JP2002067064A - 成形品の製造方法 - Google Patents

成形品の製造方法

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JP2002067064A
JP2002067064A JP2000260253A JP2000260253A JP2002067064A JP 2002067064 A JP2002067064 A JP 2002067064A JP 2000260253 A JP2000260253 A JP 2000260253A JP 2000260253 A JP2000260253 A JP 2000260253A JP 2002067064 A JP2002067064 A JP 2002067064A
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meth
mold
temperature
molding
acid
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JP2000260253A
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Akihiko Fukada
亮彦 深田
Shigeru Oka
茂 岡
Shinichi Goto
伸一 後藤
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Nippon Shokubai Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 注型成形やプレス成形等において、成形材料
の熱収縮を抑制することにより成形品表面の光沢等の表
面性を向上し、しかも、成形サイクルを短くして低コス
ト化することができる成形品の製造方法を提供する。 【解決手段】 熱硬化性樹脂組成物を熱媒体が接する成
形型内に充填して加熱加圧成形した後に、意匠面側の成
形型に接する該熱媒体温度を10℃以上低下させてから
圧抜きをして脱型を行う成形品の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、成形品の製造方法
に関する。
【0002】
【従来の技術】人工大理石等の成形品は、軽量で高強度
であり、表面外観等に優れることから、バスタブ、浴室
パネル、キッチンカウンター、洗面カウンター等の住設
機器、建築用装飾材、船艇、タンク、耐食機器、工業部
品、自動車、電気部品等の様々な用途に用いられてい
る。このような成形品の製造では、生産量、性能やコス
トの兼ね合いから、プレス成形と注型成形が使い分けら
れている。例えば、少量生産で高品質が要求される場合
は注型成形、大量生産で高品質が要求される場合はバル
クモールディングコンパウンド(BMC)のプレス成
形、大量生産で低コストが要求される場合はシートモー
ルディングコンパウンド(SMC)のプレス成形という
ように成形材料の選定と成形方法の選定が行われてい
る。
【0003】これらの成形方法において、注型成形で
は、設備投資を抑える場合は繊維強化プラスチック型
(FRP型)、より生産性を高める場合は電鋳型で加圧
バッグによって材料の収縮に型が追従するシステムが採
用されている。注型成形の方法としては、通常では図1
に示すように閉じた型にコンパウンドを注入し、中温低
圧による加熱加圧を行って硬化させた後、脱型して成形
品を得ることになる。この場合、一般的に、コンパウン
ドの注入時には型温を低めに設定しておき、注入完了後
に昇温して硬化させることになる。また、プレス成形の
方法としては、通常では図4に示すようにBMCやSM
C等の材料を高温高圧による加熱加圧を行って硬化させ
た後、脱型して成形品を得ることになる。この場合、一
般的に、高温で材料を充填(チャージ)し、そのまま高
温により短時間で成形することになる。
【0004】一方、成形材料としては、例えば、注型成
形では、樹脂、無機充填材、硬化剤等を含んでなるコン
パウンドが用いられ、プレス成形では、樹脂、無機充填
材、硬化剤、ガラス繊維等を含んでなる組成物を増粘し
たBMCやSMCが用いられることになる。これらの材
料におけるベース樹脂としては、例えば、ポリエステ
ル、ビニルエステル、ウレタン(メタ)アクリレート、
ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル
シラップ等が挙げられる。中でも、(メタ)アクリルシ
ラップが最も耐熱変色、耐熱水変色、色調、表面硬度等
が優れているため、成形品をより高付加価値化すること
ができる可能性がある。
【0005】しかしながら、通常の成形方法では、成形
材料に熱収縮が生じることに起因して成形品の表面外観
に影響を与えることになる。特に、(メタ)アクリルシ
ラップを用いるときには、ポリマーのTg(ガラス転移
点)が低いために熱収縮が大きくなって表面の光沢が悪
くなり、また、硬化収縮率が大きいために成形が困難で
あった。更に、注型成形では、コンパウンドを硬化させ
た後に脱型し、次にコンパウンドを注入するまでに降温
して温度を安定させるために時間がかかるという欠点が
あり、プレス成形では、高温で加熱加圧すると熱収縮の
影響が大きくなって成形品の表面光沢が低下することに
なり、これを回避するために低温で加熱加圧すると成形
時間がかかって製品コストが上昇するという欠点があっ
た。従って、いずれの成形方法においても、共通の課題
としてより良好な表面性を付与して高付加価値化するこ
とと、成形サイクルを短くして低コスト化することとの
両立が要望されていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記現状に鑑み、本発
明は、注型成形やプレス成形等において、成形材料の熱
収縮を抑制することにより成形品表面の光沢等の表面性
を向上し、しかも、成形サイクルを短くして低コスト化
することができる成形品の製造方法を提供することを目
的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
【0008】本発明は、熱硬化性樹脂組成物を熱媒体が
接する成形型内に充填して加熱加圧成形した後に、意匠
面側の成形型に接する上記熱媒体温度を10℃以上低下
させてから圧抜きをして脱型を行う成形品の製造方法で
ある。本発明はまた、熱硬化性樹脂組成物を熱媒体が接
する成形型内に充填して意匠面側の成形型に接する上記
熱媒体温度を10℃以上上昇させて加熱加圧成形した後
に、上記熱媒体温度を10℃以上低下させてから圧抜き
をして脱型を行い、続いて熱硬化性樹脂組成物を成形型
内に充填することを繰り返す連続的な成形品の製造方法
でもある。
【0009】本発明者らは、注型成形やプレス成形等に
よる成形品の製造方法を検討するうち、(1)高い成形
温度で成形し、低温で圧抜き、脱型することによって成
形時間が短くなり、表面性の良好な成形品が得られるこ
とにまず着目し、これにより、(2)図1〜6に従来法
と比較して示すように、圧抜きをして脱型後、次のショ
ットへ行く工程までを含めた成形サイクルが短くできる
ことや、(3)図8に示すように、成形品の線膨張係数
から求めた材料Tgよりも低い温度で圧抜きをして脱型
することによって更に表面性の良好な成形品が得られる
こと、(4)特に(メタ)アクリル系シラップの場合に
はTgが低いため高光沢品を短いサイクルで得るのに有
効であることにも着目し、これらのことから上記課題を
みごとに解決することができることに想到し、本発明に
到達したものである。以下に本発明を詳述する。
【0010】本発明の成形品の製造方法は、熱硬化性樹
脂組成物を熱媒体が接する成形型内に充填して加熱加圧
成形した後に、意匠面側の成形型に接する上記熱媒体温
度を10℃以上低下させてから圧抜きをして脱型を行う
方法である。これにより、成形品表面の光沢等の表面性
を向上し、しかも、成形サイクルを短くして低コスト化
することが可能となる。この場合、成形温度等の成形条
件を考慮して上記熱媒体温度を低下させる度合いを10
℃以上で適宜設定することになり、上限については特に
限定されないが、例えば、10〜60℃の範囲で低下さ
せることが好ましい。より効果を発揮させるためには、
上記熱媒体温度を15℃以上低下させることが好まし
い。より好ましくは、20℃以上低下させることであ
り、更に好ましくは、25℃以上低下させることであ
る。尚、熱硬化性樹脂組成物を硬化させる際の熱媒体の
温度、つまり熱硬化性樹脂組成物を成形型内に充填して
加熱加圧する際の温度や、熱媒体により温調できる温度
等については後に詳述する。
【0011】本発明では、熱硬化性樹脂組成物を熱媒体
が接する成形型内に充填して意匠面側の成形型に接する
上記熱媒体温度を10℃以上上昇させて加熱加圧成形し
た後に、上記熱媒体温度を10℃以上低下させてから圧
抜きをして脱型を行い、続いて熱硬化性樹脂組成物を成
形型内に充填することを繰り返して連続的に成形品を製
造することも可能である。即ち、本発明の成形品の製造
方法では、該成形品の製造を1サイクル行ってもよく、
複数サイクル繰り返して行ってもよい。これにより、連
続的に製造される成形品に良好な表面性を付与して高付
加価値化することと、成形サイクルを短くして低コスト
化することとを両立させることができるという本発明の
作用効果をより充分に発揮することができることとな
る。この場合も、上記熱媒体温度を低下させる度合いに
ついては上述したのと同様である。
【0012】本発明の成形品の製造方法において、熱硬
化性樹脂組成物とは、注型成形に用いるコンパウンド
や、プレス成形に用いるBMC、SMC等の成形材料を
意味する。また、熱媒体が接する成形型とは、成形型に
熱媒体が流れる配管が設置され、該熱媒体温度が温調機
により制御されるような加熱方式の成形型を主に意味す
るが、本発明では後述するようなその他の加熱方式の成
形型を用いてもよく、例えば、熱媒体を用いるときと同
様に加熱温度を設定することにより本発明の成形品の製
造方法を行うことが可能であり、このような形態も本発
明の実施形態である。更に、意匠面側の成形型とは、成
形品に表面と裏面がある場合に、成形品の表面、つまり
製品表面に接する側の成形型を意味し、例えば、上型と
下型とにより構成される成形型では、通常はいずれか一
方が意匠面側の成形型となるが、両方が意匠面側の成形
型となっていてもよい。尚、これら本発明の構成要素に
ついては後に詳述する。
【0013】本発明の成形品の製造方法が上記作用効果
を発現する理由を具体的に説明するために、図1〜7を
用いて、注型成形とプレス成形の場合に分けて従来法と
比較して以下に説明する。尚、これらの図に示された形
態は本発明の一実施形態であり、本発明ではこれらに限
定されるものではない。
【0014】図1〜3は、注型成形の場合の製造方法を
説明するための概念図である。図1では、成形型の断面
概念図が示され、下型が意匠面側の型であり、(1)で
は、型締めされた成形型内にコンパウンドを注入するこ
とにより充填し、(2)では、コンパウンド内の空気抜
きをして硬化させ、(3)では、圧抜きをして脱型を行
う様子が示されている。この場合、本発明の製造方法で
は、例えば、(1)で熱媒体の温度を70℃程度の低め
の温度として充填途中の硬化を防止し、(2)で95℃
程度の中温により低圧で硬化させ、(3)で70℃程度
に低下させてから圧抜きをして脱型を行うことになる。
このように、注型時には型温を低めに設定しておき、注
入完了後に昇温して硬化させ、再び注入時の温度に低下
させることにより、10℃以上低下させてから圧抜きを
して脱型することによって、短い成形サイクルにより高
光沢な成形品が得られることになる。これに対して、従
来法では、(3)で95℃の硬化温度のまま圧抜きをし
て脱型を行うことになり、成形品の表面の光沢が充分で
なかったり、凹凸を生じたりして高付加価値化が充分に
できないこととなる。
【0015】即ち、熱硬化性樹脂組成物を用いて注型成
形やプレス成形等による成形品の製造を行うと、熱硬化
性樹脂組成物の硬化収縮や熱収縮に起因して成形品の表
面性が低下する、例えば、成形品表面の光沢が低下した
り凹凸が生じたりすることになるが、硬化収縮について
は熱硬化性樹脂組成物の加熱加圧中に生じるため、加圧
によって抑制されることになる。特に、後述するように
成形品の意匠面側の成形型温度を相対的に高くし、成形
品の裏側となる成形型温度を相対的に低くすると、この
ような硬化収縮はかなり抑制されることになる。本発明
では、このような硬化収縮と共に、熱収縮も抑制するこ
とにより、上記作用効果を発現することになる。つま
り、加熱加圧成形した後から圧抜きをする前に、意匠面
側の成形型に接する熱媒体温度を10℃以上低下させる
ことにより、熱硬化性樹脂組成物から形成された成形品
のマトリックス樹脂温度が低下するために、図7(1)
に示すように圧抜き(開放)してもマトリックス樹脂の
熱収縮が抑制されることになる。これに対して、従来法
では、加熱加圧中の温度で圧抜き(開放)するため、図
7(2)に示すようにマトリックス樹脂の熱収縮が抑制
されず、成形品表面の表面性を向上することはできない
こととなる。
【0016】上記の製造例において、成形型に接する熱
媒体温度と成形時間との関係をグラフにより示すと、図
2及び図3のようになる。図2が本発明の場合、図3が
従来法の場合である。図2では、(1)注入5分、
(2)硬化15分、(3)降温3分、(4)圧抜きをし
て脱型3分、(5)次のサイクルに入るまで2分を1サ
イクルとし、このようなサイクルを繰り返すことを示し
ている。これに対して、図3では、(1)注入5分、
(2)硬化15分、(3)圧抜きをして脱型3分、
(4)降温3分、(5)次のサイクルに入るまで5分を
1サイクルとし、このようなサイクルを繰り返すことを
示している。このように、本発明では、圧抜き前に降温
することから、降温した後に次のサイクルの注入温度に
調える時間に圧抜き・脱型時間が含まれることになるた
め、1サイクルあたりの成形時間が28分となるが、従
来法では、降温した後に次のサイクルの注入温度に調え
る時間がかかるため、1サイクルあたりの成形時間が3
1分となる。この例では、本発明の製造方法の方が従来
法よりも1サイクルあたり3分節約できることになる
が、工業的な製造においてはこのようなサイクルを何回
も繰り返すことになることから、このように1サイクル
あたりの時間を短縮することができると、成形品をより
低コストで提供することが可能となる。
【0017】図4〜6は、プレス成形の場合の製造方法
を説明するための概念図である。図4では、成形型の断
面概念図が示され、下型が意匠面側の型であり、(1)
では、下型にBMCやSMC等の材料を載積し、(2)
では、型締めして成形型内に材料を充填して硬化させ、
(3)では、圧抜きをして脱型を行う様子が示されてい
る。この場合、本発明の製造方法では、例えば、(1)
で熱媒体の温度を70℃程度の低めの温度として充填途
中の硬化を防止し、(2)で120℃程度の高温により
高圧で硬化させ、(3)で70℃程度に低下させてから
圧抜きをして脱型を行うことになる。このように、材料
充填時には成形型温を低めに設定しておき、型締め完了
後に昇温して硬化させ、再び充填時の温度に低下させる
ことにより10℃以上低下させてから圧抜きをして脱型
することによって、短い成形サイクルにより高光沢な成
形品が得られることになる。これに対して、従来法で
は、高温で、例えばTg以上の温度、アクリル系樹脂材
料の場合には120℃程度の温度で材料を充填し、その
まま高温により短時間で成形すると、図7(2)に示す
ように、成形品の表面が良好な光沢とはならない。ま
た、中温で、例えば95℃程度の温度で材料を充填し、
そのまま中温により成形すると、成形時間が長くなり、
成形サイクルを短縮することができないこととなる。
【0018】上記の製造例において、成形型に接する熱
