JP4097503B2 - 積層ポリエステルフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は積層ポリエステルフイルムに関する。さらに詳しくは磁気記録媒体のベースフィルムとして用いたとき、電磁変換特性に優れ、テープに加工する際の歩留まりも良い、特にデジタルビデオカセットテープやデータストレージ等のデジタルデータを記録する強磁性金属薄膜蒸着型磁気記録媒体のベースフィルムに適した積層ポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリングなどの物理沈着法やメッキ法により非磁性支持体上に形成させた強磁性金属薄膜蒸着型磁気記録媒体が、デジタルビデオカセットテープや、データストレージ用テープとして用いられてきている。
【0003】
従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は、記録密度が低く、記録波長も長いために、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚い。これに対し、上記真空蒸着やスパッタリングなどの物理沈着法やメッキ法により形成された金属薄膜は、厚みが0.2μm以下と非常に薄くなっている。
【0004】
このため、磁気記録層の薄い強磁性金属薄膜蒸着型磁気記録媒体においては、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁気記録層の表面性に大きな影響を及ぼしている。すなわち、非磁性支持体の表面状態が、そのまま磁気記録層表面の凹凸として発現し、それが記録・再生信号の雑音の原因となる。従って、非磁性支持体の表面は、できるだけ平滑であることが望ましい。
【0005】
一方、非磁性支持体の製膜、製膜工程での搬送、傷つき、巻き取り、巻出しといったハンドリングの観点からは、フィルム表面が平滑過ぎるとフィルム―フィルム相互の滑り性が悪化し、製品歩留りの低下、ひいては、製品の製造コストの上昇をきたす。従って、製造コストという観点では、非磁性支持体の表面は、できるだけ粗いことが好ましい。
【0006】
このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性という観点からは平滑であることが要求され、ハンドリング性、製造コスト、ブロッキング防止の観点からは、粗いことが要求される。
【0007】
このような相反する要求を満たすため、平均粒径50〜1500nmの不活性粒子を0.01〜5重量%含有するポリエステル層、不活性粒子を含有しないか平均粒径30〜400nmの不活性粒子を0.001〜0.2重量%含有するポリエステル層および表面の中心面平均粗さが0.1〜4nmである塗膜層Cを、この順で積層した積層ポリエステルフィルムが、特開2002―1882号公報で提案されている。該公報の積層ポリエステルフィルムによれば、電磁変換特性と、ハンドリング性、製造コストおよびブロッキング防止といった相反する要求を高度に具備させることができ、金属薄膜を蒸着などによって設ける際のベースフィルムの変形も微小に抑えられていた。しかしながら、近年のさらなる記録容量アップの要求により、磁気テープが極めて薄膜化され、テープ走行時の寸法変化によって、磁気テープとしたときの品質低下が著しく発生するという新たな問題が発生した。
【0008】
【特許文献1】
特開2002―1882号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、このような従来技術の欠点を解消し、金属蒸着薄膜型磁気記録媒体のベースフィルムとして、加工工程での歩留まりが良く、記録媒体としたときの電磁変換特性に優れる積層ポリエステルフィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の目的は、実質的に粒子を含有しないポリエステル層A、該ポリエステル層Aの一方の面に積層されたポリエステル層Bおよび他方の面に塗設された塗膜層Cからなる積層ポリエステルフィルムであって、
(1)積層ポリエステルフィルムの塗膜層C側の表面の中心面平均粗さ(WRaC)が0.1〜4nmであること、(2)ポリエステル層Bが平均粒径150〜500nmの不活性粒子を0.05〜1重量%含有すること、(3)150℃で熱処理したとき、長手方向の熱収縮率(Sm(150))が1.5〜5.0%、幅方向の熱収縮率(St(150))が1.0〜3.0%および両者の比(Sm(150)/St(150))が0.8〜5.0であること、(4)105℃で熱処理したとき、長手方向の熱収縮率(Sm(105))が0.5〜1.5%、幅方向の熱収縮率(St(105))が0.2〜1.0%および両者の比(Sm(105)/St(105))が1.0〜5.0であること、ならびに(5)長手方向のヤング率(Ym)が4500〜7000N/mm2、幅方向のヤング率(Yt)が4000〜6000N/mm2および両者の比(Ym/Yt)が0.8〜1.75であること同時に具備する積層ポリエステルフイルムによって達成される。
【0011】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、その好ましい態様として、塗膜層Cが、平均粒径10〜50nmおよび体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを、塗膜層Cの重量を基準として、0.5〜30重量%含有すること、ポリエステル層AおよびBを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートであること、全体の厚さが2.5〜10μm、全体の厚さに占めるポリエステル層Bの厚さが1/2〜1/20、皮膜層Cの厚さが1〜100nmであること、ならびに磁性層が強磁性金属薄膜層である磁気記録媒体のベースフィルムとして用いられることの少なくとも一つを具備する積層ポリエステルフイルムも提供される。
