JP4512321B2 - 膨潤性合成フッ素雲母系鉱物及びこれを用いたガスバリア性積層体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物、並びにこれを用いた、ガスバリア性組成物及びガスバリア性積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
膨潤性合成フッ素雲母系化合物を含む層状ケイ酸塩の使用用途の例として、ガスバリア性フィルムがあげられる。このガスバリア性フィルムは、食品や薬品の包装分野において、酸素ガスバリア性等のガスバリア性に優れている包装材料であり、内容物の品質劣化を防ぐ目的で使用されている。このようなガスバリア性フィルムとしては、種々なものが考案されている。その中でも、層状ケイ酸塩と水溶性高分子とを混合し、熱可塑性樹脂フィルムに塗工したガスバリア性積層体が開示されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、5μm以下の無機層状化合物を水に十分膨潤させた状態で、高水素結合性樹脂あるいはその水溶液に添加する方法などが開示されている。
【0004】
さらに、特許文献2には、層状ケイ酸塩をナイロン6樹脂中に分子レベルで均一に分散し、ガスバリア性を向上させる方法が開示されている。しかし、この方法では、層状ケイ酸塩に含まれる合成時の原料や副生物などの粗大粒子をジェットミルで微粉砕し、さらにふるいによる分級を行って所定の粒子を得ている。
【0005】
【特許文献1】
特開平6−93133号公報
【特許文献2】
特開平11−228817号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特許文献1においては、市販の層状ケイ酸塩をそのまま使用しているが、一般に酸化ケイ素などの不純物を少量含むことが多く、結果として得られるフィルムのヘイズ、平滑性、高湿度下でのガスバリア性が必ずしも十分でない。
【0007】
また、特許文献2においては、乾式での方法のため、不純分の分離が十分ではない。さらにポリアミド系樹脂中へ分散させているので、最終的に得られる積層体のヘイズ、高湿度下でのガスバリア性が必ずしも十分でない。
【0008】
上記のいずれの場合も、上記不純物を除去すると、結果として得られるフィルムのヘイズ、平滑性、高湿度下でのガスバリア性を向上することが考えられる。上記不純物を除去する方法としては、遠心分離機を用いて遠心分離をし、上記不純物を固形分として分離して除去する方法が考えられる。この遠心分離機の種類としては、デカンタ型遠心分離機、バスケット型遠心分離機、円筒型遠心分離機等があげられる。
【0009】
上記デカンタ型遠心分離機は、水平軸の周りに回転する外筒と、この外筒とわずかの速度差で同一方法に回転するスクリューコンベアからなる。そして、処理液は、上記スクリューコンベアの中空軸から供給され、外筒の回転による遠心力により、固形分は壁面に堆積する。堆積した固形分は、スクリューコンベアによって、装置の一端に搬送され排出される。一方、上澄み液は、装置の他端に搬送され、排出される。固形分は、スクリューコンベアによって搬送されるので、圧縮性を持った固形分の分離に適している。
【0010】
しかし、このデカンタ型遠心分離機の遠心力は、1000〜4000G程度であり、不純物の沈降速度が遅く、完全に壁面へ沈降する前にスクリューコンベアによって撹拌され、再度分散してしまう。また、不純物の一部は、壁面に沈降するが、遠心力が高くないため十分に圧縮されない。このため、不純物は、スラリー状でスクリューコンベアで搬送することができず、装置内に溜まっていく。溜まった不純物は、スクリューコンベアによって再び撹拌される。これらの結果、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物分散液中に含まれている不純物をデカンタ型遠心分離機で十分に除去することができない。
【0011】
また、上記バスケット型遠心分離機は、回転バスケット中に処理液を供給し、そこで得られる遠心力を用いて壁面に固形分を分離させる装置である。
【0012】
しかし、このバスケット型遠心分離機の遠心力は、1000〜2500G程度であるので、上記の不純物の沈降速度が遅く、十分に不純物を取り除くためには、処理速度を下げて処理しなければならず、経済的に非常に不利である。また、処理速度を上げると、処理後の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、未だ不純物をかなり含んだものとなり、不純物を除去することによる効果を十分に得られない場合が多い。
【0013】
さらに、上記円筒型遠心分離機は、直径5〜15cm、長さ100cm以下の円筒を10000〜20000rpmで高速回転させる装置であり、上記の2種の遠心分離機と異なり、十分な遠心力を得ることができる。この円筒型遠心分離機の分離機構は、まず、処理液が円筒下端部から供給され、回転する円筒内を通過する。このとき、遠心力によって、固形分は、円筒内壁に堆積し、上澄みは、円筒上端部から排出される。また、固形分の排出機構はないので、適当な間隔で遠心機を止め、円筒内から固形分を取り出す必要がある。
【0014】
しかし、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物中の不純物の含有量は、数体積%〜数十体積%であるため、堆積する不純分がすぐ、円筒内に満たされてしまい、頻繁に遠心機を止める必要が生じる。また、堆積する不純物が円筒内にすぐ満たされてしまうので、新たに加えた処理液の遠心分離処理が十分に行われず、不純物を含有したまま、円筒上端部から排出されてしまうことが生じやすい。
【0015】
そこで、この発明は、ヘイズ、平滑性、及び高湿度下でのガスバリア性に優れたガスバリア性積層体、及びこのガスバリア性積層体に使用可能な膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
この発明は、遠心分離によって遠心分離部の内壁に分離された不純物を、間欠的に上記遠心分離部外に排出する機構を有する遠心分離機を用いて遠心分離処理された、粉末X線回折から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20を満たす膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いることにより、上記の課題を解決したのである。
【0017】
特定の遠心分離法で処理するので、不純物が極めて少ない膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。そして、この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いることにより、ヘイズ、平滑性、及び高湿度下でのガスバリア性に優れたガスバリア性積層体を得ることができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下において、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかる膨潤性合成フッ素雲母系鉱物(以下、「精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物」と称する。)は、後述する不純物を含んだ膨潤性合成フッ素雲母系鉱物(以下、「処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物」と称する。)を、特定の機能を有した遠心分離機を用いて遠心分離処理し、精製することにより得られる鉱物である。
