JP4167054B2 - 積層ポリエステルフィルムおよび磁気記録媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステルフィルムに関する。さらに詳しくは、金属薄膜蒸着型磁気記録媒体のベースフィルムとして用いたときに、製膜後の表面付着異物の発生が少なく、電磁変換特性に優れ、ドロップアウトも少ないポリエステルフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリングなどの物理沈着法またはメッキ法により非磁性支持体上に形成させた強磁性金属薄膜型磁気記録媒体の開発実用化が進められている。このような磁気記録媒体は、磁性層である金属薄膜が、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティングなどの薄膜形成手段によって形成されるため、磁性層の厚みが0.2μm以下と非常に薄くなっている。
【0003】
このため、高密度磁気記録媒体においては、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁気記録層の表面性に大きな影響を及ぼしている。すなわち、非磁性支持体の表面状態が、そのまま磁気記録層表面の凹凸として発現し、それが記録・再生信号の雑音の原因となる。従って、非磁性支持体の表面は、できるだけ平滑であることが望ましく、ベースフィルムとしては表面をできるだけ平滑にしたポリエステルフィルムが主に用いられている。一方、非磁性支持体の製膜、製膜工程での搬送、傷つき、巻き取り、巻出しといったハンドリングの観点からは非磁性支持体の表面は、できるだけ粗いことが好ましい。そのため、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性という観点からは平滑であることが要求され、ハンドリング性、製造コスト、ブロッキング防止の観点からは、粗いことが要求される。このような相反する要求を満たすため、A、Bの2層からなり、A層表面よりもB層表面の方が粗い積層フィルム(例えば特公平1−26338号)が提案されている。
【0004】
ところで、磁性層を設ける側のフィルム表面にオリゴマーのような析出物が経時で発生し、電磁変換特性を低下させたり、ドロップアウトの原因となるという問題が新たに発生してきた。この対策として、特開2002―160336号公報では、フィルムの表面に、数平均分子量が1万〜100万の水性高分子樹脂からなる皮膜層を設けることが提案され、また、特開2002―208131号公報および特開2002―208132号公報では、フィルムの磁性層を設ける側の表面に皮膜層を設けつつ、磁性層を設けない面には不活性粒子を含有しないシリコーン成分を有する水性ポリエステル樹脂からなる皮膜層を設けることが提案されている。
【0005】
これらの皮膜層によって、フィルム中から析出するオリゴマーを抑制することはできるが、やはり依然としてオリゴマーが析出しており、さらなる改善が望まれていた。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−160336号公報
【特許文献2】
特開2002―208131号公報
【特許文献3】
特開2002―208132号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、このような従来技術の欠点を解消し、生産性が良く、製膜後の表面付着物の発生が少なく、特に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときにドロップアウトが少なくて電磁変換特性に優れたポリエステルフィルムを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上述の課題を解消しようと鋭意研究した結果、積層ポリエステルフィルムの両面に皮膜層を設けた際に、オリゴマーの析出は表面の粗い側から多く析出しており、そのオリゴマーが表面の平坦な層に転写することによって、金属蒸着薄膜型磁気記録媒体の品位を低下させていることを見出した。そこで、さらにオリゴマーの転写を抑制すべく研究した結果、表面の粗い側のフィルム表面に設ける皮膜層に、特定の不活性粒子を含有させるとき、オリゴマーの転写が抑えられつつ十分な走行耐久性が得られることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
かくして、本発明によれば、皮膜層C、ポリエステル層A、ポリエステル層Bおよび皮膜層Dがこの順で積層された積層ポリエステルフィルムであって、(1)ポリエステル層Aは実質的に不活性粒子を含有しないこと、(2)ポリエステル層Bは、平均粒径150〜550nmの不活性粒子を0.05〜0.5重量%含有すること、(3)皮膜層Cは主として数平均分子量1万以上100万以下の水性高分子樹脂からなり、厚みが1〜30nmで、平均粒径10〜40nmの不活性粒子を含有し、かつ表面の粗さ(WRaC)が0.5〜4nmであること、および(4)皮膜層Dは主として数平均分子量1万以上100万以下の水性高分子樹脂からなり、厚みが1〜30nmで、かつ皮膜層Dの厚みに対して平均粒径1.5〜40の不活性粒子Dを、下記一般式を満足する範囲で含有することを同時に具備する積層ポリエステルフィルムが提供される。