【0012】
さらにまた、本発明によれば、上記本発明の記載の積層ポリエステルフイルムと、該積層ポリエステルフィルムの塗膜層Cの表面に設けられた強磁性金属薄膜層とからなる磁気記録媒体も提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの一方の表面にポリエステル層Bおよび他方の面に塗膜層Cを積層したものである。なお、説明の便宜上、ポリエステル層A、ポリエステル層Bおよび塗膜層Cを、それぞれA層、B層およびC層と称することがある。
【0014】
以下、本発明を詳述する。
【0015】
本発明において、A層およびB層を形成するポリエステルAおよびポリエステルBは、脂肪族系ポリエステルや芳香族系ポリエステルが挙げられ、特に芳香族系ポリエステルが好ましい。
【0016】
ポリエステルAとポリエステルBとは同じ種類でも、異なる種類であっても良い。具体的な芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などが例示される。これらのうち、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0017】
これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、本発明の効果を損なわない限り、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。さらにトリメリット酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトールなどの3官能以上の多官能化合物を共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても、上記と同様に考えてよい。
【0018】
更に上記ポリエステルAおよびポリエステルBは、本発明の効果を損なわない範囲で、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、酸化チタン等)の如き添加剤を必要に応じて含有してもよい。
【0019】
本発明において、上記のポリエステルAおよびBは、従来から知られている方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートは、テレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応させ、次いで反応生成物を重縮合反応させればよい。また、上記の方法(溶融重合)により得られたポリエステルAおよびBは、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとしてもよい。
【0020】
溶融重合において用いる触媒としては、それ自体公知の触媒を用いることができる。すなわち、エステル交換触媒としては、マンガン、カルシウム、マグネシウム、チタンの酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が好ましく挙げられ、特に酢酸塩即ち、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸チタンが好ましく挙げられる。また重縮合触媒としては、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物が挙げられる。さらに詳しくは、アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン等が好ましく挙げられる。また、チタン化合物としては、有機チタン化合物、例えば特開平5−298670号公報に記載の有機チタン化合物が挙げられる。更に詳しくは、チタンのアルコラートや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応物等を例示でき、特に好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。さらにまた、ゲルマニウム化合物としては、例えば特許2792068号に記載のゲルマニウム化合物が挙げられる。具体的には、(イ)無定形酸化ゲルマニウム、(ロ)結晶性酸化ゲルマニウム(ハ)酸化ゲルマニウムをアルカリ金属又はアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解した溶液、および(ニ)酸化ゲルマニウムを水に溶解し、これにグリコールを加え水を留去して調整した酸化ゲルマニウムのグリコール溶液、等が挙げられる。
【0021】
また、該ポリエステルAおよびポリエステルBは、熱安定性を高度に維持するためリン化合物を含有することが好ましい。このリン化合物は特に限定されず、従来からポリエステルの製造工程で添加される公知のものを採用できる。好ましいリン化合物としては、正リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェートなどが挙げられる。
【0022】
本発明において、A層は実質的に不活性粒子を含有しないことが必要である。ここでいう実質的に不活性粒子を含有しないとは、ポリステルAの製造工程で用いた触媒を析出させたり、別途不活性粒子を添加したりしていないことを意味する。具体的には、平均粒径50nm以上の不活性粒子の含有量が、A層の重量を基準として、高々0.05重量%である。A層が実質的に不活性粒子を含有しないとき、得られる磁気記録媒体の磁気記録層の表面は極めて平坦になり、優れた電磁変換特性を発現する。
【0023】
