JP3847388B2 - (メタ)アクリル系樹脂組成物およびそれを含む人工大理石用組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体とからなる(メタ)アクリルシラップを主成分として含む熱硬化性(メタ)アクリル系樹脂組成物、およびそれを含む人工大理石用組成物に関するものである。さらに詳しくは、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた硬化物を得ることができる(メタ)アクリル系樹脂組成物、および、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた人工大理石を得ることができる人工大理石用組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体との混合物である(メタ)アクリルシラップを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物が用いられている。例えば、(メタ)アクリルシラップと充填材とを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物は、良好な耐候性と良好な外観を有する成形品が得られることから、人工大理石を得るための人工大理石用組成物として特に好適に用いられる。
【0003】
上記の(メタ)アクリルシラップとしては、従来、例えば、ポリメタクリル酸メチルをメタクリル酸メチルに溶解させた(メタ)アクリルシラップや、メチルメタクリレートを部分重合して得られた(メタ)アクリルシラップ等が広く用いられている。
【0004】
しかしながら、上記従来の(メタ)アクリルシラップは、(メタ)アクリル系重合体が、重合性二重結合を有さない、即ち、熱可塑性であるため、ラジカル重合によって硬化させたときに、ビニル単量体が単独で重合して分子が直鎖状に伸びるだけであり、得られる硬化物の耐溶剤性や耐汚染性等の物性が不十分となるという問題があった。
【0005】
そこで、重合性二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体(即ち、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体)とビニル単量体とからなる架橋結合型の(メタ)アクリルシラップが提案されている。上記の架橋結合型の(メタ)アクリルシラップは、(メタ)アクリル系重合体がビニル単量体と共重合して架橋結合を形成することによって硬化するため、得られる成形品の耐溶剤性や耐汚染性等の物性に優れている。
【0006】
このような架橋結合型の(メタ)アクリルシラップを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物として、例えば、特開昭63−286415号公報には、側鎖にウレタン結合又はエステル結合を介して(メタ)アクリロイル基を有する側鎖不飽和ポリマー、(メタ)アクリロイル基と共重合可能なモノマー、および無機質充填材からなる注型用樹脂組成物が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、得られる成形品の耐溶剤性や耐汚染性は高いものの、得られる成形品が耐衝撃性に劣るという問題点を有している。
【0008】
また、(メタ)アクリル系樹脂組成物に対して、硬化時の収縮率を下げるための低収縮化剤として、熱可塑性ポリマーを少量添加することは、知られている。例えば、前述の特開昭63−286415号公報には、前記の注型用樹脂組成物において、必要に応じて、熱可塑性ポリマーを併用することが記載されている。
【0009】
しかしながら、一般に、熱硬化性樹脂に対して、熱可塑性ポリマーを添加して硬化させると、上記の公報にも記載されているように、硬化後の熱硬化性樹脂が白濁し、著しく外観を損なうことになる場合が多い。
【0010】
さらに、本願発明者等が検討した結果、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体とからなる(メタ)アクリルシラップに、熱可塑性重合体を添加した場合、熱可塑性重合体が、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体とが共重合して生成する反応物と非相溶であると、得られる硬化物が耐衝撃性に劣るということが分かった。
【0011】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その第1の目的は、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた硬化物を得ることができる(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の第2の目的は、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた人工大理石を得ることができる人工大理石用組成物を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記第1の目的を達成すべく、(メタ)アクリルシラップを含む(メタ)アクリル系樹脂組成物について鋭意検討した。その結果、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体およびビニル単量体からなる(メタ)アクリルシラップに対し、ビニル単量体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成しうる熱硬化性(メタ)アクリル系重合体を添加した(メタ)アクリル系樹脂組成物が、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた硬化物を得ることができることを見い出した。
【0013】
また、上記第2の目的を達成すべく、(メタ)アクリルシラップを含む人工大理石用組成物について鋭意検討した。その結果、前記の(メタ)アクリル系樹脂組成物と充填剤とを含む人工大理石用組成物を成形することにより、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた人工大理石を得ることができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0014】
即ち、請求項1記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、およびビニル単量体からなる(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、上記ビニル単量体と共重合可能な二重結合を一分子中に少なくとも1個以上有するものであるとともに、さらに、上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体とが共重合して、硬化後の3mm厚の試験片における全光線透過率が30%以上となるように、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶する反応物を生成しうるものであることを特徴としている。
【0015】
請求項2記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の主鎖の主成分が、メタクリル酸メチル単位であることを特徴としている。
【0016】
請求項3記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重量比(熱可塑性(メタ)アクリル系重合体/熱硬化性(メタ)アクリル系重合体)が、95/5〜40/60の範囲内であることを特徴としている。
【0017】
請求項4記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が、10,000〜200,000の範囲内であり、かつ、二重結合当量が500〜30,000の範囲内であることを特徴としている。
【0018】
請求項5記載の発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物において、ビニル単量体の主成分が、メタクリル酸メチルであることを特徴としている。
【0019】
上記構成によれば、(メタ)アクリル系重合体として、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とを含み、上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が、ビニル単量体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成しうるものである。これにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐衝撃性、耐溶剤性、および耐汚染性を向上させることができる。
【0020】
また、請求項6記載の発明の人工大理石用組成物は、上記の課題を解決するために、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物と、充填剤とを含むことを特徴としている。
【0021】
請求項7記載の発明の人工大理石用組成物は、上記の課題を解決するために、請求項6記載の人工大理石用組成物において、さらに、リン酸エステルを含むことを特徴としている。
【0022】
上記構成によれば、人工大理石用組成物を成形することにより、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた人工大理石を得ることができる。
【0023】
以下に本発明を詳しく説明する。
本明細書において、「熱可塑性(メタ)アクリル系重合体」とは、主鎖の主成分が(メタ)アクリル酸エステル単位からなり、一分子中に重合性二重結合を有さない重合体を指すものとする。また、「熱硬化性(メタ)アクリル系重合体」とは、主鎖の主成分が(メタ)アクリル酸エステル単位からなり、一分子中に少なくとも1個以上の重合性二重結合を有する重合体を指すものとする。尚、「主成分」とは、50重量%以上を指すものとする。
【0024】
さらに、本明細書において、「熱硬化性(メタ)アクリル系重合体およびビニル単量体が、共重合によって熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成しうる」とは、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、およびビニル単量体からなる混合物 100重量部に対して、オクチル酸コバルト 0.1重量部と、硬化剤(商品名「328E」、化薬アクゾ株式会社製)1重量部とを添加した樹脂組成物を型内に注入し、ラジカル重合により硬化させて3mm厚の注型板としたときに、該注型板の全光線透過率が30%以上となることを指す。
【0025】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、およびビニル単量体からなる(メタ)アクリルシラップを含み、上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が、ビニル単量体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成しうるものである。
【0026】
上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が、ビニル単量体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成するためには、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、およびビニル単量体からなる混合物 100重量部に対して、t-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート(硬化剤)1重量部と、平均粒径が22μmの水酸化アルミニウム 180重量部とを添加した樹脂組成物を型内に注入し、ラジカル重合により硬化させて3mm厚の注型板としたときに、該注型板の全光線透過率が17%以上となることが好ましい。
【0027】
上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体は、主鎖の50重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル単位からなる重合体、即ち、(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含む単量体成分を重合して得られる重合体であって、一分子中に重合性二重結合を有さない重合体であればよい。
【0028】