【0010】
【数2】
5×103≦(WD/dD 3 )/(WB/dB 3 )≦1×106
(ここで、式中の、WDは皮膜層Dにおける不活性粒子Dの含有量(重量%)、dDは不活性粒子Dの平均粒径(nm)、WBはポリエステル層Bにおける不活性粒子Bの含有量(重量%)およびdBは不活性粒子Bの平均粒径(nm)である。) なお、本発明の積層ポリエステルフィルムは、 皮膜C上に強磁性金属薄膜層を設けてなる磁気記録媒体のベースフィルムに極めて好適に用いることができ、また、好ましい態様として、皮膜層Cを構成する水性高分子樹脂が、アクリル樹脂またはアクリル変性ポリエステル樹脂であること、皮膜層Dを構成する水性高分子樹脂が、アクリル樹脂またはアクリル変性ポリエステル樹脂であること、または、ポリエステル層Aまたはポリエステル層Bを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートであることのいずれかを具備する積層ポリエステルフイルムも包含するものである。
【0011】
また、本発明によれば、上述の本発明の積層ポリエステルフイルムと、その皮膜C上に設けられた強磁性金属薄膜層とからなる磁気記録媒体も提供される。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明において、ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bを構成するポリエステルの種類は特に限定されないが、特に芳香族ポリエステルが好ましい。芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などを例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。特にポリエチレンテレフタレートはオリゴマーによる影響を本発明によって著しく低下でき、また、ポリエチレン−2,6−ナフタレートはそれ自体がオリゴマーの析出が少ないことから、より高いレベルでオリゴマーによる影響を解消することができる。
【0013】
これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、例えばジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。さらにトリメリット酸、ピロメリット酸などの3官能以上の多官能化合物を共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても、上記と同様に考えてよい。上記ポリエステルは、それ自体公知であり、かつそれ自体公知の方法で製造することができる。
【0014】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、表面付着異物の発生抑制と、磁気テープとした場合の諸特性向上のため、磁性層を設ける側の面を皮膜層Cで、反対側の面を皮膜層Dで被覆する。この皮膜層Cおよび皮膜層Dは、主としては水性高分子樹脂からなる。
【0015】
水性高分子樹脂としては、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリウレタン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびアクリル−ポリエステル樹脂などを例示できる。これらの中でも、ポリエステルフィルムに対する密着性、突起保持性、易滑性などの点から、水溶性もしくは水分散性のポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびアクリル変性ポリエステル樹脂が好ましく、特にオリゴマーの析出を抑えやすいことから、水溶性もしくは水分散性のポリエステル樹脂、アクリル樹脂およびアクリル変性ポリエステル樹脂が好ましい。これらの樹脂は単一重合体でも共重合体でもよく、また混合物でも差支えない。
【0016】
前記水溶性もしくは水分散性のポリエステル樹脂について、さらに説明する。該ポリエステル樹脂を構成する酸成分は、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、2−カリウムスルホテレフタル酸、トリメリツト酸、トリメシン酸、無水トリメリット酸、無水フタル酸、p−ヒドロキシ安息香酸、トリメリツト酸モノカリウム塩などの多価カルボン酸を例示できる。また、該ポリエステル樹脂を構成するヒドロキシ化合物成分は、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリテトラメチレンオキシドグリコール、ジメチロールプロピオン酸、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジメチロールエチルスルホン酸ナトリウム、ジメチロールプロパン酸カリウムなどの多価ヒドロキシ化合物を例示できる。該ポリエステル樹脂は、これらの多価カルボン酸および多価ヒドロキシ化合物から常法によってつくることができる。特に水性塗料をつくる点から、5−ナトリウムスルホイソフタル酸成分またはカルボン酸塩基を含有する水性ポリエステル樹脂が好ましい。かかるポリエステル樹脂は分子内に官能基を有する自己架橋型とすることができるし、メラミン樹脂、エポキシ樹脂のような硬化剤を用いて架橋してもよい。
