JP3910230B2 - 樹脂組成物の処理方法および樹脂材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、重合体とチオール化合物とを含む樹脂組成物中のチオール化合物が有するメルカプト基を失活させる樹脂組成物の処理方法、および、該処理方法を用いて樹脂組成物を処理してなる樹脂材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、チオール化合物は、重合反応の連鎖移動剤や樹脂組成物の安定剤として用いられている。そして、例えば、チオール化合物の存在下で重合してなる樹脂組成物には、未反応のチオール化合物が含まれていることが、知られている。
【0003】
しかしながら、チオール化合物を含有する樹脂組成物は、チオール化合物に起因する臭気が発生することがある。また、単量体を含む樹脂組成物は、チオール化合物を含有していると、貯蔵中に徐々に粘度が上昇し、場合によってはゲル化する。つまり、チオール化合物および単量体を含む樹脂組成物は、貯蔵安定性(いわゆるシェルフライフ)に劣っている。また、該樹脂組成物を硬化させて得られる成形品等の硬化物が、耐溶剤性、耐水性、耐候性等に劣っていることがある。
【0004】
そこで、例えば、特公昭 53-2189号公報には、メチルメタクリレートを含む単量体混合物をチオール化合物の存在下で部分重合してなるシラップ(樹脂組成物)中に残存するチオール化合物を、無水マレイン酸および塩基性化合物を用いて処理する樹脂組成物の処理方法が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の樹脂組成物の処理方法は、特定のシラップにしか適用することができず、適用範囲が狭い。また、上記従来の処理方法では、チオール化合物が有するメルカプト基を十分に失活させることができない。このため、上記処理方法を一般的な樹脂組成物に適用した場合、処理後の樹脂組成物にチオール化合物の臭気が残存していることがある。とりわけ、単量体を含まない樹脂組成物を処理した後の樹脂組成物を成形した場合に、チオール化合物に起因する臭気が問題となる。さらに、上記従来の処理方法を用いて単量体を含む樹脂組成物を処理することによって得られる樹脂材料は、貯蔵安定性に劣る場合や、該樹脂材料を硬化させてなる硬化物が耐溶剤性、耐水性、耐候性等に劣る場合がある。そこで、これら問題点が解消された樹脂組成物の処理方法が求められている。
【0006】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、樹脂組成物中のチオール化合物が有するメルカプト基を効率的に失活させることができる樹脂組成物の処理方法を提供することにある。また、チオール化合物に起因する臭気の問題が解消された樹脂材料を提供し、さらに、単量体を含む樹脂組成物を処理してなり、貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化させることができ、かつ、耐溶剤性、耐水性、耐候性等の物性に優れた硬化物を得ることができる樹脂材料を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本願発明者等は、上記の目的を達成すべく、重合体とチオール化合物とを含む樹脂組成物の処理方法および樹脂材料について鋭意検討した。その結果、上記樹脂組成物にビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加することにより、チオール化合物が有するメルカプト基を効率的に失活させることができ、チオール化合物に起因する臭気の問題が解消された樹脂材料が得られることを見出した。また、単量体を含む樹脂組成物の場合には、貯蔵安定性に優れた樹脂材料を得ることができることを見出した。さらに、上記の樹脂材料を硬化させることにより、耐溶剤性、耐水性、耐候性等の物性に優れた硬化物を得ることができることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
即ち、請求項1記載の発明の樹脂組成物の処理方法は、上記の課題を解決するために、重合体とチオール化合物とを含む樹脂組成物の処理方法であって、上記樹脂組成物にビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加することを特徴としている。
【0009】
上記方法によれば、樹脂組成物中の遊離のメルカプト基を効率良く失活させることができ、チオール化合物に起因する臭気の問題が解消された樹脂材料が得られる。
【0010】
また、請求項2記載の発明の樹脂組成物の処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項1記載の樹脂組成物の処理方法において、上記樹脂組成物が、さらに単量体を含むことを特徴としている。
【0011】
請求項3記載の発明の樹脂組成物の処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項2記載の樹脂組成物の処理方法において、上記樹脂組成物が、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分をチオール化合物の存在下で重合してなる(メタ)アクリルシラップであることを特徴としている。
【0012】
請求項4記載の発明の樹脂組成物の処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項3記載の樹脂組成物の処理方法において、上記(メタ)アクリルシラップが、カルボキシル基を含有することを特徴としている。
【0013】
請求項5記載の発明の樹脂組成物の処理方法は、上記の課題を解決するために、請求項3または4記載の樹脂組成物の処理方法において、上記(メタ)アクリルシラップが、カルボキシル基を(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/または(メタ)アクリル酸メチルグリシジルによってエステル化してなるエステル結合を含有することを特徴としている。
【0014】
上記請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法によれば、さらに、貯蔵安定性に優れた樹脂材料を得ることができる。
【0015】
請求項6記載の発明の樹脂材料は、上記の課題を解決するために、単量体成分をチオール化合物の存在下で重合して得られる樹脂組成物を、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の処理方法を用いて処理してなる樹脂材料であって、上記ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量は、樹脂組成物を調製する際に添加されたチオール化合物の量に対して0.5倍モル〜5倍モルの範囲内であることを特徴としている。
【0016】
上記構成によれば、チオール化合物に起因する臭気の問題が解消される。それに加えて、請求項2ないし5のいずれか1項に記載の方法を用いた場合においては、貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化させることができる樹脂材料を提供することができる。さらに、耐熱性、耐溶剤性、耐候性および耐水性等の各種物性に優れた硬化物、例えば成形品を得ることができる。
【0017】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明において、重合体とは、少なくとも1種類の単位化合物が2個以上結合してなる化合物を指すものとする。また、単量体とは、上記の単位化合物を指す。即ち、単量体は、2個以上結合することによって重合体を生成しうる化合物を指す。従って、上記重合体は、単量体が結合することによって形成された構造単位の繰り返しの数(重合度)が2〜20程度であるオリゴマー、単量体の重合反応を途中で停止させることにより得られるプレポリマーを含むものとする。
【0018】
本発明にかかる樹脂材料は、重合体とチオール化合物とを含む樹脂組成物に対してビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加してなっている。
【0019】
上記重合体としては、ポリオレフィン、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、飽和ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂等が挙げられる。樹脂組成物は、これら重合体の一種類のみを含んでいてもよく、また、二種類以上を含んでいてもよい。尚、重合体の平均分子量は、特に限定されるものではない。また、重合体の製造方法については、特に限定されるものではなく、付加重合、環化重合、開環重合、重付加、重縮合、付加縮合等を用いることができる。
【0020】
