JP3920033B2 - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層ポリエステルフイルムに関し、さらに詳しくは電磁変換特性、走行耐久性に優れた磁気記録媒体、特にデジタル信号を記録・再生する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体、例えばデジタルビデオカセットテープ、データストレージテープ等のベースフィルムとして有用な積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度記録化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリングなどの物理沈着法またはメッキ法により非磁性支持体上に形成させた強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の開発、実用化が進められている。具体的には、Coの蒸着テープ(特開昭54―147010号公報)、Co―Cr合金からなる垂直磁気記録媒体(特開昭52―134706号公報)などが知られている。
【0003】
従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚く、また記録密度が低く、記録波長も長い。これに対し、強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の金属薄膜(磁性層)は、厚みが0.2μm以下と非常に薄くなっている。
【0004】
このため、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁性層の表面性に影響する程度は、金属薄膜の方が遥かに大きい。すなわち、強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の場合、非磁性支持体の表面状態が、そのまま金属薄膜の表面凹凸として発現し、それが記録・再生信号の雑音の原因となる。従って、非磁性支持体の表面は、できるだけ平滑であることが望ましい。
【0005】
一方、非磁性支持体の製膜、加工工程での搬送、巻き取り、巻出しといったハンドリングの観点からは、フィルムが滑り性に優れることが好ましい。フィルム表面が平滑過ぎると、フィルム―フィルム相互の滑り性が悪化し、かつまた表面に傷が生じ易くなり、製品歩留りの低下、ひいては製造コストの上昇をきたす。従って、製造コストという観点では、非磁性支持体の表面は、できるだけ粗いことが好ましい。
【0006】
また、金属薄膜型磁気記録媒体の場合には、金属薄膜とベースフィルムとの密着性を良好にするため、通常、金属薄膜成形前にイオンボンバード処理と呼ばれる、ベースフィルム表面をイオンにより活性化する処理を行なう。そして、金属薄膜成形時には、フィルム表面にかなり高温の熱がかかるので、ベースフィルムが融解したり、あるいは機械特性などの物性が低下しないように、フィルム背面からの冷却を行なう。背面冷却の方法としては、通常、ドラム状冷却体にベースフィルムを巻き付ける方法が採用されるが、その際、ドラム表面に金属薄膜が形成されないようにベースフィルム両端をマスキングする。
【0007】
従って、上記蒸着工程を通過したフィルムの両端部には、このマスキングによって金属薄膜の形成されなかった部分が、イオンボンバード処理によって表面活性化された状態のままで、長手方向に連続的に存在する。そして、この部分は、フィルムをロール状に巻き上げたとき、反対面側と高い力で接触することになり、ブロッキングを引き起しやすくなる。金属薄膜型磁気記録媒体を製造する際には、金属薄膜を蒸着した後に、バックコート層および必要に応じてトップコート層を設けるが、これらの加工工程において上記ブロッキングが発生していると、ベースフィルムの切断やしわが発生しやすくなり、収率が大幅に低下するという問題が生じる。このようなブロッキングを防ぐためには、非磁性支持体の表面は粗い方が好ましい。
【0008】
このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性という観点からは平滑であることが要求され、ハンドリング性、製造コスト、ブロッキング防止の観点からは、粗いことが要求される。
【0009】
上記のような相反する要求を満たすため、2つの層からなり、一方の層の表面よりも他方の層の表面を粗くした積層フィルム(例えば特公平1−26338号)が提案されている。しかし、この積層フィルムは、粗面層表面の高い突起が平坦面層表面に転写したり、粗面層に添加した大きな粒子による平坦面層の突き上げ効果により、磁気記録媒体としたときの電磁変換特性が悪化してしまうという問題を抱えている。
【0010】
また、フイルム内部の触媒残渣(微粒子)によって表面平滑性が低下するのを防止する方策として、平滑な層の原料としてゲルマニウム化合物を重合触媒とし、特定量のゲルマニウムとリンを含有するポリエステルを使用した積層フイルム(例えば特開平12−15695号)が提案されている。しかし、この積層フイルムは製造時あるいは先述の金属薄膜加工工程において、粗面層からの突起の脱落やオリゴマー等、異物のブリードアウトが生じ、各製造工程でこれら異物が平坦な層の平滑性を低下させるという問題を抱えている。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、耐ブロッキング性、加工適性に優れ、金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性、走行耐久性を奏する積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、本発明によれば、ポリエステル層Aと、該層Aの片面に積層した、環状3量体の含有量が0.8重量%以下であり、ポリマーの末端カルボキシル基濃度が35eq/106g以下であり、かつ平均粒径が50〜1000nmでかつ層A中の不活性粒子Aの平均粒径よりも大きい不活性粒子Bを0.001〜1重量%含有するポリエステル層Bよりなり、かつポリエステル層B表面の十点平均粗さ(WRzB)が30〜300nmである積層ポリエステルフイルムによって達成される。
【0013】
本発明は、好ましい態様として、ポリエステル層Bがゲルマニウム元素(Ge)を1〜50ppm含有すること、ポリエステル層Bがアンチモン元素(Sb)を10〜350ppm含有すること、ポリエステル層Bが炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを含有すること、ポリエステル層A表面の表面粗さ(WRaA)が0.1〜4nmであること、ポリエステル層Aが平均粒径30〜400nmの不活性粒子Aを0.001〜0.2重量%含有するか、実質的に不活性粒子を含有しないこと、ポリエステル層Aの表面に皮膜層Cが積層されていること、皮膜層Cが平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有すること、層Aまたは層Bのポリエステルがポリエチレンテレフタレートか、ポリエチレン−2,6−ナフタレートであること、フィルムの厚さが2μm以上8μm未満であること、ポリエステル層Aまたは皮膜層Cの表面が磁性層を設ける面であること、磁性層が強磁性金属薄膜層であることなどを包含する。
【0014】
また、本願発明は上記積層ポリエステルフイルムを支持体とする磁気記録媒体を包含する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bを積層した積層フィルムである。
【0016】
前記ポリエステル層A、層Bを形成するポリエステルA、Bとしては、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルが挙げられるが、特に芳香族ポリエステルが好ましい。ポリエステルA、Bは同じ種類でも、異なる種類であっても良い。
【0017】