【0019】
上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の主成分である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とは、下記の式(1)を満たす人工鉱物であり、SiO4正四面体を基本にして、この四面体が六角網目の板状に連なっており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオンがイオン結合し、サンドイッチ層を形成している。このサンドイッチ層とサンドイッチ層の間に層間イオンと呼ばれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンが非常に弱いイオン結合で配位している構造を有する。
X0.33〜1.0Y2〜3Z4O10F2 (1)
なお、ここで、Xは配位数12の陽イオン、Yは配位数6の陽イオン、Zは配位数4の陽イオンを表す。具体的には、Xは、Na+、K+、Ca2+、Ba2+、Rb2+、Sr2+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、また、Yは、Mg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Al3+、Fe3+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、さらに、Zは、Si4+、Ge4+、Al3+、Fe3+、B3+から選ばれる1種または2種以上の陽イオンである。
【0020】
また、一般式(1)のZに入るSiの数により、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物には、二ケイ素型(ジシリシックタイプ)、三ケイ素型(トリシリシックタイプ)、四ケイ素タイプ(テトラシリシック)の各タイプが存在する。これらの中でも、四ケイ素タイプであり、上記X、すなわち、層間イオン種がNa+或いはLi+であり、結晶構造中において電荷のバランスを層間イオンが補っている四ケイ素雲母は、膨潤性を有しており、特に好ましい。
【0021】
この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例としては、ナトリウムテトラシリシックマイカ[NaMg2.5(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムテニオライト[(NaまたはLi)Mg2Li(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムヘクトライト[(NaまたはLi)0.33Mg2.67Li0.33(Si4O10)F2]などが挙げられ、これらの中でも、ナトリウムテトラシリシックマイカ、ナトリウム又はリチウムヘクトライトがより好適に用いられる。これらは1種のみでも2種以上混合しても使用することができる。なお、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例についてのそれぞれの組成式については、理想的な組成を示しており、厳密に一致している必要はない。
【0022】
上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、原料として、目的とする膨潤性フッ素雲母の化学組成となるように、シリカ、マグネシア、フッ化マグネシウム、ケイフッ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウム等を調合し、これを内燃式電気炉中、1400〜1500℃で溶融後、溶融体を鋳型に流出させて冷却する過程で、鋳型内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法といわれる公知の方法によって合成することができる。
【0023】
また、他の合成方法として、特開平2−149415号公報に開示されているような、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして、上記処理前の膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法をあげることができる。この方法では、タルクにケイフッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃で短時間加熱処理することによって上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が得られる。
【0024】
上記の溶融法によって上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とはいえない副生成物(以下、単に「副生成物」と称する。)や未反応原料等が混在する。また、この溶融法での製造時には、結晶自体は大きく良好なものが得られるが、上記副生成物として、主にクリストバライト等が混在する。
【0025】
上記のインターカレーション法によって上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、溶融法に比べて、副生成物や未反応原料等の不純物が少なく比較的純度の高いものが得られるものの、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物に類縁する副生物(以下、単に「副生物」と称する。)が混在する。この副生物の例としては、膨潤性に乏しい相からなる合成フッ素雲母系鉱物があげられる。
【0026】
したがって、一般的に市販の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、上記の合成法で製造されたものが大半であるので、上記の副生成物や副生物(以下、併せて「不純物」と称する。)を含有する。このため、上記市販の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物に該当する。そして、この不純物は、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物中に、数体積%〜数十体積%含有する。
【0027】
この処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物に、後述する水溶性高分子を混合して、後述する熱可塑性樹脂フィルムに塗工すると、得られる積層体は、ヘイズが大きくなって、十分な透明性が得られにくくなり、かつ、平滑性やガスバリア性、特に高湿度下におけるガスバリア性が十分でない傾向がある。
【0028】
上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物から上記不純物を取り除く方法として、上記の特定の遠心分離機を用いて遠心分離する方法があげられる。
