JP2000143927A - (メタ)アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた成形体 - Google Patents

(メタ)アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた成形体

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JP2000143927A
JP2000143927A JP10316629A JP31662998A JP2000143927A JP 2000143927 A JP2000143927 A JP 2000143927A JP 10316629 A JP10316629 A JP 10316629A JP 31662998 A JP31662998 A JP 31662998A JP 2000143927 A JP2000143927 A JP 2000143927A
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meth
acrylic
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acrylic polymer
resin composition
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English (en)
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Takahiro Tsumori
隆弘 津守
Akihiko Fukada
亮彦 深田
Masazumi Sasabe
昌純 笹部
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Nippon Shokubai Co Ltd
Original Assignee
Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐溶剤性及び耐汚染性、機械強度に優れると
共に、曲げ強度及び耐ヒートサイクル性にも優れ、プレ
ス成形した場合であっても表面平滑性及び成形外観が悪
化しない(メタ)アクリル系樹脂組成物及びそれを用い
た成形体を提供する。 【解決手段】 熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、熱
硬化性(メタ)アクリル系重合体、スチレン系単量体、
スチレン系単量体以外のビニル単量体からなる(メタ)
アクリルシラップに脂肪酸または脂肪酸金属塩を添加し
てなる(メタ)アクリル系樹脂組成物において、スチレ
ン系単量体とスチレン系単量体以外のビニル単量体の重
量比を10/90〜70/30の範囲、該熱可塑性(メ
タ)アクリル系重合体と該熱硬化性(メタ)アクリル系
重合体の重量比を95/5〜5/95の範囲、全単量体
と全重合体との重量比を20/80〜80/20の範囲
とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱可塑性(メタ)
アクリル系重合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合
体、スチレン系単量体、それ以外のビニル単量体からな
るアクリルシラップに脂肪酸または脂肪酸金属塩を添加
してなる(メタ)アクリル系樹脂組成物に関し、より詳
細には、曲げ強度に優れると共に、耐溶剤性、耐汚染
性、耐ヒートサイクル性、成形外観、離型性に優れた
(メタ)アクリル系樹脂組成物及びそれを用いた成形体
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】(メタ)アクリル系重合体とビニル単量
体との混合物である(メタ)アクリルシラップを含む
(メタ)アクリル系樹脂組成物が従来から用いられてき
た。かかる(メタ)アクリル系樹脂組成物によれば優れ
た耐候性と外観とを有する成形品が得られることから、
人工大理石を得るための人工大理石用組成物として特に
好適に用いられてきた。上記(メタ)アクリルシラップ
としては、従来はポリメチルメタクリレートをメチルメ
タクリレートに溶解させた(メタ)アクリルシラップや
メチルメタクリレートを部分重合して得られた(メタ)
アクリルシラップなどが広く用いられている。これら
(メタ)アクリルシラップは、(メタ)アクリル系重合
体が重合性二重結合を有さない熱可塑性であるため、得
られる成形品は耐候性には優れるものの、耐汚染性、耐
溶剤性等の物性に劣るという問題がある。そこで重合性
二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体、言い換え
ると熱硬化性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量体
とからなる架橋結合型の(メタ)アクリルシラップが提
案されている。この(メタ)アクリルシラップは、(メ
タ)アクリル系重合体がビニル単量体と共重合して架橋
結合を形成することによって硬化するため、得られる成
形品の耐溶剤性や耐汚染性等の物性に優れている。しか
し曲げ強度や耐衝撃性に劣るという別の問題が生じる。
【0003】そこで、耐溶剤性、耐汚染性だけでなく耐
衝撃性にも優れる成形品を得るため、例えば特開平10
−139512号公報では、熱可塑性(メタ)アクリル
系重合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体及びビニ
ル単量体からなる組成物が提案されている。しかしなが
ら、この組成物は耐衝撃性、耐溶剤性、耐汚染性には優
れているものの、プレス成形材料として使用した場合、
表面平滑性、波打ち等の成形外観に劣る傾向にある。金
型からの離型性を向上させるためには、脂肪酸または脂
肪酸金属塩などの離型剤を添加することが考えられる
が、ポリエステル系成形材料と異なり、アクリル系成形
材料では、離型剤としての脂肪酸または脂肪酸金属塩を
2重量部を超えて含有させると曲げ強度、耐ヒートサイ
クル性が著しく劣る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記問題に鑑
みなされたものであり、耐溶剤性及び耐汚染性、機械強
度に優れると共に、曲げ強度及び耐ヒートサイクル性に
も優れ、プレス成形した場合であっても表面平滑性及び
成形外観が悪化しない(メタ)アクリル系樹脂組成物及
びそれを用いた成形体を提供することをその目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、熱可塑
性(メタ)アクリル系重合体、熱硬化性(メタ)アクリ
ル系重合体、スチレン系単量体、スチレン系単量体以外
のビニル単量体からなる(メタ)アクリルシラップに脂
肪酸または脂肪酸金属塩を添加してなる(メタ)アクリ
ル系樹脂組成物であって、スチレン系単量体とスチレン
系単量体以外のビニル単量体の重量比が10/90〜7
0/30の範囲、該熱可塑性(メタ)アクリル系重合体
と該熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量比が95
/5〜5/95の範囲、全単量体と全重合体との重量比
が20/80〜80/20の範囲であることを特徴とす
る(メタ)アクリル系樹脂組成物が提供される。
【0006】このとき前記脂肪酸または脂肪酸金属塩の
添加量は、前記アクリルシラップ100重量部に対して
0.1〜2重量部の範囲であることが好ましい。
【0007】また本発明によれば、上記(メタ)アクリ
ル系樹脂組成物を用いて成形されたことを特徴とする成
形体が提供される。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明者等は、表面平滑性、波打
ち等の成形外観を向上させると同時に、曲げ強度を低下
させることなく離型性を維持・向上させることができな
いか鋭意検討を行った結果、ビニル単量体として特定割
合のスチレン系単量体を使用し、かつ特定量の脂肪酸ま
たは脂肪酸金属塩を添加することにより上記目的を達成
し得ることを見出し本発明をなすに至った。
【0009】すなわち本発明の大きな特徴の一つは、ス
チレン系単量体とそれ以外のビニル単量体の重量比が1
0/90〜70/30の範囲とする点にある。スチレン
系単量体をまったく含まない単量体系(例えばアクリル
酸メチルのみの系)とすると、重合速度(硬化速度)が
速くなりすぎ、成形品の外観が悪くなる。そこで前記重
量比の範囲のスチレン系単量体を使用することにより、
重合速度(硬化速度)を適度に遅くすることができ、硬
化時間を制御できる結果、成形品の表面平滑性、波打ち
等の成形外観を向上させることができる。上記重量比の
好ましい範囲としては、11/89〜50/50の範
囲、より好ましい範囲としては12/88〜30/70
の範囲である。上記重量比が10/90未満の場合、表
面平滑性、波打ち等の成形外観が劣り、上記重量比が7
0/30を超える場合、成形品の強度低下が起こり、ま
た成形時間が長くなり生産効率が落ちる。
【0010】スチレン系単量体とは、スチレン及びスチ
レンに脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、ハロゲ
ン、エーテル基などの置換基を有する単量体をいい、例
えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、
クロロスチレン等を挙げることができる。この中でも重
合速度の点でスチレンがより好ましい。
【0011】本発明で使用できるスチレン系単量体以外
のビニル単量体としては、熱可塑性(メタ)アクリル系
重合体と共重合可能な二重結合を一分子中に少なくとも
1個以上有し、かつ、熱硬化性(メタ)アクリル系重合
