JP2005007744A - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents

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JP2005007744A JP2003174514A JP2003174514A JP2005007744A JP 2005007744 A JP2005007744 A JP 2005007744A JP 2003174514 A JP2003174514 A JP 2003174514A JP 2003174514 A JP2003174514 A JP 2003174514A JP 2005007744 A JP2005007744 A JP 2005007744A
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雅彦 小菅
Mitsuo Tojo
光峰 東條
Shinji Muro
伸次 室
Takeshi Ishida
剛 石田
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Abstract

【課題】平滑性、加工適性に優れ、金属薄膜型磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性を奏する積層ポリエステルフィルムの提供。
【解決手段】触媒残渣としてのチタン化合物をチタン元素量で5〜30ppmおよびジエチレングリコール成分を0.1〜2.5重量%含有するポリエステル層Aとその片面に積層された平均粒径が0.01〜0.5μmで破壊強度が5〜50Kgf/mmで表面に存在する頻度が1×10〜5×10個/mmの不活性粒子B1および平均粒径が0.1〜1.0μmで破壊強度が5〜50Kgf/mm2で表面に存在する頻度が1×10〜5×10個/mmの不活性粒子B2を含有するポリエステル層Bからなり、層Aと層B中の触媒金属残渣量の濃度比が0.01〜0.5である積層ポリエステルフィルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は積層ポリエステルフィルムに関し、更に詳しくは電磁変換特性、走行耐久性に優れた磁気記録媒体、特にデジタル信号を記録・再生する強磁性金属薄膜型磁気記録媒体、例えばビデオカセットテープ、データストレージテープ等のベースフィルムとして有用な積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリング等の物理沈着法またはメッキ法により非磁性支持体上に形成せしめた金属薄膜型磁気記録媒体、またメタル粉や酸化鉄粉等の針状磁性粉体を2μm以下に塗布した薄層塗布型磁気記録媒体の開発実用化が進められている。
【0003】
従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚いことから、記録波長も長く記録密度の低いものしか得られなかった。そこで、磁性層の厚みを薄くすることで、記録密度を向上させることが検討され、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティング等の薄膜形成手段によって形成される強磁性金属薄膜を磁性層としたもの(磁性層の厚みは0.2μm以下)や、磁性層を塗布する際に非磁性下地層を設けることで従来の塗布型に比べてより薄い磁性層を塗布できるようにしたもの(磁性層の厚みは0.13μm程度)が提案されてきている。
【0004】
ところで、磁性層を薄くすることで記録密度を高めた高密度磁気記録媒体では、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁性層の表面性に大きな影響を及ぼしやすく、特に金属薄膜型の磁気記録媒体では、非磁性支持体の表面状態がそのまま磁性層(磁気記録層)表面の凹凸として発現し、それが記録・再生信号の雑音の原因となる。したがって、非磁性支持体の表面はできるだけ平坦であることが望ましく、触媒に起因する異物が無いことが望ましい。
【0005】
一方、非磁性支持体(ベースフィルム)の製膜、製膜工程での搬送、傷付き、巻取りおよび巻出しといったハンドリングの観点からは、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面は出来るだけ粗いことが望ましい。なぜならば、フィルム表面が平坦過ぎると、フィルム―フィルム相互の滑り性が悪化し、ブロッキング現象が発生したり、ロールに巻いたときの形状(ロールフォーメーション)が悪化したりして、製品歩留りの低下や製品の製造コストの上昇をきたすからである。
【0006】
このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性の観点からは平坦であることが要求され、ハンドリング性やフィルムの製造コストの観点からは粗いことが要求される。
【0007】
さらに金属薄膜型磁気記録媒体は、実際に使用される時の重大な問題点として、金属薄膜面の走行性がある。従来の磁性体粉末を有機高分子バインダー中に混入させてベースフィルムに塗布してなる塗布型磁気記録媒体では、該バインダー中に潤滑剤を分散させて磁性層面の走行性を向上させることが出来た。しかし、金属薄膜型磁気記録媒体では、このような対策をとることができず、走行性、特に高温高湿条件下の走行性が劣るなどの欠点を有している。
【0008】
そこで、優れた品質の高密度磁気記録媒体を製造するには、上記二律背反する性質、すなわち、電磁変換特性等に要求される平坦性を持たせつつフィルムのハンドリングや磁気記録媒体の走行性に必要な凹凸を表面に付与することが必要とされる。
【0009】
そして、この為の具体的方法として、(1)フィルム表面に特定の塗剤を塗布し、不連続皮膜を形成させる方法(特公平3−80410号、特開昭60−180839号、特開昭60−180838号、特開昭60−180837号、特開昭56−16937号、特開昭58−68223号等)、(2)フィルム表面に微細凹凸を有する連続皮膜を塗布形成する方法(特開平5−194772号、特開平5−210833号)、(3)共押出し法等の技術により表裏異面化する方法(特開平2−214657号、特公平7−80282号)、(1)または(2)と(3)との組合せによる方法(特開平3−73409号)等が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記の不連続皮膜や微細凹凸を有する連続皮膜を塗布形成する方法では、フィルム―フィルム間の滑り、ブロッキングといった課題は解決できるものの、ベースフィルムの製膜、製膜工程での搬送、傷付き、巻取り、巻出しといったハンドリングの点では不十分であり、製品歩留り、製品コストの観点で、高密度大容量磁気記録媒体用ベースフィルムヘの適用には問題がある。また従来の共押出し技術または共押出し技術と不連続皮膜もしくは連続皮膜を組合せる方法でも、同様の問題を抱えている。さらに金属薄膜型磁気記録媒体の場合は高温高湿条件下の走行性の問題を抱えたままである。
【0011】
これらの課題に対して、特定の表面粗さの範囲、表面のうねり指数、層間空気流動時間を有するポリエステルとポリエーテルイミドからなるポリエステルフイルム(特開2001−319323号公報)や特定の厚み、長さ、表面粗さ、帯電位を有するポリエステルフイルムロール(特開2001−243614号公報)等が提案されているが、特に平坦な表面性の点で不十分であり、更なる改良が求められている。
【0012】
【特許文献1】
特公平3−80410号公報
【特許文献2】
特開昭60−180839号公報
【特許文献3】
特開昭60−180838号公報
【特許文献4】
特開昭60−180837号公報
【特許文献5】
特開昭56−16937号公報
【特許文献6】
特開昭58−68223号公報
【特許文献7】
特開平5−194772号公報
【特許文献8】
特開平5−210833号公報
【特許文献9】
特開平2−214657号公報
【特許文献10】
特公平7−80282号公報
【特許文献11】
特開平3−73409号公報
【特許文献12】
特開2001−319323号公報
【特許文献13】
