JP2006327945A - 新規なフラボノイド配糖体 - Google Patents

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Abstract

【課題】水及び含水有機溶媒系に対する溶解性及び安定性に優れ、抗酸化作用及び退色抑制作用を有する新規フラボノイド配糖体を提供する。
【解決手段】下記化学式(1):
Figure 2006327945

で示されるミリシトリン配糖化物。
【選択図】なし

Description

本発明は、新規のフラボノイド配糖体に関する。より詳細には、本発明は、水易溶性であり、抗酸化剤や退色抑制剤として有用な新規フラボノイド配糖体に関する。本発明のフラボノイド配糖体は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料の調製に使用することができる。
従来より、酸化は、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品または飼料などの各種の製品について、樹脂化、異臭発生、着色、変色、毒性物質の生成または栄養価の低下を引き起こし、品質の劣化を招く原因であることが知られており、それを防止するために、抗酸化剤として様々なフラボノイドが使用され、また提案されている。
例えばかかるフラボノイドとしては、ルチン、ケルセチン、モリン、及びミリセチンが知られている。具体的には、パプリカ色素の退色防止にルチン、ケルセチン、またはモリンが有効であること(特許文献1及び2参照)、及びアントシアニン系色素の安定化にルチン、ケルセチン、モリン、ミリセチンが有効であることが知られている(特許文献3参照)。
しかしながら、かかるルチン、ケルセチン、モリン、及びミリセチンは、常温の水に難溶であるため、食品等に対して使用しにくいという問題がある。このため、この水難溶性のフラボノイドを易溶化する方法として、ルチンにナリンギナーゼ処理させて得たケルセチン3−O−モノグルコサイドに澱粉質とシクロデキストリン・グルカノトランスフェラーゼを作用させることによって水易溶性のフラボノイド配糖体を調製する方法(特許文献4参照);水難溶性フラボノイドをケルセチン−3−O−配糖体と共存させることによって当該水難溶性フラボノイドを溶解する方法(特許文献5参照);水難溶性フラボノイドをケルセチン−3−O−配糖体と共存させた水溶液を乾燥させることによって、水難溶性フラボノイドを改質する方法(特許文献6参照);並びに、ヤマモモ科植物抽出物にガラクトースを転移させることによって、ヤマモモ科植物抽出物を水易溶化する方法(特許文献7参照)が知られている。
特公昭52−31947号公報 特公昭55−46147号公報 特公昭56−41666号公報 特開平01−213293号公報 特開平03−77880号公報 特開平07−10898号公報 特開平09−95672号公報
本発明は、従来知られていなかった新規のフラボノイド配糖体を提供することを目的とする。特に本発明は、水易溶性であり、水中での安定性に優れたフラボノイド配糖体を提供することを目的とする。さらに、本発明はかかるフラボノイド配糖体の用途を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題の解決を目指して、日夜検討を重ねていたところ、ヤマモモ科植物から調製されるミリシトリンを含む水難溶性抽出物を、グルコシル基転移源の存在下で、グルコシル基転移活性を有する酵素で処理して得られたフラボノイド配糖体が、優れた抗酸化作用を有し、しかも水に対する溶解性と安定性に優れていることを見いだした。
そして当該フラボノイド配糖体は、フラボノイドの一種であるミリセチンの水酸基に糖類が結合したミリシトリン(ミリセチン3−O−ラムノシド)のラムノース残基の3位に、グルコース残基(グルコシル基)が1乃至3つ、α結合したミリシトリン配糖化物であり、従来報告されていない新規の化合物であることを確認した。
本発明は、かかる知見に基づいて完成したものであり、下記の態様を含むものである:
項1.下記の化学式(1):
Figure 2006327945
〔式中、R1はα-D-グルコシル基、α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基、またはα-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基を意味する。〕
で示される、
(1)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
(2)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、または
(3)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
のいずれか一つのミリシトリン配糖化物。
項2.下記の化学式(1):
Figure 2006327945
〔式中、R1はα-D-グルコシル基、α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基、またはα-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基を意味する。〕
で示される、
(1)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
(2)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、及び
(3)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド
よりなる群から選択される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を含有する組成物。
項3.ミリシトリンまたはミリシトリンを含有する組成物を、グルコシル基転移源の存在下、グルコシル基転移酵素で処理する工程を有する、項2記載の組成物の調製方法。
項3-1.グルコシル基転移源としてデキストリン、及びグルコシル基転移酵素としてシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを用いる、項3に記載する調製方法。
項4.(a)ミリシトリンまたはミリシトリンを含有する組成物を、グルコシル基転移源の存在下、グルコシル基転移酵素で処理する工程、及び
(b)上記工程で得られる組成物から、
(1)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
(2)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、及び
(3)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド
よりなる群から選択される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を単離する工程、
を有する、項1記載のミリシトリン配糖化物の調製方法。
項4-1.グルコシル基転移源としてデキストリン、及びグルコシル基転移酵素としてシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを用いる、項4に記載する調製方法。
項5.項1に記載される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を含有する抗酸化剤。
項6.項1に記載される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を含有する退色抑制剤。
項7.項1に記載される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を抗酸化剤または退色抑制剤として含有する着色製品。
項8.ミリシトリンを含有するヤマモモ科植物抽出物を、グルコシル基転移源の存在下、グルコシル基転移酵素で処理して得られる、ミリシトリン配糖化物を含む組成物。
項9.ミリシトリン配糖化物が項1に記載されるものである、項8記載の組成物。
以下、本発明について詳細を説明する。
(1)ミリシトリン配糖化物、およびその調製方法
本発明は、下式(1)で示すミリシトリン配糖化物を提供する。当該ミリシトリン配糖化物は、前述するように新規のフラボノイド配糖体である。
Figure 2006327945
