JP3685857B2 - 樹脂組成物の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、注型用材料、SMC(シートモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)等の成形材料やコーティング材料等として好適な樹脂組成物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、メタクリル酸メチルを主成分とするメタクリル系樹脂は、耐候性および透明性に優れており、また、機械的性質、熱的性質および成形加工性のバランスが良好であるため、照明用部品、自動車用部品、電気機器部品等に広く使用されている。しかしながら、その耐熱性は充分とは言い難い。このため、近年、メタクリル系樹脂の耐熱性を改善する試みが数多くなされている。例えば、特開昭 43-9753号公報には、メタクリル酸メチルとN-アリールマレイミドとを共重合させる方法が、また、特開昭56-43242号公報には、メタクリル酸メチル、スチレンおよび無水マレイン酸を共重合させる方法が、特開昭 62-109811号公報、特開昭 62-156115号公報、および特開昭 62-177009号公報には、メタクリル酸メチルとN-シクロヘキシルマレイミドとを共重合させる方法が、それぞれ開示されている。しかし、これらの方法によってメタクリル系樹脂に耐熱性を付与する場合、メタクリル酸メチルと共重合させる共重合成分を多量に用いなければならず、メタクリル系樹脂が本来備えている諸性能を充分に発揮させることができないという問題点を有している。
【0003】
また、メタクリル酸メチルと脂溶性のジビニル化合物とを共重合させることにより、メタクリル系樹脂の耐熱性を改良する方法も行われている。しかし、この場合にも、メタクリル酸メチルに対する脂溶性のジビニル化合物の使用量が少量であれば、耐熱性への効果が小さく、多量に使用すると、耐熱性は向上するものの、他の物性、例えば機械的強度等の物性が極端に低下したり、コスト高になるという問題点を有している。
【0004】
また、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛をメタクリル酸メチルに溶解させた後、両者を共重合させると、透明なメタクリル系樹脂が製造できることは既に知られている。しかし、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛はメタクリル酸メチルに対する溶解性が低い。このため、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛の使用量が極端に少なくなってしまい、該ジ(メタ)アクリル酸亜鉛に由来する特性を、メタクリル系樹脂に充分に付与することができないという問題点を有している。尚、ジ(メタ)アクリル酸亜鉛を溶解するアルコール等の溶媒を使用して重合を行うと、透明なメタクリル系樹脂が得られない、或いは、樹脂中にジ(メタ)アクリル酸亜鉛を均一に導入できない、という新たな問題点が生じる。
【0005】
そこで、上記の問題点を解決する方法として、特開昭 62-265317号公報には、(メタ)アクリル酸と、長鎖或いは脂環式の炭化水素を含有するカルボン酸とを可溶化剤として、メタクリル酸メチルとジ(メタ)アクリル酸金属塩とを共重合させる方法が、また、特開平3-197517号公報には、チオール基を含有する化合物を可溶化剤として、(メタ)アクリル酸エステルおよび/またはスチレンと、ジ(メタ)アクリル酸金属塩とを共重合させる方法が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、これら方法を用いる場合、ジ(メタ)アクリル酸金属塩に対して、可溶化剤を等モル以上用いる必要がある。このため、該可溶化剤により、得られるメタクリル系樹脂の性能の低下、特に耐熱性や機械的強度が低下するという問題点を有している。また、メタクリル系樹脂の性能の低下を抑えるために、添加する可溶化剤の使用量を制限すると、透明なメタクリル系樹脂が得られなかったり、或いはジ(メタ)アクリル酸金属塩に由来する特性をメタクリル系樹脂に充分に付与することができない。このため、耐熱性や透明性等の諸性能に優れたメタクリル系樹脂、即ち、諸性能に優れた樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物が求められている。
【0007】
尚、本願発明者等は、以前に、耐熱性および透明性を改良するために、特開平6-145255号公報および特開平6-145256号公報で、メタクリル酸メチルを主成分とするビニル化合物とジ(メタ)アクリル酸亜鉛とからなる重合性混合物を、含窒素有機化合物および水を重合系に共存させて共重合させることによって、耐熱性や機械的強度、透明性に優れたメタクリル系樹脂を製造する方法を提案した。
【0008】
しかし、上記方法では、例えば、(メタ)アクリル酸亜鉛の使用量を増やすと、重合性混合物を透明に保つために、含窒素有機化合物および水を多量に使用する必要があり、メタクリル系樹脂の用途によっては、充分な物性が得られない場合がある。また、上記方法では、重合性混合物の粘度が低いために、注型や塗工等の作業での取り扱いが困難となる場合がある。
【0009】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、(メタ)アクリル酸金属塩等の単量体金属塩の溶解性に優れると共に、安定性に優れ、注型や塗工等の作業での取り扱いが容易な粘度を有し、かつ、耐熱性や透明性、機械的強度等の諸性能に優れた樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物の製造方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本願発明者らは、上記の目的を達成すべく、樹脂組成物の製造方法について鋭意検討した結果、ビニル基を含有する単量体、および重合体を含む溶液中で、金属酸化物および/または金属水酸化物と、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体とを反応させることにより、該反応によって生成する単量体金属塩の溶液への溶解性が向上されることを見い出すと共に、これにより、安定性に優れ、注型や塗工等の作業での取り扱いが容易な粘度を有し、かつ、耐熱性や透明性、機械的強度等の諸性能に優れた樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物が得られることを見い出して、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、ビニル基を含有する単量体、および重合体を含む溶液中で、金属酸化物および/または金属水酸化物と、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体とを、ビニル基およびカルボキシル基 を含有する単量体と、金属酸化物および/または金属水酸化物との当量比が1.0〜1.20の範囲内で反応させることを特徴としている。
【0012】
また、前記した本発明の樹脂組成物の製造方法では、前記金属酸化物および/または金属水酸化物が亜鉛酸化物および/または亜鉛水酸化物であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、前記した特徴を有する本発明の樹脂組成物の製造方法において、水の存在下で反応させることを特徴としている。
【0014】
また、本発明の樹脂組成物の製造方法は、上記の課題を解決するために、前記した特徴を有する本発明の樹脂組成物の製造方法において、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体として、アクリル酸およびメタクリル酸を併用することを特徴としている。
【0015】
上記の方法によれば、反応によって生成する単量体金属塩の溶液への溶解性が向上されるので、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物の樹脂骨格に、金属塩を従来よりも多量に導入することができる。上記の製造方法によって得られる樹脂組成物は、安定性に優れ、注型用材料、SMC(シートモールディングコンパウンド)、BMC(バルクモールディングコンパウンド)等の成形材料やコーティング材料等として好適である。また、上記の樹脂組成物を重合させて得られる樹脂硬化物は、耐熱性、透明性、機械的強度、放射線遮蔽効果、防汚性等の諸性能に優れている。
