JP2004195825A - 積層ポリエステルフィルム、フィルムロールおよび磁気記録媒体 - Google Patents

積層ポリエステルフィルム、フィルムロールおよび磁気記録媒体 Download PDF

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雅彦 小菅
Takeshi Ishida
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Abstract

【課題】平坦性、巻取り性に優れ、金属薄膜型磁気記録媒体としたときの走行性や電磁変換特性に優れる積層ポリエステルフイルムならびにそれを用いたフィルムロールおよび磁気記録媒体の提供。
【解決手段】不活性粒子を実質的に含有していないポリエステル層Aと不活性粒子を含有する表面の中心面平均粗さ(WRaB)が6.5〜15nmのポリエステル層Bとを積層してなり、WRaBはポリエステル層A表面の中心面平均粗さ(WRaA)より3〜30倍大きく、かつロール状態からの剥離帯電位が+70kV〜−10kVの範囲である積層ポリエステルフイルム。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は積層ポリエステルフイルムに関する。更に詳しくは、優れた平坦性と巻取り性を具備し、帯電性が少なくハンドリング性に優れ、磁気記録媒体のベースフィルムとしたとき、得られる磁気記録媒体に、優れた電磁変換特性および走行耐久性ならびに少ないドロップアウトを具備できる積層ポリエステルフイルムおよびそれをベースフィルムに用いた磁気記録媒体に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、磁気記録媒体の高密度化の進歩はめざましく、例えば、強磁性金属薄膜を真空蒸着やスパッタリング等の物理沈着法またはメッキ法により非磁性支持体上に形成せしめた金属薄膜型磁気記録媒体、またメタル粉や酸化鉄粉等の針状磁性粉体を2μm以下に塗布した薄層塗布型磁気記録媒体の開発実用化が進められている。前者の例としては、例えば、Coの蒸着テープ(特開昭54−147010号公報)、Co−Cr合金からなる垂直磁気記録媒体(特開昭52−134706号公報)が知られている。また、後者の例としては、例えば、極薄層塗布型磁気記録媒体による高密度磁気記録(電子通信学会技術報告MR94−78(1995−02))等が知られている。さらにまた、得られる磁気記録媒体の高密度記録化のため、ポリエチレンテレフタレートフィルムよりも厚みを薄くできるポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムを磁気記録媒体のベースフィルムとして用いることも知られている。
【0003】
従来の塗布型磁気記録媒体(磁性粉末を有機高分子バインダーに混入させて非磁性支持体上に塗布してなる磁気記録媒体)は、磁性層の厚みが2μm程度以上と厚いことから、記録波長も長く記録密度の低いものしか得られなかった。そこで、磁性層の厚みを薄くすることで、記録密度を向上させることが検討され、真空蒸着、スパッタリングまたはイオンプレーティング等の薄膜形成手段によって形成される強磁性金属薄膜を磁性層としたもの(磁性層の厚みは0.2μm以下)や、磁性層を塗布する際に非磁性下地層を設けることで従来の塗布型に比べてより薄い磁性層を塗布できるようにしたもの(磁性層の厚みは0.13μm程度)が提案されてきている。
【0004】
ところで、このように磁性層を薄くすることで記録密度を高めた高密度磁気記録媒体では、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面状態が磁性層の表面性に大きな影響を及ぼしやすく、特に金属薄膜型の磁気記録媒体では、非磁性支持体の表面状態がそのまま磁性層(磁気記録層)表面の凹凸として発現し、それが記録・再生信号の雑音の原因となる。従って、非磁性支持体の表面はできるだけ平坦であることが望ましく、触媒に起因する異物が無いことが望ましい。
【0005】
一方、非磁性支持体(ベースフィルム)の製膜、製膜工程での搬送、傷付き、巻取りおよび巻出しといったハンドリングの観点からは、非磁性支持体(ベースフィルム)の表面は出来るだけ粗いことが望ましい。なぜならば、フィルム表面が平坦過ぎると、フィルム―フィルム相互の滑り性が悪化し、ブロッキング現象が発生したり、ロールに巻いたときの形状(ロールフォーメーション)が悪化したりして、製品歩留りの低下や製品の製造コストの上昇をきたすからである。
【0006】
このように、非磁性支持体の表面は、電磁変換特性の観点からは平坦であることが要求され、ハンドリング性やフィルムの製造コストの観点からは粗いことが要求される。
【0007】
さらに金属薄膜型磁気記録媒体は、実際に使用される時の重大な問題点として、金属薄膜面の走行性がある。従来の磁性体粉末を有機高分子バインダー中に混入させてベースフィルムに塗布してなる塗布型磁気記録媒体では、該バインダー中に潤滑剤を分散させて磁性層面の走行性を向上させることが出来た。しかし、金属薄膜型磁気記録媒体では、このような対策をとることができず、走行性、特に高温高湿条件下の走行性が劣るなどの欠点を有している。
【0008】
そこで、優れた品質の高密度磁気記録媒体を製造するには、上記二律背反する性質、すなわち、電磁変換特性等に要求される平坦性を持たせつつフィルムのハンドリングや磁気記録媒体の走行性に必要な凹凸を表面に付与することが必要とされる。
【0009】
そして、この為の具体的方法として、(1)フィルム表面に特定の塗剤を塗布し、不連続皮膜を形成させる方法(特公平3−80410号、特開昭60−180839号、特開昭60−180838号、特開昭60−180837号、特開昭56−16937号、特開昭58−68223号等)、(2)フィルム表面に微細凹凸を有する連続皮膜を塗布形成する方法(特開平5−194772号、特開平5−210833号)、(3)共押出し法等の技術により表裏異面化する方法(特開平2−214657号、特公平7−80282号)、(1)または(2)と(3)との組合せによる方法(特開平3−73409号)等が提案されている。
【0010】
しかしながら、上記の不連続皮膜や微細凹凸を有する連続皮膜を塗布形成する方法では、フィルム―フィルム間の滑り、ブロッキングといった課題は解決できるものの、ベースフィルムの製膜、製膜工程での搬送、傷付き、巻取り、巻出しといったハンドリングの点では不十分であり、製品歩留り、製品コストの観点で、高密度大容量磁気記録媒体用ベースフィルムヘの適用には問題がある。また従来の共押出し技術または共押出し技術と不連続皮膜もしくは連続皮膜を組合せる方法でも、同様の問題を抱えている。さらに金属薄膜型磁気記録媒体の場合は高温高湿条件下の走行性の問題を抱えたままである。
【0011】
これらの課題に対して、特定の表面粗さの範囲、表面のうねり指数、層間空気流動時間を有するポリエステルとポリエーテルイミドからなるポリエステルフイルム(特開2001−319323号公報)や特定の厚み、長さ、表面粗さ、帯電位を有するポリエステルフイルムロール(特開2001−243614号公報)等が提案されているが、特に平坦な表面性の点で不十分であり、更なる改良が求められている。
【0012】
このように、表面欠点が少なく、巻取り性に優れ、金属薄膜型磁気記録媒体としたときの電磁変換特性や走行性に優れる積層ポリエステルフイルムは未だ提供されていないのが現状である。
【0013】
【特許文献1】
特公平3−80410号公報
【特許文献2】
特開昭60−180839号公報
【特許文献3】