媒体温度と成形時間との関係をグラフにより示すと、図
5及び図6のようになる。図5が本発明の場合、図6が
従来法の場合である。図5では、(1)材料チャージ、
(2)硬化13分、(3)圧抜をして脱型を1サイクル
としている。これにより、製品コストを低コストとする
のに充分な成形サイクルの短縮と成形品の良好な表面性
とを両立している。また、低温でチャージすることによ
り、材料の温度ムラを抑制して硬化ムラを解消し、成形
品の表面性を向上している。これに対して、図6では、
120℃程度の高温で成形する場合には(1)材料チャ
ージ、(2)硬化5分、(3)圧抜きをして脱型を1サ
イクルとし、95℃程度の中温で成形する場合には
(1)材料チャージ、(2)硬化15分以上、(3)圧
抜きをして脱型を1サイクルとしている。このように、
従来法により高温で成形する場合、1サイクルあたりの
時間を短縮することができるが、高温であるために熱収
縮が大きくなり、成形品の表面が良好な光沢とはならな
い。また、従来法により中温で成形する場合、例えば、
(メタ)アクリル系樹脂材料を用いて100℃以下で圧
抜きをして脱型するために100℃以下で成形する場
合、成形サイクルを短くするために低分解型の硬化剤を
用いると、成形材料のシェルフライフ(貯蔵寿命)が短
くなるという不具合があり、逆に高温分解型の硬化剤を
用いると、図6に示すように、成形サイクルが15分以
上と長くなる。従って、従来法では解決できなかったこ
れらの不具合を、本発明により解消して高付加価値化し
た成形品を低コストで提供することが可能となる。
【0019】本発明では、上記圧抜き時の意匠面側の成
形型に接する上記熱媒体温度が線膨張係数によって求め
た成形品のTgよりも10℃以上低い温度であることが
好ましい。これにより、加熱加圧硬化により成形品を得
た後、加圧状態のままで成形品の温度をTg以下に下げ
ることによって樹脂成分の熱収縮による成形品表面の凹
凸を最小限に抑え、高光沢の成形品を得ることがより確
実となる。上記温度が10℃以上低い温度でないと、成
形材料中に混合している、線膨張係数が相対的に小さい
ガラス繊維やフィラーによる表面の凹凸が目立つおそれ
があり、良好な表面性が得られないおそれがある。特
に、(メタ)アクリル系樹脂材料を用いるときには、こ
のような表面の凹凸が顕著になるおそれがある。より好
ましくは、上記熱媒体温度が線膨張係数によって求めた
成形品のTgよりも15℃以上低い温度であり、更に好
ましくは、20℃以上低い温度である。このような製造
方法を図8を用いて以下に説明する。
【0020】図8は、成形品の線膨張係数の変極点より
求めたTgを示したグラフであり、例えば(メタ)アク
リル系樹脂材料の場合、線膨張係数がTgの点を境界点
として温度の低いときでは10-6/Kとなり、温度の高
いときでは10-4/Kとなっていることを示している。
このグラフにおいて、圧抜き時の意匠面側の成形型に接
する熱媒体温度が成形品のTgよりも10℃以上低い温
度であると、線膨張係数が10-6/Kとかなり小さくな
ることから、熱収縮をより効率的に抑制することが可能
となり、更に表面性の良好な成形品が得られることにな
る。
【0021】上記成形品のTgの測定方法としては、例
えば、以下に記載するように行うことができる。 (1)成形品から一辺5mmの直方体を切り出す。 (2)島津製作所社製TMA(Thermal Mec
hanical Analysis)装置にて、2℃/
分の昇温速度で室温から200℃まで昇温し、線膨張係
数の変極点を図8のように作図して求め、これをTgと
する。残留応力の影響で明確な変極点が求められない場
合は、200℃まで昇温した試験片を一旦冷却して、成
型時に発生した残留応力を取り除き、再度2℃/分の昇
温速度で室温から200℃まで昇温して測定する。尚、
試験片の大きさや測定温度等は、成形品を構成する熱硬
化性樹脂等により適宜設定すればよい。
【0022】本発明における各構成要素について以下に
説明する。上記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂を
含んでなる。このような熱硬化性樹脂としては、例え
ば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ウ
レタンアクリレート樹脂、(メタ)アクリルシラップ等
のラジカル重合性樹脂を用いることが好適である。これ
らの中で、特に(メタ)アクリルシラップは、耐熱変
色、耐熱水変色、色調、表面硬度等が優れているが、ポ
リマーのTgが低く、熱収縮の影響を受けやすいため、
本発明の製造方法を適用することにより、成形品表面の
光沢向上について大きな効果が得られることから、優れ
た性能を有し、表面性が大きく向上された成形品を低コ
ストで提供することが可能となる。更に、側鎖二重結合
型(メタ)アクリルシラップを用いると、有効に架橋密
度を分散させることができ、また、軟質モノマー等を添
加しても相分離を生じないので耐衝撃性の優れた材料と
なり、好ましい。尚、本明細書中、(メタ)アクリルシ
ラップを含んでなる熱硬化性樹脂組成物を(メタ)アク
リル系樹脂組成物又は(メタ)アクリル系樹脂材料とも
いう。
【0023】本発明で使用することができる不飽和ポリ
エステル樹脂とは、二塩基酸と多価アルコールとを、例
えば、120〜250℃に加熱して脱水縮合することに
より得られるオリゴマーを成分とする樹脂である。上記
二塩基酸として具体的には、例えば、マレイン酸、無水
マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、
シトラコン酸等の、α,β−不飽和二塩基酸及びその無
水物;フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフ
タル酸、テトラヒドロフタル酸、テトラヒドロ無水フタ
ル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒド
ロ無水フタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、ヘキサヒドロ
無水フタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク
酸、無水コハク酸、マロン酸、グルタル酸、アジピン
酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカン二
酸、ダイマー酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、
2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレン
ジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸無水
物、4,4′−ビフェニルジカルボン酸等の、飽和二塩
基酸及びその無水物;等が挙げられるが、特に限定され
るものではない。
【0024】上記二塩基酸は、α,β−不飽和二塩基酸
及び/又はその無水物を含んでいればよい。上記α,β
−不飽和二塩基酸及び/又はその無水物(以下、α,β
−不飽和二塩基酸類ともいう)は、一種類のみを用いて
もよく、二種類以上を併用してもよい。また、飽和二塩
基酸及び/又はその無水物(以下、飽和二塩基酸類とも
いう)は、必要に応じて、α,β−不飽和二塩基酸類と
併用される。飽和二塩基酸類を併用する場合において、
該飽和二塩基酸類は、一種類のみを用いてもよく、二種
類以上を用いてもよい。また、飽和二塩基酸類を併用す
る場合において、二塩基酸におけるα,β−不飽和二塩
基酸類の割合は、0を越えて100モル%未満、好まし
くは15モル%〜100モル%未満であることが好まし
い。
【0025】上記多価アルコールとしては、具体的に
は、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコー
ル、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコー
ル、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、
トリプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、
1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、
1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、
1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキ
サンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,
4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチルプロパン
−1,3−ジオール、トリメチロールプロパン、水素化
ビスフェノールA、ビスフェノールAのアルキレンオキ
シド(例えばエチレンオキシド、プロピレンオキシド
等)付加物等が挙げられるが、特に限定されるものでは
ない。これら化合物は、一種類のみを用いてもよく、二
種類以上を併用してもよい。尚、二塩基酸に対する多価
アルコールの割合は、特に限定されるものではない。
【0026】上記二塩基酸と上記多価アルコールとを縮
合反応させる際の反応方法や反応条件等は、特に限定さ
れるものではないが、反応温度及び反応時間は、縮合反
応が完結するように設定することが好ましい。また、該
反応においては、必要に応じて、縮合反応を促進させる
触媒、又は、消泡剤等の添加剤を反応系に共存させるこ
とができる。尚、触媒や添加剤の使用量は、特に限定さ
れるものではない。また、二塩基酸、多価アルコール、
及び、触媒等の混合順序は、特に限定されるものではな
い。更に、縮合反応は、窒素やヘリウム等の不活性ガス
の雰囲気下で行うことがより好ましい。
【0027】上記不飽和ポリエステル樹脂のオリゴマー
の数平均分子量(Mn)は、500〜6000の範囲内
が好ましい。数平均分子量が6000よりも大きい不飽
和ポリエステル樹脂は、粘度が高くなるので、該不飽和
ポリエステル樹脂や、これを含む重合性樹脂組成物の取
り扱い性が低下する場合がある。
【0028】上記不飽和ポリエステル樹脂の製法以外で
例えば、特開平8−73577号公報、特開昭56−1
50044号公報、特開昭57−59834号公報等に
記載されるラジカル重合性のオリゴマーである不飽和オ
リゴエステル等を上記不飽和ポリエステル樹脂のオリゴ
マーとして使用してもかまわない。
【0029】本発明では、ラジカル重合性のオリゴマー
である不飽和オリゴエステルを使用することができ、該
不飽和オリゴエステルとは、具体的には、分子末端に少
なくとも1個の(メタ)アクリロイル基を有する不飽和
オリゴエステルである。より具体的には、(メタ)アク
リル酸、アルコール性水酸基を有する(メタ)アクリレ
ート、カルボン酸基を有する(メタ)アクリレート、ア
ミノ基を有する(メタ)アクリレート及びリン酸基を有
する(メタ)アクリレートからなる群より選択される少
なくとも1種以上の化合物を出発物質として、アルキレ
ンオキシド及び不飽和多塩基酸無水物を反応させて得ら
れる不飽和オリゴエステルである。また、必要に応じ
て、更に飽和多塩基酸無水物が逐次開環付加した構造を
有する低分子量オリゴエステルであってもよい。
【0030】また、飽和二塩基酸類と多価アルコールを
上記不飽和ポリエステル樹脂の反応条件にて反応させれ
ば、飽和ポリエステルを製造する事ができる。上記飽和
ポリエステルにスチレン等のラジカル重合性単量体を配
合する事で、不飽和ポリエステル樹脂と同様、ラジカ重
合性樹脂として使用する事ができる。よって、飽和ポリ
エステルを含む重合性樹脂組成物も、本発明の好ましい
形態となる。
【0031】本発明で使用することができるビニルエス
テル樹脂、即ち、エポキシ(メタ)アクリレート樹脂と
は、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するもので
あり、例えば、分子内にエポキシ基を2個以上有するエ
ポキシ化合物と、(メタ)アクリル酸と、必要に応じて
多塩基酸とを付加反応させることにより得られるオリゴ
マーを成分とする樹脂である。
【0032】上記エポキシ化合物としては、エポキシ樹
脂を用いることができ、例えば、ビスフェノールA型エ
ポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、水素化
ビスフェノール型エポキシ樹脂、フェノールノボラック
型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂
等が挙げられる。また、上記エポキシ化合物としては、
例えば、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテ
ル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等の多
価アルコールのグリシジルエーテル等;フタル酸ジグリ
シジルエーテル、ダイマー酸ジグリシジルエーテル等の
多塩基酸のグリシジルエステル等も挙げられる。エポキ
シ化合物は、上記化合物群から1種、或いは2種以上を
併用してもよい。
【0033】上記多塩基酸としては、例えば、上記α,
β−不飽和二塩基酸、飽和二塩基酸の他、ピロメリット
酸、トリメリット酸、トリマー酸、カルボキシル基を有
するポリブタジエン、カルボキシル基を有するブタジエ
ン−アクリルニトリル共重合体、α,β−不飽和二塩基
酸及び/又は飽和二塩基酸と多価アルコールのエステル
化により得られる末端にカルボキシル基を有する化合物
等が挙げられ、これらの1種、或いは2種以上を併用し
てもよい。これらの多塩基酸を併用することにより、柔
軟性に富むビニルエステル樹脂を得ることができる。分
子内にエポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物と、
(メタ)アクリル酸と、必要に応じて多塩基酸とを付加
反応させるためには、通常、付加反応触媒の存在下で、
50〜150℃の範囲で加熱することで反応は進行す
る。付加反応触媒としては、例えば、公知のエポキシ
(メタ)アクリレート樹脂の合成触媒を用いればよく、
3級アミン類、オニウム塩類、金属石鹸等が挙げられ
る。
【0034】本発明で使用することができるウレタン
(メタ)アクリレート樹脂とは、例えば、ポリイソシア
ネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化
合物、必要に応じ、ポリオール化合物とをウレタン化反
応させることにより得ることができるオリゴマーを成分
とする樹脂である。
【0035】上記ポリイソシアネート化合物として、例
えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジ
イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサ
メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネー
ト等が挙げられる。上記水酸基を有する(メタ)アクリ
レート化合物としては、分子内に少なくとも1個の水酸
基を有する(メタ)アクリレート化合物であればよく、
例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒド
ロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレング
リコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレング
リコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】上記ポリオール化合物としては、例えば、
上記多価アルコールに加え、ポリエチレングリコール、
ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパンの
アルキレンオキシド付加物、フェノールノボラックのア
ルキレンオキシド付加物等であるポリエーテルポリオー
ル類;トリメチロールプロパンモノアリルエーテル、ペ
ンタエリスリトールジアリルエーテル等のアリルエーテ
ル基を有するアルコール類;マレイン酸、アジピン酸、
フタル酸等の多塩基酸とポリオールのエステル化反応に
より得られるポリエステルポリオール類等が挙げられ、
更に、アリルアルコール、トリメチロールプロパンジア
リルエーテル等の1価のアルコール類;エチレンオキシ
ド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、グリシジ
ル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等
のオキシラン化合物も併用することができる。
【0037】上記ポリイソシアネート化合物と上記水酸
基を有する(メタ)アクリレート化合物、必要に応じ、
上記ポリオール化合物とをウレタン化反応させるために
は、水酸基とイソシアネート基がほぼ当量となる量を用
い、40〜140℃の範囲で加熱することにより、反応
は進行する。該ウレタン化反応を促進させるためには、
公知のウレタン化触媒を用いることができ、例えば、3
級アミン類、ジブチル錫ジラウレート、塩化錫等の錫化
合物類が挙げられる。
【0038】本発明で使用することができるポリエステ
ル(メタ)アクリレート樹脂とは、(メタ)アクリル酸
類、多価アルコール、及び、必要に応じて(メタ)アク
リル酸類以外の塩基酸のエステル化反応により得られる
オリゴマーを成分とする樹脂である。上記ポリエステル
(メタ)アクリレート樹脂の原料として用いられる上記
(メタ)アクリル酸類とは、特に限定されるものではな
いが、具体的には、例えば、(メタ)アクリル酸、(メ
タ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸
ハライド等の、水酸基とのエステル結合を生成しうる
(メタ)アクリル酸及びその誘導体である。
【0039】上記多価アルコールとしては、特に限定さ
れるものではないが、具体的には、例えば、不飽和ポリ
エステル樹脂の原料として例示した多価アルコールが挙
げられる。必要に応じて用いられる上記(メタ)アクリ
ル酸類以外の塩基酸としては、特に限定されるものでは
ないが、具体的には、例えば、不飽和ポリエステル樹脂
の原料として例示したα,β−不飽和二塩基酸類、飽和
二塩基酸類等が挙げられる。
【0040】また、上記多塩基酸と不飽和エポキシ化合
物の反応により得られるオリゴマーも、ポリエステル
(メタ)アクリレート樹脂のオリゴマーとして使用する
ことができる。上記不飽和エポキシ化合物としては、不
飽和グリシジル化合物等が挙げられ、好ましくは、グリ
シジル(メタ)アクリレートが挙げられる。上記多塩基
酸と不飽和エポキシ化合物の反応条件は、エポキシ(メ
タ)アクリレート樹脂の付加反応条件が好ましい。
【0041】本発明で使用することができる(メタ)ア
クリルシラップとは、(メタ)アクリル系重合体(A)
と、単量体(B)とにより構成されるものであり、該
(A)は、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体又は熱硬
化性(メタ)アクリル系重合体のいずれか一方又は両方
である。
【0042】ここでいうところの「熱可塑性(メタ)ア
クリル系重合体」とは、主鎖の主成分が(メタ)アクリ
ル酸エステル単位からなり、一分子中に重合性二重結合
を有さない重合体を指すものとする。また、「熱硬化性
(メタ)アクリル系重合体」とは、主鎖の主成分が(メ
タ)アクリル酸エステル単位からなり、一分子中に少な
くとも1個以上の重合性二重結合を有する重合体を指す
ものとする。尚、「主成分」とは、50重量%以上を指
すものとする。
【0043】上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体
は、主鎖の50重量%以上が(メタ)アクリル酸エステ
ル単位からなる重合体、即ち、(メタ)アクリル酸エス
テルを50重量%以上含む単量体成分を重合して得られ
る重合体であって、一分子中に重合性二重結合を有さな
い重合体であればよい。主鎖の(メタ)アクリル酸エス
テル単位の重量範囲としては、50〜100重量%であ
ることが好ましい。より好ましくは、60〜100重量
%であり、最も好ましくは、70〜100重量%であ
る。
【0044】上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の
重量平均分子量(Mw)は、10000〜100000
0の範囲内であることが好ましく、30000〜500
000の範囲内であることがより好ましく、50000
〜300000であることが最も好ましい。熱可塑性
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が
10000未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成
物を硬化させて得られる硬化物の耐熱性が低下する。一
方、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子
量(Mw)が1000000を超えると、(メタ)アク
リル系樹脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の
作業性が低下する。
【0045】上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体
は、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として含む単
量体成分(以下、単に「単量体成分」ともいう)を重合
することにより得られる。上記(メタ)アクリル酸エス
テルとしては、具体的には、例えば、メチル(メタ)ア
クリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピ
ル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレ
ート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert−ブ
チル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メ
タ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の
(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル
(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロア
ルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリ
レート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等
の塩基性(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられる
が、特に限定されるものではない。これら(メタ)アク
リル酸エステルは、単独で用いてもよく、二種類以上を
適宜混合して用いてもよい。
【0046】上記(メタ)アクリル酸エステルとして
は、上記例示の化合物のうち、得られる硬化物の耐衝撃
性や耐溶剤性等の物性が優れることになることから、メ
チルメタクリレートが特に好ましい。また、単量体成分
の主成分がメチルメタクリレートであることが望まし
く、これにより、主鎖の主成分がメチルメタクリレート
単位である熱可塑性(メタ)アクリル系重合体が得られ
る。熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の主鎖の主成分
をメチルメタクリレート単位とすることにより、(メ
タ)アクリル系樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物
の耐候性、透明性、表面の光沢等の各種物性や、外観、
安全性等をより一層向上させることができる。
【0047】尚、(メタ)アクリル酸エステルとして塩
基性(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合には、塩
基性(メタ)アクリル酸エステルに対して100重量%
以上の中性(メタ)アクリル酸エステルを混合して用い
るのが好ましい。上記中性(メタ)アクリル酸エステル
としては、上記(メタ)アクリル酸アルキルエステル、
(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を用いる
ことができる。
【0048】上記単量体成分は、カルボキシル基を有す
るビニル単量体を含んでいてもよく、これにより、カル
ボキシル基を有する熱可塑性(メタ)アクリル系重合体
が得られる。上記カルボキシル基を有する熱可塑性(メ
タ)アクリル系重合体は、(メタ)アクリル系樹脂組成
物に、増粘剤としてアルカリ土類金属酸化物及び/又は
アルカリ土類金属水酸化物を添加した場合に、容易に増
粘させることができる。
【0049】上記カルボキシル基を有する単量体(以
下、カルボキシル基含有単量体という)としては、一分
子中に、重合可能な二重結合と、カルボキシル基とを有
する化合物であればよく、特に限定されるものではな
い。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、
クロトン酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン
酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸
等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸の
モノエステル;長鎖カルボキシル基含有単量体等が挙げ
られる。上記不飽和ジカルボン酸のモノエステルとして
は、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マ
レイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、フマル
酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチ
ル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等
が挙げられる。
【0050】上記長鎖カルボキシル基含有単量体として
は、例えば、酸無水物を、ヒドロキシル基を有する(メ
タ)アクリル酸エステルでモノエステル化してなる酸無
水物のモノエステル等が挙げられる。上記ヒドロキシル
基を有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2−
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキ
シエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン
開環付加物又は2−ヒドロキシルエチル(メタ)アクリ
レートへのγ−ブチロラクトンの開環付加物等が挙げら
れる。上記酸無水物としては、無水コハク酸、無水フタ
ル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。従っ
て、酸無水物のモノエステルとしては、具体的には、例
えば、コハク酸モノエステル、フタル酸モノエステル、
ヘキサフタル酸モノエステル等が挙げられる。これらカ
ルボキシル基含有単量体は、単独で用いてもよく、二種
類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0051】上記カルボキシル基含有単量体の使用量
は、(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基含有
単量体との合計を100重量%として、0.5重量%〜
20重量%の範囲内であることが好ましく、1重量%〜
15重量%の範囲内であることがより好ましく、3重量
%〜10重量%の範囲内であることが更に好ましい。カ
ルボキシル基含有単量体の割合が 0.5重量%未満の
場合には、(メタ)アクリル系樹脂組成物の増粘を容易
にする効果が得られにくくなる。カルボキシル基含有単
量体の割合が20重量%を超える場合には、得られる硬
化物の耐衝撃性、耐汚染性、耐溶剤性等の物性が低下す
るおそれがある。
【0052】上記単量体成分は、更に、必要に応じて、
他の単量体として、ビニル化合物を含んでいてもよい。
上記ビニル化合物としては、重合可能な二重結合を有
し、カルボキシル基を有しない化合物であればよく、具
体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビ
ニルトルエン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;
酢酸ビニル等のビニルエステル;アリルアルコール、エ
チレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリ
コールモノアリルエーテル等のアリル化合物;(メタ)
アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;N−メト
キシメチルアクリルアミド、N−エトキシメチルアクリ
ルアミド等のN−アルコキシ置換(メタ)アクリルアミ
ド;不飽和塩基性単量体;N−フェニルマレイミド、N
−シクロヘキシルマレイミド、N−イソプロピルマレイ
ミド等のマレイミド系単量体等が挙げられるが、特に限
定されるものではない。
【0053】これらビニル化合物は、一種類のみを混合
してもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて混合
してもよい。(メタ)アクリル酸エステルにビニル化合
物を混合する場合における両者の混合割合は、ビニル化
合物の種類や(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わ
せ等にもよるが、(メタ)アクリル酸エステルとビニル
化合物との合計量 100重量%に対して、ビニル化合
物が少なくとも50重量%未満であればよく、20重量
%未満であることがより好ましい。
【0054】尚、単量体成分における(メタ)アクリル
酸エステルの含有率は、50重量%以上であればよい
が、80重量%以上であることが望ましい。
【0055】上記単量体成分を重合させる際には、重合
開始剤を使用することが望ましい。上記の重合開始剤と
しては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイ
ド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパ
ーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチ
ルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシオクト
エート、tert−ブチルパーオキシベンゾエート、ク
メンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキ
サイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4−tert
−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等
の有機過酸化物;2,2′−アゾビスイソブチロニトリ
ル、2−フェニルアゾ −2,4−ジメチル −4−メト
キシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられるが、
特に限定されるものではない。これら重合開始剤は、単
独で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いても
よい。単量体成分に対する重合開始剤の添加量等は、特
に限定されるものではない。
【0056】上記単量体成分を重合させる際には、単量
体成分の重合反応を制御して熱可塑性(メタ)アクリル
系重合体の重量平均分子量を調節するために、連鎖移動
剤を添加するのがより望ましい。上記連鎖移動剤として
は、単量体成分の重合反応を極めて容易に制御できるこ
とから、チオール化合物が特に好適に用いられるが、特
に限定されるものではなく、α−メチルスチレンダイマ
ー、四塩化炭素等を用いることもできる。上記チオール
化合物としては、具体的には、例えば、tert−ブチ
ルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデ
シルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェ
ノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオ
グリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレング
リコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパン
トリス−(チオグリコレート)、ペンタエリスリトール
テトラキス−(チオグリコレート)等のチオグリコール
酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β
−メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4−ブタンジ
オールジ(β−チオプロピオネート)、トリメチロール
プロパントリス−(β−チオプロピオネート)、ペンタ
エリスリトールテトラキス−(β−チオプロピオネー
ト)等のβ−メルカプトプロピオン酸アルキルエステル
等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これ
ら連鎖移動剤は、一種類のみを用いてもよく、二種類以
上を適宜混合して用いてもよい。
【0057】上記連鎖移動剤の使用量は、熱可塑性(メ
タ)アクリル系重合体に所望する平均分子量に応じて適
宜調節すればよく、特に限定されるものではないが、単
量体成分100重量%に対して0.1重量%〜15重量
%の範囲内が好適である。
【0058】上記単量体成分の重合方法については、特
に限定されるものではないが、単量体成分の重合を途中
で停止させる方法、即ち、部分重合が好ましい。これに
より、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体と未反応の単
量体成分との混合物が得られる。上記混合物は、未反応
の単量体成分をビニル単量体として利用する、つまり、
そのまま熱可塑性(メタ)アクリル系重合体とビニル単
量体との混合物として使用することもできる。また、上
記混合物から未反応の単量体成分を除去すれば、熱可塑
性(メタ)アクリル系重合体を単離することができる。
【0059】また、単量体成分を重合させる方法として
は、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合
等の公知の重合方法が挙げられるが、製造の簡便性から
塊状重合が特に好ましい。懸濁重合を採用する場合に
は、ポリビニルアルコール等の分散安定剤を用いて、水
等の分散媒中に懸濁させればよい。上記重合を行う際の
反応温度や反応時間等の反応条件は、特に限定されるも
のではなく、例えば、公知の反応条件を採用することが
できる。尚、上記重合は、窒素雰囲気下で行うことが好
ましい。
【0060】上記連鎖移動剤としてチオール化合物を添
加して単量体成分の重合を行った場合、特に塊状重合の
場合には、重合終了後の反応混合物に対して、残存する
チオール化合物の処理を行うことが好ましい。これによ
り、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化して得られる
硬化物の耐溶剤性や耐熱性を向上させることができる。
【0061】上記チオール化合物を処理する方法として
は、重合終了後の反応混合物に対してビニルエーテル化
合物及び/又はビニルチオエーテル化合物を添加する方
法、或いは、重合終了後の反応混合物を無水マレイン酸
及び塩基性化合物を用いて処理する方法を用いることが
できる。
【0062】上記ビニルエーテル化合物は、チオール化
合物と反応可能な二重結合を有する化合物であればよ
く、特に限定されない。具体的には、例えば、メチルビ
ニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビ
ニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソブチ
ルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等の脂肪
族ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等の
シクロアルキルビニルエーテル;2,3−ジヒドロフラ
ン、3,4−ジヒドロフラン、2,3−ジヒドロ−2H
−ピラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、3,4−
ジヒドロ−2−メトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒ
ドロ−2−エトキシ−2H−ピラン、3,4−ジヒドロ
−4,4−ジメチル−2H−ピラン−2−オン等の環状
エーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではな
い。これらビニルエーテル化合物は、単独で用いてもよ
く、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0063】上記ビニルチオエーテル化合物は、チオー
ル化合物と反応可能な二重結合を有する化合物であれば
よく、特に限定されない。上記ビニルチオエーテル化合
物としては、上記例示のビニルエーテル化合物の酸素原
子を硫黄原子に置き換えてなる化合物を用いることがで
きる。即ち、上記例示のビニルエーテル化合物に対応す
る脂肪族ビニルチオエーテル;シクロアルキルビニルチ
オエーテル;環状チオエーテル等を用いることができ
る。これらビニルチオエーテル化合物は、単独で用いて
もよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0064】上記ビニルエーテル化合物及び/又はビニ
ルチオエーテル化合物の使用量は、樹脂組成物を調製す
る際に添加されたチオール化合物の量に対して0.5倍
モル〜5倍モルの範囲内が好ましく、0.8倍モル〜3
倍モルの範囲内がより好ましい。
【0065】上記ビニルエーテル化合物及び/又はビニ
ルチオエーテル化合物の使用量が0.5倍モル未満であ
る場合には、チオール化合物が完全に処理されないこと
がある。処理後の反応混合物中にチオール化合物が残存
すると、得られる(メタ)アクリル系樹脂組成物の貯蔵
安定性が低下する。また、(メタ)アクリル系樹脂組成
物を硬化させるのに長時間を有すると共に、硬化物の平
均分子量が大きくならない。一方、上記ビニルエーテル
化合物及び/又はビニルチオエーテル化合物の使用量が
5倍モルを超える場合には、得られる硬化物の耐候性が
低下するおそれがある。
【0066】上記チオール化合物の処理を行う際の処理
温度や処理時間等の処理条件は、単量体成分の組成等に
応じて決定すればよく、特に限定されるものではない。
また、ビニルエーテル化合物及び/又はビニルチオエー
テル化合物の添加方法は、重合後の反応混合物にビニル
エーテル化合物及び/又はビニルチオエーテル化合物を
添加する方法であってもよく、ビニルエーテル化合物及
び/又はビニルチオエーテル化合物に重合後の反応混合
物を添加する方法であってもよい。
【0067】上記ビニルエーテル化合物及び/又はビニ
ルチオエーテル化合物を用いたチオール化合物の処理
は、ルイス酸、アミン塩、3級アミン、4級アンモニウ
ム塩、ホスホニウム塩、金属塩等の触媒の存在下で行っ
てもよい。これにより、チオール化合物が有するメルカ
プト基と、ビニルエーテル化合物及び/又はビニルチオ
エーテル化合物との反応を促進することができる。ま
た、上記樹脂組成物の処理を行う際には、溶媒を用いる
ことができる。上記溶媒としては、水及び/又は有機溶
媒を用いることができる。
【0068】上記塩基性化合物としては、具体的には、
例えば、メチルアミン、エチルアミン等の一級アミン;
ジメチルアミン、ジエチルアミン等の二級アミン;トリ
メチルアミン、トリエチルアミン等の三級アミン;ジア
ザ化合物;トリアゾール化合物等が挙げられるが、特に
限定されるものではない。これら塩基性化合物は、単独
で用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよ
い。塩基性化合物は、重合時に添加するチオール化合物
に対して0.01倍モル〜1.5倍モルの範囲内で使用
することが好ましく、0.03倍モル〜1.2倍モルの
範囲内で使用することがより好ましい。
【0069】上記塩基性化合物と併用される無水マレイ
ン酸は、重合時に添加するチオール化合物に対して0.
5倍モル〜3.0倍モルの範囲内で使用することが好ま
しく、0.7倍モル〜2.8倍モルの範囲内で使用する
ことがより好ましい。
【0070】上記重合時に添加するチオール化合物に対
する塩基性化合物の使用量が0.01倍モル未満である
場合、或いは、無水マレイン酸の使用量が 0.5倍モ
ル未満である場合には、チオール化合物が完全に処理さ
れないことがあるので好ましくない。処理後の反応混合
物にチオール化合物が残存すると、(メタ)アクリル系
樹脂組成物の貯蔵安定性が低下する。また、(メタ)ア
クリル系樹脂組成物を硬化させるのに長時間を有すると
共に、硬化物の平均分子量が大きくならない。
【0071】上記重合時に添加するチオール化合物に対
する塩基性化合物の使用量が1.5倍モルを超える場合
には、得られる硬化物の耐候性が低下するので好ましく
ない。また、重合時に添加するチオール化合物に対する
無水マレイン酸の使用量が3.0倍モルを超える場合に
は、得られる硬化物の耐水性が低下するので好ましくな
い。
【0072】尚、上記チオール化合物の処理を行う際の
処理温度や処理時間等の処理条件は、特に限定されるも
のではない。例えば、重合後の反応混合物に無水マレイ
ン酸及び塩基性化合物を混合して攪拌するだけで、チオ
ール化合物を処理することができる。
【0073】次に、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体
について説明する。上記熱硬化性(メタ)アクリル系重
合体は、主鎖の50重量%以上が(メタ)アクリル酸エ
ステル単位からなり、後述するビニル単量体と共重合可
能な二重結合を一分子中に少なくとも1個以上有する重
合体であって、後述するビニル単量体と共重合して熱可
塑性(メタ)アクリル系重合体と相溶な反応物を生成し
うるものであればよい。主鎖の(メタ)アクリル酸エス
テル単位の重量範囲としては、50〜100重量%であ
ることが好ましい。より好ましくは、60〜100重量
%であり、最も好ましくは、70〜100重量%であ
る。
【0074】熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の重量
平均分子量(Mw)は、10000〜200000の範
囲内であることが好ましく、30000〜150000
の範囲内であることがより好ましく、40000〜10
0000であることが最も好ましい。熱硬化性(メタ)
アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)が1000
0未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物を硬化
させて得られる硬化物の耐熱性が低下する。一方、熱硬
化性(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(M
w)が200000を超えると、(メタ)アクリル系樹
脂組成物の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が
低下する。
【0075】また、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体
の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることによ
り、得られる硬化物の耐衝撃性をより一層向上させるこ
とができる。
【0076】熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重
結合当量、即ち、重合性二重結合1個当たりの分子量
は、500〜30000の範囲内であることが好まし
く、2000〜10000の範囲内であることがより好
ましく、3000〜7000であることが最も好まし
い。熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量
が500未満であると、(メタ)アクリル系樹脂組成物
を硬化して得られる硬化物の架橋密度が高すぎて、該硬
化物が脆くなる。即ち、硬化物の耐衝撃性が低下する。
一方、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体の二重結合当
量が30000を超えると、(メタ)アクリル系樹脂組
成物を硬化させることにより得られる硬化物の架橋密度
が低すぎ、該硬化物が耐熱性に劣る。
【0077】そして、重量平均分子量(Mw)が100
00〜200000の範囲内であり、かつ、二重結合当
量が500〜30000の範囲内である熱硬化性(メ
タ)アクリル系重合体を用いることにより、耐熱性や耐
衝撃性等の物性に優れた硬化物が得られる(メタ)アク
リル系樹脂組成物を提供することができる。
【0078】上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体と
しては、重合性二重結合を有する側鎖がエステル結合を
介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリル系重合
体がより好ましい。
【0079】上記重合性二重結合を有する側鎖がエステ
ル結合を介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アクリ
ル系重合体は、カルボキシル基を有する(メタ)アクリ
ル系重合体(以下、カルボキシル基含有重合体という)
と不飽和エポキシ化合物とを反応させる方法によって効
率的に製造することができる。上記方法によれば、カル
ボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基に対し、
不飽和エポキシ化合物が有するエポキシ基が反応してエ
