JP3867462B2 - ズームレンズ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ズームレンズに関するものであり、更に詳しくは、特にデジタルスチルカメラに適した、小型で安価なズームレンズに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータの普及に伴い、フロッピーディスク等に手軽に画像を取り込めるデジタルスチルカメラが普及しつつある。このようなデジタルスチルカメラの普及に伴い、より安価なデジタルスチルカメラが求められてきており、撮影光学系にもより一層のコストダウンが要望されている。一方、光電変換素子の画素数は年々増加の傾向にあり、撮影光学系にはより高性能なものが求められているので、コストダウンと高性能化という、相反する要求に応えていく必要がある。
【0003】
このため、従来より、例えば特開平6−201993号公報,特開平1−191820号公報に記載されている如く、負のパワーを持つ第1群と、正のパワーをそれぞれ持つ第2群,第3群とより成り、プラスチックレンズを使用していると思われる光学系の構成が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記各公報に開示されているような構成では、まだまだ小型,高性能化、コストダウンの余地が残されている。本発明は、このような問題点に鑑み、負正2成分ズームにプラスチックレンズを効果的に配する事により、特にデジタルスチルカメラに適した、小型,高画質で安価なズームレンズを提供する事を目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明のズームレンズは、物体側から順に、負のパワーを有する第1レンズ群と、正のパワーを有する第2レンズ群と、正のパワーを有する第3レンズ群とで構成され、少なくとも第1レンズ群と第2レンズ群が移動し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔、及び第2レンズ群と第3レンズ群との間隔を変える事により、変倍を行うズームレンズであって、前記第3レンズ群を構成するレンズの内、少なくとも1枚が以下の条件式(5)を満足するプラスチックレンズであるとともに、以下の条件式(2')及び(12)を満足する事を特徴とする。
−0.30<M3/M2≦0.00 …(2')
|φP/φ3|<1.70 …(5)
0.1<φ3/φW<0.60 …(12)
但し、
M3:第3レンズ群の移動量(広角端を基準にして物体側を−とする)
M2:第2レンズ群の移動量(広角端を基準にして物体側を−とする)
φP:プラスチックレンズのパワー
φ3:第3レンズ群のパワー
φW:広角端での全系のパワー
である。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図9は、それぞれ第1〜第9の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示している。ただし、第1,第4,第6の実施形態は本発明の参考のためのものであり、本発明に属さないものである。各図の左側が物体側、右側が像側である。尚、各図中の矢印は、ズーム時の各レンズ群の広角端から望遠端への移動の様子を模式的に表したものである。破線で表す矢印は、移動しない事を示している。また、各図はそのズーム時の広角端の状態を示している。そして、各図に示すように、各実施形態は負正正3成分ズームであり、物体側から順に、第1レンズ群Gr1,第2レンズ群Gr2,第3レンズ群Gr3から構成され、少なくとも2つのレンズ群が移動するタイプである。
【0021】
Gr1は全体として負のパワーを有する。また、Gr2及びGr3は全体として正のパワーを有する。物体側から順に、1枚目〜8枚目のレンズをそれぞれG1〜G8とする。各実施形態の各レンズ群は、それぞれこれらのレンズを適宜組み合わせた構成となっている。そして、Gr2には絞りSが含まれている。尚、像側端部の平行平板はローパスフィルターLPFである。
【0022】
図1に示すように、第1の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から2枚目(G2)及び6枚目(G6)のレンズがプラスチックレンズである。また、図2に示すように、第2の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から2枚目(G2),及び7枚目(G7)のレンズがプラスチックレンズである。
【0023】
さらに、図3に示すように、第3の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から1枚目(G1)及び7枚目(G7)のレンズがプラスチックレンズである。また、図4に示すように、第4の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から2枚目(G2)及び5枚目(G5)のレンズがプラスチックレンズである。また、図5に示すように、第5の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から1枚目(G1)及び7枚目(G7)のレンズがプラスチックレンズである。