体と共重合して熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と相
溶な反応物を生成しうるものであればよい。
【0012】上記ビニル単量体として、具体的には、
(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基を含有す
る単量体(以下、「カルボキシル基含有単量体」を記
す)、ビニル化合物等が挙げられる。該ビニル単量体
は、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との共重合によ
って熱可塑性(メタ)アクリル系重合体に対して相溶な
反応物を与えるために、主成分が(メタ)アクリル酸エ
ステルであることが好ましく、主成分がメチルメタクリ
レートであることがさらに好ましい。また、ビニル単量
体における(メタ)アクリル酸エステルの含有率は、8
0重量%以上であることがより好ましい。
【0013】上記(メタ)アクリル酸エステルとして
は、メタクリル酸アルキルエステルが特に好ましく、さ
らに、メタクリル酸アルキルエステルとしては、メチル
メタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピル
メタクリレート、n−ブチルメタクリレート、s−ブチ
ルメタクリレート、t−ブチルメタクリレートが特に好
ましい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物を
硬化させて得られる硬化物の耐侯性、透明性、表面光沢
性等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上させ
ることができる。
【0014】上記カルボキシル基含有単量体としては、
一分子中に、重合可能な二重結合と、カルボキシル基と
を含有する化合物であればよく、特に限定されるもので
はない。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル
酸、クロトン酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボ
ン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン
酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸
のモノエステル;長鎖カルボキシル基含有単量体等が挙
げられる。上記の不飽和ジカルボン酸のモノエステルと
しては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチ
ル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、
フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モ
ノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエ
チル等が挙げられる。
【0015】上記長鎖カルボキシル基含有単量体として
は、例えば、酸無水物を、ヒドロキシル基を含有する
(メタ)アクリル酸エステルでモノエステル化してなる
酸無水物のモノエステル等が挙げられる。上記ヒドロキ
シル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとして
は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロ
ラクトン開環付加物または2−ヒドロキシルエチル(メ
タ)アクリレートへのγ−ブチロラクトンの開環付加物
等が挙げられる。上記酸無水物としては、無水コハク
酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等が挙げ
られる。従って、酸無水物のモノエステルとしては、具
体的には、例えばコハク酸モノエステル、フクル酸モノ
エステル、へキサフタル酸モノエステル等が挙げられ
る。これらカルボキシル基含有単量体は、単独で用いて
もよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよ
い。
【0016】上記ビニル化合物としては、重合可能な二
重結合を含有し、カルボキシル基を含有しない化合物で
あればよく、具体的には、例えば、酢酸ビニル等のビニ
ルエステル;アリルアルコール、エチレングリコールモ
ノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエ
ーテル等のアリル化合物;(メタ)アクリルアミド;
(メタ)アクリロニトリル;N−メトキシメチルアクリ
ルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド等のN−
アルコキシ置換(メタ)アクリルアミド;不飽和塩基性
単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシル
マレイミド、N−イソプロビルマレイミド等のマレイミ
ド系単量体等が挙げられるが、特に限定されるものでは
ない。
【0017】これらビニル単量体は、単独で用いてもよ
く、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0018】熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、熱可
塑性(メタ)アクリル系単量体、スチレン系単量体およ
びそれ以外のビニル単量体の合計量100重量%に対す
るビニル単量体の比率は、20重量%〜80重量%の範
囲内であることが好ましく、40重量%〜70重量%の
範囲内であることがより好ましく、45重量%〜60重
量%の範囲内であることがさらに好ましい。該ビニル単
量体の比率が20重量%未満である場合には、(メタ)
アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなりすぎて、成形時
の作業性が悪くなるおそれがある。一方、該ビニル単量
体の比率が80重量%を超える場合には、(メタ)アク
リル系樹脂組成物の硬化時の収縮が大きくなるため好ま
しくない。
【0019】本発明での脂肪酸または脂肪酸金属塩の添
加量は該アクリルシラップ100重量部に対して0.1
〜2重量部の範囲が好ましい。当該範囲の脂肪酸または
脂肪酸金属塩を添加することにより、成形品の曲げ強度
を低下させることなく離型性を維持・向上させることが
でき、また同時に成形品の表面平滑性をも向上させるこ
とができるからである。上記添加量の好ましい範囲とし
ては、0.25〜1.5重量部であり、より好ましくは
0.5〜1.25重量部である。上記添加量が0.1重
量部より少ないと離型性及び成形性が劣るおそれがあ
り、他方添加量が2重量部を超えると成形品の曲げ強
度、耐ヒートサイクル性が劣るおそれがある。
【0020】本発明で好ましく使用することができる脂
肪酸としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パル
ミチン酸、ステアリン酸などを挙げることができる。ま
た本発明で好ましく使用することができる脂肪酸金属塩
としては、例えばステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カル
シウム、ステアリン酸バナジウム、ステアリン酸アルミ
ニウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸バリ
ウム等のステアリン酸金属塩;ジオクチルスルホコハク
酸ナトリウム等のオクチルスルホコハク酸金属塩などを
挙げることができる。これら脂肪酸、脂肪酸金属塩は単
独又は2種以上を適宜混合して使用することができ、中
でもステアリン酸亜鉛が特に好ましい。
【0021】本発明において、熱可塑性(メタ)アクリ
ル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重
量比は、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得ら
れる硬化物の耐熱性や機械的強度などの物性を向上させ
る上で重要である。熱可塑性(メタ)アクリル系重合体
と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との重量比は、9
5/5〜5/95の範囲である。好ましくは、80/2
0〜20/80の範囲であり、より好ましくは65/3
5〜50/50の範囲である。上記重量比が95/5を
超える場合、すなわち熱可塑性(メタ)アクリル系重合
体と熱硬化性(メタ)アクリル系重合体との合計量10
0重量部に対して、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体
が95重量部を超える場合には、架橋密度が低下し耐溶
剤性、耐汚染性、耐ヒートサイクル性が低下する。他
方、上記重量比が5/95未満の場合、すなわち熱可塑
性(メタ)アクリル系重合体と熱硬化性(メタ)アクリ
ル系重合体との合計量100重量部に対して、熱可塑性
(メタ)アクリル系重合体が5重量部未満の場合には、
硬化収縮率が大きくなるため表面平滑性が悪化する。な
お本発明における熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と
は、主鎖の主成分が(メタ)アクリル酸エステル単位か
らなり、一分子中に重合性二重結合を有さない重合体を
いい、本発明における熱硬化性(メタ)アクリル系重合
体とは、主鎖の主成分が(メタ)アクリル酸エステル単
位からなり、一分子中に少なくとも1個以上の重合性二
重結合を有する重合体をいう。
【0022】本発明で使用する熱可塑性(メタ)アクリ
ル系重合体としては、主鎖の50重量%以上が(メタ)