特開昭60−180838号公報
【特許文献4】
特開昭60−180837号公報
【特許文献5】
特開昭56−16937号公報
【特許文献6】
特開昭58−68223号公報
【特許文献7】
特開平5−194772号公報
【特許文献8】
特開平5−210833号公報
【特許文献9】
特開平2−214657号公報
【特許文献10】
特公平7−80282号公報
【特許文献11】
特開平3−73409号公報
【特許文献12】
特開2001−319323号公報
【特許文献13】
特開2001−243614号公報
【非特許文献1】
電子通信学会技術報告MR94−78(1995−02)
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる従来技術の欠点を解消し、表面欠点が少なく、巻取り性に優れ、金属薄膜型磁気記録媒体としたときの走行性や電磁変換特性に優れる積層ポリエステルフイルムおよびそれをベースフイルムに用いた磁気記録媒体、特に強磁性金属薄膜型磁気記録媒体を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
かくして本発明の目的は、本発明によれば、不活性粒子を実質的に含有していないポリエステル層Aと、不活性粒子Bを含有する表面の中心面平均粗さ(WRaB)が6.5nm以上15nm以下のポリエステル層Bとを積層してなり、WRaBがポリエステル層Aの表面の中心面平均粗さ(WRaA)より3〜30倍大きく、かつロール状態からの剥離帯電位が+70kV〜−10kVの範囲である積層ポリエステルフイルム、また、該フィルムを円筒状のコアに巻きつけてなるフィルムロールによって達成される。
【0016】
本発明によれば、本発明の好ましい態様として、ポリエステル層A側の表面の中心面平均粗さ(WRaA)が0.5nm以上2.5nm以下であること、同表面の十点平均粗さ(WRzA)が5nm以上30nm以下であること、ポリエステル層B側の表面の十点平均粗さ(WRzB)が70nm以上250nm以下であることのいずれかを具備するの積層ポリエステルフイルムも提供される。
【0017】
また、本発明によれば、本発明の好ましい態様として、ポリエステル層Bに含有される不活性粒子Bが架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カオリン及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であること、ポリエステル層Bが炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスを含有すること、ポリエステル層Aの表面に皮膜層Cが積層されていること、皮膜層Cが平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有すること、ポリエステル層Aまたは層Bのポリエステルがポリエチレンテレフタレートからなること、ポリエステル層Aまたは層Bのポリエステルがポリエチレン−2,6−ナフタレートからなること、不活性粒子Bの平均粒径(dB)は、ポリエステル層Aの厚み(tA)に対して、0.01〜0.5の範囲にあるること、不活性粒子Bは、その平均粒径(dB)が50nm以上1000nm以下で、ポリエステル層Bの重量を基準として、0.01重量%以上1.0重量%以下の範囲でポリエステル層Bに含有されていること、ポリエステル層Aは0.8μm以上の厚みを有し、ポリエステル層Bは含有する不活性粒子の平均粒径(dB)の0.5倍以上の厚みを有し、かつポリエステル層Aと層Bの厚みの合計が2μm以上7μm以下であること、デジタル記録方式の磁気記録媒体のベースフイルムに用いることのいずれかを具備する積層ポリエステルフイルムも提供される。
【0018】
さらに本発明によれば、本発明の積層ポリエステルフイルムと、該積層ポリエステルフイルムの層A側の表面に設けられた磁性層と、該積層ポリエステルフイルムの層B側の表面に設けられたバックコート層とからなることを特徴とする磁気記録媒体、特にその好ましい態様として磁性層が強磁性金属薄膜層である磁気記録媒体も提供される。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bを積層した積層フィルムである。
【0020】
前記ポリエステル層A、層Bを形成するポリエステルA、Bとしては、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステルが挙げられるが、特に芳香族ポリエステルが好ましい。ポリエステルA、Bは同じ種類でも、異なる種類であっても良い。以下、ポリエステル層Aを層A、ポリエステル層Bを層B、ポリエステルAを樹脂A、ポリエステルBを樹脂Bと称することがある。
【0021】
上記芳香族ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリテトラメチレンテレフタレート、ポリ−1,4−シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート(ポリエチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)などを例示することができる。これらのうち、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレートが好ましい。
【0022】
これらポリエステルは、ホモポリエステルであっても、コポリエステルであっても良い。コポリエステルの場合、例えば、ポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートの共重合成分としては、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコールなどの他のジオール成分、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸(ただし、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合)、2,6−ナフタレンジカルボン酸(ただし、ポリエチレンテレフタレートの場合)、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの他のジカルボン酸成分、p−オキシエトキシ安息香酸などのオキシカルボン酸成分などが挙げられる。これら共重合成分の量は、本発明の効果を損なわない限り、20モル%以下、さらには10モル%以下であることが好ましい。
【0023】
さらにトリメリット酸、ピロメリット酸、ペンタエリスリトールなどの3官能以上の多官能化合物を共重合させることも出来る。この場合、ポリマーが実質的に線状である量、例えば2モル%以下で、共重合させるのが良い。
【0024】
ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレート以外の他のポリエステルの場合の共重合成分についても、上記と同様に考えるとよい。
【0025】
更に上記ポリエステルには本発明の効果を損なわない程度であれば、顔料、染料、酸化防止剤、帯電防止剤、光安定剤、遮光剤(例えばカーボンブラック、酸化チタン等)の如き添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0026】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、層Bが同じポリエステルからなるのが好ましいが、異なるポリエステルからなってもよい。例えば、層A、層Bが共にポリエチレンテレフタレート又はポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムが好ましいが、層A(又は層B)がポリエチレンテレフタレート、層B(又は層A)がポリエチレン−2,6−ナフタレートからなる積層フィルムであっても良い。