本発明において、ポリエステル層Bを構成するポリエステルBの固有粘度は、0.55以上であることが好ましい。更に好ましくは0.57以上であり、特に好ましくは0.60以上である。ポリエステルBの固有粘度が0.55に満たない場合、フイルム製造工程の巻取り性が低下し問題となり、また更にオリゴマー等のブリードアウトや突起の脱落が多くなり、これらが反対面に転写してA層の平滑性を損なう場合がある。ポリエステルBの固有粘度を0.55以上にする方法としては固相重合法や溶融押出しのマイルド化等が用いられる。
【0024】
本発明において、ポリエステル層Bは、不活性粒子Bを含有する必要がある。該不活性粒子Bの平均粒径(dB)は50〜500nm、好ましくは100〜400nm、さらに好ましくは150〜350nm、特に好ましくは200〜300nmである。そして、該不活性粒子Bの含有量は、B層の重量に対し、0.05〜1重量%、好ましくは0.06〜0.5重量%、さらに好ましくは0.08〜0.3重量%、特に好ましくは0.1〜0.2重量%である。不活性粒子Bの平均粒径が50nm未満であるか、含有量が0.05重量%未満であると、得られる積層ポリエステルフィルムの巻取り性や耐ブロッキング性が不良となる。一方、不活性粒子Bの平均粒径が500nmを超えるか、含有量が1重量%を超えると、積層ポリエステルフィルムの反対面へ、B層の表面にある突起の形状が転写したり、B層の表面にある突起が積層ポリエステルフィルムの内部からA層を突き上げ、結果として、積層ポリエステルフィルムの皮膜層C側の表面を粗して、得られる磁気記録媒体の電磁変換特性を低下させる。
【0025】
本発明で使用する不活性粒子Bとしては、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、三二酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)粒子、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)粒子、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)粒子、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)粒子、および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)粒子などが挙げられる。これらのうち、架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂粒子、ポリアミドイミド樹脂粒子、その他三二酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、合成炭酸カルシウム、硫酸バリウム、ダイアモンド、またはカオリンからなる微粒子が好ましく、特に架橋シリコーン樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、その他三二酸化アルミニウム(アルミナ)、二酸化チタン、二酸化ケイ素、または炭酸カルシウムからなる微粒子が好ましい。
【0026】
上記不活性粒子Bは1種でも、2種以上の粒子を併用してもよい。不活性粒子Bが2種以上の粒子からなる場合、それぞれの不活性粒子の平均粒径は、それぞれ上記範囲を満足することが必要である。また、不活性粒子Bの含有量は、全不活性粒子Bの含有量が、上記範囲を満足することが必要である。不活性粒子Bの形状は、体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらには0.2〜π/6、特に0.4〜π/6であることが好ましい。
【0027】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、B層に不活性粒子Bとは別に、平均粒径が5〜140nmの不活性微粒子Dを含有してもよい。具体的な不活性粒子Dとしては、上述の不活性粒子Bとして例示した粒子のほかに、コロイダルシリカ、α、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどの微粒子を好ましく挙げられる。これらの中でも、フィルムの表面の補強できることから、コロイダルシリカ、α、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどの微粒子が好ましい。不活性粒子Dの平均粒径は、好ましくは5〜130nm、さらに好ましくは10〜120nm、特に好ましくは30〜110nmである。また、不活性粒子Dの含有量は、B層の重量を基準として、好ましくは0.005〜1重量%、さらに好ましくは0.01〜0.7重量%、特に好ましくは0.02〜0.5重量%である。上記不活性粒子Dも、不活性粒子Bと同じく、1種でも、2種以上の粒子を併用してもよい。不活性粒子Bが2種以上の粒子からなる場合、不活性粒子Bの平均粒径は、それぞれの不活性粒子Bの平均粒径で表され、また、不活性粒子Dの含有量は、全不活性粒子Dの含有量である。
【0028】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、B層に炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスを0.001〜1重量%含有させても良い。上記脂肪族モノカルボン酸の炭素数は8個以上、好ましくは8〜34個である。この炭素数が8個未満であると、得られたエステル生成物の耐熱性が不充分で、ポリエステルに分散させる際の加熱条件で、脂肪族モノカルボン酸が容易に分解されやすい。
【0029】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、磁気テープとした場合の諸特性向上のため、磁性層を設ける側の面、すなわち、A層のB層と接していない表面に、不活性粒子Cを含有する塗膜層Cを設ける。
【0030】