式中、R1はα-D-グルコシル基、α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基、またはα-D-グルコシル-(1→4)- α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基を意味する。
すなわち、本発明のミリシトリン配糖化物は、下式(2)で示されるミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α−L−ラムノピラノシド(myricetin 3-O-α-D-glucopyranosyl-(1→3)-α-L-rhamnopyranoside)〔上記式(1)において、R1がα-D-グルコシル基である場合〕(以下、「ミリシトリン配糖化物G1」、または単に「G1」ともいう。):
Figure 2006327945
下式(3)で示されるミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド(myricetin 3-O-α-D-glucopyranosyl-(1→4)-α-D-glucopyranosyl-(1→3)-α-L-rhamnopyranoside)〔上記式(1)において、R1がα-D-グルコシル-α-D-グルコシル基である場合〕(以下、「ミリシトリン配糖化物G2」または単に「G2」ともいう。):
Figure 2006327945
下式(4)で示されるミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4) -α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド(myricetin 3-O-α-D-glucopyranosyl-(1→4)-α-D-glucopyranosyl-(1→4) -α-D-glucopyranosyl-(1→3)-α-L-rhamnopyranoside)〔上記式(1)において、R1がα-D-グルコシル-α-D-グルコシル-α-D-グルコシル基である場合〕(以下、「ミリシトリン配糖化物G3」、または単に「G3」ともいう。)を挙げることができる。
Figure 2006327945
本発明では、これらの化合物を包括して、ミリシトリン配糖化物と称する。
本発明のミリシトリン配糖化物は、ミリシトリンが豊富に含まれている植物、例えば、ヤマモモ科ヤマモモ属のヤマモモ(Myrica rubra SIEB. et ZUCC.)またはヤチヤナギ(Myrica gale L.)の抽出物を原料として取得することができる。植物の抽出部位は、全植物体であってもよいが、ミリシトリンが含まれている部位であればよい。例えば樹皮、根茎、枝または葉等を挙げることができる。なお、抽出処理に先立って、樹皮、根茎、枝または葉などを粉砕機等で粉砕処理してよいし、また乾燥処理を行ってもよい。
ここで抽出方法は、ミリシトリンが抽出できる方法であればよく、特に制限されない。例えば、本出願人が既に特許出願した方法(特開平5−156249号公報、特開平9−87619号公報)を用いることができる。具体的には、対象とする植物体(全植物体、またはその一部)を、任意の抽出有機溶媒に浸漬して抽出し、次いで得られた抽出物からタンニン、縮合型タンニン、カテキン類、糖質その他等の水溶性物質を除去して、ミリシトリンを含有する水難溶性画分を取得する方法や、また対象とする植物体から上記の水溶性物質をあらかじめ除去した後、任意の抽出有機溶媒を用いてミリシトリンを抽出する方法を挙げることができる。なお、水溶性物質をあらかじめ除去する方法としては、抽出有機溶媒による抽出に先だって、樹皮、根茎、枝または葉などの粉砕物を水に浸漬する等の方法によって、水溶性物質を抽出して除去する方法を挙げることができる。
上記抽出に用いる有機溶媒としては、炭素数1から5までの脂肪族アルコール系有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、グリセリンなど)、炭素数3から5までのカルボニル化合物(例えば、アセトン、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−ペンタノンなど)、水溶性酸アミド(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなど)、水溶性アミン(例えば、ピリジン、ブチルアミンなど)、またはジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。これらは単独でまたは適宜組合せて使用することができる。また必要に応じて上記有機溶媒に適宜水を併用してもよい。
次いで得られた抽出物から、溶媒を蒸発または他の一般的な手段により除去する。更に、この操作により得られた濃縮液または濃縮乾固物に、水を添加し混合して、水溶性物質(例えばカテキン、タンニン、縮合型タンニンや糖質など)を水相側に移行させて除去し、水難溶性の固形物を得る。これは、必要に応じて、さらに水または熱水で洗浄して精製してもよいし、クロマトグラフィーまたは液液向流抽出法による精製、あるいは有機溶媒または含水有機溶媒からの再結晶法などにより精製してもよい。
このような操作により得られる水難溶性のヤマモモ科植物抽出物は、有効成分としてフラボノイド配糖体であるミリシトリン(ミリセチン3−O−ラムノシド)を含有しており、強い酸化防止効果を示すが、水及び含水有機溶媒に難溶性であり、取扱いにくい物質である。
次いで、上記で得られた水難溶性のヤマモモ科植物抽出物を、グルコシル基転移源の存在下で、グルコシル基転移活性を有する酵素(グルコシル基転移酵素)で処理して、上記抽出物に含まれる水難溶性のミリシトリンにグルコシル基を転移させる。
ここでグルコシル基転移源は、グルコシル基転移活性を有する酵素の基質となり、1分子以上のグルコシル基(好ましくは、α-D-グルコシル基、α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基、またはα-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基)が、ミリシトリンのラムノース残基に転移してα(1→3)結合するものであればよく、例えば、6〜10個のα-D-グルコシル基がα-1,4-グリコシド結合によって環化してなるシクロデキストリン、アミロース、シクロアミロース、デキストリン、マルトオリゴ糖、液化澱粉、糊化澱粉等を挙げることができ、この中から1種または2種以上を採用することができる。好ましくはデキストリンである。
グルコシル基転移源の使用量は、反応混合物全体に対して通常1〜80重量%の割合を挙げることができる。好ましくは5〜60重量%、より好ましくは10〜50重量%である。
また上記で使用するグルコシル基転移酵素は、ミリシトリンのラムノース残基にα-1,3結合で、1分子以上のグルコシル基(好ましくは、α-D-グルコシル基、α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基、またはα-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基)を付加することのできる酵素であれば、特に制限されない。
例えば、グルコシル基転移源としてシクロデキストリンを用いる場合、好適に使用できるグルコシル基転移酵素として、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ(EC.2.4.1.19)を例示することができる。その起源は特に問わず、例えば、バチルス・サーキュランス (Bacillus circulans)、バチルス・マセランス (B. macerans)などのバチルス属;ラクトバチルス・ブルガリカス (Lactobacillus bulgaricus)、ラクトバチルス・ラクチス (L. lactis)、ラクトバチルス・プランタルム (L. plantarum) 等のラクトバチルス属;エシェリヒア・コリ (Escherichia coli) 等のエシェリヒア属;アスペルギルス・オリーゼ (Aspergillus oryzae)、アスペルギルス・ニガー (A. niger)等のアスペルギルス属;クリベロミセス・ラクチス (Kluyveromyces lactis)、クリベロミセス・フラギリス (K. fragilis) 等のクリベロミセス属;ストレプトコッカス・サーモフィルス (Streptococcus thermophilus)等のストレプトコッカス属;ヘリクス・ポマチア (Helix pomatia) 等のヘリクス属;ペニシリウム・クリソゲナム (Penicillium crysogenum)、ペニシリウム・ムルチカラー (P.multicolor)等のペニシリウム属;サッカロミセス・フラギリス(Saccharomycesfragilis)等のサッカロミセス属;その他の微生物を起源とするもの;ホラ貝(Chalonia lampas)等の貝類を起源とするもの;ジャック・ビーン(和名:タチナタマメ、Canavalia ensiformis)などの植物を起源とするもの;あるいは牛の肝臓や哺乳動物の小腸を起源とするものなどが挙げることができ、いずれもこの発明に自由に使用することができる。
