm/分または2.5mm/分で、測定温度は23℃で測定した。
【0108】
(13)アイゾット衝撃強度(Izod、単位:kg・cm/cm2
JIS−K−7110に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが6.4mmであり、成形の後にノッチ加工されたノッチ付きの試験片を用いて、測定温度は23℃または−30℃で測定した。
【0109】
(14)加熱変形温度(HDT、単位:℃)
JIS−K−7207に規定された方法に従って、測定した。ファイバーストレスは18.6kg/cm2または4.6kg/cm2で測定した。
【0110】
(15)ロックウェル硬度(HR)
JIS−K−7202に規定された方法に従って、測定した。射出成形により成形された厚みが3.0mmである試験片を用いて測定した。測定値はRスケールで表示した。
【0111】
(16)フローマーク外観
射出成形により成形された100mm×400mm×厚み3.0mmの試験片を用いて目視により外観を観察し、良好と不良の判定をした。
【0112】
(17)成形品ブツ外観
射出成形により成形された100mm×400mm×厚み3.0mmの試験片を用いて目視により外観を観察した。
【0113】
(射出成形体の製造)
(射出成形体の製造−1)
上記(11)〜(15)の物性評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って作成した。
(1a)実施例1〜16および比較例1〜13に用いた試験片
住友重機械製NEOMAT350/120型射出成形機用い成形温度220℃、金型冷却温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を行い、射出成形体である試験片を得た。
(1b)実施例17、18および比較例14、15に用いた試験片
東芝機械製IS150E−V型射出成形機を用い成形温度220℃、金型冷却温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を行い、射出成形体である試験片を得た。
【0114】
(射出成形体の製造−2)
上記(16)および(17)の外観評価用の射出成形体である試験片は、次の方法に従って作成した。
住友重機械製NEOMAT515/150型射出成形機用い成形温度220℃、金型冷却温度50℃、射出時間15sec、冷却時間30secで射出成形を行い、射出成形体である試験片を得た。
【0115】
実施例および比較例で用いた重合体の製造に用いた3種類の触媒(固体触媒成分(I)、(II)および(III)の合成方法を以下に示した。
(1)固体触媒成分(I)
攪拌機付きの200LSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モル、およびテトラエトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを、反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後5℃で1時間、室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.2Kg/Lになるようにトルエン量を調整した後、105℃で1時間攪拌した。その後、95℃まで冷却し、フタル酸ジイソブチル47.6モル加え、95℃で30分間反応を行った。反応後固液分離し、トルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、フタル酸ジイソブチル3.1モル、n−ジブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン274モルを加え、105℃で3時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、同温度でトルエン90Lで2回洗浄を行った。スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエン量を調節後、n−ジブチルエーテル8.9モル及び四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、さらにヘキサン70Lで3回洗浄した後減圧乾燥して固体触媒成分11.4Kgを得た。固体触媒成分はチタン原子1.83重量%、フタル酸エステル8.4重量%、エトキシ基0.30重量%、ブトキシ基0.20重量%を含有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(I)と呼ぶ。
【0116】
(2)固体触媒成分(II)
攪拌機付きの200LSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、フタル酸ジイソブチル2.8モル、およびテトラエトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液51Lを、反応容器内の温度を5℃に保ちながら5時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後室温でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.6Kg/Lになるようにトルエンを抜出した後、n−ジブチルエーテル8.9モルと四塩化チタン274モルの混合液を加えた後、更にフタル酸クロライドを20.8モル加え110℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃でトルエンで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6Kg/Lに調整した後、フタル酸ジイソブチル3.13モル、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、95℃でトルエン90Lで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6Kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.6Kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン137モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、さらにヘキサン90Lで3回洗浄した後減圧乾燥して固体触媒成分11.0Kgを得た。