ポキシ基が開環し、重合性二重結合を有する側鎖がエス
テル結合を介して主鎖に結合した熱硬化性(メタ)アク
リル系重合体が得られる。
【0080】上記カルボキシル基含有重合体としては、
前述した(メタ)アクリル酸エステルとカルボキシル基
含有単量体とを含む単量体成分を重合することにより得
られた熱可塑性(メタ)アクリル系重合体を用いること
ができる。上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体の製
造時におけるカルボキシル基含有単量体の使用量は、前
述の範囲内で、不飽和エポキシ化合物を反応させること
によって所望量の重合性二重結合が導入されるように調
節すればよい。
【0081】上記不飽和エポキシ化合物は、カルボキシ
ル基と反応可能なエポキシ基と、重合性の二重結合とを
有する化合物であればよい。上記不飽和エポキシ化合物
としては、具体的には、アリルグリシジルエーテル;グ
リシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メ
タ)アクリレート;エポキシ樹脂のモノ(メタ)アクリ
レート等が挙げられる。これら化合物は、一種類のみを
用いてもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよ
い。
【0082】上記不飽和エポキシ化合物の使用量は、カ
ルボキシル基含有重合体との組み合わせ等に応じて設定
すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキ
シル基含有重合体の製造に用いたカルボキシル基含有単
量体に対して0.5倍モル〜2倍モルの範囲内が好まし
く、0.8倍モル〜1.5倍モルの範囲内がより好まし
い。
【0083】上記カルボキシル基含有重合体と不飽和エ
ポキシ化合物との反応は、触媒の存在下で行うことが望
ましい。上記触媒としては、上記の反応を促進すること
ができるものであればよく、無機金属化合物、オキソ酸
金属塩、ポリオキソ酸金属塩、有機金属化合物、有機酸
金属塩、金属錯塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、
4級ホスホニウム塩等を用いることができる。
【0084】上記触媒としては、Zn、Sn及びZrか
らなる群より選択される少なくとも1つの元素を含有す
る金属化合物(以下、単に「金属化合物」という)が特
に好ましい。
【0085】上記金属化合物は、触媒活性が高く、主に
カルボキシル基含有重合体が有するカルボキシル基と不
飽和エポキシ化合物との反応を促進することができ、ま
た、(メタ)アクリル系樹脂組成物を着色させることが
ない。更に、上記金属化合物を用いることにより、触媒
による(メタ)アクリル系樹脂組成物の貯蔵安定性の低
下を防止することができる。
【0086】上記金属化合物としては、Zn、Sn及び
Zrからなる群より選択される少なくとも1つの元素を
有する無機金属化合物、オキソ酸金属塩、ポリオキソ酸
金属塩、有機金属化合物、有機酸金属塩、金属錯塩等を
用いることができる。
【0087】上記無機金属化合物としては、Zn、Sn
及びZrからなる群より選択される少なくとも1つの金
属の金属フッ化物、金属塩化物、金属臭化物、金属ヨウ
化物等の金属ハロゲン化物;金属酸化物、金属硫化物等
の金属カルコゲン化物;金属窒化物;金属リン化物;金
属砒化物;金属炭化物;金属ケイ化物;金属ホウ化物;
金属シアン化物;金属水酸化物;金属塩化酸化物等を用
いることができる。上記無機金属化合物としては、具体
的には、塩化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化スズ等が挙
げられる。
【0088】上記オキソ酸金属塩としては、Zn、Sn
及びZrからなる群より選択される少なくとも1つの金
属の硫酸金属塩、硝酸金属塩、リン酸金属塩、ホスフィ
ン酸金属塩、ホスホン酸金属塩、メタリン酸金属塩、ホ
ウ酸金属塩、塩素酸金属塩、臭素酸金属塩、ヨウ素酸金
属塩、ケイ酸金属塩等を用いることができる。上記オキ
ソ酸金属塩としては、具体的には、硫酸スズ、リン酸亜
鉛、硝酸ジルコニウム等が挙げられる。尚、オキソ酸金
属塩には、リン酸水素亜鉛のような水素塩も含まれるも
のとする。
【0089】上記ポリオキソ酸金属塩としては、Zn、
Sn及びZrからなる群より選択される少なくとも1つ
の金属のポリリン酸金属塩、ポリホウ酸金属塩、ポリニ
オブ酸金属塩、ポリタンタル酸金属塩、ポリモリブデン
酸金属塩、ポリバナジン酸金属塩、ポリタングステン酸
金属塩等を用いることができる。上記ポリオキソ酸金属
塩としては、具体的には、ポリリン酸亜鉛等が挙げられ
る。
【0090】上記有機金属化合物としては、一般式
(1); M−(R)n (1) (式中、Mは、Zn、Sn及びZrからなる群より選択
される1つの元素を表す。Rは、メチル、エチル、メト
キシ、エトキシ等の有機基を表す。nは、1〜6の整数
を表す。)で表される有機金属化合物を用いることがで
きる。上記有機金属化合物としては、具体的には、ジエ
チル亜鉛、テトラエトキシジルコニウム等が挙げられ
る。
【0091】上記有機酸金属塩としては、金属石鹸を用
いることができる。上記金属石鹸としては、Zn、Sn
及びZrからなる群より選択される少なくとも1つの金
属の脂肪酸金属塩(ラウリル酸金属塩、ミリスチン酸金
属塩、パルミチン酸金属塩、ステアリン酸金属塩、オレ
イン酸金属塩等)、ナフテン酸金属塩、オクチル酸金属
塩、スルホン酸金属塩、硫酸エステル金属塩、リン酸エ
ステル金属塩等を用いることができる。上記金属石鹸と
しては、具体的には、オクチル酸亜鉛、ステアリン酸ス
ズ等が挙げられる。
【0092】上記有機酸金属塩は、金属石鹸以外であっ
てもよい。金属石鹸以外の有機酸金属塩としては、Z
n、Sn及びZrからなる群より選択される少なくとも
1つの金属の酢酸金属塩、安息香酸金属塩、サリチル酸
金属塩、シュウ酸金属塩、酒石酸金属塩、乳酸金属塩、
クエン酸金属塩等を用いることができる。金属石鹸以外
の有機酸金属塩としては、具体的には、酢酸亜鉛、サリ
チル酸スズ等が挙げられる。
【0093】上記金属錯塩としては、一般式(2); M−(L)n (2) (式中、Mは、Zn、Sn及びZrからなる群より選択
される1つの元素を表す。Lは、アセチルアセトン等の
配位子を表す。nは、1〜6の整数を表す。)で表され
る金属錯塩を用いることができる。上記有機金属化合物
としては、具体的には、アセチルアセトン亜鉛等が挙げ
られる。
【0094】上記四級ホスホニウム塩としては、具体的
には、例えば、テトラフェニルホスホニウムクロライ
ド、テトラフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブ
チルホスホニウムクロライド、テトラブチルホスホニウ
ムブロマイド、ブチルトリフェニルホスホニウムクロラ
イド、ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド、ベ
ンジルトリフェニルホスホニウムクロライド、ベンジル
トリフェニルホスホニウムブロマイド、テトラブチルホ
スホニウムヒドロキシド等が挙げられる。上記例示の四
級ホスホニウム塩のうち、エステル化反応にかかる時間
を短縮することができるので、テトラフェニルホスホニ
ウム塩がより好ましく、テトラフェニルホスホニウムブ
ロマイドが特に好ましい。
【0095】上記四級ホスホニウム塩は、Zn、Sn及
びZrからなる群より選択される少なくとも1つの元素
を有する上記各種化合物と比較して、触媒活性が高い。
従って、触媒として四級ホスホニウム塩を用いてエステ
ル化反応を行うことにより、エステル結合を介して重合
性二重結合が導入された(メタ)アクリル系重合体の分
子量分布を、より小さく(狭く)することができる。よ
り具体的には、四級ホスホニウム塩を用いてエステル化
反応を行うことにより、該(メタ)アクリル系重合体の
分子量分布を示すd値(Mw/Mn)を、1〜2の範囲
内に調節することができる。
【0096】上記触媒の使用量は、その種類やカルボキ
シル基含有重合体等との組み合わせ等に応じて設定すれ
ばよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル
基含有重合体100重量部に対して、0.01重量部〜
5重量部の範囲内が好ましく、0.1重量部〜3重量部
の範囲内がより好ましい。
【0097】上記エステル化反応を行う際には、重合禁
止剤を共存させてもよい。上記重合禁止剤としては、ハ
イドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイド
ロキノン、tert−ブチルハイドロキノン等を用いる
ことができる。上記エステル化反応を行う際には、溶媒
を用いることができる。上記溶媒としては、水及び/又
は有機溶媒を用いることができる。
【0098】また、上記エステル化反応において、カル
ボキシル基含有重合体、不飽和エポキシ化合物、触媒等
を混合する順序や方法は、特に限定されるものではな
い。
【0099】以上のようにして、エステル結合を介して
重合性二重結合が導入された熱硬化性(メタ)アクリル
系重合体が得られる。
【0100】尚、エステル結合を介して重合性二重結合
が導入された熱硬化性(メタ)アクリル系重合体を得る
方法は、エポキシ基を含有する(メタ)アクリル系重合
体に対し、そのエポキシ基に上記カルボキシル基含有単
量体を反応させる方法であってもよい。このとき、エス
テル結合を介して重合性二重結合が導入された熱硬化性
(メタ)アクリル系重合体が(メタ)アクリル系となる
限り、カルボキシル基含有単量体は(メタ)アクリル系
であってもよく、(メタ)アクリル系でなくてもよい。
【0101】また、熱硬化性(メタ)アクリル系重合体
は、ヒドロキシル基を有する熱可塑性(メタ)アクリル
系重合体に、重合性二重結合を有する不飽和イソシアネ
ート化合物を添加して、上記ヒドロキシル基をウレタン
化することによって得られたものであってもよい。
【0102】上記ヒドロキシル基を有する熱可塑性(メ
タ)アクリル系重合体は、ヒドロキシル基を有する単量
体を含む単量体成分を重合することにより得られる熱可
塑性(メタ)アクリル系重合体である。上記ヒドロキシ
ル基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシ
エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル
(メタ)アクリレート等のようなグリコールのモノ(メ
タ)アクリレート;多価アルコールのジ(メタ)アクリ
レート等のヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレー
ト等が挙げられる。
【0103】また、上記不飽和イソシアネート化合物と
しては、例えば、m−イソプロペニル− α,α− ジメ
チルベンジルイソシアネート;上記例示のヒドロキシル
基を有する(メタ)アクリレートと、トリレンジイソシ
アネート等の多価イソシアネートとの反応生成物;イソ
シアナートエチルメタクリレート等が挙げられる。
【0104】このように、熱硬化性(メタ)アクリル系
重合体は、(メタ)アクリル系重合体の合成時に官能基
を有する不飽和単量体を共重合させることにより分子中
に官能基を有する(メタ)アクリル系重合体をまず合成
し、続いてその官能基と反応性を有する別の官能基を有
する単量体を反応させることにより得ることができる。
また、上記のように分子中に官能基を有する(メタ)ア
クリル系重合体と別の官能基を有する単量体とを段階的
に反応させることの他に、熱硬化性(メタ)アクリル系
重合体が得られることになる限り、両者を同時的に反応
させてもよい。
【0105】上記反応性を有する基2つの官能基の組み
合わせの例としては、上記のカルボキシル基とグリシジ
ル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基の他に、カル
ボキシル基とヒドロキシル基、カルボキシル基とアミノ
基、カルボキシル基とオキサゾリニル基、カルボキシル
基とアジリジニル基、ヒドロキシル基と酸無水物等があ
げられるが、これらに限定されるものではない。これら
の官能基の組み合わせのどちらの官能基を有する単量体
を(メタ)アクリル系単量体及びそれ以外の単量体と共
重合させるかは特に限定されない。
【0106】次に、単量体(B)について説明する。上
記単量体は、熱可塑性(メタ)アクリル系重合体又は熱
硬化性(メタ)アクリル系重合体と相溶又は一部相溶な
ものであればよい。
【0107】上記単量体としては、具体的には、上記の
(メタ)アクリル酸エステル、カルボキシル基含有単量
体、ビニル化合物等が挙げられる。上記単量体は、熱硬
化性(メタ)アクリル系重合体との共重合によって熱可
塑性(メタ)アクリル系重合体に対して相溶な反応物を
与えるために、主成分が(メタ)アクリル酸エステルで
あることが好ましく、主成分がメチルメタクリレートで
あることが更に好ましい。また、単量体における(メ
タ)アクリル酸エステルの含有率は、80重量%以上で
あることがより好ましい。
【0108】上記(メタ)アクリル酸エステルとして
は、メタクリル酸アルキルエステルが特に好ましく、更
に、メタクリル酸アルキルエステルとしては、メチルメ
タクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメ
タクリレート、n−ブチルメタクリレート、s−ブチル
メタクリレート、tert−ブチルメタクリレートが特
に好ましい。これにより、(メタ)アクリル系樹脂組成
物を硬化させて得られる硬化物の耐候性、透明性、表面
の光沢等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上
させることができる。また上記単量体は、スチレンを含
むことが好ましい。スチレンを含むことにより、成形品
の光沢値を上昇させることができる。単量体におけるス
チレンの含有率は、1〜20重量%が好ましい。スチレ
ンが多くなると、耐候性、耐熱変色性が低下する併害が
ある。これら単量体は、単独で用いてもよく、二種類以
上を適宜混合して用いてもよい。また、上記単量体は、
前記単量体成分と同じであってもよく、異なっていても
よい。
【0109】上記熱硬化性(メタ)アクリル系重合体、
上記熱可塑性(メタ)アクリル系重合体、及び、上記単
量体の合計量100重量%に対する単量体の比率は、2
0重量%〜90重量%の範囲内であることが好ましく、
40重量%〜80重量%の範囲内であることがより好ま
しく、45重量%〜70重量%の範囲内であることが更
に好ましい。単量体の比率が20重量%未満である場合
には、(メタ)アクリル系樹脂組成物の粘度が高くなり
すぎて、成形作業等の作業性が悪くなる。一方、単量体
の比率が90重量%を超える場合には、(メタ)アクリ
ル系樹脂組成物の硬化時の収縮が大きくなるため、好ま
しくない。本発明において熱硬化性樹脂組成物における
(メタ)アクリルシラップの好ましい含有率は、熱硬化
性(メタ)アクリル系重合体と熱可塑性(メタ)アクリ
ル系重合体と単量体との合計が、熱硬化性樹脂組成物を
100とした場合、好ましくは、10〜95重量%、よ
り好ましくは、30〜90重量%、最も好ましくは、5
0〜85重量%である。
【0110】本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物、特に
(メタ)アクリル系樹脂組成物は、SMCやBMC、プ
レミックス材料、注型材料、引抜き材料、射出成形材
料、樹脂移送成形(RIM)材料、押出し成形材料等の
成形材料として特に好適である。
【0111】上記熱硬化性樹脂組成物は、成形材料とし
て用いられる場合、更に、必要に応じて、増粘剤や、コ
ハク酸誘導体、補強材等を含んでいてもよい。尚、以下
