JP3882106B2 - 退色抑制剤 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は退色抑制剤に関する。より詳細には、本発明はフェニルプロパノイド類を有効成分として含有することにより、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素等の天然色素の退色を効果的に抑制できる退色抑制剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、飲食物の着色には広く合成色素並びに天然色素が用いられており、特に合成色素の安全性が問題視されている近年では、ことさら天然色素が多く用いられるようになっている。
【0003】
しかしながら、これらの天然色素は比較的不安定であり、例えば光、酸素、熱等の影響を受けて経時的に退色並びに変色する傾向がある。このため天然色素によって着色された飲食物、化粧品、医薬品並びに医薬部外品等の各種製品は、退色や変色によってその商品価値が著しく低下するという問題を含んでいる。特に近年のペットボトル入り飲料等といった透明容器入り飲料の普及並びに商品の低着色化指向に伴って、光や熱による色素の退色現象を有意に抑制ないし防止する方法の開発が早期に求められているのが現状である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、天然色素の退色現象を有意に抑制できる退色抑制剤を提供することを目的とするものである。特に本発明はアントシアニン系色素、フラボノイド系色素およびカロチノイド系色素といった天然色素の退色抑制に高い効果のある退色抑制剤を提供することを目的とする。
【0005】
なお、本発明において退色とは色素の着色退行並びに変色を含む広い概念で用いられる。
【0006】
【課題を解決するための手段】
密蒙花(ミツモウカ、Buddleja officinalis Maxim.)は中国等に生育するフジウツギ科の植物である。かかる植物は、その黄紫色の花が有する各種効能(目の充血、目やにおよび角膜混濁の改善等)から古くより民間薬として利用されているが、最近、中国ではこの花を原料としてクロシンを主成分とする黄色色素が開発され、食品、医薬品および化粧品等に使用されるようになっている。本発明者らは、かかる密蒙花黄色素について研究を重ねていたところ、当該密蒙花黄色素はクロシンを色素成分とする点で日本で広く黄色素として使用されているクチナシ黄色素やサフラン黄色素と共通しているものの、これらの黄色素には含まれていないacteosideやpoliumosideなどのフェニルプロパノイド類を含有しており、当該密蒙花黄色素に特有のフェニルプロパノイド類が天然色素、特にアントシアニン系色素、フラボノイド系色素およびカロチノイド系色素といった天然色素の退色抑制に極めて効果的であることを見出した。
本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。
【0007】
すなわち、本発明はフェニルプロパノイド類を有効成分として含有する色素の退色抑制剤である。
【0008】
本発明の退色抑制剤の態様には、下記のものを含めることができる。
(1)フェニルプロパノイド類がacteoside、poliumoside、calceolarioside、campneoside、echinacoside、forsythosideおよびangorosideよりなる群から選択される少なくとも1種のフェニルプロパノイド配糖体である、色素の退色抑制剤。
(2)対象とする色素が天然色素である色素の退色抑制剤。
(3)対象とする色素がアントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素である色素の退色抑制剤。
【0009】
また本発明は、上記退色抑制剤を含有する退色が抑制された着色飲食物である。当該態様には、下記に掲げるものを含めることができる。
(a)含まれる色素が天然色素である着色飲食物。
(b)色素がアントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素である着色飲食物。
(c)色素を0.05〜1の吸光度(極大吸収波長)を示す割合で含む着色飲食物。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の退色抑制剤は、有効成分としてフェニルプロパノイド類を含むことを特徴とするものである。
【0011】
本発明においてフェニルプロパノイド類とは、基本的に構造内にフェニル基とプロパノイド基を有するものを意味するものであり、フェニルプロパノイド骨格を有する化合物をアグリコンとする配糖体も包含される。具体的には下記式(1):
【0012】
【化1】
【0013】
(式中、Rは、同一又は異なって、H、OH又はOCH3を意味する。但し、Rのうち少なくとも1つはOHである。)
に示される構造を一部に有する化合物である。
【0014】
より具体的には、acteoside、poliumoside、calceolarioside、campneoside、echinacoside、forsythosideおよびangoroside等の、グルコシドを構成糖とするフェニルプロパノイド配糖体を例示することができる。好ましくはacteosideである。尚、これらの各成分は単独で使用されてもよいが、2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0015】
尚、ここでacteosideは、式(2)