固体触媒成分はチタン原紙1.89重量%、マグネシウム原子20重量%、フタル酸エステル8.6重量%、エトキシ基0.05重量%、ブトキシ基0.21重量%を含有し、微粉のない良好な粒子性状を有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(II)と呼ぶ。
【0117】
(3)固体触媒成分(III)
攪拌機付きの200LSUS製反応容器を窒素で置換した後、ヘキサン80L、テトラブトキシチタン6.55モル、およびテトラエトキシシラン98.9モルを投入し均一溶液とした。次に濃度2.1モル/Lのブチルマグネシウムクロリドのジイソブチルエーテル溶液50Lを、反応容器内の温度を20℃に保ちながら4時間かけて徐々に滴下した。滴下終了後20℃でさらに1時間攪拌した後、室温で固液分離し、トルエン70Lで3回洗浄を繰り返した。次いで、スラリー濃度が0.4Kg/Lになるようにトルエンを抜出した後、n−ジブチルエーテル8.9モルと四塩化チタン274モルの混合液を加えた後、更にフタル酸クロライドを20.8モル加え110℃で3時間反応を行った。反応終了後、95℃でトルエンで3回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.4Kg/Lに調整した後、フタル酸ジイソブチル3.13モル、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン109モルを加え、105℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離した後、95℃でトルエン90Lで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.4Kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン109モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで2回洗浄を行った。次いで、スラリー濃度を0.4Kg/Lに調整した後、n−ジブチルエーテル8.9モルおよび四塩化チタン109モルを加え、95℃で1時間反応を行った。反応終了後、同温度で固液分離し同温度でトルエン90Lで3回洗浄を行った後、さらにヘキサン90Lで3回洗浄した後減圧乾燥して固体触媒成分12.8Kgを得た。固体触媒成分はチタン原紙2.1重量%、マグネシウム原子18重量%、塩素原子60重量%、フタル酸エステル7.15重量%、エトキシ基0.05重量%、ブトキシ基0.26重量%を含有し、微粉のない良好な粒子性状を有していた。この固体触媒成分を、以下固体触媒成分(III)と呼ぶ。
【0118】
(重合体の重合)
(1)プロピレン単独重合体(HPP)の重合
(1−1)HPP−1の重合
(1−1a)予備重合
SUS製3L攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水,脱気したヘキサンにトリエチルアルミニウム(以下TEAと略す)25mmol/L、電子供与体成分としてシクロヘキシルエチルジメトキシシラン(以下CHEDMSと略す)をCHEDMS/TEA=0.1(mol/mol)および固体触媒成分(I)を15g/Lを添加し、15℃以下の温度を保持しながらプロピレンを固体触媒当たり2.5g/gに達するまで連続的に供給し予備重合を実施した。得られた予備重合体スラリーは120LのSUS製攪拌機付きの希釈槽へ移送し充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し10℃以下の温度で保存した。
【0119】
(1−1b)本重合
内容積1m3の攪拌機付き流動床反応器において、重合温度80℃、重合圧力1.8MPa、気相部の水素濃度を7vol%を保持するようにプロピレンと水素を供給し、TEAを62mmol/h、CHEDMSを6.2mmol/hおよび(1)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.2g/hを連続的に供給して連続の気相重合を行い、20Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]Pは0.90dl/g、アイソタクチック・ペンタッド分率は0.97であった。
【0120】
(1−2)HPP−2〜6の重合
本重合における気相部の水素濃度と固体触媒成分の供給量を、表1に示した重合体が得られるように調整した以外はHPP−1と同様の方法で実施した。得られた重合体の分析結果を表1に示した。
【0121】
(1−3)HPP−7〜8の重合
(1−3a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(III)とし、電子供与体化合物をt-ブチル-n-プロピルジメトキシシラン(以下tBunPrDMSと略す。)とした以外は、HPP−1と同様の方法で実施した。
