JP3825884B2 - 空気入りタイヤの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤ内側にインナーライナー層を設けた空気入りタイヤの製造方法に関し、さらに詳しくは、インナーライナー層の接合部におけるクラックの発生を防止可能にした空気入りタイヤの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
チューブレスタイヤは、空気圧を一定に保持するため、タイヤ内周面に気密性の高いブチルゴムを主体とする非透過性ゴムからなるインナーライナー層を設けるようにしている。しかし、ブチルゴムは接着性が低いという特性があるため、そのブチルゴムを主体とするインナーライナー層がカーカス層の補強コードと接触すると、その両者間に剥離を招く原因となる。そこで、インナーライナー層とカーカス層との間には両者を確実に離れた状態にするため、一般にカーカス層と同じゴムからなるタイゴム層が設けられている。
【0003】
上述のようなチューブレスタイヤを製造する場合、図に示すように、例えば未加硫のインナーライナー層11とタイゴム層12とからなる合わせシート13のタイヤ周方向両端部を互いに重ね合わせて接合することにより、カーカス層の内周側に未加硫のタイゴム層12を介して未加硫のインナーライナー層11を設けたグリーンタイヤを成形し、このグリーンタイヤの内面にシリコン、マイカ、タルクなどの無機粉末を界面活性剤によって水溶液に分散させてなる離型剤を塗布した後、このグリーンタイヤを内側からブラダーで押圧しながら加硫成形するようにしている。
【0004】
しかしながら、上記製造方法では、異なる種類のゴム層同士を互いに接合した状態になるので、ゴム物性の相違により、走行時にタイヤに大きな繰り返し変形が作用すると、接合部においてタイゴム層12の端末(切断部)が露出している部分からタイゴム層12が剥離し、クラックが発生するという問題があった。特に、ライトトラックやそれ以上の重量を有する車両に装着される重荷重用タイヤにおいて、この傾向が顕著である。また、無機粉末からなる離型剤を使用すると、この離型剤がインナーライナー層の接合部に入り込むことにより接着不良を起こし易いという問題もあった。
【0005】
上記対策として、図の2点鎖線で示すように、伸縮性を有する布にゴムをコーティングしたテープ14を接合部に貼り付けることで、クラックの発生を抑えるようにした提案がある。しかし、テープ14を使用した場合、部品点数が増加するため製造コストが増大すると共に、テープ14の貼り付け工程に時間がかかり、しかもクラック防止効果は依然として不十分であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、クラック防止用のテープを使用することなく、インナーライナー層の接合部におけるクラックの発生を防止可能にした空気入りタイヤの製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するための本発明の空気入りタイヤの製造方法は、カーカス層の内周側に未加硫のタイゴム層を介して未加硫のインナーライナー層を設けたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤの内面に離型剤を塗布した後、該グリーンタイヤを内側からブラダーで押圧しながら加硫成形する空気入りタイヤの製造方法において、前記タイゴム層とインナーライナー層とを予め貼り合わせた合わせシートとして前記カーカス層の内周側に積層し、該合わせシートのタイヤ周方向両端部をシート長手方向に対して15〜30°の範囲で傾斜した傾斜面に形成し、その合わせシートの両端部を前記傾斜面の鋭角部側が対面外側に位置するように互いに重ね合わせて接合するようにし、かつ前記離型剤として、非シリコン系のポリエチレンワックス樹脂粉末を5〜50重量%含有する水溶液を用いたことを特徴とするものである。
【0009】