【0024】
また、図6に示すように、第6の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から2枚目(G2)及び5枚目(G5)のレンズがプラスチックレンズである。また、図7に示すように、第7の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から2枚目(G2),5枚目(G5),6枚目(G6),及び7枚目(G7)のレンズがプラスチックレンズである。
【0025】
さらに、図8に示すように、第8の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から2枚目(G2),5枚目(G5),6枚目(G6),7枚目(G7)及び8枚目(G8)のレンズがプラスチックレンズである。最後に、図9に示すように、第9の実施形態では、同図の斜線で示す物体側から2枚目(G2),6枚目(G6),及び7枚目(G7)のレンズがプラスチックレンズである。
【0026】
以下に、光学系について望ましい条件を記す。上記各実施形態の光学系は、以下の条件式(1)を満足する事が望ましい。
−0.8<Cp×(N′−N)/φW<0.8 (1)
但し、
Cp:プラスチックレンズ曲率
φW:広角端での全系のパワー
N :非球面の物体側媒質のd線の屈折率
N′:非球面の像側媒質のd線の屈折率
である。
【0027】
条件式(1)は、プラスチックレンズの面のパワーを規定する式である。面のパワーが強すぎると、温度変化に伴う面形状の変化により、諸収差が劣化する。この条件式の下限値以下になると、負のパワーが強くなりすぎ、逆に、上限値以上になると、正のパワーが強くなりすぎるため、第1レンズ群のプラスチックレンズの場合、主に温度変化に伴う像面湾曲の変動が大きくなる。また、第2レンズ群のプラスチックレンズの場合、主に温度変化に伴う球面収差の変動が大きくなる。そして、第3レンズ群のプラスチックレンズの場合、主に温度変化に伴う球面収差、及び周辺光束のコマ収差の変動が大きくなる。
【0028】
各実施形態の光学系は、以下の条件式(2)を満足する事が望ましい。
−0.45<M3/M2<0.90 (2)
但し、
M3:第3レンズ群の移動量(広角端を基準にして物体側を−とする)
M2:第2レンズ群の移動量(広角端を基準にして物体側を−とする)
である。
【0029】
条件式(2)は、第2レンズ群と第3レンズ群の移動量の比を規定する式であり、変倍を効率よく行うために第2,第3レンズ群の移動量を適切にするための条件である。従って、ズーム比を確保する必要がある光学系に有効であり、
φW/φT>1.6
を満たす事が更に望ましい。
但し、
φT:望遠端での全系のパワー
である。
【0030】
条件式(2)の下限値以下になると、第3レンズ群の変倍負担が大きくなり過ぎるため、変倍による球面収差、及び周辺光束のコマ収差の変動が著しくなる。逆に、上限値以上になると、第2レンズ群の移動量が増大し、広角側での周辺照度確保のため、前玉径の増大を招くとともに、第2レンズ群の変倍負担が大きくなり過ぎるため、変倍による球面収差の変動が大きくなる。
【0031】
また、第3レンズ群にプラスチックレンズを用いる場合、第3レンズ群の収差補正能力が低下する傾向にあるので、上記条件式(2)の範囲を縮小して、
−0.30<M3/M2≦0.00 (2′)
とする事が望ましい。
【0032】
また、第1レンズ群にプラスチックレンズを用いる場合、以下の条件式(3)を満足する事が望ましい。
|φP/φ1|<1.20 (3)
但し、
φP:プラスチックレンズのパワー
φ1:第1レンズ群のパワー
である。
【0033】
条件式(3)は、第1レンズ群のパワーと第1レンズ群に含まれるプラスチックレンズのパワーとの比を規定する式であり、温度変化に伴う収差変動を適切に保つための条件である。この条件式の上限値以上になると、温度変化による像面湾曲、特に広角側での像面湾曲の変動が大きくなる。また、第1レンズ群で生じる収差補正に関しては、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズとを設ける事が望ましい。
【0034】
また、第2レンズ群にプラスチックレンズを用いる場合、以下の条件式(4)を満足する事が望ましい。
|φP/φ2|<2.5 (4)
但し、
φ2:第2レンズ群のパワー
である。
【0035】
条件式(4)は、第2レンズ群のパワーと第2レンズ群に含まれるプラスチックレンズのパワーとの比を規定する式であり、温度変化に伴う収差変動を適切に保つための条件である。この条件式の上限値以上になると、温度変化による球面収差、特に望遠側での球面収差の変動が大きくなる。また、第2レンズ群で生じる収差補正に関しては、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズとを設ける事が望ましい。