(1−3b)本重合
本重合における電子供与体化合物をtBunPrDMSとし、気相部の水素濃度と固体触媒成分の供給量を、表1に示した重合体が得られるように調整した以外はHPP−1と同様の方法で実施した。得られた重合体の分析結果を表1に示した。
【0122】
(2)プロピレン−エチレンブロック共重合体(BCPP)の重合
(2−1)BCPP−1の重合
(2−1a)予備重合
HPP−1と同様の方法で行った。
(2−1b)本重合
内容積1m3の攪拌機付き流動床気相反応器を2槽直列に配置し、第1槽目においてプロピレン重合体部分を重合後、生成ポリマーを失活することなく第2槽目に移送し、第2槽目においてプロピレン−エチレン共重合体部分を連続的に気相重合する方法で実施した。前段第1槽目において、重合温度80℃、重合圧力1.8MPa、気相部の水素濃度7.4vol%を保持するようにプロピレンおよび水素を供給した条件下、TEAを33mmol/h、CHEDMSを3.3mmol/hおよび(1)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として0.8g/h供給し連続重合を行い、18.7Kg/hのポリマーが得られ、ポリマーの極限粘度[η]Pは0.90dl/gであった。排出された生成ポリマーは失活することなく後段第2槽目に連続的に供給した。後段第2層目は重合温度65℃、重合圧力1.4MPa、気相部の水素濃度4.1vol%、エチレン濃度17.2vol%を保持するようにプロピレン、エチレンおよび水素を連続的に供給した条件下に、22mmol/hのn−プロピルメチルジメトキシシランを供給しながら連続重合を継続し、22.5Kg/hのポリマーが得られた。得られたポリマーの極限粘度[η]Tは1.07dl/gであり、後段部での重合体含量(EP含量)は17重量%であったので、後段部(EP部)で生成したポリマーの極限粘度[η]EPは1.9dl/gであった。又、EP部でのエチレン含量は40重量%であった。
【0123】
(2−2)BCPP−2およびBCPP−3の重合
本重合における気相部の水素濃度、エチレン濃度および固体触媒成分の供給量を、表2に示した重合体が得られるように調整した以外はBCPP−1と同様の方法で実施した。得られた重合体の分析結果を表2に示した。
【0124】
(2−3)BCPP−4およびBCPP−5の重合
(2−3a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(III)とし、電子供与体化合物をtBunPrDMSとした以外は、HPP−1と同様の方法で実施した。
(2−3b)本重合
本重合における電子供与体化合物をtBunPrDMSとし、気相部の水素濃度、エチレン濃度およびと固体触媒成分の供給量を、表2に示した重合体が得られるように調整した以外はBPP−1と同様の方法で実施した。得られた重合体の分析結果を表2に示した。
【0125】
(2−4)BCPP−6の重合
(2−4a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(II)とし、電子供与体化合物をtBunPrDMSとした以外は、HPP−1と同様の方法で実施した。
(2−4b)本重合
本重合における電子供与体化合物をtBunPrDMSとし、気相部の水素濃度、エチレン濃度およびと固体触媒成分の供給量を、表2に示した重合体が得られるように調整した以外はBPP−1と同様の方法で実施した。得られた重合体の分析結果を表2に示した。
【0126】
表1に示した[η]P、および、表2に示した[η]P、[η]EP、EP中のエチレン含量及びEP含量は、それぞれ、上述の重合により得られたプロピレン単独重合体(HPP−1〜HPP−6)およびプロピレン−エチレンブロック共重合体(BCPP−1〜BCPP−3)のパウダーの分析値であり、MFRは、40mmφ単軸押し出し機(220℃、スクリーンパック:100メッシュ)を用いてパウダー100重量部に、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加し造粒したペレットのMFRである。
【0127】
(3)プロピレン系重合体成分(A1)(HMS)の製造
(3−1)HMS−1の製造
減圧乾燥後、窒素で置換した内容積3リットルの撹拌機付きステンレス製オートクレーブ内に、前記固体触媒成分(II)5.1mgとTEA8.8mmol及び電子供与体成分としてジターシャリーブチルジメトキシシラン88.1μmolを、ガラスチャージャー内のヘプタン溶液中で接触させたのち投入した。さらに水素50mmHg,プロピレン780gを前記オートクレーブに仕込んで80℃まで昇温し重合を開始した。80℃昇温直後からエチレン分圧が0.1Kg/m2Gとなるようエチレンガスを連続的にフィードして60分重合を行った。60分後オートクレーブ内のガスをパージし、生成した重合体を60℃で5時間減圧乾燥し、198.3gの重合パウダーを得た。得られたポリマーの極限粘度は7.6(dl/g)、エチレン含量は2.7重量%であった。融解温度ピークTmは148.1℃であった。得られたHMS−1の分析結果を表3に示した。
【0128】
(3−2)HMS−2の製造
固体触媒成分(II)の量を5.0mg、水素添加量110mmHg、重合中のエチレン分圧が0.2Kg/m2Gに変更した以外はHMS−1と同様に重合を行った。得られたポリマー量は410.5g、極限粘度は5.8(dl/g)、エチレン含量は4.5重量%であった。融解温度ピークTmは137.5℃であった。得られたHMS−2の分析結果を表3に示した。
【0129】
(3−3)HMS−3の製造
(3−3a)予備重合