上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜 400,000の範囲内であることが好ましく、30,000〜 250,000の範囲内であることがより好ましく、50,000〜 150,000であることが最も好ましい。熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐熱性が低下する。一方、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が 400,000を超えると、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が低下する。
【0029】
上記の熱可塑性(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含む単量体成分(以下、単に単量体成分と記す)を重合することにより得られる。
上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の塩基性(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0030】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、上記例示の化合物のうち、得られる硬化物の耐衝撃性や耐溶剤性等の物性に優れていることから、メチルメタクリレートが特に好ましい。また、単量体成分の主成分がメチルメタクリレートであることが望ましく、これにより、主鎖の主成分がメチルメタクリレート単位である熱可塑性(メタ)アクリル系重合体が得られる。熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の主鎖の主成分をメチルメタクリレート単位とすることにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐候性、透明性、表面の光沢等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上させることができる。
【0031】
尚、(メタ)アクリル酸エステルとして塩基性(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合には、塩基性(メタ)アクリル酸エステルに対して 100重量%以上の中性(メタ)アクリル酸エステルを混合して用いるのが好ましい。上記の中性(メタ)アクリル酸エステルとしては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を用いることができる。
【0032】
上記単量体成分は、カルボキシル基を含有するビニル単量体を含んでいてもよく、これにより、カルボキシル基を含有する熱可塑性(メタ)アクリル系重合体が得られる。上記カルボキシル基を含有する熱可塑性(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系樹脂組成物に、増粘剤としてアルカリ土類金属酸化物および/またはアルカリ土類金属水酸化物を添加した場合に、容易に増粘させることができる。
【0033】
上記カルボキシル基を含有する単量体(以下、カルボキシル基含有単量体と称する)としては、一分子中に、重合可能な二重結合と、カルボキシル基とを含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノエステル;長鎖カルボキシル基含有単量体等が挙げられる。上記の不飽和ジカルボン酸のモノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等が挙げられる。
【0034】
上記の長鎖カルボキシル基含有単量体としては、例えば、酸無水物を、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルでモノエステル化してなる酸無水物のモノエステル等が挙げられる。上記のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン開環付加物または2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトンの開環付加物等が挙げられる。上記酸無水物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。従って、酸無水物のモノエステルとしては、具体的には、例えば、コハク酸モノエステル、フタル酸モノエステル、ヘキサフタル酸モノエステル等が挙げられる。
これらカルボキシル基含有単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0035】
カルボキシル基含有単量体の使用量は、(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基含有単量体との合計を 100重量%として、 0.5重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、1重量%〜15重量%の範囲内であることがより好ましく、3重量%〜10重量%の範囲内であることがさらに好ましい。カルボキシル基含有単量体の割合が 0.5重量%未満の場合には、(メタ)アクリル系樹脂組成物の増粘を容易にする効果が得られにくくなる。カルボキシル基含有単量体の割合が20重量%を越える場合には、得られる硬化物の耐衝撃性、耐汚染性、耐溶剤性等の物性が低下するおそれがある。
【0036】
上記単量体成分は、さらに、必要に応じて、他の単量体として、ビニル化合物を含んでいてもよい。上記ビニル化合物としては、重合可能な二重結合を含有し、カルボキシル基を含有しない化合物であればよく、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル等のアリル化合物;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシ置換(メタ)アクリルアミド;不飽和塩基性単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系単量体等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0037】
これらビニル化合物は、一種類のみを混合してもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて混合してもよい。(メタ)アクリル酸エステルにビニル化合物を混合する場合における両者の混合割合は、ビニル化合物の種類や(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせ等にもよるが、(メタ)アクリル酸エステルとビニル化合物との合計量 100重量%に対して、ビニル化合物が少なくとも50重量%未満であればよく、20重量%未満であることがより好ましい。
【0038】
尚、単量体成分における(メタ)アクリル酸エステルの含有率は、50重量%以上であればよいが、80重量%以上であることが望ましい。
【0039】
上記単量体成分を重合させる際には、重合開始剤を使用することが望ましい。上記の重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物; 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2-フェニルアゾ -2,4-ジメチル -4-メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。単量体成分に対する重合開始剤の添加量等は、特に限定されるものではない。
【0040】
上記単量体成分を重合させる際には、単量体成分の重合反応を制御して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量を調節するために、連鎖移動剤を添加するのがより望ましい。上記連鎖移動剤としては、単量体成分の重合反応を極めて容易に制御できることから、チオール化合物が特に好適に用いられるが、特に限定されるものではなく、α−メチルスチレンダイマー、四塩化炭素等を用いることもできる。上記チオール化合物としては、具体的には、例えば、t-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス-(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4-ブタンジオールジ(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス-(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(β−チオプロピオネート)等のβ−メルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら連鎖移動剤は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0041】
連鎖移動剤の使用量は、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体に所望する平均分子量に応じて適宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、単量体成分 100重量%に対して 0.1重量%〜15重量%の範囲内が好適である。
【0042】
単量体成分の重合方法については、特に限定されるものではないが、単量体成分の重合を途中で停止させる方法、即ち、部分重合が好ましい。これにより、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と未反応の単量体成分との混合物が得られる。上記混合物は、未反応の単量体成分をビニル単量体として利用する、つまり、そのまま熱可塑性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体との混合物として使用することもできる。また、上記の混合物から未反応の単量体成分を除去すれば、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体を単離することができる。
【0043】
また、単量体成分を重合させる方法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法が挙げられるが、製造の簡便性から塊状重合が特に好ましい。懸濁重合を採用する場合には、ポリビニルアルコール等の分散安定剤を用いて、水等の分散媒中に懸濁させればよい。上記の重合を行う際の反応温度や反応時間等の反応条件は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の反応条件を採用することができる。尚、上記の重合は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。
【0044】
連鎖移動剤としてチオール化合物を添加して単量体成分の重合を行った場合、特に塊状重合の場合には、重合終了後の反応混合物に対して、残存するチオール化合物の処理を行うことが好ましい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐溶剤性や耐熱性を向上させることができる。
【0045】
上記チオール化合物を処理する方法としては、重合終了後の反応混合物に対してビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加する方法、或いは、重合終了後の反応混合物を無水マレイン酸および塩基性化合物を用いて処理する方法を用いることができる。
【0046】
上記ビニルエーテル化合物は、チオール化合物と反応可能な二重結合を有する化合物であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;2,3-ジヒドロフラン、3,4-ジヒドロフラン、2,3-ジヒドロ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ -2-メトキシ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ -2-エトキシ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ -4,4-ジメチル-2H-ピラン -2-オン等の環状エーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらビニルエーテル化合物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0047】