【0036】
また、第3レンズ群にプラスチックレンズを用いる場合、以下の条件式(5)を満足する事が望ましい。
|φP/φ3|<1.70 (5)
但し、
φ3:第3レンズ群のパワー
である。
【0037】
条件式(5)は、第3レンズ群のパワーと第3レンズ群に含まれるプラスチックレンズのパワーとの比を規定する式であり、温度変化に伴う収差変動を適切に保つための条件である。この条件式の上限値以上になると、温度変化による球面収差、及び周辺光束のコマ収差の変動が大きくなる。また、第3レンズ群で生じる収差補正に関しては、少なくとも1枚の正レンズと1枚の負レンズとを設ける事が望ましい。
【0038】
条件式(3),(4),(5)については、下限値を規定していないが、条件式の値が小さくなるという事は、プラスチックレンズのパワーが弱くなる事を意味し、温度変化による収差変動に対しては望ましい方向である。しかし、常温時の収差補正に対しては効果がなく、プラスチックレンズを設けている意味がなくなるので、プラスチックレンズが以下の条件式(6)を満足する場合、非球面を必ず設ける事が必要である。
【0039】
0≦|φP/φA|<0.45 (6)
但し、
φA:プラスチックレンズを含むレンズ群のパワー
である。無論、この条件式の上限値以上となるプラスチックレンズに非球面を設けても差し支えない。
【0040】
以上のように非球面を設ける場合、以下の条件式を満足する事が望ましい。まず、第1レンズ群のプラスチックレンズに非球面を設ける場合、以下の条件式(7)を満足する事が望ましい。
【0041】
但し、
C0 :非球面の基準球面曲率
N′:非球面の像側媒質のd線の屈折率
N :非球面の物体側媒質のd線の屈折率
X :非球面の光軸と垂直方向高さでの光軸方向の変位量(物体側方向−)
X0 :非球面基準球面の光軸と垂直方向高さでの光軸方向の変位量(物体側方向−)
f1:第1レンズ群の焦点距離
である。
【0042】
条件式(7)の下限値以下になると、広角側、特に近接時での正の歪曲収差が大きくなるとともに、像面のオーバー側への倒れが大きくなる。逆に、上限値以上になると、非球面の効果が殆ど得られず、非球面を設ける意味が無くなり、広角側、特に近接時での負の歪曲収差、像面のアンダー側への倒れが補正不足となる。尚、第1レンズ群に非球面が複数ある場合、少なくともその1面がこの条件式を満足していれば良く、他の面は他の収差との兼ね合いでこの条件式を満足していなくても差し支えない。
【0043】
次に、第2レンズ群のプラスチックレンズに非球面を設ける場合、以下の条件式(8)を満足する事が望ましい。
但し、
f2:第2レンズ群の焦点距離
である。
【0044】
条件式(8)は、非球面が第2レンズ群の正のパワーを弱めるような形状である事を意味しており、主に球面収差を適切に補正するための条件である。この条件式の下限値以下になると、主に望遠側での球面収差のオーバー傾向が著しくなる。逆に、上限値以上になると、非球面の効果が殆ど得られず、非球面を設ける意味が無くなり、主に望遠側での球面収差が補正不足となる。尚、第2レンズ群に非球面が複数ある場合、少なくともその1面がこの条件式を満足していれば良く、他の面は他の収差との兼ね合いでこの条件式を満足していなくても差し支えない。
【0045】
また、第3レンズ群のプラスチックレンズに非球面を設ける場合、以下の条件式(9)を満足する事が望ましい。
但し、
f3:第3レンズ群の焦点距離
である。
【0046】
条件式(9)は、非球面が第3レンズ群の正のパワーを弱めるような形状である事を意味しており、球面収差と周辺光束のコマ収差を適切に補正するための条件である。この条件式の下限値以下になると、球面収差のオーバー傾向及び周辺光束のコマ収差が著しくなる。逆に、上限値以上になると、非球面の効果が殆ど得られず、非球面を設ける意味が無くなり、球面収差及び周辺光束のコマ収差が補正不足となる。尚、第3レンズ群に非球面が複数ある場合、少なくともその1面がこの条件式を満足していれば良く、他の面は他の収差との兼ね合いでこの条件式を満足していなくても差し支えない。
【0047】
また、各実施形態の光学系は、以下の条件式(10)を満足する事が望ましい。
0.20<|φ1/φW|<0.70 (10)
条件式(10)は、第1レンズ群のパワーを規定する式であり、収差補正及び光学系の大きさを適切に保つための条件である。この条件式の下限値以下になると、第1レンズ群のパワーが弱くなりすぎるため、収差補正には有利であるが、全長及び前玉径の増大を招く。逆に、上限値以上になると、第1レンズ群のパワーが強くなりすぎるため、収差劣化、特にオーバー側への像面の倒れが著しくなるとともに、広角側での樽型の歪曲収差が著しくなり、屈折率が低く、分散値が限定されるプラスチックレンズを用いると、十分に補正する事が困難となり、レンズ枚数の増加を招く。
【0048】
また、各実施形態の光学系は、以下の条件式(11)を満足する事が望ましい。
0.25<φ2/φW<0.75 (11)
