JP3817274B2 - 積層ガスバリア材 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、ガスバリアー性に優れた積層ガスバリア材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
包装に求められる機能は多岐にわたるが、内容物保護性としての各種ガスバリア性は食品の保存性を左右する大切な性質であり、流通形態、包装技術の多様化、添加物規制、嗜好の変化などにより、その必要性はますます大きくなっている。そして、ガスバリア性は一般プラスチック材料の弱点でもあった。食品の変質要因としては、酸素、光、熱、水分等があげられ、とりわけ酸素はその起因物質として重要である。バリア材は酸素を有効に遮断すると同時にガス充填や真空包装などの食品の変質を制御する手段にとってもなくてはならない材料であり、酸素ガスだけでなく各種のガス、有機溶剤蒸気、香気などのバリア機能を有することにより、防錆、防臭、昇華防止に利用でき、菓子袋、カツオパック、レトルトパウチ、炭酸ガス飲料容器等の食品、化粧品、農薬、医療等の多くの分野で利用されている。
【0003】
熱可塑性樹脂よりなるフィルムの中で、特に配向されたポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等のフィルムは、優れた力学的性質や、耐熱性、透明性などを有し広く包装材料として用いられている。しかし、これらのフィルムを食品包装用として用いる場合には、酸素やその他の気体の遮断性が不十分であるため、酸化劣化や好気性微生物による内容物の変質を招き易かったり、香気成分が透過してしまい、風味が失われたり、外界の水分で内容物が湿らされて口当りが悪くなったり、と種々の問題を生じがちである。そこで通常は他のガスバリアー性の良い膜層を積層するなどの方法がとられている場合が多い。
【0004】
従来より、ガスバリアー性の小さい透明プラスチック素材も種々知られており、例えば、ポリビニルアルコールやエチレンビニルアルコール共重合体およびポリ塩化ビニリデン系樹脂からなるフィルム等があるものの、缶詰、瓶詰に用いられる金属やガラス素材は酸素透過度がほとんど零であるのに対して、これらプラスチック素材は未だ無視できない程度の酸素を透過するものである。
【0005】
そのほか、ガスバリヤ性発現の方法として、樹脂中への偏平形態の無機物の分散方法があり、例えば、(1)特開昭62−148532号公報には、1,6−ヘキサンポリカーボナートジオールを用いた濃度30%のポリウレタン樹脂溶液100重量部にマイカ微粉末25重量部、ジメチルホルムアミド60重量部よりなる塗工液組成物を離型性基材上に塗工、乾燥し、次いで基材上から剥離する製造方法が記載されている。
また、(2)特開昭64−043554号公報には、エチレン/ビニルアルコール共重合体のメタノール水溶液に、平均長さ7μmで、アスペクト比140のマイカを添加し、これを冷水中に注入して沈殿させ、濾過、乾燥し、ペレットとし、次いでフィルムを得る方法が記載されている。
さらに(3)特開平3−93542号公報には、シリル基含有変成ポリビニルアルコールとと合成ヘクトライトとが重量比で50:50である塗工組成物を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(OPET)上に塗布し、乾燥させ、熱処理(130〜150℃)する方法が記載されている。
しかし、これら技術において得られるフィルムは、ガスバリアー性について、未だ充分なものではなく、必ずしも満足できるものとは言いがたい。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、ハイレベルの気体、水蒸気遮断性を有する積層ガスバリア材を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため鋭意検討した結果、無機層状化合物と樹脂からなる樹脂組成物およびそれからなるフィルムにおいて、無機層状化合物のアスペクト比を大きくすることにより著しく優れたガスバリヤ性が発現されることを見いだし、本発明に至った。
【0008】
すなわち本発明は、膨潤性を有する粘土鉱物とけん化の割合が85モル%以上のポリビニルアルコールを含むガスバリア性樹脂組成物からなる層と、基材とが積層されてなる積層ガスバリア材であって、前記ガスバリア性樹脂組成物からなる層が、膨潤性を有する粘土鉱物を溶媒に膨潤・へき開させた分散液であって、該分散液中の粘土鉱物の粒径が5μm以下、アスペクト比が200以上3000以下である分散液と、前記ポリビニルアルコールの溶液とを混合した、(粘土鉱物/ポリビニルアルコール)の体積比が(5/95)〜(50/50)の範囲である塗工液を、基材表面に塗布、乾燥して得られるガスバリア性樹脂組成物からなる層であり、かつ、該ガスバリア性樹脂組成物からなる層における粘土鉱物の面間隔dと単位厚みaとが、(d−a)>(前記ポリビニルアルコールの1本鎖の幅)を満たす層であって、該積層ガスバリア材における前記ガスバリア性樹脂組成物からなる層の厚さ1μm当りの31℃、61%RH下での酸素透過度が0.2cc/m2・day・atm以下であることを特徴とする積層ガスバリア材に関するものである。