【0027】
前記ポリエステルAは従来から知られている方法で製造することができる。例えば、ポリエチレンテレフタレートはテレフタル酸とエチレングリコールとをエステル化反応またはジメチルテレフタレートとエチレングリコールとをエステル交換反応せしめ、次いで反応生成物を重縮合せしめる方法で製造することができる。
【0028】
上記の方法(溶融重合)により得られたポリエステルは、必要に応じて固相状態での重合方法(固相重合)により、さらに重合度の高いポリマーとすることができる。
【0029】
上記の重合においては公知の触媒を用いることができ、溶融重合でのエステル交換触媒としてはマンガン、カルシウム、マグネシウム、チタンの酸化物、塩化物、炭酸塩、カルボン酸塩等が好ましく、特に酢酸塩即ち、酢酸マンガン、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸チタンが好ましく挙げられる。
【0030】
また、重縮合触媒としては、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物を挙げることができる。
【0031】
前記アンチモン化合物としては、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、酢酸アンチモン等が好ましく挙げられる。
【0032】
前記チタン化合物としては、有機チタン化合物が好ましく挙げられ、例えば特開平5−298670号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、チタンのアルコラートや有機酸塩、テトラアルキルチタネートと芳香族多価カルボン酸又はその無水物との反応物等を例示でき、好ましい具体例としてチタンテトラブトキシド、チタンイソプロポキシド、蓚酸チタン、酢酸チタン、安息香酸チタン、トリメリット酸チタン、テトラブチルチタネートと無水トリメリット酸との反応物等を挙げることができる。
【0033】
また、前記ゲルマニウム化合物としては、例えば特許2792068号に記載されているものを挙げることができる。更に説明すると、(イ)無定形酸化ゲルマニウム、(ロ)結晶性ゲルマニウム、(ハ)酸化ゲルマニウムをアルカリ金属又はアルカリ土類金属もしくはそれらの化合物の存在下にグリコールに溶解した溶液、および(ニ)酸化ゲルマニウムを水に溶解し、これにグリコールを加え水を留去して調整した酸化ゲルマニウムのグリコール溶液、等を挙げることができる。ただし、ゲルマニウム化合物を重縮合触媒として採用する場合、その量が多いと、ポリエステル合成の際の副生成DEG量が増加して先述のポリエステル層Aの熱安定性を低下させるので、ポリエステルAに含有されるゲルマニウム元素(Ge)としては10ppm以下にするのが好ましい。更に好ましくは5ppm以下である。そして、熱安定性を低下させないためには、ポリエステルAがゲルマニウム元素(Ge)を実質的に含有しないことが特に好ましい。
【0034】
また、前記ポリエステルAには熱安定性を維持するために、従来ポリエステルの製造工程で添加されるリン化合物を含有することが好ましい。このリン化合物は特に限定されないが、正リン酸、亜リン酸、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリ-n-ブチルホスフェートが好ましく挙げられる。
【0035】
また、本発明におけるポリエステル層Aは、実質的に粒子を含有しないことが必要である。実質的に粒子が含まれてしまうと、ドロップアウトや電磁気変換特性の面で問題が生じることがあるため好ましくない。ここでいう実質的に不活性粒子を含有しないとは、積極的に触媒残渣を析出させたり、不活性粒子を添加したりしていないことを意味し、具体的には、粒径0.05μm以上の不活性粒子の含有量が、層Aの重量を基準として、高々0.001重量%であることが好ましい。
【0036】
ポリエステルBは、ポリエステルAで説明した方法で製造でき、また、ポリエステルAで説明したものを好適に用いることができる。
【0037】
本発明におけるポリエステル層Bは、巻取り性を付与するために粒子を含有させる必要がある。不活性粒子は1種類でも2種類以上を併用してもよい。不活性粒子Bの平均粒径(dB)は50〜1,000nm、さらには100〜800nm、よりさらには好ましくは150〜700nm、特に200〜600nmが好ましい。不活性粒子Bの含有量は、ポリエステル層Bの重量を基準として、0.001〜1重量%、さらには0.005〜0.8重量%、よりさらには0.01〜0.6重量%、特に0.01〜0.3重量%が好ましい。
【0038】
不活性粒子Bとしては、例えば、(1)耐熱性ポリマー粒子(例えば、架橋シリコーン樹脂、架橋ポリスチレン、架橋アクリル樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステルなどからなる粒子)、(2)金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素(シリカ)、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化ジルコニウムなど)、(3)金属の炭酸塩(例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウムなど)、(4)金属の硫酸塩(例えば、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなど)、(5)炭素(例えば、カーボンブラック、グラファイト、ダイアモンドなど)、および(6)粘土鉱物(例えば、カオリン、クレー、ベントナイトなど)などのような無機化合物からなる微粒子が挙げられる。この中で特に架橋シリコーン樹脂、架橋アクリル樹脂、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、酸化アルミニウム、二酸化チタン、二酸化ケイ素、カオリン及びクレーからなる群から選ばれる少なくとも1種の粒子であることが好ましい。もちろん、上記の種類以外の粒子をフイルム特性に悪影響を及ぼさない範囲で更に添加することは問題はない。 本発明におけるポリエステル層Bは、さらに、炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなるエステルワックスを0.001〜1重量%含有するのが好ましい。ここで、エステルワックスとは、エステルワックスと部分的にケン化させた部分ケン化エステルワックスとを包含するものである。
【0039】
上記脂肪族モノカルボン酸の炭素数は8個以上、好ましくは8〜34個である。この炭素数が8個未満であると、得られた(部分ケン化)エステルワックスの耐熱性が不充分で、ポリエステルに分散させる際の加熱条件で、該(部分ケン化)エステルワックスが容易に分解されてしまうため、不適切である。
【0040】
炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸としては、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ペヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、ヘントリアコンタン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エルカ酸、リノール酸およびこれらを含む混合物などが挙げられる。