ビニルチオエーテル化合物は、チオール化合物と反応可能な二重結合を有する化合物であればよく、特に限定されない。上記のビニルチオエーテル化合物としては、前記例示のビニルエーテル化合物の酸素原子を硫黄原子に置き換えてなる化合物を用いることができる。即ち、前記例示のビニルエーテル化合物に対応する脂肪族ビニルチオエーテル;シクロアルキルビニルチオエーテル;環状チオエーテル等を用いることができる。これらビニルチオエーテル化合物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0048】
ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量は、樹脂組成物を調製する際に添加されたチオール化合物の量に対して 0.5倍モル〜5倍モルの範囲内が好ましく、 0.8倍モル〜3倍モルの範囲内がより好ましい。
【0049】
ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量が 0.5倍モル未満である場合には、チオール化合物が完全に処理されないことがある。処理後の反応混合物中にチオール化合物が残存すると、得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させるのに長時間を有すると共に、硬化物の平均分子量が大きくならない。一方、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量が5倍モルを越える場合には、得られる硬化物の耐候性が低下するおそれがある。
【0050】
上記チオール化合物の処理を行う際の処理温度や処理時間等の処理条件は、単量体成分の組成等に応じて決定すればよく、特に限定されるものではない。また、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の添加方法は、重合後の反応混合物にビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加する方法であってもよく、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物に重合後の反応混合物を添加する方法であってもよい。
【0051】
上記ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を用いたチオール化合物の処理は、ルイス酸、アミン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、金属塩等の触媒の存在下で行ってもよい。これにより、チオール化合物が有するメルカプト基と、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物との反応を促進することができる。また、上記樹脂組成物の処理を行う際には、溶媒を用いることができる。上記溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。
【0052】
上記の塩基性化合物としては、具体的には、例えば、メチルアミン、エチルアミン等の一級アミン;ジメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン;トリメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン;ジアザ化合物;トリアゾール化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら塩基性化合物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。塩基性化合物は、重合時に添加するチオール化合物に対して0.01倍モル〜 1.5倍モルの範囲内で使用することが好ましく、0.03倍モル〜 1.2倍モルの範囲内で使用することがより好ましい。
【0053】
上記の塩基性化合物と併用される無水マレイン酸は、重合時に添加するチオール化合物に対して 0.5倍モル〜 3.0倍モルの範囲内で使用することが好ましく、 0.7倍モル〜 2.8倍モルの範囲内で使用することがより好ましい。
【0054】
重合時に添加するチオール化合物に対する塩基性化合物の使用量が0.01倍モル未満である場合、或いは、無水マレイン酸の使用量が 0.5倍モル未満である場合には、チオール化合物が完全に処理されないことがあるので好ましくない。処理後の反応混合物にチオール化合物が残存すると、(メタ)アクリル系樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させるのに長時間を有すると共に、硬化物の平均分子量が大きくならない。
【0055】
重合時に添加するチオール化合物に対する塩基性化合物の使用量が 1.5倍モルを越える場合には、得られる硬化物の耐候性が低下するので好ましくない。また、重合時に添加するチオール化合物に対する無水マレイン酸の使用量が 3.0倍モルを越える場合には、得られる硬化物の耐水性が低下するので好ましくない。
【0056】
尚、上記チオール化合物の処理を行う際の処理温度や処理時間等の処理条件は、特に限定されるものではない。例えば、重合後の反応混合物に無水マレイン酸および塩基性化合物を混合して攪拌するだけで、チオール化合物を処理することができる。
【0057】
次に、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体について説明する。
上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体は、主鎖の50重量%以上が(メタ)アクリル酸エステル単位からなり、後述するビニル単量体と共重合可能な二重結合を一分子中に少なくとも1個以上有する重合体であって、後述するビニル単量体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成しうるものであればよい。
【0058】
熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、10,000〜 200,000の範囲内であることが好ましく、30,000〜 150,000の範囲内であることがより好ましく、40,000〜 100,000であることが最も好ましい。熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が10,000未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐熱性が低下する。一方、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が 200,000を超えると、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が低下する。
【0059】
また、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、得られる硬化物の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
【0060】
熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量、即ち、重合性二重結合1個当たりの分子量は、 500〜30,000の範囲内であることが好ましく、 2,000〜10,000の範囲内であることがより好ましく、 3,000〜 7,000であることが最も好ましい。熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量が 500未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の架橋密度が高すぎて、該硬化物が脆くなる。即ち、硬化物の耐衝撃性が低下する。一方、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量が30,000を超えると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させることにより得られる硬化物の架橋密度が低すぎ、該硬化物が耐熱性に劣る。
【0061】
そして、重量平均分子量(Mw)が10,000〜 200,000の範囲内であり、かつ、二重結合当量が 500〜30,000の範囲内である熱硬化性(メタ)アクリル系重合体を用いることにより、耐熱性や耐衝撃性等の物性に優れた硬化物が得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することができる。
【0062】
上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体としては、重合性二重結合を有する側鎖がエステル結合を介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリル系重合体がより好ましい。
【0063】
重合性二重結合を有する側鎖がエステル結合を介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリル系重合体は、カルボキシル基含有重合体と不飽和エポキシ化合物とを反応させる方法によって効率的に製造することができる。上記方法によれば、カルボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基に対し、不飽和エポキシ化合物が有するエポキシ基が反応してエポキシ基が開環し、重合性二重結合を有する側鎖がエステル結合を介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が得られる。
【0064】
上記のカルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系重合体としては、前述した(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基含有単量体とを含む単量体成分を重合することにより得られた熱可塑性(メタ)アクリル系重合体を用いることができる。上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の製造時におけるカルボキシル基含有単量体の使用量は、前述の範囲内で、不飽和エポキシ化合物を反応させることによって所望量の重合性二重結合が導入されるように調節すればよい。
【0065】
上記不飽和エポキシ化合物は、カルボキシル基と反応可能なエポキシ基と、重合性の二重結合とを有する化合物であればよい。上記不飽和エポキシ化合物としては、具体的には、アリルグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート;エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0066】
上記不飽和エポキシ化合物の使用量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体の製造に用いたカルボキシル基含有単量体に対して 0.5倍モル〜2倍モルの範囲内が好ましく、 0.8倍モル〜 1.5倍モルの範囲内がより好ましい。
【0067】
上記カルボキシル基含有重合体と不飽和エポキシ化合物との反応は、触媒の存在下で行うことが望ましい。上記触媒としては、上記の反応を促進することができるものであればよく、無機金属化合物、オキソ酸金属塩、ポリオキソ酸金属塩、有機金属化合物、有機酸金属塩、金属錯塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、4級ホスホニウム塩等を用いることができる。
【0068】
上記触媒としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する金属化合物(以下、単に金属化合物と記す)が特に好ましい。
【0069】
上記金属化合物は、触媒活性が高く、主にカルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体が有するカルボキシル基と不飽和エポキシ化合物との反応を促進することができ、また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を着色させることがない。さらに、上記金属化合物を用いることにより、触媒による(メタ)アクリル系樹脂組成物の貯蔵安定性の低下を防止することができる。
【0070】
上記金属化合物としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有する無機金属化合物、オキソ酸金属塩、ポリオキソ酸金属塩、有機金属化合物、有機酸金属塩、金属錯塩等を用いることができる。
【0071】