の説明においては、熱硬化性樹脂組成物における補強材
以外の成分をコンパウンドと称することにする。また、
以下の説明における例示や使用量の範囲等は、(メタ)
アクリル系樹脂組成物とするときに好適に適用されるも
のである。
【0112】上記増粘剤としては、具体的には、例え
ば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土
類金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム
等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられるが、特に
限定されるものではない。これら増粘剤は、単独で用い
てもよく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。増
粘剤の使用量は、その種類や熱硬化性樹脂との組み合わ
せ、熱硬化性樹脂組成物の用途等にもよるが、熱硬化性
樹脂100重量部に対して、5重量部以下の範囲内が好
ましい。上記範囲内で増粘剤を使用することにより、コ
ンパウンドの増粘後の粘度を、成形作業等に好適な所定
の値に設定することができる。増粘剤の使用量が5重量
部よりも多い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が
高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が低下すると共に、
得られる成形品の耐候性及び耐水性が低下するおそれが
ある。
【0113】上記コハク酸誘導体は、増粘剤による過剰
な増粘挙動、特に初期の増粘挙動を抑制する働きを備え
ている。コハク酸誘導体は、分子内にコハク酸骨格又は
コハク酸無水物骨格を備え、かつ、該骨格のエチレン基
部分に、アルキル基、アルケニル基、脂環式炭化水素
基、芳香族炭化水素基等の置換基を有する化合物であれ
ばよく、特に限定されるものではないが、全炭素数が8
〜30である化合物が好ましい。全炭素数が7以下のコ
ハク酸誘導体は、熱硬化性樹脂、特に(メタ)アクリル
シラップに対する溶解性に劣る。また、全炭素数が31
以上のコハク酸誘導体は、該コハク酸誘導体を使用する
ことにより期待される作用・効果が乏しくなる。つま
り、増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効果が低
い。
【0114】上記コハク酸誘導体としては、具体的に
は、例えば、ヘキシルコハク酸、ヘプチルコハク酸、オ
クチルコハク酸、ノニルコハク酸、デシルコハク酸、ド
デシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ペンタデシル
コハク酸、ヘキサデシルコハク酸、ヘプタデシルコハク
酸、オクタデシルコハク酸、ペンタドデシルコハク酸、
エイコシルコハク酸等の炭素数が4以上のアルキル基を
有する化合物;ヘキセニルコハク酸、ヘプテニルコハク
酸、オクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニル
コハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク
酸、ペンタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク
酸、ヘプタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク
酸、ペンタドデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸
等のアルケニル基を有する化合物;シクロドデシルコハ
ク酸、シクロドデセニルコハク酸等の脂環式炭化水素基
を有する化合物;ジフェニルブテニルコハク酸等の芳香
族炭化水素基を有する化合物;これらコハク酸の無水物
等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これ
らコハク酸誘導体は、単独で用いてもよく、二種類以上
を適宜混合して用いてもよい。尚、コハク酸誘導体の調
製方法は、特に限定されるものではない。
【0115】上記コハク酸誘導体の添加量は、その種類
や、熱硬化性樹脂及び増粘剤等との組み合わせ、熱硬化
性樹脂組成物の用途等にもよるが、熱硬化性樹脂100
重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内が好ま
しい。コハク酸誘導体の添加量が0.01重量部よりも
少ない場合には、コハク酸誘導体を使用することにより
期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、増粘剤に
よる過剰な増粘挙動を抑制する効果が乏しくなるおそれ
がある。コハク酸誘導体の添加量が10重量部よりも多
い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が、成形作業
等に好適な所定の値に達しないか、若しくは達するまで
に長時間を有するおそれがある。
【0116】上記補強材としては、具体的には、例え
ば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックから
なる繊維等の無機繊維;アラミドやポリエステル等から
なる有機繊維;天然繊維等が挙げられるが、特に限定さ
れるものではない。また、繊維の形態は、例えば、ロー
ビング、クロス、マット、織物、チョップドロービン
グ、チョップドストランド等が挙げられるが、特に限定
されるものではない。これら補強材は、単独で用いても
よく、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。補強材
の使用量は、その種類や熱硬化性樹脂等との組み合わ
せ、熱硬化性樹脂組成物の用途や所望される物性等に応
じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0117】また、補強材とコンパウンドとを混合する
方法は、特に限定されるものではなく、該補強材の形態
に応じて適宜設定すればよい。例えば、補強材の形態が
マットやクロス等である場合には、該補強材にコンパウ
ンドを含浸させればよい。また、例えば、補強材の形態
がロービングやチョップトストランド等である場合に
は、該補強材とコンパウンドとを混練すればよい。補強
材を含む熱硬化性樹脂組成物は、例えば、SMCやBM
Cとして好適である。
【0118】上記熱硬化性樹脂組成物は、硬化剤を含ん
でいることが望ましく、また、必要に応じて、架橋性単
量体、添加剤等を更に含んでいてもよい。
【0119】上記硬化剤としては、例えば、(メタ)ア
クリルシラップを製造する際に用いられる上記例示の重
合開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではな
い。硬化剤の添加量は、その種類や熱硬化性樹脂等との
組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定される
ものではないが、熱硬化性樹脂100重量部に対して、
0.1重量部〜5重量部の範囲内が好適である。
【0120】上記架橋性単量体は、硬化物の架橋密度を
増加させる働きを備えている。架橋性単量体は、熱硬化
性樹脂、特に(メタ)アクリルシラップが有する官能基
と反応する官能基を複数有する化合物であればよい。該
架橋性単量体としては、具体的には、例えば、エチレン
グリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコ
ールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ
(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メ
タ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)
アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)ア
クリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アク
リレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ
(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリル
フタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシア
ヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられる
が、特に限定されるものではない。架橋性単量体の添加
量は、その種類や熱硬化性樹脂等との組み合わせ、熱硬
化性樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて設定
すればよく、特に限定されるものではない。
【0121】上記添加剤としては、一般に用いられてい
る各種の添加剤を採用することができ、特に限定される
ものではないが、例えば、(内部)離型剤、着色剤、重
合禁止剤等が挙げられる。これら添加剤は、例えば、熱
硬化性樹脂組成物の用途や所望される物性等に応じて適
宜添加すればよい。また、添加剤の添加量は、該添加剤
の種類や熱硬化性樹脂等との組み合わせ等に応じて設定
すればよく、特に限定されるものではない。
【0122】上記離型剤としては、具体的には、例え
ば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸ア
ルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バ
リウム、ステアリン酸アミド、トリフェニルホスフェー
ト、アルキルホスフェート;一般に用いられているワッ
クス類、シリコーンオイル等の離型剤等が挙げられる。
上記着色剤としては、公知の無機顔料や有機顔料が挙げ
られる。
【0123】本発明にかかる熱硬化性樹脂組成物は、上
述したような構成要素と、充填材とを含んでなることが
好ましい。
【0124】上記充填材としては、特に限定されるもの
ではなく、例えば、水酸化アルミニウム、シリカ、ガラ
スパウダー、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミ
ナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、
珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉等の無
機系充填材、及び、ポリマービーズ等の有機系充填材が
挙げられる。上記例示の充填材のうち、水酸化アルミニ
ウム、シリカ、及びガラスパウダーからなる群より選択
される少なくとも1種の無機系充填材が特に好ましい。
上記例示の充填材は、単独で用いてもよく、二種類以上
を適宜混合して用いてもよい。また、充填材の平均粒径
等の形態は、特に限定されるものではない。
【0125】上記充填材の配合量は、その種類や熱硬化
性樹脂等との組み合わせ、熱硬化性樹脂組成物を成形す
ることにより得られる人工大理石等の成形品の用途や所
望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定され
るものではないが、充填材以外の成分を配合したコンパ
ウンド100重量部に対して、50重量部〜400重量
部の範囲内が好ましく、 100重量部〜300重量部
の範囲内がより好ましく、150重量部〜250 重量
部の範囲内が更に好ましい。充填材の配合量が50重量
部未満であると、熱硬化性樹脂組成物を成形することに
より得られる人工大理石等の成形品の表面硬度や剛性が
不充分となるおそれがある。一方、充填材の配合量が4
00重量部を超えると、熱硬化性樹脂組成物の粘度が高
くなりすぎ、成形作業等の作業性が悪くなるうえ、熱硬
化性樹脂組成物を成形することにより得られる人工大理
石等の成形品の強度が低下するおそれがある。
【0126】上記熱硬化性樹脂組成物は、更に、コンパ
ウンドと充填材との界面の活性を向上させるために、カ
ップリング剤(界面改質剤)を含んでいてもよく、これ
により、該熱硬化性樹脂組成物を成形することにより得
られる人工大理石等の成形品の耐衝撃性、強度、耐水性
等の物性を向上させることができる。
【0127】上記カップリング剤としては、具体的に
は、リン酸エステル、シラン系カップリング剤、クロム
系カップリング剤、チタン系カップリング剤、アルミニ
ウム系カップリング剤、ジルコニウム系カップリング剤
等が挙げられ、これらの一種を単独で用いてもよく、二
種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0128】上記カップリング剤としては、該熱硬化性
樹脂組成物を成形することにより得られる人工大理石等
の成形品の耐衝撃性を向上させる効果に優れていること
から、リン酸エステルが特に好ましい。上記リン酸エス
テルは、下記一般式(3);
【0129】
【化1】
【0130】(式中、R1 、R2 及びR3 は、同一又は
異なって、有機基を表す。)で表される化合物であれば
よく、特に限定されるものではないが、上記リン酸エス
テルとしては、長鎖アルキル基のような(メタ)アクリ
ル系樹脂組成物との親和性が高い官能基、或いは、重合
性二重結合、エポキシ基、アミノ基等のような(メタ)
アクリル系樹脂組成物に対する反応性がある官能基を有
することが望ましい。(メタ)アクリルシラップに対す
る反応性がある官能基を有するリン酸エステルとして
は、具体的には、例えば、リン酸トリメタクリルが挙げ
られる。
【0131】また、リン酸エステルは、水酸化アルミニ
ウム、シリカ、及びガラスパウダーからなる群より選択
される少なくとも1種の無機系充填材と組み合わせるこ
とにより、人工大理石等の成形品の耐衝撃性を向上させ
る効果が大きくなる。
【0132】上記カップリング剤の使用量は、充填材1
00重量部に対して、0.01重量部〜5重量部の範囲
内が好ましく、0.1重量部〜3重量部の範囲内がより
好ましく、0.5〜2重量部の範囲内が更に好ましい。
カップリング剤の使用量が、0.01重量部未満である
と、カップリング剤を使用することにより得られる効
果、即ち、該熱硬化性樹脂組成物を成形することにより
得られる人工大理石等の成形品の強度、耐水性等の物性
を向上させる効果が発現されなくなる。また、カップリ
ング剤の使用量が、5重量部を超えても、カップリング
剤を使用することにより得られる効果が向上しないた
め、経済的な面から好ましくない。
【0133】上記熱硬化性樹脂組成物は、更に、必要に
応じて、熱硬化性樹脂組成物と充填材との混練時の粘度
を低下させ、熱硬化性樹脂組成物に対する充填材のなじ
み(濡れ性)を向上させるために、湿潤剤(減粘剤)を
含んでいてもよい。
【0134】上記湿潤剤としては、例えば、カルボキシ
ル基を有する飽和ポリエステル(例えば、ビックケミー
ジャパン社製の「W−995」、「W−996」、「W
−9010」)、高分子ポリカルボン酸のアルキルアン
モニウム塩(例えば、ビックケミージャパン社製の「W
−960」)、カルボキシル基を有する極性のエステル
と長鎖ポリアミノアミドとの塩(例えば、ビックケミー
ジャパン社製の「W−965」)、カルボキシル基を有
する飽和ポリエステルの部分中和物(例えば、ビックケ
ミージャパン社製の「W−990」)等が挙げられる。
【0135】上記湿潤剤の使用量は、充填材100重量
部に対して、0.01重量部〜5重量部の範囲内が好ま
しく、0.1重量部〜3重量部の範囲内がより好まし
く、0.5〜2重量部の範囲内が更に好ましい。湿潤剤
の使用量が、0.01重量部未満であると、湿潤剤を使