前記芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などを例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0018】
これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、本発明の効果を損なわない限り、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0019】
さらにトリメリット酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトールなどの3官能以上の多官能化合物を共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。
【0020】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても、上記と同様に考えるとよい。
【0021】
更に上記ポリエステルには本発明の効果を損なわない程度であれば、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、酸化チタン等)の如き添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0022】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、層Bが同じポリエステルからなるのが好ましいが、異なるポリエステルからなってもよい。例えば、層A、層Bが共にポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムが好ましいが、層A(又は層B)がポリエチレンテレフタレート、層B(又は層A)がポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムであっても良い。
【0023】
本発明におけるポリエステル層Aを形成するポリエステルAは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで反応生成物を重縮合せしめる方法で製造することができる。
【0024】
上述の方法(溶融重合)により得られたポリエステルは、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとすることができる。
【0025】
この重合においては公知の触媒を用いることができ、溶融重合でのエステル交換触媒としてはマンガン、カルシウム、マグネシウム、チタンの酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が好ましく、特に酢酸塩即ち、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸チタンが好ましく挙げられる。
【0026】
また、重縮合触媒としては、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物が挙げられる。
【0027】
前記アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン等が好ましく挙げられる。
【0028】
前記チタン化合物としては、有機チタン化合物が好ましく挙げられ、例えば特開平5−298670号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、チタンのアルコラートや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応物等を例示でき、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。
【0029】
また、前記ゲルマニウム化合物としては、例えば特許2792068号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、(イ)無定形酸化ゲルマニウム、(ロ)結晶性ゲルマニウム、(ハ)酸化ゲルマニウムをアルカリ金属又はアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解した溶液、および(ニ)酸化ゲルマニウムを水に溶解し、これにグリコールを加え水を留去して調製した酸化ゲルマニウムのグリコール溶液、等を挙げることができる。
【0030】
また、前記ポリエステルAには熱安定性を維持するために、従来ポリエステルの製造工程で添加されるリン化合物を含有することが好ましい。このリン化合物は特に限定されないが、正リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェートが好ましく挙げられる。
【0031】
本発明におけるポリエステル層Aは、実質的に粒子を含有しないものでもよく、不活性粒子Aを含有するものでもよい。ポリエステル層Aが実質的に粒子を含有しない場合、磁気記録媒体としたとき優れた電磁変換特性が得られるが、電磁変換特性に悪影響を与えない範囲の粒子を含有させると、走行耐久性の向上を図ることができる。具体的には、体積形状係数0.1〜π/6、平均粒径30〜400nmの不活性粒子Aを、ポリエステル層Aに対し、0.001〜0.2重量%含有させることが好ましい。
【0032】
好ましい不活性粒子Aとしては、例えば、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)、および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる微粒子が挙げられる。これらのうち、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、その他酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、合成炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ダイアモンド、またはカオリンからなる微粒子が好ましい。さらに好ましくは、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、その他酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、または炭酸カルシウムからなる微粒子である。
【0033】
これらの不活性粒子は1種または2種以上のものを使用してもよい。不活性粒子Aが平均粒径の違う2種以上の粒子からなる場合、小さい平均粒径の第2、第3の粒子(微細粒子)として、例えばコロイダルシリカ、α、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどの微粒子を好ましく用いることができる。また、不活性粒子Aとして例示した粒子種のうち、平均粒径の小さい微細粒子も、第2、第3の粒子(微細粒子)として用いることができる。
【0034】
前記不活性粒子Aの形状は、後述する体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらには0.2〜π/6、特に0.4〜π/6であることが好ましい。また、不活性粒子Aの平均粒径dAは30〜400nm、さらには40〜200nm、特に50〜100nmであることが好ましい。この平均粒径dAが30nm未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方400nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0035】
前記不活性粒子AをポリエステルAに含有させる場合の含有量は、ポリエステル層Aに対し、好ましくは0.001〜0.2重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%、特に好ましくは0.02〜0.06重量%である。この量が0.001重量%未満であると、フィルムの滑り性向上が充分でなく、一方0.2重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0036】