この遠心分離機としては、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散した分散液を、回転して遠心力を付与する遠心分離部に連続的又は断続的に供給したとき、遠心分離によって上記遠心分離部の内壁に分離された不純物を、間欠的に上記遠心分離部外に排出する機構を有する遠心分離機があげられる。
【0029】
このような遠心分離機としては、ディスク型遠心分離機(デラバル型遠心分離機又は分離板型遠心分離機ともいう。)を例としてあげることができる。このディスク型遠心分離機の機構を図1を用いて説明する。
【0030】
上記ディスク型遠心分離機は、遠心分離操作が行われる遠心分離部11、この遠心分離部11の内部に設けられる、円錐状の分離板が間隔1mm以内の間隔で数十枚〜数百枚程度積み重ねられた、回転自在の分離板群14、この分離板群14の回転中心部である円錐頂点部を通る軸部分を貫通して、遠心分離対象溶液をこの分離板群14に供給するインレットパイプ12、及び上記遠心分離部11を回転させるモータ(図示せず)の駆動力を伝達するスピンドル13等を有する。
【0031】
上記遠心分離部11を高速回転させながら、インレットパイプ12から上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散した分散液を導入すると、上記分散液は、上記分離板群14の各分離板間を通過する。このとき、各分離板間を通る上記分散液は、遠心力を受け、上記不純物を含む濃厚液と、主成分である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有する上澄み液に分離され、この不純物を含む濃厚液は、スラッジスペース15に集まる。また、上記上澄み液は、上記遠心分離部11の上部に設けられた上部回収部16に集められ、ポンプによって系外に送られ、回収される。なお、上記スラッジスペース15とは、上記遠心分離部11の内壁のうち、上記分離板群14の回転軸から最も遠い部分をいう。上記遠心分離部11の内壁の形状は、このスラッジスペース15とする部分を、上記分離板群14の回転軸から最も遠い位置に設け、ここから、上記遠心分離部11の上端部及び下端部に向けて、上記分離板群14の回転軸に向って、直線状又は緩やかな曲線状とすると、上記遠心分離部11の内壁に衝突した上記濃厚液が、上記スラッジスペース15に集まりやすくなり、好ましい。
【0032】
そして、上記スラッジスペース15には、固形物排出口17が設けられており、所定間隔ごとに自動又は手動でこの固形物排出口17を開放することにより、上記不純物を含む濃厚液を排出することができる。
【0033】
上記分離板群14は、上記したように多数の分離板を有するので、分離沈降面積としては、非常に大きな面積を有することとなる。また、分離板間が1mm以内の間隔であることから、沈降距離が非常に短くなる。
【0034】
上記遠心分離機を用いて遠心処理を行う場合、上記遠心分離部11が回転することで得られる遠心力は、5000〜50000Gが好ましく、7000〜30000Gがより好ましい。5000Gより小さいと、上記不純物を十分に除去できない場合が生じる。一方、50000Gより大きくてもよいが、装置的に、このような遠心力を得られるディスク型遠心分離機の入手が困難である。
【0035】
また、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散した分散液中の処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の分散濃度は、0.5〜15重量%が好ましく、2〜10重量%がより好ましく、3〜8重量%がさらに好ましい。0.5重量%より少ない場合は、生産性が低い傾向がある。一方、15重量%より多いと、上記濃厚液の排出間隔が非常に短くなり、時間当たりの処理量が大幅に減ってしまい、返って生産効率が悪化する傾向がある。
【0036】
上記の遠心分離機を用いた遠心分離処理を行う回数は、1回に限定されるものではなく、必要に応じて、2回以上の複数回行うことができる。
また、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散した分散液に使用される分散媒としては、イオン交換水や蒸留水等があげられる。
【0037】
上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散した分散液を遠心分離処理にかける前に、必要に応じて、ガスバリア性、透明性、平滑性等の物性を損なわない範囲で、分散剤等を少量添加してもよい。この場合、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を上記分散媒に分散させて分散液を調整し、ここに分散剤を添加して分散処理をすることができる。
【0038】
上記分散剤の種類としては、高分子型、界面活性型、無機型等のものがあげられるが、中でも、高分子型、特に、ポリカルボン酸型高分子を用いるのがより好ましい。このポリカルボン酸型高分子を用いることにより、遠心分離処理時の収率がよく、さらに、最終的に得られる積層体の高湿度下でのガスバリア性、ヘイズ、及び平滑性がいずれも良好となる。
【0039】
上記ポリカルボン酸型高分子としては、重量平均分子量が1000〜1000000のポリカルボン酸のナトリウム塩やアンモニウム塩等があげられる。
【0040】
なお、上記処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を機械的な粉砕処理にかけると、上記の遠心分離処理を行っても、上記不純物の遠心分離除去が困難となりやすく、最終的に積層体を得ても、ガスバリア性やヘイズ等の劣化が生じやすい。
【0041】
上記の遠心分離機による遠心分処理によって得られる精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、これをイオン交換水に分散濃度0.5重量%に均一に分散させたとき、この分散液の光透過度が下記の式(2)を満たすのが好ましい。
(I/I0)×100≧30 (2)
上記式において、I0は、入射光(660nm)の強度を示し、Iは、透過光の強度を示す。なお、この光透過度の測定は、各種の光度計を用いて測定することができ、その測定時の光路長は1cmである。
【0042】
また、上記式(2)の左辺の値は、30以上が好ましく、40以上がより好ましい。上記式(2)の左辺の値が30より小さいと、その膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有するガスバリア性フィルムは、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。さらに、上記式(2)の左辺の値の上限は、100である。理論的にI≦I0なので、上記式(2)の左辺の値は、100を超えることは生じない。
【0043】