上記チオール化合物は、分子内にメルカプト基を有する化合物である。上記チオール化合物は、例えば、重合体を製造する際に重合体の平均分子量等を調節する連鎖移動剤として添加されている。上記チオール化合物としては、具体的には、例えば、t-ブチルメルカプタン、n-オクチルメルカプタン、n-ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノール、チオナフトール等の芳香族メルカプタン;チオグリコール酸;チオグリコール酸オクチル、エチレングリコールジチオグリコレート、トリメチロールプロパントリス-(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(チオグリコレート)等のチオグリコール酸アルキルエステル;β−メルカプトプロピオン酸;β−メルカプトプロピオン酸オクチル、1,4-ブタンジオールジ(β−チオプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス-(β−チオプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス-(β−チオプロピオネート)等のβ−メルカプトプロピオン酸アルキルエステル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。樹脂組成物は、これらチオール化合物の一種類のみを含んでいてもよく、また、二種類以上を含んでいてもよい。
【0021】
上記樹脂組成物は、少なくとも重合体とチオール化合物とを含んでいればよいが、さらに単量体を含んでいてもよい。この場合、チオール化合物が有するメルカプト基を失活させることにより、貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化させることができる樹脂材料を提供することができる。
【0022】
上記単量体は、単独で重合可能な単量体、または、他の化合物と反応することによって重合可能な単量体であればよい。具体的には、α−オレフィン;(メタ)アクリル酸エステル、スチレン、酢酸ビニル等のビニル化合物;ジエン類;アセチレン類;環状エーテル;環状酸無水物;ジカルボン酸;多価アルコール等が挙げられる。樹脂組成物は、これら単量体の一種類のみを含んでいてもよく、また、二種類以上を含んでいてもよい。単量体の量は、重合体や単量体の種類等に応じて適宜選択すればよく、特に限定されるものではない。
【0023】
上記樹脂組成物は、(メタ)アクリル酸エステルの重合体および(メタ)アクリル酸エステルを含むシラップ(以下、(メタ)アクリルシラップと称する)であるのが好ましい。上記(メタ)アクリルシラップのうちでも、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップが、硬化特性に優れた樹脂材料を得ることができるので、特に好ましい。
【0024】
(メタ)アクリルシラップにおける重合体と単量体との割合(比率)は、両者の合計量を 100重量%として、重合体は7重量%〜80重量%の範囲内が好ましく、単量体は93重量%〜20重量%の範囲内が好ましい。また、重合体の平均分子量は、重量平均分子量(Mw)が 6,000〜 1,000,000程度、数平均分子量(Mn)が 3,000〜 500,000程度であることが特に好ましい。
【0025】
以下、(メタ)アクリルシラップについて詳述する。
(メタ)アクリルシラップは、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分をチオール化合物の存在下で重合してなっている。
【0026】
上記の(メタ)アクリル酸エステルとしては、具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル;シクロヘキシル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等の塩基性(メタ)アクリル酸エステル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0027】
上記例示の化合物のうち、メチルメタクリレート、および、メチルメタクリレートを主成分とする(メタ)アクリル酸エステルが特に好ましい。メチルメタクリレートを主成分とすることにより、(メタ)アクリルシラップを処理してなる樹脂材料を硬化させて得られる硬化物の耐候性、透明性、表面の光沢等の各種物性や、外観、安全性等をより一層向上させることができる。尚、(メタ)アクリル酸エステルとして塩基性(メタ)アクリル酸エステルを用いる場合には、塩基性(メタ)アクリル酸エステルに対して 100重量%以上の中性(メタ)アクリル酸エステルを混合して用いるのが好ましい。上記の中性(メタ)アクリル酸エステルとしては、前記の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を用いることができる。
【0028】
上記単量体成分は、必要に応じてカルボキシル基を含有しないビニル化合物(モノマー)を含んでいる。上記のビニル化合物としては、重合可能な二重結合を含有する化合物であればよく、具体的には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル等のビニルエステル;アリルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル等のアリル化合物;(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル;N-メトキシメチルアクリルアミド、N-エトキシメチルアクリルアミド等のN-アルコキシ置換(メタ)アクリルアミド;不飽和塩基性単量体;N-フェニルマレイミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド等のマレイミド系単量体等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらビニル化合物は、一種類のみを混合してもよく、また、二種類以上を適宜組み合わせて混合してもよい。(メタ)アクリル酸エステルにビニル化合物を混合する場合における両者の混合割合、即ち、上記単量体成分におけるビニル化合物の含有量は、ビニル化合物の種類や(メタ)アクリル酸エステルとの組み合わせ等にもよるが、50重量%以下が好ましい。
【0029】
カルボキシル基を含有する(メタ)アクリルシラップ(以下、適宜、カルボキシル基含有シラップと称する)は、上記単量体成分の重合前あるいは重合後にカルボキシル基を含有するビニル単量体(以下、カルボキシル基含有単量体と記す)を混合することにより得られる。即ち、(メタ)アクリル単量体成分を重合する前にカルボキシル基含有単量体を混合することにより、カルボキシル基を含有する重合体、および未反応のカルボキシル基含有単量体を含む(メタ)アクリルシラップが得られる。また、(メタ)アクリル単量体成分を重合した後、反応混合物にカルボキシル基を含有するビニル単量体を混合することにより、カルボキシル基含有単量体を含む(メタ)アクリルシラップが得られる。
【0030】
上記カルボキシル基含有単量体としては、一分子中に、重合可能な二重結合と、カルボキシル基とを含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ビニル安息香酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸;これら不飽和ジカルボン酸のモノエステル;酸無水物の半エステル等が挙げられる。上記の不飽和ジカルボン酸のモノエステルとしては、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノオクチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノブチル、フマル酸モノオクチル、シトラコン酸モノエチル等が挙げられる。上記の酸無水物の半エステルとしては、コハク酸モノエステル、フタル酸モノエステル、ヘキサフタル酸モノエステル等が挙げられる。これらカルボキシル基含有単量体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0031】
尚、上記の酸無水物の半エステルは、ヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルのヒドロキシル基を、酸無水物でエステル化することによって得られる。上記酸無水物としては、無水コハク酸、無水フタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸等が挙げられる。上記のヒドロキシル基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートへのε−カプロラクトン開環付加物または2-ヒドロキシルエチル(メタ)アクリレートへのγ−ブチロラクトンの開環付加物等を用いることができる。
【0032】
(メタ)アクリル単量体成分に対するカルボキシル基含有単量体の添加量は、両者の合計量を 100重量%として、カルボキシル基含有単量体が 0.5重量%〜20重量%の範囲内であることが好ましく、1重量%〜15重量%の範囲内であることがより好ましく、3重量%〜10重量%の範囲内であることがさらに好ましい。カルボキシル基含有単量体を上記の範囲内で用いることにより、(メタ)アクリルシラップを比較的短時間で製造することができると共に、(メタ)アクリルシラップを処理してなる樹脂材料を従来と比較して短時間で硬化させることができる。また、得られる硬化物の平均分子量が大きくなる。さらに、該樹脂材料を硬化させてなる硬化物の耐熱性等の各種物性を向上させることができる。カルボキシル基含有単量体の割合が 0.5重量%未満の場合には、カルボキシル基含有単量体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、(メタ)アクリルシラップを製造するのにかかる時間を短縮する効果が乏しくなり、しかも、得られる硬化物の耐熱性等の各種物性が低下するおそれがある。また、硬化物の平均分子量が大きくならない。カルボキシル基含有単量体の割合が20重量%を越える場合には、得られる硬化物の耐候性および耐水性が低下するおそれがある。