SUS製3L攪拌機付きオートクレーブにおいて、充分に脱水,脱気したヘキサンにトリエチルアルミニウム(以下TEAと略す)25mmol/L、電子供与体成分としてtBunPrDMSをtBunPrDMS/TEA=0.1(mol/mol)および固体触媒成分(III)を15g/Lを添加し、15℃以下の温度を保持しながらプロピレンを固体触媒当たり1g/gに達するまで連続的に供給し予備重合を実施した。得られた予備重合体スラリーは120LSUS製攪拌機付きの希釈槽へ移送し充分に精製された液状ブタンを加えて希釈し10℃以下の温度で保存した。
(3−3b)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持するように液化プロピレンを35Kg/h供給し、更に気相部の1−ブテン濃度を15.6vol%を保持するように液状1−ブテンを供給し、TEAを31mmol/h、tBunPrDMSを4.7mmol/hおよび上記(3−a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.3g/h供給しながらプロピレン−1−ブテンの連続共重合を行い、4.6Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]は7.0dl/g、1−ブテン含量は13.6重量%であり、融解ピーク温度は152.5℃であった。得られたHMS−3の分析結果を表3に示した。
【0130】
(3−4)HMS−4の製造
(3−4a)予備重合
HMS−3と同様の方法で実施した。
(3−4b)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持ように液化プロピレンを45Kg/h供給し、更に気相部の1−ブテン濃度を5.5vol%を保持するように液状1−ブテンを供給し、TEAを31mmol/h、tBunPrDMSを4.7mmol/hおよび上記(3−4a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.5g/h供給しながらプロピレン−1−ブテンの連続共重合を行い、4.0Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]は5.1dl/g、1−ブテン含量は5.1重量%であり、融解ピーク温度は154.0℃であった。得られたHMS−4の分析結果を表3に示した。
【0131】
(3−5)HMS−5の製造
(3−5a)予備重合
HMS−3と同様の方法で実施した。
(3−5b)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持ように液化プロピレンを50Kg/h供給し、TEAを31mmol/h、tBunPrDMSを4.5mmol/hおよび上記(3−5a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.3g/h供給しながらプロピレンの連続重合を行い、2.6Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]は7.9dl/gであり、融解ピーク温度は164.8℃であった。得られたHMS−5の分析結果を表3に示した。
【0132】
(3−6)HMS−6の製造
(3−6a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(II)とし、電子供与体化合物をtBunPrDMSとした以外は、HPP−1と同様の方法で実施した。
(3−6b)本重合
内容積1m3のSUS製の攪拌機付き気相流動床反応器において、重合温度65℃、重合圧力1.8MPa、気相部の水素濃度0.1vol%および気相部エチレン濃度7.3vol%を保持するようにプロピレン、水素およびエチレンを供給し、TEAを60mmol/h、tBunPrDMSを6mmol/hおよび上記(3−6a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として0.9g/hを連続的に供給し、プロピレン−エチレンの連続気相重合を行い、22.5Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]は5.3dl/gであり、エチレン含量は9.6重量%、融解温度ピークは115.6℃であった。得られたHMS−6の分析結果を表3に示した。
【0133】
(3−7)HMS−7の製造
(3−7a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(I)とした以外はHMS−3と同様の方法で実施した。
(3−7b)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持するように液化プロピレンを35Kg/h供給し、更に気相部のエチレン濃度を2.9vol%を保持するようにエチレン供給し、TEAを51mmol/h、tBunPrDMSを5mmol/hおよび上記(3−7a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.0g/h供給し、実質的に水素の不存在下でプロピレン−エチレンの連続共重合を行い、6.5Kg/hの重合体を得た。得られた重合体は失活することなく第2槽目に連続的に移送した。第2槽目は内容積1m3のSUS製攪拌機付き流動床気相反応器において、重合温度70℃、重合圧力0.8MPaおよび気相部のエチレン濃度を1.8vol%を保持するように、プロピレンとエチレンを供給し、水素の実質的に不存在下で第1槽目より移送された固体触媒成分含有重合体で連続気相重合を継続し、16.3Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーの極限粘度[η]は8.4dl/gであり、エチレン含量は3.4重量%、融解温度ピークは144.8℃であった。得られたHMS−7の分析結果を表3に示した。