本発明におけるポリエステル層Bを形成するポリエステルBは、ポリエステル層Aを形成するポリエステルAと同様、従来から知られている方法で製造することができる。その際、公知の触媒を用いることができ、ポリエステルAと同様の触媒を使用するのが好ましく挙げられる。また、ポリエステルAと同様にリン化合物を含有することが好ましい。
【0037】
前記ポリエステルBは、ゲルマニウム元素(Ge)を1〜50ppm含有することが、ポリエステル層Bでの不活性粒子Bによる突起の脱落を抑制する点、及びオリゴマー等異物のマイグレーションによる工程汚染を抑制する点で好ましい。更に好ましくは5〜40ppmの範囲で含有することである。
【0038】
前記ポリエステルBにゲルマニウム元素を含有させる方法としては、ポリエステルBの重合触媒としてゲルマニウム化合物を用いるのが好ましい。その際、ゲルマニウム化合物(触媒)は単独で使用しても良いし、ゲルマニウム化合物(触媒)以外の他の金属化合物(触媒)と併用しても良い。また、ゲルマニウム化合物(触媒)単独で重合して得られるポリエステルとゲルマニウム化合物(触媒)以外の金属化合物(触媒)で重合して得られるポリエステルを適宜混合して、必要なゲルマニウム元素の含有量に調整しても良い。
【0039】
前記ゲルマニウム化合物としては、特に限定されないが、ポリエステルAで例示したものが好ましく挙げられる。
【0040】
前記ポリエステルBは、また、アンチモン元素(Sb)を10〜350ppm含有することが、ポリエステル層Bでの不活性粒子Bによる突起の脱落を抑制する点、及びオリゴマー等異物のマイグレーションによる工程汚染を抑制する点で好ましい。更に好ましくは、20〜300ppmの範囲である。
【0041】
前記ポリエステルBにアンチモン元素を含有させる方法としては、ポリエステルBの重合触媒としてアンチモン化合物を用いるのが好ましい。その際、アンチモン化合物(触媒)は単独で使用しても良いし、アンチモン化合物(触媒)以外の他の金属化合物(触媒)と併用しても良い。また、アンチモン化合物(触媒)単独で重合して得られるポリエステルとアンチモン化合物(触媒)以外の金属化合物(触媒)で重合して得られるポリエステルを適宜混合して、必要なアンチモン含有量に調整しても良い。
【0042】
前記アンチモン化合物としては、特に限定されないが、ポリエステルAで例示したものが好ましく挙げられる。
【0043】
本発明におけるポリエステル層Bは、環状3量体の含有量が0.8重量%以下である必要がある。好ましくは0.7重量%であり、特に好ましくは0.6重量%である。ポリエステル層Bに含まれる環状3量体の量が0.8重量%を超えると、フイルム製造時あるいは金属薄膜加工工程において環状3量体が主体のオリゴマー等、異物のブリードアウトが生じ、各製造工程でこれら異物が層Aの平滑性を低下させる問題が生じ、好ましくない。
【0044】
前記ポリエステル層Bに含有される環状3量体の量を低減させる方法としては、通常、固相重合法、抽出法、加水分解法等の公知の方法が用いられる。また、かかる公知の方法によって原料ポリマーの段階で環状3量体の量が低減されても、フイルム製造の溶融押出工程での環状3量体の再生によって、所望の効果を得ることができない場合がある。その場合には、フィルム製造時の溶融押出し条件をマイルドにしたり、原料ポリマーでの含有環状3量体量を0.4重量%以下にするのが好ましい。また、特開平5−222171号等に開示されているように、環状3量体を低減せしめた原料ポリマーを70℃以上で3時間以上水と接触させたり、水蒸気と接触させたりして該ポリエステルの残存触媒活性を低減させることにより、フイルム製造時に再生される環状3量体を抑制させる方法も、ポリエステル層B中の含有量を0.8重量%以下にする手段として極めて有効である。
【0045】
本発明におけるポリエステル層Bは、また、ポリマーの末端カルボキシル基濃度が35eq/106g以下である必要がある。好ましくは30eq/106g以下である。この末端カルボキシル基濃度が35eq/106gを超えると、ポリエステル層B中のオリゴマー等の異物がブリードアウトしやすくなり、ポリエステル層Aに転写することによって平滑性を低下するので好ましくない。ポリエステルBの末端カルボキシル基濃度を35eq/106g以下にするには、従来公知の方法が用いられる。例えば、製膜時の溶融押出し工程でマイルドな条件を採用して末端カルボキシル基の増加を抑制したり、固相重合によって予め低下させておく方法が用いられる。
【0046】
本発明におけるポリエステル層Bは、ポリエステル層Aに含有される不活性粒子Aより平均粒径の大きな不活性粒子Bを含有することが必要である。不活性粒子Bの平均粒径が不活性粒子Aの平均粒径よりも小さい場合、フイルム製造工程及び金属薄膜成形工程でのブロッキング等の問題が生じる。不活性粒子Bの平均粒径(dB)は50〜1,000nm、好ましくは100〜800nm、さらに好ましくは150〜700nm、特に好ましくは200〜600nmである。そして、不活性粒子Bの含有量は、層Bに対し、0.001〜1重量%、好ましくは0.005〜0.8重量%、さらに好ましくは0.01〜0.6重量%、特に好ましくは0.01〜0.2重量%である。
【0047】
好ましい不活性粒子Bとしては、前記不活性粒子Aと同様の粒子が挙げられ、1種または2種以上のものを使用してもよい。
【0048】
前記不活性粒子Bの平均粒径が50nm未満、または含有量が0.001重量%未満であると、フィルムの巻取り性、耐ブロッキング性が不良となる。一方、平均粒径が1,000nmを超えるか、または含有量が1重量%を超えると、ポリエステル層Aの表面への突起の形状転写や、層Aの下からの突起の突き上げによって電磁変換特性を悪化させる。
【0049】
前記ポリエステル層Bは、不活性粒子B以外に該不活性粒子Bよりも平均粒径が小さい、第2、第3の粒子(微細粒子)を含有してもよい。この微細粒子の平均粒径は、好ましくは5〜450nm、さらに好ましくは10〜400nm、特に好ましくは30〜350nmである。また、第2、第3の粒子(微細粒子)の含有量は、層Bに対し、好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.7重量%、特に好ましくは0.02〜0.5重量%である。
【0050】
本発明における積層ポリエステル層Bは、さらに、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを0.001〜1重量%含有するのが好ましい。ここで、(部分ケン化)エステルワックスとは、エステルワックスと部分ケン化エステルワックスを包含するものである。
【0051】
前記脂肪族モノカルボン酸の炭素数は8個以上、好ましくは8〜34個である。この炭素数が8個未満であると、得られたエステル生成物の耐熱性が不充分で、ポリエステルに分散させる際の加熱条件で、該エステル生成物が容易に分解されてしまうため、不適切である。
【0052】
前記炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸としては、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ペヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヘントリアコンタン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびこれらを含む混合物などが挙げられる。
【0053】
前記(部分ケン化)エステルワックスのアルコール成分は、水酸基を2個以上有する多価アルコールである。さらに耐熱性の観点から、水酸基を3個以上有する多価アルコールであることが好ましい。モノアルコールを用いたのでは、生成した(部分ケン化)エステルワックスの耐熱性が不足する。
【0054】