【0041】
上記(部分ケン化)エステルワックスのアルコール成分は、水酸基を2個以上有する多価アルコールである。さらに耐熱性の観点から、水酸基を3個以上有する多価アルコールであることが好ましい。モノアルコールを用いたのでは、生成した(部分ケン化)エステルワックスの耐熱性が不足する。
【0042】
上記水酸基を2個有する多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどが好ましく挙げられる。水酸基を3個以上有する多価アルコールとしては、例えばグリセリン、エリスリット、トレイット、ペンタエリスリット、アラビット、キシリット、タリット、ソルビット、マンニットなどが好ましく挙げられる。
【0043】
上記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールから得られるエステルワックスとしては、多価アルコールの水酸基の数にもよるが、モノエステル、ジエステル、トリエステルなどが挙げられる。これらの中、耐熱性の観点から、モノエステルよりもジエステルが、ジエステルよりもトリエステルが好ましい。好ましいエステルワックスとしては、具体的にはソルビタントリステアレート、ペンタエリスリットトリペヘネート、グリセリントリパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレートなどが挙げられる。
【0044】
上記脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる部分ケン化エステルワックスは、多価アルコールを炭素数8個以上の脂肪族モノカルボン酸で部分エステル化したのち、2価以上の金属水酸化物でケン化することにより得られる。具体的には、例えばモンタン酸ジオールエステルを水酸化カルシウムでケン化した、ワックスE、ワックスOP、ワックスO、ワックスOM、ワックスFL(全て、ヘキスト(株)社製商品名)などが挙げられる。かかる(部分ケン化)エステルワックスは1種単独で使用してもよいし、2種以上を使用してもよい。
【0045】
上記(部分ケン化)エステルワックスの層Bへの添加量は、0.001〜1重量%、好ましくは0.003〜0.5重量%、さらに好ましくは0.005〜0.5重量%、特に好ましくは0.01〜0.3重量%含有する。この(部分ケン化)エステルワックスの添加量が0.001重量%未満であると、フィルム巻取り性の向上が不十分であり、ブロッキング改良効果も得られない。一方、1重量%を超えると、フィルム製造工程で、ロール上に巻き上げたときに接する反対側の面に、ブリードアウトによってワックス成分が多量に転写され、そのため、例えば金属蒸着層とベースフイルムの接着性を妨げるなどの弊害を生じる。
【0046】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A表面の中心面平均粗さ(WRaAと称する。)とポリエステル層B表面の中心面平均粗さ(WRaBと称する。)が、WRaB/WRaAで3〜30の関係をを満足する必要がある。
【0047】
WRaB/WRaAが上限を超えると平坦性が損なわれ、ノイズが増加することで電磁気特性が悪化する。一方、WRaB/WRaAが下限に満たないと巻取り性が大きく低下し、帯電位が増加してしまいロールとして巻き出しした場合、切断が生じ易くなり好ましくない。WRaB/WRaAは、層Aと層Bの層厚比、層Bに含有される粒子の粒径および添加量によって適宜調整でき、更にフイルム製造時の縦延伸温度および/または横延伸温度によって層B側の粒子の突き出しや層A側の表面平坦性をコントロールすることでも調整できる。好ましいWRaB/WRaAは4〜7の範囲である。
【0048】
更にWRaB/WRaAを上述の範囲にするために、WRaAは0.5nm以上2.5nm以下であることが好ましい。該表面粗さが上限を超えると電磁変換特性が低下しやすく、下限未満だと走行性が悪化することがある。さらに好ましいWRaAは0.7nm以上2.2nm以下であり、特に好ましいWRaAは1.3nm以上1.9nm未満である。また、WRaB/WRaAを上述の範囲にするために、ポリエステル層Aの表面の十点平均粗さ(WRzA)は5nm以上30nm以下、更に8nm以上25nm以下、特に18〜22nm以下であることが好ましい。該WRzAが上限を超えると電磁変換特性が低下しやすく、下限未満だと走行性が悪化することがある。
【0049】
一方、WRaB/WRaAを上述の範囲にするために、ポリエステル層B側の表面の中心面平均粗さ(WRaB)は、6.5nm以上15nm以下、さらに7.5nm以上12nm以下、特に7.5〜10nmの範囲にあることが好ましい。該WRaBが上限を超えると、電磁変換特性等が低下しやすく、一方、該表面粗さが下限未満だと、その平坦性の故に、ベースフィルムの製膜工程での搬送、傷付き、巻取り、巻出しといったハンドリング性の悪化をきたし、またロールに巻いたときの形状(ロールフォーメーション)が悪化し、生産性の悪化、製品歩留りの低下、ひいては製品の製造コストの上昇をきたす。また、WRaB/WRaAを上述の範囲にするために、層Bの表面の十点平均粗さ(WRzB)は70nm以上250nm以下、さらに80nm以上200nm以下、特に80〜150nmの範囲にあることが好ましい。該WRzBが上限を超えると、電磁変換特性等が低下しやすく、一方、該表面粗さが下限未満だと、その平坦性の故に、ベースフィルムの製膜工程での搬送、傷付き、巻取り、巻出しといったハンドリング性の悪化をきたし、またロールに巻いたときの形状(ロールフォーメーション)が悪化し、生産性の悪化、製品歩留りの低下、ひいては製品の製造コストの上昇をきたす。
【0050】
また、WRaBとWRaAは、上記の関係を満足しつつ、さらにWRaAと0.25倍したWRaBとを足し合わせた値(WRaA+0.25×WRaB)は2.5〜5の範囲にあることが好ましい。上記(WRaA+0.25×WRaB)が下限未満だと滑り性が低下しやすく、他方(WRaA+0.25×WRaB)が上限を超えると電磁変換特性が低下しやすい。好ましい(WRaA+0.25×WRaB)の範囲は3〜4.5の範囲である。
【0051】
本発明の積層ポリエステルフイルムは、上述したWRaA/WRaBを所望の範囲に調整するために、層Bに含有せしめた不活性粒子の平均粒径と層Aの厚さとが特定の関係を満たすようにするのが好ましい。具体的には、層Bは、不活性粒子を1種類または種類や粒径の異なる不活性粒子を2種以上含有する。そして、不活性粒子が1種類の場合は、その平均粒径を、また、不活性粒子が2種類以上の場合は、粒子のうち最も平均粒径の大きな不活性粒子の平均粒径を、dB(μm)とし、層Aの厚さをtA(μm)としたときに、dB/tAは、0.01以上0.5以下、更に0.02以上0.4以下、特に0.03以上0.1以下であることが好ましい。
【0052】
本発明において、積層ポリエステルフイルムの全厚みは、通常2μm以上20μm以下であり、好ましくは2.5μm以上10μm以下、更に好ましくは3μm以上7μm以下である。平坦面を形成する層Aと走行面を形成する層Bとの層厚構成は、層Aの表面に前記表面欠陥が生じないように、層Bに添加する不活性粒子の平均粒径dBと層Aの厚さとが、前述の関係を満足するように構成されるのが好ましい。また、層Aの厚さは、0.8μm以上であることが好ましく、層Bの厚さは、前記平均粒径dBの1/2倍以上(μm)であることが好ましい。