これらの酵素は、必ずしも精製して使う必要はなく、通常は粗酵素で目的を達成しうる。また、市販の酵素製剤(例えば、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼについては、天野エンザイム製のコンチザイム(商品名)、ノボザイムズ製のトルザイム(商品名)が例示できる)も使用することができる。
また、水難溶性のヤマモモ科植物抽出物とグルコシル基転移源を添加した培養液に、グルコシル基転移酵素を添加する代りに、グルコシル基転移酵素生産菌を植菌し、発酵法によりグルコシル基転移反応を行うこともできる。さらに、グルコシル基転移酵素あるいはグルコシル基転移酵素生産菌を常法に従って固定化したものを使用して反応を進めてもよい。これらのグルコシル基転移酵素は、単一種の微生物、植物又は動物を起源とするものを用いても、起源の異なる2種以上の酵素を併用することができるし、また、グルコシル基転移酵素生産菌を2種以上植菌して発酵法によりグルコシル基転移反応を行ってもよい。
グルコシル基転移酵素の使用量は、特に限定されるものではない。この酵素の使用量は、起源および酵素の剤形によって大きく変動する。例えば、同一酵素を用いる場合でも、酵素溶液として使用するか、あるいは固定化して用いるかによってもその使用量は大きく異なる。そのため、一義的には決められないので一例を挙げて示すと、前述のシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼを使用するときは通常10〜300単位/g基質程度の量が有利である。なお、、シクロデキストリングルカノトランスフェラーゼの1酵素単位は、1分間当たりにβ-シクロデキストリン1mgを生成する量に相当する。
また、グルコシル基転移酵素の活性化剤として、グルコシル基転移酵素と共に、必要に応じてMn2+、Mg2+、Ca2+等の金属イオンを用いてもよい。その添加量は通常微量でよく、反応混合系に対して1〜500ppmの範囲から選択される。この転移反応における反応系のpHは、使用する酵素の至適pH付近が望ましく、通常pH約2〜9の範囲から選択するのがよい。また、この転移反応の温度は、使用する酵素の至適温度付近が望ましく、通常20〜70℃の範囲から選択するのがよい。
斯くして得られるミリシトリン配糖化物は、ミリシトリンのラムノース残基に、1〜複数分子のグルコシル基が脱水縮合により付加したミリシトリン配糖化物の混合物であり、次いでカラムクロマトグラフィーを始めとする各種のクロマトグラフィーやその他の精製操作によって、本発明の3つの新規フラボノイド配糖体G1、G2、及びG3を単離取得することができる。
上記方法で調製される新規のフラボノイド配糖体であるミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3は、上記化学式(2)、(3)及び(4)に示すように、それぞれ構成するフラボノール配糖体(ミリシトリン)の糖鎖構造部(ラムノース残基)にグルコシル基が1分子、2分子及び3分子転移し結合してなるものであり、ミリシトリンに比して、水及び含水有機溶媒に対する溶解度及び溶解安定性が格段に改善されており、またミリシトリンと同様に酸化防止剤や退色抑制剤としての効果を発揮する。
なお、本発明のミリシトリン配糖化物は、上記ミリシトリン配糖化物G1、G2、またはG3の単品であってもよいし、またこれらの混合物、すなわちミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3を少なくとも1つ含有する組成物(混合物)の形態を有するものであってもよい。後者の場合、個々のミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3の配合割合は、特に制限されず、目的に応じて任意に定めることができる。かかるミリシトリン配糖化物の組成物(混合物)としては、例えば、ミリシトリン(またはミリシトリンを含む植物抽出物など)をグルコシル基転移源の存在下で、グルコシル基転移酵素で処理して得られる水溶性組成物を挙げることができる。
斯くして得られる水溶性組成物中に含まれるミリシトリン配糖化物(G1、G2、及びG3)の組成は、グルコシル基転移酵素による処理条件(処理時間など)によって異なり制限されるものではない。例えば、グルコシル基転移源の存在下、グルコシル基転移酵素で24時間処理した場合、水溶性組成物中のミリシトリン配糖化物(G1、G2、及びG3)の組成としては、G1:12重量%前後、G2:5重量%前後、及びG3:3重量%前後を挙げることができる。かかるミリシトリン配糖化物の各G1、G2及びG3の配合割合は反応時間が長くなるほど増加する傾向にある。例えば、約70時間処理すると、ミリシトリン配糖化物のG1、G2及びG3の配合割合はG1:36重量%前後、G2:15重量%前後、G3:9重量%前後にまで増加する。すなわち、水溶性組成物中に含まれるミリシトリン配糖化物(G1、G2、及びG3)の好適な配合割合としては、G1:12〜36%前後、G2:5〜15%前後、G3:3〜9%前後を例示することができる。
(2)抗酸化剤
後述する実験例で示すように、上記本発明のミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3、並びにこれらの混合物はいずれも抗酸化作用を有している。このため、抗酸化剤(酸化防止剤)として、好適に使用することができる。よって、本発明は、上記本発明のミリシトリン配糖化物の少なくとも1つを有効成分とする抗酸化剤(酸化防止剤)を提供するものである。
抗酸化剤は、対象とする製品の形状に応じて、任意の形態を有することができ、上記ミリシトリン配糖化物を粉末として使用したものであっても、水や適当な溶媒、例えばエタノール、プロピレングリコール、グリセリンなどに溶解して溶液として、或いは乳化液の形態で使用することもできる。この際、必要に応じて添加剤や賦形剤を配合することもできる。また、本発明の抗酸化剤は、上記ミリシトリン配糖化物の少なくとも1つに加えて、他の抗酸化剤など、例えばトコフェロール、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸ナトリウム、BHA、BHTなどを含んでいてもよい。
本発明の抗酸化剤によれば、例えば食品、医薬品、医薬部外品、化粧品等の各種製品の原料として配合されることによって、製品の酸化を防止して品質劣化を抑制することができる。本発明の抗酸化剤は、酸化防止を必要とする製品であれば、その形状・形態・属性等を問わず使用することができる。