【0016】
以下に本発明を詳しく説明する。
【0017】
本発明にかかる製造方法によって得られる樹脂組成物の原料として用いられる溶液(以下、説明の便宜上、樹脂溶液と称する)は、ビニル基を含有する単量体(以下、説明の便宜上、単量体Aと称する)、および重合体を含んでなっている。該樹脂溶液は、例えば、単量体Aに重合体を溶解させることにより得ることができる。
【0018】
上記の重合体は、単量体Aに溶解可能な化合物であればよく、特に限定されるものではないが、不飽和ポリエステル、ポリビニルエステル、および(メタ)アクリル系重合体が、より好ましい。
【0019】
上記の不飽和ポリエステルは、特に限定されるものではなく、酸成分とアルコール成分とを縮合させて得られる従来公知の重合体が使用できる。また、その反応条件も特に限定されるものではない。不飽和ポリエステルを構成する酸成分としては、具体的には、例えば、フタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、アジピン酸等の飽和多塩基酸またはその無水物;マレイン酸、フマル酸等の不飽和多塩基酸またはその無水物等が挙げられる。また、不飽和ポリエステルを構成するアルコール成分としては、具体的には、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール等の二官能性のアルコール類;トリメチロールプロパン等の三官能性のアルコール類;エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のモノエポキシド等が挙げられる。また、ジシクロペンタジエン等のジエン化合物や、末端官能性ブタジエン・アクリロニトリル共重合体等のゴム成分等の種々の成分により変性された不飽和ポリエステルも使用することができる。
【0020】
また、上記のポリビニルエステルとしては、特に限定されるものではなく、従来公知のエポキシ系ビニルエステル、ウレタン系ビニルエステル、ポリエステル系ビニルエステル等が使用できる。エポキシ系ビニルエステルは、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応させた化合物であり、該エポキシ樹脂としては、具体的には、例えば、ビスフェノール類やノボラックフェノール類のグリシジルエーテル等が挙げられる。また、ウレタン系ビニルエステルは、ポリイソシアネート化合物に(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル類を反応させた化合物であり、該ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。また、ポリエステル系ビニルエステルとしては、両末端基がカルボキシル基であるオリゴエステルに(メタ)アクリル酸グリシジルエステル類を反応させた化合物や、両末端基がヒドロキシル基であるオリゴエステルに(メタ)アクリル酸を反応させた化合物等が挙げられる。
【0021】
上記の(メタ)アクリル系重合体としては、特に限定されるものではなく、(メタ)アクリル酸エステル類を主成分とするビニル化合物の混合物を従来公知の溶液重合、塊状重合、乳化重合、懸濁重合等の方法でビニル重合して得られる重合体が使用できる。(メタ)アクリル酸エステル類としては、具体的には、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等が挙げられる。(メタ)アクリル酸エステル類以外のビニル化合物としては、具体的には、例えば、スチレン、アクリロニトリル、マレイミド類、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。さらに、例えば、カルボキシル基を含有する(メタ)アクリル系重合体に(メタ)アクリル酸グリシジルエステル類を反応させて得られるような、側鎖に不飽和基を有する(メタ)アクリル系重合体等も使用できる。
【0022】
尚、上記不飽和ポリエステル、ポリビニルエステル、および(メタ)アクリル系重合体は、一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。また、重合体が(メタ)アクリル系重合体等のビニル系重合体の場合には、単量体Aを塊状重合し、該重合を途中で中断して得られるポリマーシラップ、つまり、いわゆる(メタ)アクリルシラップを用いることもできる。
【0023】
また、上記重合体を合成する際の反応圧力、反応時間並びに反応温度等の反応条件は、特に限定されるものではなく、得られる重合体の重合度も特に限定されるものでない。但し、上記重合体を単量体Aに溶解させて樹脂溶液を調製するので、該重合体は、単量体Aに溶解する性質を備えていなければならない。
【0024】
上記の単量体Aは、ビニル基を含有する化合物であればよく、特に限定されるものではない。該単量体Aとしては、具体的には、例えば、スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル等のメタクリル酸エステル類;ジビニルベンゼン、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等の多官能ビニル化合物;アクリロニトリル、酢酸ビニル、フェニルマレイミド等が挙げられる。これら化合物は一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0025】
本発明において用いられる樹脂溶液は、例えば、前記の単量体A5重量%〜95重量%、および、該単量体Aに溶解する重合体95重量%〜5重量%から構成されている。樹脂溶液(つまり、樹脂組成物)は、重合体を含んでいるので、安定性に優れると共に適度な粘度を備えることができ、注型用材料、SMC、BMC等の成形材料やコーティング材料等として好適である。
【0026】
該樹脂溶液における単量体Aの割合が5重量%未満であると、後に詳述する金属酸化物および/または金属水酸化物を樹脂溶液に添加すると、粘度が極端に高くなったり、或いは、金属酸化物および/または金属水酸化物と、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体との反応が進行しなくなるおそれがある。また、最終的に得られる樹脂組成物の粘度が高くなり、注型や塗工等の作業での取り扱い性が低下するおそれがある。
【0027】
一方、該樹脂溶液における単量体Aの割合が95重量%を越えると、上記の反応によって生成するカルボン酸単量体金属塩(後述する)の樹脂溶液中での溶解安定性が低下し、凝集や沈降が起こり易くなるおそれがある。また、最終的に得られる樹脂組成物の粘度が低くなり、注型や塗工等の作業での取り扱い性が低下するおそれがあると共に、該樹脂組成物の成形時における重合収縮が大きくなるおそれがある。そして、その結果、樹脂組成物を硬化させて得られる樹脂硬化物の外観や物性が低下するおそれがある。
【0028】
樹脂組成物は、上記の樹脂溶液中で、金属酸化物および/または金属水酸化物(以下、説明の便宜上、金属(水)酸化物と称する)と、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体(以下、説明の便宜上、カルボン酸単量体と称する)とを反応させることにより得られる。そして、上記の反応によって、カルボン酸単量体金属塩が生成すると共に水が副生する。
【0029】
金属(水)酸化物は、特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、酸化銀等の1価金属の酸化物;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の1価金属の水酸化物;酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉛等の多価金属の酸化物;水酸化亜鉛、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化鉛等の多価金属の水酸化物等が挙げられる。これら化合物は一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0030】