【0009】
本発明に用いられる無機層状化合物とは、単位結晶層が互いに積み重なって層状構造を有している無機化合物であり、粒径が5μm以下、アスペクト比が50以上5000以下であるものならば特に限定されない。ガスバリアー性に関しては、アスペクト比が200〜3000の範囲がより好ましい。アスペクト比が50未満であればガスバリア性の発現が十分でなく、5000より大きいものは技術的に難しく、経済的にも高価なものとなる。また、粒径が3μm以下であれば透明性が、より良好となりより好ましい。無機層状化合物の具体例としては、グラファイト、リン酸塩系誘導体型化合物(リン酸ジルコニウム系化合物)、カルコゲン化物〔IV族(Ti,Zr,Hf)、V族(V,Nb,Ta)およびVI族(Mo,W)のジカルコゲン化物であり、式MX 2 で表わされる。ここで、Xはカルコゲン(S,Se,Te)を示す。〕、粘土鉱物などをあげることができる。
【0010】
樹脂組成物中での真の粒径測定はきわめて困難であるので、本発明で用いられる無機層状化合物の粒径は、無機層状化合物を膨潤・へき開させる分散液と同種の溶媒中、動的光散乱法により求めた値である。
【0011】
本発明で用いられる無機層状化合物のアスペクト比(Z)とは、Z=L/aなる関係で示される。〔Lは、溶媒中、動的光散乱法により求めた粒径であり、aは、無機層状化合物の単位厚みである(単位厚みaは、粉末X線回折法などによって無機層状化合物単独の測定で決められる値である。)〕。但し、Z=L/aに於いて、組成物の粉末X線回折から得られた面間隔dが存在し、a<dなる関係を満たす。ここで、d−aの値が組成物中の樹脂1本鎖の幅より大であることが必要である。
Zは、樹脂組成物中の無機層状化合物の真のアスペクト比とは必ずしもいえないが、下記の理由から、かなり妥当性のあるものである。
【0012】
樹脂組成物中の無機層状化合物のアスペクト比は直接測定がきわめて困難である。組成物の粉末X線回折法で得られた面間隔d、と無機層状化合物単独の粉末X線回折測定で決められる単位厚みaの間にa<dなる関係があり、d−aの値が組成物中の樹脂1本鎖の幅以上であれば、樹脂組成物中において、無機層状化合物の層間に樹脂が挿入されていることになり、よって無機層状化合物の厚みは単位厚みaとなっていることは明らかである。また、樹脂組成物中での真の粒径測定はきわめて困難であるが、無機層状化合物を膨潤・へき開させる分散液と同種の溶媒中で動的光散乱法により測定するので、前記分散液と樹脂とを複合した樹脂組成物中での無機層状化合物の粒径は溶媒中のそれとかなり近いと考えることができる(但し、動的光散乱法で求められる粒径Lは、無機層状化合物の長径Lmaxを越えることはないと考えられるから、真のアスペクト比Lmax/aは、本発明でのアスペクト比の定義Zを下回ることは理論的には有り得ない。)。
上記2点から、本発明のアスペクト比の定義は妥当性の比較的高いものと考えられる。本発明において、アスペクト比または粒径とは、上記で定義したアスペクト比、粒径を意味するものである。
【0013】
大きなアスペクト比を有する無機層状化合物としては、溶媒に膨潤・へき開する無機層状化合物が好ましく用いられる。これらの中でも膨潤性を持つ粘土鉱物が好ましく、粘土鉱物はシリカの四面体層の上部に、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を有する2層構造よりなるタイプと、シリカの4面体層が、アルミニウムやマグネシウム等を中心金属にした8面体層を両側から挟んだ3層構造よりなるタイプに分類される。
前者としてはカオリナイト族、アンチゴライト族等を挙げることができ、後者としては層間カチオンの数によってスメクタイト族、バーミキュライト族、マイカ族等を挙げることができる。
具体的には、カオリナイト、ディッカイト、ナクライト、ハロイサイト、アンチゴライト、クリソタイル、パイロフィライト、モンモリロナイト、ヘクトライト、テトラシリリックマイカ、ナトリウムテニオライト、白雲母、マーガライト、タルク、バーミキュライト、金雲母、ザンソフィライト、緑泥石等をあげることができる。
【0014】