【0017】
前記水溶性もしくは水分散性のアクリル樹脂について、説明する。該アクリル樹脂の製造に用いるアクリル成分は、アクリル酸エステル(アルコール残基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基などを例示できる);メタクリル酸エステル(アルコール残基は上記と同じ);2−ヒドロキシエチルアクリレート、2ーヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレートなどの如きヒドロキシ含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N’−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミドなどの如きアミド基含有モノマー;N,N’−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N’−ジエチルアミノエチルメタクリレートなどの如きアミノ基含有モノマーなどを挙げることができる。これらモノマーは、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸およびそれらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などの如きスルホン酸基またはその塩を含有するモノマー;クロトン酸、イタコン酸、アクリル酸、マレイン酸、フマール酸、およびそれらの塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩など)などの如きカルボキシル基またはその塩を含有するモノマー;無水マレイン酸、無水イタコン酸などの無水物を含有するモノマー;その他ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アリルグリシジルエーテルなどの単量体と組合せて用いることができる。この場合、アクリル酸誘導体、メタクリル酸誘導体の如き(メタ)アクリルモノマーの成分が50モル%以上含まれているのが好ましく、特にメタクリル酸メチルの成分を含有しているものが好ましい。
【0018】
水溶性もしくは水分散性のアクリル樹脂は分子内の官能基で自己架橋することができるし、メラミン樹脂やエポキシ化合物などの架橋剤を用いて架橋することもできる。
【0019】
本発明において、水溶性または水分散性のアクリル変性ポリエステル樹脂は、アクリル変性ポリエステル樹脂とポリエステル変性アクリル樹脂とを包含するものである。具体的には、アクリル樹脂成分とポリエステル樹脂成分とが、互いにグラフトタイプやブロツクタイブなどの形態で結合したものである。アクリル変性ポリエステル樹脂は、例えばポリエステル樹脂の両端にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせたり、ポリエステル樹脂の側鎖にラジカル開始剤を付加してアクリル単量体の重合を行わせたり、あるいはアクリル樹脂の側鎖に水酸基を付け、末端にイソシアネート基やカルボキシル基を有するポリエステルと反応させて櫛形ポリマーとするなどによって製造できる。
【0020】
該アクリル−ポリエステル樹脂を構成する成分は、前記の水溶性もしくは水分散性のアクリル樹脂または水溶性または水分散性のポリエステル樹脂で例示したものを、同様に挙げることができる。
【0021】
バインダー樹脂Aの含有量は、皮膜層Cの重量を基準として、50〜90重量%が好ましい。50重量%未満であるとフィルムとの密着性が低下することがあり、一方90重量%を超える不活性微粒子Aや界面活性剤Aが不足し、総合的な特性を満足しがたい。
【0022】
上記水性高分子樹脂は、数平均分子量が1万以上100万以下である必要があり、好ましくは3万以上80万以下、更に好ましくは5万以上50万以下である。この分子量が1万未満であると、オリゴマー発生抑止効果が得られないだけでなく、皮膜の強度や耐熱性が不充分であり、ポリエステルフィルム製造工程での造膜不良やテープ製造工程での耐熱性不良が生じてしまい、好ましくない。一方、100万を超えると、ポリエステルフィルムとの接着性が低下し、好ましくない。
【0023】
ここで、数平均分子量は、所謂GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって単分散ポリスチレン(分子量標準品)換算で求められるものであり、二つ以上の分子量分布を有する場合は大きいほうの分子量分布より求められるものである。
【0024】
ところで、皮膜層Cおよび皮膜層Dは、上記主成分以外の成分を含んでも良い。皮膜に適度な硬度をあたえ、反対面と接触した際のダメージから皮膜を保護するために、メチルセルロース等の第2成分を特性に影響しない範囲で添加しても良い。また、ブロッキングを防止するために、シリコン等の離形性成分を添加しても良い。
【0025】
本発明において、皮膜層Cは、平均粒径10〜40nmの不活性粒子を含有する。
【0026】