カルボン酸単量体は、特に限定されるものではなく、具体的には、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等のα,β−エチレン性不飽和カルボン酸;マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸;マレイン酸モノメチルエステル、マレイン酸モノアリルエステル等の、不飽和ジカルボン酸と一価アルコールとのモノエステル;2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシプロピルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイルオキシプロピルフタル酸等の、エステル基を含有するカルボン酸等が挙げられる。これら化合物は一種類のみを用いてもよく、また、二種類以上を適宜混合して用いてもよい。
【0031】
上記金属(水)酸化物とカルボン酸単量体との組み合わせは、所望する樹脂組成物、つまり、樹脂組成物の用途や、所望する物性等に応じて選択すればよく、特に限定されるものではないが、金属(水)酸化物として多価金属の(水)酸化物を用いる場合には、カルボン酸単量体は、二種類以上を併用することがより好ましく、アクリル酸およびメタクリル酸を併用することが特に好ましい。そして、例えば、二種類のカルボン酸単量体を併用する場合において、両者のモル比は、 0.2/0.8 〜 0.8/0.2 の範囲内がより好ましく、凡そ1/1が特に好ましい。二種類以上のカルボン酸単量体を併用することにより、一種類のカルボン酸単量体を用いる場合と比較して、反応によって生成するカルボン酸単量体金属塩の樹脂溶液への溶解性がより一層向上されると共に、安定性がより一層優れた樹脂組成物を得ることができる。つまり、樹脂溶液中にカルボン酸単量体金属塩をより一層多量に溶解させることができる。
【0032】
二種類以上のカルボン酸単量体を併用することによってカルボン酸単量体金属塩の樹脂溶液への溶解性がより一層向上される詳細な理由は明らかではないが、多価金属の(水)酸化物と、二種類以上のカルボン酸単量体とが反応することにより、一つの多価金属に互いに異なるカルボン酸単量体が結合した複塩が形成され、該カルボン酸単量体金属塩の結晶性が低下するためではないかと推察される。即ち、一つの多価金属に一種類のカルボン酸単量体が結合した場合と比較して、カルボン酸単量体金属塩の結晶性が低下するので、樹脂溶液への溶解性がより一層向上するためではないかと推察される。
【0033】
上記金属(水)酸化物の使用量は、組み合わせるカルボン酸単量体の種類、樹脂組成物の用途や、所望する物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、樹脂溶液 100重量部に対して、1重量部〜 100重量部の範囲内がより好ましい。金属(水)酸化物の使用量が1重量部未満の場合には、金属(水)酸化物を用いる効果が表れ難くなり、所望する物性等を備えた樹脂組成物を得ることができないおそれがある。一方、金属(水)酸化物の使用量が 100重量部を越える場合には、金属(水)酸化物とカルボン酸単量体との反応が完結し難くなるので、未反応の金属(水)酸化物や、反応によって生成するカルボン酸単量体金属塩の沈殿や白濁が生じ易くなり、均一かつ透明な樹脂組成物を得ることができないおそれがある。
【0034】
上記カルボン酸単量体の使用量は、組み合わせる金属(水)酸化物の種類や量、樹脂組成物の用途や、所望する物性等に応じて設定すればよく、特に限定されるものではないが、カルボン酸単量体と金属(水)酸化物との当量比(カルボン酸単量体/金属(水)酸化物)が、 1.0〜1.20の範囲内であることがより好ましい。上記の当量比とは、カルボン酸単量体の化学当量と、金属(水)酸化物の化学当量との比を示す。上記の当量比が 1.0未満の場合、即ち、カルボン酸単量体の化学当量の方が少ない場合には、未反応の金属(水)酸化物の沈殿や白濁が生じ易くなり、均一かつ透明な樹脂組成物を得ることができないおそれがある。一方、上記の当量比が1.20を越える場合、即ち、カルボン酸単量体の化学当量の方が多すぎる場合には、金属(水)酸化物とカルボン酸単量体との反応が進行し難くなったり、カルボン酸単量体金属塩の樹脂溶液への溶解性や安定性が低下し、沈殿や増粘、ゲル化等を生じるおそれがある。
【0035】
上記の金属(水)酸化物とカルボン酸単量体とを樹脂溶液中で反応させる際の反応方法、つまり、両者の添加方法は、特に限定されるものではない。例えば、樹脂溶液に金属(水)酸化物を添加して分散させた後、カルボン酸単量体を添加して両者を反応させてもよく、また、樹脂溶液にカルボン酸単量体を添加・混合した後、金属(水)酸化物を添加して両者を反応させてもよく、或いは、金属(水)酸化物とカルボン酸単量体とをほぼ同時に樹脂溶液に添加して両者を反応させてもよい。つまり、金属(水)酸化物およびカルボン酸単量体を樹脂溶液に添加する際の添加順序や添加のタイミングは、特に限定されるものではなく、あらゆる順序やタイミングを採用することができる。尚、樹脂溶液に金属(水)酸化物を添加すると金属架橋等が生じて該樹脂溶液が著しく増粘される場合には、取り扱い性を考慮して、樹脂溶液にカルボン酸単量体を添加・混合した後、金属(水)酸化物を添加する方法が好ましい。
【0036】
また、二種類以上のカルボン酸単量体を併用する場合には、予め、これらカルボン酸単量体の混合物を調製して樹脂溶液に添加してもよく、また、各カルボン酸単量体を別々に樹脂溶液に添加してもよい。さらに、或るカルボン酸単量体を樹脂溶液に添加・混合した後、金属(水)酸化物を添加し、次いで、別の(残りの)カルボン酸単量体を添加・混合してもよい。これら添加方法のうち、二種類以上のカルボン酸単量体を併用する場合には、カルボン酸単量体の混合物を調製して樹脂溶液に添加する方法がより好ましい。また、樹脂溶液に金属(水)酸化物を添加して分散させた後、カルボン酸単量体の混合物を該樹脂溶液に添加する方法、および、樹脂溶液に金属(水)酸化物を添加して分散させた後、各カルボン酸単量体を逐次的に該樹脂溶液に添加する方法がより好ましい。即ち、カルボン酸単量体金属塩が複塩になり易いように、カルボン酸単量体を添加・混合する方法がより好ましい。
【0037】
金属(水)酸化物とカルボン酸単量体とを樹脂溶液中で反応させる際には、該反応をより一層円滑に(速く)進行させると共に、カルボン酸単量体金属塩の溶解性等をより一層向上させるために、必要に応じて、該樹脂溶液に水を添加してもよい。水を添加することによって上記の効果が得られる詳細な理由は明らかではないが、反応によって生成するカルボン酸単量体金属塩に水が配位し、該カルボン酸単量体金属塩が可溶化されるためではないかと推察される。
【0038】
樹脂溶液に水を添加する場合において、その添加方法や添加のタイミングは、特に限定されるものではない。例えば、金属(水)酸化物およびカルボン酸単量体を添加する前に、樹脂溶液に水を添加してもよく、また、金属(水)酸化物および/またはカルボン酸単量体を添加した後、樹脂溶液に水を添加してもよく、或いは、予め、カルボン酸単量体と水とを混合した混合物を調製しておいてもよい。
【0039】
また、樹脂溶液に水を添加する場合において、該水の添加量は、特に限定されるものではないが、金属(水)酸化物1モルに対する割合が、 4.0モル以下となるように設定することがより好ましい。
【0040】
さらに、金属(水)酸化物とカルボン酸単量体とを樹脂溶液中で反応させる際には、必要に応じて、該樹脂溶液に可溶化剤を添加してもよい。上記の可溶化剤としては、金属塩モノマーの可溶化剤として知られている従来公知の物質を採用することができる。該物質としては、具体的には、例えば、長鎖或いは脂環式の炭化水素を含有するカルボン酸類;チオール基を含有する含イオウ有機化合物類;アミン化合物やイミン化合物、アミド化合物、アンモニウム化合物、含窒素複素環化合物等の含窒素有機化合物類;等が挙げられる。樹脂溶液に可溶化剤を添加することにより、カルボン酸単量体金属塩の溶解性等をさらに一層向上させることができる。樹脂溶液に可溶化剤を添加する場合において、該可溶化剤の添加量は、特に限定されるものではない。
【0041】
金属(水)酸化物とカルボン酸単量体とを樹脂溶液中で反応させる際には、該樹脂溶液を、常温若しくは加熱下で、攪拌すればよい。これにより、カルボン酸単量体金属塩が容易に生成する。樹脂溶液を加熱下で攪拌する場合には、単量体Aやカルボン酸単量体金属塩の重合を防止するために、従来公知の重合防止剤(或いは重合禁止剤)を添加することができる。該重合防止剤としては、具体的には、例えば、ベンゾキノン、パラメトキシフェノール、ハイドロキノン等が挙げられる。重合防止剤を添加する場合において、該重合防止剤の添加量は、特に限定されるものではない。
【0042】