無機層状化合物を膨潤させる溶媒は、特に限定されないが、例えば天然の膨潤性粘土鉱物の場合、水、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、等のアルコール類、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン等が挙げられ、水やメタノール等のアルコール類がより好ましい。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
本発明におけるポリビニルアルコールとは、酢酸ビニル重合体の酢酸エステル部分を加水分解(けん化)して得られるものであり、正確にはビニルアルコールと酢酸ビニルの共重合体となったものである。ここで、けん化の割合はモル百分率で70%以上が好ましく、特に85%以上のものがさらに好ましい。また、重合度は100以上5000以下が好ましい。
【0019】
【0020】
本発明において用いられる無機層状化合物とポリビニルアルコールとの組成比(体積比)は、特に限定されないが、一般的には、無機層状化合物/ポリビニルアルコール)の体積比が5/95〜90/10の範囲であり、体積比が5/95〜50/50の範囲であることがより好ましい。また、無機層状化合物の体積分率が5/95より小さい場合には、バリア性能が十分でなく、90/10より大きい場合には製膜性が良好ではない。
【0021】
無機層状化合物とポリビニルアルコールよりなる組成物の配合方法は、ポリビニルアルコールを溶解させた液と、無機層状化合物を予め膨潤・へき開させた分散液とを混合する方法挙げられる。
【0022】
また、積層ガスバリア材の基材は、特に限定されず、樹脂、紙、アルミ箔、木材、布、不織布などの一般的な基材が挙げられる。
基材として用いられる樹脂としては、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、アイオノマー樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン−6、ナイロン−6,6、メタキシレンジアミン−アジピン酸縮重合体、ポリメチルメタクリルイミドなどのアミド系樹脂、ポリメチルメタクリレート、などのアクリル系樹脂、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アクリロニトリル−ブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリルなどのスチレン、アクリロニトリル系樹脂、トリ酢酸セルロース、ジ酢酸セルロースなどの疎水化セルロース系樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン、テフロンなどのハロゲン含有樹脂、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、セルロース誘導体などの水素結合性樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリサルホン樹脂、ポリエーテルサルホン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリメチレンオキシド樹脂、液晶樹脂などのエンジニアリングプラスチック系樹脂などがあげられる。
【0023】
これらの中でフィルム形態での積層ガスバリア材に於いて、外層としては、二軸延伸されたポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンやKコートと呼ばれるポリ塩化ビニリデンをコートした二軸延伸されたポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロンなどが好ましく配され、内層には、一般にヒートシール性が良好であることから、ポリオレフィン系樹脂、たとえば、ポリエチレン(低密度、高密度)、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体などが好ましく用いられる。
【0024】
基材に本発明の組成物を積層する方法としては、特に限定はされない。基材がたとえばフィルムやシートの場合には、組成物の塗工液を基材表面に塗布、乾燥、熱処理を行うコーティング方法や、組成物フィルムを後からラミネートする方法などが好ましい
コーティング方法としては、ダイレクトグラビア法やリバースグラビア法及びマイクログラビア法、2本ロールビートコート法、ボトムフィード3本リバースコート法等のロールコーティング法、及びドクターナイフ法やダイコート法、ディップコート法、バーコーティング法やこれらを組み合わせたコーティング法などの方法が挙げられる。
【0025】