好適に使用される食品としては、バター、マーガリン、生クリーム、ポイップクリーム、コーヒーフレッシュ、ショートニング、ドレッシングなどの油脂加工食品、油脂を高含量含む食品、例えば、ドーナツ、油揚げ、油揚げ菓子、チョコレート、即席ラーメンなどを挙げることができる。さらに、おかき、センベイ、おこし、まんじゅう、飴などの和菓子、クッキー、ビスケット、クラッカー、パイ、スポンジケーキ、カステラ、チーズケーキ、ドーナツ、ワッフル、プリン、バタークリーム、カスタードクリーム、シュークリーム、チョコレート、チョコレート菓子、キャラメル、キャンデー、グミキャンデー、ソフトキャンデー、チューインガム、ゼリー、ホットケーキ、パンなどの各種洋菓子、ポテトチップスなどのスナック菓子、アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、アイスキャンデー、シャーベット、フローズンヨーグルトなどの冷菓、乳酸菌飲料、乳飲料、果汁飲料、無果汁飲料、果肉飲料、野菜飲料、機能性飲料、透明炭酸飲料、果汁入り炭酸飲料、果実着色炭酸飲料、スポーツドリンク、ビール風味飲料などの清涼飲料、チューハイなどのアルコール飲料、緑茶、紅茶、ミルクティー、ミルクコーヒー、インスタントコーヒー、ココア、缶入りコーヒードリンク、業務用コーヒーなどの嗜好飲料、コーンクリームスープなどのスープ類、発酵乳、加工乳、チーズなどの乳製品、豆腐、豆乳などの大豆加工食品、マーマレード、ジャム、果実のシロップ漬、フラワーペースト、ピーナツペースト、フルーツペーストなどのペースト類、漬物類、ハム、ソーセージ、ベーコン、ドライソーセージ、ビーフジャーキーなどの畜肉製品類、魚肉ハム、魚肉ソーセージ、蒲鉾、チクワ、ハンペン、てんぷら(揚げかまぼこ、さつま揚げ等)などの魚介類練り製品、魚類、イカ、タコ、貝類などの各種干物類およびそれらの珍味類、鰹、鯖、鰺などの各種節、煮干、ウニ、イカの塩辛、魚のみりん干、鮭などの燻製品、のり、小魚、貝類、するめ、山菜、茸、昆布などで作られる佃煮類、即席カレー、レトルトカレー、缶詰カレーなどのカレー類、みそ、粉末みそ、醤油、粉末醤油、もろみ、魚醤、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、固形ブイヨン、蠣油、焼肉のタレ、カレールー、シチューの素、スープの素、ダシの素などの各種調味料類を挙げることができる。さらに、油脂及びそれらの誘導体を含有する各種レンジ食品及び冷凍食品などの各種飲食物、嗜好品にも使用することができる。
医薬品、医薬部外品及び化粧料としては、各種疾患の予防剤もしくは治療剤、ドリンク剤、トローチ、肝油ドロップ、うがい薬、口中清涼剤、口中香錠剤、歯磨き、日焼け止めスキンローション、紫外線防止クリーム、口紅など、また飼料としては、各種キャットフード、ドッグフード、観賞魚の餌、養殖魚の餌などを挙げることができる。
本発明の抗酸化剤の対象製品に対する配合量としては、対象製品の種類、形態、期待される効果等に応じて適宜設定することができる。例えば食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料などに使用する場合の配合量としては、製品100重量%中に、有効成分である上記ミリシトリン配糖化物が総量で0.0002〜5重量%、好ましくは0.002〜2重量%となる範囲をあげることができる。
又、本発明の抗酸化剤は、優れた抗酸化作用を有しているので、抗酸化作用に基づく各種の効果を効能とする食品(例えば、特定保健用食品、栄養補助食品、機能性食品等)、内用の医薬品又は医薬部外品等の各種製品の主原料としても有用である。このように本発明の抗酸化剤を主原料として使用した製品は、摂取されると生体内で、例えば、細胞の老化、炎症、発癌等の原因となる過酸化物から生体を防御する効果等の抗酸化作用に基づく有用な効果を奏することができる。ここで、上記食品としては、例えば飲料、菓子類、パン、麺類、シリアル、サプリメント等を挙げることができる。又、上記内用の医薬品又は医薬部外品としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤、トローチ剤、液剤、エキス剤等を挙げることができる。このように、抗酸化作用に基づく効果を効能とする製品の主原料として本発明の抗酸化剤を使用する場合、当該抗酸化剤の使用量としては、製品の剤型、形態、期待される効果等によって異なり、一律に規定することはできないが、例えば該製品100重量%中に上記抗酸化物質が総量で0.005〜100重量%、好ましくは0.5〜80重量%となる範囲を挙げることができる。又、当該製品の1日当たりの摂取量については制限されず、当該製品の形態、期待される効果等に応じて適当量、適当回数、摂取することができる。
(3)退色抑制剤
後述する実験例で示すように、上記本発明のミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3、並びにこれらの混合物はいずれも退色抑制作用を有している。このため、退色抑制剤として、好適に使用することができる。よって、本発明は、上記本発明のミリシトリン配糖化物の少なくとも1つを有効成分とする退色抑制剤を提供するものである。
本発明の退色抑制剤は、上記ミリシトリン配糖化物のいずれか少なくとも1つを含有するものであればよく、またこれらだけからなるものであってよいが、ミリシトリン配糖化物以外の成分として、希釈剤、担体またはその他の添加剤を含有していてもよい。
希釈剤または担体としては、本発明の効果を妨げないものであれば特に制限されず、例えばシュクロース、グルコース、デキストリン、水飴、液糖などの糖類;エタノール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;ソルビトール、マンニトール等の糖アルコール;アラビアガム等の多糖類;または水を挙げることができる。また添加剤としては、抗酸化剤、キレート剤等の助剤、香料、香辛料抽出物、防腐剤などを挙げることができる。
使用上の利便等から、これらの希釈剤、担体または添加剤を用いて退色抑制剤を調製する場合は、本発明のミリシトリン配糖化物が、退色抑制剤100重量%中に固形換算で0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜50重量%の割合で含まれるように調製することが望ましい。
なおここで添加剤として用いられる抗酸化剤としては、食品添加物として用いられるものを広く例示することができ、例えば、制限はされないが、L−アスコルビン酸及びその塩等のアスコルビン酸類;エリソルビン酸及びその塩等のエリソルビン酸類;亜硫酸ナトリウムやピロ亜硫酸カリウムなどの亜硫酸塩類;α−トコフェロールやミックストコフェロール等のトコフェロール類;ジブチルヒドロキシトルエン(BHT)やブチルヒドロキシアニソール(BHA)等;アスコルビン酸パルミチン酸エステルなどのアスコルビン酸エステル類;アオイ花抽出物、カンゾウ油性抽出物、食用カンナ抽出物、チョウジ抽出物、リンゴ抽出物、精油除去ウイキョウ抽出物、セイヨウワサビ抽出物、セージ抽出物、セリ抽出物、チャ抽出物、ドクダミ抽出物、生コーヒー豆抽出物、ヒマワリ種子抽出物、ピメンタ抽出物、ブドウ種子抽出物、ブルーベリー葉抽出物、へゴ・イチョウ抽出物、ペパー抽出物、ホウセンカ抽出物、ヤマモモ抽出物、ユーカリ葉抽出物、リンドウ根抽出物、ルチン(抽出物)(小豆全草,エンジュ,ソバ全草抽出物)、ローズマリー抽出物等の各種植物の抽出物;その他、酵素処理ルチン、ルチン分解物(ケルセチン)、酵素処理イソクエルシトリン、ルチン酵素分解物(IQC)、菜種油抽出物、コメヌカ油抽出物、コメヌカ酵素分解物、没食子酸及びそのエステル類等を挙げることができる。好ましくは、ヤマモモ抽出物、ルチン(抽出物)、生コーヒー豆抽出物、ローズマリー抽出物等の植物抽出物;酵素処理ルチン、ルチン酵素分解物(IQC)、酵素処理イソクエルシトリン等を挙げることができる。
本発明の退色抑制剤は、その形態を特に制限するものではなく、例えば粉末状、顆粒状、錠剤状などの固体状;液状、乳液状等の溶液状;またはペースト状等の半固体状の任意の形態に調製することができる。
本発明の退色抑制剤が対象とする色素には、合成色素及び天然色素の別を問わず、広範囲の色素が含まれる。
合成色素には、赤色2号、赤色3号、赤色40号、赤色102号、赤色104号、赤色105号、赤色106号、黄色4号、黄色5号、青色1号、青色2号、緑色3号等のタール色素;三酸化二鉄や二酸化チタンなどの無機顔料;ノルビキシンNa・K、銅クロロフィル、銅クロロフィリンNa及び鉄クロロフィリンNa等の天然色素誘導体;並びにβ−カロチン、リボフラビン、リボフラビン酪酸エステル、リボフラビン5'−リン酸エステルNa、及びオレンジB、シトラスレッドNo.2、キノリンイエロー、レッド2G、パテントブルーV、グリーンS、ブリリアントブラックBN、ブラックPN、ブラウンFK、ブラウンHT、リソールルビンBK、リボフラビン−5'−リン酸エステル、銅クロロフィリン等の合成天然色素などの合成着色料が含まれる。