【0016】
【化2】
【0017】
に示す構造を有するフェニルプロパノイド・グルコシド(3,4-dihydroxy-β-phenethyl-O-α-L-rhamnopyranosyl-(1→3)-4-O-caffeoyl-β-D-glucopyranoside)であり、別名vervascosideとも称される。
【0018】
またpoliumosideは、式(3)
【0019】
【化3】
【0020】
に示す構造を有するフェニルプロパノイド・グルコシド(3,4-dihydroxy-β-phenethyl-O-α-L-rhamnopyranosyl-(1→3)-4-O-caffeoyl-α-L-rhamnopytanosyl-(1→6)-β-D-glucopyranoside)である。
【0021】
本発明において使用されるフェニルプロパノイド類は、市販品として容易に入手できる化学合成品であってもよいし、また天然物から採取調製したものであってもよい。原料の調製に用いられる天然物としては密蒙花(ふじうつぎ科フジウツギ属)、ライラック(もくせい科ハシドイ属)、オウバイ(もくせい科オウバイ属)、ダンギク(くまつづら科カリガネソウ属)、ランタナ(くまつづら科ランタナ属)、オドリコソウ(しそ科オドリコソウ属)、チョロギ(しそ科イヌゴマ属)、キツネノテブクロ(ごまのはぐさ科ジギタリス属)、ウスユキクチナシグサ(ごまのはぐさ科クチナシグサ属)、シシンラン(いわたばこ科シシンラン属)等を挙げることができる。特に、密蒙花の花部には本発明の有効成分として用いられるフェニルプロパノイド類が多く含まれており、本発明において好適な原料として用いることができる。本発明で用いるフェニルプロパノイド類は必ずしも純品である必要はないが、対象とする色素の色調や香気香味に悪影響を与えない程度にまで精製されていることが好ましい。
【0022】
フェニルプロパノイド類を上記植物を原料として調製する方法としては、例えば上記植物の全草若しくはフェニルプロパノイド類を多く含む部分を水;メタノール、エタノール、ブタノール若しくはプロパノールなどの低級アルコール;またはこれらの混合物などといった適当な溶媒で抽出処理し、得られた抽出物をゲル濾過若しくは吸着カラムクロマトグラフィー等を用いて単離する方法を挙げることができる(例えば、J.Nat.Prod. 1998, 61, pp.1410-1412等)。具体的には、植物として密蒙花を使用する場合、この花蕾乾燥物を含水アルコール(例えば70%メタノール水)で抽出した後、得られた抽出物を例えばODSカラムを用いたHPLCにて分離し、330nmに極大吸収を持つ成分を分取する方法を挙げることができる。なお、化合物の確認は、分離取得した化合物のMS、IR、NMRのスペクトルデータをそれぞれの文献収載値と比較することによって行うことができる。
【0023】
本発明の退色抑制剤は、上述のようにして得られるフェニルプロパノイド類のみからなるものであってもよいし、またかかるフェニルプロパノイド類に加えて適当な希釈剤、担体又は添加剤を含有してなる組成物の形態であってもよい。このような希釈剤、担体及び添加剤としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、アラビアガム等の固体状物、並びに水、水飴、エタノール、プロピレングリコール、又はグリセリン等の液状物を挙げることができる。
【0024】
また本発明の退色抑制剤には、上記フェニルプロパノイド類が有する退色抑制作用を補助若しくは増強するように働く成分を配合することができ、かかる成分としては酸化防止剤を好適に挙げることができる。
【0025】
ここで酸化防止剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができ、例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びその塩等のアスコルビン酸類;エリソルビン酸及びその塩等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウムやピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類等;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;アスコルビン酸パルミチン酸エステルなどのアスコルビン酸エステル類;アオイ花抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、へゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン抽出物(小豆前全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、ルチン分解物(ケルセチン)、酵素処理イソクエルシトリン、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物等を挙げることができる。
【0026】
好ましくは、ヤマモモ抽出物、ルチン抽出物、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。
【0027】
退色抑制剤に配合する酸化防止剤の割合は、上記フェニルプロパノイド類の退色抑制効果を増強する割合であれば特に制限されず、対象色素、使用するフェニルプロパノイドや酸化防止剤の種類に応じて適宜選択調整することができる。通常、退色抑制剤に含まれるフェニルプロパノイド類100重量部に対して、酸化防止剤を通常0.5〜100重量部、好ましくは1〜20重量部、より好ましくは5〜10重量部の割合で配合することができる。