【0134】
(3−8)HMS−8の製造
(3−8a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(I)とした以外はHMS−3と同様の方法で実施した。
(3−8b)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持するように液化プロピレンを35Kg/h供給し、更に気相部の1−ブテン濃度を10.1vol%を保持するように液状1−ブテン供給し、TEAを53mmol/h、tBunPrDMSを4.7mmol/hおよび上記(3−8a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.7g/h供給し、実質的に水素の不存在下でプロピレン−1−ブテンの連続共重合を行い、4.4Kg/hの重合体を得た。得られた重合体の極限粘度[η]は8.4dl/gであり、1−ブテン含量は7.4重量%、融解温度ピークは149.8℃であった。得られたHMS−8の分析結果を表3に示した。
【0135】
(3−9)HMS−9の製造
(3−9a)予備重合
固体触媒成分を固体触媒成分(I)に変更した以外は、HMS−3と同様の方法で実施した。
(3−9b)本重合
300LSUS製攪拌機付き重合槽において、重合温度60℃、スラリー量95Lを維持するように液化プロピレンを35Kg/h供給し、更に気相部のエチレン濃度を2.8vol%を保持するようにエチレン供給し、TEAを51mmol/h、tBunPrDMSを5mmol/hおよび上記(3−9a)で作成した予備重合体スラリーを固体触媒成分として1.0g/h供給し、実質的に水素の不存在下でプロピレン−エチレンの連続共重合を行い、6.1Kg/hの重合体を得た。得られた重合体は失活することなく第2槽目に連続的に移送した。第2槽目は内容積1m3のSUS製攪拌機付き流動床気相反応器において、重合温度70℃、重合圧力1.8MPaおよび気相部のエチレン濃度を1.9vol%を保持するように、プロピレンとエチレンを連続的に供給し、水素の実質的に不存在下で第1槽目より移送された固体触媒成分含有重合体で連続気相重合を継続し、15.7Kg/hの重合体を得た。得られたポリマーがプロピレン系重合体成分(A1)に相当し、その極限粘度[η]は8.7dl/gであり、エチレン含量は3.5重量%、融解温度ピークは144.8℃であり、分析結果を表3に示した。次いで、得られた重合体は失活することなく第3槽目に連続的に移送した。第3槽目は内容積1m3のSUS製攪拌機付き気相流動床反応器において、重合温度85℃、重合圧力1.4MPaおよび気相部の水素濃度を11.7vol%に保持するようにプロピレンおよび水素を連続的に供給し、第2槽目より供給された固体触媒成分を含有する重合体でプロピレンを連続気相重合を継続する事により25.6Kg/hの重合体を得た。得られた重合体がHMS−9であり、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に相当し、その重合体の極限粘度[η]は5.7dl/gであった。以上の結果から、第1槽目+第2槽目の重合量と第3槽目の重合体比は61:39であり、第3槽目で重合された重合体の極限粘度[η]は0.9dl/gと求められた。
【0136】
(3−10)HMS−10の重合
本重合における、第1槽目、第2槽目の気相部のエチレン濃度および固体触媒成分の供給量および第3槽目の気相部水素濃度を変更した以外はHMS−9と同様の方法で実施し、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に相当するHMS−10を得た。第2槽目までに生成した重合体がプロピレン系重合体(A1)に相当し、その極限粘度[η]は8.2dl/g、エチレン含量は2.0重量%および融解温度ピーク150.8℃であり、分析結果を表3に示した。第1槽目+第2槽目の重合量と第3槽目の重合量の比は60:40で有り、第3槽目で重合された重合体の極限粘度1.1dl/gである重合体を得た。
【0137】
(3−11)HMS−11の製造
本重合における、第1槽目、第2槽目に供給したコモノマーを1−ブテンに変更し、気相部の1−ブテン濃度および固体触媒成分の供給量を調整した以外はHMS−10と同様の方法で実施し、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に相当するHMS−11を得た。第2槽目までに生成した重合体がプロピレン系重合体(A1)に相当し、その極限粘度[η]は7.6dl/g、1−ブテン含量は6.5重量%および融解温度ピーク150.7℃であり、分析結果を表3に示した。第1槽目+第2槽目の重合量と第3槽目の重合量の比は47:53で有り、第3槽目で重合された重合体の極限粘度1.1dl/gである重合体を得た。
【0138】
(3−12)HMS−12の製造
本重合における、第1槽目、第2槽目の気相部の1−ブテン濃度および固体触媒成分の供給量を調整した以外はHMS−11と同様の方法で実施し、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に相当するHMS−11を得た。第2槽目までに生成した重合体がプロピレン系重合体(A1)に相当し、その極限粘度[η]は7.3dl/g、1−ブテン含量は8.2重量%および融解温度ピーク148.0℃であり、分析結果を表3に示した。第1槽目+第2槽目の重合量と第3槽目の重合量の比は45:55で有り、第3槽目で重合された重合体の極限粘度1.1dl/gである重合体を得た。
【0139】
実施例1