上記皮膜層Cに含有される不活性粒子Cとしては、特に限定されないが、例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどの有機粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどからなる粒子が好ましく挙げられる。なかでも、架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が特に好ましく挙げられる。
【0027】
上記不活性粒子Cの平均粒径は10〜40nm、好ましくは15〜35nm、さらに好ましくは20〜40nmである。この平均粒径が下限未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、また、ロール状に巻かれて保管した際に皮膜表面に発生するオリゴマーが多くなる。これは、反対面との密着度が高く滑りも悪くなるために、反対面との接触時に皮膜が受けるダメージが大きいためと考えられる。一方、上限nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0028】
皮膜Cの厚みは、1〜30nm、好ましくは3〜25nm、さらに好ましくは5〜20nmである。皮膜Cの厚みが下限より薄いとオリゴマー発生抑止効果が不十分である。一方上限より厚いと皮膜の表面が粗くなり電磁変換特性が低下するため好ましくない。
【0029】
本発明におけるポリエステルフィルムは、皮膜C側の表面粗さ(WRaC)が0.5〜4nm、好ましくは0.6〜3nm、さらに好ましくは0.7〜2.5nm、特に好ましくは0.8〜2.0nmである。このWRaCが下限未満であると、滑り性が悪くフィルムの製造が極めて困難であり、一方WRaCが上限を超えると、電磁変換特性が悪化するので好ましくない。
【0030】
この表面粗さ(WRaC)は、皮膜層Cに含有させる不活性粒子Cの粒径と量によって調整することができる。
【0031】
本発明において、皮膜層Dは、厚みが1〜30nmであり、好ましくは、3〜25nm、更に好ましくは5〜20nmである。皮膜Dが下限より薄いとオリゴマー封止効果が不十分であり、上限を超えると、ブロッキングが発生したり、テープに加工する工程で削れて工程を汚したりするため好ましくない。
【0032】
ところで、皮膜層Dは不活性粒子Dを含有する。不活性粒子Dとしては、特に限定されず、前述の不活性粒子Cで挙げたものを同様に使用することができる。
【0033】
上記不活性粒子Dの平均粒径は、皮膜層Dの厚みに対して、1.5倍〜40倍、好ましくは2倍〜20倍、さらに好ましくは3倍〜10倍である。この平均粒径/皮膜層Dの厚みが下限未満であると、オリゴマーの転写抑制効果が十分に発現され難く、一方、上限を超えると、皮膜層Dの表面に析出するオリゴマーが急激に増加したり、不活性粒子Dが走行時に脱落しやすくなる。
【0034】
不活性粒子Dの皮膜層Dの重量を基準とした時の含有量(WD)は、後述のポリエステル層Bに含有される不活性粒子Bおよび不活性粒子Dの平均粒径と下記一般式を満足することが必要である。
【0035】
【数3】
5×103≦(WD/dD3)/(WB/dB3)≦1×106
(ここで、式中の、WDは皮膜層Dにおける不活性粒子Dの含有量(重量%)、dDは不活性粒子Dの平均粒径(nm)、WBはポリエステル層Bにおける不活性粒子Bの含有量(重量%)およびdBは不活性粒子Bの平均粒径(nm)である。)
【0036】
本発明において、巻き取り性の向上や、ブロッキング防止のため、ポリエステル層Aと皮膜層Dの間に不活性粒子Bを含有するポリエステル層Bが存在する。該不活性粒子Bの平均粒径は150〜350nm、好ましくは170〜330nm、さらに好ましくは180〜320nm、特に好ましくは200〜300nmである。そして、該不活性粒子B1の含有量は、B層に対し、0.05〜0.5重量%、好ましくは0.06〜0.3重量%、さらに好ましくは0.09〜0.2重量%、特に好ましくは0.1〜0.15重量%である。
【0037】
上記不活性粒子Bの平均粒径または含有量が下限未満であると、巻取り性、耐ブロッキング性が不良となる。一方、平均粒径がまたは含有量が上限を超えると、ロール状に巻かれた際に反対面の皮膜Cに与えるダメージが大きく、オリゴマーの発生が多くなってしまう。また、A層の下からの突起の突き上げによって電磁変換特性を悪化させる。
【0038】
上記不活性粒子としては、シリコーン樹脂、ポリスチレン、アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエステルなどからなる、高分子樹脂粒子が好ましく用いられる。これらのうち、シリコーン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子が特に好ましい。これら高分子樹脂粒子は弾力性を有するため、ロール状に巻かれた際の反対面へのダメージを軽減することができ、オリゴマーの発生を抑えることができる。
【0039】
B層には上記不活性粒子Bの他に、平均粒径が上記粒子より小さい不活性粒子B‘を含有しても良い。この不活性粒子としては、例えばコロイダルシリカ、α、γ、δ、θなどの結晶形態を有するアルミナなどの微粒子を好ましく用いることができる。また、平均粒径の大きな不活性粒子として例示した粒子種のうち、平均粒径の小さい微細粒子も用いることができる。
【0040】