上記の遠心分離機による遠心分処理によって得られる精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物に含まれる上記不純物の存在は、X線回折分析により得られる回折ピークで確認することができる。すなわち、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)については、面間隔dがほぼ9.6Å(9.4〜9.8Å)のピークで確認することができる。また、クリストバライトについては、面間隔dがほぼ4.0Å(3.9〜4.1Å)のピークで確認することができる。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物については、面間隔dがほぼ12.4Å(12.1〜12.6Å)のピークで確認することができる。いずれも、ピークトップの強度を評価する。測定は、120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて行われる。なお、サンプルの粒度は、100メッシュのふるいを通過するものに揃えた。
【0044】
(1)粉末X線回折分析条件
装置:理学電機(株)製RINT2000シリーズ、X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)
カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、走査軸:2θ/θ
【0045】
(2)ピーク強度Iの算出条件
平滑化(点数9)、バックグラウンド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1 0.5)
【0046】
具体的には上記粉末X線回折分析において、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)を示す面間隔dがほぼ9.6Åの回折ピーク強度を[Id=9.6 Å]、クリストバライトを示す面間隔dがほぼ4.0Åの回折ピーク強度を[Id=4.0 Å]、及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を示す面間隔dがほぼ12.4Åの回折ピーク強度を[Id=12.4 Å]としたとき、各回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20を満たすのがよく、さらに[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]=0、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦10であるのが好ましい。
【0047】
[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100>2である場合や、[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100>20である場合は、ガスバリア性が不十分となる場合があったり、コーティング層の強度、透明性、平滑性が低下する。
【0048】
上記の遠心分離機による遠心分処理によって得られる精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含む組成物は、ガスバリア性組成物として使用される。
【0049】
上記ガスバリア性組成物としては、上記精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物、水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物を含有した組成物▲1▼と、上記精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物と水溶性高分子とを水系溶媒に溶解及び懸濁することにより得られる組成物▲2▼があげられる。
【0050】
上記組成物▲1▼に含まれる水溶性高分子と、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物とは、重縮合するので、有機物と無機物とが複合した緻密な構造体ができ、この構造体の隙間に、所定の精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が埋め込まれ、非常に緻密な膜が得られる。さらに、所定の回折ピークの相対強度を有する精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いるので、膜状としたとき、高湿度条件下で十分なガスバリア性等を発現する。
【0051】
上記組成物▲1▼に含有される水溶性高分子とは、水溶性を有する高分子物質をいい、官能基として、水酸基、アミノ基、酸アミド基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を有するものがあげられる。この水溶性高分子の例としては、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド等や、これらの共重合体、変性体等の誘導体があげられる。
【0052】
上記変性ポリビニルアルコールとしては、疎水基を含んだ変性ポリビニルアルコール、例えば、α−オレフィン単位やシリル基を含有するポリビニルアルコールの変性体等があげられる。
【0053】
これらの中でも、ポリアクリルアミドが好ましい。ポリアクリルアミドを用いることにより、得られる組成物▲1▼からなる層と後述する基材との密着性が向上し、より良好な性能が得られる。これらは、少なくとも1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0054】
上記水溶性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、500〜1500万が好ましく、5000〜1000万がより好ましい。500より小さいと、最終的に得られる組成物のガスバリア性が悪くなる傾向がある。一方、1500万より大きいと、水溶液とした場合の粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0055】
上記金属アルコキシドは、下記の化学式(1)であらわされる化合物をいう。
M(OR)n (1)
上記式(1)において、Mは、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム等から選ばれる少なくとも一種の金属元素を示し、Rは、炭素数1〜8の低級アルキル基を示し、nは1〜4の整数を示す。
【0056】
上記金属アルコキシドは、その加水分解物及び/又はその縮合物を使用するので、触媒の作用で加水分解及び縮合するものであれば特に限定されない。この金属アルコキシドの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン等のチタンアルコキシド化合物、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド化合物、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド化合物等があげられる。これらの中でも、アルコキシシラン化合物が最も好適である。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0057】