前記水酸基を2個有する多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましい例として挙げられる。水酸基を3個以上有する多価アルコールとしては、グリセリン、エリスリット、トレイット、ペンタエリスリット、アラビット、キシリット、タリット、ソルビット、マンニットなどが好ましい例として挙げられる。
【0055】
前記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールから得られるエステルワックスとしては、多価アルコールの水酸基の数にもよるが、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどが挙げられる。これらの中、耐熱性の観点から、モノエステルよりもジエステルが、ジエステルよりもトリエステルが好ましい。好ましいエステルワックスとしては、具体的にはソルビタントリステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
【0056】
前記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる部分ケン化エステルワックスは、多価アルコールを炭素数が8個以上の高級脂肪酸で部分エステル化したのち、2価以上の金属水酸化物でケン化することにより得られる。具体的には、例えばモンタン酸ジオールエステルを水酸化カルシウムでケン化した、ワックスE、ワックスOP、ワックスO、ワックスOM、ワックスFL(全て、ヘキスト(株)社製商品名)などが挙げられる。かかる(部分ケン化)エステルワックスは1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0057】
前記(部分ケン化)エステルワックスの層Bへの添加量は、0.001〜1重量%、好ましくは0.003〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.5重量%、特に好ましくは0.01〜0.3重量%含有する。この(部分ケン化)エステルワックスの含有量が0.001重量%未満であると、フィルムの巻取り性の向上が不十分であり、ブロッキング改良効果も得られない。一方、1重量%を超えると、フィルム製造工程で、ロール上に巻き上げたときに接する反対側の面に、ブリードアウトによってワックス成分が多量に転写され、そのため、例えば金属蒸着層とベースフィルムの接着性を妨げるなどの弊害を生じる。
【0058】
また、前記ポリエステル層B表面の十点平均粗さ(WRzB)は30〜300nm、好ましくは40〜250nm、特に好ましくは50〜200nmである。このWRzBが30nm以下では、ハンドリング性が悪く、十分な生産性をあげることができず、また、ブロッキング改良効果も不十分となる。一方、300nmを超えると、磁気層を設ける側の面(ポリエステル層Aの表面)への突起の形状転写が大きくなり、電磁変換特性を損なうことがあり、好ましくない。
【0059】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、磁気テープとした場合の諸特性向上のため、磁性層を設ける側の面、すなわちポリエステル層Aの表面(ポリエステル層Bと接していない表面)に皮膜層Cを設けることが好ましい。
【0060】
この皮膜層Cは、平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有していることが好ましい。
【0061】
前記皮膜層Cを形成する樹脂としては、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0062】
この水性ポリエステル樹脂としては、酸成分が、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウム、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩、p−ヒドロキシ安息香酸などの多価カルボン酸の1種以上よりなり、グリコール成分が、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などの多価ヒドロキシ化合物の1種以上より主としてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、ポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマーまたはブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな粒子内で特定の物理的構成(IPN(相互侵入高分子網目)型、コアシェル型など)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。また、これらは親水性を付与するため、分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位などが導入されていてもよい。
【0063】
前記皮膜層Cに含有される不活性粒子Cとしては、特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重のものが好ましい。例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどの耐熱樹脂からなる有機粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどの無機物からなる粒子が好ましく挙げられる。なかでも、架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が特に好ましく挙げられる。
【0064】
前記不活性粒子Cの平均粒径dCは10〜50nm、好ましくは12〜45nm、さらに好ましくは15〜40nmである。この平均粒径が10nm未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方50nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0065】
前記不活性粒子Cの形状は、下記式(I)で表わされる体積形状係数(f)が0.1〜π/6、好ましくは0.2〜π/6、さらに好ましくは0.4〜π/6であるものである。
【0066】
【数1】
【0067】
〔ここで、fは体積形状係数、Vは粒子の体積(μm3)、Dは粒子の平均粒径(μm)である。〕
【0068】
なお、体積形状係数(f)がπ/6である粒子の形状は、球(真球)である。すなわち、体積形状係数(f)が0.4〜π/6のものは、実質的に球ないしは真球、ラグビーボールのような楕円球を含むものであり、不活性粒子Cとして好ましい。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、走行耐久性の向上効果が低下してしまうので好ましくない。
【0069】
前記不活性粒子Cの含有量は、皮膜層C(塗液の固形分)に対し、0.5〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。この含有量が0.5重量%未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方30重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0070】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの表面(皮膜層Cを設ける場合は皮膜層Cの表面)の表面粗さ(WRaA)が0.1〜4nm、好ましくは0.2〜3.5nm、さらに好ましくは0.3〜3.0nm、特に好ましくは0.4〜2.5nmである。このWRaAが0.1nm未満であると、滑り性が悪く、フィルムの製造が極めて困難であり、一方WRaAが4nmを超えると、電磁変換特性が悪化するので好ましくない。
【0071】