また、金属(水)酸化物とカルボン酸単量体との反応が発熱を伴う場合、つまり、発熱反応の場合には、反応温度を制御し、両者の反応を温和に進行させるために、金属(水)酸化物およびカルボン酸単量体のうち、少なくとも何れか一方を複数回に分割して樹脂溶液に添加することがより好ましい。
【0043】
さらに、反応を完結させるのに長時間を有する場合、或いは、反応が進行し難い場合には、樹脂溶液中における金属(水)酸化物およびカルボン酸単量体の濃度を高めることにより、反応を促進することもできる。具体的には、例えば、樹脂溶液を二分割し、一方の樹脂溶液に金属(水)酸化物およびカルボン酸単量体を添加して反応させた後、残りの樹脂溶液を反応液に混合して、該反応液を希釈すればよい。これにより、所望の濃度でカルボン酸単量体金属塩が溶解された樹脂組成物を得ることができる。
【0044】
金属(水)酸化物とカルボン酸単量体との反応の終点は、樹脂溶液が常温で均一かつ透明になったか否か、即ち、常温で均一かつ透明な樹脂組成物が得られたか否かを確認すればよい。従って、常温で均一かつ透明な樹脂組成物が得られた時点で、攪拌等を終了すればよい。これにより、本発明にかかる樹脂組成物が得られる。樹脂組成物は、長時間放置しても安定であり、カルボン酸単量体金属塩の沈殿や、或いは増粘、ゲル化等を生じることはない。
【0045】
上記構成の樹脂組成物を共重合させることにより、樹脂硬化物を容易に製造することができる。つまり、単量体Aとカルボン酸単量体金属塩とを共重合させることにより、樹脂硬化物の樹脂骨格に、金属塩を従来よりも多量にかつ簡単に導入することができる。単量体Aとカルボン酸単量体金属塩とを共重合させる反応方法は、特に限定されるものではない。例えば、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、或いは(メタ)アクリル系シラップ等のビニル重合性樹脂の重合方法と同様の重合方法を用いて単量体Aとカルボン酸単量体金属塩とを反応させることができる。即ち、加熱による重合方法;紫外線や電子線等の放射線を照射する重合方法;ラジカル重合開始剤等の重合開始剤を用いる重合方法等、従来公知の種々の方法を採用することができる。
【0046】
また、重合の形態としては、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合等、従来公知の種々の形態を採用することができる。従って、樹脂硬化物は、重合の形態等に応じて、粒状(ビーズ)、粉体状、微粒子状等の種々の形状、或いは溶液状態で得られる。尚、樹脂硬化物を得る際の反応圧力、反応時間並びに反応温度等の反応条件は、樹脂溶液およびカルボン酸単量体金属塩の組み合わせ、使用量等に応じて上記反応が完結するように適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。また、得られる樹脂硬化物の重合度も、特に限定されるものではない。
【0047】
上記のラジカル重合開始剤としては、具体的には、例えば、ベンゾイルパーオキシド、メチルエチルケトンパーオキシド、t-アミルパーオキシ -2-エチルヘキサノエート等の有機過酸化物; 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル等の有機アゾ化合物;ベンゾフェノン、アセトフェノン類、アシルホスフィンオキシド等が挙げられる。
【0048】
また、オクテン酸コバルト、ステアリン酸亜鉛等の有機金属塩;ジメチルアニリン等の芳香族三級アミン類;トリフェニルホスフィン等の重合促進剤を、上記ラジカル重合開始剤と併用してもよい。さらに、その他の添加剤として、前述の重合防止剤(いわゆる重合調節剤)や、光増感剤等を用いることもできる。尚、重合方法は、例えば樹脂硬化物の用途等に応じて適宜選択すればよい。
【0049】
さらに、本発明にかかる樹脂組成物は、例えば、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の充填剤や、ガラスファイバー等の強化繊維等の補強材を配合した組成物として用いることができる。また、酸化マグネシウム等の金属酸化物や金属水酸化物、イソホロンジイソシアネート等のポリイソシアネート化合物等の増粘剤、熱可塑性樹脂等の低収縮化剤や顔料、ワックス、シリコン、界面活性剤、紫外線吸収剤等の各種添加剤を配合して用いることもできる。尚、上記各添加剤の添加量は特に限定されるものではない。
【0050】
以上のように、本発明にかかる樹脂組成物の製造方法は、樹脂溶液中で、金属(水)酸化物と、カルボン酸単量体とを反応させる方法である。また、本発明にかかる樹脂組成物の製造方法は、水の存在下で反応させる方法である。さらに、本発明にかかる樹脂組成物の製造方法は、カルボン酸単量体として、アクリル酸およびメタクリル酸を併用する方法である。
【0051】
上記の方法によれば、反応によって生成するカルボン酸単量体金属塩の樹脂溶液への溶解性が向上されるので、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物の樹脂骨格に、金属塩を従来よりも多量に導入することができる。上記の製造方法によって得られる樹脂組成物は、安定性に優れ、その粘度を適正に調節することにより、注型や塗工等の作業での取り扱い性を高めることができる。該樹脂組成物は、注型用材料、SMC、BMC等の成形材料やコーティング材料等として好適である。つまり、従来公知の各種の成形方法や塗工方法、例えば、注型、RTM(レジントランスファーモールディング)、RIM(反応射出成形)、プレス成形、射出成形、積層、スプレー塗工等の方法により成形、塗工、重合することにより、注型物、ゲルコート、ガラス繊維強化成形品、塗料、化粧板、ホットメルト粘着剤、熱可塑性エラストマー等の広範囲の用途に用いることができる。
【0052】
また、上記の樹脂組成物を重合させて得られる樹脂硬化物は、透明性等の諸性能に優れると共に、樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、該金属塩に由来する特性である例えば、耐熱性、曲げ強さ等の機械的強度、硬度(表面硬さ)、放射線遮蔽効果、防汚性、耐有機溶剤性等の諸性能に優れている。このため、上記広範囲の用途において、優れた性能を発揮することができる。
【0053】
【実施例】
以下、実施例および比較例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらにより何ら限定されるものではない。尚、実施例および比較例に記載の「部」は、「重量部」を示している。また、樹脂硬化物の諸物性、つまり、バーコル硬さ、鉛筆硬さ、熱変形温度、アイゾット衝撃強さ、曲げ強さ、曲げ弾性率、光沢度、引張強さ、引張弾性率、および、引張破壊伸び率は、JIS K 6911等の試験方法に準じて測定した。
【0054】
上記バーコル硬さの測定は、バーコル硬さ計 934-1形を用いて行った。鉛筆硬さは荷重1kgとした。アイゾット衝撃強さの測定は、アイゾット40kgとし、いわゆるフラットワイズ衝撃で行った。
〔実施例1〕
攪拌機、精留管、温度計、およびガス導入管を備えた容量 3,000mlの反応容器に、エチレングリコール 155部、プロピレングリコール 304部、ジエチレングリコール 424部、無水フタル酸 963部、および、無水マレイン酸 343部を仕込んだ。次に、この反応溶液を攪拌しながら、内温を180℃〜210 ℃に保ち、窒素雰囲気下で8時間エステル化させることにより、重合体としての不飽和ポリエステルを得た。所定の方法により測定した上記不飽和ポリエステルの酸価は、30.0 mgKOH/gであった。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した上記不飽和ポリエステルの平均分子量は、数平均分子量(Mn)が 2,700、重量平均分子量(Mw)が 4,400であった。
【0055】
次に、得られた不飽和ポリエステル 100部に、単量体Aとしてのスチレン54部と、重合防止剤としてのハイドロキノン 0.015部とを加えて攪拌することにより、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は透明であり、酸価は18.6 mgKOH/gであった。また、所定の方法により測定した25℃における樹脂溶液の粘度は、 4.8ポイズであった。
【0056】