特開2001−243614号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、平滑性、走行性、耐ブロッキング性、熱安定性、加工適性に優れ、金属蒸着薄膜型磁気記録媒体を製造する際に、蒸着工程特性に適しつつ、巻取り性と平坦性を具備したポリエステル支持体を得ることであり、更に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに優れた電磁変換特性、走行耐久性を奏する積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明の目的は、本発明によれば、ポリエステル層Aとその片面に積層された二種類の不活性粒子B1およびB2を含有するポリエステル層Bからなる積層ポリエステルフィルムであって、(1)ポリエステル層Aを構成するポリエステルは、該ポリエステルの重量を基準として、触媒残渣としてのチタン化合物をチタン元素量で5〜30ppmおよびジエチレングリコール成分を0.1〜2.5重量%含有すること、(2)不活性粒子B1は平均粒径が0.01〜0.5μmで破壊強度が5〜50Kgf/mmで、かつ層B表面に存在する頻度が1×10〜5×10個/mmの範囲にあること、(3)不活性粒子B2は平均粒径が0.1〜1.0μmで破壊強度が5〜50Kgf/mmで、かつ層B表面に存在する頻度が1×10〜5×10個/mmの範囲にあること、そして(4)ポリエステル層Aの触媒金属残渣量MAとポリエステル層Bの触媒金属残渣量MBの比(MA/MB)が0.01〜0.5の範囲である積層ポリエステルフィルムによって達成される。
【0015】
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、ポリエステル層Bが触媒残渣としてアルカリ土類金属化合物を金属元素量で50〜200ppm含有すること、ポリエステル層Bが、炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを0.001〜1重量%含有すること、ポリエステル層Bと接していないポリエステル層Aの表面にコート層Cが積層されていること、コート層Cが、平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有すること、積層フィルム全体の厚さが2μm以上8μm未満であること、ポリエステル層Aおよび層Bを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートであること、および、磁気記録媒体のベースフィルムとして用いることのいずれか少なくとも1つを具備させた積層ポリエステルフィルムも提供される。
【0016】
さらにまた、本発明によれば、本発明の積層ポリエステルフィルムと、そのポリエステル層A側の表面に設けられる磁性層とからなる磁気記録媒体、特に磁性層が強磁性金属薄膜層である磁気記録媒体も提供される。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bを積層した積層フィルムである。
【0018】
前記ポリエステル層A、層Bをそれぞれ構成するポリエステルA、Bは、芳香族ポリエステルが好ましく挙げられ、同じ種類でも、異なる種類であっても良い。
【0019】
上記芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などを例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレートとポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましく、特により薄膜化が行えることから、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0020】
本発明で使用するポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、本発明の効果を損なわない限り、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。さらにトリメリット酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトールなどの3官能以上の多官能化合物を共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。
【0021】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても、上記と同様に考えるとよい。
【0022】
更に上記ポリエステルには本発明の効果を損なわない程度であれば、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、酸化チタン等)の如き添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0023】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aとポリエステル層Bが同じポリエステルからなるのが好ましいが、異なるポリエステルからなってもよい。例えば、ポリエステル層Aとポリエステル層Bが共にポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムが好ましいが、ポリエステル層A(又はポリエステル層B)がポリエチレンテレフタレート、ポリエステル層B(又はポリエステル層A)がポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムであっても良い。
【0024】
本発明におけるポリエステル層Aを構成するポリエステルAは、その製造過程で副生成したまたは共重合成分として添加されたジエチレングリコール(以下、DEGと称することがある。)成分の含有量が0.1〜2.5重量%の範囲であることが必要であり、好ましいDEG成分の含有量は、0.2〜2.2重量%、特に0.3〜2.0重量%の範囲である。DEG量が上限を超えると、金属薄膜型磁気記録媒体を製造する際に、金属薄膜を蒸着する工程において、支持体として用いる積層ポリエステルフィルムの耐熱性が不足してしまい、十分な平坦性を得ることができなくなる。一方、ポリエステルAに含有されるDEG量を下限未満にするには、ポリマーの生産性を著しく低下させるような過度の負担が必要なため、好ましくない。
【0025】
本発明で使用するポリエステル中のジエチレングリコール量を2.5重量%以下にするには、重合触媒の選定、すなわち、ゲルマニウム化合物の代わりにチタン化合物を使用すること、エステル交換反応を経由して重縮合反応を行なうエステル交換法の場合、エステル交換反応が終了してから重縮合反応の減圧開始までの時間を例えば20分以内にすること、また、高温反応下でのエチレングリコールの飛散速度を早めることが有効である。
【0026】
前記ポリエステル層Aを形成するポリエステルAはそれ自体公知の方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで反応生成物を重縮合せしめる方法で製造することができる。また、上記の方法(溶融重合)により得られたポリエステルは、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとすることができる。
【0027】
ところで、本発明におけるポリエステル層Aを形成するポリエステルAは、触媒として添加された、すなわち、触媒残渣としてのチタン化合物をチタン元素(以下、Tiと称することがある。)量で、ポリエステルAの重量に対して、5〜30ppm含有することが必要である。ポリエステルAに含有される触媒残渣としてのチタン元素(Ti)量が下限未満であると、ポリエステルAの重縮合速度が極端に低下してしまい、生産性の点で好ましくない。一方、触媒残渣としてのチタン元素(Ti)量が上限より多くなると、ポリエステルの熱安定性が低下し、充分な強度のフィルムを得ることができなくなる。
【0028】
前記ポリエステルAに重合触媒としてチタン化合物を含有させる方法としては、チタン化合物を単独で使用しても良いし、チタン化合物(触媒)以外の他の金属化合物(触媒)と併用しても良いし、また、チタン化合物(触媒)単独で重合して得られるポリエステルとチタン化合物(触媒)以外の金属化合物(触媒)で重合して得られるポリエステルを適宜混合して、必要なチタン元素の含有量に調整しても良い。但し、他の金属化合物(触媒)と併用したり他の金属化合物(触媒)で重合されたポリエステルと混合したりする場合、ポリエステル層Aの平滑性を得るために、ポリエステル層Aを形成するポリエステルAは触媒残渣としてのアンチモン化合物をアンチモン元素量で高々5ppmしか含有しないこと、および触媒残渣としてのゲルマニウム化合物をゲルマニウム元素量で高々5ppmしか含有しないことが好ましく、特に好ましいのはアンチモン化合物およびゲルマニウム化合物を全く含有しないことである。