この表面粗さ(WRaA)は、皮膜層Cに含有させる不活性粒子Cの粒径と量、および/またはポリエステル層Aに含有させる不活性粒子Aの粒径と量によって調整することができる。
【0072】
本発明における積層ポリエステルフィルムの全厚みは、2μm以上8μm未満であることが好ましく、さらに好ましくは2.5〜7.5μmである。ポリエステル層Aとポリエステル層Bの厚み構成は、好ましくは層Bの厚みが積層フィルムの全厚みの1/50〜1/2、さらに好ましくは1/30〜1/3、特に好ましくは1/20〜1/4である。皮膜層Cの厚みは、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは3〜10nm、特に好ましくは3〜8nmである。
【0073】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、従来から知られている、または当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。そのうち、ポリエステル層Aとポリエステル層Bとの積層構造は、共押出し法により製造するのが好ましく、皮膜層Cの積層は塗布法により行うのが好ましい。
【0074】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で不活性粒子B及び所望により(部分ケン化)エステルワックスを微分散、含有させたポリエステルBと、必要に応じて不活性粒子Aを含有するポリエステルAとを、それぞれさらに高精度ろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、上記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層フィルムを得る。その後、上記未延伸積層フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0075】
さらに、上記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0076】
なお、積層ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルA、Bに所望により上記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤などを添加含有させることができる。
【0077】
本発明におけるポリエステル層Aへの皮膜層Cの積層は、水性塗液を塗布する方法で行うのが好ましい。
【0078】
塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステル層Aの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で皮膜は乾燥される。その中で、塗布は、未延伸積層フィルムまたは縦(一軸)延伸積層フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0079】
前記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0080】
本発明においては、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性をはじめとする各種性能を向上させ、同時に薄膜化を達成するには、積層フィルムのヤング率を、縦方向および横方向でそれぞれ、通常4500N/mm2以上および6000N/mm2以上、好ましくは4800N/mm2以上および6800N/mm2以上、さらに好ましくは5500N/mm2以上および8000N/mm2以上、特に好ましくは5500N/mm2以上および10,000N/mm2以上とする。
【0081】
また、ポリエステル層A、Bの結晶化度は、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合は30〜50%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回るとフィルムの耐摩耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0082】
本発明によれば、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bが積層されてなる積層ポリエステルフィルム、および該積層フィルムのポリエステル層Aの表面にさらに皮膜層Cが積層されている積層ポリエステルフィルムのそれぞれをベースフィルムとする磁気記録媒体が同様に提供される。
【0083】
本発明の積層ポリエステルフィルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は、下記のとおりである。
【0084】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくは皮膜層Cの表面に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法により、鉄、コバルト、ニッケル、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物よりなる強磁性金属薄膜層を形成し、必要によりポリエステル層Bの表面に公知の方法でバックコート層を設けることにより磁気記録媒体とするベースフイルムとして特に有用である。金属薄膜層の厚さは100〜300nmであるものが好ましい。
【0085】
また、本発明の積層ポリエステルフイルムは、上記強磁性金属薄膜層の表面にさらに、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、また必要により、ポリエステル層Bの表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録媒体とするのに用いることが好ましい。この蒸着型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV用磁気テープ媒体として極めて有用であり、特にデジタルビデオテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ、好適である。またデータストレージテープ用途にしても優れた結果を得ることができ、好適である。
【0086】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくは皮膜層Cの表面に、鉄または鉄を主成分とする針状微細磁性粉(メタル粉)をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、ポリエステル層Bの表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用メタル塗布型磁気記録媒体とすることもできる。また、必要に応じてポリエステル層Aまたは皮膜層Cの表面に、上記メタル粉含有磁性層の下地層(非磁性層)として、微細な酸化チタン粒子などを磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。このメタル塗布型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用8ミリビデオ、Hi8、βカムSP、W−VHS、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV、ディジタルβカム、D2、D3、SXなど用磁気テープ媒体として有用である。
【0087】