続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記の樹脂溶液 100gと、金属(水)酸化物としての酸化亜鉛 5.5gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。一方、カルボン酸単量体としてのアクリル酸 5.2gおよびメタクリル酸 6.2gと、水 1.7gとを混合することにより混合溶液を調製した。酸化亜鉛と、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)と、水とのモル比は、 1.0: 2.1:1.4 であった。
【0057】
そして、反応容器内の混合物に、上記の混合溶液を攪拌しながら添加し、70℃で1時間反応させた。これにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、室温に冷却した後においても、均一かつ透明であった。さらに、該樹脂組成物は、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、10.0ポイズであった。
【0058】
次に、上記の樹脂組成物を、以下に示す方法を用いて重合させることによって樹脂硬化物とした。即ち、樹脂組成物 100部に対し、ラジカル重合開始剤としてのメチルエチルケトンパーオキシド溶液 1.0部、および、重合促進剤としてのオクテン酸コバルト 0.5部を添加・混合することにより、コンパウンドを得た。上記のメチルエチルケトンパーオキシド溶液は、濃度が55重量%となるようにメチルエチルケトンパーオキシドをジメチルフタレートに溶解させることにより調製した。また、オクテン酸コバルト中のコバルト量は、 8.0重量%であった。得られたコンパウンドを、2枚のガラス板とフッ素樹脂製ガスケットとを用いて組み立てたセル中に注入し、室温で24時間放置して重合した後、 110℃で2時間さらに重合させた。これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。
【0059】
得られた樹脂硬化物の諸物性を、上記の方法により測定した。その結果、該樹脂硬化物のバーコル硬さは48、鉛筆硬さは4H、熱変形温度は63℃、アイゾット衝撃強さは10.6kgf・cm/cm2、曲げ強さは10.3 kgf/mm2、曲げ弾性率は 422 kgf/mm2であった。
【0060】
また、樹脂組成物の代わりに上記樹脂溶液を用い、上記の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物(以下、説明の便宜上、単に硬化物と称する)を得た。つまり、カルボン酸単量体金属塩を生成させないで硬化物を得た。得られた硬化物のバーコル硬さは37、鉛筆硬さは3H、熱変形温度は49℃、アイゾット衝撃強さは11.2kgf・cm/cm2、曲げ強さは12.8 kgf/mm2、曲げ弾性率は 319 kgf/mm2であった。上記の結果を表1にも示した。
【0061】
上記の結果から明らかなように、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、樹脂溶液を重合させてなる硬化物と比較して、バーコル硬さ、鉛筆硬さ、熱変形温度、および、曲げ弾性率に優れていることが判る。つまり、樹脂溶液中で酸化亜鉛と、アクリル酸およびメタクリル酸とを反応させることにより、上記の諸性能が向上された樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物を製造することができることが判る。
〔実施例2〕
実施例1と同様の反応および操作を行うことにより、樹脂溶液を得た。続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記の樹脂溶液 100gと、金属(水)酸化物としての水酸化亜鉛 2.2gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。一方、アクリル酸 1.8gおよびメタクリル酸 2.1gを混合することにより混合溶液を調製した。水酸化亜鉛と、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)とのモル比は、 1.0:2.2であった。
【0062】
そして、反応容器内の混合物に、上記の混合溶液を攪拌しながら添加し、70℃で2時間反応させた。これにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、室温に冷却した後、並びに、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、11.0ポイズであった。
【0063】
次に、上記の樹脂組成物を、実施例1の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物のバーコル硬さは47、鉛筆硬さは4H、熱変形温度は63℃、アイゾット衝撃強さは11.0kgf・cm/cm2、曲げ強さは11.0 kgf/mm2、曲げ弾性率は 415 kgf/mm2であった。結果を表1にも示した。
〔実施例3〕
実施例1と同様の反応および操作を行うことにより、樹脂溶液を得た。続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記の樹脂溶液 100gと、金属(水)酸化物としての酸化マグネシウム 1.1gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。一方、アクリル酸 2.1gおよびメタクリル酸 2.5gを混合することにより混合溶液を調製した。酸化マグネシウムと、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)とのモル比は、 1.0:2.1であった。
【0064】
そして、反応容器内の混合物に、上記の混合溶液を攪拌しながら添加し、70℃で2時間反応させた。これにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、室温に冷却した後、並びに、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、46.0ポイズであった。
【0065】
次に、上記の樹脂組成物を、実施例1の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物のバーコル硬さは46、鉛筆硬さは4H、熱変形温度は60℃、アイゾット衝撃強さは11.7kgf・cm/cm2、曲げ強さは10.5 kgf/mm2、曲げ弾性率は 419 kgf/mm2であった。結果を表1にも示した。
〔実施例4〕
実施例1と同様の反応および操作を行うことにより、樹脂溶液を得た。続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記の樹脂溶液 100gと、酸化亜鉛 1.8gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。さらに、反応容器内の混合物に、アクリル酸 3.6gを攪拌しながら添加し、70℃で1時間反応させた。上記酸化亜鉛とアクリル酸とのモル比は、 1.0:2.2であった。これにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、室温に冷却した後、並びに、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、11.0ポイズであった。
【0066】
次に、上記の樹脂組成物を、実施例1の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物のバーコル硬さは45、鉛筆硬さは4H、熱変形温度は60℃、アイゾット衝撃強さは14.0kgf・cm/cm2、曲げ強さは15.2 kgf/mm2、曲げ弾性率は 385 kgf/mm2であった。結果を表1にも示した。
〔実施例5〕
攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 5,000mlの反応容器に、ノボラック型のエポキシ樹脂であるエピコート154(商品名;シェル社製、エポキシ当量 178) 2,492部、メタクリル酸 603部、および、ハイドロキノン 0.4部を仕込んだ。次に、この反応溶液を攪拌しながら、内温を105℃に昇温させ、該温度で1時間重合させた。その後、上記の反応溶液に、メタクリル酸 603部を混合し、さらに 105℃で8時間重合させることにより、重合体としてのエポキシ系ビニルエステルを得た。所定の方法により測定した上記エポキシ系ビニルエステルの酸価は、 2.1 mgKOH/gであった。また、GPCにより測定した上記エポキシ系ビニルエステルの平均分子量は、数平均分子量(Mn)が 830、重量平均分子量(Mw)が 913であった。