【0028】
本発明の退色抑制剤は、任意の剤形に調製することができ、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状、丸剤状、液状、乳液状(懸濁液状)、ペースト状、その他適宜の剤形に調製することができる。
【0029】
本発明の退色抑制剤が対象とする色素には、合成色素及び天然色素の別を問わず、広範囲の色素が含まれる。
【0030】
合成色素には、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号等のタール色素;三二酸化鉄や二酸化チタンなどの無機顔料;ノルビキシNa・K、銅クロロフィル、銅クロロフィリンNa及び鉄クロロフィリンNa等の天然色素誘導体;並びにβ−カロチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル及びリボフラビン5’−リン酸エステルNa等の合成天然色素などの合成着色料が含まれる。
【0031】
天然色素には、アナトー色素、クチナシ黄色素、デュナリエラカロチン、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素及びパプリカ色素等のカロチノイド系色素;アカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素;赤キャベツ色素、シソ色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素及びボイセンベリー色素等のアントシアニン系色素;カカオ色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;クロロフィリン、クロロフィル及びスピルリナ色素等のポルフィリン系色素;ウコン色素等のジケトン系色素;紅麹色素等のアザフィロン系色素;ビートレッド等のベタシアニン系色素;その他、紅麹黄色素、カラメル、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、金、銀、アルミニウム系色素が含まれる。
【0032】
本発明の退色抑制剤は好ましくは天然色素を対象とすることができる。中でも本発明の退色抑制剤は、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素およびカロチノイド系色素に対する退色抑制効果に優れており、これらの天然色素を好適に対象の色素とすることができる。
【0033】
従って、本発明の退色抑制剤は、各種の色素、好ましくは上に掲げる各種の色素を含有するものに対して広く適用することができる。かかるものとしては、例えば飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。
【0034】
化粧品としてはスキンローション、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品等を、医薬品としては各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を、医薬部外品としては歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を、また飼料としてはキャットフードやドッグッフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
【0035】
好ましくは飲食物である。飲食物としては着色、即ち色を有するものあれば特に制限されず、例えばアイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、シャーベット、氷菓等の冷菓類;乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、粉末飲料等の飲料類;カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、朝鮮漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び蒲鉾、麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。
【0036】
なお、飲食物における着色は、飲食物に人為的に色素を添加して着色したものだけでなく、果汁等のように、飲食物の材料に本来含まれる色素に由来して着色しているものまでもが広く包含される。
【0037】
かかる観点から、本発明は、フェニルプロパノイド類を有効成分とする退色抑制剤を含有することによって退色が有意に抑制されてなる、着色された飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品及び飼料を提供するものである。
【0038】
かかる飲食物は、製造の任意の工程で本発明の退色抑制剤を配合することを除けば常法に従って製造することができる。退色抑制剤の配合工程及びその順番等に特に制限はないが、退色抑制剤を配合した後、その存在下で色素、好ましくは色素及び香料を配合し、次いで加熱処理等の各種の処理を施すことが望ましい。
【0039】