【0029】
本発明で重合触媒として使用するチタン化合物としては、有機チタン化合物が好ましく、例えば特開平5−298670号に記載されているものを挙げることができる。詳しくは、チタンのアルコラートや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応物等を例示でき、好ましい具体例としてはチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。
【0030】
また、本発明におけるポリエステル層Aは、実質的に粒子を含有しないことが好ましい。実質的に粒子が含まれてしまうと、ドロップアウトや電磁気変換特性の面で問題が生じることがあるため好ましくない。ここでいう実質的に不活性粒子を含有しないとは、積極的に触媒残渣を析出させたり、不活性粒子を添加したりしていないことを意味し、具体的には、粒径0.05μm以上の不活性粒子の含有量が、層Aの重量を基準として、高々0.001重量%であることが好ましい。
【0031】
一方、本発明で使用するポリエステル層Bを形成するポリエステルBは、ポリエステルAと同様な方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで反応生成物を重縮合せしめる方法で製造できる。また、上記の方法(溶融重合)により得られたポリエステルは、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとすることができる。
【0032】
本発明で使用するポリエステルBは、その製造の際に使用する触媒として、それ自体公知の触媒を使用でき、溶融重合でのエステル交換触媒としてはマンガン、カルシウム、マグネシウムおよびチタンの酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等を好ましく使用でき、特にアルカリ土類金属の酢酸塩即ち、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムを好ましく使用できる。これらの中でもマグネシウム化合物が蒸着工程での工程特性の観点から好ましい。
【0033】
また、重縮合触媒としては、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物を挙げることができる。
【0034】
前記アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン等が好ましく挙げられる。
【0035】
また、前記チタン化合物としては、有機チタン化合物が好ましく挙げられ、例えば特開平5−298670号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、チタンのアルコラートや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応物等を例示でき、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。
【0036】
さらにまた、前記ゲルマニウム化合物としては、例えば特許2792068号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、(イ)無定形酸化ゲルマニウム、(ロ)結晶性ゲルマニウム、(ハ)酸化ゲルマニウムをアルカリ金属又はアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解した溶液、および(ニ)酸化ゲルマニウムを水に溶解し、これにグリコールを加え水を留去して調整した酸化ゲルマニウムのグリコール溶液、等を挙げることができる。
【0037】
本発明における積層ポリエステルフイルムは、ポリエステル層A中の触媒金属残渣量MAとポリエステル層B中の触媒金属残渣量MBの比が0.01〜0.5の範囲にあることが必要である。好ましくは0.05〜0.4の範囲である。この比が上限を超える場合、平坦面が触媒残渣による析出物によって電磁気変換特性が低下したり、または蒸着時の工程適性が損なわれて切断等の問題が生じたりする。一方、下限を未満の場合、走行面から析出異物粒子が平坦面側に転写し、磁気テープとしたときにドロップアウトや電磁気変換特性が大きく低下したり、または溶融押出しされたシート状物を冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとする際に、冷却ドラムとの密着性が低下して平坦性が損なわれたりすることがある。なお、本発明における、MAとは、ポリエステルA層を構成するポリエステルの重量を基準として、ポリエステル層A中の触媒金属残渣の金属元素量(ppm)を、MBとは、ポリエステルB層を構成するポリエステルの重量を基準として、ポリエステル層B中の触媒金属残渣の金属元素量(ppm)を意味する。
【0038】
ところで、ポリエステルBは熱安定性を維持するために、従来ポリエステルの製造工程で添加されるリン化合物を含有することが好ましい。このリン化合物は特に限定されないが、正リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ−n−ブチルホスフェートが好ましく挙げられる。
【0039】
本発明におけるポリエステル層Bは、フィルムに巻取り性などの優れた取扱い性を発現するために粒子を少なくとも2種類、すなわち不活性粒子B1とB2を含有する。
【0040】
不活性粒子B1は、平均粒径(dB1)が0.01〜0.5μm、破壊強度(SB1)が50〜500Kgf/mmで、かつ層Bの層Aと接していない表面に存在する頻度(NB1)が1×10〜5×10個/mmである。更には平均粒径(dB1)が0.03〜0.3μm、破壊強度(SB1)が60〜450kgf/mm、存在頻度(NB1)が5×10〜1×10個/mmの範囲であることが好ましい。
【0041】
不活性粒子B2は平均粒径(dB2)が0.1〜1.0μmで、破壊強度(SB2)が5〜50Kgf/mmで、かつ層Bの層Aと接していない表面に存在する頻度(NB2)が1×10〜5×10個/mmの範囲である。好ましい範囲は、平均粒径(dB2)が0.15〜0.7μm、破壊強度(SB2)が7〜40Kgf/mm、存在頻度(NB2)が3×10〜1×10個/mmの範囲である。
【0042】
上記dB1およびdB2が本発明の範囲から外れる場合、巻取り性と平坦性のバランスが取れなくなる。また、不活性粒子B1の破壊強度(SB1)が上限を超える場合、ロール状に巻き取ると不活性粒子B1によって形成される突起により平坦面の表面が押さえられるためにダメージを受け、均一な平坦性が損なわれる。一方、SB1が下限未満の場合、平坦面との密着性が増すためにブロッキングしやすくなり、平坦性を損ない、電磁気変換特性が悪化する。また、不活性粒子B1の層B表面に存在する頻度(NB1)が上限を超える場合、粒子同士の凝集が多くなり、生じた凝集巨大粒子による層Aへの突上げによる平坦面のうねりが電磁気変換特性を大きく低下させる。一方、NB1が下限未満の場合、平坦面との密着性が増大し、ブロッキングによる平坦面の表面平坦性低下が生じる。
【0043】
また不活性粒子B2の破壊強度(SB2)が上限を超える場合、ロール状に巻き取ると不活性粒子B2によって形成される突起により平坦面の表面が強く押さえられるためにダメージを大きく、電磁気変換特性が大きく悪化する。一方、SB2が下限未満の場合、巻取り性に有効な突起が十分に形成されない。また、不活性粒子B2の層B表面に存在する頻度(NB2)が上限を超える場合、層Aへの突上げによる平坦面のうねりが増加し、電磁気変換特性を大きく低下させる。一方、NB2が下限未満の場合、巻取り性が大幅に低下する。
【0044】