【0053】
本発明の積層ポリエステルフイルムにおいてロール状態からの剥離帯電位が+70kV〜−10kVの範囲である必要がある。好ましくは+60kV〜−5kVの範囲である。本発明に示すような平坦性と巻取り性を具備するフイルムをロール状態で使用すると従来開示されている技術では、そのフイルム同士の密着性が良すぎるためにロールを巻き出しすると、その剥離帯電位が大きすぎるため、巻き出し中の切断等の問題が生じるため好ましくない。この剥離帯電位を所望の範囲に調整するためには従来技術で開示されているような除電器を使用することは有効であるが、それだけでは充分でなく、例えば層Aと層Bの表面粗さ比(WRaB/WRaA)を必要な範囲にすることで達成することができる。
【0054】
また、本発明における積層ポリエステルフイルムは、磁気テープとした場合の諸特性向上のため、磁性層を設ける側の面、すなわち、ポリエステル層Aのポリエステル層Bと接していない表面に、皮膜層Cを設けることが好ましい。
【0055】
前記皮膜層Cは、平均粒径10〜50nm、体積形状係数0.1〜π/6の不活性粒子Cを0.5〜30重量%含有していることが好ましい。
【0056】
前記皮膜層Cを形成する樹脂としては、例えば水性ポリエステル樹脂、水性アクリル樹脂、水性ポリウレタン樹脂などが好ましく挙げられ、特に水性ポリエステル樹脂が好ましい。
【0057】
この水性ポリエステル樹脂としては、酸成分が、例えばイソフタル酸、フタル酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、コハク酸、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、2−スルホテレフタル酸カリウム、トリメリット酸、トリメシン酸、トリメリット酸モノカリウム塩、p−ヒドロキシ安息香酸などの多価カルボン酸の1種以上よりなり、グリコール成分が、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシリレングリコール、ジメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物などの多価ヒドロキシ化合物の1種以上より主としてなるポリエステル樹脂が好ましく用いられる。また、ポリエステル鎖にアクリル重合体鎖を結合させたグラフトポリマーまたはブロックコポリマー、あるいは2種のポリマーがミクロな粒子内で特定の物理的構成(IPN(相互侵入高分子網目)型、コアシェル型など)を形成したアクリル変性ポリエステル樹脂であってもよい。この水性ポリエステル樹脂としては、水に溶解、乳化、微分散するタイプを自由に用いることができるが、水に乳化、微分散するタイプのものが好ましい。また、これらは親水性を付与するため、分子内に例えばスルホン酸塩基、カルボン酸塩基、ポリエーテル単位などが導入されていてもよい。
【0058】
前記皮膜層Cに含有される不活性粒子Cとしては、特に限定されないが、塗液中で沈降しにくい、比較的低比重のものが好ましい。例えば、架橋シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、架橋ポリエステル、全芳香族ポリエステルなどの有機粒子、二酸化ケイ素(シリカ)、炭酸カルシウムなどからなる粒子が好ましく挙げられる。なかでも、架橋シリコーン樹脂粒子、アクリル樹脂粒子、シリカ粒子、コアシェル型有機粒子(コア:架橋ポリスチレン、シェル:ポリメチルメタクリレートの粒子など)が特に好ましく挙げられる。
【0059】
前記不活性粒子Cの平均粒径(dC)は10〜50nm、好ましくは12〜45nm、さらに好ましくは15〜40nmである。この平均粒径が10nm未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、50nmを超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため好ましくない。
【0060】
前記不活性粒子Cの形状は、後述の体積形状係数(f)が0.1〜π/6、さらに0.2〜π/6、特には0.4〜π/6が好ましい。体積形状係数(f)がπ/6である粒子の形状は、球(真球)である。すなわち、体積形状係数(f)が0.4〜π/6のものは、実質的に球ないしは真球、ラグビーボールのような楕円球を含むものであり、不活性粒子Cとして好ましい。体積形状係数(f)が0.1未満の粒子、例えば薄片状の粒子では、走行耐久性が低下してしまうので好ましくない。
【0061】
前記不活性粒子Cの含有量は、皮膜層C(塗液の固形分)に対し、0.5〜30重量%、好ましくは2〜20重量%、さらに好ましくは3〜10重量%である。この含有量が0.5重量%未満であると、フィルムの滑り性が不良となることがあり、一方、30重量%を超えると、磁気記録媒体の電磁変換特性が不良となることがあるため、好ましくない。
【0062】
本発明における積層ポリエステルフィルムの全厚みは、2μm以上8μm未満、好ましくは2.5〜7.5μmである。ポリエステル層Aとポリエステル層Bの厚み構成は、好ましくはB層の厚みが積層フィルムの全厚みの1/50〜1/2、さらに好ましくは1/30〜1/3、特に好ましくは1/20〜1/4である。皮膜層Cの厚みは、通常1〜100nm、好ましくは2〜50nm、さらに好ましくは3〜10nm、特に好ましくは3〜8nmである。
【0063】
本発明における積層ポリエステルフィルムは、従来から知られている、または当業界に蓄積されている方法に準じて製造することができる。そのうち、ポリエステル層Aとポリエステル層Bとの積層構造は、共押出し法により製造するのが好ましく、皮膜層Cの積層は塗布法により行うのが好ましい。
【0064】
例えば、二軸配向ポリエステルフィルムで説明すると、押出し口金内または口金以前(一般に、前者はマルチマニホールド方式、後者はフィードブロック方式と呼ぶ)で、上記(部分ケン化)エステルワックス及び不活性粒子Bを微分散、含有させたポリエステルBと、必要に応じて不活性粒子Aを含有させたポリエステルAとを、それぞれさらに高精度ろ過したのち、溶融状態にて積層複合し、上記好適な厚み比の積層構造となし、次いで口金より融点(Tm)〜(Tm+70)℃の温度でフィルム状に共押出ししたのち、40〜90℃の冷却ロールで急冷固化し、未延伸積層フィルムを得る。その後、上記未延伸積層フィルムを常法に従い、一軸方向(縦方向または横方向)に(Tg−10)〜(Tg+70)℃の温度(ただし、Tg:ポリエステルのガラス転移温度)で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸し、次いで上記延伸方向とは直角方向(一段目延伸が縦方向の場合には、二段目延伸は横方向となる)に(Tg)〜(Tg+70)℃の温度で2.5〜8.0倍の倍率で、好ましくは3.0〜7.5倍の倍率で延伸する。さらに、必要に応じて、縦方向および/または横方向に再度延伸してもよい。すなわち、2段、3段、4段あるいは多段の延伸を行うとよい。全延伸倍率としては、通常9倍以上、好ましくは10〜35倍、さらに好ましくは12〜30倍である。
【0065】
さらに、前記二軸配向フィルムは(Tg+70)〜(Tm−10)℃の温度、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムの場合、180〜250℃で熱固定結晶化することによって、優れた寸法安定性が付与される。その際、熱固定時間は1〜60秒が好ましい。
【0066】