例えば、冷菓類の場合は、まず主原料としての牛乳、クリーム、練乳、粉乳、糖類、果実、餡等に本発明の退色抑制剤、酸類(クエン酸、リン酸、乳酸、フマル酸等及びその塩類等)、乳化剤(レシチン、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル等)及び安定剤(アラビアガム、ジェランガム、カラギナン、水溶性ヘミセルロース、トレハロース等)を加え、次いで香料を加えて冷菓ミックス液を調製し、このミックス液に色素を添加混合し、殺菌、冷却後フリージングして容器に充填し、冷却、凍結して最終製品を調製する方法を挙げることができる。また飲料類の場合は、主原料としての糖類、果汁、酸類等に本発明の退色抑制剤、安定剤等を加え、次いでこの飲料に香料及び必要に応じて色素を添加混合した後、殺菌、冷却して容器に充填する方法を挙げることができる。また、ガム類の場合は、加熱し柔らかくしたガムベースに甘味料、退色抑制剤及びクエン酸等を加え、次いでその中に香料及び色素を加え練合し、次に圧延ローラーで適当な厚さにして、室温まで冷却後、切断して最終製品を調製する方法を挙げることができる。また、ゼリー類の場合は、主原料の甘味料、退色抑制剤、クエン酸及び凝固剤(ペクチン、寒天、ゼラチン、カラギナンなど)を適当な割合で混合し、その中に香料並びに色素を加え、加熱溶解した後、容器に充填し、冷却して最終製品たるゼリーを調製する方法を挙げることができる。キャンディー類の場合は、例えば甘味料等の主原料に水を加え加熱し溶解した後放冷し、退色抑制剤を添加し、次いで香料及び色素を加え、成型し、室温まで冷却して最終キャンディーを調製する方法を挙げることができる。漬物類の場合は、漬物とする野菜、海藻、キノコまたは果物等の主原料に、食塩や甘味料等の各種調味料、保存料(安息香酸、ソルビン酸、白子蛋白、酢酸ナトリウム、プロタミン等)び退色抑制剤等の副原料を加えて漬物を調製し、この漬物に香料及び必要に応じて色素を添加混合した後、容器に充填し、殺菌、冷却し最終製品を調製する方法を挙げることができる。タレ類やドレッシング類の場合は、植物油、醤油、果汁、甘味料、果汁、醸造酢、食塩等を主原料とし、これに退色抑制剤、安定剤、乳化剤等を加え、このドレッシング液に香料及び必要により色素を添加混合した後、殺菌、冷却後容器に充填して最終製品を調製する方法を挙げることができる。
【0040】
飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種対象物に対する本発明の退色抑制剤の添加量は、それらに含まれる色素の退色現象が抑制できる量であれば特に制限されない。本発明の退色抑制剤の有効成分であるフェニルプロパノイド類の種類、また対象物に含まれる色素の種類及びその含量、対象物の種類及びそれに含まれる他の成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。
【0041】
退色抑制剤の配合割合として、例えば色素をその吸光度(極大吸収波長)が0.05〜1である範囲で含む上記飲食物などの各種対象物に対して、フェニルプロパノイド類の量に換算して少なくとも0.001重量%の割合を挙げることができる。言い換えれば、吸光度が0.05〜1となるように対象物に添加された色素の量に対して、フェニルプロパノイド類を少なくとも0.001重量%の割合で配合することによって本発明の効果を得ることができる。
【0042】
後述する実施例に示すように、フェニルプロパノイド類の添加配合量に依存して色素の退色抑制効果が向上することから、該効果からいえば、本発明の退色抑制剤は配合量の上限を何ら制限されるものではない。このため、通常、味並びに粘度等の物性といった他の観点からその配合量(上限)を設定することができる。例えば本発明で用いるフェニルプロパノイド類が、対象物の味に影響を与えない範囲で退色抑制効果を発揮する量としては、約0.001〜0.1重量%の範囲を例示することができる。
【0043】
【実施例】
以下、本発明の内容を以下の実験例、実施例及び比較例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、下記に記載する処方の単位は特に言及しない限りgを、また%は重量%を意味するものとする。また各処方中、*を付記した製品は三栄源エフ・エフ・アイ(株)製の製品を意味する。
実施例1 フェニルプロパノイド・グルコシドの調製
acteosideおよびpoliumoside単離調製
密蒙花黄色素(昆明密蒙花科技有限責任公司製、中国;PATENT No.ZL91100102.6参照)1gをODSカラム(500×25mm i.d.,YMC製)を備えたカラムクロマトグラフィーに付して(移動相:水とアセトニトリルの混合溶媒)、アセトニトリルのグラジェント(10%→40%)によって分離した。アセトニトリル濃度約20%の画分からacteosideおよびpoliumoside含む画分を得た。さらに下記装置を備えた分取HPLC(移動相:0.5%トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル水溶液、流速 15 ml/min)に付して精製し、acteosideおよびpoliumosideを単離した。
・サンプル注入部(Waters, 170)
・ポンプ(Waters, 400F)
・システムコレクター(Waters, 4000)
・吸光検出器(Waters, 490E)、吸光度330nm使用
・カラム:L-column ODSカラム(250×20mm,i.d., ;5μm、Chemicals Evalution And Research Institute製)。
【0044】
実験例1 耐光性試験