不活性粒子B1としては、例えば、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)、および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる微粒子が挙げられる。これらの中で特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カオリン及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましく、特に、酸化アルミニウム、二酸化チタンおよび二酸化ケイ素からなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。
【0045】
不活性粒子B2としては、不活性粒子B1で挙げた粒子を同様に挙げられるが、この中でも特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。もちろん、不活性粒子B1、B2共に上記の種類以外の粒子をフイルム特性に悪影響を及ぼさない範囲で更に添加することは問題ない。
【0046】
本発明におけるポリエステル層Bは、さらに、炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを0.001〜1重量%含有するのが好ましい。ここで、(部分ケン化)エステルワックスとは、エステルワックスと部分ケン化エステルワックスとを包含するものである。
【0047】
上記脂肪族モノカルボン酸の炭素数は8個以上、好ましくは8〜34個である。この炭素数が8個未満であると、得られた(部分ケン化)エステルワックスの耐熱性が不充分で、ポリエステルに分散させる際の加熱条件で、該(部分ケン化)エステルワックスが容易に分解されてしまうため、不適切である。
【0048】
炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸としては、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ペヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヘントリアコンタン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびこれらを含む混合物などが挙げられる。
【0049】
上記(部分ケン化)エステルワックスのアルコール成分は、水酸基を2個以上有する多価アルコールである。さらに耐熱性の観点から、水酸基を3個以上有する多価アルコールであることが好ましい。モノアルコールを用いたのでは、生成した(部分ケン化)エステルワックスの耐熱性が不足する。
【0050】
上記水酸基を2個有する多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましく挙げられる。水酸基を3個以上有する多価アルコールとしては、例えばグリセリン、エリスリット、トレイット、ペンタエリスリット、アラビット、キシリット、タリット、ソルビット、マンニットなどが好ましく挙げられる。
【0051】
上記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールから得られるエステルワックスとしては、多価アルコールの水酸基の数にもよるが、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどが挙げられる。これらの中、耐熱性の観点から、モノエステルよりもジエステルが、ジエステルよりもトリエステルが好ましい。好ましいエステルワックスとしては、具体的にはソルビタントリステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
【0052】
上記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる部分ケン化エステルワックスは、多価アルコールを炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸で部分エステル化したのち、2価以上の金属水酸化物でケン化することにより得られる。具体的には、例えばモンタン酸ジオールエステルを水酸化カルシウムでケン化した、ワックスE、ワックスOP、ワックスO、ワックスOM、ワックスFL(全て、ヘキスト(株)社製商品名)などが挙げられる。かかる(部分ケン化)エステルワックスは1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0053】
上記(部分ケン化)エステルワックスの層Bへの添加量は、0.001〜1重量%、好ましくは0.003〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.5重量%、特に好ましくは0.01〜0.3重量%含有する。この(部分ケン化)エステルワックスの添加量が0.001重量%未満であると、フィルム巻取り性の向上が不十分であり、ブロッキング改良効果も得られない。一方、1重量%を超えると、フィルム製造工程で、ロール上に巻き上げたときに接する反対側の面に、ブリードアウトによってワックス成分が多量に転写され、そのため、例えば金属蒸着層とベースフィルムの接着性を妨げるなどの弊害を生じる。
【0054】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、磁気テープとした場合の諸特性向上のため、磁性層を設ける側の面、すなわち、ポリエステル層Aの、ポリエステル層Bと接していない表面に、コート層Cを設けることが好ましい。
【0055】
前記コート層Cは、平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子(以下、不活性粒子Cと称することがある。)を0.5〜30重量%含有していることが好ましい。
【0056】
前記コート層Cを形成する樹脂としては、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0057】
この水性ポリエステル樹脂としては、酸成分が、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウム、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩およびp−ヒドロキシ安息香酸などの多価カルボン酸からなる群より選ばれた少なくとも1種よりなり、グリコール成分が、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジメチロールプロパンおよびビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などの多価ヒドロキシ化合物からなる群より選ばれた少なくとも1種より主としてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、ポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマーまたはブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな粒子内で特定の物理的構成(IPN(相互侵入高分子網目)型、コアシェル型など)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。また、これらは親水性を付与するため、分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位などが導入されていてもよい。
【0058】
前記皮膜層Cに含有される不活性粒子Cとしては、特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重のものが好ましい。例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどの有機粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどからなる粒子が好ましく挙げられる。なかでも、架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が特に好ましく挙げられる。
【0059】
前記不活性粒子Cの平均粒径(dC)は10〜50nm、好ましくは12〜45nm、さらに好ましくは15〜40nmである。この平均粒径が10nm未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、50nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0060】