上記塗膜層Cを形成する樹脂としては、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。この水性ポリエステル樹脂としては、酸成分が、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウム、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩、p−ヒドロキシ安息香酸などの多価カルボン酸の1種以上よりなり、グリコール成分が、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などの多価ヒドロキシ化合物の1種以上より主としてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、ポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマーまたはブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな粒子内で特定の物理的構成(IPN(相互侵入高分子網目)型、コアシェル型など)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。また、これらは親水性を付与するため、分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位などが導入されていてもよい。
【0031】
上記塗膜層Cに含有される不活性粒子Cとしては、特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重のものが好ましい。例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどの有機粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどからなる粒子が好ましく挙げられる。これらのなかでも、架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が特に好ましい。
【0032】
上記不活性粒子Cの平均粒径dCは10〜50nm、好ましくは12〜45nm、さらに好ましくは15〜40nmである。この平均粒径が10nm未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、50nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0033】
上記不活性粒子Cの形状は、後述の測定方法で求められる体積形状係数(f)が0.1〜π/6、好ましくは0.2〜π/6、さらに好ましくは0.4〜π/6の範囲にあるのが好ましい。なお、体積形状係数(f)がπ/6である粒子の形状は、球(真球)である。すなわち、体積形状係数(f)が0.4〜π/6のものは、実質的に球ないしは真球、ラグビーボールのような楕円球を含むものであり、不活性粒子Cとして好ましい。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、走行耐久性が低下してしまうので好ましくない。
【0034】
上記不活性粒子Cの含有量は、塗膜層C(塗液の固形分)に対し、0.5〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。この含有量が0.5重量%未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、30重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0035】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、塗膜層Cの表面粗さ(WRaC)が0.1〜4nm、好ましくは0.2〜3.5nm、さらに好ましくは0.3〜3.0nm、特に好ましくは0.4〜2.5nmである。このWRaCが0.1nm未満であると、滑り性が悪くフィルムの製造が極めて困難であり、一方WRaCが4nmを超えると、電磁変換特性が悪化するので好ましくない。この表面粗さ(WRaC)は、塗膜層Cに含有させる不活性粒子Cの粒径と量によって調整することができる。
【0036】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、150℃での長手方向の熱収縮率(Sm(150))が1.5〜5.0%、好ましくは1.8〜4.5、さらに好ましくは2.0〜4.0である。Sm(150)が上記範囲を外れると、蒸着工程でしわが発生し、得られる磁気記録テープの電磁変換特性を損なう。また、150℃での幅方向の熱収縮率St(150)は1.0〜3.0%、好ましくは1.0〜2.5、更に好ましくは1.2〜2.2である。St(150)が上記範囲を外れると、蒸着工程でしわが発生し、得られる磁気記録テープの電磁変換特性を損なう。さらにまた、両者の比(Sm(150)/St(150))は、0.8〜5.0、好ましくは0.9〜4.0、更に好ましくは1.0〜3.0である。Sm(150)およびSt(150)がそれぞれ上記範囲を満足していても、Sm(150)/St(150)が上記範囲を外れると、蒸着工程でしわが発生し、得られる磁気記録テープの電磁変換特性を損なう。
【0037】
また、本発明の積層ポリエステルフィルムは、105℃での長手方向の熱収縮率(Sm(105))が0.5〜1.5%、好ましくは0.6〜1.2、更に好ましくは0.7〜1.0である。Sm(105)が上記範囲を外れると、蒸着工程でしわが発生し、得られる磁気記録テープの電磁変換特性を損なう。また、105℃での幅方向の熱収縮率(St(105))は0.2〜1.0%、好ましくは0.3〜0.8、更に好ましくは0.4〜0.7である。St(105)が上記範囲を外れると、蒸着工程でしわが発生し、得られる磁気記録テープの電磁変換特性を損なう。さらにまた、両者の比(Sm(105)/St(105))は、1.0〜5.0、好ましくは1.0〜3.0である。Sm(105)およびSt(105)がそれぞれ上記範囲を満足していても、Sm(105)/St(105)が上記範囲を外れると、蒸着工程でしわが発生し、得られる磁気記録テープの電磁変換特性を損なう。