【0033】
単量体成分を重合する際に添加されるチオール化合物としては、前記例示のチオール化合物を用いることができる。チオール化合物を添加することにより、単量体成分の重合反応を極めて容易に制御することができる。チオール化合物の量は、該チオール化合物の種類や(メタ)アクリル酸エステル等との組み合わせ等に応じて選択すればよく、特に限定されるものではないが、単量体成分に対して 0.1重量%〜15重量%の範囲内が好適である。
【0034】
上記単量体成分をチオール化合物の存在下で重合させる際には、重合開始剤を使用することが望ましい。上記の重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、t-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、クメンヒドロパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート等の有機過酸化物; 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル、2-フェニルアゾ -2,4-ジメチル -4-メトキシバレロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら重合開始剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。単量体成分に対する重合開始剤の添加量等は、特に限定されるものではない。
【0035】
上記単量体成分をチオール化合物の存在下で重合させる際には、架橋剤を使用することができる。上記架橋剤は、単量体成分に含まれる官能基と反応する官能基を複数含有する化合物であればよい。該架橋剤としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。架橋剤の添加量は、その種類やアクリル酸エステル等との組み合わせ、樹脂材料の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0036】
単量体成分の重合方法としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合方法が挙げられるが、塊状重合が特に好ましい。
【0037】
上記の重合を行う際の反応温度や反応時間等の反応条件は、特に限定されるものではなく、例えば、公知の反応条件を採用することができる。このうち、単量体成分の重合を途中で停止させる方法(いわゆる部分重合)が、一段階で(メタ)アクリルシラップを得ることができるので好ましい。尚、重合は、窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、反応終了時において、反応混合物における重合体と未反応の単量体成分との割合(比率)は、両者の合計量を 100重量%として、重合体は7重量%〜80重量%の範囲内が好ましく、未反応の単量体成分は93重量%〜20重量%の範囲内が好ましい。
【0038】
上記重合反応により得られた反応混合物は、そのまま樹脂組成物として用いることができるが、反応混合物がカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップである場合には、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップが含有するカルボキシル基を(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/または(メタ)アクリル酸メチルグリシジルによってエステル化するとよい。これにより、カルボキシル基を(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/または(メタ)アクリル酸メチルグリシジルによってエステル化してなるエステル結合を含有する(メタ)アクリルシラップが得られる。
【0039】
本発明において、樹脂組成物に添加されるビニルエーテル化合物は、チオール化合物と反応可能な二重結合を有する化合物であればよく、特に限定されない。具体的には、例えば、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n-プロピルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル;シクロヘキシルビニルエーテル等のシクロアルキルビニルエーテル;2,3-ジヒドロフラン、3,4-ジヒドロフラン、2,3-ジヒドロ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ -2-メトキシ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ -2-エトキシ-2H-ピラン、3,4-ジヒドロ -4,4-ジメチル-2H-ピラン -2-オン等の環状エーテル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらビニルエーテル化合物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0040】
樹脂組成物に添加されるビニルチオエーテル化合物は、チオール化合物と反応可能な二重結合を有する化合物であればよく、特に限定されない。上記のビニルチオエーテル化合物としては、前記例示のビニルエーテル化合物の酸素原子を硫黄原子に置き換えてなる化合物を用いることができる。即ち、前記例示のビニルエーテル化合物に対応する脂肪族ビニルチオエーテル;シクロアルキルビニルチオエーテル;環状チオエーテル等を用いることができる。これらビニルチオエーテル化合物は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0041】
ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量は、樹脂組成物を調製する際に添加されたチオール化合物の量に対して 0.5倍モル〜5倍モルの範囲内が好ましく、 0.8倍モル〜3倍モルの範囲内がより好ましい。ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量が 0.5倍モル未満である場合には、チオール化合物が完全に処理されないことがある。処理後の反応混合物中にチオール化合物が残存すると、得られる樹脂材料の貯蔵安定性が低下する。また、樹脂材料を硬化させるのに長時間を有すると共に、硬化物の平均分子量が大きくならない。ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量が5倍モルを越える場合には、得られる硬化物の耐候性が低下するおそれがある。
【0042】
本発明にかかる樹脂組成物の処理方法においては、重合体とチオール化合物とを含む樹脂組成物に対して、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加する。これにより、樹脂組成物中のチオール化合物が有するメルカプト基が失活される。
【0043】
上記樹脂組成物の処理を行う際の処理温度や処理時間等の処理条件は、樹脂組成物の種類等に応じて決定すればよく、特に限定されるものではない。また、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の添加方法は、樹脂組成物にビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加する方法であってもよく、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物に樹脂組成物を添加する方法であってもよい。
【0044】
上記樹脂組成物の処理は、ルイス酸、アミン塩、3級アミン、4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩、金属塩等の触媒の存在下で行ってもよい。これにより、チオール化合物が有するメルカプト基と、ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物との反応を促進することができる。また、上記樹脂組成物の処理を行う際には、溶媒を用いることができる。上記溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。
【0045】
ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を用いて樹脂組成物を処理した後の樹脂組成物は、そのまま樹脂材料として用いることができるが、樹脂組成物がカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップである場合には、(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/または(メタ)アクリル酸メチルグリシジルを添加して、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップのカルボキシル基をエステル化することがより好ましい。