プロピレン単独重合体パウダー(HPP−5)20重量%とプロピレン単独重合体パウダー(HPP−6)75重量%及び、プロピレン系重合体パウダー(HMS−1)5重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加しドライブレンドした後、40mmφ単軸押し出し機(220℃、スクリーンパック:日本精線製金属繊維焼結フィルターNF13D)で3回繰り返し造粒し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。表4に各成分の配合割合と造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、ブツ数−1(フィルム10cm2当たりに観察される200μm以上の大きさを有するブツの数)および機械物性の評価結果を示した。
【0140】
実施例2〜4
表4に示した各成分の配合割合で、実施例1と同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、ブツ数−1(フィルム10cm2当たりに観察される200μm以上の大きさを有するブツの数)および機械物性の評価結果を表4に示した。
【0141】
比較例1〜4
表5に示した各成分の配合割合で、実施例1と同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、ブツ数−1(フィルム10cm2当たりに観察される200μm以上のブツの数)および機械物性の評価結果を表5に示した。
【0142】
実施例5
プロピレン−エチレンブロック共重合体(i)パウダー(BCPP−1)65重量%とプロピレン単独重合体パウダー(HPP−5)30重量%との混合物(iii)、及びプロピレン系重合体組成物(MB−1)5重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加しドライブレンドした後、40mmφ単軸押し出し機(220℃、スクリーンパック:日本精線製金属繊維焼結フィルターNF13D)で造粒し、ポリプロピレン系樹脂組成物を得た。
【0143】
上記のプロピレン系重合体組成物(MB−1)とは、プロピレン単独重合体パウダー(HPP−5)50重量%とプロピレンを主体とするプロピレン系重合体パウダー(HMS−7)50重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、安定剤としてステアリン酸カルシウム(日本油脂製)0.05重量部、3,9−ビス[2−{3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ}−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン(スミライザーGA80、住友化学製)0.05重量部、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(ウルトラノックスU626、GEスペシャリティーケミカルズ製)0.05重量部を添加しドライブレンドした後、Φ40mm単軸押し出し機(220℃、スクリーンパック:#100の金網)で造粒したプロピレン系重合体組成物であり、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に相当するものである。表6に示した各成分の配合割合で造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、ブツ数−1(フィルム10cm2当たりに観察される200μm以上の大きさを有するブツの数)の評価結果を表6に示した。
【0144】
実施例6〜14
表6(実施例6〜9)または表7(実施例10〜14)に示した各成分の配合割合で、実施例5と同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、ブツ数−1(フィルム10cm2当たりに観察される100μm以上及び200μm以上の大きさを有するブツの数)の評価結果を、それぞれ表6(実施例6〜9)または表7(実施例10〜14)に示した。
【0145】
実施例6〜9で用いた(MB−2)、(MB−3)は以下に示した樹脂組成物であり、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に相当するものである。
(MB−2):
プロピレン単独重合体パウダー(HPP−5)50重量%とプロピレン系重合体パウダー(HMS−8)50重量%からなる樹脂組成物。
(MB−3):
プロピレン単独重合体パウダー(HPP−5)50重量%とプロピレン系重合体パウダー(HMS−3)50重量%からなる樹脂組成物。
また、上記の(MB−2)および(MB−3)は、実施例5に記載の(MB−1)と同じ安定剤を用いて、同様の造粒方法でペレット化したものである。
【0146】
比較例5〜12
表8(比較例5〜8)または表9(比較例9〜12)に示した各成分の配合割合で、実施例5と同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、ブツ数−1(フィルム10cm2当たりに観察される200μm以上のブツの数)の評価結果を、それぞれ表8(比較例5〜8)または表9(比較例9〜12)に示した。
【0147】
比較例5〜8で用いた(MB−4)は以下に示した樹脂組成物であり、プロピレン系重合体マスターバッチ(E)に相当するものである。
(MB−4):
プロピレン単独重合体パウダー(HPP−5)50重量%とプロピレン系重合体パウダー(HMS−5)50重量%からなる樹脂組成物。
また、上記の(MB−4)は、実施例5に記載の(MB−1)と同じ安定剤を用いて、同様の造粒方法でペレット化したものである。
【0148】
実施例15