塗膜厚は、基材の種類および目的とするバリア性能により異なるが、乾燥厚みで10μm以下が好ましく、さらに1μm以下がより好ましい(1μm以下では積層体の透明性が著しく高いという長所も合わせもつため、透明性の必要な用途にはさらに好ましい。)。下限については特に制限はないが、効果的なガスバリアー性効果を得るためには1nm以上であることが好ましい。
【0026】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、本樹脂組成物には、紫外線吸収剤、着色剤、酸化防止剤等のさまざまな添加剤を混合してもよい
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、樹脂および無機層状化合物の混合系において、無機層状化合物の粒径が5μm以下、アスペクト比が50以上5000以下のものを用いることにより、これまでにないハイレベルの気体遮断性、水蒸気遮断性を有するガスバリアフィルムを得ることが可能となる。
【0028】
実施例に記したように、無機層状化合物を含まない場合は同じ樹脂であっても、バリア性は本願発明に比べ極めて劣っていることがわかる(例えば、実施例1と比較例1)。また、樹脂および無機層状化合物からなる組成物であっても、アスペクト比が約30の場合は、本発明の実施例に比べて100倍以上バリア性の劣るものであることがわかる(例えば、比較例3と実施例1)。またアスペクト比が200程度を境にバリア性付与効果に大きな変化があり、アスペクト比が、約200以上ではさらなるバリア性向上が期待できるのである。
【0029】
また、本発明は樹脂組成物としては、これまでの材料からは想像できないハイレベルのバリア性を有している。厚み1μm当りの酸素透過度が31℃、61%RHの条件下で、市販の樹脂で最も優れた酸素バリア性を持つエチレン−ビニルアルコール共重合体ですら15cc/m2・day・atmであるのに対し、本発明では、酸素透過度が2以下のものや、さらに優れたものでは0.2以下のものが得られる。本発明の樹脂組成物は、バリア性において、樹脂を大きく越え、金属やセラミックのバリア性に迫っていることから、バリア性の観点からアルミ箔やガラスなどの金属や無機材料を必須としている用途にも用いることができ、これまでのバリア性樹脂組成物の常識を打ち破る材料と言うことができる(金属の不透明性やセラミックの脆さなどの弱点については、樹脂組成物である本発明がそれらより優れていることは言うまでもない。)。
【0030】
すなわち、本発明の包装材料としての用途として、フィルムとしては味噌、鰹節、菓子、ラーメン、ハム・ソーセージ、テトラパックなどや、パックごはん、カレー、シチューなどなどのボイルやレトルト用食品に用いられ、ボトルとしてはマヨネーズなどのスクイズボトル、ジュース、醤油、ソース、食用油、などの用途に、トレイとしては、ヨーグルトやプリンのカップ、電子レンジ食品のトレイ、などに、さらには輸液パック、半導体包装、酸化性薬品包装、精密材料包装など医療、電子、化学、機械などの産業材料包装などに、様々な形状で広範な用途に用いられるものである。
【0031】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
各種物性の測定方法を以下に記す。
[酸素透過度]
酸素透過度測定装置(OX−TRAN 10/50A,MOCON社製)、温度31℃(調湿恒温槽21℃)で測定した(相対湿度は約61%を示した)。
[厚み測定]
0.5μm以上はデジタル厚み計により測定した。0.5μm未満は重量分析法(一定面積のフィルムの重量測定値をその面積で除し、さらに組成物比重で除した。)または、本発明の組成物と基材の積層体の場合などは、元素分析法(積層体の特定無機元素分析値(組成物層由来)と無機層状化合物単独の特定元素分率の比から本発明の樹脂組成物層と基材の比を求める方法)によった。
[粒径測定]
超微粒子粒度分析計(BI−90,ブルックヘブン社製)、温度25℃、水溶媒の条件で測定した。動的光散乱法による光子相関法から求めた中心径を粒径Lとした。
[アスペクト比計算]
X線回折装置(XD−5A、(株)島津製作所製)を用い、無機層状化合物単独と樹脂組成物の粉末法による回折測定を行った。これにより無機層状化合物の面間隔(単位厚み)aを求め、さらに樹脂組成物の回折測定から、無機層状化合物の面間隔が広がっている部分があることを確認した。上述の方法で求めた粒径Lをもちいて、アスペクト比Zは、Z=L/aの式により決定した。
【0033】
〔実施例1〕