天然色素には、アナトー色素、クチナシ黄色素、デュナリエラカロチン、マリーゴールド色素、ニンジンカロチン、パーム油カロチン、トマト色素及びパプリカ色素等のカロチノイド系色素;アカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素;赤キャベツ色素、シソ色素、ハイビスカス色素、ブドウ果汁色素、ブドウ果皮色素、紫イモ色素、赤ダイコン色素、紫コーン色素、エルダーベリー色素及びボイセンベリー色素等のアントシアニン系色素;カカオ色素、コウリャン色素、シタン色素、タマネギ色素、タマリンド色素、カキ色素、カロブ色素、カンゾウ色素、スオウ色素、ベニバナ赤色素及びベニバナ黄色素等のフラボノイド系色素;クロロフィリン、クロロフィル及びスピルリナ色素等のポルフィリン系色素;ウコン色素等のジケトン系色素;赤ビート色素等のベタシアニン系色素;紅麹色素等のアザフィロン系色素;その他、リボフラビン、紅麹黄色素、カラメル、クチナシ青色素、クチナシ赤色素、抹茶、果汁、野菜ジュース、金、銀、アルミニウム系色素が含まれる。好ましくはアントシアニン系色素、フラボノイド系色素、カロチノイド系色素及びキノン系色素であり、より好ましくは赤キャベツ色素、紫イモ色素及び紫コーン色素等のアントシアニン系色素;ベニバナ色素、タマネギ色素、カカオ色素、タマリンド色素等のフラボノイド系色素;パプリカ色素、アナトー色素、ニンジンカロチン色素等のカロチノイド系色素、及びアカネ色素、コチニール色素、シコン色素及びラック色素等のキノン系色素である。
本発明の退色抑制剤は、各種の色素、好ましくは上に掲げる各種の色素、特に天然色素を含有するものに広く適用することができ、これらの色素の退色を抑制若しくは防止するのに有用である。本発明の退色抑制剤が適用される具体的なもの(着色製品)としては、上記色素を含有するものであれば特に制限されないが、例えば色素製剤、食品(飲食物)、化粧品、医薬品、医薬部外品、飼料等を挙げることができる。好ましくは色素製剤及び食品(飲食物)である。
(4)退色抑制剤を含む着色製品
さらに本発明は、ミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3、並びにこれらの混合物を有効成分とする上記退色抑制剤を利用した着色製品を提供する。当該着色製品は、これらのミリシトリン配糖化物を含有することによって中に含まれる色素の退色現象が有意に抑制されてなるという効果を奏することができる。
なお、ここで「着色」とは、製品に人為的に色素を添加して着色した意味のみならず、例えば果汁等のように食品等の製品材料に本来含まれる色素に由来して着色しているものまでも広く包含する趣旨で用いられる。また、ここでいう「着色製品」には色素により着色した各種の製品、具体的には色素製剤、色素を含む飲食物、色素を含む化粧品、色素を含む医薬品、色素を含む医薬部外品、及び色素を含む飼料が包含される。好ましくは色素製剤、及び飲食物である。また、例えば、果汁等のようにはじめから色素成分を含有する製品も含まれる。
本発明が対象とする色素製剤としては、前述する合成色素または天然色素を1種又は2種以上を含むものを挙げることができる。好ましくは、上記に掲げた天然色素を1種又は2種以上含む色素製剤である。好ましくは、アントシアニン系色素、フラボノイド色素、カロチノイド色素及びキノン系色素よりなる群から選択される少なくとも1種の天然色素を含む色素製剤である。
当該色素製剤に配合される退色抑制剤の割合は、本発明の効果を奏する限り特に制限されないが、色素製剤100重量%(固形換算)中に配合されるミリシトリン配糖化物の配合割合に換算して0.01〜30重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.1〜10重量%の範囲を例示することができる。
本発明の色素製剤は、製造の任意の工程で、退色抑制作用を有する本発明のミリシトリン配糖化物または退色抑制剤を配合することを除けば、各種色素製剤の慣用方法に従って製造することができる。退色抑制作用を有するミリシトリン配糖化物または本発明の退色抑制剤の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、色素製剤の製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光暴露前に各種の材料とともに配合することが望ましい。
本発明が対象とする飲食物としては着色したもの、好ましくは前述する色素に基づいて色を有するものであれば特に制限されず、例えば乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、酎ハイなどのアルコール飲料、コーヒー飲料(ミルク入りコーヒーを含む)、ココア飲料、粉末飲料、スポーツ飲料、サプリメント飲料、ビール風味飲料等の飲料類;紅茶飲料(ミルクティーを含む)、緑茶、ブレンド茶等の茶飲料類(以上、飲料);カスタードプリン、ミルクプリン、果汁入りプリン等のプリン類、ゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類;ミルクアイスクリーム、果汁入りアイスクリーム及びソフトクリーム、アイスキャンディー、フローズンヨーグルト等の冷菓類;チューインガムや風船ガム等のガム類(板ガム、糖衣状粒ガム);マーブルチョコレート等のコーティングチョコレートの他、イチゴチョコレート、ブルーベリーチョコレート及びメロンチョコレート等の風味を付加したチョコレート等のチョコレート類;ハードキャンディー(ボンボン、バターボール、マーブル等を含む)、ソフトキャンディー(キャラメル、ヌガー、グミキャンディー、マシュマロ等を含む)、ドロップ、タフィ等のキャラメル類;ハードビスケット、クッキー、おかき、煎餅等の焼き菓子類(以上、菓子類);コンソメスープ、コーンスープ、ポタージュスープ等のスープ類;浅漬け、醤油漬け、塩漬け、味噌漬け、粕漬け、麹漬け、糠漬け、酢漬け、芥子漬、もろみ漬け、梅漬け、福神漬、しば漬、生姜漬、梅酢漬け等の漬物類;セパレートドレッシング、ノンオイルドレッシング、ケチャップ、たれ、ソースなどのソース類;ストロベリージャム、ブルーベリージャム、マーマレード、リンゴジャム、杏ジャム、プレザーブ等のジャム類;赤ワイン等の果実酒;シロップ漬のチェリー、アンズ、リンゴ、イチゴ、桃等の加工用果実;ハム、ソーセージ、焼き豚等の畜肉加工品;魚肉ハム、魚肉ソーセージ、魚肉すり身、蒲鉾、竹輪、はんぺん、薩摩揚げ、伊達巻き、鯨ベーコン等の水産練り製品;バター、マーガリン、チーズ、ホイップクリーム等の酪農・油脂製品類;うどん、冷麦、そうめん、ソバ、中華そば、スパゲッティ、マカロニ、ビーフン、はるさめ及びワンタン等の麺類;その他、各種総菜及び麩、田麩等の種々の加工食品を挙げることができる。好ましくはゼリー、ババロア及びヨーグルト等のデザート類及び乳飲料、乳酸菌飲料、果汁入り清涼飲料、炭酸飲料、果汁飲料、野菜飲料、野菜・果実飲料、アルコール飲料、粉末飲料等の飲料類である。
本発明の飲食物は、製造の任意の工程で退色抑制作用を有するミリシトリン配糖化物または本発明の退色抑制剤を配合することを除けば、各種飲食物の慣用の製造方法に従って製造することができる。退色抑制作用を有するミリシトリン配糖化物または退色抑制剤の配合方法やその順番に特に制限はないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、これらのミリシトリン配糖化物または退色抑制剤を製造工程の初期、好ましくは熱処理工程または光暴露前に配合することが好ましい。
本発明が対象とする化粧品としては、色素を含むスキン化粧料(ローション、乳液、クリームなど)、口紅、日焼け止め化粧品、メークアップ化粧品等を;医薬品としては色素を含む各種錠剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ剤、うがい薬等を;医薬部外品としては色素を含む歯磨き剤、口中清涼剤、口臭予防剤等を;また飼料としては色素を含むキャットフードやドッグフード等の各種ペットフード、観賞魚若しくは養殖魚の餌等を一例として挙げることができるが、これらに制限されるものではない。
これらの化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料などの各種製品は、それらの製造の任意の工程で退色抑制作用を有するミリシトリン配糖化物または退色抑制剤を配合することを除けば、各種製品の慣用方法に従って製造することができる。化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料に対する退色抑制作用を有するミリシトリン配糖化物または退色抑制剤の配合時期は特に制限されないが、色素が熱や光の影響を少なからず受けることを鑑みれば、製造工程の初期、好ましくは熱処理工程前または光暴露前に各種材料とともに配合することが望ましい。