アクリル酸エステル単位からなる重合体、すなわち(メ
タ)アクリル酸エステルを50重量%以上含む単量体成
分を重合して得られる重合体であって、一分子中に重合
性二重結合を有さない重合体であればよく、特に限定は
ない。
【0023】上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の
重量平均分子量(Mw)は、10,000〜400,0
00の範囲がよく、好ましくは30,000〜250,
000の範囲、より好ましくは50,000〜150,
000の範囲である。重量平均分子量が10,000未
満の場合、耐溶剤性、耐汚染性が低下するおそれがあ
り、他方重量平均分子量が400,000を超える場
合、組成物粘度が高くなりすぎ成形時の作業性が悪くな
る。
【0024】上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体
は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含む単
量体成分(以下、単に単量体成分と記す)を重合するこ
とにより得られる。上記の(メタ)アクリル酸エステル
としては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリ
レート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル
(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレー
ト、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メ
タ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリ
レート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)ア
クリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)ア
クリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエス
テル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジ
エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の塩基性
(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、特に限
定されるものではない。これら(メタ)アクリル酸エス
テルは、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜
混合して用いてもよい。
【0025】(メタ)アクリル酸エステルとしては、上
記例示の化合物のうち、得られる硬化物が耐溶剤性等の
物性に優れていることから、メチルメタクリレートが特
に好ましい。また、単量体成分の主成分がメチルメタク
リレートであることが望ましく、これにより、主鎖の主
成分がメチルメタクリレート単位である熱可塑性(メ
タ)アクリル系重合体が得られる。熱可塑性(メタ)ア
クリル系重合体の主鎖の主成分をメチルメタクリレート
単位とすることにより、(メタ)アクリル系樹脂組成物
を硬化させて得られる硬化物の耐候性、透明性、表面光
沢性等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上さ
せることができる。
【0026】尚、(メタ)アクリル酸エステルとして塩
基性(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合には、塩
基性(メタ)アクリル酸エステルに対して100重量%
以上の中性(メタ)アクリル酸エステルを混合して用い
るのが好ましい。上記の中性(メタ)アクリル酸エステ
ルとしては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステ
ル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を用
いることができる。
【0027】上記単量体成分は、カルボキシル基を含有
するビニル単量体を含んでいてもよく、これにより、カ
ルボキシル基を含有する熱可塑性(メタ)アクリル系重
合体が得られる。上記カルボキシル基を含有する熱可塑
性(メタ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系樹
脂組成物に、増粘剤としてアルカリ土類金属酸化物およ
び/またはアルカリ土類金属水酸化物を添加した場合
に、容易に増粘させることができる。
【0028】カルボキシル基含有単量体としては、前記
スチレン以外のビニル単量体として例示したのものが再
度挙げられる。
【0029】カルボキシル基含有単量体の使用量は、
(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基含有単量
体との合計を100重量%として、0.6重量%〜20
重量%の範囲内であることが好ましく、1重量%〜15
重量%の範囲内であることがより好ましく、3重量%〜
10重量%の範囲内であることがさらに好ましい。カル
ボキシル基含有単量体の割合が0.5重量%未満の場合
には、(メタ)アクリル系樹脂組成物の増粘を容易にす
る効果が得られにくくなる。カルボキシル基含有単量体
の割合が20重量%を超える場合には、得られる硬化物
の耐汚染性、耐溶剤性等の物性が低下するおそれがあ
る。
【0030】上記単量体成分は、さらに必要に応じて他
の単量体としてビニル化合物を含んでいてもよい。上記
ビニル化合物としては、重合可能な二重結合を含有し、
カルボキシル基を含有しない化合物であればよく、具体
的には、前記スチレン以外のビニル単量体として例示し
たのものが再度挙げられ、さらにスチレン、α−メチル
スチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等のスチレ
ン系単量体も使用することができる。これらビニル化合
物は、一種類のみを混合してもよく、また、二種類以上
を適宜組み合わせて混合してもよい。(メタ)アクリル
酸エステルにビニル化合物を混合する場合における両者
の混合割合は、ビニル化合物の種類や(メタ)アクリル
酸エステルとの組み合わせ等にもよるが、(メタ)アク
リル酸エステルとビニル化合物との合計量100重量%
に対して、ビニル化合物が少なくとも50重量%未満で
あればよく、20重量%未満であることがより好まし
い。
【0031】尚、単量体成分における(メタ)アクリル
酸エステルの含有率は、50重量%以上であればよい
が、80重畳%以上であることが望ましい。
【0032】上記単量体成分を重合させる際には、重合
開始剤を使用することが望ましい。上記重合開始剤とし
ては、例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパ
ーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t
−ブチルパーオキシー2−エチルへキサノエート、t−
ブチルパーオキシオクトエート、t−ブチルパーオキシ
ベンゾエートクメンヒドロパーオキサイド、シクロへキ
サノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス
(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボ
ネート等の有機過酸化物;2,2' −アゾビスイソブチ
ロニトリル、2−フェニルアゾ−2,4−ジメチル−4
−メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられ
るが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤
は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合
して用いてもよい。単量体成分に対する重合開始剤の添
加量等は、特に限定されるものではない。
【0033】上記単量体成分を重合させる際には、単量
体成分の重合反応を制御して熱可塑性(メタ)アクリル
系重合体の重量平均分子量を調節するために、連鎖移動
剤を添加するのがより望ましい。上記連鎖移動剤として
は、単量体成分の重合反応を極めて容易に制御できるこ
とから、チオール化合物が特に好適に用いられるが、特
に限定されるものではなく、α−メチルスチレンダイマ
ー、四塩化炭素等を用いることもできる。上記チオール
化合物としては、例えば、t−ブチルメルカプタン、n
−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等
のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフト
ール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオ
グリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリ
コレート、トリメチロールプロパントリス−(チオグリ
コレート)、ペンタエリスリトールテトラキス−(チオ
グリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステ
ル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロ
ピオン酸オクチル、l,4−ブタンジオールジ(β−チ
オプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス−