この不活性粒子が存在することにより、B層の地肌に微細な突起が形成され、ロール状に巻かれた際に不活性粒子B1に起因する突起の反対面への密着度を軽減し、皮膜Cへ与えるダメージが減り、オリゴマーの発生を抑制できるので好ましい。
【0041】
本発明におけるポリエステル層Bには、一層の耐ブロッキング性、巻き取り性向上のために、本発明の効果を妨げない範囲でワックス成分を含有させても良い。ワックス成分としては、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスを0.001〜1重量%含有するのが好ましい。
【0042】
本発明におけるポリエステルフィルムの全厚みは、通常2.5〜20μm、好ましくは3.0〜10μm、さらに好ましくは4.0〜10μmである。B層の厚みは2μ以下、好ましくは1.8μm以下、特に好ましくは1.5μm以下である。
【0043】
本発明におけるポリエステルフィルムは、従来から知られている、または当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。そのうちポリエステル層Aおよび層Bの積層構造については、共押出し法により製造するのが好ましく、皮膜層C、Dの積層は塗布法により行うのが好ましい。
【0044】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で、不活性粒子Bを微分散、含有させたポリエステル樹脂Bと、ポリエステル樹脂Aとを、それぞれさらに高精度ろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、上記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層フィルムを得る。その後、上記未延伸積層フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0045】
さらに、上記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0046】
なお、ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステル樹脂A、Bに所望により上記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤などを添加含有させることができる。
【0047】
本発明における皮膜層Cの積層は、水性塗液を塗布する方法で行うのが好ましい。
【0048】
塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステル層Aおよび層Bの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で塗膜は乾燥される。その中で、塗布は、未延伸フィルムまたは縦(一軸)延伸フィルム、特に縦(一軸)延伸フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0049】
上記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0050】
本発明においては、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性をはじめとする各種性能を向上させ、同時に薄膜化を達成するには、フィルムのヤング率を、縦方向および横方向でそれぞれ、通常4500N/mm2以上および6000N/mm2以上、好ましくは4800N/mm2以上および6800N/mm2以上、さらに好ましくは5500N/mm2以上および8000N/mm2以上、特に好ましくは5500N/mm2以上および10,000N/mm2以上とする。
【0051】
また、ポリエステル樹脂A、Bの結晶化度は、ポリエチレンテレフタレートの場合は30〜50%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回るとフィルムの耐摩耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0052】
本発明のポリエステルフィルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は、下記のとおりである。
【0053】
すなわち、本発明のフィルムは、皮膜層C側の表面に、真空蒸着により、鉄、コバルト、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物よりなる強磁性金属薄膜層を形成し、またその表面に、目的、用途、必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)などの保護層、含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに必要により、磁性層とは反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/Nなどの電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録媒体とすることができる。この蒸着型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用Hi8、ディジタル信号記録用ディジタルビデオカセットレコーダー(DVC)、データ8ミリ用等の磁気テープ媒体として極めて有用である。