さらに、本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくは皮膜層Cの表面に、酸化鉄または酸化クロムなどの針状微細磁性粉、またはバリウムフェライトなどの板状微細磁性粉をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要によりポリエステル層Bの表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体とすることができる。また、必要に応じて、ポリエステル層Aまたは皮膜層Cの表面に、上記酸化物粉末含有磁性層の下地層(非磁性層)として微細な酸化チタン粒子などを磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。この酸化物塗布型磁気記録媒体は、ディジタル信号記録用データストリーマー用QICなどの高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体として有用である。
【0088】
上述のバックコート層は、通常、固体微粒子及び結合剤からなり、必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することにより形成されるが、この固体微粒子、結合剤、添加剤は公知のものを使用でき、特に限定されない。バックコート層の厚さは0.3〜1.5μmであることが好ましい。
【0089】
上述のW−VHSはアナログのHDTV信号記録用VTRであり、またDVCはディジタルのHDTV信号記録用として適用可能なものである。それゆえ、本発明の積層ポリエステルフィルムは、これらHDTV対応VTR用磁気記録媒体に極めて有用なベースフィルムと言うことができる。
【0090】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、本発明における物性値および特性は、それぞれ下記の方法で測定し、かつ定義されるものである。
【0091】
(1)固有粘度
オルソクロロフェノール溶媒中35℃で測定した値から求める。
【0092】
(2)ゲルマニウム元素量およびアンチモン元素量
ポリエステル層Bを削り出し、硝酸と硫酸の1:1混合液によって湿式分解した後、高周波プラズマ発光分光分析装置(ジャーレルアッシュ製 Atom Comp Series 800)を用いてゲルマニウム元素量およびアンチモン元素量を定量する。
【0093】
(3)環状3量体含有量
ポリエステル層Bからポリマーを削り出し、これをヘキサフルオロイソプロパノールとクロロホルムの1:1混合液に溶解し、更にクロロホルムで希釈し、ミリポアフイルターで濾過した濾液をWaters社製のALC/GPC744にて環状3量体の含有量を定量する。
【0094】
(4)末端カルボキシル基濃度(eq/106g)
A.Conixの方法に準じて測定する。(Makromol.Chem.26,226(1958))
【0095】
(5)粒子の平均粒径(I)(平均粒径:60nm以上)
株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグル パーティクル サイズアナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)」を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径(nm)とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247)。
【0096】
(6)粒子の平均粒径(II)(平均粒径:60nm未満)
小突起を形成する平均粒径60nm未満の粒子は、光散乱法を用いて測定する。すなわち、ニコンプ インストゥルメント株式会社(Nicomp Instruments Inc.)製の商品名「NICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZER」により求められる全粒子の50%の点にある粒子の「等価球直径」をもって、平均粒径(nm)とする。
【0097】
(7)体積形状係数(f)
走査型電子顕微鏡により、用いたサイズに応じた倍率にて各粒子の写真を撮影し、画像解析処理装置ルーゼックス500(日本レギュレーター社製)を用い、投影面最大径を粒子の平均粒径(D)(μm)として求め、また粒子の体積(V)(μm3)を算出し、下記式(II)により計算する。
【0098】
【数2】
【0099】
(8)ポリエステル層A、Bの厚み、およびフィルム全体の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いる。ポリエステル層A、Bの層厚については、薄いポリエステル層の層厚みを下記に述べる方法にて測定し、厚いポリエステル層の層厚みは、全厚みより皮膜層および薄いポリエステル層の層厚を引き算して求める。すなわち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5,000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M+)とポリエステルの炭化水素(C+)の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になったのち、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、薄いポリエステル層の厚み(μm)とする。
【0100】
測定条件は、以下のとおりである。
【0101】
(a)測定装置
二次イオン質量分析装置(SIMS);パーキン・エルマー株式会社
(PERKIN ELMER INC.)製、「6300」
(b)測定条件
一次イオン種:O2+
一次イオン加速電圧:12KV
一次イオン電流:200nA
ラスター領域:400μm□
分析領域:ゲート30%
測定真空度:6.0×10-9Torr
E−GUNN:0.5KV−3.0A
【0102】
なお、表層から5,000nmの範囲に最も多く存在する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電分光法)などで上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚(μm)を求める。
【0103】
(9)皮膜層Cの厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約600オングストロームの厚みの超薄切片(フィルムの流れ方向に平行に切断する)を作成する。この試料を透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製:H−800型)にて観察し、皮膜層Cの境界面を探して皮膜層の厚み(nm)を求める。
【0104】
(10)表面粗さ
▲1▼ WRa
WYKO株式会社製の非接触三次元粗さ計、商品名「TOPO−3D」を用いて、測定倍率40倍、測定面積242μm×239μm(0.058mm2)の条件にて測定を行い、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得る。上記粗さ計内蔵ソフトによる表面解析により、下記式によって定義される中心面平均粗さ(WRa)を得る。
【0105】
【数3】
【0106】
また、Zjkは、測定方向(242μm)、それと直行する方向(239μm)を、それぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における三次元粗さチャート上の高さである。
【0107】
▲2▼ 十点平均粗さWRz
▲1▼と同じ測定器を用い、同じ条件で測定して得られたデーターから、同粗さ計内臓のソフトによる表面解析により、ピーク(Hp)の高い方から5点と谷(Hv)の低い方から5点をとった平均値を求めWRzとする。
【0108】
【数4】
【0109】
(11)ヤング率
東洋ボールドウィン株式会社製の引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、長さ300nm、幅12.7mmの試料フィルムを10%/分のひずみ速度で引っ張り、引っ張り応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて下記式(V)によって計算する。
【0110】
【数5】
【0111】