前記不活性粒子Cの形状は後述の体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらに0.2〜π/6、特に0.4〜π/6であることが好ましい。
【0061】
なお、体積形状係数(f)がπ/6である粒子の形状は、球(真球)である。すなわち、体積形状係数(f)が0.4〜π/6のものは、実質的に球ないしは真球、ラグビーボールのような楕円球を含むものであり、不活性粒子Cとして好ましい。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、走行耐久性が低下してしまうので好ましくない。
【0062】
前記不活性粒子Cの含有量は、コート層C(塗液の固形分)に対し、0.5〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。この含有量が0.5重量%未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、30重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため、好ましくない。
【0063】
本発明における積層ポリエステルフィルムの全厚みは、2μm以上8μm未満、好ましくは2.5〜7.5μmである。ポリエステル層Aとポリエステル層Bの厚み構成は、好ましくはポリエステル層Bの厚みが積層フィルムの全厚みの1/50〜1/2、さらに好ましくは1/30〜1/3、特に好ましくは1/20〜1/4である。コート層Cの厚みは、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは3〜10nm、特に好ましくは3〜8nmである。
【0064】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、従来から知られている、または当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。そのうち、ポリエステル層Aとポリエステル層Bとの積層構造は、共押出し法により製造するのが好ましく、コート層Cの積層は塗布法により行うのが好ましい。
【0065】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で、上記(部分ケン化)エステルワックス及び不活性粒子Bを微分散、含有させたポリエステルBと、必要に応じて不活性粒子Aを含有させたポリエステルAとを、それぞれさらに高精度ろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、上記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度(ただし、Tm:ポリエステルの融点)でフィルム状に共押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層フィルムを得る。この際、通常、未延伸積層フィルムのB層側が冷却ドラムと接する側に位置する。その後、上記未延伸積層フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg−10℃)〜(Tg+10℃)の温度でフイルムを予熱後、(Tg+15)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0066】
さらに、前記二軸配向フィルムは(Tg+60)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、170〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0067】
なお、積層ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルA、Bに所望により上記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤などを添加含有させることができる。
【0068】
本発明におけるポリエステル層A表面への皮膜層Cの積層は、水性塗液を塗布する方法で行うのが好ましい。
【0069】
塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステル層Aの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で皮膜は乾燥される。その中で、塗布は、未延伸積層フィルムまたは縦(一軸)延伸積層フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0070】
前記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0071】
本発明においては、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性をはじめとする各種性能を向上させ、同時に薄膜化を達成するには、積層フィルムのヤング率を、縦方向および横方向でそれぞれ、通常4500N/mm以上および6000N/mm以上、好ましくは4800N/mm以上および6800N/mm以上、さらに好ましくは5500N/mm以上および8000N/mm以上、特に好ましくは5500N/mm以上および10,000N/mm以上とする。
【0072】
また、ポリエステル層A、Bの結晶化度は、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合は30〜50%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回るとフィルムの耐摩耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0073】
本発明によれば、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bが積層されてなる積層ポリエステルフィルム、および、ポリエステル層Aのポリエステル層Bと接していない表面にコート層Cが積層されている積層ポリエステルフィルムのそれぞれをベースフィルムとする磁気記録媒体が同様に提供される。
【0074】
本発明の積層ポリエステルフィルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は、下記のとおりである。
【0075】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくはコート層Cの表面に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法により、鉄、コバルト、ニッケル、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物よりなる強磁性金属薄膜層を形成する磁気記録媒体用ポリエステルフィルムとして特に有用である。金属薄膜層の厚さは100〜300nmであるものが好ましい。
【0076】
また、前記磁気記録媒体用ポリエステルフィルムは更に強磁性金属薄膜層の表面に、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに必要により、ポリエステル層Bの表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録媒体として使用することが好ましい。この蒸着型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV用磁気テープ媒体として極めて有用であり、特にデジタルビデオテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができ、好適である。またデータストレージテープ用途にしても優れた結果を得ることができ、好適である。
【0077】
本発明における磁気記録媒体は、ポリエステル層Bの表面に固体微粒子及び結合剤からなり、必要に応じて各種添加剤を加えた溶液を塗布することにより形成されるバックコート層を設けてもよい。固体微粒子、結合剤、添加剤は公知のものを使用でき、特に限定されないが、バックコート層の厚さは0.3〜1.5μmであることが好ましい。