飲食物、化粧品、医薬品、医薬部外品または飼料等の各種着色製品に対する本発明の退色抑制剤の添加量は、それらに含まれる色素の退色現象が防止できる量であれば特に制限されない。本発明の退色抑制剤の有効成分であるミリシトリン配糖化物の種類を考慮し、また着色製品に含まれる色素の種類及びその含量、対象物の種類及びそれに含まれる成分などを考慮して適宜選択、決定することができる。例えば上記着色製品を、退色抑制対象とする色素の極大吸収波長における吸光度が0.05〜1となるように調整した場合に、該着色製品にミリシトリン配糖化物が少なくとも0.001ppmとなるように、例えば0.001ppm〜10000ppmの範囲で含まれるように、退色抑制剤を配合することができる。より好ましくは少なくとも0.05ppm、例えば0.05〜1000ppmの範囲となるように、さらに好ましくは少なくとも0.1ppm、例えば0.1〜100ppmの範囲となるように、退色抑制剤を配合することが望ましい。
なお、退色抑制剤(ミリシトリン配糖化物)の添加配合量に依存して退色抑制効果が向上する。従って、上記配合割合の上限は退色抑制効果以外の他の観点(例えば味並びに粘度等の対象物の物性等)から一応の目安として設定されたものであり、本発明の効果からいえば対象物(着色製品)への退色抑制剤の配合割合の上限は上記に何ら制限されるものではない。
本発明のミリシトリン配糖化物は、新規なフラボノイド配糖体であり、原料のヤマモモ科植物抽出物(ミリシトリン含有画分)と比較して以下の特徴を有している。
(1)水に対する溶解性が極めてよい。
(2)水に対する溶解性が改善されたため、水を含有する食品、医薬品、医薬部外品、化粧品、飼料中に高濃度で使用しても析出物の生成の問題がなく、任意の濃度で使用することができる。
(3)ヤマモモ科植物抽出物(ミリシトリン含有画分)は水不溶性であるので、水系に均一に分散するためには、予めアルコールやグリセリン等に分散しておく必要があるが、ミリシトリン配糖化物は水溶性であるため、粉末の状態で直接水に添加することが可能である。
(4)ミリシトリンと同程度の酸化防止効果を有する。
(5)ミリシトリンと同程度の退色抑制効果を有する。
本発明のミリシトリン配糖化物(混合物)は、例えば、ヤマモモ科植物抽出物にグルコシル基を転移させることによって得ることができる。また本発明のミリシトリン配糖化物G1、G2またはG3は、上記のミリシトリン配糖化物(混合物)をカラムクロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー等、公知の精製方法を単独あるいは適宜組み合わせることによって得ることができる。これらのミリシトリン配糖化物は水に対する溶解度が高く、水易溶性の酸化防止剤として、また水易溶性の退色防止剤として、食品、医薬品、医薬部外品、化粧品又は飼料などに利用することができる。
以下、発明を実施するための最良の形態として実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。また、特に記載のない限り「部」とは「重量部」を、「%」とは「重量%」を意味するものとする。文中「*」印のものは、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の製品を表し、文中の「※」印は、三栄源エフ・エフ・アイ株式会社の登録商標であることを意味する。
実施例1
(1)ヤマモモ抽出物の調製
ヤマモモ樹皮乾燥物の粉砕物1kgにメタノール10kgを加え、約60℃で5時間抽出したのち濾過し、メタノール抽出液を回収した。残滓をメタノール3kgで洗浄して、洗浄液を先のメタノール抽出液と合わせてメタノール抽出液約10kgを得た。この抽出液を濃縮後別の容器に移し替え、真空度5mmHg、浴温60℃で減圧乾燥して黄色の固形物0.25kgを得た。得られた固形物を粉砕後、室温で水5Lと懸濁したのち濾過し、残った固形物をさらに水5Lで洗浄した。次いでこの固形分を真空度5mmHg、浴温80℃で減圧乾燥して黄白色の固形物からなるヤマモモ抽出物(以下、「抽出物1」という)0.13kgを得た。
(2)水溶性ヤマモモ抽出物の調製
水1L(温度60℃)に「抽出物1」5gを分散し、苛性ソーダ水溶液を滴下することにより「抽出物1」を溶解後、希硫酸にてpH7とした液に、デキストリン100gを加えて溶解した。これにBacillus属菌株(受託番号FERM P-13199)由来のシクロデキストリングルカノトランスフェラーゼ1000Unitを添加し、60℃にて24時間攪拌しながら反応させた。反応終了後、得られた反応液をスチレン−ジビニールベンゼン共重合体からなるポーラスポリマー100mLを充填したカラムに2時間かけて通液し、次いで当該カラムにイオン交換水1Lを2時間かけて通液した。さらに、このカラムに60容量%メタノール水溶液2Lを1時間かけて通液して、カラム吸着物を溶出した。溶出したメタノール水溶液を回収して濃縮し、黄色の固形物7gを、水溶性ヤマモモ抽出物(以下、「抽出物2」という)として取得した。
(3)ミリシトリン配糖化物(混合物)の調製
上記で調製した「抽出物2」のうち2gを少量の水に溶解し、Sephadex LH-20(pharmacia社製) 200mLを充填したカラムに通液した。次いでこのカラムに50容量%メタノール水溶液を溶出溶媒として用いて通液し、ミリシトリン配糖化物(混合物)とミリシトリン画分とに分画した。なお、各画分の確認は、各画分の一部を下記条件のHPLCに供し、351nm波長でのUV吸光度を測定することにより行った。さらに、得られたミリシトリン配糖化物(混合物)を減圧濃縮し、0.6gを得た。
<HPLC分析条件>
カラム: YMC-Pack ODS-AQ(ワイエムシィ社製) 4.5×250mm
カラムオーブン温度: 40℃
移動相 :0.1%リン酸/アセトニトリル(85/15)
UV測定波長 : 351nm
流速 :1.0mL/min。
次いで、得られたミリシトリン配糖化物(混合物)について下記の条件でLC/MS分析(液体クロマトグラフィー/質量分析法)を行った。
<LC/MS分析時のLC条件>
カラム: L−column ODS-L(財団法人化学物質評価研究機構 製) 2.1×150mm
カラム温度:40℃
移動相 :0.05%TFA/アセトニトリル(85/15)
UV測定波長 :351nm
流速 :0.15mL/min。
UV351nmにて検出されたピークの保持時間と、各ピークにおいてESI-MS(エレクトロスプレイ質量分析計)により検出された分子量関連イオンピークを以下に示す(イオン化モードはポジティブ)。
(a)ピーク1:G3画分 9.38min m/z 950.99 [M+H]+
(b)ピーク2:G2画分 10.75min m/z 788.96 [M+H]+
(c)ピーク3:G1画分 11.80min m/z 626.91 [M+H]+
この結果から、上記で得られたミリシトリン配糖化物(混合物)は、少なくとも3種類のミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3を含んでおり、それぞれ、ミリシトリンにグルコース残基(グルコシル基)が脱水縮合により1分子、2分子及び3分子付加した物質であることが確認された。
(4)各ミリシトリン配糖化物G1、G2、及びG3の単離精製
(4-1) G1画分
上記(3)で得たミリシトリン配糖化物(混合物)0.5gを少量の水に溶解し、Sephadex LH-20(pharmacia社製)100mLを充填したカラムに付し、50容量%メタノール水溶液を溶出溶媒として用いて分画操作を行なった。各画分について上記条件のHPLCに付して精製度を確認し、再分離を繰り返すことによりミリシトリン配糖化物G1を多く含む画分のみを集め、G1画分を得た。さらにこの画分を減圧濃縮し(0.2g)、これについて、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)(図1)、カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)(図2)、H-H COSY、及び質量分析(Electrospray Mass Spectrometer(ESI/MS))(図3)、インバース異種核相関(HMQC、HMBC)を測定して、構造決定を行った。
1H-NMRと13C-NMRの同定データを表1に示す。
Figure 2006327945