【0046】
上記(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/または(メタ)アクリル酸メチルグリシジルの添加量は、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップとの組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有ビニル単量体に対して 0.5倍モル〜2倍モルの範囲内が好ましく、 0.8倍モル〜 1.5倍モルの範囲内がより好ましい。
【0047】
上記エステル化反応を行う際には、必要に応じてエステル化触媒を添加することができる。上記エステル化触媒は、カルボキシル基によるエポキシ基の開環反応を促進することができるものであれば、特に限定されない。具体的には、ジメチルベンジルアミン、トリエチルアミン、テトラメチルエチレンジアミン、トリ -n-オクチルアミン等の3級アミン;テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩;ベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド等の4級ホスホニウム塩、金属塩等が挙げられる。これらエステル化触媒は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0048】
エステル化触媒の添加量は、その種類やカルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップ等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボキシル基含有(メタ)アクリルシラップ 100重量部に対して、0.01重量部〜5重量部の範囲内が好ましく、 0.1重量部〜3重量部の範囲内がより好ましい。
【0049】
上記エステル化反応を行う際には、重合禁止剤を共存させてもよい。上記重合禁止剤としては、ハイドロキノン、メチルハイドロキノン、メトキシハイドロキノン、 tert-ブチルハイドロキノン等を用いることができる。上記エステル化反応を行う際には、溶媒を用いることができる。上記溶媒としては、水および/または有機溶媒を用いることができる。
【0050】
以上のように、樹脂組成物を処理することにより、本発明にかかる樹脂材料が得られる。
【0051】
上記樹脂材料は、塗料等として用いることもできるが、シートモールディングコンパウンド(以下、SMCと記す)やバルクモールディングコンパウンド(以下、BMCと記す)、プレミックス材料、注型材料、引抜き材料、射出成形材料、押出し成形材料等の成形材料として特に好適である。
【0052】
上記樹脂材料は、成形材料として用いられる場合には、必要に応じて、増粘剤や、コハク酸誘導体、補強材等を含んでいてもよい。該樹脂材料は、比較的短時間で硬化させることができる。そして、該樹脂材料を成形することにより、耐熱性、耐溶剤性、耐候性および耐水性等の各種物性に優れた成形品(硬化物)を得ることができる。尚、以下の説明においては、樹脂材料における補強材以外の成分をコンパウンドと称することにする。
【0053】
上記の増粘剤としては、具体的には、例えば、酸化マグネシウム、酸化カルシウム等のアルカリ土類金属酸化物;水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら増粘剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。増粘剤の使用量は、その種類や樹脂組成物との組み合わせ、樹脂材料の用途等にもよるが、樹脂組成物 100重量部に対して、5重量部以下の範囲内が好ましい。上記の範囲内で増粘剤を使用することにより、コンパウンドの増粘後の粘度を、成形作業等に好適な所定の値に設定することができる。増粘剤の使用量が5重量部よりも多い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が高くなり過ぎ、成形作業等の作業性が低下すると共に、得られる成形品の耐候性および耐水性が低下するおそれがある。
【0054】
上記のコハク酸誘導体は、増粘剤による過剰な増粘挙動、特に初期の増粘挙動を抑制する働きを備えている。コハク酸誘導体は、分子内にコハク酸骨格またはコハク酸無水物骨格を備え、かつ、該骨格のエチレン基部分に、アルキル基、アルケニル基、脂環式炭化水素基、芳香族炭化水素基等の置換基を有する化合物であればよく、特に限定されるものではないが、全炭素数が8〜30である化合物が好ましい。全炭素数が7以下のコハク酸誘導体は、樹脂組成物、とりわけ(メタ)アクリルシラップに対する溶解性に劣る。また、全炭素数が31以上のコハク酸誘導体は、該コハク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効果が低い。
【0055】
コハク酸誘導体としては、具体的には、例えば、ヘキシルコハク酸、ヘプチルコハク酸、オクチルコハク酸、ノニルコハク酸、デシルコハク酸、ドデシルコハク酸、テトラデシルコハク酸、ペンタデシルコハク酸、ヘキサデシルコハク酸、ヘプタデシルコハク酸、オクタデシルコハク酸、ペンタドデシルコハク酸、エイコシルコハク酸等の炭素数が4以上のアルキル基を有する化合物;ヘキセニルコハク酸、ヘプテニルコハク酸、オクテニルコハク酸、ノネニルコハク酸、デセニルコハク酸、ドデセニルコハク酸、テトラデセニルコハク酸、ペンタデセニルコハク酸、ヘキサデセニルコハク酸、ヘプタデセニルコハク酸、オクタデセニルコハク酸、ペンタドデセニルコハク酸、エイコセニルコハク酸等のアルケニル基を有する化合物;シクロドデシルコハク酸、シクロドデセニルコハク酸等の脂環式炭化水素基を有する化合物;ジフェニルブテニルコハク酸等の芳香族炭化水素基を有する化合物;およびこれらコハク酸の無水物等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これらコハク酸誘導体は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、コハク酸誘導体の調製方法は、特に限定されるものではない。
【0056】
コハク酸誘導体の添加量は、その種類や、樹脂組成物および増粘剤等との組み合わせ、樹脂材料の用途等にもよるが、樹脂組成物 100重量部に対して、0.01重量部〜10重量部の範囲内が好ましい。コハク酸誘導体の添加量が0.01重量部よりも少ない場合には、コハク酸誘導体を使用することにより期待される作用・効果が乏しくなる。つまり、増粘剤による過剰な増粘挙動を抑制する効果が乏しくなるおそれがある。コハク酸誘導体の添加量が10重量部よりも多い場合には、コンパウンドの増粘後の粘度が、成形作業等に好適な所定の値に達しないか、若しくは達するまでに長時間を有するおそれがある。
【0057】
上記の補強材としては、具体的には、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、セラミックからなる繊維等の無機繊維;アラミドやポリエステル等からなる有機繊維;天然繊維等が挙げられるが、特に限定されるものではない。また、繊維の形態は、例えば、ロービング、クロス、マット、織物、チョップドロービング、チョップドストランド等が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら補強材は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。補強材の使用量は、その種類や樹脂組成物等との組み合わせ、樹脂材料の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。また、補強材とコンパウンドとを混合する方法は、特に限定されるものではなく、該補強材の形態に応じて適宜設定すればよい。例えば、補強材の形態がマットやクロス等である場合には、該補強材にコンパウンドを含浸させればよい。また、例えば、補強材の形態がロービングやチョップトストランド等である場合には、該補強材とコンパウンドとを混練すればよい。補強材を含む樹脂材料は、例えばSMCやBMCとして好適である。
【0058】
本発明にかかる樹脂材料は、硬化剤(重合開始剤)を含んでいることが望ましく、また、必要に応じて、充填剤、架橋性単量体、添加剤等をさらに含んでいてもよい。上記の硬化剤としては、例えば、前記(メタ)アクリルシラップを製造する際に用いられる前記例示の重合開始剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。硬化剤の添加量は、その種類や樹脂組成物等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、樹脂組成物 100重量部に対して、 0.1重量部〜5重量部の範囲内が好適である。
【0059】
上記の充填剤としては、具体的には、例えば、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナ、クレー、タルク、ミルドファイバー、珪砂、川砂、珪藻土、雲母粉末、石膏、寒水砂、アスベスト粉、ガラス粉等の無機系充填剤、および、ポリマービーズ等の有機系充填剤が挙げられるが、特に限定されるものではない。これら充填剤は、単独で用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。尚、充填剤の平均粒径等の形態は、特に限定されるものではない。