【0054】
【実施例】
以下、実施例を挙げ、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。なお、実施例および比較例における「部」および「%」は、特に断らない限り重量部および重量%である。また、本発明における物性値および特性は、それぞれ下記の方法で測定し、かつ定義されるものである。
【0055】
(1)粒子の平均粒径(I)(平均粒径:60nm以上)
株式会社島津製作所製「CP−50型セントリヒューグル パーティクル サイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)」を用いて測定した。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径(nm)とする(「粒度測定技術」日刊工業新聞社発行、1975年、頁242〜247)。
【0056】
(2)粒子の平均粒径(II)(平均粒径:60nm未満)
小突起を形成する平均粒径60nm未満の粒子は、光散乱法を用いて測定した。すなわち、ニコンプインストゥルメント株式会社(Nicomp Instruments Inc.)製の商品名「NICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZER」により求められる全粒子の50%の点にある粒子の「等価球直径」をもって、平均粒径(nm)とする。
【0057】
(3)体積形状係数(f)
走査型電子顕微鏡により、用いたサイズに応じた倍率にて各粒子の写真を撮影し、画像解析処理装置ルーゼックス500(日本レギュレーター社製)を用い、投影面最大径(D)(μm)および粒子の体積(V)(μm3)を算出し、下式(II)により計算する。
【0058】
【数4】
f=V/D3 ・・・・・(II)
【0059】
(4)層A、Bの厚み、およびフィルム全体の厚み
フィルム全体の厚みはマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いた。層A、Bの層厚については、薄い層の層厚みを下記に述べる方法にて測定し、厚い層の層厚みは、全厚みより皮膜層および薄い層の層厚を引き算して求める。すなわち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、被覆層を除いた表層から深さ5,000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する金属元素(M+)と熱可塑性樹脂(ポリエステル)の炭化水素(C+)の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5,000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面のために粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になったのち、上昇して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は、(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、薄い層の厚み(μm)とする。
【0060】
測定条件は、以下のとおりである。
【0061】
(a)測定装置
二次イオン質量分析装置(SIMS);パーキン・エルマー株式会社
(PERKIN ELMER INC.)製、「6300」
(b)測定条件
一次イオン種:O2+
一次イオン加速電圧:12KV
一次イオン電流:200nA
ラスター領域:400μm□
分析領域:ゲート30%
測定真空度:6.0×10-9Torr
E−GUNN:0.5KV−3.0A
【0062】
なお、表層から5,000nmの範囲に最も多く存在する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線光電分光法)などで上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚(μm)を求める。
【0063】
(5)皮膜層Cの厚み
フィルムの小片をエポキシ樹脂にて固定成形し、ミクロトームにて約600オングストロームの厚みの超薄切片(フィルムの流れ方向に平行に切断する)を作成した。この試料を透過型電子顕微鏡(株式会社日立製作所製:H−800型)にて観察し、皮膜層Cの境界面を探して皮膜層の厚み(nm)を求める。
【0064】
(6)表面粗さ(WRa)
WYKO株式会社製の非接触三次元粗さ計、商品名「TOPO−3D」を用いて、測定倍率40倍、測定面積242μm×239μm(0.058mm2)の条件にて測定を行い、表面粗さのプロフィル(オリジナルデータ)を得た。上記粗さ計内蔵ソフトによる表面解析により、下式によって定義される中心面平均粗さ(WRa)を得る。
【0065】
【数5】
また、Zjkは、測定方向(242μm)、それと直行する方向(239μm)を、それぞれM分割、N分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における三次元粗さチャート上の高さである。