(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテ
トラキス−(β−チオプロピオネート)等のβ−メルカ
プトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられるが、
特に限定されるものではない。これら連鎖移動剤は、一
種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合
して用いてもよい。
【0034】連鎖移動剤の使用量は、熱可塑性(メタ)
アクリル系重合体に所望する平均分子量に応じて適宜調
節すればよく、特に限定されるものではないが、単量体
成分100重量%に対して0.1重量%〜15重量%の
範囲内が好適である。
【0035】単量体成分の重合方法については、特に限
定されるものではないが、単量体成分の重合を途中で停
止させる方法、即ち、部分重合が好ましい。これによ
り、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と未反応の単量
体成分との混合物が得られる。上記混合物は、未反応の
単量体成分をビニル単量体として利用する、つまり、そ
のまま熱可塑性(メタ)アクリル系重合体とビニル単量
体との混合物として使用することもできる。また、上記
の混合物から未反応の単量体成分を除去すれば、熱可塑
性(メタ)アクリル系重合体を単離することができる。
【0036】また、単量体成分を重合させる方法として
は、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合
等の公知の重合方法が挙げられるが、製造の簡便性から
塊状重合が特に好ましい。懸濁重合を採用する場合に
は、ポリビニルアルコール等の分散安定剤を用いて、水
などの分散媒中に懸濁させればよい。上記重合を行う際
の反応温度や反応時間等の反応条件は、特に限定される
ものではなく、例えば、公知の反応条件を採用すること
ができる。尚、上記重合は、窒素雰囲気下で行うことが
好ましい。
【0037】連鎖移動剤としてチオール化合物を添加し
て単量体成分の重合を行った場合、特に塊状重合の場合
には、重合終了後の反応混合物に対して、残存するチオ
ール化合物の処理を行うことが好ましい。これにより、
(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる硬化
物の耐溶剤性や耐熱性を向上させることができ、また得
られた(メタ)アクリル系樹脂組成物の貯蔵安定性も改
良できる。
【0038】上記チオール化合物を処理する方法として
は、重合終了後の反応混合物に対してビニルエーテル化
合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加す
る方法、或いは、重合終了後の反応混合物を無水マレイ
ン酸および塩基性化合物を用いて処理する方法を用いる
ことができる。
【0039】上記ビニルエーテル化合物は、チオール化
合物と反応可能な二重結合を有する化合物であればよ
く、特に限定されない。具体的には、例えばメチルビニ
ルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニ
ルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソブチル
ビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等の脂肪族
ビニルエーテル;シクロへキシルビニルエーテル等のシ
クロアルキルビニルエーテル;2,3−ジヒドロフラ
ン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロー2H
−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−
ジヒドロ−2−メトキシ−2H一ピラン、3,4−ジヒ
ドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ
−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン等の環状
エーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではな
い。これらビニルエーテル化合物は、単独で用いてもよ
く、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0040】ビニルチオエーテル化合物は、チオール化
合物と反応可能な二重結合を有する化合物であればよ
く、特に限定されない。上記ビニルチオエーテル化合物
としては、前記例示のビニルエーテル化合物の酸素原子
を硫黄原子に置き換えてなる化合物を用いることができ
る。即ち、前記例示のビニルエーテル化合物に対応する
脂肪族ビニルチオエーテル;シクロアルキルビニルチオ
エーテル;環状チオエーテル等を用いることができる。
これらビニルチオエーテル化合物は、単独で用いてもよ
く、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0041】ビニルエーテル化合物および/またはビニ
ルチオエーテル化合物の使用量は、樹脂組成物を調製す
る際に添加されたチオール化合物の量に対して0.6倍
モル〜5倍モルの範囲内が好ましく、0.8倍モル〜3
倍モルの範囲内がより好ましい。ビニルエーテル化合物
および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量が
0.6倍モル未満である場合には、チオール化合物が完
全に処理されないことがある。処理後の反応混合物中に
チオール化合物が残存すると、得られる(メタ)アクリ
ル系樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する。また、(メ
タ)アクリル系樹脂組成物を硬化させるのに長時間を有
すると共に、硬化物の平均分子量が大きくならない。一
方、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエ
ーテル化合物の使用量が5倍モルを超える場合には、得
られる硬化物の耐侯性が低下するおそれがある。
【0042】上記チオール化合物の処理を行う際の処理
温度や処理時間等の処理条件は、単量体成分の組成等に
応じて決定すればよく、特に限定されるものではない。
また、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオ
エーテル化合物の添加方法は、重合後の反応混合物にビ
ニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル
化合物を添加する方法であってもよく、ビニルエーテル
化合物および/またはビニルチオエーテル化合物に重合
後の反応混合物を添加する方法であってもよい。
【0043】上記ビニルエーテル化合物および/または
ビニルチオエーテル化合物を用いたチオール化合物の処
理は、ルイス酸、アミン塩、3級アミン、4級アンモニ
ウム塩、ホスホニウム塩、金属塩等の触媒の存在下で行
ってもよい。これにより、チオール化合物が有するメル
カプト基と、ビニルエーテル化合物および/またはビニ
ルチオエーテル化合物との反応を促進することができ
る。また、上記樹脂組成物の処理を行う際には、溶媒を
用いることができる。上記溶媒としては、水および/ま
たは有機溶媒を用いることができる。
【0044】上記の塩基性化合物としては、具体的に
は、例えばメチルアミン、エチルアミン等の一級アミ
ン;ジメチルアミン、ジエチルアミン等のニ級アミン;
トリメチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン;
ジアザ化合物;トリアゾール化合物等が挙げられるが、
特に限定されるものではない。これら塩基性化合物は、
単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して
用いてもよい。塩基性化合物は、重合時に添加するチオ
ール化合物に対して0.01倍モル〜1.6倍モルの範
囲内で使用することが好ましく、0.03倍モル〜1.
2倍モルの範囲内で使用することがより好ましい。
【0045】上記の塩基性化合物と併用される無水マレ
イン酸は、重合時に添加するチオール化合物に対して
0.6倍モル〜3.0倍モルの範囲内で使用することが
好ましく、0.7倍モル〜2.8倍モルの範囲内で使用
することがより好ましい。
【0046】重合時に添加するチオール化合物に対する
塩基性化合物の使用量が0.01倍モル未満である場
合、或いは、無水マレイン酸の使用量が0.6倍モル未
満である場合には、チオール化合物が完全に処理されな
いことがあるので好ましくない。処理後の反応混合物に
チオール化合物が残存すると、(メタ)アクリル系樹脂
組成物の貯蔵安定性が低下する。また、(メタ)アクリ
ル系樹脂組成物を硬化させるのに長時間を要すると共
に、硬化物の平均分子量が大きくならない。
【0047】重合時に添加するチオール化合物に対する
塩基性化合物の使用量が1.5倍モルを超える場合に
は、得られる硬化物の耐侯性が低下するので好ましくな
い。また、重合時に添加するチオール化合物に対する無
水マレイン酸の使用量が3.0倍モルを超える場合に
は、得られる硫化物の耐水性が低下するので好ましくな
い。
【0048】尚、上記チオール化合物の処理を行う際の
処理温度や処理時間等の処理条件は、特に限定されるも
のではない。例えば、重合後の反応混合物に無水マレイ
ン酸および塩基性化合物を混合して撹拌するだけで、チ
オール化合物を処理することができる。
【0049】次に、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体
について説明する。上記熱硬化性(メタ)アクリル系重
合体は、主鎖の50重量%以上が(メタ)アクリル酸エ