【0067】
次に、得られたエポキシ系ビニルエステル 100部に、スチレン54部を加えて攪拌することにより、樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液は透明であり、酸価は 1.4 mgKOH/gであった。また、所定の方法により測定した25℃における樹脂溶液の粘度は、 3.2ポイズであった。
【0068】
続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記の樹脂溶液 100gと、酸化亜鉛 1.8gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。一方、アクリル酸 1.7gと、メタクリル酸 2.1gと、水 0.4gとを混合することにより混合溶液を調製した。酸化亜鉛と、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)と、水とのモル比は、 1.0: 2.1:1.0 であった。
【0069】
そして、反応容器内の混合物に、上記の混合溶液を攪拌しながら添加し、70℃で1時間反応させた。これにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、室温に冷却した後、並びに、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、 7.5ポイズであった。
【0070】
次に、上記の樹脂組成物を、実施例1の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物のバーコル硬さは55、鉛筆硬さは5H、熱変形温度は 138℃、アイゾット衝撃強さは 9.0
kgf・cm/cm2、曲げ強さは15.0 kgf/mm2、曲げ弾性率は 420 kgf/mm2であった。
【0071】
また、樹脂組成物の代わりに上記樹脂溶液を用い、上記の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である硬化物を得た。つまり、カルボン酸単量体金属塩を生成させないで硬化物を得た。得られた硬化物のバーコル硬さは52、鉛筆硬さは4H、熱変形温度は 120℃、アイゾット衝撃強さは 9.8 kgf・cm/cm2、曲げ強さは14.1 kgf/mm2、曲げ弾性率は 410 kgf/mm2であった。上記の結果を表1にも示した。
【0072】
上記の結果から明らかなように、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、樹脂溶液を重合させてなる硬化物と比較して、バーコル硬さ、鉛筆硬さ、熱変形温度、曲げ強さ、および、曲げ弾性率に優れていることが判る。つまり、樹脂溶液中で酸化亜鉛と、アクリル酸およびメタクリル酸とを反応させることにより、上記の諸性能が向上された
樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物を製造することができることが判る。
〔実施例6〕
攪拌機、冷却管、温度計、およびガス導入管を備えた容量 500mlの反応容器に、メタクリル酸メチル 177部と、メタクリル酸22.8部とを仕込み、窒素置換した。次に、この反応溶液を攪拌しながら、重合防止剤としてのn-ドデシルメルカプタン0.28部と、ラジカル重合開始剤としての 2,2'-アゾビスイソブチロニトリル 0.1部とを添加した後、内温を80℃に昇温させ、該温度で重合させた。そして、重合率、つまり、不揮発分の量が、15重量%に達した時点で、上記の反応溶液に、メタクリル酸グリシジル37.6部、触媒としてのベンジルトリフェニルホスホニウムクロライド0.15部、および、ハイドロキノン0.02部を混合し、急冷した。
【0073】
急冷後、再び内温を100℃に昇温させ、空気雰囲気下、該温度で23時間、攪拌することにより、メタクリル酸グリシジルを重合体に反応させた。これにより、側鎖にビニル基が導入された重合体を含む樹脂溶液としてのアクリルシラップを得た。つまり、メタクリル酸メチルを主成分とする単量体A、および上記重合体からなるアクリルシラップを得た。
【0074】
得られたアクリルシラップは透明であり、不揮発分の量は20.4重量%であり、酸価は 2.9 mgKOH/gであった。また、所定の方法により測定した25℃におけるアクリルシラップの粘度は、50.1ポイズであった。さらに、GPCにより測定した上記アクリルシラップ中の重合体の酸価は、21.0 mgKOH/gであり、平均分子量は、数平均分子量(Mn)が70,300、重量平均分子量(Mw)が 151,000であった。そして、メタクリル酸グリシジルを反応させる前後における重合体の酸価の差が41.7 mgKOH/gであったことから、該重合体が含有するカルボキシル基がビニル基に変換された変換率は、66.5%であることが判った。
【0075】
続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記のアクリルシラップ 100gと、酸化亜鉛 1.8gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。一方、アクリル酸 1.7gと、メタクリル酸 0.6gと、水 0.4gとを混合することにより混合溶液を調製した。酸化亜鉛と、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)と、水とのモル比は、 1.0: 2.1:1.0 であった。但し、上記のカルボン酸単量体、即ち、アクリル酸およびメタクリル酸の合計量には、アクリルシラップ中に存在するメタクリル酸(単量体A)の量も含まれている。
【0076】
そして、反応容器内の混合物に、上記の混合溶液を攪拌しながら添加し、70℃で1時間反応させた。これにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、室温に冷却した後、並びに、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、74ポイズであった。
【0077】
次に、上記の樹脂組成物を、実施例1の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物のバーコル硬さは52、鉛筆硬さは5H、熱変形温度は 115℃、アイゾット衝撃強さは10.2 kgf・cm/cm2、曲げ強さは 7.9 kgf/mm2、曲げ弾性率は 360 kgf/mm2であった。
【0078】
また、樹脂組成物の代わりに上記アクリルシラップを用い、上記の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である硬化物を得た。つまり、カルボン酸単量体金属塩を生成させないで硬化物を得た。得られた硬化物のバーコル硬さは40、鉛筆硬さは3H、熱変形温度は89℃、アイゾット衝撃強さは 8.9 kgf・cm/cm2、曲げ強さは 8.3 kgf/mm2、曲げ弾性率は 320 kgf/mm2であった。上記の結果を表2にも示した。
【0079】
上記の結果から明らかなように、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、アクリルシラップを重合させてなる硬化物と比較して、バーコル硬さ、鉛筆硬さ、熱変形温度、アイゾット衝撃強さ、および、曲げ弾性率に優れていることが判る。つまり、アクリルシラップ中で酸化亜鉛と、アクリル酸およびメタクリル酸とを反応させることにより、上記の諸性能が向上された樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物を製造することができることが判る。
〔実施例7〕
実施例6と同様の反応および操作を行うことにより、アクリルシラップを得た。一方、アクリル酸 1.7gと、メタクリル酸 0.6gと、水0.4gとを混合することにより混合溶液を調製した。続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記のアクリルシラップ 100gと、混合溶液とを仕込み、攪拌・混合した。
【0080】