上記実施例1で調製したacteosideの光に対する退色抑制効果をみるために、下記の処方に従って、アントシアニン系色素である赤キャベツ色素(0.08%(吸光度0.5)、サンレッドRCF*)、フラボノイド系色素であるベニバナ黄色素(0.03%(吸光度0.5)、サンエロー2SF*)、およびカロテノイド系色素である密蒙花黄色素(0.08%(吸光度0.5))でそれぞれ着色した飲料を調製し、耐光性試験を行った。尚、下記処方において退色抑制剤として上記acteosideを用いて、これを0.05mM、0.1mMおよび0.2mMの割合で含む飲料を調製した。また比較実験用処方としてカフェイン酸、クロロゲン酸、および酵素処理イソクエルシトリン(サンメリンAO-1007*)を用いて同様に飲料を調製した。さらに対照処方として下記処方において退色抑制剤を配合しない系も同様に作成して、耐光性試験に供した。
【0045】
<処方>
果糖ブドウ糖液糖(Brix10度) 13.3 g
クエン酸・1水和物 0.2 g
色素 0.03又は0.08 g
退色抑制剤(acteoside(最終濃度)) 0.05〜0.2 mM
クエン酸3ナトリウム 調整量(pH3)
水 残 量
合 計 100.0 g
これらの処方からなる飲料を室温(20℃)で、フェードメーター(600W/m2:スガ試験機製:キセノンロングライフフェードメーターXWL75R)を用いて1.5〜6時間照射して、光の影響による色素の退色現象(耐光性)を観察した。なお、耐光性は試験前後の極大吸収波長における吸光度を測定し、試験前の吸光度を100%とした場合の残存率(%)で評価した。
【0046】
赤キャベツ色素に対する結果を図1に示す。この結果から、acteosideはその配合量に依存して、カフェイン酸、クロロゲン酸および酵素処理イソクエルシトリンと同様に、アントシアニン系色素である赤キャベツ色素に対して優れた退色抑制効果(耐光性)を示すことがわかる。
【0047】
また、ベニバナ黄色素に対する結果を図2に示す。この結果から、acteosideはその配合量に依存して、カフェイン酸、クロロゲン酸および酵素処理イソクエルシトリンと同様にフラボノイド系色素(ベニバナ黄色素)に著しく優れた退色抑制効果(耐光性)を示すことがわかる。
【0048】
また、密蒙花黄色素に対する結果を図3に示す。この結果から、acteosideはその配合量に依存して、カフェイン酸やクロロゲン酸よりも、カロテノイド系色素(密蒙花黄色素)に対して優れた退色抑制効果(耐光性)を示すことがわかる。
【0049】
実施例2 ピーチソーダ
下記の処方を混合濾過した後、ビンに充填し90℃、30分間殺菌してピーチソーダ飲料を作成した。
【0050】
実施例3 ストロベリーゼリー
下記の処方に従って、各成分を混合して80℃で加熱溶解後、カップに充填し、5℃で1時間冷却しストロベリーゼリーを作った。
【0051】
実施例4 ノンオイルドレッシング(梅ジソタイプ)
下記の処方を混合濾過した後、ビンに充填し90℃、30分間殺菌してノンオイルドレッシングを調製した。
【0052】
実施例5 果汁入り飲料
下記の処方を混合濾過した後、ビンに充填し90℃、30分間殺菌して果汁入り飲料を調整した。
【0053】
実施例6 かき氷シロップ(レモン)
下記の処方を混合濾過した後、ビンに充填し90℃、30分間殺菌してかき氷シロップを調整した。
【0054】
【発明の効果】
フェニルプロパノイド類、特にacteosideやpoliumoside等のフェニルプロパノイド配糖体は、食品、化粧品及び医薬品を含む広い分野で退色抑制剤として有用である。これらのフェニルプロパノイド類は特にアントシアニン系色素、フラボノイド系色素、カロテノイド系色素を含む飲食物に対して、不都合な香味の変調を与えることなく優れた耐光性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】赤キャベツ色素に対する本発明の退色抑制剤(acteoside)の耐光性効果(退色抑制効果)を示す図である(実験例1)。
【図2】ベニバナ黄色素に対する本発明の退色抑制剤(acteoside)の耐光性効果(退色抑制効果)を示す図である(実験例1)。
【図3】密蒙花黄色素に対する本発明の退色抑制剤(acteoside)の耐光性効果(退色抑制効果)を示す図である(実験例1)。
Claims (4)
- acteoside 、 poliumoside 、 calceolarioside 、 campneoside 、 echinacoside 、 forsythoside および angoroside よりなる群から選択される少なくとも1種のフェニルプロパノイド配糖体を有効成分として含有する、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素の退色抑制剤。
- さらに酸化防止剤を配合したことを特徴とする請求項1に記載の退色抑制剤。
- 請求項1又は2に記載の退色抑制剤を配合して、アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素の退色が抑制された着色飲食物。
- アントシアニン系色素、フラボノイド系色素またはカロチノイド系色素を0.05〜1の吸光度(極大吸収波長)を示す割合で含有する請求項3に記載の着色飲食物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2000371266A JP3882106B2 (ja) | 2000-12-06 | 2000-12-06 | 退色抑制剤 |
Applications Claiming Priority (1)
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