【0060】
充填剤の配合量は、その種類や樹脂組成物等との組み合わせ、樹脂材料の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、樹脂組成物 100重量部に対して、30重量部〜 600重量部の範囲内が好適である。そして、樹脂材料がSMCとして用いられる場合には、充填剤の配合量は、樹脂組成物 100重量部に対して、30重量部〜 300重量部の範囲内がより好ましい。樹脂材料がBMCとして用いられる場合には、充填剤の配合量は、樹脂組成物 100重量部に対して、 150重量部〜 600重量部の範囲内がより好ましい。樹脂材料が注型材料として用いられる場合には、充填剤の配合量は、樹脂組成物 100重量部に対して、30重量部〜 250重量部の範囲内がより好ましい。樹脂材料が引抜き成形用の樹脂材料として用いられる場合には、充填剤の配合量は、樹脂組成物 100重量部に対して、10重量部〜 200重量部の範囲内がより好ましい。
【0061】
上記の架橋性単量体は、硬化物の架橋密度を増加させる働きを備えている。架橋性単量体は、樹脂組成物に含まれる官能基と反応する官能基を複数含有する化合物であればよい。該架橋性単量体としては、具体的には、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられるが、特に限定されるものではない。架橋性単量体の添加量は、その種類や樹脂組成物等との組み合わせ、樹脂材料の用途や所望される物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0062】
上記の添加剤は、一般に用いられている各種の添加剤を採用することができ、特に限定されるものではないが、例えば、低収縮剤、(内部)離型剤、着色剤、重合禁止剤等が挙げられる。これら添加剤は、例えば、樹脂材料の用途や所望される物性等に応じて適宜添加すればよい。また、添加剤の添加量は、該添加剤の種類や樹脂組成物等との組み合わせ等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではない。
【0063】
低収縮剤としては、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、セルロースブチレート、アセテート、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリカプロラクトン、飽和ポリエステル等が挙げられるが、特に限定されるものではない。低収縮剤を添加することにより、得られる成形品(硬化物)の寸法安定性をより一層向上させることができる。離型剤としては、具体的には、例えば、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸アミド、トリフェニルホスフェート、アルキルホスフェート;一般に用いられているワックス類、シリコーンオイル等の離型剤等が挙げられる。着色剤としては、公知の無機顔料や有機顔料が挙げられる。
【0064】
上記構成の樹脂材料は、SMC、BMC、注型材料等の成形材料として特に好適である。SMCは、いわゆるSMC製造装置を用いて容易に製造することができる。BMCは、双腕型ニーダ等の混練機を用いて容易に製造することができる。注型材料は、混合機を用いて容易に製造することができる。そして、SMCやBMCは、例えば60℃〜 160℃で加熱・加圧成形(プレス成形)することにより成形品とされる。また、注型材料は、例えば室温〜70℃でセル内に注入(注型)することにより成形品とされる。尚、樹脂材料の硬化方法は、特に限定されるものではない。本発明にかかる樹脂材料は、種々の成形方法に適用可能である。
【0065】
以上のように、本発明にかかる樹脂組成物の処理方法は、樹脂組成物にビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加する方法である。
【0066】
上記方法によれば、樹脂組成物中の遊離のメルカプト基を効率良く失活させることができる。従って、上記方法を用いて単量体を含む樹脂組成物を処理することにより、例えば、貯蔵安定性に優れた樹脂材料を得ることができる。
【0067】
また、以上のように、本発明にかかる樹脂材料は、上記処理方法を用いて樹脂組成物を処理してなる構成である。
【0068】
上記構成によれば、チオール化合物に起因する臭気の問題が解消された樹脂材料を提供することができる。また、単量体を含む樹脂組成物の場合においては、貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化させることができ、かつ、耐熱性、耐溶剤性、耐候性および耐水性等の各種物性に優れた硬化物、例えば成形品を提供することができる。
【0069】
本発明にかかる樹脂材料を成形してなる成形品としては、例えば、いわゆる採光ドーム、ベンチ、テーブル、タンク、公告板、防水板等の、屋外で使用される各種物品;浄化槽、自動車、鉄道車両、船舶等を構成する構成材;屋根・壁等の、構造物の外装材;バスタブやキッチンカウンタとして好適な人工大理石;電気部品等が挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0070】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示し、「%」は、「重量%」を示す。
【0071】
〔実施例1〕
温度計、冷却器、窒素ガス導入管、および攪拌機を備えた反応器に、(メタ)アクリル酸エステルとしてのメチルメタクリレート 194部と、カルボキシル基含有単量体としてのメタクリル酸6部とを仕込んだ後、反応器内を窒素ガス置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温した後、重合開始剤としての 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.1部と、チオール化合物としてのn-ドデシルメルカプタン2部とを添加して、6時間共重合反応を行った。これにより、樹脂組成物としての(メタ)アクリルシラップを得た。得られた(メタ)アクリルシラップの酸価は19であった。
【0072】
次いで、上記の(メタ)アクリルシラップに、ビニルエーテル化合物としてのイソブチルビニルエーテルを添加した後、 100℃に昇温して30分間攪拌することにより、該(メタ)アクリルシラップ中に残存するn-ドデシルメルカプタンを処理した。上記のイソブチルビニルエーテルは、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して 2.0倍モルとなるように添加した。
【0073】
続いて、メタクリル酸グリシジルと、エステル化触媒としてのトリフェニルホスフィン 0.4部と、重合禁止剤としてのハイドロキノン0.01部とを添加した後、100 ℃で10時間攪拌することにより、エステル化反応を行った。上記のメタクリル酸グリシジルは、メタクリル酸に対して 0.5倍モルとなるように添加した。これにより、シラップを得た。該シラップの固形分濃度は42%、粘度は28ps、酸価は11であった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した上記シラップの重量平均分子量(Mw)は42,000であった。
【0074】
さらに、(メタ)アクリルシラップ中の(メタ)アクリルポリマー(重合体)の一分子当たりの二重結合の数を測定した。即ち、まず、メタクリル酸グリシジルを反応させる前後の(メタ)アクリルポリマーの酸価の差を測定し、(メタ)アクリルポリマー1g当たりにおける消失したカルボキシル基のモル数を算出して、これを(メタ)アクリルポリマー1g中の重合性二重結合のモル数とした。また、(メタ)アクリルポリマーの重量平均分子量(Mw)から(メタ)アクリルポリマー1gのモル数を算出した。そして、(メタ)アクリルポリマー1g中の重合性二重結合のモル数と、(メタ)アクリルポリマー1gのモル数とから、(メタ)アクリルポリマー一分子当たりの二重結合の数を算出した。その結果、一分子当たりの二重結合の数は、5.3 であった。
【0075】
続いて、上記のシラップ 100部に、硬化剤としてのベンゾイルパーオキサイド2部を添加して溶解させた。これにより、樹脂材料としての注型材料を得た。得られた注型材料は、減圧することにより脱泡した。この注型材料、つまり、コンパウンドは、貯蔵安定性に優れていた。
【0076】
次いで、注型材料を、互いの間隔(隙間)が3mmとなるようにして対向配置された2枚のガラス板の周囲をいわゆる弾力ガスケットにて閉鎖してなるセルを用いて注型した。即ち、注型材料を上記のセル内に注入した後、60℃に加熱して硬化させた。
【0077】
60℃におけるゲルタイム(ゲル化時間)は、JIS K 6901に基づいて測定した。即ち、試料である注型材料を、直径18mmの試験管に深さ 100mmとなるように入れた後、温度60℃に調節された恒温槽に保持し、次いで、該注型材料の温度が45℃から反応熱によって65℃に昇温するまでの時間を測定し、この時間をゲルタイムとした。その結果、60℃におけるゲルタイムは30分であった。
【0078】