合成マイカ(テトラシリリックマイカ(Na−Ts);トピー工業(株)製)をイオン交換水(0.7μS/cm以下)に0.65wt%となるように分散させ、これを無機層状化合物分散液(A液)とする。当該合成マイカ(NA−TS)の粒径は977nm、粉末X線回折から得られるa値は0.9557nmであり、アスペクト比Zは1043である。また、ポリビニルアルコール(PVA210;(株)クラレ製,ケン化度;88.5%,重合度1000)をイオン交換水(0.7μS/cm以下)に0.325wt%となるように溶解させこれを樹脂溶液(B液)とする。A液とB液とをそれぞれの固形成分比(体積比)が無機層状化合物/樹脂=3/7となるように混合し、これを塗工液とした。厚さ76μmのトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(フジタック;富士写真フィルム(株)製)の表面ケン化処理したものを基板として、この基板フィルム上に組成液を塗布し、室温で乾燥させることによりガスバリア性フィルムを得た。当該塗工層の乾燥厚みは0.87μmであった。この積層フィルムの31℃,61%RHにおける酸素透過度は、0.092cc/m2・day・atmであった。これを乾燥塗工厚み1.0μmに換算すると、31℃,61%RHにおける酸素透過度は、0.08cc/m2・day・atmとなり、ガスバリア性に優れたものであった。
【0034】
【0035】
〔実施例2〕
塗工および乾燥をダイレクト・グラビアコーター(マルチコーターM−200;(株)平野テクシード製 ダイレクトグラビア塗工法:塗工速度1.7m/分、乾燥温度80℃、4回重ね塗り)を用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、酸素透過度試験を行った。結果は第1表に示したとおりガスバリア性に優れたものであった。
【0036】
〔実施例3〕
塗工および乾燥をダイレクト・グラビアコーター(マルチコーターM−200;(株)平野テクシード製 ダイレクトグラビア塗工法:塗工速度1.7m/分、乾燥温度80℃、4回重ね塗り)を用い、基材樹脂として二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム(厚さ25μm,(株)旭化成製;TYPE(TH)CO,コロナ処理)を用いた以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、酸素透過度試験を行った。結果は第1表に示したとおりガスバリア性に優れたものであった。
【0037】
〔比較例1〕
無機層状化合物分散液(A液)を用いず、ポリビニルアルコール(PVA210;(株)クラレ製,ケン化度;88.5%,重合度1000)をイオン交換水(0.7μS/cm以下)に1wt%となるように溶解させ、これを樹脂溶液(B液)とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを得、酸素透過度試験を行った。結果は第1表に示したとおりガスバリア性に劣ったものであった。
【0038】
〔比較例2〕
無機層状化合物分散液(A液)を用いず、ヒドロキシエチルセルロース(HEC;(株)和光純薬工業製)をイオン交換水(0.7μS/cm以下)に2wt%となるように溶解させ、これを樹脂溶液(B液)とした以外は実施例1と同様にしてフィルムを得、酸素透過度試験を行った。結果は第1表に示したとおりガスバリア性の劣ったものであった。
【0039】
〔比較例3〕
A液として合成ヘクトライト(日本シリカ工業(株)製ラポナイトXLG;粒径35nm、a値約1nm(回折ピークがブロード)、アスペクト比約35)をイオン交換水(0.7μS/cm以下)に2wt%となるように分散させたものとB液としてポリビニルアルコール(PVA210;(株)クラレ製,ケン化度;88.5%,重合度1000)をイオン交換水(0.7μS/cm以下)に1wt%となるように溶解させたものを用いた以外は実施例1と同様にしてフィルムを得、酸素透過度試験を行った。結果は第1表に示したとおりガスバリア性の劣ったものであった。
【0040】
〔比較例4〕
樹脂溶液(B液)を用いない以外は実施例1と同様にしてフィルムを作製したが、積層フィルムから合成マイカの粉末が剥離し、フィルム表面に傷が目立ち、製膜性に劣るものであった。
【0041】
〔比較例5〕
トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚さ76μm;フジタック;富士写真フィルム(株)製)においては、61%RHにおける酸素透過度は、第1表に示したとおりガスバリア性の著しく劣ったものであった。
【0042】
〔比較例6〕
二軸延伸ポリスチレン(OPS)フィルム(厚さ25μm,(株)旭化成製;TYPE(TH)CO,コロナ処理)においては、フィルムの31℃、61%RHにおける酸素透過度は、第1表に示したとおりガスバリア性の著しく劣ったものであった。
【0043】
〔実施例4〜12〕