上記無機金属化合物としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ化物等の金属ハロゲン化物;金属酸化物、金属硫化物等の金属カルコゲン化物;金属窒化物;金属リン化物;金属砒化物;金属炭化物;金属ケイ化物;金属ホウ化物;金属シアン化物;金属水酸化物;金属塩化酸化物等を用いることができる。上記無機金属化合物としては、具体的には、塩化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化スズ等が挙げられる。
【0072】
上記オキソ酸金属塩としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の硫酸金属塩、硝酸金属塩、リン酸金属塩、ホスフィン酸金属塩、ホスホン酸金属塩、メタリン酸金属塩、ホウ酸金属塩、塩素酸金属塩、臭素酸金属塩、ヨウ素酸金属塩、ケイ酸金属塩等を用いることができる。上記オキソ酸金属塩としては、具体的には、硫酸スズ、リン酸亜鉛、硝酸ジルコニウム等が挙げられる。尚、オキソ酸金属塩には、リン酸水素亜鉛のような水素塩も含まれるものとする。
【0073】
上記ポリオキソ酸金属塩としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属のポリリン酸金属塩、ポリホウ酸金属塩、ポリニオブ酸金属塩、ポリタンタル酸金属塩、ポリモリブデン酸金属塩、ポリバナジン酸金属塩、ポリタングステン酸金属塩等を用いることができる。上記ポリオキソ酸金属塩としては、具体的には、ポリリン酸亜鉛等が挙げられる。
【0074】
上記有機金属化合物としては、一般式(1)
M−(R)n …(1)
(上記式中、Mは、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる1つの元素であり、Rは、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ等の有機基であり、nは1〜6の整数である。)
で表される有機金属化合物を用いることができる。上記有機金属化合物としては、具体的には、ジエチル亜鉛、テトラエトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0075】
上記有機酸金属塩としては、金属石鹸を用いることができる。上記金属石鹸としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の脂肪酸金属塩(ラウリル酸金属塩、ミリスチン酸金属塩、パルミチン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、オレイン酸金属塩等)、ナフテン酸金属塩、オクチル酸金属塩、スルホン酸金属塩、硫酸エステル金属塩、リン酸エステル金属塩等を用いることができる。上記金属石鹸としては、具体的には、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸スズ等が挙げられる。
【0076】
上記有機酸金属塩は、金属石鹸以外であってもよい。金属石鹸以外の有機酸金属塩としては、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属の酢酸金属塩、安息香酸金属塩、サリチル酸金属塩、シュウ酸金属塩、酒石酸金属塩、乳酸金属塩、クエン酸金属塩等を用いることができる。金属石鹸以外の有機酸金属塩としては、具体的には、酢酸亜鉛、サリチル酸スズ等が挙げられる。
【0077】
上記金属錯塩としては、一般式(2)
M−(L)n …(2)
(上記式中、Mは、Zn、SnおよびZrからなる群より選ばれる1つの元素であり、Lは、アセチルアセトン等の配位子、nは1〜6の整数である。)
で表される金属錯塩を用いることができる。上記有機金属化合物としては、具体的には、アセチルアセトン亜鉛等が挙げられる。
【0078】
上記触媒の使用量は、その種類やカルボキシル基含有重合体等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有重合体 100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部の範囲内が好ましく、 0.1重量部〜3重量部の範囲内がより好ましい。
【0079】
上記のエステル化反応を行う際には、重合禁止剤を共存させてもよい。上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、 tert-ブチルハイドロキノン等を用いることができる。上記エステル化反応を行う際には、溶媒を用いることができる。上記溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。
【0080】
また、上記エステル化反応において、カルボキシル基含有重合体、不飽和エポキシ化合物、触媒等を混合する順序や方法は、特に限定されるものではない。
【0081】
以上のようにして、エステル結合を介して重合性二重結合が導入された熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が得られる。
【0082】
尚、エステル結合を介して重合性二重結合が導入された熱硬化性(メタ)アクリル系重合体を得る方法は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル系重合体に対し、そのエポキシ基に前記のカルボキシル基含有単量体を反応させる方法であってもよい。
【0083】
また、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体は、ヒドロキシル基を含有する熱可塑性(メタ)アクリル系重合体に、重合性二重結合を有する不飽和イソシアネート化合物を添加して、上記ヒドロキシル基をウレタン化することによって得られたものであってもよい。
【0084】
上記のヒドロキシル基を含有する熱可塑性(メタ)アクリル系重合体は、ヒドロキシル基を含有する単量体を含む単量体成分を重合することにより得られる熱可塑性(メタ)アクリル系重合体である。上記ヒドロキシル基を含有する単量体としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のようなグリコールのモノ(メタ)アクリレート;多価アルコールのジ(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0085】
また、上記の不飽和イソシアネート化合物としては、例えば、m-イソプロペニル- α, α- ジメチルベンジルイソシアネート;上記例示のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリレートと、トリレンジイソシアネート等の多価イソシアネートとの反応生成物;イソシアナートエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0086】
本発明において、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重量比は、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性や耐衝撃性等の物性を向上させるうえで重要である。
【0087】
熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重量比(熱可塑性(メタ)アクリル系重合体/熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重量比)は、95/5〜40/60の範囲内であることが好ましく、90/10〜60/40の範囲内であることがより好ましく、85/15〜70/30の範囲内であることが最も好ましい。
【0088】
上記重量比が95/5を超える場合、即ち、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との合計量 100重量部に対して、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が5重量部未満である場合には、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の耐熱性が低下する。
【0089】
一方、上記重量比が40/60未満である場合、即ち、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との合計量 100重量部に対して、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が60重量部を超える場合には、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化物が脆くなる。即ち、硬化物の耐衝撃性が低下する。
【0090】
また、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重量比を上記範囲内にするとともに、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)を10,000〜 200,000の範囲内とすることにより、得られる硬化物の耐衝撃性をより一層向上させることができる。
【0091】
次に、ビニル単量体について説明する。
上記ビニル単量体は、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と共重合可能な二重結合を一分子中に少なくとも1個以上有し、かつ、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成しうるものであればよい。
【0092】
上記ビニル単量体としては、具体的には、前記の(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有単量体、ビニル化合物等が挙げられる。ビニル単量体は、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との共重合によって熱可塑性(メタ)アクリル系重合体に対して相溶な反応物を与えるために、主成分が(メタ)アクリル酸エステルであることが好ましく、主成分がメチルメタクリレートであることがさらに好ましい。また、ビニル単量体における(メタ)アクリル酸エステルの含有率は、80重量%以上であることがより好ましい。
【0093】
上記(メタ)アクリル酸エステルとしては、メタクリル酸アルキルエステルが特に好ましく、さらに、メタクリル酸アルキルエステルとしては、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-プロピルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、s-ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレートが特に好ましい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物の耐候性、透明性、表面の光沢等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上させることができる。これらビニル単量体は、単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、上記ビニル単量体は、前記単量体成分と同じであってもよく、異なっていてもよい。
【0094】
熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、およびビニル単量体の合計量 100重量%に対するビニル単量体の比率は、20重量%〜80重量%の範囲内であることが好ましく、40重量%〜70重量%の範囲内であることがより好ましく、45重量%〜60重量%の範囲内であることがさらに好ましい。ビニル単量体の比率が20重量%未満である場合には、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、成形作業等の作業性が悪くなる。一方、ビニル単量体の比率が80重量%を超える場合には、(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化時の収縮が大きくなるため、好ましくない。
【0095】
以上のように、本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、およびビニル単量体からなる混合物(以下、(メタ)アクリルシラップと称する)を含み、上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が、ビニル単量体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成しうるものである。
【0096】