そして、脱型後、 100℃で後硬化(いわゆる、アフターキュア)させることにより、成形品である樹脂板を得た。得られた樹脂板は、テトラヒドロフラン(以下、THFと記す)やアセトンに対して不溶であった。つまり、上記の樹脂板は、耐溶剤性に優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表1に示す。
【0079】
〔実施例2〕
ビニルエーテル化合物として、実施例1におけるイソブチルビニルエーテルの代わりに、3,4-ジヒドロ-2H-ピランを用いる以外は、実施例1と同様の反応、処理等を行い、シラップを得た。得られたシラップの固形分濃度は43%、粘度は31ps、酸価は11であった。上記シラップの重量平均分子量(Mw)は39,000であった。
【0080】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の注型を行い、樹脂板を得た。60℃におけるゲルタイムは30分であった。また、得られた樹脂板の耐溶剤性は良好であった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表1に示す。
【0081】
〔比較例1〕
実施例1において、イソブチルビニルエーテルを用いない以外は、実施例1と同様の反応、処理等を行った。その結果、エステル化の際に徐々に粘度が上がり、固形分、粘度、および分子量の増大したシラップが得られた。
【0082】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、比較用の注型材料を得た。次いで、得られた比較用の注型材料を用いて、実施例1と同様の注型を行い、比較用の樹脂板を得た。60℃におけるゲルタイムは60分であった。得られた比較用注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。また、得られた比較用樹脂板は、THFやアセトンに膨潤した。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表1に示す。
【0083】
〔実施例3〕
実施例1におけるチオール処理とエステル化の順序を変更した以外は、実施例1と同様の反応・処理等を行い、シラップを得た。得られたシラップの固形分濃度は50%、粘度は 150ps、酸価は11、重量平均分子量(Mw)は58,000であった。
【0084】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の注型を行い、樹脂板を得た。60℃におけるゲルタイムは30分であった。また、得られた樹脂板の耐溶剤性は良好であった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表1に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
〔実施例4〕
実施例1と同じ反応器に、メチルメタクリレート 180部と、メタクリル酸20部とを仕込んだ後、反応器内を窒素ガス置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温した後、 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.1部と、チオール化合物としてのペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート10部とを添加して、4時間共重合反応を行った。これにより、(メタ)アクリルシラップを得た。
【0087】
次いで、上記の(メタ)アクリルシラップに、イソブチルビニルエーテルを添加した後、 100℃に昇温して30分間攪拌することにより、該(メタ)アクリルシラップ中に残存するn-ドデシルメルカプタンを処理した。上記のイソブチルビニルエーテルは、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して 2.0倍モルとなるように添加した。
【0088】
続いて、メタクリル酸グリシジルと、エステル化触媒としてのトリフェニルホスフィン 0.1部と、重合禁止剤としてのハイドロキノン0.01部とを添加した後、100 ℃で8時間攪拌することにより、エステル化反応を行った。上記のメタクリル酸グリシジルは、メタクリル酸に対して10倍モルとなるように添加した。これにより、シラップを得た。得られたシラップの固形分濃度は52%、粘度は39ps、重量平均分子量(Mw)は14,000、酸価は27であった。
【0089】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の注型を行い、樹脂板を得た。60℃におけるゲルタイムは15分であった。また、得られた樹脂板の耐溶剤性は良好であった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表2に示す。
【0090】
〔実施例5〕
実施例4におけるメチルメタクリレートの使用量(仕込み量)を 180部から 196部に変更すると共に、メタクリル酸の使用量を20部から4部に変更した以外は、実施例4と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。
【0091】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の注型を行い、樹脂板を得た。60℃におけるゲルタイムは40分であった。また、得られた樹脂板の耐溶剤性は良好であった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表2に示す。
【0092】
〔実施例6〕
温度計、冷却器、窒素ガス導入管、および攪拌機を備えた反応器に、メチルメタクリレート 196部と、メタクリル酸4部とを仕込んだ後、反応器内を窒素ガス置換した。次に、上記の混合物を攪拌しながら80℃に昇温した後、2,2'- アゾビスイソブチロニトリル 0.1部と、n-ドデシルメルカプタン1部とを添加して、6時間共重合反応を行った。これにより、(メタ)アクリルシラップを得た。
【0093】
次いで、上記の(メタ)アクリルシラップに、イソブチルビニルエーテルを添加した後、 100℃に昇温して1時間攪拌することにより、該(メタ)アクリルシラップ中に残存するn-ドデシルメルカプタンを処理した。上記のイソブチルビニルエーテルは、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して 2.0倍モルとなるように添加した。これにより、シラップを得た。得られたシラップの固形分濃度は24%、粘度は7ps、重量平均分子量(Mw)は61,000、酸価は12であった。
【0094】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、注型材料を得た。得られた注型材料は、貯蔵安定性に優れていた。次いで、実施例1と同様の注型を行い、樹脂板を得た。60℃におけるゲルタイムは40分であった。また、得られた樹脂板の耐溶剤性は良好であった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表2に示す。
【0095】
〔比較例2〕
実施例6において、イソブチルビニルエーテルを用いない以外は、実施例6と同様の反応、処理等を行い、シラップを得た。
【0096】
続いて、実施例1と同様の操作を行い、比較用の注型材料を得た。次いで、得られた比較用の注型材料を用いて、実施例1と同様の注型を行い、比較用の樹脂板を得た。60℃におけるゲルタイムは60分であった。得られた比較用注型材料は、貯蔵安定性に劣っていた。また、得られた比較用樹脂板は、THFやアセトンに膨潤した。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表2に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
〔実施例7〕
温度計、冷却器、窒素ガス導入管、および攪拌機を備えた反応器に、分散安定剤としてのポリビニルアルコール(PVA−205、クラレ株式会社製) 0.2部を分散媒(溶媒)である脱イオン水 180部に溶解してなる水溶液を仕込んだ。一方、別の容器中で、メチルメタクリレート8部、ビニル化合物としてのスチレン8部、架橋剤としてのトリメチロールプロパントリメタクリレート4部、n-ドデシルメルカプタン 0.5部、および、 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.2部を混合し、混合物を得た。そして、上記混合物を反応器に添加し、500rpmで攪拌して均一な懸濁液とした。続いて、窒素ガスを吹き込みながら75℃に昇温し、この温度で5時間攪拌を続けて懸濁重合反応を行った。
【0099】
次いで、重合後の懸濁液(樹脂組成物)に、イソブチルビニルエーテルを添加した後、90℃に昇温して1時間攪拌することにより、該懸濁液中に残存するn-ドデシルメルカプタンを処理した。上記のイソブチルビニルエーテルは、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して 3.0倍モルとなるように添加した。
【0100】
続いて、処理後の懸濁液からポリマーを濾別して洗浄した後、乾燥した。これにより、ビーズ状ポリマーを得た。得られたビーズ状ポリマーを、30mm押出機(プラスチック工学研究所製)にて、温度 240℃、圧力20mmHgで、直径5mmのストランドを押し出し、ペレタイザーで切断して、ペレットを作成した。この時、スクリューへの炭化物の付着は見られなかった。また、ペレット作成時にチオール化合物に起因すると思われる臭気はなかった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表3に示す。