上記金属アルコキシドの使用量は、特に限定されないが、上記水溶性高分子100重量部に対して、50〜5000重量部がよく、100〜4000重量部が好ましい。50重量部より少ないと、十分なガスバリア性や耐熱水性が発現しにくくなる傾向にある。また、5000重量部より多いと、得られるガスバリア性組成物からなるコート層の脆性が増し、性能も悪くなる傾向にある。
【0058】
上記組成物▲1▼に含まれる水溶性高分子と精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物との混合割合は、特に限定されないが、重量比で、水溶性高分子/精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物=99.5/0.5〜20/80がよく、99/1〜30/70が好ましい。精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が0.5重量%より少ないと、高湿度下でのガスバリア性や水蒸気バリア性が不十分となる場合がある。一方、80重量%より大きくなると、透明性や基材との密着性が悪くなったり、上記組成物▲1▼がゲル化しやすくなる傾向がある。
【0059】
上記金属アルコキシドの加水分解反応や縮合反応を行うためには、水、加水分解反応や縮合反応を行う触媒、及び有機溶媒が用いられる。さらに、得られるガスバリア性組成物からなる層の耐熱水性をさらに向上させたり、膜強度及び基材との密着性を向上させる目的で、架橋剤を添加することができる。さらにまた、上記の水溶性高分子と金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との結合性をより向上させるため、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物を添加してもよい。
【0060】
上記金属アルコキシドの加水分解反応及びその縮合反応、又はそれらの反応生成物と上記水溶性高分子との重縮合反応は、酸性条件、塩基性条件のいずれの条件下においても促進される。酸性条件下における触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸があげられる。また、塩基性条件下における触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基、アンモニア、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等の有機塩基があげられる。これらの中でも、酸性条件が好ましく、塩酸が特に好ましい。さらに、これらの触媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。さらにまた、触媒は、加水分解反応を目的とする触媒と、重縮合反応を目的にする触媒とに分けて用いてもよい。
【0061】
上記の触媒の添加量は、特に限定されず、溶液がゲル化しない範囲内で、任意の量を添加することができる。
【0062】
上記有機溶媒は、上記の金属アルコキシドを溶解させ、さらに、上記水溶性高分子の水溶液と相溶するものであれば特に限定はされないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールが好ましい。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
上記有機溶媒の添加量は、特に限定されないが、金属アルコキシド100重量部に対し、2〜500重量部がよく、10〜300重量部が好ましい。2重量部より少ないと、金属アルコキシドが十分に溶解せず、加水分解反応が抑制される。一方、500重量部より多いと、水溶性高分子の溶解性が低下する傾向がある。
【0064】
上記架橋剤とは、上記組成物▲1▼中の他の成分と架橋反応しうるものであれば、特に制限されない。上記架橋剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物等があげられる。これらの中でも、特に性能の向上に効果があるのは、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物である。
【0065】
上記カルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミド化合物、ポリウレタンの技術分野において公知のジイソシアネート化合物の脱炭酸反応によって得られるポリカルボジイミド化合物等があげられる。上記のポリウレタンの技術分野において公知のジイソシアネート化合物としては、メチレンジフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンー1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネン・ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等があげられる。この中でも、特に親水性のカルボジイミド化合物が好適であり、具体例としては、日清紡(株)製:商品名 カルボジライト等があげられる。
【0066】
上記エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロジレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル等のトリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のテトラグリシジルエーテル類などがあげられる。
【0067】
上記イソシアネート化合物の具体例としては、ブロック化イソシアネート化合物(例えば第一工業製薬(株)製、商品名 エラストロン、エラストロンBNシリーズ)、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロへキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0068】
上記アルデヒド化合物の具体例としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサンジアール、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘキサンジアール、5−メチルヘプタンジアール、4−メチルオクタンジアール、2,5−ジメチルオクタンジアール、3,6−ジメチルデカンジアール、オルトフタルアルデヒド等があげられる。
【0069】
上記の架橋剤を添加する場合には、その添加量は特に限定されないが、水溶性高分子内の反応性基1モルに対して、0.1×10-3〜1モルがよく、0.5×10-3〜0.5モルが好ましい。0.1×10-3モルより少ないと得られるガスバリア性組成物からなる層の性能の向上に特に効果はない。一方、1モルより多いと、溶液がゲル化したり、得られるガスバリア性フィルムの性能が低下する傾向がある。
【0070】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物とは、一分子中に有機官能基及び加水分解基を有し、通常では結合しにくい有機質と無機質とを結合させるバインダーとして作用するものをいう。