尚、(メタ)アクリルシラップを調製する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体との混合物と、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体の混合物とをそれぞれ調製した後、両混合物を混合する方法;熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体との混合物を調製した後、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体を混合する方法;熱可塑性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体との混合物を調製した後、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体を混合する方法等が挙げられる。
【0097】
また、これらの方法において、(メタ)アクリル系重合体(熱硬化性(メタ)アクリル系重合体または熱可塑性(メタ)アクリル系重合体)とビニル単量体との混合物は、(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体とを混合することにより調製したものであってもよく、また、単量体成分を部分重合させて得られた(メタ)アクリル系重合体と未反応の単量体成分との混合物であってもよい。
【0098】
本発明にかかる(メタ)アクリル系樹脂組成物は、シートモールディングコンパウンド(以下、SMCと記す)やバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCと記す)、プレミックス材料、注型材料、引抜き材料、射出成形材料、押出し成形材料等の成形材料として特に好適である。
【0099】
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、成形材料として用いられる場合、さらに、必要に応じて、増粘剤や、コハク酸誘導体、補強材等を含んでいてもよい。尚、以下の説明においては、(メタ)アクリル系樹脂組成物における補強材以外の成分をコンパウンドと称することにする。
【0100】
上記の増粘剤としては、具体的には、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。増粘剤の使用量は、その種類や(メタ)アクリルシラップとの組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途等にもよるが、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、5重量部以下の範囲内が好ましい。上記の範囲内で増粘剤を使用することにより、コンパウンドの増粘後の粘度を、成形作業等に好適な所定の値に設定することができる。増粘剤の使用量が5重量部よりも多い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が低下すると共に、得られる成形品の耐候性および耐水性が低下するおそれがある。
【0101】
上記のコハク酸誘導体は、増粘剤による過剰な増粘挙動、特に初期の増粘挙動を抑制する働きを備えている。コハク酸誘導体は、分子内にコハク酸骨格またはコハク酸無水物骨格を備え、かつ、該骨格のエチレン基部分に、アルキル基、アルケニル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の置換基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、全炭素数が8〜30である化合物が好ましい。全炭素数が7以下のコハク酸誘導体は、(メタ)アクリルシラップに対する溶解性に劣る。また、全炭素数が31以上のコハク酸誘導体は、該コハク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効果が低い。
【0102】
コハク酸誘導体としては、具体的には、例えば、ヘキシルコハク酸、ヘプチルコハク酸、オクチルコハク酸、ノニルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ペンタデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、ヘプタデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、ペンタドデシルコハク酸、エイコシルコハク酸等の炭素数が4以上のアルキル基を有する化合物;ヘキセニルコハク酸、ヘプテニルコハク酸、オクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘプタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、ペンタドデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸等のアルケニル基を有する化合物;シクロドデシルコハク酸、シクロドデセニルコハク酸等の脂環式炭化水素基を有する化合物;ジフェニルブテニルコハク酸等の芳香族炭化水素基を有する化合物;およびこれらコハク酸の無水物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらコハク酸誘導体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、コハク酸誘導体の調製方法は、特に限定されるものではない。
【0103】
コハク酸誘導体の添加量は、その種類や、(メタ)アクリルシラップおよび増粘剤等との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途等にもよるが、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の範囲内が好ましい。コハク酸誘導体の添加量が0.01重量部よりも少ない場合には、コハク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効果が乏しくなるおそれがある。コハク酸誘導体の添加量が10重量部よりも多い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が、成形作業等に好適な所定の値に達しないか、若しくは達するまでに長時間を有するおそれがある。
【0104】
上記の補強材としては、具体的には、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミドやポリエステル等からなる有機繊維;天然繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、例えば、ロービング、クロス、マット、織物、チョップドロービング、チョップドストランド等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら補強材は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。補強材の使用量は、その種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0105】
また、補強材とコンパウンドとを混合する方法は、特に限定されるものではなく、該補強材の形態に応じて適宜設定すればよい。例えば、補強材の形態がマットやクロス等である場合には、該補強材にコンパウンドを含浸させればよい。また、例えば、補強材の形態がロービングやチョップトストランド等である場合には、該補強材とコンパウンドとを混練すればよい。補強材を含む(メタ)アクリル系樹脂組成物は、例えば、SMCやBMCとして好適である。
【0106】
上記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、硬化剤を含んでいることが望ましく、また、必要に応じて、架橋性単量体、添加剤等をさらに含んでいてもよい。
【0107】
上記の硬化剤としては、例えば、(メタ)アクリルシラップを製造する際に用いられる前記例示の重合開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。硬化剤の添加量は、その種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、 0.1重量部〜5重量部の範囲内が好適である。
【0108】
上記の架橋性単量体は、硬化物の架橋密度を増加させる働きを備えている。架橋性単量体は、(メタ)アクリルシラップに含まれる官能基と反応する官能基を複数含有する化合物であればよい。該架橋性単量体としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。架橋性単量体の添加量は、その種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0109】
上記の添加剤としては、一般に用いられている各種の添加剤を採用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、(内部)離型剤、着色剤、重合禁止剤等が挙げられる。これら添加剤は、例えば、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて適宜添加すればよい。また、添加剤の添加量は、該添加剤の種類や(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0110】
離型剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アミド、トリフェニルホスフェート、アルキルホスフェート;一般に用いられているワックス類、シリコーンオイル等の離型剤等が挙げられる。着色剤としては、公知の無機顔料や有機顔料が挙げられる。
【0111】
なお、(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形する方法は、特に限定されるものではなく、種々の成形方法に適用可能である。また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を成形してなる成形品としては、例えば、いわゆる採光ドーム、ベンチ、テーブル、タンク、広告板、防水板等の、屋外で使用される各種物品;浄化槽、自動車、鉄道車両、船舶等を構成する構成材;屋根・壁等の、構造物の外装材;電気部品等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0112】
本発明にかかる人工大理石用組成物は、上記の(メタ)アクリル系樹脂組成物と、充填剤とを含んでいる。
【0113】
上記充填剤としては、特に限定されるものではなく、例えば、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラスパウダー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉等の無機系充填剤、および、ポリマービーズ等の有機系充填剤が挙げられる。上記例示の充填剤のうち、水酸化アルミニウム、シリカ、およびガラスパウダーからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機系充填剤が特に好ましい。上記例示の充填剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、充填剤の平均粒径等の形態は、特に限定されるものではない。
【0114】
充填剤の配合量は、その種類や(メタ)アクリル系樹脂組成物等との組み合わせ、人工大理石用組成物を成形することにより得られる人工大理石の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、(メタ)アクリル系樹脂組成物 100重量部に対して、50重量部〜 400重量部の範囲内がより好ましく、 100重量部〜 300重量部の範囲内がさらに好ましく、 150重量部〜 250重量部の範囲内が最も好ましい。充填剤の配合量が50重量部未満であると、人工大理石用組成物を成形することにより得られる人工大理石の表面硬度や剛性が不充分となる。一方、充填剤の配合量が 400重量部を超えると、人工大理石用組成物の粘度が高くなりすぎ、成形作業等の作業性が悪くなるうえ、人工大理石用組成物を成形することにより得られる人工大理石の強度が低下する。
【0115】
上記人工大理石用組成物は、さらに、(メタ)アクリル系樹脂組成物と充填剤との界面の活性を向上させるために、カップリング剤(界面改質剤)を含んでいてもよく、これにより、該人工大理石用組成物を成形することにより得られる人工大理石の耐衝撃性、強度、耐水性等の物性を向上させることができる。