【0078】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくはコート層Cの表面に、鉄または鉄を主成分とする針状微細磁性粉(メタル粉)をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、ポリエステル層Bの磁性層とは反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用メタル塗布型磁気記録媒体とすることもできる。また、必要に応じてポリエステル層Aまたはコート層Cの表面に、上記メタル粉含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子などを含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。このメタル塗布型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用8ミリビデオ、Hi8、βカムSP、W−VHS、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ、DDSIV、ディジタルβカム、D2、D3、SXなど用磁気テープ媒体として極めて有用である。
【0079】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、また、ポリエステル層A、好ましくはコート層Cの表面に、酸化鉄または酸化クロムなどの針状微細磁性粉、またはバリウムフェライトなどの板状微細磁性粉をポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体などのバインダーに均一に分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、さらに必要により、ポリエステル層Bの磁性層とは反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体とすることもできる。また、必要に応じて、ポリエステル層Aまたはコート層Cの表面に、上記酸化物粉末含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子などを含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散し、塗設することもできる。この酸化物塗布型磁気記録媒体は、ディジタル信号記録用データストリーマー用QICなどの高密度記録用酸化物塗布型磁気記録媒体として有用である。
【0080】
上述のW−VHSはアナログのHDTV信号記録用VTRであり、またDVCはディジタルのHDTV信号記録用として適用可能なものである。それゆえ、本発明の積層ポリエステルフィルムは、これらHDTV対応VTR用磁気記録媒体に極めて有用なベースフィルムと言うことができる。
【0081】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、本発明における物性値および特性は、それぞれ下記の方法で測定し、かつ定義されるものである。
【0082】
(1)ジエチレングリコール量
ポリエステル層AからポリエステルAを削り出し、CDCl/CFCOOD混合溶媒にて溶解し、H−NMRにて測定する。
【0083】
(2)チタン元素量および触媒金属残渣量
ポリエステル層Aまたはポリエステル層BからポリエステルAまたはポリエステルBを削り出し、硝酸と硫酸の1:1混合液によって湿式分解した後、高周波プラズマ発光分光分析装置(ジャーレルアッシュ製 Atom Comp Series 800)を用いてチタン元素量および触媒金属残渣量を定量する。
【0084】
(3)粒子の平均粒径(I)(平均粒径:60nm以上)
株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)」を用いて測定した。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径(nm)とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247)。
【0085】
(4)粒子の平均粒径(II)(平均粒径:60nm未満)
小突起を形成する平均粒径60nm未満の粒子は、光散乱法を用いて測定する。詳しくは、ニコンプインストゥルメント株式会社(Nicomp Instruments Inc.)製の商品名「NICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZER」により求められる全粒子の50%の点にある粒子の「等価球直径」をもって、平均粒径(nm)とする。
【0086】
(5)体積形状係数(f)
走査型電子顕微鏡により、用いたサイズに応じた倍率にて各粒子の写真を撮影し、画像解析処理装置ルーゼックス500(日本レギュレーター社製)を用い、投影面最大径を粒子の平均粒径(D)(μm)として求め、また粒子の体積(V)(μm)を算出し、下式により計算する。
【数1】
Figure 2005007744
【0087】
(6)ポリエステル層A、Bの厚み、およびフィルム全体の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いる。ポリエステル層A、Bの層厚については、薄いポリエステル層の層厚みを下記に述べる方法にて測定し、厚いポリエステル層の層厚みは、全厚みより皮膜層および薄いポリエステル層の層厚を引き算して求める。すなわち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5,000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M)とポリエステルの炭化水素(C)の濃度比(M/C)を粒子濃度とし、表面から深さ5,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になったのち、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、薄いポリエステル層の厚み(μm)とする。
測定条件は、以下のとおりである。
(a)測定装置
二次イオン質量分析装置(SIMS);パーキン・エルマー株式会社
(PERKIN ELMER INC.)製、「6300」
(b)測定条件
一次イオン種:O2+
一次イオン加速電圧:12KV
一次イオン電流:200nA
ラスター領域:400μm□
分析領域:ゲート30%
測定真空度:6.0×10−9Torr
E−GUNN:0.5KV−3.0A
なお、表層から5,000nmの範囲に最も多く存在する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電分光法)などで上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚(μm)を求める。
【0088】
(7)皮膜層Cの厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約600オングストロームの厚みの超薄切片(フィルムの流れ方向に平行に切断する)を作成した。この試料を透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製:H−800型)にて観察し、皮膜層Cの境界面を探して皮膜層の厚み(nm)を求める。
【0089】
(8)粒子(B1,B2)破壊強度
島津製作所(株)製の微小圧縮試験機(MCTM−201型)を使用して、負荷速度0.0145gf/sec、0〜1gfまでの負荷を加えて粒子の破壊荷重を測定した。そして破壊時の荷重、粒径から破壊強度を次式により求めた。
【数2】
Figure 2005007744
【0090】
(9)層B表面中の粒子(B1,B2)の存在頻度
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッターリング装置(JFC−1100型イオンエッチング装置)を用いてフィルム表面に下記条件にてイオンエッチング処理を施す。条件は、ベルジャー内に試料を設置し、約10−3Torrの真空状態まで真空度を上げ、電圧0.25kV、電流12.5mAにて約10分間イオンエッチングを実施する。更に同装置にて、フィルム表面に白金スパッターを施し、Field Emission型電子顕微鏡にて加速電圧2.0kV、5,000倍で10視野観察する。この電子顕微鏡像から粒子のカウントを行い、求める。