なお、積層ポリエステルフィルムの製造に際し、ポリエステルA、Bに所望により上記不活性粒子以外の添加剤、例えば安定剤、着色剤、溶融ポリマーの固有抵抗調整剤などを添加含有させることができる。
【0067】
本発明におけるポリエステル層Aへの皮膜層Cの積層は、水性塗液を塗布する方法で行うのが好ましい。
【0068】
塗布は最終延伸処理を施す以前のポリエステル層Aの表面に行い、塗布後にはフィルムを少なくとも一軸方向に延伸するのが好ましい。この延伸の前ないし途中で皮膜は乾燥される。その中で、塗布は、未延伸積層フィルムまたは縦(一軸)延伸積層フィルム、特に縦(一軸)延伸積層フィルムに行うのが好ましい。塗布方法としては特に限定されないが、例えば、ロールコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0069】
前記塗液、特に水性塗液の固形分濃度は、0.2〜8重量%、さらに0.3〜6重量%、特に0.5〜4重量%であることが好ましい。そして、水性塗液には、本発明の効果を妨げない範囲で、他の成分、例えば他の界面活性剤、安定剤、分散剤、紫外線吸収剤、増粘剤などを添加することができる。
【0070】
本発明においては、磁気記録媒体としてのヘッドタッチ、走行耐久性をはじめとする各種性能を向上させ、同時に薄膜化を達成するには、積層フィルムのヤング率を、縦方向および横方向でそれぞれ、通常4500N/mm2以上および6000N/mm2以上、好ましくは4800N/mm2以上および6800N/mm2以上、さらに好ましくは5500N/mm2以上および8000N/mm2以上、特に好ましくは5500N/mm2以上および10,000N/mm2以上とする。
【0071】
また、ポリエステル層A、Bの結晶化度は、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートの場合は30〜50%、ポリエチレン−2,6−ナフタレートの場合は28〜38%であることが望ましい。いずれも下限を下回ると、熱収縮率が大きくなるし、一方上限を上回るとフィルムの耐摩耗性が悪化し、ロールやガイドピン表面と摺動した場合に白粉が生じやすくなる。
【0072】
本発明によれば、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bが積層されてなる積層ポリエステルフイルム、および、ポリエステル層Aのポリエステル層Bと接していない表面に皮膜層Cが積層されている積層ポリエステルフイルムのそれぞれをベースフイルムとする磁気記録媒体が同様に提供される。
【0073】
本発明の積層ポリエステルフイルムから磁気記録媒体を製造する実施態様は、下記のとおりである。
【0074】
本発明の積層ポリエステルフィルムは、ポリエステル層A、好ましくは皮膜層Cの表面、すなわち平坦面側の表面に、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の方法により、鉄、コバルト、クロムまたはこれらを主成分とする合金もしくは酸化物より成る強磁性金属薄膜層を形成し、またその表面に、目的や用途などの必要に応じてダイアモンドライクカーボン(DLC)等の保護層やフッ素カルボン酸系潤滑層を順次設け、更に層B側の表面に公知のバックコート層を設けることにより、特に短波長領域の出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用蒸着型磁気記録媒体とすることができる。この蒸着型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用Hi8、デジタル信号記録用デジタルビデオカセットレコーダ(DVC)、データ8ミリ、マンモス、AIT用テープ媒体として極めて有用である。
【0075】
また、本発明の積層ポリエステルフイルムは、層A側の表面、すなわち平坦面側表面に、鉄または鉄を主成分とする針状微細磁性粉を塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体等のバインダーに均一分散し、磁性層厚みが1μm以下、好ましくは0.1〜1μmとなるように塗布し、更に層B側の表面に公知の方法でバックコート層を設けることにより、特に短波長領域での出力、S/N、C/N等の電磁変換特性に優れ、ドロップアウト、エラーレートの少ない高密度記録用メタル塗布型磁気記録媒体とすることができる。また、必要に応じて層A側の表面に、該メタル粉含有磁性層の下地層として微細な酸化チタン粒子等を含有する非磁性層を磁性層と同様の有機バインダー中に分散、塗設することもできる。このメタル塗布型磁気記録媒体は、アナログ信号記録用8ミリビデオ、Hi8、βカムSP、W−VHS、データ8ミリ、DDSIV、デジタルβカム、D2,D3,SX、LTO、DLT等用テープ媒体として極めて有用である。
【0076】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。なお、本発明における各特性は、以下の方法によって測定または評価される。また、実施例中の「部」および「%」は、特に断らない限り、「重量部」および「重量%」である。
【0077】
(1)粒子の平均粒径1(平均粒径:0.06μm以上)
島津製作所製CP−50型セントリフューグル パーティクルサイズ アナライザー(Centrifugal Particle Size Analyzer)を用いて測定する。得られる遠心沈降曲線を基に算出した各粒径の粒子とその存在量との積算曲線から、50マスパーセントに相当する粒径「等価球直径」を読み取り、この値を上記平均粒径とする(Book「粒度測定技術」日刊工業新聞発行、1975年、頁242〜247参照)。
【0078】
(2)粒子の平均粒径2(平均粒径:0.06μm未満)
小突起を形成する平均粒径0.06μm未満の粒子は、光散乱法を用いて測定する。即ち、Nicomp Instruments Inc.社製のNICOMP MODEL 270 SUBMICRON PARTICLE SIZERにより求められる全粒子の50重量%の点にある粒子の「等価球直径」をもって表示する。
【0079】
(3)層厚
フィルムの全厚はマイクロメーターにてランダムに10点測定し、その平均値を用いる。層厚は、薄い側の層厚を以下に述べる方法にて測定し、また厚い側の層厚は全厚より薄い側の層厚に引き算して求める。即ち、二次イオン質量分析装置(SIMS)を用いて、表層から深さ5000nmの範囲のフィルム中の粒子の内最も高濃度の粒子に起因する元素とポリエステルの炭素元素の濃度比(M+/C+)を粒子濃度とし、表面から深さ5000nmまで厚さ方向の分析を行う。表層では表面という界面の為に粒子濃度は低く、表面から遠ざかるにつれて粒子濃度は高くなる。本発明の場合、粒子濃度は一旦安定値1になった後、上昇或いは減少して安定値2になる場合と、単調に減少する場合とがある。この分布曲線をもとに、前者の場合は(安定値1+安定値2)/2の粒子濃度を与える深さをもって、また後者の場合は粒子濃度が安定値1の1/2になる深さ(この深さは安定値1を与える深さよりも深い)をもって、当該層の層厚とする。
測定条件は以下の通りである。
▲1▼測定装置
二次イオン質量分析装置(SIMS):PERKIN ELMER社製 6300
▲2▼測定条件一次イオン種:O2 +
一次イオン加速電圧:12kV
一次イオン電流:200nA
ラスター領域:400μm□
分析領域:ゲート30%
測定真空度:6.0×10-9Torr
E−GUNN:0.5kV−3.0A