ステル単位からなり、前述のビニル単量体と共重合可能
な二重結合を一分子中に少なくとも1個以上有する重合
体である。
【0050】熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量
平均分子量(Mw)は、10,000〜400,000
の範囲内であるのがよく、好ましくは10,000〜3
50,000の範囲、より好ましくは12,000〜2
00,000の範囲である。さらに20,000〜16
0,000の範囲内であることがより好ましく、成形材
料の成形性および流動性の点から30,000〜10
0,000の範囲であることが最も好ましい。熱硬化性
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が
10,000未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組
成物を硬化させて得られる硬化物の耐溶剤性、耐汚染性
が低下する。一方、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体
の重量平均分子量(Mw)が400,000を超える
と、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなり過
ぎ、成形時の作業性および材料の成形性が低下する。
【0051】成形材料の成形性向上の点からは、熱硬化
性(メタ)アクリル系重合体の分子中にカルボキシル基
が含まれているのが好ましい。その場合、熱硬化性(メ
タ)アクリル系重合体の酸価は1〜40の範囲が好まし
い。当該酸価が40を超えると離型性が悪くなるおそれ
がある。
【0052】熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重
結合当量、即ち、重合性二重結合1個当たりの分子量
は、500〜30,000の範囲内であることが好まし
く、1,000〜10,000の範囲内であることがよ
り好ましく、2,000〜7,000であることが最も
好ましい。熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結
合当量が500未満であると、(メタ)アクリル系樹脂
組成物を硬化して得られる硬化物の架橋密度が高すぎ
て、硬化物が脆くなる。他方、熱硬化性(メタ)アクリ
ル系重合体の二量結合当量が30,000を超えると、
(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化させることにより
得られる硬化物の架橋密度が低すぎ、耐溶剤性、耐汚染
性に劣る。
【0053】上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体と
しては、重合性二重結合を有する側鎖がエステル結合を
介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリル系重合
体がより好ましい。
【0054】重合性二重結合を有する側鎖がエステル結
合を介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリル系
重合体は、カルボキシル基含有量合体と不飽和エポキシ
化合物とを反応させる方法によって効率的に製造するこ
とができる。この方法によれば、カルボキシル基含有重
合体が有するカルボキシル基に対し、不飽和エポキシ化
合物が有するエポキシ基が反応してエポキシ基が開環
し、重合性二重結合を有する側鎖がエステル結合を介し
て主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリル系重合体が
得られる。
【0055】上記のカルボキシル基を含有する(メタ)
アクリル系重合体としては、前述した(メタ)アクリル
酸エステルとカルボキシル基含有単量体とを含む単量体
成分を重合することにより得られた熱可塑性(メタ)ア
クリル系重合体を用いることができる。上記熱可塑性
(メタ)アクリル系重合体の製造時におけるカルボキシ
ル基含有単量体の使用量は、前述の範囲内で、不飽和エ
ポキシ化合物を反応させることによって所望量の重合性
二重結合が導入されるように調節すればよい。
【0056】上記不飽和エポキシ化合物は、カルボキシ
ル基と反応可能なエポキシ基と、重合性の二重結合とを
有する化合物であればよい。上記不飽和エポキシ化合物
としては、具体的には、アリルグリシジルエーテル;グ
リシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メ
タ)アクリレート;エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリ
レート等が挙げられる。これら化合物は、一種類のみを
用いてもよく、また、2種類以上を適宜混合して用いて
もよい。
【0057】上記不飽和エポキシ化合物の使用量は、カ
ルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体との組み合
わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるもので
はないが、カルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合
体の製造に用いたカルボキシル基含有単量体に対して
0.5倍モル〜2倍モルの範囲内が好ましく、0.8倍
モル〜1.5倍モルの範囲内がより好ましい。
【0058】上記カルボキシル基含有重合体と不飽和エ
ポキシ化合物との反応は、触媒の存在下で行うことが望
ましい。上記触媒としては、上記の反応を促進すること
ができるものであればよく、無機金属化合物、オキソ酸
金属塩、ポリオキソ酸金属塩、有機金属化合物、有機酸
金属塩、金属錯塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、
4級ホスホニウム塩等を用いることができる。
【0059】上記触媒としては、Zn、SnおよびZr
からなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を含有す
る金属化合物(以下、単に「金属化合物」と記す)が特
に好ましい。
【0060】上記金属化合物は触媒活性が高く、主にカ
ルボキシル基含有(メタ)アクリル系重合体が有するカ
ルボキシル基と不飽和エポキシ化合物との反応を促進す
ることができ、また、(メタ)アクリル系樹脂組成物を
着色させることがない。さらに、上記金属化合物を用い
ることにより、触媒による(メタ)アクリル系樹脂組成
物の貯蔵安定性の低下を防止することができる。
【0061】上記金属化合物としては、Zn、Snおよ
びZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの元素を
含有する無機金属化合物、オキソ酸金属塩、ポリオキソ
酸金属塩、有機金属化合物、有機酸金属塩、金属錯塩等
を用いることができる。
【0062】上記無機金属化合物としては、Zn、Sn
およびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金
属の金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ
化物等の金属ハロゲン化物;金属酸化物、金属硫化物等
の金属カルコゲン化物;金属窒化物;金属リン化物;金
属砒化物;金属炭化物;金属ケイ化物;金属ホウ化物;
金属シアン化物;金属水酸化物等を用いることができ
る。上記無機金属化合物としては、具体的には塩化亜
鉛、酸化ジルコニウム、硫化スズ等が挙げられる。
【0063】上記オキソ酸金属塩としては、Zn、Sn
およびZrからなる群から選ばれる少なくとも1つの金
属の硫酸金属盤、硝酸金属塩、リン酸金属塩、ホスフイ
ン酸金属塩、ホスホン酸金属塩、メタリン酸金属塩、ホ
ウ酸金属塩、塩素酸金属塩、臭素酸金属塩、ヨウ素酸金
属塩、ケイ酸金属塩等を用いることができる。上記オキ
ソ酸金属塩としては、具体的には硫酸スズ、リン酸亜
鉛、硝酸ジルコニウム等が挙げられる。尚、オキソ酸金
属塩には、リン酸水素亜鉛のような水素塩も含まれるも
のとする。
【0064】上記ポリオキソ酸金属塩としては、Zn、
SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つ
の金属のポリリン酸金属塩、ポリホウ酸金属塩、ポリニ
オブ酸金属塩、ポリタンタル酸金属塩、ポリモリブデン
酸金属塩、ポリバナジン酸金属塩、ポリタングステン酸
金属塩等を用いることができる。上記ポリオキソ酸金属
塩としては、具体的には、ポリリン酸亜鉛等が挙げられ
る。
【0065】上記有機金属化合物としては、一般式
(1) M−(R)n ・・・・・・(1) (式中、Mは、Zn、SnおよびZrからなる群より選
ばれる1つの元素であり、Rは、メチル、エチル、メト
キシ、エトキシ等の有機基であり、nは1〜6の整数で
ある。)で表される有機金属化合物を用いることができ
る。上記有機金属化合物としては、具体的に、ジエチル
亜鉛、テトラエトキシジルコニウム等が挙げられる。
【0066】上記有機酸金属塩としては、金属石験を用
いることができる。上記金属石鹸としては、Zn、Sn
およびZrからなる群より選ばれる少なくとも1つの金
属の脂肪酸金属塩(ラウリル酸金属塩、ミリスチン酸金
属塩、パルミチン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、オレ
イン酸金属塩等)、ナフテン酸金属塩、オクチル酸金属
塩、スルホン酸金属塩、硫酸エステル金属塩、リン酸エ
ステル金属塩等を用いることができる。上記金属石鹸と
しては、具件的には、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸ス
ズ等が挙げられる。