用することにより得られる効果、即ち、熱硬化性樹脂組
成物に対する充填材のなじみ(濡れ性)を向上させる効
果が発現されなくなる。また、湿潤剤の使用量が、5重
量部を超えても、湿潤剤を使用することにより得られる
効果が向上しないため、経済的な面から好ましくない。
【0136】また、成形品に高度の寸法精度が求められ
る場合は、低収縮化剤としてポリエチレン、ポリプロピ
レン、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリプ
ロピレングリコール、セルロースブチレート、アセテー
ト、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラク
タム、飽和ポリエステル、或いはこれらの共重合体等の
熱可塑性ポリマーを適量配合することも有効である。
【0137】また、充填材の沈降を抑制する必要がある
場合、揺変化剤を添加してもよい。具体的には、例え
ば、シリカ粉末、タルク粉末、マイカ粉末、ガラスフレ
ーク、金属ウィスカー、セラミックウィスカー、硫酸カ
ルシウムウィスカー、アスベスト、スメクタイト、有機
系の揺変化剤等を挙げることができる。
【0138】上記揺変化剤の市販品としては、レオロシ
ールQSシリーズ(トクヤマ社製)、アエロジルシリー
ズ(日本アエロジル社製)、BENATHIXシリーズ
(ウィルバーエリス社製)、FRANNKLIN FI
BER(USG社製)、タルクSW,SS,SWE(日
本タルク社製)、タルカンパウダーPK、ロータルク
(林化成社製)、アルボレックスYS(四国化成工業社
製)等がある。
【0139】上記熱硬化性樹脂組成物は、SMC、BM
C、注型材料等として特に好適である。SMCは、いわ
ゆるSMC製造装置を用いて容易に製造することができ
る。BMCは、双腕型ニーダ等の混練機を用いて容易に
製造することができる。注型材料は、混合機を用いて容
易に製造することができる。そして、SMCやBMC
は、例えば60℃〜160℃で加熱・加圧成形(プレス
成形)することにより成形品とされる。また、注型材料
は、例えば室温〜120℃でセル内に注入(注型)する
ことにより成形品とされる。尚、本発明の熱硬化性樹脂
組成物の成形方法は、特に限定されるものではなく、種
々の成形方法に適用可能である。
【0140】上記熱硬化性樹脂組成物を成形してなる人
工大理石等の成形品は、各種用途に用いることができる
が、サニタリー部材に用いることが好ましく、特に、バ
スタブやキッチンカウンター、洗面カウンター、壁材と
して好適である。
【0141】本発明で使用可能な成形型の材質は、金
属、FRP、木材等、特に制限されないが、熱伝導率の
点から、金属型が好ましい。また、上記成形型の加熱方
式は、(1)成形型に電熱装置を装着する方法、(2)
成形型をそのまま高温の加熱炉に入れる方法、(3)成
形型に熱媒体を流す配管を設置し、温調機によって制御
する方法等が挙げられるが、温調制御の容易さから、
(3)の方法が好ましい。
【0142】上記熱媒体としては、温水、蒸気、オイル
等が使用可能である。熱媒体として、温水を採用する場
合、常圧状態では100℃までの加熱しか行えず、また
オイルでは、オイルの種類によっては100℃以上の加
熱が可能ではあるが、いずれの方法でも、熱媒体として
の熱容量に限界がある他、その流速を過度に高めること
ができないので、成形型の速やかな均一加熱という点で
不十分である。この様なところから、熱媒体としての熱
容量(潜熱或いは凝縮熱)が大きくて加熱効率が高く、
しかも流速を高めることによって急速加熱及び均一加熱
の容易な蒸気(スチーム)を採用するのが好ましい。例
えば、減圧蒸気を使用することにより、70〜120℃
の温調が容易となる。
【0143】尚、このスチーム加熱法を採用する際に、
成形型内でスチームの凝縮が起こってドレンが生じる
と、その部分で伝熱効率が急変することになり、成形型
の均一加熱が損なわれる。従ってこうしたドレンの滞留
を阻止するには、成形型を加熱するためのスチーム加熱
機構内にスチームトラップ部を設け、該トラップ部以降
を吸引するのがよく、このような構成を付加すれば、成
形型内でスチームが凝縮しドレンが発生しても速やかに
排出され、成形型内でドレンの滞留が起こらなくなり、
高温側加熱型及び低温側加熱型のスチーム加熱による急
速加熱と均一加熱を更に増進すると共に、安定して高い
加熱効率を確保することが可能となる。
【0144】また、冷却の場合には、冷却媒体として、
蒸気と水の混合物を媒体経路に供給し、水の蒸発潜熱に
よって冷却する方法が好ましい。上記成形型は、高温側
加熱型と低温側加熱型の2分割型によって構成すると共
に、各々の型は、加熱効率が高くかつ均一加熱に有効な
スチーム加熱機構によって加熱する構成とし、それら加
熱型には加熱温度に差を与えて、一方側を高温側加熱
型、他方側を低温側加熱型とすることが好ましい。
【0145】このように2分割型に加熱温度の差を与え
るのは、成形体の製品裏面側となる成形面の硬化時期を
製品表面側(意匠面側)よりも相対的に遅らせ(即ち、
製品表面側となる成形面の硬化時期を製品裏面側よりも
相対的に早め)、硬化収縮の大きい素材を用いた場合に
見られる製品表面側の外観不良を抑える上で有効とな
る。即ち、成形型における製品表面側の加熱温度を相対
的に高めると、加熱・加圧成形時には該表面側が裏面側
よりも早く硬化し、その後で裏面側の硬化が進むことに
なる。そして表面側が硬化するときには裏面側はまだ硬
化しておらず、表面側の硬化時の硬化収縮による変形が
未硬化状態の裏面側樹脂材料の塑性変形によって吸収さ
れるため、該表面側は、成形型(高温側加熱型)の成形
面に密着した状態で硬化することになり、従って製品表
面は成形型の成形面(鏡面肌や梨地肌等の表面性状を含
めて)に応じた性状に精度よく成形される。ただし、上
記温度差が過度に大きくなると成形体に反りが起こり易
くなるので、該温度差は30℃以下、より好ましくは2
0℃以下に抑えなければならない。
【0146】
【実施例】以下に本発明を実施例により更に具体的に説
明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるも
のではない。また実施例中、「部」は特に断りのない限
り「重量部」を意味する。
【0147】成形品のTgの測定 成形品を一辺5mmの直方体に切り出し、島津製作所社
製TMA(Thermal Mechanical A
nalysis)装置にて2℃/分の昇温速度で室温か
ら200℃まで昇温し、線膨張係数の変極点を図8のよ
うに求め、これをTgとした。残留応力の影響で明確な
変極点が求められない場合は、200℃まで昇温した試
験片を一旦冷却して、成形時に発生した残留応力を取り
除き、再度2℃/分の昇温速度で室温から200℃まで
昇温した。
【0148】成形品の60°光沢値の測定 日本電色工業社製、光沢計SZ−SIGMAを用いてJ
IS K 7105に準ずる方法で測定した。
【0149】実施例1 温度計、冷却管、ガス導入管及び攪拌機を備えた反応器
に、メタクリル酸メチル96.5部及びメタクリル酸
3.5部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。次
に上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温し、アゾビ
スイソブチロニトリル0.004部と、n−ドデシルメ
ルカプタン0.3部とを添加して6時間共重合反応を行
った後、系内に空気を吹き込むと同時にp−メトキシハ
イドロキノン0.01部を添加して重合を停止した。得
られたアクリルシラップ(以下、アクリルシラップと
する)の25℃での粘度は3Pa・s、固形分は35
%、重合体成分のGPCから求めた重量平均分子量は9
5000であった。
【0150】得られたアクリルシラップ80部に対し
てメタクリル酸メチル20部、充填材としてシリカ粉
(ヘップワース・ミネラルズ・アンド・ケミカルズ・リ
ミティッド社製、クリストバライトXPF6SM)15
0部、内部離型剤としてステアリン酸0.4部、カップ
リング剤としてシランカップリング剤(日本ユニカー社
製、A−174)1.5部、消泡剤(ビックケミージャ
パン社製、A−555)0.2部、硬化剤としてビス
(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボ
ネート(化薬アクゾ社製、パーカドックス16)1.0
部及び2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキ
シ−2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製、カヤ
エステルTMPO−70)0.5部を添加し、注型用コ
ンパウンドとした。
【0151】次に図1に示すような上下型から構成され
ており、伸縮性のあるパッキンによって2つの型の間の
空間が密封可能であり、注入口と排気口とを有し、かつ
熱媒体を循環可能な配管を有するバスタブ金型を加圧可
能な装置に設置した。まずこの金型に熱媒体としての温
水を循環させて下型を70℃、上型を50℃に設定し
た。このときの熱媒体の温度は各々70℃(下型)と5
0℃(上型)であった。次に上記注型用コンパウンドを
注入口から5分間かけて金型内に注入した。注入が完了
した後、注入口と排気口とを封鎖し、金型に3.92×
10Paの圧力を掛けると同時に熱媒体温度を各々9
5℃(下型)と70℃(上型)にした。15分後、金型
の変位から注型コンパウンドの硬化による収縮が完了し
たのを確認して熱媒体温度を各々70℃(下型)と50
℃(上型)に設定した。3分後に熱媒体温度が設定温度
に到達した後に圧抜きを行い、続いて成形品を3分かけ
て脱型、型掃除を2分間で完了した。金型の温度は各々
70℃(下型)と50℃(上型)で安定しており、直ち
に型を閉じて次の成形を開始した。この注型成形におけ
る1サイクルに要する時間は28分であった。このよう
にして得られた成形品の平坦部を切り出して60°光沢
値を測定したところ90であった。またこの成形品のT
gは105℃であった。以上の結果をまとめて表1に示
す。
【0152】比較例1 実施例1と同じ注型用コンパウンドを、圧抜き・脱型温
度を95℃(下型)とした以外、同様の成形条件で成形
した。圧抜きをして3分間の脱型作業後、型の降温を行
うと同時に型掃除を行った。型掃除は実施例1と同様に
2分で完了し、型温も3分で各々70℃(下型)と50
℃(上型)に到達したが、その後温度が安定せず、温度
が安定して次の成形に移るまで5分を要した。従って1
サイクルに要する時間は31分であった。このようにし
て得られた成形品の平坦部を切り出して60°光沢値を
測定したところ75であった。以上の結果をまとめて表
1に示す。
【0153】実施例2 温度計、冷却管、ガス導入管及び攪拌機を備えた反応器
に、メタクリル酸メチル96.5部及びメタクリル酸
3.5部を仕込み、反応器内を窒素ガスで置換した。次
に上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温し、アゾビ
スイソブチロニトリル0.08部及びn−ドデシルメル
カプタン0.6部を添加して4時間共重合反応を行った
後、系内に空気を吹き込むと同時にp−メトキシハイド
ロキノン0.03部を添加して重合を停止した。次いで
グリシジルメタクリレート3.2部及びテトラフェニル
ホスホニウムブロマイド0.2部を内容物に添加した後
90℃に昇温し、空気雰囲気下で5時間反応して酸価が
7mgKOH/gになったところで反応を停止した。
【0154】得られたアクリルシラップ(以下アクリル
シラップとする)の25℃での粘度は1.7Pa・
s、固形分は33%、重合体成分のGPCから求めた重
量平均分子量は70000であった。またグリシジル基
とカルボキシル基との反応による酸価の低下分から求め
た熱硬化型(メタ)アクリル系重合体の二重結合当量は
約5700であった。
【0155】得られたアクリルシラップ90部に対し
てアクリル酸ブチル10部、充填材としてシリカ粉(ヘ
ップワース・ミネラルズ・アンド・ケミカルズ・リミテ
ィッド社製、クリストバライトXPF6SM)150
部、内部離型剤としてステアリン酸0.4部、カップリ
ング剤としてシランカップリング剤(日本ユニカー社
製、A−174)1.5部、消泡剤(ビックケミージャ
パン社製、A−555)0.2部、硬化剤としてビス
(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボ
ネート(化薬アクゾ社製、パーカドックス16)1.0
部及び2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキ
シ−2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ社製、カヤ
エステルTMPO−70)0.5部を添加し、注型用コ
ンパウンドとした。
【0156】上記注型コンパウンドを実施例1で用いた
ものと同じ装置によって注型成形を行った。すなわち、
まずこの金型に熱媒体としての温水を循環させて下型を
70℃、上型を50℃に設定した。このときの熱媒体の
温度は各々70℃(下型)と50℃(上型)であった。
次に上記注型用コンパウンドを注入口から5分間かけて
金型内に注入した。注入が完了した後、注入口と排気口
とを封鎖し、金型に3.92×10Paの圧力を掛け
ると同時に熱媒体温度を各々95℃(下型)と70℃
(上型)にした。15分後、金型の変位から注型コンパ
ウンドの硬化による収縮が完了したのを確認して熱媒体
温度を各々70℃(下型)と50℃(上型)に設定し
た。3分後に熱媒体温度が設定温度に到達した後に圧抜
きを行い、続いて成形品を3分かけて脱型、型掃除を2
分間で完了した。金型の温度は各々70℃(下型)と5
0℃(上型)で安定しており、直ちに型を閉じて次の成
形を開始した。この注型成形における1サイクルに要す
る時間は28分であった。このようにして得られた成形
品の平坦部を切り出して60°光沢値を測定したところ
87であった。またこの成形品のTgは95℃であっ
た。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0157】比較例2 実施例2と同じ注型用コンパウンドを、圧抜き・脱型温
度を95℃(下型)とする以外、同様の成形条件で成形
した。圧抜きをして3分間の脱型作業後、型の降温を行
うと同時に型掃除を行った。型掃除は実施例1と同様に
2分で完了し、型温も3分で各々70℃(下型)と50
℃(上型)に到達したが、その後温度が安定せず、温度
が安定して次の成形に移るまで5分を要した。従って1
サイクルに要する時間は31分であった。このようにし
て得られた成形品の平坦部を切り出して60°光沢値を
測定したところ69であった。以上の結果をまとめて表
1に示す。
【0158】実施例3 温度計、冷却管、ガス導入管及び攪拌機を備えた反応器
に、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(エポキシ当量1
87)55部、メタクリル酸25部、トリエチルアミン
0.4部及びハイドロキノン0.02部を仕込み、空気
気流下、100℃で4時間反応させた。更に、酸価が6
mgKOH/gとなるまで、120℃で3時間反応させ
反応を熟成させた。その後、反応溶液を40℃に冷却
し、スチレン20部を投入、混合して25℃での粘度が
0.8Pa・sのエポキシアクリレート樹脂を得た。
【0159】得られたエポキシアクリレート樹脂100
部に対して充填材としてシリカ粉(ヘップワース・ミネ
ラルズ・アンド・ケミカルズ・リミティッド社製、クリ
ストバライトXPF6SM)150部、内部離型剤とし
てステアリン酸0.4部、カップリング剤としてシラン
カップリング剤(日本ユニカー社製、A−174)1.