【0038】
さらにまた、本発明の積層ポリエステルフィルムは、長手方向のヤング率(Ym)が4500〜7000N/mm2、好ましくは4800〜6800N/mm2、更に好ましくは5000〜6500N/mm2である。Ymが上限を超えると、ヘッド当りが発生し、他方下限を下回るとテープ走行時に伸びてしまい、電磁変換特性を低下させる。また、幅方向のヤング率Ytは、4000〜6000N/mm2で、好ましくは4500〜5900N/mm2、更に好ましくは5000〜5900N/mm2である。Ytが下限を下回ると、ヘッド当りが発生し、他方上限を超えるとテープ走行時に伸びてしまい、電磁変換特性を低下させる。また、両者の比(Ym/Yt)は、0.8〜1.75、好ましくは1.0〜1.75である。YmおよびYtがそれぞれ上記範囲を満足していても、Ym/Ytが上記範囲を外れると、ヘッド当り、テープ走行時の寸法変化および蒸着工程でのしわの発生といった問題を解消することが困難となる。
【0039】
上述のSm(150)、St(150)、Sm(105)、St(105)、YmおよびYtは互いに密接に関係しており、それぞれ単独で調整できるものではない。本発明の積層ポリエステルフィルムは、これらの連動する物性を特定の範囲にすることで、蒸着工程でのしわの抑制とテープ特性とを両立させたものである。換言すれば、上述のSm(150)、St(150)、Sm(105)、St(105)、YmおよびYtは、どれか一つでも欠けると、本発明の効果が奏されないことから有機的に結合している。
【0040】
本発明の積層ポリエステルフィルムの全厚みは、通常2.5〜10μm、好ましくは3.0〜10μm、さらに好ましくは4.0〜10μmである。A層とB層の厚み構成は、好ましくはB層の厚みが積層ポリエステルフィルムの全厚みの1/2以下、さらに好ましくは1/3以下、特に好ましくは1/4以下である。なお、B層の厚みの下限は、1/20である。塗膜層Cの厚みは、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは3〜10nm、特に好ましくは3〜8nmである。
【0041】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、従来から知られている、または当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。そのうち、ポリエステル層Aとポリエステル層Bとの積層構造は、共押出し法により製造するのが好ましく、塗膜層Cの積層は塗布法により行うのが好ましい。
【0042】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で不活性粒子Bを微分散・含有(要すれば、上記(部分ケン化)エステルワックスや不活性粒子Dを微分散・含有)させたポリエステルBと、不活性粒子を実質的に含有しないポリエステルAとを、それぞれさらに高精度ろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、上記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層ポリエステルフィルムを得る。その後、上記未延伸積層ポリエステルフィルムを常法に従い、縦方向(製膜方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で3〜8倍、好ましくは3.5〜8倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向の横方向に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜7.5倍、好ましくは2.5〜6.0倍の倍率で延伸する。なお、延伸は縦方向と横方向の延伸の順序を入れ替えても良いし、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行ってもよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0043】
さらに、上記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、200〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0044】
なお、積層ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルAおよびポリエステルBに所望により上記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤などを添加含有させてもよい。
【0045】
本発明におけるポリエステル層Aへの塗膜層Cの積層は、水性塗液を塗布する方法で行うのが好ましい。
【0046】
塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステル層Aの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で皮膜は乾燥される。その中で、塗布は、未延伸積層ポリエステルフィルムまたは縦(一軸)延伸積層ポリエステルフィルム、特に縦(一軸)延伸積層ポリエステルフィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0047】