ESI-MS(イオン化モードはポジティブ)(図3)により検出されたイオンピークm/z 627.02 [M+H]+ より、G1は、ミリシトリンにグルコースが、脱水縮合により1分子付加した物質であると推定された。また、グルコシル基のアノメリックプロトン(1'''-H位,δ4.91)とラムノシル基のC-3''位カーボン(δ78.0)の間にHMBC相関が観測された。このことから、G1は、グルコシル基とラムノシル基が1→3結合しているものであると推定された。さらに、グルコシル基のアノメリックプロトン(1'''-H位)が、1H−NMRスペクトルのカップリングコンスタント値(J=4.1Hz)から、α結合していると推定された。
以上のことから、G1はミリセチンの配糖体である、ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド(myricetin 3-O-α-D-glucopyranosyl-(1→3)-α-L-rhamnopyranoside)であり、新規なフラボノイド配糖体であることが確認された。その化学構造式を下式(1)に示す。
Figure 2006327945
(4-2) G2画分
上記(3)で得たミリシトリン配糖化物(混合物)0.5gを少量の水に溶解し、Sephadex LH-20(pharmacia社製)100mLを充填したカラムに付し、50容量%メタノール水溶液を溶出溶媒として用いて分画操作を行なった。各画分について上記条件のHPLCに付して精製度を確認し、再分離を繰り返すことによりミリシトリン配糖化物G2を多く含む画分のみを集め、G2画分を得た。さらにこの画分を減圧濃縮し(0.1g)、これについて、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)(図4)、カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)(図5)、H-H COSY、及び質量分析(Electrospray Mass Spectrometer(ESI/MS))(図6)、インバース異種核相関(HMQC、HMBC)を測定して、構造決定を行った。G2画分に関する1H-NMRと13C-NMRの同定データを表2に示す。
Figure 2006327945
ESI-MS(イオン化モードはポジティブ)により検出されたイオンピークがm/z 789.00 [M+H]+ であることから(図6)、G2は、ミリシトリンにグルコシル基が脱水縮合により2分子付加した物質であることが確認された。
グルコシル基のアノメリックプロトン(1”’-H位,δ4.93)とラムノシル基のC-3”位カーボン(δ76.5)の間にHMBC相関が観測されたことから、グルコシル基とラムノシル基が1→3結合し、グルコシル基のアノメリックプロトン(1”’-H位)のカップリングコンスタント値(J=3.5Hz)からα結合していると推定された。さらに、グルコシル基のアノメリックプロトン(1””-H位,δ5.17)とグルコシル基のC-4”’位カーボン(δ80.2)の間にHMBC相関が観測されたことから、グルコースとグルコシル基が1→4結合し、グルコシル基のアノメリックプロトン(1””-H位)のカップリングコンスタント値(J=4.1Hz)からα結合していると推定された。
以上のことより、G2はミリセチンの配糖体である、ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド(myricetin 3-O-α-D-glucopyranosyl-(1→4)- α-D-glucopyranosyl-(1→3)-α-L-rhamnopyranoside)であって、新規なフラボノイド配糖体であることが確認された。その化学構造式を、下式(2)に示す。
Figure 2006327945
(4-3) G3画分
上記(3)で得たミリシトリン配糖化物(混合物)0.5gを少量の水に溶解し、Sephadex LH-20(pharmacia社製)100mLを充填したカラムに付し、50容量%メタノール水溶液を溶出溶媒として用いて分画操作を行なった。各画分について上記条件のHPLCに付して精製度を確認し、再分離を繰り返すことによりミリシトリン配糖化物G3を多く含む画分のみを集め、G3画分を得た。さらにこの画分を減圧濃縮し(0.04g)、これについて、プロトン核磁気共鳴スペクトル(1H-NMR)(図7)、カーボン核磁気共鳴スペクトル(13C-NMR)(図8)、H-H COSY、及び質量分析(Electrospray Mass Spectrometer(ESI/MS))(図9)、インバース異種核相関(HMQC、HMBC)を測定して、構造決定を行った。1H-NMRと13C-NMRの同定データを表3に示す。
Figure 2006327945
G3は、ESI-MS(イオン化モードはポジティブ)により検出されたイオンピークがm/z 951.06 [M+H]+ であることから(図9)、ミリシトリンにグルコシル基が脱水縮合により3分子付加した物質であることが確認された。
また、グルコシル基のアノメリックプロトン(1”’-H位,δ4.94)とラムノシル基のC-3”位カーボン(δ76.4)の間に、HMBC相関が観測されたことから、グルコシル基とラムノシル基が1→3結合し、グルコシル基のアノメリックプロトン(1”’-H位)のカップリングコンスタント値(J=3.4Hz)からα結合していると推定された。さらに、グルコシル基のアノメリックプロトン(1””-H位,δ4.94)とグルコシル基のC-4”’位カーボン(δ80.3)の間にHMBC相関が観測されたことから、グルコースとグルコシル基が1→4結合し、グルコシル基のアノメリックプロトン(1””-H位)のカップリングコンスタント値(J=3.4Hz)からα結合していると推定した。さらにまた、グルコシル基のアノメリックプロトン(1””’-H位,δ5.12)とグルコシル基のC-4””位カーボン(δ80.1)の間にHMBC相関が観測されたことから、グルコースとグルコシル基が1→4結合し、グルコシル基のアノメリックプロトン(1””’-H位)のカップリングコンスタント値(J=3.4Hz)から、α結合していると推定された。
以上により、G3は、ミリセチンの配糖体である、ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル -(1→4)- α-D-グルコピラノシル-(1→4)- α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド(myricetin 3-O-α-D-glucopyranosyl-(1→4)- α-D-glucopyranosyl-(1→4)- α-D-glucopyranosyl-(1→3)-α-L-rhamnopyranoside)であって、新規なフラボノイド配糖体であることが確認された。その化学構造式を、下式(3)に示す。
Figure 2006327945
実施例2 純水中での溶解度
純水に、抽出物1(ヤマモモ抽出物)、抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)、各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)をそれぞれ加えて加熱溶解した。得られた水溶液を室温にて5時間、1日、3日、及び1週間放置したときの沈殿の有無およびその量を観察した。その結果を表4に示した。
Figure 2006327945
実施例3 酸化防止効果(抗酸化効果)
実施例1で調製した抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)と各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)の抗酸化作用を、過酸化脂質生成抑制作用の点から評価した。過酸化脂質生成抑制作用の評価は、牛乳中の脂質を被験対象にして、Lipid Hydroperoxide(LPO) Assay Kit(Cayman Chemical Company社)を用いて行った(チオシアン酸法)。具体的には、下記に説明するように、抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)または各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)をそれぞれ添加した牛乳(添加区)と何も添加しない牛乳(無添加区)にそれぞれ光照射した後、添加区と無添加区の牛乳中過酸化脂質濃度を定量し、比較した。なお、チオシアン酸法の原理は、過酸化脂質が、発色試薬として加えた2価鉄の電子を奪って3価鉄に酸化することを、その酸化鉄(3価鉄)がチオシアン酸アンモニウムと反応して赤色を呈することを利用して測定し、そこから過酸化脂質の量を算出するものである。