【0067】上記有機酸金属塩は、金属石鹸以外であっ
てもよい。金属石鹸以外の有機酸金属塩としては、Z
n、SnおよびZrからなる群より選ばれる少なくとも
1つの金属の酢酸金属塩、安息香酸金属塩、サリチル酸
金属塩、シュウ酸金属塩、酒石酸金属塩、乳酸金属塩、
クエン酸金属塩等を用いることができる。金属石鹸以外
の有機酸金属塩としては、具体的には、酢酸亜鉛、サリ
チル酸スズ等が挙げられる。
【0068】上記金属錯塩としては、一般式(2) M−(L)n ・・・・・・(2) (式中、Mは、Zn、SnおよびZrからなる群より選
ばれる1つの元素であり、Lは、アセチルアセトン等の
配位子、nは1〜6の整数である。)で表される金属錯
塩を用いることができる。上記有機金属化合物として
は、具体的には、アセチルアセトン亜鉛等が挙げられ
る。
【0069】上記触媒の使用量は、その種類やカルボキ
シル基含有重合体等との組み合わせ等に応じて設定すれ
ばよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル
基含有重合体100重量部に対して、0.01重量部〜
5重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜3重量部
の範囲内がより好ましい。
【0070】上記のエステル化反応を行う際には、重合
禁止剤を共存させてもよい。上記重合禁止剤としては、
ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイ
ドロキノン、tert−ブチルハイドロキノン等を用い
ることができる。上記エステル化反応を行う際には、溶
媒を用いることができる。上記溶媒としては、水および
/または有機溶媒を用いることができる。
【0071】また、上記エステル化反応において、カル
ボキシル基含有量合体、不飽和エポキシ化合物、触媒等
を混合する順序や方法は、特に限直されるものではな
い。
【0072】以上のようにして、エステル結合を介して
重合性二重結合が導入された熱硬化性(メタ)アクリル
系重合体が得られる。
【0073】尚、エステル結合を介して重合性二重結合
が導入された熱硬化性(メタ)アクリル系重合体を得る
方法は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル系重合
体に対し、そのエポキシ基に前記のカルボキシル基含有
単量体を反応させる方法であってもよい。
【0074】また、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体
は、ヒドロキシル基を含有する熱可塑性(メタ)アクリ
ル系重合体に、重合性二重結合を有する不飽和イソシア
ネート化合物を添加して、上記ヒドロキシル基をウレタ
ン化することによって得られたものであってもよい。
【0075】上記のヒドロキシル基を含有する熱可塑性
(メタ)アクリル系重合体は、ヒドロキシル基を含有す
る単量体を含む単量体成分を重合することにより得られ
る熱可塑性(メタ)アクリル系重合体である。上記ヒド
ロキシル基を含有する単量体としては、例えば、2−ヒ
ドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ
プロビル(メタ)アクリレート等のようなグリコールの
モノ(メタ)アクリレート;多価アルコールのジ(メ
タ)アクリレート等のヒドロキシル基を含有する(メ
タ)アクリレート等が挙げられる。
【0076】また、上記の不飽和イソシアネート化合物
としては、例えば、m−イソプロペニル−α,α−ジメ
チルベンジルイソシアネート;上記例示のヒドロキシル
基を含有する(メタ)アクリレートと、トリレンジイソ
シアネート等の多価イソシアネートとの反応生成物;イ
ソシアナートエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0077】本発明においては、全単量体と全重合体と
の重量比が20/80〜80/20の範囲であることが
重要である。好ましくは40/60〜70/30の範
囲、より好ましくは50/50〜65/35の範囲であ
る。上記重量比が20/80を超える場合、すなわち全
単量体と全重合体の合計量100重量部に対して、全単
量体が20重量部未満の場合には、(メタ)アクリル系
樹脂組成物の粘度が高くなりすぎ成形時の作業性が悪く
なる。他方全単量体が80重量部を超える場合には、
(メタ)アクリル系樹脂組成物の硬化時の収縮が大きく
なるため表面平滑性が悪化する。
【0078】以上のように、本発明にかかる(メタ)ア
クリル系樹脂組成物は、熱可塑性(メタ)アクリル系重
合体、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、スチレン系
単量体、スチレン系単量体以外のビニル単量体からなる
(メタ)アクリルシラップに脂肪酸又は脂肪酸金属塩を
添加してなるものである。
【0079】尚、(メタ)アクリルシラップを調整する
方法は、特に限定されるものではなく、例えば、熱硬化
性(メタ)アクリル系重合体、スチレン系単量体及びそ
れ以外のビニル単量体からなる混合物と、熱可塑性(メ
タ)アクリル系重合体、スチレン系単量体、それ以外の
ビニル単量体からなる混合物とをそれぞれ調製した後、
両混合物を混合する方法;熱硬化性(メタ)アクリル系
重合体、スチレン系単量体、それ以外のビニル単量体か
らなる混合物を調製した後、熱可塑性(メタ)アクリル
系重合体を混合する方法;熱可塑性(メタ)アクリル系
重合体、スチレン系単量体、それ以外のビニル単量体か
らなる混合物を調整した後、熱硬化性(メタ)アクリル
系重合体を混合する方法等が挙げられる。
【0080】また、これらの方法において、(メタ)ア
クリル系重合体(熱硬化性(メタ)アクリル系重合体ま
たは熱可塑性(メタ)アクリル系重合体)と、スチレン
及びスチレン以外のビニル単量体との混合物は、(メ
タ)アクリル系重合体と、スチレン系単量体及びそれ以
外のビニル単量体とを混合することにより調整したもの
であってもよく、また、単量体成分を部分重合させて得
られた(メタ)アクリル系重合体と未反応の単量体成分
との混合物であってもよい。
【0081】上記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、成
形材料として用いられる場合、さらに、必要に応じて、
増粘剤や、コハク酸誘導体、補強材等を含んでいてもよ
い。尚、以下の説明においては、(メタ)アクリル系樹
脂組成物における補強材以外の成分をコンパウンドと称
することにする。
【0082】増粘剤としては、特に限定はなく、例えば
酸化マグネシウム、酸化カルシウムなどのアルカリ土類
金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムな
どのアルカリ土類金属水酸化等が挙げられる。これら増
粘剤の1種又は2種以上を使用することができる。増粘
剤の使用量は、その種類や成形材料の用途にもよるが
(メタ)アクリルシラップ100重量部に対して5重量
部以下が好ましい。5重量部以下での使用により、コン
パウンドの増粘後の粘度を成形作業等に好適な範囲とす
ることができる。使用量が5重量部を超えると、コンパ
ウンドの増粘後の粘度が高くなり過ぎ、成形作業などの
作業効率が低下すると共に、得られた成形品の耐候性お
よび耐水性が低下するおそれがある。
【0083】コハク酸誘導体は、増粘剤による過剰な増
粘挙動、特に初期の増粘挙動を抑制する働きを備えてい
る。コハク誘導体としては、分子内にコハク酸骨格また
はコハク酸無水物骨格を備え、かつ該骨格のエチレン基
部分に、アルキル基、アルケニル基、脂環式炭化水素
基、芳香族炭化水素基などの置換基を有する化合物であ
ればよく、特に限定されるものではないが、全炭素数が
8〜30である化合物が好ましい。全炭素数が7以下の
コハク誘導体は、(メタ)アクリル系樹脂組成物、とり
わけ(メタ)アクリルシラップに対する溶解性が劣る。
他方炭素数が31以上のコハク誘導体は、該コハク誘導
体を使用することにより期待される作用・効果が乏しく
なる。つまり増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効
果が低い。
【0084】コハク誘導体として、具体的には、ヘキシ
ルコハク酸、ヘプチルコハク酸、オクチルコハク酸、ノ
ニルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テ
トラデシルコハク酸、ペンタデシルコハク酸、ヘキサデ
シルコハク酸、ヘプタデシルコハク酸、オクタデシルコ
ハク酸、ペンタドデシルコハク酸、エイコシルコハク酸
などの炭素数が4以上のアルキル基を有する化合物;ヘ
キセニルコハク酸、ヘプテニルコハク酸、オクテニルコ
ハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセ
ニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ペンタデセニ
ルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘプタデセニル
コハク酸、オクタデセニルコハク酸、ペンタドデセニル
コハク酸、エイコセニルコハク酸などのアルケニル基を
有する化合物;シクロドデシルコハク酸、シクロドデセ
ニルコハク酸などの脂環式炭化水素基を有する化合物;
ジフェニルブテニルコハク酸などの芳香族炭化水素基を
有する化合物;及びこれらコハク酸の無水物などが挙げ
られるが、特に限定されるものではない。これらコハク
酸誘導体は単独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合
して用いてもよい。なおコハク誘導体の調整方法は特に
限定されるものではない。
【0085】コハク酸誘導体の使用量は、その種類や