上記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0048】
また、ポリエステルAおよびBの結晶化度は、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合は30〜50%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回るとフィルムの耐摩耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0049】
最後に、本発明の積層ポリエステルフィルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は、以下のとおりである。
【0050】
本発明の積層ポリエステルフィルムの塗膜層Cの表面に、真空蒸着により、鉄、コバルト、ニッケル、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物よりなる強磁性金属薄膜層を形成する。金属薄膜層の厚さは100〜300nmであるものが好ましい。また、強磁性金属薄膜層の表面に、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設けてもよい。さらに必要により、本発明の積層ポリエステルフィルムのB層側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けてもよい。こうすることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない強磁性金属薄膜蒸着型磁気記録媒体として使用できる。このような蒸着型磁気記録媒体としては、アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリなどが挙げられる。本発明の積層ポリエステルフィルムは、これらの磁気テープのベースフィルムとして極めて有用であり、特にデジタルビデオテープ用途に使用すると優れた結果を得ることができる。またデータストレージテープ用途にしても優れた結果を得ることができる。
【0051】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、本発明における物性値および特性は、それぞれ下記の方法で測定し、かつ定義されるものである。
【0052】
(1)固有粘度
オルソクロロフェノール溶媒中35℃で測定した値から求める。
【0053】
(2)粒子の含有量
フィルムから測定する層のポリマーを削り取ってサンプリングし、粒子は溶解しない溶媒を選択してポリマーを溶解し、遠心分離によってポリマーと不活性粒子を分離する。そして、サンプル重量に対する不活性粒子の重量比を粒子の含有量とした。
【0054】
(3)粒子の平均粒径
1)粒径60nm以上の粒子
株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)」を用いて測定した。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径(nm)とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247)。なお、ここで測定するフィルム中の不活性粒子は、フィルムからサンプリングし、粒子は溶解しない溶媒を選択してポリマーを溶解し、遠心分離によってポリマーと不活性粒子を分離することによって得られる。
【0055】
2)粒径60nm未満の粒子
小突起を形成する平均粒径60nm未満の粒子は、光散乱法を用いて測定した。すなわち、ニコンプインストゥルメント株式会社(Nicomp Instruments Inc.)製の商品名「NICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZER」により求められる全粒子の50%の点にある粒子の「等価球直径」をもって、平均粒径(nm)とする。なお、ここで測定するフィルム中の不活性粒子は、フィルムからサンプリングし、粒子は溶解しない溶媒を選択してポリマーを溶解し、遠心分離によってポリマーと不活性粒子を分離することによって得られる。
【0056】
(4)体積形状係数(f)
走査型電子顕微鏡により、用いたサイズに応じた倍率にて各粒子の写真を撮影し、画像解析処理装置ルーゼックス500(日本レギュレーター社製)を用い、投影面最大径(D)(μm)および粒子の体積(V)(μm3)を算出し、下式(II)により計算する。
【0057】
【数1】
f=V/D3 ・・・・・(II)
【0058】
(5)ポリエステル層A、Bの厚み、およびフィルム全体の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いた。ポリエステル層A、Bの層厚については、薄いポリエステル層の層厚みを下記に述べる方法にて測定し、厚いポリエステル層の層厚みは、全厚みより塗膜層および薄いポリエステル層の層厚を引き算して求める。すなわち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5,000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M+)とポリエステルの炭化水素(C+)の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になったのち、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、薄いポリエステル層の厚み(μm)とする。
測定条件は、以下のとおりである。
(a)測定装置
二次イオン質量分析装置(SIMS);パーキン・エルマー株式会社
(PERKIN ELMER INC.)製、「6300」
(b)測定条件
一次イオン種:O2+
一次イオン加速電圧:12KV