<測定方法>
60×15mmシャーレ中に、市販の牛乳を10mL加え、表5に示す割合で(w/v%)、実験例1で調製した抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)、および各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)をそれぞれ添加した後、人工気象機を使用して、20000ルクス、10℃にて3時間光照射した(添加区)。なお、各添加量は、すべてミリシトリン換算で64μMとなる量に設定した。また、牛乳(10mL)だけを入れたシャーレを、同様に人工気象機中に同時間置いた(無添加区)。さらにまた、牛乳(10mL)だけを入れたシャーレをアルミホイルで包むことにより遮光し、この状態で上記と同様に人工気象機中に同時間置いた(非虐待区)。光照射後、Lipid Hydroperoxide(LPO) Assay Kit(Cayman Chemical Company社)を用いてチオシアン酸法により、牛乳中の過酸化脂質濃度を定量した。
Figure 2006327945
結果を以下に示す。
Figure 2006327945
上記表の結果から明らかなように、抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)、各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)は、過酸化脂質生成を抑制しており、抗酸化作用を有していた。
実施例4 退色抑制効果
(1)被験試料の調製
(1-1)酸糖液の調製
下記処方に従って、各成分を添加混合して酸糖液を調製した。
果糖ブドウ糖液糖 13.0%
クエン酸(無水) 0.2%
クエン酸3ナトリウム pH調整用(pH3.0) 適 量
水 残 量
合計 100.0%。
(1-2)被験試料の調製
上記の酸糖液に、下記表7及び8に記載する添加量にて、各色素製剤(赤キャベツ色素製剤、カロテン色素製剤)と抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)または各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)をそれぞれ添加し、退色について検討を行った。抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)と各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)の添加量は、モル数を揃え、全て64μMとなる量とした。
Figure 2006327945
Figure 2006327945
(2)退色抑制効果の評価
(2-1)フェードメーターによる光照射
上記で調製した各被験試料(試験溶液)を、カーボンアークランプ使用のフェードメーター(スガ試験機(株)製、FAL-AU・HB型)にて3時間紫外線照射した。
(2-2)吸光度測定
上記紫外線照射後、各被験試料について以下の測定波長にて吸光度を測定した。紫外線照射スタート時のblank溶液の吸光度を100%(コントロール)として、残存率を求めた。
blank1、試験例1〜4 :測定波長528nm
blank2、試験例5〜8 :測定波長501nm。
Figure 2006327945
表の結果から明らかなように、抽出物2(水溶性ヤマモモ抽出物)、各ミリシトリン配糖化物(G1、G2、G3)はいずれも、赤キャベツ色素(アントシアニン系色素)及びカロテン色素の紫外線照射による退色を抑制しており、色素退色抑制効果を有していることが判明した。
G1画分の化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。 G1画分の化合物のカーボン核磁気共鳴スペクトルを示す。 G1画分の化合物のESI-MSスペクトルを示す。 G2画分の化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。 G2画分の化合物のカーボン核磁気共鳴スペクトルを示す。 G2画分の化合物のESI-MSスペクトルを示す。 G3画分の化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。 G3画分の化合物のカーボン核磁気共鳴スペクトルを示す。 G3画分の化合物のESI-MSスペクトルを示す。

Claims (9)

  1. 下記の化学式(1):
    Figure 2006327945
    〔式中、R1はα-D-グルコシル基、α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基、またはα-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基を意味する。〕
    で示される、
    (1)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
    (2)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、または
    (3)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
    のいずれか一つのミリシトリン配糖化物。
  2. 下記の化学式(1):
    Figure 2006327945
    〔式中、R1はα-D-グルコシル基、α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基、またはα-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル-(1→4)-α-D-グルコシル基を意味する。〕
    で示される、
    (1)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
    (2)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、及び
    (3)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド
    よりなる群から選択される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を含有する組成物。
  3. ミリシトリンまたはミリシトリンを含有する組成物を、グルコシル基転移源の存在下、グルコシル基転移酵素で処理する工程を有する、請求項2記載の組成物の調製方法。
  4. (a)ミリシトリンまたはミリシトリンを含有する組成物を、グルコシル基転移源の存在下、グルコシル基転移酵素で処理する工程、及び
    (b)上記工程で得られる組成物から、
    (1)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、
    (2)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド、及び
    (3)ミリセチン3-O-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→4)-α-D-グルコピラノシル-(1→3)-α-L-ラムノピラノシド
    よりなる群から選択される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を単離する工程、
    を有する、請求項1記載のミリシトリン配糖化物の調製方法。
  5. 請求項1に記載される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を含有する抗酸化剤。
  6. 請求項1に記載される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を含有する退色抑制剤。
  7. 請求項1に記載される少なくとも一つのミリシトリン配糖化物を抗酸化剤または退色抑制剤として含有する着色製品。
  8. ミリシトリンを含有するヤマモモ科植物抽出物を、グルコシル基転移源の存在下、グルコシル基転移酵素で処理して得られる、ミリシトリン配糖化物を含む組成物。
  9. ミリシトリン配糖化物が請求項1に記載されるものである、請求項8記載の組成物。
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