(メタ)アクリルシラップ及び増粘剤などとの組み合わ
せ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途などにもよる
が、(メタ)アクリルシラップ100重量部に対して
0.01〜10重量部の範囲が好ましい。コハク酸誘導
体の使用量が0.01重量部より少ない場合には、コハ
ク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果
が乏しくなる。つまり増粘剤による過剰な増粘挙動を抑
制する効果が乏しくなるおそれがある。コハク酸誘導体
の使用量が10重量部より多いと、コンパウンドの増粘
後の粘度が成形作業などに好適な所定値に達しないか、
あるいは達するまでに長時間を要するおそれがある。
【0086】補強材としては、例えばガラス繊維、炭素
繊維、金属繊維、セラミック繊維等の無機質繊維;アラ
ミドやポリエステル、ポリアミド等の合成繊維や再生繊
維、天然繊維を含めた有機繊維を挙げることができ、こ
れらは単独又は2種以上を使用することができる。繊維
形態としては、例えばロービング、チョップドストラン
ド、マット、クロス(織物、編物)等が挙げられるが特
に限定されるものではない。これら補強材は、単独また
二種以上を適宜混合して使用してもよい。
【0087】また、補強材とコンパウンドとを混合する
方法は、特に限定されるものではなく、補強材の形態に
応じて適宜設定すればよい。例えば、補強材の形態がマ
ットやクロスなどである場合には、該補強材にコンパウ
ンドを含浸させればよい。また補強材の形態がロービン
グやチョップストランドなどである場合には、該補強材
とコンパウンドとを混練すればよい。補強材を含む(メ
タ)アクリル系樹脂組成物は、SMCやBMCとして好
適である。
【0088】上記(メタ)アクリル系樹脂組成物は、硬
化剤を含んでいることが望ましく、また必要に応じて架
橋性単量体、添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0089】上記硬化剤としては、例えば(メタ)アク
リルシラップを製造する際に用いられる前記例示の重合
開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。
硬化剤の使用量は、その種類や(メタ)アクリルシラッ
プなどとの組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に
限定されるものではないが、(メタ)アクリルシラップ
100重量部に対して0.1重量部5重量部の範囲内が
好適である。
【0090】上記の架橋性単量体は、硬化物の架橋密度
を増加させる働きを備えている。架橋性単量体は、(メ
タ)アクリルシラップに含まれる官能基と反応する官能
基を複数含有する化合物であればよい。該架橋性単量体
としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリ
レート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレー
ト、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジ
プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペ
ンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロ
ールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリス
リトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能(メ
タ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート類;
ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソ
フタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソ
シアヌレートなどが挙げられる。架橋性単量体の使用量
は、その種類や(メタ)アクリルシラップなどとの組み
合わせ、(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望さ
れる物性などに応じて設定すればよく、特に限定される
ものではない。
【0091】上記添加物としては、一般に使用されてい
る各種添加剤を使用することができ、例えば着色剤、重
合禁止剤などが挙げられる。これら添加剤は、例えば
(メタ)アクリル系樹脂組成物の用途や所望される物性
等に応じて適宜添加すればよい。また添加剤の添加量
は、添加剤の種類や(メタ)アクリルシラップなどとの
組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定される
ものではない。
【0092】本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物
は、シートモールディングコンパウンド(SMC)やバ
ルクモールディングコンパウンド(BMC)、注型材料
などの成形材料として特に好適であり、プレス成形法及
び注型法など任意の成形方法により成形体とすることが
できる。得られた成形体は、キッチンカウンター、洗面
化粧台、バスタブ、テーブル、壁材、床材、家具、イン
テリア小物、印鑑等の様々な形態とされて様々な用途に
用いられる。
【0093】
【実施例】以下、実施例および比較例によって本発明を
さらに詳細に説明する。実施例中で「部」、「%」は、
特に断りのない限り、それぞれ「重量部」、「重量%」
を表すものとする。
【0094】(アクリルシラップの製造)温度計、冷却
器、窒素ガス導入管、および撹拌機を備えた反応器に、
(メタ)アクリル酸エステルとしてのメチルメタクリレ
ート(以下、「MMA」と記すことがある)190部
と、カルボキシル基含有単量体としてのメタクリル酸
(以下、「MAA」と記すことがある)10部とを仕込
んだ後、反応器内を窒素ガス置換した。次に、上記混合
物を撹拌しながら80℃に昇温した後、重合開始剤とし
ての2,2' −アゾビスイソブチロニトリル(以下、
「AIBN」と記すことがある)0.03部と、連鎖移
動剤としてn−ドデシルメルカプタン(以下、「n−D
Mr」と記すことがある)0.7部とを添加して、バル
ク共重合反応を行ない、反応器内の固形分が40%に達
したところで空気を導入し、酸化防止剤としての2,
2' −メチレンビス−(4−メチル−6−t−ブチルフ
ェノール)0.12部を添加して重合を停止させて、カ
ルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップを得
た。
【0095】次いで、上記メタクリルシラップに、不飽
和エポキシ化合物としてのグリシジルメタクリレート
(以下、「GMA」と記すことがある)20部と、触媒
としてのオクチル酸亜鉛0.05部を添加した後、10
0℃に昇温して、空気雰囲気下で10時間かけてエステ
ル化反応を行った。エステル化反応終了後、メチルメタ
クリレートを添加して固形分濃度が35%となるように
調整した。これにより熱硬化性シラップAを得た。得ら
れた熱硬化性シラップは25℃での粘度が50ポイズ、
酸価が10であった。また、GPC(ゲルパーミュエー
ションクロマトグラフィー)を用いて測定した熱硬化性
シラップA中の熱硬化(メタ)アクリル系重合体の重量
平均分子量(Mw)は15万であった。
【0096】熱硬化性シラップ中の重合体の二重結合当
量は、GMAを反応させる前後の酸価の差から重合体1
g当たりにおける消失したカルボキシル基のモル数を算
出し、これを重合体1g中の重合性二重結合基のモル数
として、この逆数を熱硬化性(メタ)アクリル系重合体
の二重結合当量とした。上記の熱硬化性シラップではG
MA反応前後の酸価差は20であったことから、二重結
合当量は2,600と算出された。
【0097】表1に示す重合組成物及び重合条件により
上記と同様の方法によって、シラップB〜Dを製造し
た。
【0098】
【表1】
【0099】実施例1 シラップAを57.1部、スチレン12部、MMA1
0.9部、熱可塑性(メタ)アクリル重合体(「スミペ
ックスLG−6A」住友化学工業社製、Mw:6万、ビ
ーズ状ポリマー)20部を混合して樹脂組成物を得た。
【0100】この樹脂組成物100部に対して離型剤と
してのステアリン酸亜鉛1部、シラン系カップリング剤
(「KBM503」信越化学社製)3部、硬化剤として
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5
−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂株式会社製「パ
ーヘキサTMH」)1.5部、増粘剤としての酸化マグ
ネシウム0.2部、充填剤としての水酸化アルミニウム
(「ハイジライドH−320」昭和電工社製)300
部、繊維補強材として長さ1mmのガラス繊維(日本硝
子繊維株式会社製「RES 010−BM53」)をB
MCとしたときに12wt%となるように混合し、双腕
型ニーダーを用いて30分間混錬した。以上より成形材
料としてのBMCを得た。得られたBMCをビニロンフ
ィルムで包装し40℃で1日間熟成させた。
【0101】次に300mm×300mmの大きさのキ
ャビティを有する金型を用いて、上型の金型温度を13
0℃、下型の金型温度を110℃として、上記BMC
1,600gを上記の金型に充填して圧力6MPaで7
分間、型締めし、10分間加熱加圧成形することによ
り、厚さ9mmの成形板を作成し、下記評価を行った。
結果を表2に示す。
【0102】(表面平滑性評価)成形板表面を目視によ
り観察し、表面平滑性が良好な場合を「○」、やや不良
の場合を「△」、不良の場合を「×」とした。