【0116】
上記カップリング剤としては、具体的には、リン酸エステル、シラン系カップリング剤、クロム系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤等が挙げられ、これらの一種を単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0117】
上記カップリング剤としては、該人工大理石用組成物を成形することにより得られる人工大理石の耐衝撃性を向上させる効果に優れていることから、リン酸エステルが特に好ましい。上記リン酸エステルは、下記一般式(3)
【0118】
【化1】
【0119】
(上記式中、R1 、R2 、R3 は、それぞれ独立して有機基を表す。)
で表される化合物であればよく、特に限定されるものではないが、上記リン酸エステルとしては、長鎖アルキル基のような(メタ)アクリル系樹脂組成物との親和性が高い官能基、或いは、重合性二重結合、エポキシ基、アミノ基等のような(メタ)アクリル系樹脂組成物に対する反応性を有する官能基を含んでいることが望ましい。(メタ)アクリルシラップに対する反応性を有する官能基を含むリン酸エステルとしては、具体的には、例えば、リン酸トリメタクリルが挙げられる。
【0120】
また、リン酸エステルは、水酸化アルミニウム、シリカ、およびガラスパウダーからなる群より選ばれる少なくとも1種の無機系充填剤と組み合わせることにより、人工大理石の耐衝撃性を向上させる効果が大きい。
【0121】
上記カップリング剤の使用量は、充填剤 100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部の範囲内がより好ましく、 0.1重量部〜3重量部の範囲内がさらに好ましく、 0.5〜2重量部の範囲内が最も好ましい。カップリング剤の使用量が、0.01重量部未満であると、カップリング剤を使用することにより得られる効果、即ち、該人工大理石用組成物を成形することにより得られる人工大理石の強度、耐水性等の物性を向上させる効果が発現されなくなる。また、カップリング剤の使用量が、5重量部を超えても、カップリング剤を使用することにより得られる効果が向上しないため、経済的な面から好ましくない。
【0122】
上記の人工大理石用組成物は、さらに、必要に応じて、(メタ)アクリル系樹脂組成物と充填剤との混練時の粘度を低下させ、(メタ)アクリル系樹脂組成物に対する充填剤のなじみ(濡れ性)を向上させるために、湿潤剤(減粘剤)を含んでいてもよい。
【0123】
上記湿潤剤としては、例えば、カルボキシル基を有する飽和ポリエステル(例えば、BYKケミー株式会社製の「W−995」、「W−996」、「W−9010」)、高分子ポリカルボン酸のアルキルアンモニウム塩(例えば、BYKケミー株式会社製の「W−960」)、カルボキシル基を有する極性のエステルと長鎖ポリアミノアミドとの塩(例えば、BYKケミー株式会社製の「W−965」)、カルボキシル基を有する飽和ポリエステルの部分中和物(例えば、BYKケミー株式会社製の「W−990」)等が挙げられる。
【0124】
上記湿潤剤の使用量は、充填剤 100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部の範囲内がより好ましく、 0.1重量部〜3重量部の範囲内がさらに好ましく、 0.5〜2重量部の範囲内が最も好ましい。湿潤剤の使用量が、0.01重量部未満であると、湿潤剤を使用することにより得られる効果、即ち、(メタ)アクリル系樹脂組成物に対する充填剤のなじみ(濡れ性)を向上させる効果が発現されなくなる。また、湿潤剤の使用量が、5重量部を超えても、湿潤剤を使用することにより得られる効果が向上しないため、経済的な面から好ましくない。
【0125】
上記の人工大理石用組成物は、SMC、BMC、注型材料等として特に好適である。SMCは、いわゆるSMC製造装置を用いて容易に製造することができる。BMCは、双腕型ニーダ等の混練機を用いて容易に製造することができる。注型材料は、混合機を用いて容易に製造することができる。そして、SMCやBMCは、例えば60℃〜 160℃で加熱・加圧成形(プレス成形)することにより成形品とされる。また、注型材料は、例えば室温〜70℃でセル内に注入(注型)することにより成形品とされる。尚、人工大理石用組成物の成形方法は、特に限定されるものではなく、種々の成形方法に適用可能である。
【0126】
上記の人工大理石用組成物を成形してなる人工大理石は、各種用途に用いることができるが、バスタブやキッチンカウンタとして特に好適である。
【0127】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示し、「%」は、「重量%」を示す。
まず、以下の実施例および比較例で用いた熱可塑性重合体とビニル単量体との混合物としての熱可塑型シラップ(1)〜(8)について説明する。
【0128】
〔熱可塑型シラップ(1)の製造〕
熱可塑性(メタ)アクリル系重合体としてのポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量13.5万)を、固形分濃度が35%(即ち、単量体の濃度が65%) となるようにビニル単量体としてのメタクリル酸メチルに溶解させた。これにより、熱可塑型シラップ(1)を得た。
【0129】
〔熱可塑型シラップ(2)の製造〕
メタクリル酸メチル80%とスチレン20%とからなる単量体成分を重合してなる熱可塑性(メタ)アクリル系重合体としてのメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(重量平均分子量 7.0万)を、固形分濃度が35%となるようにメタクリル酸メチルに溶解させた。これにより、熱可塑型シラップ(2)を得た。
【0130】
〔熱可塑型シラップ(3)の製造〕
メタクリル酸メチル60%とスチレン40%とからなる単量体成分を重合してなる熱可塑性(メタ)アクリル系重合体としてのメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(重量平均分子量16.0万)を、固形分濃度が35%となるようにメタクリル酸メチルに溶解させた。これにより、熱可塑型シラップ(3)を得た。
【0131】
〔熱可塑型シラップ(4)の製造〕
メタクリル酸メチル30%とスチレン70%とからなる単量体成分を重合してなる比較用の熱可塑性重合体としてのメタクリル酸メチル−スチレン共重合体(重量平均分子量24.0万)を、固形分濃度が35%となるようにメタクリル酸メチルに溶解させた。これにより、比較用の熱可塑型シラップ(3)を得た。
【0132】
〔熱可塑型シラップ(5)の製造〕
比較用の熱可塑性重合体としてのポリスチレン(重量平均分子量18.0万)を、固形分濃度が35%となるようにメタクリル酸メチルに溶解させた。これにより、比較用の熱可塑型シラップ(5)を得た。
【0133】
〔熱可塑型シラップ(6)の製造〕
ポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量13.5万)を、固形分濃度が35%となるようにビニル単量体としてのスチレンに溶解させた。これにより、熱可塑型シラップ(6)を得た。
【0134】
〔熱可塑型シラップ(7)の製造〕
まず、冷却器、温度計、窒素ガス導入管、および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメタクリル酸メチル 190部と、カルボキシル基含有単量体としてのメタクリル酸10部とを仕込み、反応器内を窒素置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温した後、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン 1.5部と、重合開始剤としての 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.01部とを投入して、80℃で重合を行った。
【0135】
そして、反応液の固形分濃度が40%に達したところで空気を吹き込み、重合禁止剤としてのハイドロキノン0.01部を添加して重合を停止させた。重合反応終了後、メタクリル酸メチルを追加して、固形分濃度が35%となるように調整した。
【0136】
次いで、得られた反応混合物に、無水マレイン酸1.05部と、トリエチルアミン0.06部とを添加して、反応混合物中に残存するn-ドデシルメルカプタンを処理した。上記の無水マレイン酸は、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して 1.4倍モルとなるように添加した。また、上記のトリエチルアミンは、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して0.08倍モルとなるように添加した。これにより、熱可塑型シラップ(7)を得た。
【0137】
得られた熱可塑型シラップ(7)は、25℃での粘度が4ポイズ、酸価が18であった。また、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した熱可塑型シラップ(7)中の熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、38,000であった。また、熱可塑型シラップ(7)中に残存する単量体成分の組成比をGPCチャートにより分析したところ、仕込んだ単量体成分の組成比(仕込み比)とほぼ同じであることが分かった。
【0138】
〔熱可塑型シラップ(8)の製造〕
まず、冷却器、温度計、窒素ガス導入管、および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメタクリル酸メチル 177部、ビニル化合物としてのスチレン20部、およびカルボキシル基含有単量体としてのメタクリル酸3部を仕込み、反応器内を窒素置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温した後、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン 1.5部と、重合開始剤としての 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.01部とを投入して、80℃で重合を行った。
【0139】
次いで、得られた反応混合物に、無水マレイン酸1.05部と、トリエチルアミン0.06部とを添加して、反応混合物中に残存するn-ドデシルメルカプタンを処理した。上記の無水マレイン酸は、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して 1.4倍モルとなるように添加した。また、上記のトリエチルアミンは、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して0.08倍モルとなるように添加した。
【0140】
そして、固形分濃度が40%に達したところで空気を吹き込み、重合禁止剤としてのハイドロキノン0.01部を添加して重合を停止させた。重合反応終了後、メタクリル酸メチルを追加して、固形分濃度が35%となるように調整した。これにより、熱可塑型シラップ(8)を得た。
【0141】
得られた熱可塑型シラップ(8)は、25℃での粘度が4ポイズ、酸価が10であった。また、GPCにより測定した熱可塑型シラップ(8)中の熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量は、40,000であった。また、熱可塑型シラップ(8)中に残存する単量体成分の組成比をGPCチャートにより分析したところ、仕込んだ単量体成分の組成比(仕込み比)とほぼ同じであることが分かった。
熱可塑型シラップ(1)〜(8)の製造における反応条件および結果を表1にまとめた。
【0142】
【表1】
【0143】
次に、以下の実施例および比較例で用いた熱硬化性重合体とビニル単量体との混合物としての熱硬化型シラップ(A)〜(E)について説明する。
【0144】
〔熱硬化型シラップ(A)の製造〕
温度計、冷却器、窒素ガス導入管、および攪拌機を備えた反応器に、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメタクリル酸メチル 188部と、カルボキシル基含有単量体としてのメタクリル酸12部とを仕込んだ後、反応器内を窒素ガス置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温した後、連鎖移動剤としてのn-ドデシルメルカプタン 1.5部と、重合開始剤としての 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル0.03部とを投入して、80℃で重合を行った。反応器内の混合物の固形分濃度が47%に達したところで、重合禁止剤としてのハイドロキノン0.04部を添加して重合を停止した。これにより、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップを得た。