このようにタイゴム層とインナーライナー層の合わせシートとしてカーカス層の内周側に積層し、その両端部をシート長手方向に対して15〜30°の範囲で同方向に傾斜した傾斜面に形成し、その合わせシートの両端部を傾斜面の鋭角部側が対面外側に位置するように互いに重ね合わせて接合することにより、インナーライナー層をタイヤ周方向に連続して延在するように形成し、不連続部を設けないようにしたので、走行時に大きな変形を繰り返し受けても、その接合部におけるクラックの発生を防止することができる。しかも、離型剤として、非シリコン系のポリエチレンワックス樹脂粉末を5〜50重量%含有する水溶液を用いることにより、加硫時のブラダーとタイヤ内面との滑りを良好にしながら、インナーライナー層の接合部におけるゴム−ゴム間の接着性を向上することが可能になる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は本発明における空気入りタイヤの一例として、ライトトラックに用いられる空気入りタイヤを例示するものである。1はトレッド部、2はビード部、3はサイドウォール部である。左右のビード部2,2に連接してタイヤ径方向外側に左右のサイドウォール部3,3が延設され、これらサイドウォール部3,3間にタイヤ周方向に延在するトレッド部1が設けられている。
【0011】
タイヤ内側には2層のカーカス層4が設けられている。このカーカス層4はライトトラック用の空気入りタイヤでは1〜3層設けることができ、少なくとも1層設ければよい。左右のビード部2にはビードコア5がそれぞれ配置され、そのビードコア5の外周にはビードフィラー6が設けられている。内側にカーカス層4Aの両端部はビードフィラー6を包み込むようにしてビードコア5の周りにタイヤ内側から外側に折り返されている。外側のカーカス層4Bの両端部はビードコア5の外側に配置されている。
【0012】
カーカス層4の内周側には、タイゴム層7を介してインナーライナー層8が設けられている。このインナーライナー層8はブチルゴムを主体とする非透過性ゴムから構成されている。一方、トレッド部1におけるカーカス層4の外周側には、補強コードを配列した複数のベルト層9が埋設されている。
次に、上記空気入りタイヤの製造方法について説明する。本発明の空気入りタイヤは、未加硫のインナーライナー層8とタイゴム層7とを予め貼り合わせた合わせシートXを用いて製造することができる。この合わせシートXを使用した場合、接着性が悪いインナーライナー層8のシートを単独で扱う必要がないという利点がある。合わせシートXは、図2に示すように、そのタイヤ周方向両端部がシート長手方向に対する傾斜角度αを15°〜30°の範囲で同方向に揃って傾斜させた傾斜面X1,X2に形成されている。
【0013】
この合わせシートXを未加硫のインナーライナー層8を内周側にして成形ドラムD上に巻き付け、その両端部X3,X4を互いに重ね合わせて接合するときに、傾斜面X1,X2の鋭角部側を対面外側に位置させて両者を接合する。その後、図3に示すように、両傾斜面X1,X2を対面する合わせシート表面に圧着ローラを用いて圧着する。これにより、未加硫のインナーライナー層8のタイヤ周方向の一端がその他端部側に接続され、未加硫のタイゴム層7のタイヤ周方向の他端がその一端側に接続されるので、インナーライナー層8とタイゴム層7とはそれぞれタイヤ周方向に連続する層になる。この圧着において、インナーライナー層8とタイゴム層7とを必ずしも完全に密着させる必要はない。
【0014】
次いで、タイゴム層7の外周側にカーカス層を巻回して、合わせシートXの傾斜面X1,X2を圧着状態にした後は、通常の成形工程を行うことができる。例えば、カーカス層の両端部上に未加硫のビードフィラーを取り付けたビードコアをセットし、両端部をビードコアの周りに折り返した後、成形ドラムを拡張(リフト)させ、その拡張したカーカス層上に補強コードをタイヤ周方向に傾斜させた未加硫のベルト層をその補強コードが互いに交差するように貼り合わせる。
【0015】