ここで、Eはヤング率、Δσは直線上の2点間の元の平均断面積による応力差、Δεは同じ2点間のひずみ差である。
【0112】
(12)巻き取り性
スリット時の巻き取り条件を最適化したのち、幅600mm×12,000mのサイズで、30ロールを速度100m/分でスリットし、スリット後のフィルム表面に、ブツ状、突起やシワのないロールを良品として、以下の基準にて巻き取り性を評価する。
◎:良品ロールの本数28本以上
○:良品ロールの本数25〜27本
×:良品ロールの本数24本以下
【0113】
(13)磁気テープの製造および特性(電磁変換特性)評価
積層ポリエステルフィルムの皮膜層Cの表面に、真空蒸着法により、コバルト100%の強磁性薄膜を0.2μmの厚みになるように2層(各層厚約0.1μm)形成する。形成した強磁性薄膜の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、さらに含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらにポリエステル層Aの表面に、公知の方法でバックコート層を設ける。その後、8mm幅にスリットし、市販の8mmビデオカセットにローディングした。次いで、下記の市販の機器を用いてテープの特性(C/N)を測定する。
(a)使用機器
8mmビデオテープレコーダー、ソニー株式会社製、商品名「EDV−6000」
株式会社シバソク製、ノイズメーター
(b)測定方法
記録波長0.5μm(周波数約7.4MHz)の信号を記録し、その再生信号の6.4MHzと7.4MHzの値の比をそのテープのC/Nとし、市販8mmビデオ用蒸着テープのC/Nを0dBとし、相対値で評価する。
【0114】
[実施例1]
ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール70部の混合物に、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水塩0.025部を添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、エチレングリコール2.5部中で無水トリメリット酸0.8部とテトラブチルチタネート0.65部を反応せしめた液(チタン含有率は11重量%)0.014部を添加した。さらに滑剤(不活性粒子A)として平均粒径60nmの球状シリカ(体積形状係数0.5)を0.03%(ポリマーに対し)添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエステルA用のポリエチレンテレフタレート(樹脂A1)を得た。
【0115】
さらに、上記と同様の方法で、エステル交換反応を行い、エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモン0.03部添加した。系内に混入した水を充分留出させた後、滑剤(不活性粒子B)として、平均粒径300nmのシリコーン粒子および平均粒径100nmのθ型アルミナを、樹脂中にそれぞれ0.05%および0.2%添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートを得た。この際、ポリマー中のアンチモン残存量は250ppmであった。
【0116】
得られたポリエチレンフタレートを150〜160℃で3時間予備乾燥した後、0.5mmHgの高真空下225℃で10時間固相重合を行った。固相重合後の固有粘度は0.72、含有環状3量体量は0.35重量%であった。
【0117】
得られた固相重合ポリエチレンテレフタレート99.7%に、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスとしてソルビタントリステアレート(融点55℃)の粉末0.15%をまぶし、ベント付き二軸ルーダーにて練り込み、固有粘度0.70、環状3量体0.40重量%のポリエステル層B用のポリエチレンテレフタレート(樹脂B1)を得た。
【0118】
得られた樹脂A1、樹脂B1を、それぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0119】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に下記に示す組成(固形分換算)の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により塗布した。
【0120】
【0121】
続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmで、ポリエステル層Bの厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのポリエステル層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの皮膜層C側の表面から測定した表面粗さWRaは、1.7nm、このフィルムのヤング率は縦方向5000N/mm2、横方向7000N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0122】
[実施例2]
テレフタル酸のビス−β−ヒドロキシエチルエステル100部、テレフタル酸65部およびエチレングリコール29部の混合物を210〜230℃の温度でエステル化反応を行った。反応により生成する水の留出量が13部になった時点で反応終了とし、反応生成物100部当り2.1部の酸化ゲルマニウム水コロイド液(1%溶液)を添加した。次いで、反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温290℃)にて重縮合反応を行って固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートを得た。この際、ポリマー中のゲルマニウム残存量は40ppmであった。
【0123】
得られたポリエチレンフタレートを150〜160℃で3時間予備乾燥した後、0.5mmHgの高真空下225℃で12時間固相重合を行った。固相重合後の固有粘度は0.74、含有環状3量体量は0.28重量%であった。
【0124】
この固相重合ポリエチレンテレフタレートを90℃の温水(該ポリエチレンテレフタレートの2.5倍重量)に4時間接触させた。水を除去した後、160℃で5時間窒素気流下で乾燥させた。処理後のポリエチレンテレフタレート(樹脂B2−1)は固有粘度0.73、含有環状3量体は0.28重量%であった。
【0125】
また、ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール70部の混合物に、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水塩0.025部を添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモン0.02部添加し滑剤(不活性粒子B)として、平均粒径300nmのシリコーン樹脂粒子および平均粒径100nmのθ型アルミナを、それぞれ0.10%および0.4%(ポリマー重量に対し)添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエチレンテレフタレートを得た。
【0126】
得られたポリエチレンテレフタレート99.7%に、ソルビタントリステアレート(a−1)の粉末0.30%をまぶし、ベント付き二軸ルーダーにて練り込み、固有粘度0.59のポリエステル層B用のポリエチレンテレフタレート(樹脂B2−2)を得た。
【0127】
得られた樹脂B2−1および樹脂B2−2を1:1で混合して樹脂B2とした以外は実施例1と同様にして積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。得られたフイルムの特性およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0128】
[実施例3]