【0145】
次に、上記カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップに、不飽和エポキシ化合物としてのメタクリル酸グリシジル20部と、エステル化触媒としてのオクチル酸亜鉛0.05部とを添加した後、反応温度を100 ℃に上昇させて、空気雰囲気下で 8.5時間かけてエステル化反応を行った。エステル化反応終了後、メタクリル酸メチルを追加して固形分濃度が35%(即ち、単量体の濃度が65%) となるように調整した。これにより、熱硬化型シラップ(A)を得た。
【0146】
得られた熱硬化型シラップ(A)は、25℃での粘度が6ポイズ、酸価が20であった。また、GPCを用いて測定した熱硬化型シラップ(A)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、43,000であった。さらに、熱硬化型シラップ(A)中の単量体成分をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、単量体成分の80%以上がメタクリル酸メチルであることが分かった。
【0147】
また、熱硬化型シラップ(A)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量を、以下のようにして測定した。まず、メタクリル酸グリシジルを反応させる前後の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の酸価の差を測定したところ、21であった。この酸価の差から、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体1g当たりにおける消失したカルボキシル基のモル数を算出し、これを熱硬化性(メタ)アクリル系重合体1g中の重合性二重結合基のモル数とした。そして、この値の逆数を、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量とした。上記の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体では、二重結合当量が 6,100であった。
【0148】
〔熱硬化型シラップ(B)の製造〕
n-ドデシルメルカプタンの量を 1.5部から 0.7部に変更する以外は、熱硬化型シラップ(A)の製造と同様にして、固形分濃度35%の熱硬化型シラップ(B)を得た。
【0149】
GPCを用いて測定した熱硬化型シラップ(B)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、 150,000であった。また、熱硬化型シラップ(B)中の単量体成分をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、単量体成分の80%以上がメタクリル酸メチルであることが分かった。さらに、熱硬化型シラップ(B)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量を前述の方法で測定したところ、 6,100であった。
【0150】
〔熱硬化型シラップ(C)の製造〕
n-ドデシルメルカプタンの量を 1.5部から 0.1部に変更する以外は、熱硬化型シラップ(A)の製造と同様にして、固形分濃度35%の熱硬化型シラップ(C)を得た。
【0151】
GPCを用いて測定した熱硬化型シラップ(C)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、 300,000であった。また、熱硬化型シラップ(C)中の単量体成分をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、単量体成分の80%以上がメタクリル酸メチルであることが分かった。さらに、熱硬化型シラップ(C)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量を前述の方法で測定したところ、 9,000であった。
【0152】
〔熱硬化型シラップ(D)の製造〕
n-ドデシルメルカプタンの量を 1.5部から30部に変更する以外は、熱硬化型シラップ(A)の製造と同様にして、固形分濃度35%の熱硬化型シラップ(D)を得た。
【0153】
GPCを用いて測定した熱硬化型シラップ(D)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、 7,000であった。また、熱硬化型シラップ(D)中の単量体成分をガスクロマトグラフィーにより分析したところ、単量体成分の80%以上がメタクリル酸メチルであることが分かった。さらに、熱硬化型シラップ(D)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量を前述の方法で測定したところ、 6,100であった。
【0154】
〔熱硬化型シラップ(E)の製造〕
熱硬化型シラップ(A)を、アセトンに溶解した後に大量のメタノール中に投入することにより、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体のみを再沈澱させた。さらに、この再沈澱の作業を2回繰り返し、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体を精製した。
【0155】
次いで、精製後の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体をビニル単量体としてのスチレンに溶解させ、固形分濃度が35%となるように調整した。これにより、比較用の熱硬化型シラップ(E)を得た。
【0156】
得られた熱硬化型シラップ(E)は、25℃での粘度が7ポイズ、酸価が20であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した熱硬化型シラップ(E)中の熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、49,000であった。さらに、上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量を前述の方法で測定したところ、7,000 であった。
【0157】
熱硬化型シラップ(A)〜(E)の製造における反応条件および結果を表2にまとめた。
【0158】
【表2】
【0159】
〔実施例1〕
まず、熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部に対して、オクチル酸コバルト 0.1部と、硬化剤(商品名「328E」、化薬アクゾ株式会社製)1部とを添加して、真空脱気を行うことにより、樹脂組成物を得た。
【0160】
上記樹脂組成物を、3mm厚のガスケットを2枚のガラス板で挟んで作製したセル中に流し込み、室温で12時間かけて硬化させた後、 110℃で2時間加熱して後硬化させて、試験片(以下、樹脂板と称する)を得た。この樹脂板の全光線透過率を、濁度計(日本電色工業株式会社製、商品名「SZ−SIGMA90」)で測定したところ、85.0%であった。
【0161】
また、熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部に対して、平均粒子径が22μmの球状の水酸化アルミニウム 180部(昭和電工株式会社製、商品名「ハイジライトHS−310」)と、硬化剤としてのt-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート(化薬アクゾ株式会社製、商品名「カヤエステルO」)1部とを添加して、真空脱気を行うことにより、コンパウンドを得た。
【0162】
次いで、上記のコンパウンドを、3mm厚のシリコンゴム製ガスケットを2枚のガラス板で挟んで作製したセル中に流し込み、80℃で 1.5時間加熱して硬化させた。これにより、試験片(以下、充填剤入り樹脂板と称する)を得た。この充填剤入り樹脂板の全光線透過率を、濁度計(日本電色工業株式会社製、商品名「SZ−SIGMA90」)で測定したところ、27.4%であった。
【0163】
さらに、上記のコンパウンドに、シラン系カップリング剤(信越化学株式会社製、商品名「KBM503」) 1.8部を添加したものを真空脱気することにより、本発明にかかる人工大理石用組成物を得た。上記の人工大理石用組成物を厚み13mmの型に注入し、80℃で 1.5時間加熱して硬化させることにより、大理石調の成形品(人工大理石)を得た。
【0164】
得られた成形品の荷重たわみ温度(熱変形温度)をJIS K 7207に準ずる方法で測定したところ、 112℃であった。また、上記成形品のシャルピー衝撃強度をJIS K 7111に準ずる方法で測定したところ、6.9 kg・cm/cm2であった。
【0165】
また、この成形品の耐汚染性の評価として、成形品上に各種の汚染物質を24時間放置した後、水、中性洗剤、およびクレンザーで洗浄し、成形品の光沢、着色、クラックの有無等の外観の変化を、目視により、「良好」、「やや不良」、「不良」の三段階で評価した。汚染物質としては、醤油、ソース、コーヒー、ヘアトニック、アルカリ性住宅用合成洗剤(花王株式会社製、商品名「マジックリン」)、キシレン、5%水酸化ナトリウム水溶液、5%塩酸水溶液、合成洗剤、および赤インキを用いた。その結果、成形品には、いずれの汚染物質に対してもほとんど外観の変化が見られず、良好な耐汚染性を示した。これらの結果を反応条件とともに表3および表4に示す。
【0166】
〔実施例2〕
実施例1における熱可塑型シラップ(1)75部に代えて熱可塑型シラップ(2)75部を用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂板、充填剤入り樹脂板、および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表3および表4に示す。
【0167】
〔実施例3〕
実施例1における熱可塑型シラップ(1)75部に代えて熱可塑型シラップ(3)75部を用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂板、充填剤入り樹脂板、および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表3および表4に示す。
【0168】
〔実施例4〕
実施例1における熱可塑型シラップ(1)75部に代えて熱可塑型シラップ(6)75部を用いる以外は、実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表3および表4に示す。
【0169】
〔実施例5〕
実施例1における熱可塑型シラップ(1)75部に代えて熱可塑型シラップ(7)75部を用いる以外は、実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表3および表4に示す。
【0170】
〔比較例1〕
実施例1における熱可塑型シラップ(1)75部に代えて熱可塑型シラップ(4)75部を用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂板、充填剤入り樹脂板、および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表3および表4に示す。
【0171】
〔比較例2〕
実施例1における熱可塑型シラップ(1)75部に代えて熱可塑型シラップ(5)75部を用いる以外は、実施例1と同様にして、樹脂板、充填剤入り樹脂板、および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表3および表4に示す。
【0172】
【表3】
【0173】
【表4】
【0174】
〔実施例6〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)50部と熱硬化型シラップ(A)50部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表5に示す。尚、表5には、比較のために、実施例1の反応条件および結果を示した。
【0175】
〔実施例7〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)60部と熱硬化型シラップ(A)40部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表5に示す。
【0176】
〔実施例8〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)70部と熱硬化型シラップ(A)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表5に示す。