条件式(11)は、第2レンズ群のパワーを規定する式であり、収差補正及び光学系の大きさを適切に保つための条件である。条件式(11)の下限値以下になると、第2レンズ群のパワーが弱くなりすぎるため、収差補正には有利であるが、全長及び前玉径の増大を招く。逆に、上限値以上になると、第2レンズ群のパワーが強くなりすぎるため、収差劣化、特に球面収差のアンダー傾向が著しくなり、屈折率が低く、分散値が限定されるプラスチックレンズを用いると、十分に補正する事が困難となり、レンズ枚数の増加を招く。
【0049】
また、各実施形態の光学系は、以下の条件式(12)を満足する事が望ましい。
0.1<φ3/φW<0.60 (12)
条件式(12)は、第3レンズ群のパワーを規定する式であり、収差補正及び光学系の大きさを適切に保つための条件である。条件式(12)の下限値以下になると、第3レンズ群のパワーが弱くなりすぎるため、収差補正には有利であるが、全長及び前玉径の増大を招く。逆に、上限値以上になると、第3レンズ群のパワーが強くなりすぎるため、収差劣化、特に球面収差のアンダー傾向が著しくなり、屈折率が低く、分散値が限定されるプラスチックレンズを用いると、十分に補正する事が困難となり、レンズ枚数の増加を招く。
【0050】
また、条件式(10),(11),(12)の上限値以上になると、プラスチックレンズのパワーが強くなる傾向にあるので、条件式(3)と(10)、条件式(4)と(11)、条件式(5)と(12)は同時に満たす事が更に望ましい。
【0051】
また、各実施形態の光学系は、以下の条件式(13)を満足する事が望ましい。
−1.4<ΣφPi/φW×hi<1.4 (13)
但し、
φPi:i番目のプラスチックレンズのパワー
hi:近軸追跡における初期条件を換算傾角α1=0,高さh1=1としたときの、望遠端でのi番目のプラスチックレンズへの近軸軸上光線の物体側面入射高さ
である。
【0052】
条件式(13)は、温度変化に伴うレンズバックの変化を抑制するための条件であり、各プラスチックレンズの温度変化に伴うレンズバックの影響度の総和である。従って、プラスチックレンズを複数枚使用する際には、各々影響度を打ち消し合うように、正レンズと負レンズとを含む事が望ましい。この条件式の下限値以下になると、負のパワーを有するプラスチックレンズの温度変化によるバック変動が大きくなり、逆に、上限値以上になると、正のパワーを有するプラスチックレンズの温度変化によるバック変動が大きくなるため、いずれの場合も、温度変化に応じてレンズバックを補正するための機構が必要となる。
【0053】
また、各実施形態の光学系は、以下の条件式(14)を満足する事が望ましい。
0.5<log(β2T/β2W)/logZ<2.2 (14)
但し、
β2W:広角端での第2レンズ群の横倍率
β2T:望遠端での第2レンズ群の横倍率
Z:ズーム比
log:自然対数(但し条件式では比を取っているので、底数は限定されない)
である。
【0054】
本発明のズームタイプでは、第2レンズ群の変倍負担が最も大きい。変倍負担が大きくなると、変倍に伴う収差劣化もそれに応じて大きくなるので、良好に収差補正を行うには、変倍負担を複数のレンズ群で分担させる事が効率的である。条件式(14)は、本発明のズームタイプとしては変倍負担が最も大きい第2レンズ群の変倍負担を規定する式である。
【0055】
この条件式の下限値以下になると、第2レンズ群の変倍負担が小さくなり過ぎるため、第2レンズ群の収差補正には有利であるが、光学系として他の群の収差負担に影響があり、結局他の群のレンズ枚数が増えたり光学系全体が大きくなったりする。逆に、上限値以上になると、変倍負担が大きくなり過ぎるため、主に変倍による球面収差の変動が大きくなる。
【0056】
また、各実施形態の光学系は、以下の条件式(15)を満足する事が望ましい。
−1.2<log(β3T/β3W)/logZ<0.5 (15)
但し、
β3W:広角端での第3レンズ群の横倍率
β3T:望遠端での第3レンズ群の横倍率
である。
【0057】
条件式(15)は、第3レンズ群の変倍負担を規定する式である。この条件式がマイナスになるという事は、減倍している事を意味しており、変倍に関しては不利となるが、変倍時に移動する事により、変倍時の他のレンズによる収差劣化を補正する効果がある。この条件式の下限値以下になると、減倍し過ぎるため、結局他のレンズ群でその分を補う必要があり、他のレンズ群のレンズ枚数の増加や光学系全体の全長増加を招く。逆に、上限値以上になると、変倍負担が大きくなり過ぎるため、変倍により球面収差及びコマ収差の変動が大きくなる。
【0058】
また、各実施形態の光学系は、以下の条件式(16)を満足する事が望ましい。
条件式(16)は、第2レンズ群と第3レンズ群の変倍負担の比を規定する式である。この条件式の下限値以下になると、第3レンズ群の減倍に伴う第2レンズ群の変倍負担が大きくなり過ぎるため、変倍による球面収差の変動が大きくなる。逆に、上限値以上になると、第3レンズ群の変倍負担が大きくなり過ぎるため、変倍による球面収差、及びコマ収差の変動が大きくなる。
【0059】