【0091】
(10)ヤング率
東洋ボールドウィン株式会社製の引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、長さ300nm、幅12.7mmの試料フィルムを10%/分のひずみ速度で引っ張り、引っ張り応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて下式によって計算する。
【数3】
Figure 2005007744
ここで、Eはヤング率、Δσは直線上の2点間の元の平均断面積による応力差、Δεは同じ2点間のひずみ差である。
【0092】
(11)層Bが平坦面(コート層C)に与えるダメージ評価
2枚のフィルムの平坦面側(A面またはコート層C面)と、他方の表面(B面)側を重ね合せ、これに25℃×40%RHの雰囲気下にて、15N/mmの荷重下で2時間処理し、処理後のコート層C形成面をDigital Instruments社製の原子間力顕微鏡Nano ScopeIII AFMのJスキャナーを使用し、走査範囲を10μmとし、20nm以上の高さを有する突起高さをカウントする。
短針:単結合シリコンセンサー
走査モード:タッピングモード
画素数:256×256データポイント
スキャン速度:2.0Hz
測定環境:室温、大気中
処理前後での突起高さ変化率{(処理前の突起数−処理後の突起数)/処理前の突起数}}×100を下記の要領で評価する。
○:変化率が10%以下
△:変化率が10〜25%
×:変化率が25%以上
【0093】
2枚のフィルムのコート層C形成面側(A面)と、他方の表面(B面)を重ね合せ、これに25℃×40%RHの雰囲気下にて、15N/mmの荷重下で2時間処理し、処理後のコート層C形成面をDigital Instruments社製の原子間力顕微鏡Nano ScopeIII AFMのJスキャナーを使用し、走査範囲を10μmとし、20nm以上の高さを有する突起高さをカウントする。
短針:単結合シリコンセンサー
走査モード:タッピングモード
画素数:256×256データポイント
スキャン速度:2.0Hz
測定環境:室温、大気中
処理前後での突起高さ変化率{(処理前の突起数−処理後の突起数)/処理前の突起数}}×100 を下記の要領で評価する。
○:変化率が10%以下
△:変化率が10〜25%
×:変化率が25%以上
【0094】
(12)金属との密着強度
フイルムサンプルの走行面を表面が鏡面仕上げのSUS製金属板に貼り付けて、ローラ等でエアを抜く。その後平坦面側から1.5kVの電圧を印加し、フイルムと金属板を強制的に密着させる。そして金属板からフイルムを2cm/minの速度で剥すTピール強度を測定し、下記基準で評価する。
○:8gf/cm未満
△:8〜10gf/cm
×:10gf/cmを超える
【0095】
(13)磁気テープの製造及び特性評価
積層ポリエチレンテレフタレートフィルムの第一の層側の表面に、真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を110nmの厚みで形成し、次にコバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボンを10nmの厚みで形成させ、更に含フッ素カルボン酸系潤滑剤を順次設ける。続いて、コバルト−酸素薄膜を形成したのとは反対側の表面に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を厚みが500nmとなるように設け、スリッターにより幅8mm及び6.35mmにスリットし、市販のリールに巻き取り、磁気テープを作成した。市販のHi8方式8mmビデオテープレコーダーを用いてビデオS/N比を、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーを用いてドロップアウト(DO)個数を求める。
DO個数の測定は、作成した6.35mmテープを市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーで録画後、1分間の再生をして画面に現れたブロック状のモザイクの個数をカウントし、下記の基準で判定した。モザイクは少ないほど好ましい。
○:モザイク30ケ/分未満
△:モザイク50ケ/分未満
×:モザイク50ケ/分以上
C/Nは、市販のHi8用VTR(SONY株式会社製、EV−BS3000)を用いて、7MHz±1MHzのC/Nの測定を行った。このC/Nを市販のHi8用ビデオテープ(SONY株式会社製、蒸着型テープ E6−120HME4)と比較して、下記の基準で評価した。C/Nは値が増えるほど好ましい。
◎:市販品に対して+3dB以上
○:市販品に対して+1〜+3dB未満
△:市販品と同等または+1dB未満
×:市販品未満
【0096】
[実施例1]
2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール70部の混合物に、エステル交換触媒としてエチレングリコール2.5部中で無水トリメリット酸0.8部とテトラブチルチタネート0.65部を反応せしめた液(チタン含有率は11重量%)0.011部を添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエステルA用のポリエチレンナフタレート(樹脂A1)を得た。樹脂A1のDEG量は1.5重量%、チタン金属元素残存量は10ppmであった。
【0097】
さらに、2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチル100部とエチレングリコール70部の混合物に、エステル交換触媒として酢酸マグネシウム4水和物0.034部添加し、上記と同様の方法で、エステル交換反応を行い、エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモンを0.038部添加した。系内に混入した水を充分留出させた後、滑剤として、平均粒径300nmのシリコーン樹脂粒子(不活性粒子B1)および平均粒径100nmのθ型アルミナ(不活性粒子B2)を、樹脂中にそれぞれ0.05%および1.2%添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエチレンナフタレートを得た。なお、エステル交換反応終了後、真空反応開始までの時間は15分間で、このポリマー中の触媒金属残渣量は300ppmであった。
【0098】
得られたポリエチレンナフタレート99.7%に、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスとしてソルビタントリステアレート(融点55℃)の粉末0.15%をまぶし、ベント付き二軸ルーダーにて練り込み、固有粘度0.59のポリエステル層B用のポリエチレンナフタレート(樹脂B1)を得た。なお、エステル交換反応終了後、真空反応開始までの時間は15分間であった。
【0099】
得られた樹脂A1、樹脂B1を、それぞれ170℃で6時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、層Aの片面に層Bを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0100】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度135℃にて3.6倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムの層A側に下記に示す組成(固形分換算)の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により乾燥後のコート層Cの厚みが8nmとなるように塗布した。
【0101】
塗液の固形分組成(コート層C用)
・バインダー:アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製IN−170−6)60%
・不活性粒子C:アクリルフィラー(平均粒径:30nm、体積形状係数:0.45、日本触媒(株)製エポスター7%
・界面活性剤X:ノニオンNS−208.5(日本油脂株式会社製)3%
・界面活性剤Y:ノニオンNS−240(日本油脂株式会社製)30%
【0102】