なお、表層から5000nmの範囲に最も多く含有する粒子がシリコーン樹脂以外の有機高分子粒子の場合はSIMSでは測定が難しいので、表面からエッチングしながらFT−IR(フーリエトランスフォーム赤外分光法)、粒子によってはXPS(X線高電子分光法)等で上記同様の濃度分布曲線を測定し、層厚を求める。
【0080】
(4)中心面平均粗さ(WRa)
非接触式三次元表面粗さ計(WYKO社製:NT−2000)を用いて測定倍率25倍、測定面積246.6μm×187.5μm(=0.0462mm2)の条件にて測定し、該粗さ計に内臓された表面解析ソフトにより中心面平均粗さWRaを以下の式より求める。
【0081】
【数1】
Figure 2004195825
【0082】
ここで、上記式中のZjkは測定方法(246.6μm)、それと直行する方法(187.5μm)をそれぞれm分割、n分割したときの各方向のj番目、k番目の位置における2次元粗さチャート上の高さである。
【0083】
(5)十点平均粗さ(WRz)
上記(4)と同じ測定器を用い、同じ条件で測定して得られたデーターから、同粗さ計内臓のソフトによる表面解析により、ピーク(Hp)の高い方から5点と谷(Hv)の低い方から5点をとった平均値を求めWRzとする。
【0084】
【数2】
Figure 2004195825
【0085】
(6)ヤング率
フィルムを試料巾10mm、長さ15cmに切り、チャック間100mm、引張速度10mm/分、チャート速度500mm/分の条件下で万能引張試験装置(東洋ボールドウィン製、商品名:テンシロン)にて引っ張る。得られた荷重―伸び曲線の立ち上がり部の接線よりヤング率を計算する。
【0086】
(7)層A中の不活性粒子
試料フィルム小片を走査型電子顕微鏡用試料台に固定し、日本電子(株)製スパッターリング装置(JFC−1100型イオンエッチング装置)を用いてフィルム表面に下記条件にてイオンエッチング処理を施す。条件は、ベルジャー内に試料を設置し、約10-3Torrの真空状態まで真空度を上げ、電圧0.25kV、電流12.5mAにて約10分間イオンエッチングを実施する。更に同装置にて、フィルム表面に金スパッターを施し、走査型電子顕微鏡にて5,000〜10,000倍で観察し、日本レギュレーター(株)製ルーゼックス500にて各不活性粒粒子の等価球径分布を求める。得られら等価球形分布から、粒径が100nmを超える不活性粒子を抜き出し、その重量積算50%の点から、粒径100nmを超える不活性粒子の平均粒径を算出する。
【0087】
(8)ロールの剥離帯電位評価
フイルムを22℃、44%RHの雰囲気下で幅700mm、長手方向10000mの巻長にスリットして、外径6インチの円筒状コアに巻きつけてフィルムロールを作成する。このフィルムロールを100m/分で繰出した時の剥離帯電を春日電機製集中電位測定器にて測定し、全長の剥離帯電位の範囲を評価する。
【0088】
(9)磁気テープの製造及び特性評価
積層ポリエチレンテレフタレートフィルムの第一の層側の表面に、真空蒸着によりコバルト−酸素薄膜を110nmの厚みで形成し、次にコバルト−酸素薄膜層上に、スパッタリング法によりダイヤモンド状カーボンを10nmの厚みで形成させ、更に含フッ素カルボン酸系潤滑剤を順次設ける。続いて、コバルト−酸素薄膜を形成したのとは反対側の表面に、カーボンブラック、ポリウレタン、シリコーンからなるバックコート層を厚みが500nmとなるように設け、スリッターにより幅8mm及び6.35mmにスリットし、市販のリールに巻き取り、磁気テープを作成した。市販のHi8方式8mmビデオテープレコーダーを用いてビデオS/N比を、市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーを用いてドロップアウト(DO)個数を求める。
【0089】
DO個数の測定は、作成した6.35mmテープを市販のカメラ一体型デジタルビデオテープレコーダーで録画後、1分間の再生をして画面に現れたブロック状のモザイクの個数をカウントすることによって行う。
【0090】
C/Nは、市販のHi8用VTR(SONY株式会社製、EV−BS3000)を用いて、7MHz±1MHzのC/Nの測定を行った。このC/Nを市販のHi8用ビデオテープ(SONY株式会社製、蒸着型テープ E6−120HME4)と比較して、+3dB以上のフィルムを優、+1〜+3dBのフィルムを良、+1dB未満を不良として、評価した。
【0091】
高温恒湿下の走行耐久性は40℃、80%RHで記録再生を700回繰り返した後のC/Nを測定し、初期値からのずれで判定する。
○:初期値に対して+0.0dB以上
△:初期値に対して−1.0dB以上〜+0.0dB未満
×:初期値に対して−1.0dB未満
【0092】
[実施例1]
ジメチルテレフタレート100部とエチレングリコール70部の混合物に、エステル交換触媒として酢酸マンガン・4水塩0.025部を添加し、内温を150℃から徐々に上げながらエステル交換反応を行った。エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、エチレングリコール2.5部中で無水トリメリット酸0.8部とテトラブチルチタネート0.65部を反応せしめた液(チタン含有率は11重量%)0.014部を添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.60のポリエステルA用のポリエチレンテレフタレート(樹脂A1)を得た。
【0093】
さらに、上記と同様の方法で、エステル交換反応を行い、エステル交換反応が95%となった時点で、安定剤として亜リン酸を0.01部添加し、充分撹拌した後、三酸化アンチモン0.03部添加した。系内に混入した水を充分留出させた後、滑剤(不活性粒子B)として、平均粒径300nmのシリコーン粒子および平均粒径100nmのθ型アルミナを、樹脂中にそれぞれ0.05%および0.2%添加して充分撹拌した後、次いで反応生成物を重合反応器に移し、高温真空下(最終内温295℃)にて重縮合を行い、固有粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを得た。この際、本ポリマー中のアンチモン残存量は250ppmであった。
【0094】
得られたポリエチレンテレフタレート99.7%に、炭素数が8個以上の脂肪族モノカルボン酸および多価アルコールからなる(部分ケン化)エステルワックスとしてソルビタントリステアレート(融点55℃)の粉末0.15%をまぶし、ベント付き二軸ルーダーにて練り込み、固有粘度0.69のポリエステル層B用のポリエチレンテレフタレート(樹脂B1)を得た。
【0095】
得られた樹脂A1、樹脂B1を、それぞれ170℃で3時間乾燥後、2台の押し出し機に供給し、溶融温度280〜300℃にて溶融し、平均目開き11μmの鋼線フィルターで高精度ろ過したのち、マルチマニホールド型共押出しダイを用いて、ポリエステル層Aの片面にポリエステル層Bを積層させ、急冷して厚さ89μmの未延伸積層ポリエステルフィルムを得た。
【0096】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度100℃にて3.3倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に下記に示す組成(固形分換算)の水性塗液(全固形分濃度1.0%)をキスコート法により塗布した。
<塗液の固形分組成>
バインダー:アクリル変性ポリエステル(高松油脂株式会社製、IN−170−6)60%
不活性粒子C:アクリルフィラー(平均粒径30nm、体積形状係数0.40、日本触媒株式会社製、エポスター) 7%
界面活性剤X:(日本油脂株式会社製、ノニオンNS−208.5) 3%