次いで、反応容器内の混合物に、酸化亜鉛 1.8gを攪拌しながら添加し、室温で30分間、攪拌・混合した後、さらに、70℃で1時間反応させた。酸化亜鉛と、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)と、水とのモル比は、 1.0: 2.1:1.0 であった。但し、上記のカルボン酸単量体、即ち、アクリル酸およびメタクリル酸の合計量には、アクリルシラップ中に存在するメタクリル酸(単量体A)の量も含まれている。
【0081】
これにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、室温に冷却した後、並びに、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、71ポイズであった。
【0082】
次に、上記の樹脂組成物を、実施例1の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物のバーコル硬さは54、鉛筆硬さは5H、熱変形温度は 117℃、アイゾット衝撃強さは12.1 kgf・cm/cm2、曲げ強さは 8.8 kgf/mm2、曲げ弾性率は 360 kgf/mm2であった。
結果を表2にも示した。
〔実施例8〕
攪拌機、冷却管、温度計、およびガス導入管を備えた容量 2,000mlの反応容器に、メタクリル酸メチル 100部と、n-ドデシルメルカプタン 0.3部とを仕込んだ。上記の混合物を攪拌しながら、窒素雰囲気下、95℃で9時間重合させた後、室温になるまで急冷した。これにより、樹脂溶液としてのメタクリルシラップを得た。つまり、メタクリル酸メチル(単量体A)、および、メタクリル酸メチルのホモポリマー(重合体)からなるメタクリルシラップを得た。
【0083】
得られたメタクリルシラップは透明であり、不揮発分の量は20.9重量%であり、酸価は 0.1 mgKOH/gであった。また、所定の方法により測定した25℃におけるメタクリルシラップの粘度は、 4.5ポイズであった。さらに、GPCにより測定した上記メタクリルシラップ中の重合体の平均分子量は、数平均分子量(Mn)が33,000、重量平均分子量(Mw)が 119,000であった。
【0084】
続いて、攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、上記のメタクリルシラップ20gと、カルボン酸単量体としての2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸(新中村化学工業株式会社製;商品名 NKエステルCB−1)73.6gと、水 2.3gとを仕込み、攪拌・混合して該2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸を溶解させた。
【0085】
次いで、反応容器内の混合物に、酸化亜鉛10.5gを攪拌しながら添加し、内温を70℃に昇温させ、該温度で 1.5時間反応させた。酸化亜鉛と、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸と、水とのモル比は、 1.0:2.05:1.0 であった。
【0086】
これにより、均一かつ透明な樹脂混合物を得た。また、該樹脂混合物は、室温に冷却した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。次に、この樹脂混合物13.3gに、上記のメタクリルシラップ34gと、メタクリル酸メチル(単量体A)63.6gとを混合することにより、本発明にかかる樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物は、均一かつ透明であり、一週間放置した後においても、均一かつ透明な状態を維持していた。一週間放置した後の樹脂組成物の25℃における粘度は、 9.8ポイズであった。
【0087】
次に、上記の樹脂組成物を、実施例1の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である樹脂硬化物を得た。得られた樹脂硬化物のバーコル硬さは48、鉛筆硬さは4H、熱変形温度は99℃、アイゾット衝撃強さは24.7kgf・cm/cm2、曲げ強さは 8.0 kgf/mm2、曲げ弾性率は 387 kgf/mm2であった。
【0088】
また、樹脂組成物の代わりに上記メタクリルシラップを用い、上記の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が透明である硬化物を得た。つまり、カルボン酸単量体金属塩を生成させないで硬化物を得た。得られた硬化物のバーコル硬さは38、鉛筆硬さは3H、熱変形温度は90℃、アイゾット衝撃強さは22.0kgf・cm/cm2、曲げ強さは 8.0 kgf/mm2、曲げ弾性率は 355 kgf/mm2であった。上記の結果を表2にも示した。
【0089】
上記の結果から明らかなように、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、メタクリルシラップを重合させてなる硬化物と比較して、バーコル硬さ、鉛筆硬さ、熱変形温度、アイゾット衝撃強さ、および、曲げ弾性率に優れていることが判る。つまり、メタクリルシラップ中で酸化亜鉛と、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸とを反応させることにより、上記の諸性能が向上された樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物を製造することができることが判る。
【0090】
【表1】
【0091】
【表2】
〔比較例1〕
攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、スチレン 100gと、酸化亜鉛 5.5gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。一方、アクリル酸 5.2g、メタクリル酸 6.2g、および水 1.7gを混合することにより混合溶液を調製した。酸化亜鉛と、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)と、水とのモル比は、 1.0: 2.1:1.4 であった。
【0092】
そして、反応容器内の混合物に、上記の混合溶液を攪拌しながら添加し、70℃で4時間反応させた。つまり、樹脂溶液の代わりにスチレンを用い、重合体を含まない状態で、酸化亜鉛と、アクリル酸およびメタクリル酸とをスチレン(単量体A)中で反応させた。
【0093】
しかしながら、反応溶液は白濁状態を呈し、室温に冷却すると多量の沈殿物が生じた。つまり、均一かつ透明な樹脂組成物を得ることはできなかった。
〔比較例2〕
攪拌機、冷却管、および温度計を備えた容量 200mlの反応容器に、メタクリル酸メチル 100gと、酸化亜鉛 1.8gとを仕込み、室温で30分間、攪拌・混合した。一方、アクリル酸 1.7g、メタクリル酸 0.6g、および水 0.4gを混合することにより混合溶液を調製した。酸化亜鉛と、カルボン酸単量体(アクリル酸およびメタクリル酸の合計量)と、水とのモル比は、 1.0: 2.1:1.0 であった。
【0094】
そして、反応容器内の混合物に、上記の混合溶液を攪拌しながら添加し、70℃で1時間反応させた。つまり、樹脂溶液の代わりにメタクリル酸メチルを用い、重合体を含まない状態で、酸化亜鉛と、アクリル酸およびメタクリル酸とをメタクリル酸メチル(単量体A)中で反応させた。
【0095】
これにより、均一かつ透明な樹脂組成物を得たが、該樹脂組成物は、室温に冷却すると曇りが生じて不透明となり、一日放置した後において白濁状態を呈した。つまり、均一かつ透明で、しかも安定性に優れた樹脂組成物を得ることはできなかった。
【0096】
上記実施例1〜8の結果と、比較例1・2の結果との比較から明らかなように、本発明においては、単量体Aおよび重合体を含む樹脂溶液中で、金属(水)酸化物とカルボン酸単量体とを反応させることにより、均一かつ透明で、しかも安定性に優れた樹脂組成物を得ることができることが判る。また、該樹脂組成物を重合させて得られる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、諸物性に優れていることが判る。
〔実施例9〕