【0071】
上記有機官能基としては、ビニル基、アミノ基、ハロゲン基、エポキシ基、メタクリロイル基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、アルデヒド基、イソシアネート基、スルホン酸基、リン酸基等があげられる。これらは、1種の官能基のみを有してもよく、2種以上の官能基を有してもよい。
【0072】
上記加水分解基とは、無機質と化学結合できる官能基をいい、低級アルコキシル基をいう。具体的には、メトキシ基、エトキシ基等があげられる。これは、1種のみでもよく、2種以上を有していてもよい。
【0073】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等があげられる。これらの中でも、エポキシ系の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等がより好ましい。
【0074】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物を添加する場合には、その添加量は、特に限定されないが、金属アルコキシド100重量部に対し、0.001〜100重量部がよく、0.01〜25重量部が好ましい。上記範囲外の添加量だと、得られるガスバリア性フィルムの性能が低下する傾向がある。
【0075】
上記ガスバリア性組成物には、最終的に得られるガスバリア性フィルムの性能を低下させない範囲で、分散剤、可塑剤等の各種添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0076】
次に、この発明にかかるガスバリア性組成物の製造方法について説明する。上記の水溶性高分子、金属アルコキシド又はその加水分解物及び/若しくはその縮合物、並びに膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を混合する。これらの混合順序は特に制限されないが、金属アルコキシドを直接加える場合は、まず、上記水溶性高分子の水溶液に有機溶媒及び触媒を添加し、次いで、金属アルコキシド及び、必要に応じて、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物を混合させ、溶液を完全に相溶させ、必要に応じて、さらにその他の各種添加剤を加えることが好ましい。
【0077】
また、上記精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を当初から含有させる場合は、上記の水溶性高分子の水溶液に混合させるのがよい。この際、両者の混合方法は、特に限定されないが、上記水溶性高分子の水溶液に直接、上記精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を添加してもよく、また、上記水溶性高分子の水溶液に、上記精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物をあらかじめ膨潤・へき開させた分散液を添加してもよい。
【0078】
上記精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を当初から含有させる場合は、上記の水溶性高分子と、上記精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とを複合させながら、上記水溶性高分子と、上記金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との重縮合反応を行うので、一液型の組成物▲1▼が得られる。
【0079】
この一液型の組成物▲1▼は、膜としたとき、非常に緻密な膜となる。さらに、所定の回折ピークの相対強度を有する精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いる。これらにより、高湿度条件下で十分なガスアリア性等を発現する。
【0080】
上記組成物▲2▼に使用される溶媒としては、イオン交換水又は蒸留水が好適に用いられる。またイオン交換水又は蒸留水を主な成分とし、メタノール、プロパノール、イソプロパノール等を添加されていてもよい。
【0081】
上記組成物▲2▼に用いられる上記水溶性高分子とは、上記組成物▲1▼に用いられる水溶性高分子と等しいものを使用することができる。
【0082】
これらの中でも、ポリビニルアルコール系重合体が好ましい。また、高湿度下でのガスバリア性をより向上させるためには、ケン化度が90モル%以上のポリビニルアルコール系重合体が好ましく、97モル%以上のポリビニルアルコール系重合体がより好ましい。
【0083】
また、上記ポリビニルアルコール系重合体を用いる場合は、重合度は、100〜5000が好ましく、200〜2000がより好ましい。100より小さいと、ガスバリア性が低下する傾向があり、5000より大きいと、塗工液の粘度が大きく、塗工が困難となり好ましくない。
【0084】
さらに、上記ポリビニルアルコール系重合体の中でも、分子中に疎水基を含有した変性ポリビニルアルコールが、高湿度下において高いガスバリア性が発現され好ましい。
【0085】
上記水溶性高分子及び精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の上記水系溶媒へ溶解及び懸濁させる合計固形分は、総固形分として0.5〜15重量%が好ましい。さらに、上記ガスバリア性組成物の粘度と後述する熱可塑性樹脂フィルムへの塗工適性、塗工厚み、ガスバリア性など考慮すると2〜10重量%が更に好ましい。0.5重量%より少ないと、フィルムへの塗工時に乾燥不十分となる場合がある。一方15重量%より多いと、塗工液の粘度が高くなりすぎる場合がある。
【0086】
上記組成物▲2▼に含まれる上記の水溶性高分子と精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物との添加割合は任意であるが、水溶性高分子/精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物(重量比)で99.5/0.5〜20/80がよく、99/1〜30/70が好ましい。精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が0.5重量%より少ないと、ガスバリア性が十分でなく、80重量%より多いとコーティング膜の強度が弱くなる場合がある。
【0087】
上記組成物▲2▼に含まれる上記の水溶性高分子と精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の混合方法はどのような手順で調製しても良い。即ち、▲1▼精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を水系溶媒に分散させた後、水溶性高分子を固体のまま添加して溶解させる。▲2▼水溶性高分子を水系溶媒に溶解させたあと、精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を添加する。▲3▼精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物分散液と水溶性高分子水溶液とを混合する。このうちどの手順によって混合しても良い。