【0177】
〔比較例3〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1) 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表5に示す。
【0178】
〔比較例4〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱硬化型シラップ(A) 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表5に示す。
【0179】
【表5】
【0180】
〔実施例9〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)90部と熱硬化型シラップ(B)10部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表6に示す。
【0181】
〔実施例10〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)50部と熱硬化型シラップ(B)50部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表6に示す。
【0182】
〔実施例11〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)20部と熱硬化型シラップ(B)80部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表6に示す。
【0183】
〔実施例12〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)70部と熱硬化型シラップ(C)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表6に示す。
【0184】
〔実施例13〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1)70部と熱硬化型シラップ(D)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表6に示す。
【0185】
〔比較例5〕
実施例1では熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(6)70部と熱硬化型シラップ(E)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用い、それ以外は実施例1と同様にして、充填剤入り樹脂板および成形品を得た。充填剤入り樹脂板の全光線透過率と、成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性とを、実施例1と同様にして測定した結果を、反応条件とともに表6に示す。
【0186】
【表6】
【0187】
〔実施例14〕
熱可塑型シラップ(1)75部と熱硬化型シラップ(A)25部とを混合してなるシラップ 100部に対して、シリカ(株式会社龍森製、商品名「クリスタライト」) 180部、シラン系カップリング剤(信越化学株式会社製、商品名「KBM503」) 1.8部、および、硬化剤としてのt-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート(化薬アクゾ株式会社製、商品名「カヤエステルO」)1部を添加して、真空脱気を行うことにより、本発明にかかる人工大理石用組成物を得た。上記の人工大理石用組成物を厚み13mmの型に注入し、80℃で 1.5時間加熱して硬化させることにより、大理石調の成形品を得た。
【0188】
得られた成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表7に示す。
【0189】
〔実施例15〕
充填剤として、シリカ 180部の代わりに、ガラスパウダー(日東紡績株式会社製、商品名「FMW−5W001」) 180部を用いる以外は、実施例14と同様にして、大理石調の成形品を得た。得られた成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表7に示す。
【0190】
〔実施例16〕
充填剤として、シリカ 180部の代わりに、表面処理した水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、商品名「ハイジライトHBT−320」) 180部を用いる以外は、実施例14と同様にして、大理石調の成形品を得た。得られた成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表7に示す。
【0191】
〔実施例17〕
カップリング剤として、シラン系カップリング剤 1.8部の代わりに、リン酸トリメタクリル(城北化学株式会社製、商品名「JAP514」) 1.8部を用いる以外は、実施例16と同様にして、大理石調の成形品を得た。得られた成形品の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表7に示す。
【0192】
【表7】
【0193】
〔実施例18〕
まず、熱可塑型シラップ(1)70部と熱硬化型シラップ(A)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部に対して、平均粒子径が22μmの球状の水酸化アルミニウム 180部(昭和電工株式会社製、商品名「ハイジライトHS−310」)と硬化剤としてのt-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート(化薬アクゾ株式会社製、商品名「カヤエステルO」)1部を添加して、真空脱気を行うことにより、コンパウンドを得た。
【0194】
次いで、上記のコンパウンドを、3mm厚のシリコンゴム製ガスケットを2枚のガラス板で挟んで作製したセル中に流し込み、80℃で 1.5時間加熱して硬化させた。これにより、充填剤入り樹脂板を得た。この充填剤入り樹脂板の全光線透過率を、濁度計(日本電色工業株式会社製、商品名「SZ−SIGMA90」)で測定したところ、26.4%であった。
【0195】
また、上記の熱可塑型シラップ(1)70部と熱硬化型シラップ(A)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部に対して、離型剤としてのステアリン酸亜鉛4部、充填剤としての水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、商品名「ハイジライトH−320」) 250部、シラン系カップリング剤(信越化学株式会社製、商品名「KBM503」) 1.8部、硬化剤として1,1-ビス(t-へキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製、商品名「パーヘキサTMH」)1部、増粘剤としての酸化マグネシウム0.25部、および補強材としてのガラス繊維(日本硝子繊維株式会社製、商品名「RES010−BM53」、長さ1mmのチョップドストランド)を混合した後、この混合物を双腕型ニーダを用いて混練した。これにより、成形材料としてのBMCを得た。該BMCにおける上記ガラス繊維の割合は、5%となるように調節した。その後、得られたBMCをビニロンフィルムで包装し、40℃で1日間熟成させた。
【0196】
次に、上記のBMCを加熱加圧成形した。即ち、 300mm× 300mmの大きさの金型を用い、上側の金型の温度を 130℃、下側の金型の温度を 110℃に設定した。そして、上記のBMCを上記金型に充填して圧力6MPaで型締めし、7分間、加熱加圧成形することにより、厚さ9mmの大理石調の成形板を作成した。
【0197】
得られた成形板の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表8に示す。
【0198】
〔実施例19〕
実施例18における熱可塑型シラップ(1)70部に代えて熱可塑型シラップ(7)70部を用いる以外は、実施例18と同様にして、大理石調の成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表8に示す。
【0199】
〔実施例20〕
実施例18における熱可塑型シラップ(1)70部に代えて熱可塑型シラップ(8)70部を用いる以外は、実施例18と同様にして、大理石調の成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表8に示す。
【0200】
〔比較例6〕
実施例18では熱可塑型シラップ(1)70部と熱硬化型シラップ(A)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱可塑型シラップ(1) 100部を用い、それ以外は実施例18と同様にして、大理石調の成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表8に示す。
【0201】
〔比較例7〕
実施例18では熱可塑型シラップ(1)70部と熱硬化型シラップ(A)30部とを混合してなる(メタ)アクリルシラップ 100部を用いていたのに代えて、熱硬化型シラップ(A) 100部を用い、それ以外は実施例18と同様にして、大理石調の成形板を得た。得られた成形板の荷重たわみ温度、シャルピー衝撃強度、および耐汚染性を、実施例1と同様にして測定した結果を反応条件とともに表8に示す。
【0202】
【表8】
【0203】
表1〜8に示す結果から明らかなように、実施例1〜20にかかる大理石用組成物を成形することによって、熱時強度および耐衝撃性が高く、かつ、耐汚染性に優れた大理石調の成形品、即ち、人工大理石を得ることができることが分かる。
【0204】
【発明の効果】
本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物によれば、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた硬化物を得ることができる(メタ)アクリル系樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
【0205】
また、本発明の人工大理石用組成物によれば、耐衝撃性が高く、かつ、耐溶剤性および耐汚染性に優れた人工大理石を得ることができる人工大理石用組成物を提供することができるという効果を奏する。
Claims (7)
- 熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、およびビニル単量体からなる(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、
上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が、上記ビニル単量体と共重合可能な二重結合を一分子中に少なくとも1個以上有するものであるとともに、
さらに、上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体とが共重合して、硬化後の3mm厚の試験片における全光線透過率が30%以上となるように、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶する反応物を生成しうるものであることを特徴とする(メタ)アクリル系樹脂組成物。 - 熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の主鎖の主成分が、メタクリル酸メチル単位であることを特徴とする請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重量比が、95/5〜40/60の範囲内であることを特徴とする請求項1または2に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量が、10,000〜200,000の範囲内であり、かつ、二重結合当量が500〜30,000の範囲内であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- ビニル単量体の主成分が、メタクリル酸メチルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物。
- 請求項1ないし5のいずれか1項に記載の(メタ)アクリル系樹脂組成物と、充填剤とを含むことを特徴とする人工大理石用組成物。
- さらに、リン酸エステルを含むことを特徴とする請求項6記載の人工大理石用組成物。
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