【0101】
〔実施例8〕
実施例7において、イソブチルビニルエーテルを用いない以外は、実施例7と同様の反応、処理等を行い、ビーズ状ポリマー(樹脂組成物)を得た。
【0102】
次いで、得られたビーズ状ポリマーを 240℃に昇温してイソブチルビニルエーテルを添加することにより、該ビーズ状ポリマー中に残存するn-ドデシルメルカプタンを処理した。上記のイソブチルビニルエーテルは、重合時に添加したn-ドデシルメルカプタンに対して 3.0倍モルとなるように添加した。
【0103】
続いて、実施例7と同様の操作を行い、比較用のペレットを作成した。この時、スクリューへの炭化物の付着は見られなかった。また、ペレット作成時にチオール化合物に起因すると思われる臭気はなかった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表3に示す。
【0104】
〔比較例3〕
まず、実施例7と同様の反応、処理等を行い、ビーズ状ポリマーを得た。続いて、イソブチルビニルエーテルを添加しない以外は実施例7と同様の操作を行い、比較用のペレットを作成した。この時、スクリューへの炭化物の付着が多く見られた。また、ペレット作成時にチオール化合物に起因すると思われる臭気が発生した。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表3に示す。
【0105】
【表3】
【0106】
〔実施例9〕
まず、実施例1と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、該シラップ 100部に、増粘剤としての酸化マグネシウム1部、コハク酸誘導体としてのペンタドデセニルコハク酸1部、硬化剤としてのt-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート1部、離型剤としてのステアリン酸亜鉛4部、および、充填剤としての水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、ハイジライト HS−320) 150部を混合して、コンパウンドを得た。
【0107】
次いで、該コンパウンドをポリエチレンフィルム表面に一定の厚みとなるように塗布した後、この塗布物の上に、補強材としてのガラス繊維(長さ1インチのチョップトストランド)を均一に撒布した。そして、この上に、コンパウンドをポリエチレンフィルム表面に一定の厚みとなるように塗布してなる塗布物を重ね合わせた。つまり、コンパウンドにてガラス繊維を挟んだ。これにより、樹脂材料としてのSMCを得た。該SMCにおける上記ガラス繊維の割合は、25%となるように調節した。その後、得られたSMCを、セロファンテープで包装し、40℃で1日間熟成させた。
【0108】
次に、上記のSMCを加熱・加圧成形した。即ち、 200mm× 200mmの大きさの金型を用い、上側の金型の温度を 110℃、下側の金型の温度を 100℃に設定した。そして、所定の大きさに切断したSMCを上記の金型に充填して圧力6MPaで型締めし、5分間、加熱・加圧成形することにより、成形品である厚さ3mmの成形板を作成した。
【0109】
110℃におけるゲルタイムは、キュラストメーターV型(株式会社オリエンテック製)を測定装置として用いて測定した。即ち、試料であるSMCを 110℃に加熱し、該温度に到達した時点(加熱開始時点)から、上記測定装置によって計測されるトルクが立ち上がるまでの時間を測定し、この時間をゲルタイムとした。その結果、 110℃におけるゲルタイムは 100秒であった。
【0110】
得られた成形板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていた。また、成形板は、THFおよびアセトンに不溶であり、耐溶剤性は良好であった。さらに、JIS A 1415に基づいて、サンシャインウェザーメーターを用いた1000時間の促進耐候性試験を行った結果、成形板には、実質的な変色やチョーキングが認められなかった。また、煮沸試験を90℃で 100時間行って、耐水性を評価した結果、試験後の成形板は、その表面に光沢を有しており、実質的な変化が認められなかった。さらに、成形板を、 170℃に設定されたオーブン内に1時間放置して、耐熱性を評価した結果、成形板には、黄変等の外観の変化が認められず、また、表面の光沢も失われていなかった。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表4に示す。
【0111】
〔実施例10〕
まず、実施例2と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、このシラップを用いて、実施例9における酸化マグネシウムの使用量を1部から2部に変更すると共に、ペンタドデセニルコハク酸の使用量を1部から3部に変更した以外は、実施例9と同様の操作・成形等を行い、成形板を作成した。 110℃におけるゲルタイムは 100秒であった。
【0112】
得られた成形板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていた。また、成形板は、THFおよびアセトンに不溶であり、耐溶剤性は良好であった。さらに、成形板は、耐熱性、耐候性および耐水性に優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表4に示す。
【0113】
〔比較例4〕
まず、比較例1と同様の反応・処理等を行い、比較用のシラップを調製した。次に、この比較用のシラップを用いて実施例9と同様の操作等を行い、比較用のSMCを作成した。その後、得られた比較用のSMCを40℃で1日間熟成させた。ところが、熟成後、該比較用SMCは硬化していた。上記の主な反応条件をまとめて表4に示す。
【0114】
〔比較例5〕
実施例1において、n-ドデシルメルカプタンに対するイソブチルビニルエーテルの添加量を2.0 倍モルから0.05倍モルに変更した以外は、実施例1と同様の反応・処理等を行った。その結果、エステル化の際に徐々に粘度が上がり、固形分、粘度、および分子量の増大したシラップが得られた。
【0115】
次に、この比較用シラップを用いて、実施例9と同様の操作等を行い、比較用のSMCを得た。その後、得られた比較用SMCを40℃で1日間熟成させた。ところが、該比較用SMCは硬化していた。上記の主な反応条件をまとめて表4に示す。
【0116】
〔比較例6〕
実施例3において、n-ドデシルメルカプタンに対するイソブチルビニルエーテルの添加量を2.0 倍モルから0.05倍モルに変更した以外は、実施例3と同様の反応・処理等を行った。その結果、エステル化の際に徐々に粘度が上がり、固形分、粘度、および分子量の増大したシラップが得られた。
【0117】
次に、この比較用シラップを用いて、実施例9と同様の操作等を行い、比較用のSMCを得た。その後、得られた比較用SMCを40℃で1日間熟成させた。ところが、該比較用SMCは硬化していた。上記の主な反応条件をまとめて表4に示す。
【0118】
〔実施例11〕
まず、実施例3と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、このシラップを用いて、実施例9における酸化マグネシウムの使用量を1部から2部に変更すると共に、ペンタドデセニルコハク酸の使用量を1部から3部に変更し、かつ、水酸化アルミニウム 150部の代わりに、該水酸化アルミニウム 100部と充填剤としての炭酸カルシウム(東洋ファインケミカル株式会社製、ホワイトン P−70)50部とを混合した以外は、実施例9と同様の操作・成形等を行い、成形板を作成した。 110℃におけるゲルタイムは80秒であった。
【0119】
得られた成形板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていた。また、成形板は、耐熱性に優れていた。さらに、耐候性および耐水性を評価した結果、該成形板は、実施例9の成形板と比較して、僅かな変色、および光沢の若干の低下が認められるものの、これら物性は優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表4に示す。
【0120】
〔実施例12〕
まず、実施例4と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、このシラップを用いて、実施例9における酸化マグネシウムの使用量を1部から2部に変更すると共に、ペンタドデセニルコハク酸の使用量を1部から3部に変更し、かつ、水酸化アルミニウム 150部の代わりに、該水酸化アルミニウム 100部と充填剤としてのガラスパウダー(日東紡績株式会社製、FMB 30W−001)50部とを混合した以外は、実施例9と同様の操作・成形等を行い、成形板を作成した。 110℃におけるゲルタイムは 120秒であった。
【0121】
得られた成形板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていた。また、成形板は、耐熱性、耐候性および耐水性に優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表4に示す。
【0122】
〔実施例13〕