以下、本発明に係るズームレンズの光学系の構成を、コンストラクションデータ,収差図等を挙げて、更に具体的に示す。尚、以下に挙げる実施例1〜9は、前述した第1〜第9の実施形態にそれぞれ対応しており、第1〜第9の実施形態を表すレンズ構成図(図1〜図9)は、対応する実施例1〜9のレンズ構成をそれぞれ示している。したがって、第1,第4,第6の実施形態にそれぞれ対応する実施例1,4,6は本発明の単なる参考例であり、本発明に属さないものである。
【0060】
各実施例において、ri(i=1,2,3...)は、物体側から数えてi 番目の面及びその曲率半径を示し、di(i=1,2,3...)は、物体側から数えてi 番目の軸上面間隔を示し、Ni(i=1,2,3...),νi(i=1,2,3...) は、それぞれ物体側から数えてi 番目のレンズのd線に対する屈折率,アッベ数を示す。また、実施例中の全系の焦点距離f,及び全系のFナンバーFNO、並びに第1レンズ群と第2レンズ群との間隔,第2レンズ群と第3レンズ群との間隔,及び第3レンズ群とLPFとの間隔は、左から順に、広角端(W),中間焦点距離(M),望遠端(T)でのそれぞれの値に対応している。尚、各実施例中、曲率半径に*印を付した面は、非球面で構成された面である事を示し、非球面の面形状を表す式は、以下に定義する。
【0061】
X=X0+ΣAiYi ・・・・・(a)
X0 =CY2/{1+(1−εC2Y2)1/2} ・・・・・(b)
但し、
X :光軸方向の基準面からの変位量
Y :光軸と垂直な方向の高さ
C :近軸曲率
ε :2次曲面パラメータ
Ai :i次の非球面係数
である。
【0062】
【0063】
[第3面(r3)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.38905×10-3
A6= 0.24379×10-5
A8= 0.38282×10-6
[第12面(r12)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.13386×10-2
A6=-0.11975×10-4
A8=-0.53773×10-5
【0064】
【0065】
[第3面(r3)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.35342×10-3
A6= 0.71258×10-6
A8= 0.33647×10-6
[第14面(r14)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.23473×10-3
A6= 0.43912×10-5
A8= 0.10409×10-6
【0066】
【0067】
[第1面(r1)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.15951×10-3
A6= 0.14779×10-6
A8= 0.56026×10-7
[第14面(r14)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.27776×10-3
A6= 0.23365×10-5
A8= 0.19731×10-6
【0068】
【0069】
[第3面(r3)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.24908×10-3
A6=-0.62198×10-7
A8= 0.10295×10-6
[第11面(r11)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.39625×10-2
A6= 0.16585×10-3
A8= 0.13563×10-4
【0070】
【0071】
[第1面(r1)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.19398×10-3
A6= 0.47895×10-6
A8= 0.46069×10-7
[第14面(r14)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.37579×10-3
A6=-0.11089×10-5
A8= 0.87379×10-7
【0072】
【0073】
[第3面(r3)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.24372×10-3
A6=-0.10309×10-6
A8= 0.84837×10-7
[第10面(r10)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.35107×10-2
A6=-0.17279×10-3
A8=-0.80824×10-5
[第13面(r13)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.11613×10-3
A6=-0.34635×10-4
A8= 0.66386×10-6
【0074】
【0075】