そして、トレッドゴムとサイドゴムとを順次貼り付けることにより、グリーンタイヤを成形する。このようにしてカーカス層の内周側に未加硫のタイゴム層7を介して未加硫のインナーライナー層8を設けたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤの内面に離型剤を塗布した後、該グリーンタイヤを金型内に挿入して内側からブラダーで押圧しながら加硫成形することにより空気入りタイヤを得ることができる。
【0016】
上記離型剤としては、非シリコン系のポリエチレンワックス樹脂粉末を5〜50重量%含有する水溶液を使用する。このポリエチレンワックス樹脂粉末は融点が150℃以下、好ましくは80〜150℃の範囲で平均粒子径が50μm以下に整粒された低分子量のポリエチレンワックスである。このポリエチレンワックスの分子量は500〜3000程度のものである。この樹脂はポリエチレン樹脂とパラフィンワックスとの中間の分子量を有するが、これらに比べて融点が高く、固まった状態ではベタツキのない極めて硬い性質を有し、しかも加硫温度(80°以上)でゴムとの相溶性が良好である。
【0017】
上記製造方法によれば、合わせシートXの傾斜面X1,X2の傾斜角度αを15〜30°の範囲で同方向に傾斜させ、その合わせシートXの両端部を傾斜面X1,X2の鋭角部側が対面外側に位置するように互いに重ね合わせて接合することにより、図4に示すようにインナーライナー層8とタイゴム層7とをそれぞれタイヤ周方向に連続する層に形成することが可能になる。このようにインナーライナー層8がタイヤ周方向に連続することにより、走行時に大きな変形を繰り返し受けても、その接合部におけるクラックの発生を防止することができる。また、クラック防止用のテープを使用する必要はない。
【0018】
本発明において、合わせシートXの傾斜面X1,X2の傾斜角度αは15〜30°にする。この傾斜角度αは15°未満であると合わせシートXの両端部をその傾斜角度に切断することが困難であり、逆に30°を超えるとクラックの発生を抑えることが困難になる。傾斜角度αは合わせシートXにおける切断を容易にするため、21〜30°にすることが好ましい。
【0019】
図5に合わせシートXの両端部を傾斜面に切断するカッターの一例を示す。このカッターKはV字状に対面する刃部K1を有している。この刃部K1は、カッターKの長手方向(水平方向)に対してそれぞれ約8°の角度に形成されている。このようなカッターKを用いることにより、合わせシートXの両端部を上記角度を有する傾斜面X1,X2に容易に形成することができる。
【0020】
また、本発明によれば、離型剤として非シリコン系のポリエチレンワックス樹脂粉末を使用することにより、加硫時のブラダーとタイヤ内面との滑りを良好にしながら、インナーライナー層8の接合部におけるゴム−ゴム間の接着性を向上することができる。従って、従来のシリコン、マイカ、タルクなどの無機粉末からなる離型剤のように接着不良を起こすことを防止できる。また、離型剤がインナーライナー層8の接合部に入り込んでも接着性を損なうことはないので、グリーンタイヤ成形時にインナーライナー層8の接合部を完全に圧着する必要はない。
【0021】
本発明において、ポリエチレンワックス樹脂粉末の水溶液中の含有量は5〜50重量%にする。この含有量が5重量%未満であると十分なブラダーとタイヤ内面との滑りを良好にすることができず、逆に50重量部を超えると粉落ちし易くなるので好ましくない。また、上記水溶液にはポリエチレンワックス樹脂粉末の他に界面活性剤等を含有していてもよい。
【0025】
タイヤサイズを700R15 8PRで共通にし、図1に示す構成の空気入りタイヤにおいて、図2に示すように合わせシートを使用し、その両端部の傾斜角度αを種々異ならせた本発明タイヤ1,2と比較タイヤ1〜3、及び図6に示すように合わせシートの傾斜角度αを90°にし、その接合部にクラック防止用テープを設けた従来タイヤを各3本製作した。なお、離型剤として、ポリエチレンワックス樹脂粉末を30重量%含有する水溶液を使用した。
【0026】
これら各試験タイヤをリムサイズ15×1/2Kのリムに装着し、空気圧を450kPaにし、下記に示す測定条件により、接合部に発生するクラックの評価試験を行ない、その結果を表1に示した。