実施例1記載のポリプロピレン系樹脂組成物60重量%、プロピレン単独重合体(F)パウダー(HPP−4)6重量%、エラストマー(G)としてオクテン−1の含有量が24重量%でメルトフローレート(MFR、JIS-K-6758、190℃)が5g/10分であるエチレン−オクテン−1ランダム共重合体(EOR)14重量%、無機充填材(H)として平均粒子径2.5μmのタルク20重量%からなる樹脂組成物100重量部に対して、実施例5と同じ安定剤を添加しタンブラーで均一に予備混合した後、二軸混練押出機(日本製鋼所社製TEX44SS 30BW−2V型)を用いて、押出量を30〜50kg/hrで、スクリュー回転数を350rpmで、ベント吸引下で混練押出して、ポリプロピレン系樹脂組成物を製造した。スクリュ−は三条タイプのローターとニーディングディスクを混練ゾーン2ヶ所、各々第1フィード口、第2フィード口の次のゾーンに配置して構成した。
【0149】
表10に各成分の配合割合と、得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク及びブツ外観、機械的物性の評価結果を示した。
【0150】
実施例16
実施例15で用いたポリプロピレン系樹脂組成物を実施例10に記載のポリプロピレン系樹脂組成物に変更した以外は実施例15と同様の方法で実施した。
表10に各成分の配合割合と、得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク及びブツ外観、機械的物性の評価結果を示した。
【0151】
比較例13および14
実施例15で用いたポリプロピレン系樹脂組成物を、それぞれ比較例5または比較例9に記載のポリプロピレン系樹脂組成物に変更した以外は実施例15と同様の方法で実施した。
表10に各成分の配合割合と、得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク及びブツ外観、機械的物性の評価結果を示した。
【0152】
実施例17
実施例15で用いたポリプロピレン系樹脂組成物をプロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP−4)49重量%と、プロピレン単独重合体パウダー(HPP−7)45.5重量%と、プロピレン系重合体組成物(HMS−9)5.5重量%の配合割合で実施例5と同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物に変更した以外は実施例15と同様の方法で実施した。
表11に各成分の配合割合と得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク及びブツ外観、機械的物性の評価結果を示した。
【0153】
実施例18
プロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP−5)53重量%と、プロピレン単独重合体パウダー(HPP−8)43重量%と、プロピレン系重合体組成物(HMS−9)4重量%の配合割合で実施例5と同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物50重量%、プロピレン単独重合体(F)パウダー(HPP−4)10重量%、エラストマー(G)としてオクテン−1の含有量が23重量%でメルトフローレート(MFR、JIS-K-6758、190℃)が1g/10分であるエチレン−オクテン−1ランダム共重合体(EOR)25重量%、無機充填材(H)として平均粒子径2.5μmのタルク15重量%からなる樹脂組成物100重量部に変更した以外は実施例15と同様の方法で実施した。
表11に各成分の配合割合と、得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク及びブツ外観、機械的物性の評価結果を示した
【0154】
実施例19
プロピレン−エチレンブロック共重合体パウダー(BCPP−6)75.5重量%と、プロピレン系重合体組成物(HMS−9)4重量%の配合割合で実施例5と同様の方法でドライブレンドした後、造粒して得られたポリプロピレン系樹脂組成物72.5重量%、エラストマー(G)としてオクテン−1の含有量が24重量%でメルトフローレート(MFR、JIS-K-6758、190℃)が5g/10分であるエチレン−オクテン−1ランダム共重合体(EOR)8.5重量%、無機充填材(H)として平均粒子径2.5μmのタルク16重量%からなる樹脂組成物100重量部に変更した以外は実施例15と同様の方法で実施した。
表11に各成分の配合割合と、得られたポリプロピレン系樹脂組成物のMFR、ダイスウェル、フローマーク及びブツ外観、機械的物性の評価結果を示した。
【0155】
【表1】
Figure 0004019748
【0156】
【表2】
Figure 0004019748
【0157】
【表3】
Figure 0004019748
【0158】
【表4】
Figure 0004019748
【0159】
【表5】
Figure 0004019748
【0160】
【表6】
Figure 0004019748
【0161】
【表7】
Figure 0004019748
【0162】
【表8】
Figure 0004019748
【0163】
【表9】
Figure 0004019748
【0164】
【表10】
Figure 0004019748
成形品ブツ外観目視
○:ブツの存在は確認されなかった。
△:ブツの存在がわずかに確認された。
【0165】
【表11】
Figure 0004019748
成形品ブツ外観目視
○:ブツの存在は確認されなかった。
△:ブツの存在がわずかに確認された。
【0166】
本発明の要件を満足する実施例1〜19は、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、ブツの発生が少ない等の外観に優れ、かつ剛性と靭性のバランスに優れたものであることが分かる。