実施例6と同様の反応および操作を行うことにより、樹脂組成物を得た。次に、上記の樹脂組成物を、以下に示す方法を用いて重合させることによって樹脂硬化物とした。即ち、樹脂組成物 100部に対し、ラジカル重合開始剤としてのトリゴノックス121−LS−50(化薬アクゾ株式会社製)2部、重合促進剤としてのステアリン酸亜鉛4部、および、充填剤である炭酸カルシウム 100部を添加し、ホモミキサーで1時間攪拌・混合することにより、コンパウンドを得た。上記のトリゴノックス121−LS−50は、t-アミルパーオキシ -2-エチルヘキサノエートの50重量%溶液である。
【0097】
次に、得られたコンパウンド 100部に対し、1インチチョップのガラス繊維(補強材)25部を混合することにより、該ガラス繊維にコンパウンドを含浸させた。その後、該コンパウンドを24時間熟成させることにより、SMC用の成形材料を作成した。次いで、上記の成形材料を、縦28cm、横39cm、高さ8cmの箱型の金型に入れ、上型の温度を 110℃、下型の温度を 100℃として、成形圧70kg/cm2(ゲージ圧)で5分間プレス成形することにより重合させた。これにより、外観が良好である樹脂硬化物を得た。
【0098】
得られた樹脂硬化物の諸物性を、上記の方法により測定した。その結果、該樹脂硬化物の光沢度は77、熱変形温度は 120℃、アイゾット衝撃強さは67.1 kgf・cm/cm2、曲げ強さは25℃において25.0 kgf/mm2、 140℃において19.7 kgf/mm2、引張強さは10.6 kgf/mm2、引張弾性率は1320 kgf/mm2、引張破壊伸び率は 1.3%であった。
【0099】
また、樹脂組成物の代わりに、実施例6と同様の反応および操作を行うことによって得られたアクリルシラップ(樹脂溶液)を用い、上記の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が良好である樹脂硬化物(以下、説明の便宜上、単に硬化物と称する)を得た。つまり、カルボン酸単量体金属塩を生成させないで硬化物を得た。得られた硬化物の光沢度は79、熱変形温度は91℃、アイゾット衝撃強さは58.0 kgf・cm/cm2、曲げ強さは25℃において20.4 kgf/mm2、 140℃において10.9 kgf/mm2、引張強さは 7.5 kgf/mm2、引張弾性率は 950 kgf/mm2、引張破壊伸び率は 1.7%であった。上記の結果を表3にも示した。
【0100】
上記の結果から明らかなように、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、アクリルシラップを重合させてなる硬化物と比較して、熱変形温度、アイゾット衝撃強さ、曲げ強さ、引張強さ、および、引張弾性率に優れていることが判る。つまり、樹脂溶液中でカルボン酸単量体金属塩を生成させることにより、上記の諸性能が向上された樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物を製造することができることが判る。
〔実施例10〕
実施例8と同様の反応および操作を行うことにより、樹脂組成物を得た。次に、上記の樹脂組成物を、実施例9の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が良好である樹脂硬化物を得た。
【0101】
得られた樹脂硬化物の光沢度は82、熱変形温度は 105℃、アイゾット衝撃強さは61.7 kgf・cm/cm2、曲げ強さは25℃において18.8 kgf/mm2、 140℃において17.3 kgf/mm2、引張強さは11.0 kgf/mm2、引張弾性率は1010 kgf/mm2、引張破壊伸び率は 1.7%であった。
【0102】
また、樹脂組成物の代わりに、実施例8と同様の反応および操作を行うことによって得られたメタクリルシラップ(樹脂溶液)を用い、上記の方法と同様の方法を用いて重合させ、これにより、外観が良好である硬化物を得た。つまり、カルボン酸単量体金属塩を生成させないで硬化物を得た。得られた硬化物の光沢度は77、熱変形温度は90℃、アイゾット衝撃強さは57.8 kgf・cm/cm2、曲げ強さは25℃において19.0 kgf/mm2、 140℃において 1.8 kgf/mm2、引張強さは 7.4 kgf/mm2、引張弾性率は 940 kgf/mm2、引張破壊伸び率は 1.5%であった。上記の結果を表3にも示した。
【0103】
上記の結果から明らかなように、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、メタクリルシラップを重合させてなる硬化物と比較して、光沢度、熱変形温度、アイゾット衝撃強さ、曲げ強さ、引張強さ、および、引張弾性率に優れていることが判る。つまり、樹脂溶液中でカルボン酸単量体金属塩を生成させることにより、上記の諸性能が向上された樹脂硬化物を得ることができる樹脂組成物を製造することができることが判る。
【0104】
【表3】
上記実施例9・10の結果から明らかなように、本発明にかかる樹脂組成物を重合させて得られる樹脂硬化物は、その樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、諸物性に優れていることが判る。
【0105】
【発明の効果】
本発明の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、ビニル基を含有する単量体、および重合体を含む溶液中で、金属酸化物および/または金属水酸化物と、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体とを、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体と、金属酸化物および/または金属水酸化物との当量比が1.0〜1.20の範囲内で反応させる方法である。また、本発明の樹脂組成物の製造方法は、前記金属酸化物および/または金属水酸化物が亜鉛酸化物および/または亜鉛水酸化物であることが好ましい。また、本発明の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、水の存在下で反応させる方法である。さらに、本発明の樹脂組成物の製造方法は、以上のように、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体として、アクリル酸およびメタクリル酸を併用する方法である。
【0106】
これにより、反応によって生成する単量体金属塩の溶液への溶解性が向上されるので、樹脂組成物を重合させてなる樹脂硬化物の樹脂骨格に、金属塩を従来よりも多量にかつ簡単に導入することができるという効果を奏する。
【0107】
上記の製造方法によって得られる樹脂組成物は、安定性に優れ、その粘度を適正に調節することにより、注型や塗工等の作業での取り扱い性を高めることができる。該樹脂組成物は、注型用材料、SMC、BMC等の成形材料やコーティング材料等として好適である。つまり、従来公知の各種の成形方法や塗工方法、例えば、注型、RTM、RIM、プレス成形、射出成形、積層、スプレー塗工等の方法により成形、塗工、重合することにより、注型物、ゲルコート、ガラス繊維強化成形品、塗料、化粧板、ホットメルト粘着剤、熱可塑性エラストマー等の広範囲の用途に用いることができる。
【0108】
また、上記の樹脂組成物を重合させて得られる樹脂硬化物は、透明性等の諸性能に優れると共に、樹脂骨格に金属塩が多量に導入されているので、該金属塩に由来する特性である例えば、耐熱性、曲げ強さ等の機械的強度、硬度(表面硬さ)、放射線遮蔽効果、防汚性、耐有機溶剤性等の諸性能に優れている。このため、上記広範囲の用途において、優れた性能を発揮することができる。
Claims (4)
- ビニル基を含有する単量体、および重合体を含む溶液中で、金属酸化物および/または金属水酸化物と、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体とを、ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体と、金属酸化物および/または金属水酸化物との当量比が1.0〜1.20の範囲内で反応させることを特徴とする樹脂組成物の製造方法。
- 前記金属酸化物および/または金属水酸化物が亜鉛酸化物および/または亜鉛水酸化物である請求項1に記載の樹脂組成物の製造方法。
- 水の存在下で反応させることを特徴とする請求項1または2に記載の樹脂組成物の製造方法。
- ビニル基およびカルボキシル基を含有する単量体として、アクリル酸およびメタクリル酸を併用することを特徴とする請求項1、2、3のいずれかに記載の樹脂組成物の製造方法。
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