【0027】
クラック評価試験:
各試験タイヤをドラム径1707mmのドラム試験機に取り付け、負荷荷重13kN、時速50km/h、周囲温度38±3℃の条件下で、12000km走行させた後、インナーライナー層の接合部でのクラックトータル長さを測定し、各3本の平均結果を4段階評価した。表1において、Aはクラックトータル長さLが0mm、Bは0mm<L≦5mm、Cは5mm<L≦50mm、Dは50mm<Lを示す。
【0028】
【表1】
Figure 0003825884
【0029】
この表1から明らかなように、本発明タイヤ1〜はクラック防止用テープを設けることなく、クラックの発生を抑えることができた。一方、比較タイヤ1〜3は傾斜角度αが大きすぎるため、クラック防止効果を得ることができなかった。なお、傾斜角度αを15°よりも小さくした傾斜面を有する合わせシートを形成しようとしたが不可能であった。
【0030】
【発明の効果】
以上説明したように本発明によれば、カーカス層の内周側に未加硫のタイゴム層を介して未加硫のインナーライナー層を設けたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤの内面に離型剤を塗布した後、該グリーンタイヤを内側からブラダーで押圧しながら加硫成形する空気入りタイヤの製造方法において、タイゴム層とインナーライナー層とを予め貼り合わせた合わせシートとしてカーカス層の内周側に積層し、該合わせシートのタイヤ周方向両端部をシート長手方向に対して15〜30°の範囲で傾斜した傾斜面に形成し、その合わせシートの両端部を前記傾斜面の鋭角部側が対面外側に位置するように互いに重ね合わせて接合することにより、インナーライナー層をタイヤ周方向に連続して延在するように形成し、かつ離型剤として、非シリコン系のポリエチレンワックス樹脂粉末を5〜50重量%含有する水溶液を用いることにより、クラック防止用のテープを使用することなく、インナーライナー層の接合部におけるクラックの発生を効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の空気入りタイヤを例示する子午線半断面図である。
【図2】本発明の空気入りタイヤの製造方法において、合わせシートの両端部を接合した状態を示す断面図である。
【図3】図2の合わせシートの両傾斜面を圧着した状態を示す断面図である。
【図4】加硫後におけるインナーライナー層とタイゴム層の接合状態を示す断面図である。
【図5】合わせシートの両端部を傾斜面に形成するためのカッターを例示する要部正面図である。
【図6】 従来のインナーライナー層とタイゴム層の両端部における接合状態を示す断面図である。
【符号の説明】
1 トレッド部 2 ビード部
3 サイドウォール部 4 カーカス層
7 タイゴム層 8 インナーライナー層
X 合わせシート X1,X2 傾斜面
α 傾斜角度

Claims (2)

  1. カーカス層の内周側に未加硫のタイゴム層を介して未加硫のインナーライナー層を設けたグリーンタイヤを成形し、該グリーンタイヤの内面に離型剤を塗布した後、該グリーンタイヤを内側からブラダーで押圧しながら加硫成形する空気入りタイヤの製造方法において、前記タイゴム層とインナーライナー層とを予め貼り合わせた合わせシートとして前記カーカス層の内周側に積層し、該合わせシートのタイヤ周方向両端部をシート長手方向に対して15〜30°の範囲で傾斜した傾斜面に形成し、その合わせシートの両端部を前記傾斜面の鋭角部側が対面外側に位置するように互いに重ね合わせて接合するようにし、かつ前記離型剤として、非シリコン系のポリエチレンワックス樹脂粉末を5〜50重量%含有する水溶液を用いた空気入りタイヤの製造方法。
  2. 前記ポリエチレンワックス樹脂粉末は、融点が150℃以下であり、かつ平均粒子径が50μm以下である請求項に記載の空気入りタイヤの製造方法。
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