無機層状化合物、樹脂、基材、無機層状化合物と樹脂の比をそれぞれ第2表に示した構成で、製膜してなるフィルムの酸素透過度を測定した。製膜方法は、実施例1の方法で塗工液(A液、B液濃度は各2wt%)を作製し、グラビアコーター(テストコーターNCR3−230、CAG150、CR3;康井精機(株)製:マイクログラビア塗工法、塗工速度1〜3m/分、乾燥温度60℃(入口側ヒーター)100℃(出口側ヒーター))により、基材に塗布、製膜した。結果は第2表のとおり優れたガスバリア性を示した。
【0044】
〔比較例7〜13、比較例15〕
無機層状化合物、樹脂、基材、無機層状化合物と樹脂の比をそれぞれ第3表に示した構成で、実施例4〜12と同様にして製膜してなるフィルムまたは基材単独の酸素透過度を測定した。結果は第3表のとおりガスバリア性の劣ったものであった。
〔比較例14〕
B液の樹脂をヒドロキシエチルセルロース((株)和光純薬製)とした以外は実施例1と同様にしてガスバリア性フィルムを得、酸素透過度試験を行った。結果は第3表に示したとおりであった。
【0045】
【表1】
Figure 0003817274
【0046】
【表2】
Figure 0003817274
【0047】
【表3】
Figure 0003817274
【0048】
基材
(1)TAC76:トリアセチルセルロース(商品名フジタッククリア: 富士写真フィルム製)表面ケン化品、膜厚76μm。
(2)OPS25:2軸延伸ポリスチレン(商品名スタイロフィルム(TH)CO: 旭化成 製)片面コロナ処理品、膜厚25μm。
(3)OPET25:2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(商品名ルミラー:東レ 製)片面コロナ処理品、膜厚25μm。
(4)OPET12:2軸延伸ポリエチレンテレフタレート(商品名ルミラー:東レ 製)片面コロナ処理品、膜厚12μm。
(5)ONy15:2軸延伸ナイロン(商品名エンブレムON:ユニチカ 製)片面コロナ処理品、膜厚15μm。
(6)OPP20:2軸延伸ポリプロピレン(商品名パイレンフィルム−OT:東洋紡 製)片面コロナ処理品、膜厚20μm。
【0049】
樹脂
(1)PVA210:ポリビニルアルコール(商品名ポバール210:クラレ製)ケン化度88.5モル%、重合度1000。
(2)HEC:ヒドロキシエチルセルロース( 和光純薬製)
(3)PVA117H:ポリビニルアルコール(商品名ポバール117H:クラレ製)ケン化度99.6モル%、重合度1700。
(4)PVA110:ポリビニルアルコール(商品名ポバール110:クラレ製)ケン化度98.5%、重合度1000。
(5)PVA103:ポリビニルアルコール(商品名ポバール103:クラレ製)ケン化度98.5%、重合度300。
(6)PVA124:ポリビニルアルコール(商品名ポバール124:クラレ製)ケン化度98.5%、重合度2400。
【0050】
無機層状化合物
(1)NaTs:合成テトラシリリックフッ化マイカ(商品名NaTs:トピー工業 製)粒径977nm、a値0.9557nm、アスペクト比1043。
(2)ラポナイト:合成ヘクトライト(商品名ラポナイト XLG:日本シリカ工業 製)粒径35nm、a値約1nm(回折ピークブロード)、アスペクト比約35。
(3)クニピアF:高純度モンモリロナイト(商品名クニピアF:クニミネ工業 製)粒径560nm、a値1.2156nm、アスペクト比461。
(4)スメクトンSA:合成サポナイト(商品名スメクトンSA:クニミネ工業 製)粒径108nm、a値約1nm(回折ピークブロード)、アスペクト比約108。

Claims (1)

  1. 膨潤性を有する粘土鉱物とけん化の割合が85モル%以上のポリビニルアルコールを含むガスバリア性樹脂組成物からなる層と、基材とが積層されてなる積層ガスバリア材であって、前記ガスバリア性樹脂組成物からなる層が、膨潤性を有する粘土鉱物を溶媒に膨潤・へき開させた分散液であって、該分散液中の粘土鉱物の粒径が5μm以下、アスペクト比が200以上3000以下である分散液と、前記ポリビニルアルコールの溶液とを混合した、(粘土鉱物/ポリビニルアルコール)の体積比が(5/95)〜(50/50)の範囲である塗工液を、基材表面に塗布、乾燥して得られるガスバリア性樹脂組成物からなる層であり、かつ、該ガスバリア性樹脂組成物からなる層における粘土鉱物の面間隔dと単位厚みaとが、(d−a)>(前記ポリビニルアルコールの1本鎖の幅)を満たす層であって、該積層ガスバリア材における前記ガスバリア性樹脂組成物からなる層の厚さ1μm当りの31℃、61%RH下での酸素透過度が0.2cc/m2・day・atm以下であることを特徴とする積層ガスバリア材
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