【0167】
これに対して、比較例1はプロピレン系重合体成分(A1)の融解温度ピークTmA1が、本発明の要件を満足しないために引っ張り伸び(UE)が低く、比較例2はプロピレン系重合体成分(A1)の融解温度ピークTmA1が、本発明の要件を満足しないために曲げ弾性率(FM)が低く、比較例3、4はプロピレン系重合体成分(A1)が含まれないためにダイスウェルが低く、流動性(MFR)と引っ張り伸び(UE)のバランスが十分でない事が分かる。
【0168】
また、比較例5〜8はプロピレン系重合体成分(A1)の融解温度ピークTmA1が、本発明の要件を満足しないためにブツが多く、比較例9〜12はプロピレン系重合体成分(A1)が含まれないためにダイスウェルが低くいことが分かる。
【0169】
そして、比較例13はプロピレン系重合体成分(A1)の融解温度ピークTmA1が、本発明の要件を満足しないために引っ張り伸び(UE)が低く、比較例14はプロピレン系重合体成分(A1)が含まれないためにダイスウェルが低く、フローマーク外観が不良であることが分かる。
【0170】
【発明の効果】
以上、詳述したとおり、本発明により、成形体にした場合、フローマークの発生が起こりにくく、即ち、ダイスウェルが高く、ブツの発生が少ない等の外観に優れ、かつ剛性と靭性のバランスに優れたポリプロピレン系樹脂組成、その製造方法およびそれからなる射出成形体を得ることができる。

Claims (10)

  1. 135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A1が5dl/g以上であり、示差走査熱量計によって測定される融解ピーク温度TmA1が130〜160℃であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(A1)0.5〜10重量%と、
    135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]A2が5dl/g未満であるプロピレンを主体とする単量体を重合して得られるプロピレン系重合体成分(A2)90〜99.5重量%とを含むことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。(但し、成分(A1)と成分(A2)の合計量を100重量%とする。)
  2. プロピレン系重合体成分(A2)が、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]BPが1.5dl/g以下であるプロピレン重合体成分(B)50〜94.5重量%と135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η]CEPが8dl/g以下でありエチレン含有量が20〜70重量%であるプロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)5〜40重量%からなることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。(但し、成分(A1)と成分(B)と成分(C)の合計量を100重量%とする。)
  3. プロピレン系重合体成分(A1)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η] A1 が6〜9dl/gであり、示差走査熱量計によって測定される融解ピーク温度Tm A1 が135〜155℃であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  4. プロピレン系重合体成分(A1)が、エチレン含量が1〜7重量%であるプロピレンとエチレンのランダム共重合体であることを特徴とする請求項1記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  5. プロピレン重合体成分(B)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η] B P が0.7〜1.5dl/gであり、プロピレン−エチレンランダム共重合体成分(C)の135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η] C EP が1.5〜5dl/gであることを特徴とする請求項2に記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  6. ポリプロピレン系樹脂組成物のメルトフローレート(MFR)が5〜150g/10分であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  7. ポリプロピレン系樹脂組成物のGPCで測定した分子量分布Q値(Mw/Mn)が10未満であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  8. ポリプロピレン系樹脂組成物のダイスウェルが1.6以上であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物35〜88重量%、135℃のテトラリン中で測定される極限粘度[η] F が2以下であるプロピレン単独重合体(F)0〜20重量%、エラストマー(G)10〜35重量%、および無機充填剤(H)2〜30重量%を含むことを特徴とするポリプロピレン系樹脂組成物。
  10. 請求項1〜9のいずれかに記載のポリプロピレン系樹脂組成物からなることを特徴とする射出成形体。
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