一次イオン電流:200nA
ラスター領域:400μm□
分析領域:ゲート30%
測定真空度:6.0×10−9Torr
E−GUNN:0.5KV−3.0A
なお、表層から5,000nmの範囲に最も多く存在する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電分光法)などで上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚(μm)を求める。
【0059】
(6)塗膜層Cの厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約600オングストロームの厚みの超薄切片(フィルムの流れ方向に平行に切断する)を作成した。この試料を透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製:H−800型)にて観察し、塗膜層Cの境界面を探して塗膜層の厚み(nm)を求める。
【0060】
(7)表面粗さ
▲1▼ WRa
WYKO株式会社製の非接触三次元粗さ計、商品名「TOPO−3D」を用いて、測定倍率40倍、測定面積242μm×239μm(0.058mm2)の条件にて測定を行い、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得た。上記粗さ計内蔵ソフトによる表面解析により、下式によって定義される中心面平均粗さ(WRa)を得る。
【0061】
【数2】
【0062】
また、Zjkは、測定方向(242μm)、それと直行する方向(239μm)を、それぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における三次元粗さチャート上の高さである。
【0063】
(8)ヤング率
東洋ボールドウィン株式会社製の引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、長さ300nm、幅12.7mmの試料フィルムを10%/分のひずみ速度で引っ張り、引っ張り応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて下式(V)によって計算する。
【0064】
【数3】
E=Δσ/Δε ・・・・・(V)
ここで、Eはヤング率、Δσは直線上の2点間の元の平均断面積による応力差、Δεは同じ2点間のひずみ差である。
【0065】
(9)熱収縮率
105℃に設定されたオーブン中にあらかじめ正確な長さを測定した300mmの、幅10mmのフィルムを無荷重で入れ、30分間熱処理し、その後オーブンよりフィルムを取り出し、室温に戻してからその寸法変化を読み取る。熱処理前の長さ(L0)と熱処理による寸法変化量(△L)より、次式から熱収縮率を算出する。
【0066】
【数4】
熱収縮率=(△L/L0)×100(%)
【0067】
(10)巻き取り性
スリット時の巻き取り条件を最適化したのち、幅600mm×12000mのサイズで、30ロールを速度100m/分でスリットし、スリット後のフィルム表面に、ブツ状、突起やシワのないロールを良品として、以下の基準にて巻き取り性を評価する。
◎:良品ロールの本数28本以上
○:良品ロールの本数25〜27本
×:良品ロールの本数24本以下
【0068】
(11)磁気テープの製造および特性(電磁変換特性)評価
積層ポリエステルフィルムの塗膜層Cの表面に、真空蒸着法により、コバルト100%の強磁性薄膜を0.2μmの厚みになるように2層(各層厚約0.1μm)形成する。形成した強磁性薄膜の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、さらに含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらにポリエステル層Aの表面にバックコート層を設ける。その後、8mm幅にスリットし、、市販の8mmビデオカセットにローディングした。次いで、下記の市販の機器を用いてテープの特性(C/N)を測定する。
(a)使用機器
8mmビデオテープレコーダー、ソニー株式会社製、商品名「EDV−6000」
株式会社シバソク製、ノイズメーター
(b)測定方法
記録波長0.5μm(周波数約7.4MHz)の信号を記録し、その再生信号の6.4MHzと7.4MHzの値の比をそのテープのC/Nとし、比較例2のフィルムをベースフィルムにした磁気テープの値を基準(0dB)とし、相対値で評価する。なお、蒸着時にしわが発生したものは、C/Nが低下しており、以下の基準で×と評価した。
◎:+4dB以上
○:+2dB以上+4dB未満
×:+2dB未満
【0069】
[実施例1]
ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール70部の混合物に、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水塩0.025部を添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、エチレングリコール2.5部中で無水トリメリット酸0.8部とテトラブチルチタネート0.65部を反応せしめた液(チタン含有率は11重量%)0.014部を添加した。次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエステルA用のポリエチレンテレフタレート(樹脂A1)を得た。
【0070】
さらに、上記と同様の方法で、エステル交換反応を行い、エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモン0.03部添加した。系内に混入した水を充分留出させた後、滑剤(不活性粒子B)として、平均粒径300nmのシリコーン粒子および平均粒径100nmのθ型アルミナを、樹脂中にそれぞれ0.1%および0.2%添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを得た。この際、本ポリマー中のアンチモン残存量は250ppmであった。