【0088】
上記組成物▲2▼には、必要に応じて、架橋剤を添加することができる。この架橋剤を添加することにより、耐熱水性を向上させることができる。上記架橋剤としては、上記組成物▲1▼に用いた架橋剤のほかに、チタンやジルコニウム、アルミニウム等の有機金属塩又は無機金属、ケイ素化合物等があげられる。
【0089】
上記チタン化合物の具体例としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルへキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、ポリチタンアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレート等があげられる。
【0090】
上記ジルコニウム化合物の具体例としてはジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムモノアセチルアセトネート、ジルコニウムビスアセチルアセトネート、ジルコニウムモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムトリブトキシステアレート等の有機ジルコニウム化合物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウム、臭化ジルコニウムなどのハロゲン化ジルコニウム、硫酸ジルコニウム、塩基性硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウムなどの鉱酸ジルコニウム塩、炭酸ジルコニウムアンモニウム、硫酸ジルコニウムナトリウム、酢酸ジルコニウムアンモニウム、シュウ酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムナトリウム、クエン酸ジルコニウムアンモニウムなどのジルコニウム錯塩があげられる。
【0091】
上記アルミニウム化合物の例としては、アルミニウムトリエトキシド、アルミニウムトリイソプロピレート、アルミニウムトリブチレート、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウム有機キレート等があげられる。
【0092】
上記ケイ素化合物の例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロピルシリケート、テトラノルマルブチルシリケート、ブチルシリケートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)シリケート、テトラメチルシリケート、ケイ素アセチルアセトネート、ケイ素エチルアセトアセテート、ケイ素オクタンジオレート、ケイ素ラクテート、ケイ素トリエタノールアミネート、ポリヒドロキシケイ素ステアレート、ケイ素ノルマルプロピレート、ケイ素モノアセチルアセトネート、ケイ素ビスアセチルアセトネート、ケイ素モノエチルアセトアセテート、ケイ素ビスエチルアセトネート、ケイ素アセテート、ケイ素トリブトキシステアレート等があげられる。
【0093】
上記架橋剤の添加量は、特に限定されないが、この架橋剤を添加しすぎるとガスバリア性が低下してしまうので低下しない範囲で添加することができる。架橋剤の添加量は架橋される官能基(水酸基など)に対して、モル比で1/1000〜1/2の範囲で添加するのがよく、1/500〜1/10の範囲で添加するのがより好ましい。添加量が1/1000より少ないと得られるフィルムに十分な耐熱水性を付与できず、一方1/2より多いと得られるフィルムのガスバリア性が低くなる傾向がある。
【0094】
上記組成物▲1▼及び▲2▼には、ガスバリア性、透明性及び平滑性等を損なわない範囲であれば、必要に応じて、各種の添加剤を混合してもよい。各種の添加剤としては、分散剤、消泡剤、酸化防止剤、耐候剤、滑剤、紫外線吸収剤、着色剤、可塑剤等があげられる。
【0095】
上記組成物▲1▼又は▲2▼を周知の方法で成形することにより、ガスバリア性フィルムを得ることができる。また、上記組成物▲1▼又は▲2▼を、基材の少なくとも片面に塗工することによって、ガスバリア性積層体を得ることができる。
【0096】
上記組成物▲1▼又は▲2▼を塗工する基材としては、熱可塑性樹脂フィルムがあげられ、この熱可塑性樹脂フィルムの具体例としては、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、またはそれらの混合物よりなるフィルム、またはそれらのフィルムの積層体があげられる。この熱可塑性樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、また、延伸フィルムであってもよい。
【0097】
また、上記熱可塑性樹脂フィルムの表面には、接着性を向上させるため、公知のコロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、アンカーコート剤塗布処理などを行ってもよい。特に、上記組成物▲1▼又は▲2▼から形成される塗工層と、上記熱可塑性樹脂フィルムとの間にアンカーコート層を形成されると、両層の接合性がより向上するので好ましい。
【0098】
上記組成物▲1▼又は▲2▼を熱可塑性樹脂フィルムに塗工する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常の塗工方法を採用することができる。なお、コーティングはフィルムの延伸前であっても延伸後であってもよい。
【0099】
上記組成物▲1▼又は▲2▼を熱可塑性樹脂フィルムに塗工することによって形成されるガスバリアコート層の乾燥は特に限定されないが、熱可塑性樹脂フィルムの融点及び軟化点以下の温度で行うことができる。上記ガスバリアコート層は、高温・長時間での熱処理を必要としないため、150℃以下、数秒の比較的低温・短時間での乾燥・熱処理で十分である。
【0100】
上記ガスバリアコート層の厚みは、特に限定されないが、乾燥状態で0.05〜5.0μmがよく、0.1〜4.μmが好ましく、0.2〜3.0μmがより好ましい。0.05μmより薄いと、ガスバリア性が十分でない場合がある。一方、5.0μmより厚いと、膜強度が弱くなる傾向にある。
【0101】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、高湿度下、具体的には23℃、90%RHでのガスバリア性が良好である。上記ガスバリアコート層1μmあたりの23℃、90%RHでの酸素透過度は、10cc/m2・day・atm以下がよく、8cc/m2・day・atm以下が好ましい。10cc/m2・day・atmより大きいと、ガスバリア性包装材料とした場合の実用性に欠ける。
【0102】
またこの発明にかかるガスバリア性積層体の透明性はヘイズ値で10%以下がよく、5%以下が好ましく、透明性が非常に高いものとなる。
さらにまたこの発明にかかるガスバリア性積層体の塗工面の平滑性はざらつき感が全くなく、平滑性に優れたものとなる。
透明性と平滑性に優れるため、塗工面への印刷加工や他のフィルムとのラミネート加工時には悪影響を示さない利点を有する。