界面活性剤Y:(日本油脂株式会社製、ノニオンNS−240) 30%
C層厚み(乾燥後):8nm
続いてステンターに供給し、110℃にて横方向に4.2倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、220℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み6.4μmで、ポリエステル層Bの厚み1.0μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムのポリエステル層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの皮膜層C側の表面から測定した表面粗さWRaは、1.7nm、このフィルムのヤング率は縦方向5000N/mm2、横方向7000N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性(表面粗さ比、剥離帯電位など)、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0097】
[実施例2,3]
ポリエステル層Bに含有させる不活性粒子Bの種類、平均粒径、添加量を表1に示すとおり変更した(樹脂B2)以外は、実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムの特性、およびそのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0098】
[実施例4]
ポリエステル層Aおよびポリエステル層Bにおけるジメチルテレフタレートの代わりに2,6−ナフタレンジカルボン酸ジメチルを同モル量使用した以外は、実施例1と同様にしてポリエステル層A、B用のポリエチレン−2,6−ナフタレート(PEN)(樹脂A3、B3)を得た。固有粘度は樹脂A3は0.60、樹脂B3は0.67であった。
【0099】
この樹脂A3、B4を、それぞれ170℃で6時間乾燥後、実施例1と同様にして、各層厚みを調整し、厚さ89μmの未延伸積層熱可塑性樹脂フィルムを得た。
【0100】
得られた未延伸フィルムを予熱し、さらに低速・高速のロール間でフィルム温度135℃にて3.6倍に延伸し、急冷して縦延伸フィルムを得た。次いで縦延伸フィルムのA層側に、不活性粒子Cをコアシェルフィラー(コア;架橋ポリスチレン、シェル;ポリメチルメタクリレート)(平均粒径;30nm、体積形状係数0.45)ジェイエスアール株式会社製、「SX 8721」に変更した以外は実施例1と同じ組成の水性塗液(全固形分濃度1.0%)を実施例1と同様に塗布した。
【0101】
続いてステンターに供給し、155℃にて横方向に5.7倍に延伸した。得られた二軸延伸フィルムを、200℃の熱風で4秒間熱固定し、全厚み4.4μm、熱可塑性樹脂層Bの厚み0.6μmの積層二軸配向ポリエステルフィルムを得た。このフィルムの熱可塑性樹脂層A、Bの厚みについては、2台の押し出し機の吐出量により調整した。このフィルムの塗膜層C側の表面から測定した表面粗さWRaは、1.2nm、このフィルムのヤング率は縦方向5500N/mm2、横方向10,500N/mm2であった。この積層フィルムのその他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0102】
[比較例1〜3]
ポリエステル層Aを形成する原料樹脂Aの中に表1に示した通り、フィラーを含有させる以外、かつポリエステル層Bを形成する原料樹脂を使用する以外は実施例1と同様にして積層ポリエステルフィルムを得た。得られたフィルムは、フイルム表面の平坦性が損なわれてしまい、磁気テープにした際、十分な電磁変換特性を得ることができなかった。その他の特性、およびこのフィルムを用いた強磁性薄膜蒸着型磁気テープの特性を表1に示す。
【0103】
【表1】
Figure 2004195825
【0104】
表1から明らかなように、本発明による積層ポリエステルフィルムは、片面が非常に平坦で、巻取り性が極めて良好であり、優れた電磁変換特性を示し、一方、本発明の要件を満たさないものは、これらの特性を同時に満足できない。
【0105】
【発明の効果】
本発明の積層ポリエステルフイルムは、平坦性に優れながら、さらに巻取り性も優れ、高密度磁気記録媒体のベースフィルムとして用いると、得られる磁気記録媒体に、ドロップアウトが少なく、電磁変換特性に優れ、しかも走行耐久性に優れるという特性を同時に具備させることができ、その工業的価値は極めて高い。

Claims (12)

  1. 不活性粒子を実質的に含有していないポリエステル層Aと、不活性粒子Bを含有する表面の中心面平均粗さ(WRaB)が6.5nm以上15nm以下のポリエステル層Bとを積層してなり、WRaBはポリエステル層Aの表面の中心面平均粗さ(WRaA)よりも3〜30倍大きく、かつロール状態からの剥離帯電位が+70kV〜−10kVの範囲であることを特徴とする積層ポリエステルフイルム。
  2. ポリエステル層Aの表面の十点平均粗さ(WRzA)が5nm以上30nm以下である請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
  3. ポリエステル層Bの表面の十点平均粗さ(WRzB)が70nm以上250nm以下であることを特徴とする請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
  4. ポリエステル層Aの表面に皮膜層Cが積層されている請求項1に記載の積層ポリエステルフイルム。
  5. ポリエステル層Aまたは層Bを構成するポリエステルがポリエチレンテレフタレートまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートである請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
  6. 不活性粒子Bの平均粒径(dB)は、ポリエステル層Aの厚み(tA)に対して、0.01〜0.5の範囲にある請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
  7. 不活性粒子Bは、その平均粒径(dB)が0.1μm以上1μm以下で、ポリエステル層Bの重量を基準として、0.01重量%以上1.0重量%以下の範囲でポリエステル層Bに含有されている請求項1記載の積層ポリエステルフイルム。
  8. ポリエステル層Aは0.8μm以上の厚みを有し、ポリエステル層BはdBの0.5倍以上の厚みを有し、かつポリエステル層Aと層Bの厚みの合計が2μm以上7μm以下である請求項1記載の積層ポリエステルフィルム。
  9. デジタル記録方式の磁気記録媒体のベースフイルムに用いる請求項1〜8のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルム。
  10. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルムを円筒状のコアに巻きつけてなることを特徴とするフィルムロール。
  11. 請求項1〜8のいずれかに記載の積層ポリエステルフイルムと、該積層ポリエステルフイルムのポリエステル層A側の表面に設けられた磁性層と、該積層ポリエステルフイルムの層B側の表面に設けられたバックコート層とからなる磁気記録媒体。
  12. 磁性層が強磁性金属薄膜層である請求項11記載の磁気記録媒体。
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