ポリエステル層Aに粒子を含有させないようにし(樹脂A2)、ポリエステル層Bに含有させる不活性粒子Bの種類、平均粒径、添加量を表1に示すとおり変更した(樹脂B3)以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0129】
[実施例4]
ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bにおけるジメチルテレフタレートの代わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを同モル量使用した以外は、実施例3と同様にしてポリエステル層A、B用のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(樹脂A3、B4)を得た。固有粘度は樹脂A3、B4共に0.60であった。
【0130】
この樹脂A3を170〜180℃で5時間予備乾燥した後、0.5mmHgの高真空下230℃で10時間固相重合を行った。固相重合後の固有粘度は0.72、含有環状3量体量は0.35重量%であった。
【0131】
この固相重合樹脂A3、樹脂B4を、それぞれ170℃で6時間乾燥後、実施例1と同様にして、各層厚みを調整し、厚さ89μmの未延伸積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0132】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度135℃にて3.6倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に、不活性粒子Cをコアシェルフィラー(コア;架橋ポリスチレン、シェル;ポリメチルメタクリレート)(平均粒径;30nm、体積形状係数0.45)ジェイエスアール株式会社製、「SX8721」に変更した以外は実施例1と同じ組成の水性塗液(全固形分濃度1.0%)を実施例1と同様に塗布した。
【0133】
続いてステンターに供給し、155℃にて横方向に5.7倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、200℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み4.4μm、熱可塑性樹脂層Bの厚み0.6μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの熱可塑性樹脂層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの塗膜層C側の表面から測定した表面粗さ(WRa)は、1.2nm、このフィルムのヤング率は縦方向5500N/mm2、横方向10,500N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0134】
[比較例1]
ポリエステル層Bを形成する樹脂Bを固相重合せず、含有環状3量体の量を1.05重量%とした以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、フイルム走行時のポリエステル層Bからブリードアウトしたオリゴマーが反対面へ転写する程度が酷く、磁気テープにした際、十分な電磁変換特性を得ることができなかった。その他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0135】
[比較例2、3]
ポリエステル層Bに含有させる不活性粒子Bの種類、平均粒径、添加量を表1に示すように変更した以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、層Bからブリードアウトしたオリゴマーが反対面へ転写することは問題なく良好であったが、比較例2の場合、層Bの表面突起の反対面への形状転写の程度が強く、磁気テープにした際、十分な電磁変換特性を得ることができなかった。比較例3の場合は層B表面が平坦すぎて、良好な巻取り性が得られなかった。その他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0136】
【表1】
【0137】
表1から明らかなように、本発明の積層ポリエステルフィルムは、片面が非常に平坦で、反対面からのオリゴマーの転写も少なく、優れた電磁変換特性を示すとともに、巻き取り性が極めて良好である。一方、本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時に満足できない。
【0138】
【発明の効果】
本発明によれば、オリゴマー等による平坦面の汚染が極めて少なく、加工適性に優れ、特に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性を奏する積層ポリエステルフィルムを提供することができる。
Claims (15)
- ポリエステル層Aと、該層Aの片面に積層した、環状3量体の含有量が0.8重量%以下であり、ポリマーの末端カルボキシル基濃度が35eq/106g以下であり、かつ平均粒径が50〜1000nmでかつ層A中の不活性粒子Aの平均粒径よりも大きい不活性粒子Bを0.001〜1重量%含有するポリエステル層Bよりなり、かつポリエステル層B表面の十点平均粗さ(WRzB)が30〜300nmである積層ポリエステルフイルム。
- ポリエステル層Bがゲルマニウム元素(Ge)を1〜50ppm含有する請求項1に記載の積層ポリエステルフイルム。
- ポリエステル層Bがアンチモン元素(Sb)を10〜350ppm含有する請求項1に記載の積層ポリエステルフイルム。
- ポリエステル層Bが炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルム。
- ポリエステル層A表面の表面粗さ(WRaA)が0.1〜4nmである請求項1に記載の積層ポリエステルフイルム。
- ポリエステル層Aが実質的に粒子を含有しない請求項1または5に記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステル層Aが平均粒径30〜400nmの不活性粒子Aを0.001〜0.2重量%含有する請求項1または5に記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステル層Aの表面に皮膜層Cが積層されている請求項1、6または7に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 皮膜層Cが平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有する請求項8に記載の積層ポリエステルフィルム。
- フィルムの厚さが2μm以上8μm未満である請求項1〜9のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- 層Aまたは層Bのポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項1〜10のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- 層Aまたは層Bのポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートである請求項1〜10のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステル層Aまたは皮膜層Cの表面が磁性層を設ける面である請求項1〜12のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルム。
- 磁性層が強磁性金属薄膜層である請求項13に記載の積層ポリエステルフィルム。
- 請求項13または14に記載の積層ポリエステルフイルムを支持体とする磁気記録媒体。
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