5部、消泡剤(ビックケミージャパン社製、A−55
5)0.2部、硬化剤としてビス(4−t−ブチルシク
ロヘキシル)パーオキシジカーボネート(化薬アクゾ社
製、パーカドックス16)1.0部及び2,4,4−ト
リメチルペンチル−2−パーオキシ−2−エチルヘキサ
ノエート(化薬アクゾ社製、カヤエステルTMPO−7
0)0.5部を添加し、注型用コンパウンドとした。
【0160】上記注型コンパウンドを実施例1で用いた
ものと同じ装置によって注型成形を行った。すなわち、
まずこの金型に熱媒体としてのオイルを循環させて下型
を80℃、上型を60℃に設定した。このときの熱媒体
の温度は各々80℃(下型)と60℃(上型)であっ
た。次に上記注型用コンパウンドを注入口から5分間か
けて金型内に注入した。注入が完了した後、注入口と排
気口を封鎖し、金型に3.92×10Paの圧力を掛
けると同時に熱媒体温度を各々105℃(下型)と75
℃(上型)にした。15分後、金型の変位から注型コン
パウンドの硬化による収縮が完了したのを確認して熱媒
体温度を各々80℃(下型)と60℃(上型)に設定し
た。3分後に熱媒体温度が設定温度に到達した後に圧抜
きを行い、続いて成形品を3分かけて脱型、型掃除を2
分間で完了した。金型の温度は各々80℃(下型)と6
0℃(上型)で安定しており、直ちに型を閉じて次の成
形を開始した。この注型成形における1サイクルに要す
る時間は28分であった。このようにして得られた成形
品の平坦部を切り出して60°光沢値を測定したところ
90であった。またこの成形品のTgは110℃であっ
た。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0161】比較例3 実施例3と同じ注型用コンパウンドを、圧抜き・脱型温
度を105℃(下型)とする以外、同様の成形条件で成
形した。圧抜きをして3分間の脱型作業後、型の降温を
行うと同時に型掃除を行った。型掃除は実施例1と同様
に2分で完了し、型温も3分で各々80℃(下型)と6
0℃(上型)に到達したが、その後温度が安定せず、温
度が安定して次の成形に移るまで5分を要した。従って
1サイクルに要する時間は31分であった。このように
して得られた成形品の平坦部を切り出して60°光沢値
を測定したところ75であった。以上の結果をまとめて
表1に示す。
【0162】実施例4 温度計、冷却管、ガス導入管及び攪拌機を備えた反応器
に、無水マレイン酸35.6部、無水フタル酸23.0
部及びプロピレングリコール41.4部を仕込んだ。次
いで、窒素ガスを吹き込み、生成する縮合水を取り除き
ながら、200℃で10時間加熱することにより、酸価
20mgKOH/gの不飽和ポリエステル樹脂を得た。
続いて、この不飽和ポリエステル樹脂70部、スチレン
30部及びメトキシフェノール0.02部を混合して、
25℃での粘度が0.54Pa・sの不飽和ポリエステ
ル樹脂を得た。
【0163】得られた不飽和ポリエステル樹脂100部
に対して充填材としてシリカ粉(ヘップワース・ミネラ
ルズ・アンド・ケミカルズ・リミティッド社製、クリス
トバライトXPF6SM)150部、内部離型剤として
ステアリン酸0.4部、カップリング剤としてシランカ
ップリング剤(日本ユニカー社製、A−174)1.5
部、消泡剤(ビックケミージャパン社製、A−515)
0.2部、硬化剤としてビス(4−t−ブチルシクロヘ
キシル)パーオキシジカーボネート(化薬アクゾ社製、
パーカドックス16)1.0部及び2,4,4−トリメ
チルペンチル−2−パーオキシ−2−エチルヘキサノエ
ート(化薬アクゾ社製、カヤエステルTMPO−70)
0.5部を添加し、注型用コンパウンドとした。
【0164】上記注型コンパウンドを実施例1で用いた
ものと同じ装置によって注型成形を行った。すなわち、
まずこの金型に熱媒体としてのオイルを循環させて下型
を75℃、上型を55℃に設定した。このときの熱媒体
の温度は各々75℃(下型)と55℃(上型)であっ
た。次に上記注型用コンパウンドを注入口から5分間か
けて金型内に注入した。注入が完了した後、注入口と排
気口とを封鎖し、金型に3.92×10Paの圧力を
掛けると同時に熱媒体温度を各々100℃(下型)と7
0℃(上型)にした。15分後、金型の変位から注型コ
ンパウンドの硬化による収縮が完了したのを確認して熱
媒体温度を各々75℃(下型)と55℃(上型)に設定
した。3分後に熱媒体温度が設定温度に到達した後に圧
抜きを行い、続いて成形品を3分かけて脱型、型掃除を
2分間で完了した。金型の温度は各々75℃(下型)と
55℃(上型)で安定しており、直ちに型を閉じて次の
成形を開始した。この注型成形における1サイクルに要
する時間は28分であった。このようにして得られた成
形品の平坦部を切り出して60°光沢値を測定したとこ
ろ92であった。またこの成形品のTgは105℃であ
った。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0165】比較例4 実施例3と同じ注型用コンパウンドを、圧抜き・脱型温
度を100℃(下型)とした以外、同様の成形条件で成
形した。圧抜きをして3分間の脱型作業後、型の降温を
行うと同時に型掃除を行った。型掃除は実施例1と同様
に2分で完了し、型温も3分で各々75℃(下型)と5
5℃(上型)に到達したが、その後温度が安定せず、温
度が安定して次の成形に移るまで5分を要した。従って
1サイクルに要する時間は31分であった。このように
して得られた成形品の平坦部を切り出して60°光沢値
を測定したところ77であった。以上の結果をまとめて
表1に示す。
【0166】実施例5 実施例2で用いたアクリルシラップ70部に対して、
ポリメチルメタクリレートビーズ(住友化学社製、スミ
ペックスLG−6A)30部、充填材として水酸化アル
ミニウム(昭和電工社製、ハイジライトH−320)2
00部、内部離型剤としてステアリン酸亜鉛0.5部、
カップリング剤としてシランカップリング剤(日本ユニ
カー社製、A−174)1.5部、増粘剤として酸化マ
グネシウム0.1部、硬化剤としてt−ブチルパーオキ
シヘキサノエート(化薬アクゾ社製、カヤエステルO)
1.0部及び補強材としてガラス繊維(日本ガラス繊維
社製、チョップトストランドRES010−BM53)
12部を双腕型ニーダーにて混練し、バルクモールディ
ングコンパウンド(BMC)とした。
【0167】次に図4に示すような上下型から構成され
ており、シェアーエッジと熱媒体を循環可能な配管とを
有するバスタブ金型を加圧可能なプレス装置に設置し
た。まずこの金型に熱媒体としての減圧蒸気を循環させ
て下型を70℃、上型を60℃に設定した。このときの
熱媒体の温度は各々70℃(下型)と60℃(上型)で
あった。次に型を開いて上記BMCを金型内に投入し
た。続いて型締めを行い、金型に4.9MPaの圧力を
掛けると同時に熱媒体温度を各々120℃(下型)と1
10℃(上型)にした。10分後、金型の変位からBM
Cの硬化による収縮が完了したのを確認して熱媒体温度
を各々70℃(下型)と60℃(上型)に設定した。3
分後に熱媒体温度が設定温度に到達した後に圧抜きを行
い、脱型、型掃除を2分間で完了した。金型の温度は各
々70℃(下型)と60℃(上型)で安定しており、B
MCを型内に設置して直ちに型を閉じ、次の成形を開始
した。このプレス成形における1サイクルに要する時間
は15分であった。このようにして得られた成形品の平
坦部を切り出して60°光沢値を測定したところ85で
あった。またこの成形品のTgは105℃であった。以
上の結果をまとめて表1に示す。
【0168】比較例5 実施例5と同じBMCを、金型及び熱媒体温度を各々9
5℃(下型)と85℃(上型)とし、この温度を一定に
してで材料投入、硬化、圧抜きをして脱型する以外、同
様の成形条件で成形した。硬化、圧抜きをして圧抜きを
して脱型、型掃除が完了し、次の成形を行うまでに18
分を要した。このようにして得られた成形品の平坦部を
切り出して60°光沢値を測定したところ70であっ
た。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0169】実施例6 実施例2で用いたアクリルシラップ100部に対し
て、充填材として水酸化アルミニウム(昭和電工社製、
ハイジライトH−320)200部、内部離型剤として
ステアリン酸亜鉛0.5部、カップリング剤としてシラ
ンカップリング剤(日本ユニカー社製、A−174)
1.5部、増粘剤として酸化マグネシウム0.5部及び
硬化剤としてt−ブチルパーオキシヘキサノエート(化
薬アクゾ社製、カヤエステルO)1.0部の混合物を補
強材としてのガラス繊維マット(長さ1インチ)にガラ
ス含有率が30重量%となるように含浸させた後、熟
成、増粘させてシートモールディングコンパウンド(S
MC)とした。次に実施例5と同様の装置を用いてプレ
ス成形を行った。まずこの金型に熱媒体としての減圧蒸
気を循環させて下型を70℃、上型を60℃に設定し
た。このときの熱媒体の温度は各々70℃(下型)と6
0℃(上型)であった。次に型を開いて上記SMCを金
型内に投入した。続いて型締めを行い、金型に4.9M
Paの圧力を掛けると同時に熱媒体温度を各々120℃
(下型)と110℃(上型)にした。3分後、金型の変
位からSMCの硬化による収縮が完了したのを確認して
熱媒体温度を各々70℃(下型)と60℃(上型)に設
定した。3分後に熱媒体温度が設定温度に到達した後に
圧抜きを行い、脱型、型掃除を2分間で完了した。金型
の温度は各々70℃(下型)と60℃(上型)で安定し
ており、SMCを型内に設置して直ちに型を閉じ、次の
成形を開始した。このプレス成形における1サイクルに
要する時間は11分であった。このようにして得られた
成形品の平坦部を切り出して60°光沢値を測定したと
ころ75であった。またこの成形品のTgは110℃で
あった。以上の結果をまとめて表1に示す。
【0170】比較例6 実施例6と同じSMCを、金型及び熱媒体温度を各々1
20℃(下型)と110℃(上型)とし、これらの温度
を一定にして材料投入、硬化、圧抜きをして脱型した以
外、同様の成形条件で成形した。硬化、圧抜きをして脱
型、型掃除が完了し、次の成形を行うまでに7分を要し
た。このようにして得られた成形品の平坦部を切り出し
て60°光沢値を測定したところ55であった。以上の
結果をまとめて表1に示す。
【0171】実施例7 実施例2で得られたアクリルシラップ80部に対して
アクリル酸ブチル10部、スチレン10部、充填材とし
てシリカ粉(ヘップワース・ミネラルズ・アンド・ケミ
カルズ・リミティッド社製、クリストバライトXPF6
SM)150部、内部離型剤としてステアリン酸0.4
部、カップリング剤としてシランカップリング剤(日本
ユニカー社製、A−174)1.5部、消泡剤(ビック
ケミージャパン社製、A−555)0.2部、硬化剤と
してビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシ
ジカーボネート(化薬アクゾ社製、パーカドックス1
6)1.0部及び2,4,4−トリメチルペンチル−2
−パーオキシ−2−エチルヘキサノエート(化薬アクゾ
社製、カヤエステルTMPO−70)0.5部を添加
し、注型用コンパウンドとした。この注型コンパウンド
を実施例2と同条件で注型成形した。この注型成形にお
ける1サイクルに要する時間は28分であった。このよ
うにして得られた成形品の平坦部を切り出して60°光
沢値を測定したところ93であった。またこの成形品の
Tgは97℃であった。以上の結果をまとめて表1に示
す。
【0172】
【表1】
【0173】
【発明の効果】
【0174】本発明の成形品の製造方法は、上述の構成
よりなるので、これにより、成形品に良好な表面性を付
与して高付加価値化することと、成形サイクルを短くし
て低コスト化することとを両立させることが可能とな
り、人工大理石等の成形品を、バスタブ、浴室パネル、
キッチンカウンター、洗面カウンター等の住設機器、建
築用装飾材、船艇、タンク、耐食機器、工業部品、自動
車、電気部品等の様々な用途に、特にバスタブやキッチ
ンカウンター、洗面カウンターに好適に用いることがで
きることになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】注型成形の操作手順を成形型の断面概念図を用
いて示した図である。
【図2】本発明の成形品の製造方法を注型成形に適用し
た場合における、成形型に接する熱媒体温度と成形時間
との関係を示すグラフの一例である。
【図3】従来の成形品の製造方法を注型成形に適用した
場合における、成形型に接する熱媒体温度と成形時間と
の関係を示すグラフの一例である。
【図4】プレス成形の操作手順を成形型の断面概念図を
用いて示した図である。
【図5】本発明の成形品の製造方法をプレス成形に適用
した場合における、成形型に接する熱媒体温度と成形時
間との関係を示すグラフの一例である。
【図6】従来の成形品の製造方法をプレス成形に適用し
た場合における、成形型に接する熱媒体温度と成形時間
との関係を示すグラフの一例である。
【図7】(1)が本発明の製造方法における圧抜き・脱
型時のマトリックス樹脂の状態を説明するための模式図
であり、圧抜き・脱型時に光沢低下が発生しないメカニ
ズムを示し、(2)が従来法の圧抜き・脱型時のマトリ
ックス樹脂の状態を説明するための模式図であり、圧抜
き・脱型時に光沢低下が発生するメカニズムを示す。
【図8】成形品の線膨張係数から求めた材料Tgを説明
するためのグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 後藤 伸一 大阪府吹田市西御旅町5番8号 株式会社 日本触媒内 Fターム(参考) 4F204 AA36 AA39 AB16 AB25 AK01 AK02 AR06 FA01 FB01 FN15 FN17

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱硬化性樹脂組成物を熱媒体が接する成
    形型内に充填して加熱加圧成形した後に、意匠面側の成
    形型に接する該熱媒体温度を10℃以上低下させてから
    圧抜きをして脱型を行うことを特徴とする成形品の製造
    方法。
  2. 【請求項2】 熱硬化性樹脂組成物を熱媒体が接する成
    形型内に充填して意匠面側の成形型に接する該熱媒体温
    度を10℃以上上昇させて加熱加圧成形した後に、該熱
    媒体温度を10℃以上低下させてから圧抜きをして脱型
    を行い、続いて熱硬化性樹脂組成物を成形型内に充填す
    ることを繰り返すことを特徴とする連続的な成形品の製
    造方法。
  3. 【請求項3】 前記圧抜き時の意匠面側の成形型に接す
    る前記熱媒体温度が線膨張係数によって求めた成形品の
    Tgよりも10℃以上低い温度であることを特徴とする
    請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記熱硬化性樹脂組成物が(メタ)アク
    リルシラップを含むことを特徴とする請求項1、2又は
    3に記載の成形品の製造方法。
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Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2012025122A (ja) * 2010-07-27 2012-02-09 Panasonic Electric Works Co Ltd 繊維強化プラスチック平板の製造方法
JP2015217417A (ja) * 2014-05-19 2015-12-07 株式会社名機製作所 加熱システム

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JP2012025122A (ja) * 2010-07-27 2012-02-09 Panasonic Electric Works Co Ltd 繊維強化プラスチック平板の製造方法
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