【0103】(ゲルタイム「GT」)キュラストメータ
ーV型(オリエンテック社製)を用い、試料であるBM
Cを130℃まで加熱し、その後130℃一定温度でB
MCを測定用ダイに投入し、回転トルクを連続して監視
し、回転トルクが急激に上昇するまでの時間を測定す
る。この時間をゲルタイムとした。なお、測定時の測定
用ダイの振れ角は1/4で行った。
【0104】(耐溶剤性試験)25℃のアセトンに試験
板を20時間浸漬後、目視により光沢の低下、ブリスタ
ー、白化の有無を観察し、いずれも発生していない場合
を「○」、少なくとも1つがやや生じている場合を
「△」、少なくとも1つが生じている場合を「×」とし
た。
【0105】(耐汚染性試験)成形品上に下記に列挙す
る汚染物質を24時間放置した後、水、中性洗剤、クレ
ンザーで洗浄し、成形品の光沢、着色、クラックの有無
の外観変化を目視により下記基準で評価した。 汚染物質:しょうゆ、ソース、コーヒー、ヘアートニッ
ク、アルカリ性住宅用合成洗剤、キシレン、水酸化ナト
リウム5%水溶液、塩酸5%水溶液、合成洗剤、赤イン
キ ○:汚染なし △:汚染ややあり ×:汚染あり
【0106】(曲げ強度試験)成形板から試験片を切り
出し、温度23℃、湿度50%で24時間放置後、JI
S K6911に準拠して測定した。
【0107】(耐ヒートサイクル性試験)成形品の耐ヒ
ートサイクル性は、加熱・冷却を交互に行ういわゆる冷
熱サイクルを実施することによって評価した。すなわ
ち、試験片として300mm×300mm×8mmの試
験片の中央部に100mm×100mmの正方形状の穴
を設けた。当該穴のコーナー部(隅部)を半径5mmの
曲面加工に仕上げると共に、エッジ部(辺部)を半径2
mmの曲面加工に仕上げた。そして上記コーナー部に1
80℃に加熱したアイロンを10分間押し当てた後、該
コーナー部に氷を10分間押し当てる工程を1サイクル
とする冷熱サイクルを、成形品にクラックが発生するま
で繰り返し行った。繰り返し回数が多いほど、成形品が
耐ヒートサイクル性に優れていることになる。耐ヒート
サイクル性に優れた成形品の繰り返し回数、すなわち、
本発明における繰り返し回数の好ましい値は5回以上で
ある。
【0108】なお、10回の冷熱サイクルでもクラック
発生が認められない場合にはそこで試験を打ち切り、試
験結果は10回と表示した。
【0109】(離型性試験)直径11.3mmの底蓋付
き金属製シリンダーを垂直に保持し、130℃に加熱す
る。そして、各実施例、比較例のBMCのガラス繊維の
みを除いて作成した各コンパウンド2.5gを該シリン
ダー内に投入し、シリンダーにピストンを挿入した後、
上から20kg/cm2 の圧力をかけ、該コンパウンド
が滴れ出さないようにした状態で、130℃、10分間
の条件でコンパウンドを硬化させる。硬化後、ピストン
をそのままの状態に保持しながら上からの圧力負荷を止
める。次いで、底蓋を取り外してシリンダー底部を開放
状態とした後、ピストン上に重りを静かに載せる。そし
て、重りの重さを徐々に増やし、シリンダー内の硬化物
がピストンによって押し出されたときの荷重を測定す
る。
【0110】すなわち、この測定によれば、荷重が小さ
いほど、硬化物は離型性に優れている。離型性の評価
は、硬化物が荷重700g/cm2 未満で押し出された
場合を良好「○」、硬化物が荷重700g/cm2 以上
1800g/cm2 未満で押し出された場合を離型可能
「△」、硬化物が荷重1800g/cm2 以上で押し出
された場合を離型性不良「×」とした。
【0111】実施例2〜8、比較例1〜8 表2に示す樹脂組成物及び材料を用い、実施例1と同様
にして成形板を作成し、評価を行った。結果を表2及び
表3に示す。
【0112】
【表2】
【0113】
【表3】
【0114】本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物を
用いた実施例1〜8の成形体はいずれも、表面平滑性に
優れると同時に曲げ強度にも優れ、その他特性について
も良好な結果を示した。一方(メタ)アクリル系樹脂組
成物の単量体量が多い比較例1の成形体では、表面平滑
性が悪く、曲げ強度も60と低い値を示した。また(メ
タ)アクリル系樹脂組成物中に熱硬化性重合体を含まな
い比較例2の成形体は、耐溶剤性、耐汚染性の点で実用
に耐えないものであった。他方(メタ)アクリル系樹脂
組成物中に熱可塑性重合体を含まない比較例3の成形体
及びスチレン系単量体を規定量未満しか含まない比較例
4の成形体では、表面平滑性が悪かった。スチレン系単
量体を規定量を超えて含む比較例5の成形体では、GT
が長くなり、耐ヒートサイクル性に劣っていた。脂肪酸
金属塩であるステアリン酸亜鉛を含まない比較例6の成
形体では、離型性が悪く、逆にステアリン酸亜鉛を多量
に含む比較例7、8の成形体では、曲げ強度が不十分で
耐ヒートサイクル性試験では1回、2回でクラックが発
生した。
【0115】
【発明の効果】本発明の(メタ)アクリル系樹脂組成物
によれば、耐溶剤性、耐汚染性、機械的強度に優れると
共に、曲げ強度及び耐ヒートサイクル性にも優れ、プレ
ス成形した場合であっても良好な表面平滑性、成形外観
を有する成形体を得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08J 5/00 CEY C08J 5/00 CEY C08K 5/09 C08K 5/09 5/098 5/098 C08L 33/00 C08L 33/00 (72)発明者 笹部 昌純 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 Fターム(参考) 4F071 AA22 AA28 AA32 AA33 AC09 AF02 AF05 AF17 AF55 AF57 AG02 AH19 BA09 BB03 BC07 4J002 BG05W BG05X EF026 EF056 EG006 GL02 4J011 FA07 PA28 PA29 PA33 PA39 PA45 PA69 PB30 PC02 4J026 AA42 AA43 AA44 AA45 AA48 AC17 AC18 BA05 BA08 BA15 BA16 BA26 BA27 BA31 BA32 BA33 BA35 BA40 BB02 BB03 DA03 DA05 DA12 DA13 DA15 DB05 DB13 DB15 DB32 FA09 GA07 4J100 AB02Q AB03Q AB04Q AB07P AB08Q AD03P AE19P AG04P AJ01P AJ02P AJ08P AJ09P AL03P AL08P AL36P AL44P AM02P AM15P AM21P AM45P AM47P AM48P BA05P BA06P BA15P BA16P BC04P BC43P CA04 JA67

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、熱
    硬化性(メタ)アクリル系重合体、スチレン系単量体、
    スチレン系単量体以外のビニル単量体からなる(メタ)
    アクリルシラップに脂肪酸または脂肪酸金属塩を添加し
    てなる(メタ)アクリル系樹脂組成物であって、 スチレン系単量体とスチレン系単量体以外のビニル単量
    体の重量比が10/90〜70/30の範囲で、 該熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と該熱硬化性(メ
    タ)アクリル系重合体の重量比が95/5〜5/95の
    範囲で、 全単量体と全重合体との重量比が20/80〜80/2
    0の範囲であることを特徴とする(メタ)アクリル系樹
    脂組成物。
  2. 【請求項2】 脂肪酸または脂肪酸金属塩の添加量が、
    アクリルシラップ100重量部に対して0.1〜2重量
    部の範囲である請求項1記載の(メタ)アクリル系樹脂
    組成物。
  3. 【請求項3】 請求項1又は2の(メタ)アクリル系樹
    脂組成物を用いて成形されたことを特徴とする成形体。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001098429A1 (fr) * 2000-06-22 2001-12-27 Mitsubishi Rayon Co., Ltd. Agent epaississant, composition epaississante et leur procede de production, compose de moulage de plaque ou melange a mouler en vrac et leur procede de production, resine moulee et son procede de production
JP2010047767A (ja) * 2009-10-21 2010-03-04 Mitsubishi Gas Chemical Co Inc アクリルシラップ

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2001098429A1 (fr) * 2000-06-22 2001-12-27 Mitsubishi Rayon Co., Ltd. Agent epaississant, composition epaississante et leur procede de production, compose de moulage de plaque ou melange a mouler en vrac et leur procede de production, resine moulee et son procede de production
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