【0071】
得られた樹脂A1、樹脂B1を、それぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、樹脂層Aの片面に樹脂層Bを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0072】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて4.0倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に下記に示す組成(固形分換算)の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により塗布した。
【0073】
塗液の固形分組成
バインダー:アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製、IN−170−6) 60%
不活性粒子C:アクリルフィラー(平均粒径30nm)(体積形状係数0.40)(日本触媒株式会社製、エポスター) 7%
界面活性剤:(ライオン製、ライオノールL950) 33%
C層厚み(乾燥後):8nm
続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に3.5倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmで、ポリエステル層Bの厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのポリエステル層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの塗膜層C側の表面から測定した表面粗さWRaは、1.7nmであった。この積層ポリエステルフィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0074】
[実施例2、比較例1〜4]
ポリエステル層Bに含有させる不活性粒子Bの種類、平均粒径、添加量、積層ポリエステルフィルムのヤング率熱収を表1に示すとおり変更した以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0075】
【表1】
【0076】
表1から明らかなように、本発明による積層ポリエステルフィルムは、優れた電磁変換特性を示すとともに、加工工程適正が極めて良好である。一方、本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時に満足できない。
【0077】
【発明の効果】
本発明によれば、巻き取り性、加工適性に優れ、特に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに電磁変換特性に優れた積層ポリエステルフィルムを得ることができる。
Claims (6)
- 実質的に粒子を含有しないポリエステル層A、該ポリエステル層Aの一方の面に積層されたポリエステル層Bおよび他方の面に塗設された塗膜層Cからなる積層ポリエステルフィルムであって、
(1)積層ポリエステルフィルムの塗膜層C側における表面の中心面平均粗さ(WRaC)が0.1〜4nmであること、
(2)ポリエステル層Bが平均粒径150〜500nmの不活性粒子を0.05〜1重量%含有すること、
(3)150℃で熱処理したとき、長手方向の熱収縮率(Sm(150))が1.5〜5.0%、幅方向の熱収縮率(St(150))が1.0〜3.0%および両者の比(Sm(150)/St(150))が0.8〜5.0であること、
(4)105℃で熱処理したとき、長手方向の熱収縮率(Sm(105))が0.5〜1.5%、幅方向の熱収縮率(St(105))が0.2〜1.0%および両者の比(Sm(105)/St(105))が1.0〜5.0であること、ならびに
(5)長手方向のヤング率(Ym)が4500〜7000N/mm2、幅方向のヤング率(Yt)が4000〜6000N/mm2および両者の比(Ym/Yt)が0.8〜1.75であること
を同時に具備することを特徴とする積層ポリエステルフイルム。 - 塗膜層Cが、平均粒径10〜50nmおよび体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを、塗膜層Cの重量を基準として、0.5〜30重量%含有する請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステル層AおよびBを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートである請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- 全体の厚さが2.5〜10μm、全体の厚さに占めるポリエステル層Bの厚さが1/2〜1/20、皮膜層Cの厚さが1〜100nmである請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- 磁性層が強磁性金属薄膜層である磁気記録媒体のベースフィルムとして用いられる請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルム。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルムと、該積層ポリエステルフィルムの塗膜層Cの表面に設けられた強磁性金属薄膜層とからなる磁気記録媒体。
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