【0066】
(7)ヤング率
東洋ボールドウィン株式会社製の引っ張り試験機、商品名「テンシロン」を用いて、温度20℃、湿度50%に調節された室内において、長さ300nm、幅12.7mmの試料フィルムを10%/分のひずみ速度で引っ張り、引っ張り応力−ひずみ曲線の初めの直線部分を用いて下式(V)によって計算する。
【0067】
【数6】
E=Δσ/Δε ・・・・・(V)
ここで、Eはヤング率、Δσは直線上の2点間の元の平均断面積による応力差、Δεは同じ2点間のひずみ差である。
【0068】
(8)巻き取り性
スリット時の巻き取り条件を最適化したのち、幅600mm×12,000mのサイズで、30ロールを速度100m/分でスリットし、スリット後のフィルム表面に、ブツ状、突起やシワのないロールを良品として、以下の基準にて巻き取り性を評価する。
◎:良品ロールの本数28本以上
○:良品ロールの本数25〜27本
×:良品ロールの本数24本以下
【0069】
(9)磁気テープの製造および特性(電磁変換特性)評価
ポリエステルフィルムの皮膜層Cの表面に、真空蒸着法により、コバルト100%の強磁性薄膜を0.2μmの厚みになるように2層(各層厚約0.1μm)形成する。形成した強磁性薄膜の表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜、さらに含フッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、さらに磁性層を形成したのと反対側の表面に、公知の方法でバックコート層を設ける。その後、8mm幅にスリットし、市販の8mmビデオカセットにローディングした。次いで、下記の市販の機器を用いてテープの特性(C/N)を測定する。
【0070】
(a)使用機器
8mmビデオテープレコーダー、ソニー株式会社製、商品名「EDV−6000」
株式会社シバソク製ノイズメーター
株式会社シバソク製ドロップアウトカウンター
【0071】
(b)測定方法
C/N測定:記録波長0.5μm(周波数約7.4MHz)の信号を記録し、その再生信号の6.4MHzと7.4MHzの値の比をそのテープのC/Nとし、市販8mmビデオ用蒸着テープ(ソニー製Hi8ME 8mmビデオテープ)のC/Nを0dBとし、下記の基準で判定した。
◎:市販8mmテープ対比+5dB以上
○:市販8mmテープ対比+1dB以上+5dB未満
×:市販8mmテープ対比+1dB未満
▲2▼ドロップアウト:株式会社シバソク製のドロップアウトカウンターを使用して、3μsec/10dB以上のドロップアウトを10分間測定し、1分当たりの個数に換算して、下記の基準で判定した。
◎:ドロップアウト 3ケ/分未満
○:ドロップアウト 3ケ/分以上、6ケ/分未満
×:ドロップアウト 6ケ/分以上
【0072】
(10)析出オリゴマーの転写量
ロール状に巻き取ったサンプルを温度50度、湿度50%の環境で1週間保管後に切り開いて採取したサンプルの層A側の表面を顕微鏡で観察し、表面に付着しているオリゴマーの数をカウントした。
【0073】
800倍の倍率で20視野観察し、単位面積当たりのオリゴマー数をカウントし、以下の基準で判定した。
◎: 300個/mm2以下
○: 300個/mm2を超え600個/mm2以下
×: 600個/mm2を超える
【0074】
[実施例1]
粒子を含有しない固有粘度(35℃オルソクロロフェノール)0.60のポリエチレンテレフタレート(樹脂A1)と、不活性粒子B1として平均粒径300nmのシリコーン粒子およびB2として平均粒径100nmのθ型アルミナを、樹脂中にそれぞれ0.1%および0.2%含有したB層用の固有粘度(35℃オルソクロロフェノール)0.60のポリエチレンテレフタレート(樹脂B1)を、常法により重合して得た。
【0075】
得られた樹脂A1、樹脂B1を、それぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、樹脂A1の片面に樹脂B1を積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0076】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.4倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に下記に示す組成(固形分換算)の皮膜層C用の水性塗液(全固形分濃度1.0%)を、また縦延伸フィルムのB層側に下記に示す組成(固形分換算)の皮膜層D用の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により塗布した。
【0077】
【0078】
続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmで、層Bの厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの皮膜層C側の表面から測定した表面粗さWRaは、1.7nm、このフィルムのヤング率は縦方向5000N/mm2、横方向7000N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0079】