[第3面(r3)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.17978×10-3
A6=-0.30828×10-6
A8= 0.71904×10-7
[第12面(r12)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.18066×10-2
A6=-0.54257×10-4
A8=-0.76508×10-5
[第15面(r15)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.29756×10-3
A6=-0.62953×10-5
A8=-0.77785×10-7
【0076】
【0077】
[第3面(r3)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.16055×10-3
A6= 0.48397×10-7
A8= 0.67121×10-7
[第12面(r12)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.25048×10-2
A6=-0.87701×10-4
A8=-0.12082×10-4
[第14面(r14)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.52484×10-3
A6= 0.58442×10-5
A8= 0.87159×10-8
[第17面(r17)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.91828×10-3
A6=-0.59033×10-5
A8= 0.27335×10-6
【0078】
【0079】
[第3面(r3)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.28799×10-3
A6= 0.40089×10-5
A8= 0.14823×10-6
[第12面(r12)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.62816×10-3
A6=-0.22891×10-4
A8= 0.42945×10-6
[第15面(r15)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.60130×10-3
A6=-0.42374×10-5
A8= 0.11268×10-7
【0080】
また、図10〜図18は、それぞれ前記実施例1〜9に対応する無限遠の収差図であり、各図において、上段は広角端〔W〕、中段は中間焦点距離〔M〕、下段は望遠端〔T〕をそれぞれ表している。そして、球面収差図において、実線(d)はd線を表し、破線(SC)は正弦条件を表している。また、非点収差図において、実線(DS)と破線(DM)は、それぞれサジタル面とメリディオナル面での非点収差を表している。実施例1〜9は、上記各条件式を満足する。また以下に、各実施例1〜9における、前記条件式(1)〜(5),(10)〜(16)に対応する値を示す。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
また以下に、上記非球面の条件式(7)〜(9)に対応する値を示す。ここでのYは非球面最大光路高さである。
【0088】
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
また、図19は、第10の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示している。ただし、第10の実施形態は本発明の参考のためのものであり、本発明に属さないものである。同図の左側が物体側、右側が像側である。尚、図中の矢印は、ズーム時の各レンズ群の広角端から望遠端への移動の様子を模式的に表したものである。破線で表す矢印は、移動しない事を示している。また、同図はそのズーム時の広角端の状態を示している。そして、同図に示すように、本実施形態は負正正3成分ズームであり、物体側から順に、第1レンズ群Gr1,第2レンズ群Gr2,第3レンズ群Gr3から構成され、2つのレンズ群が移動するタイプである。
【0098】
Gr1は全体として負のパワーを有する。また、Gr2及びGr3は全体として正のパワーを有する。物体側から順に、1枚目〜6枚目のレンズをそれぞれG1〜G6とする。本実施形態の各レンズ群は、それぞれこれらのレンズを適宜組み合わせた構成となっている。そして、Gr2には絞りSが含まれている。尚、像側端部の平行平板はローパスフィルターLPFである。同図に示すように、本実施形態では、同図の斜線で示す物体側から1枚目(G1)及び5枚目(G5)のレンズがプラスチックレンズである。
【0099】
以下に挙げる実施例10のコンストラクションデータは、前述した第10の実施形態に対応しており、第10の実施形態を表すレンズ構成図(図19)は、対応する実施例10のレンズ構成を示している。したがって、第10の実施形態に対応する実施例10は本発明の単なる参考例であり、本発明に属さないものである。また、実施例10のコンストラクションデータの表示の構成は、上記実施例1〜9で示したものと同様である。