続いてステンターに供給し、120℃でフイルムを予熱後、155℃にて横方向に5.7倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、200℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み4.4μm、層Bの厚み0.6μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのポリエステル層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムのヤング率は縦方向5500N/mm、横方向10,500N/mmであった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0103】
[実施例2〜4]
ポリエステル層Aを構成するポリエステルとして、触媒金属としてのチタン残渣量、その結果発生したDEG量が表1に示す通りの樹脂A(以下、樹脂A2と称する。)を用い、ポリエステル層Bに含有させる触媒金属残渣量、不活性粒子Bの種類、平均粒径、破壊強度、層B表面上の突起頻度を表1に示すとおり変更した樹脂(以下、樹脂B2と称する。)を用いる以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0104】
[実施例5]
ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bを構成するポリエステルAおよびBの原料として用いた2,6−ナフタレンジカルボン酸メチルをジメチルテレフタレートに同モル量になるように変更した以外は、実施例3と同様にしてポリエステル層AおよびB用のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと称することがある。)樹脂(ポリエステル層A用:樹脂A3、ポリエステル層B用:樹脂B3)を得た。固有粘度は樹脂A3、B3共に0.60であった。また樹脂A3のDEG量は1.5重量%であった。
【0105】
この樹脂A3、B3を、それぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、層Aの片面に層Bを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0106】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムの層A側に不活性粒子Cをコアシェルフィラー(平均粒径30nm、体積形状係数0.40、JSR株式会社製、商品名「SX8721」)に変更した以外は実施例1と同じ組成の水性塗液(全固形分濃度1.0%)を実施例1と同様に塗布した。
【0107】
続いてステンターに供給し、80℃でフイルムを予熱後、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmで、ポリエステル層Bの厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのポリエステル層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムのヤング率は縦方向5000N/mm、横方向7000N/mmであった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0108】
[比較例1〜5]
ポリエステル層Aを形成する樹脂Aに含有されるチタン元素量、それに伴って生じるDEG量、ポリエステル層Bを形成する樹脂Bに含有される触媒金属残渣量、不活性粒子B1の種類、粒径、破壊強度、突起頻度および不活性粒子B2の種類、粒径、破壊強度、突起頻度を夫々表1記載の値になるように調整した以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは金属薄膜蒸着工程で層Aの平滑性が低下したり、蒸着工程での冷却キャンとの密着性が低下して熱変形を起こしたり、磁気テープにしたときの十分な電磁変換特性を得ることができなかった。その他の特性およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0109】
【表1】
Figure 2005007744
【0110】
表1から明らかなように、本発明の積層ポリエステルフィルムは、耐熱性が良好なために片面が非常に平坦で、反対面からの突起の脱落物転写も少なく、優れた電磁変換特性を示すとともに、巻き取り性が極めて良好である。一方、本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時に満足できない。
【0111】
【発明の効果】
本発明によれば、耐熱性、加工適性に優れ、特に電磁変換特性に優れた金属薄膜型磁気記録媒体に有用な積層ポリエステルフィルムを提供することができる。

Claims (10)

  1. ポリエステル層Aとその片面に積層された二種類の不活性粒子B1およびB2を含有するポリエステル層Bとからなる積層ポリエステルフィルムであって、
    (1)ポリエステル層Aを構成するポリエステルは、該ポリエステルの重量を基準として、触媒残渣としてのチタン化合物をチタン元素量で5〜30ppmおよびジエチレングリコール成分を0.1〜2.5重量%含有すること、
    (2)不活性粒子B1は平均粒径が0.01〜0.5μmで破壊強度が5〜50Kgf/mmで、かつ層B表面に存在する頻度が1×10〜5×10個/mmの範囲にあること、
    (3)不活性粒子B2は平均粒径が0.1〜1.0μmで破壊強度が5〜50Kgf/mmで、かつ層B表面に存在する頻度が1×10〜5×10個/mm2の範囲にあること、そして
    (4)ポリエステル層Aに存在する触媒金属残渣濃度(MA)とポリエステル層Bの触媒金属残渣濃度(MB)の比(MA/MB)が0.01〜0.5の範囲であること
    を特徴とする積層ポリエステルフィルム。
  2. ポリエステル層Bが、触媒残渣としてアルカリ土類金属化合物を金属元素量で50〜200ppm含有する請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
  3. ポリエステル層Bが、炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスを0.001〜1重量%含有する請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
  4. ポリエステル層Aのポリエステル層Bと接していない表面にコート層Cが積層されている請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
  5. コート層Cが、平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有する請求項4に記載の積層ポリエステルフィルム。
  6. 厚さが2μm以上8μm未満である請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
  7. ポリエステル層Aおよび層Bを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートである請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
  8. 磁気記録媒体のベースフィルムとして用いる請求項1〜7のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. 請求項1〜7のいずれかに記載の積層ポリエステルフィルムと、そのポリエステル層A側の表面に設けられた磁性層とからなることを特徴とする磁気記録媒体。
  10. 磁性層が強磁性金属薄膜層である請求項9に記載の磁気記録媒体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019502157A (ja) * 2015-12-18 2019-01-24 スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー 低ヘイズの複屈折ポリエステルフィルム

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