[実施例2〜4]
表1に示したように条件を変更した以外は、実施例1と同様に作成した。
【0080】
[実施例5]
樹脂A1の代わりに粒子を含有しない固有粘度(35℃オルソクロロフェノール)0.60のポリエチレン−2,6−ナフタレート(樹脂A2)と、不活性粒子Bとして平均粒径300nmのシリコーン粒子およびB‘として平均粒径100nmのθ型アルミナを、樹脂中にそれぞれ0.1%および0.2%含有したB層用の固有粘度(35℃オルソクロロフェノール)0.60のポリエチレン−2,6−ナフタレート(樹脂B1)を、常法により重合して得た。
【0081】
得られた樹脂A2、樹脂B2を、それぞれ170℃で6時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、樹脂A1の片面に樹脂B1を積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0082】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度130℃にて3.6倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に実施例1でに示した組成(固形分換算)の皮膜層C用の水性塗液(全固形分濃度1.0%)を、また縦延伸フィルムのB層側に下記に示す組成(固形分換算)の皮膜層D用の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により塗布した。
【0083】
続いてステンターに供給し、140℃にて横方向に5.7倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み4.5μmで、層Bの厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの皮膜層C側の表面から測定した表面粗さWRaは、1.7nm、このフィルムのヤング率は縦方向5500N/mm2、横方向10500N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0084】
[比較例1〜9]
表1に示したように条件を変更した以外は、実施例1と同様に作成した。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表2に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
表1および表2から明らかなように、本発明によるポリエステルフィルムは、片面が非常に平坦で、かつ表面に析出する異物の数も少なく、磁気テープにした際にドロップアウトが少なく、優れた電磁変換特性を示すとともに、巻き取り性が極めて良好で生産性が高い。一方、本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時に満足できない。
【0088】
【発明の効果】
本発明によれば、生産性が良く、製膜後に表面に析出するオリゴマーを主とする異物が少なく、特に金属蒸着薄膜型磁気記録媒体としたときに電磁変換特性に優れ、ドロップアウトが少ないポリエステルフィルムを得ることができる。
Claims (6)
- 皮膜層C、ポリエステル層A、ポリエステル層Bおよび皮膜層Dがこの順で積層された積層ポリエステルフィルムであって、(1)ポリエステル層Aは実質的に不活性粒子を含有しないこと、(2)ポリエステル層Bは、平均粒径150〜550nmの不活性粒子Bを0.05〜0.5重量%含有すること、(3)皮膜層Cは主として数平均分子量1万以上100万以下の水性高分子樹脂からなり、厚みが1〜30nmで、平均粒径10〜40nmの不活性粒子を含有し、かつ表面の粗さ(WRaC)が0.5〜4nmであること、および(4)皮膜層Dは主として数平均分子量1万以上100万以下の水性高分子樹脂からなり、厚みが1〜30nmで、かつ皮膜層Dの厚みに対して平均粒径が1.5〜40倍の不活性粒子Dを、下記一般式を満足する範囲で含有することを同時に具備する積層ポリエステルフィルム。
- 皮膜層Cを構成する水性高分子樹脂が、アクリル樹脂またはアクリル変性ポリエステル樹脂である請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- 皮膜層Dを構成する水性高分子樹脂が、アクリル樹脂またはアクリル変性ポリエステル樹脂である請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- ポリエステル層Aまたはポリエステル層Bを構成するポリエステルが、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートである請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
- 皮膜C上に強磁性金属薄膜層を設けてなる磁気記録媒体のベースフィルムに用いる請求項1〜4に記載の積層ポリエステルフイルム。
- 請求項1〜4に記載の積層ポリエステルフイルムと、その皮膜C上に設けられた強磁性金属薄膜層とからなる磁気記録媒体。
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