【0100】
【0101】
[第1面(r1)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.43400×10-3
A6=-0.55461×10-5
A8= 0.27915×10-7
[第2面(r2)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.26861×10-3
A6= 0.25040×10-5
A8=-0.23353×10-6
[第10面(r10)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4=-0.30306×10-3
A6=-0.13415×10-4
A8=-0.19911×10-5
[第11面(r11)の非球面係数]
ε= 0.10000×10
A4= 0.19342×10-2
A6= 0.59893×10-4
A8=-0.42081×10-5
【0102】
また、図20は、前記実施例10に対応する無限遠の収差図であり、同図において、上段は広角端〔W〕、中段は中間焦点距離〔M〕、下段は望遠端〔T〕をそれぞれ表している。そして、球面収差図において、実線(d)はd線を表し、破線(SC)は正弦条件を表している。また、非点収差図において、実線(DS)と破線(DM)は、それぞれサジタル面とメリディオナル面での非点収差を表している。
【0103】
続いて、実施例10における、前記条件式(1)〜(4),(10),(11),(13),(14)に対応する値を示す。
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、負正2成分ズームにプラスチックレンズを効果的に配する事により、特にデジタルスチルカメラに適した、小型,高画質で安価なズームレンズを提供する事ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図2】第2の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図3】第3の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図4】第4の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図5】第5の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図6】第6の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図7】第7の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図8】第8の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図9】第9の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図10】実施例1に対応する無限遠の収差図。
【図11】実施例2に対応する無限遠の収差図。
【図12】実施例3に対応する無限遠の収差図。
【図13】実施例4に対応する無限遠の収差図。
【図14】実施例5に対応する無限遠の収差図。
【図15】実施例6に対応する無限遠の収差図。
【図16】実施例7に対応する無限遠の収差図。
【図17】実施例8に対応する無限遠の収差図。
【図18】実施例9に対応する無限遠の収差図。
【図19】第10の実施形態のズームレンズの光学系の構成を示す図。
【図20】実施例10に対応する無限遠の収差図。
【符号の説明】
G1〜G8 レンズ
LPF ローパスフィルター
Gr1 第1レンズ群
Gr2 第2レンズ群
Gr3 第3レンズ群
S 絞り
Claims (1)
- 物体側から順に、負のパワーを有する第1レンズ群と、正のパワーを有する第2レンズ群と、正のパワーを有する第3レンズ群とで構成され、少なくとも第1レンズ群と第2レンズ群が移動し、第1レンズ群と第2レンズ群との間隔、及び第2レンズ群と第3レンズ群との間隔を変える事により、変倍を行うズームレンズであって、前記第3レンズ群を構成するレンズの内、少なくとも1枚が以下の条件式(5)を満足するプラスチックレンズであるとともに、以下の条件式(2')及び(12)を満足する事を特徴とするズームレンズ;
−0.30<M3/M2≦0.00 …(2')
|φP/φ3|<1.70 …(5)
0.1<φ3/φW<0.60 …(12)
但し、
M3:第3レンズ群の移動量(広角端を基準にして物体側を−とする)
M2:第2レンズ群の移動量(広角端を基準にして物体側を−とする)
φP:プラスチックレンズのパワー
φ3:第3レンズ群のパワー
φW:広角端での全系のパワー
である。
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