まず、実施例5と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、シラップの量を 100部から85部に変更すると共に、架橋性単量体としてのトリメチロールプロパントリメタクリレート15部を添加した以外は、実施例9と同様の操作・成形等を行い、成形板を作成した。 110℃におけるゲルタイムは75秒であった。
【0123】
得られた成形板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていた。また、成形板は、耐熱性、耐候性および耐水性に優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表4に示す。
【0124】
【表4】
【0125】
〔実施例14〕
まず、実施例1と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、該シラップ 100部に、酸化マグネシウム1部、ペンタドデセニルコハク酸2部、t-ブチルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート1部、ステアリン酸亜鉛4部、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、ハイジライト H−320) 350部、および、補強材としてのガラス繊維(長さ 1/4インチのチョップトストランド)を混合した後、この混合物を双腕型ニーダを用いて混練した。これにより、成形材料としてのBMCを得た。該BMCにおける上記ガラス繊維の割合は、5%となるように調節した。その後、得られたBMCを、ビニロンフィルムで包装し、40℃で1日間熟成させた。
【0126】
次に、上記のBMCを所定の方法で加熱・加圧成形することにより、成形板(成形品)を作成した。 110℃におけるゲルタイムは 110秒であった。得られた成形板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていた。また、成形板は、耐熱性、耐候性および耐水性に優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表5に示す。
【0127】
〔比較例7〕
まず、比較例1と同様の反応・処理等を行い、比較用のシラップを調製した。次に、このシラップを用いて、実施例14と同様の操作等を行い、比較用のBMCを得た。得られた比較用BMCを40℃で1日間熟成させた。ところが、熟成後、該比較用BMCは硬化していた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表5に示す。
【0128】
〔実施例15〕
まず、実施例2と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、該シラップ 100部に、硬化剤としてのビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネート1部、および、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、ハイジライト H−320ST) 200部を混合した後、この混合物を混練し、脱泡した。これにより、樹脂材料としての注型材料を得た。
【0129】
次に、得られた注型材料を、ガラス製のセルを用いて注型した。即ち、注型材料を上記のセル内に注入した後、60℃で1時間硬化させた。そして、脱型後、 100℃で2時間、後硬化させることにより、成形品である人工大理石板を得た。
【0130】
得られた人工大理石板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていると共に、いわゆる高級感および質感を備えていた。また、人工大理石板は、耐熱性、耐候性および耐水性に優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表5に示す。
【0131】
〔比較例8〕
まず、比較例1と同様の反応・処理等を行い、比較用のシラップを調製した。次に、この比較用のシラップを用いて、実施例15と同様の操作・成形等を行い、比較用の人工大理石板を作成した。
【0132】
ところが、得られた比較用人工大理石板の耐熱性、耐候性および耐水性を評価した結果、黄変等の外観の変化が認められ、また、表面の光沢も失われており、ムラが生じていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表5に示す。
【0133】
〔実施例16〕
まず、実施例3と同様の反応・処理等を行い、シラップを調製した。次に、該シラップ 100部に、硬化剤としてのビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシカーボネート1部とt-ブチルパーオキシベンゾエート(商品名「パーブチルZ」、日本油脂株式会社製)1部、水酸化アルミニウム(昭和電工株式会社製、ハイジライト H−31) 200部、および、離型剤としてのゼレック−UN(商品名、米国デュポン株式会社製)7部を混合した、樹脂材料としての引抜き材料を得た。
【0134】
次に、得られた引抜き材料を、全長 800mm、穴寸法 113mm×3.1mm の金型を用い、ガラスロービング75本と共に引抜き成形した。金型温度は90℃、引抜き速度は0.8m/分とした。これにより、成形板(成形品)を得た。
【0135】
得られた成形板は、その表面に光沢を有しており、平滑性に優れていた。また、成形板は、耐熱性、耐候性および耐水性に優れていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表5に示す。
【0136】
〔比較例9〕
まず、比較例1と同様の反応・処理等を行い、比較用のシラップを調製した。次に、この比較用のシラップを用いて、実施例16と同様の操作・成形等を行い、比較用の成形板(成形品)を作成した。
【0137】
ところが、得られた比較用成形板の耐熱性、耐候性および耐水性を評価した結果、黄変等の外観の変化が認められ、また、表面の光沢も失われており、ムラが生じていた。上記の主な反応条件、および結果をまとめて表5に示す。
【0138】
【表5】
【0139】
表1〜5から明らかなように、本実施例にかかる処理方法を用いて樹脂組成物を処理してなる樹脂材料が、成形材料として好適に用いることができることがわかる。即ち、表3から明らかなように、実施例7および実施例8にかかる樹脂材料は、成形時にチオール化合物に起因する臭気を発生せず、しかも成形時に成形金型への炭化物の付着がないことがわかる。また、表1、表2、表4、および表5から明らかなように、実施例1〜6および実施例9〜16にかかる樹脂材料は、比較的短時間で硬化させることができることがわかる。さらに、上記の樹脂材料を成形して得られる成形品が、耐熱性、耐溶剤性、耐候性および耐水性等の各種物性に優れていることがわかる。
【0140】
【発明の効果】
本発明の処理方法によれば、樹脂組成物中の遊離のメルカプト基を効率良く失活させることができる。従って、上記方法を用いて樹脂組成物を処理することにより、チオール化合物に起因する臭気の問題が解消された樹脂材料を得ることができるという効果を奏する。また、上記方法を用いて単量体を含む樹脂組成物を処理することにより、貯蔵安定性に優れた樹脂材料を得ることができるという効果を奏する。
【0141】
本発明の樹脂材料によれば、チオール化合物に起因する臭気の問題が解消されるという効果を奏する。また、単量体を含む樹脂組成物の場合においては、貯蔵安定性に優れ、短時間で硬化させることができ、かつ、耐熱性、耐溶剤性、耐候性および耐水性等の各種物性に優れた硬化物、例えば成形品を提供することができるという効果を奏する。
Claims (6)
- 重合体とチオール化合物とを含む樹脂組成物の処理方法であって、
上記樹脂組成物にビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物を添加することを特徴とする樹脂組成物の処理方法。 - 上記樹脂組成物が、さらに単量体を含むことを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物の処理方法。
- 上記樹脂組成物が、(メタ)アクリル酸エステルを含む単量体成分をチオール化合物の存在下で重合してなる(メタ)アクリルシラップであることを特徴とする請求項2記載の樹脂組成物の処理方法。
- 上記(メタ)アクリルシラップが、カルボキシル基を含有することを特徴とする請求項3記載の樹脂組成物の処理方法。
- 上記(メタ)アクリルシラップが、カルボキシル基を(メタ)アクリル酸グリシジルおよび/または(メタ)アクリル酸メチルグリシジルによってエステル化してなるエステル結合を含有することを特徴とする請求項3または4記載の樹脂組成物の処理方法。
- 単量体成分をチオール化合物の存在下で重合して得られる樹脂組成物を、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の処理方法を用いて処理してなる樹脂材料であって、
上記ビニルエーテル化合物および/またはビニルチオエーテル化合物の使用量は、樹脂組成物を調製する際に添加されたチオール化合物の量に対して0.5倍モル〜5倍モルの範囲内であることを特徴とする樹脂材料。
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