【0103】
この発明にかかるガスバリア性積層体は、そのままガスバリア性フィルムとして使用することができ、また、このガスバリア性積層体を他のフィルム又はシートに積層して、ガスバリア性を有する多層体として使用することができる。
【0104】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明する。まず、使用原料、精製方法及び評価方法について下記に示す。
【0105】
[使用原料]
(水溶性高分子)
・変性ポリビニルアルコール…(株)クラレ製AQ−4105(以下、「AQ4105」と略する。)
・ポリアクリルアミド…東京化成工業(株)、10重量%水溶液(以下、「PAM」と略する。)
【0106】
(膨潤性合成フッ素雲母系鉱物)
・トピー工業(株)製:NTSゾル(固形分10重量%、平均粒径13.5μm)(以下、「NTS1」と略する。)
・NTS1の湿式粉砕物(固形分10重量%、平均粒径2.8μm)(以下、「NTS2」と略する。)
【0107】
・トピー工業(株)製:NHTゾル(固形分8重量%、平均粒径7.2μm)(以下、「NHT」と略する。)
・コープケミカル(株)製:ソマシフME−100(平均粒径6μm)(以下、「ME100」と略する。)
なお、上記樹脂や膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の溶媒、分散媒は、イオン交換水を用いた。
【0108】
(金属アルコキシド)
・テトラエトキシシラン…多摩化学工業(株)製:正ケイ酸エチル(以下、「TEOS」と略する。)
【0109】
(架橋剤)
・カルボジイミド化合物…日清紡(株)製:カルボジライト V−02−L2(有効成分40重量%、カルボジイミド等量385)(以下、「カルボジイミド」と略する。)
【0110】
(熱可塑性樹脂フィルム)
・二軸延伸ポリエステルフィルム…東洋紡積(株)製ポリエステルフィルムE5100(厚みは12μm、ヘイズは3.2%である。以下「PETフィルム」と略する。)
【0111】
[評価方法]
(相対強度)
理学電機(株)製RINT2000を用いて、粉末X線回折法により分析し、各ピークの強度から算出した。
サンプルについては120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて測定した。そして、下記の比を算出した。
・ピーク強度比A=[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100
・ピーク強度比B=[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100
【0112】
<測定条件>
X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)、カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、平滑化(点数9)、バックグランド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1=0.5)
【0113】
(光透過度)
無機層状化合物の分散濃度が0.5重量%となるように、イオン交換水中でホモジナイザーを用いて20分間撹拌し、分散させた。そして、光度計として、(株)島津製作所製:UV−2200を用いて、入射光660nm、光路長1cmの条件で測定をし、その値から下記式に従って、光透過度を算出した。
光透過度[%]=(I/I0)×100
I0:入射光の強度
I:透過光の強度
【0114】
(透明度)
日本電色工業(株)製NDH2000を用いて、JIS K7105に従い、ヘイズを測定した。
【0115】
(コート面の平滑性)
塗工用組成物の塗工面を指でなぞり、下記の基準で評価した。
○:ザラツキ感なし
×:ザラツキ感あり
【0116】
(フィルムのガスバリア性)
酸素透過試験器(Modern Contorol社製、OX−TRAN2/20)により、23℃、相対湿度90%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。
フィルムのガスバリア性は基材のフィルムの種類や厚み、およびコート層の厚みにより変化するため、下記の式に従って、ガスバリアコート層1μmあたりの酸素透過度(Psamp1e)(単位:cc・1μm/m2・day・atm)を算出した。
1/Ptotal=1/Psamp1e+1/Pbase
Ptotal;実施例及び比較例で得られた積層フィルムの測定結果(酸素透過度)
Pbase;基材フィルムの酸素透過度
Psamp1e;ガスバリアコート層の酸素透過度
【0117】
(実施例1)
アルファ・ラバル(株)製ディスク型遠心分離機BTPX205(遠心分離部(ボウル)容量3.1リットル、スラッジスペース1リットル)に、5重量%のNTS1分散液を流量200リットル/hrで1時間流した。固形分排出間隔を70秒とし、不純物を間欠的に排出した。得られた上澄み液を精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物分散液とした。得られた精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物のピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。
次いで、得られた上澄み液中に含まれる精製NTSとAQ4105水溶液を固形分比で3:7(重量比)となるように混合し、総固形分が5重量%となるように調製した。得られた液をメイヤーバーを用いて膜厚0.5μmとなるように、PETフィルムに塗工した。乾燥は、100℃、1分間で行った。得られた積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0118】
(実施例2)
無機層状化合物として、NHTの8重量%分散液を用いた以外は、実施例1と同様にして、上澄み液を得た。得られた精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物のピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。
次いで、得られた上澄み液を用いて、実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0119】
(実施例3)
上記ディスク型遠心分離機BTPX205に、5重量%のNTS1分散液を流量200リットル/hrで1時間流した。固形分排出間隔を70秒とした。得られた上澄み液をもう一度、上記ディスク型遠心分離機BTPX205に、流量200リットル/hrで、固形分排出間隔120秒の条件で流した。得られた上澄み液を精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物分散液とした。得られた精製膨潤性合成フッ素雲母系鉱物のピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。
次いで、得られた上澄み液を用いて、実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0120】
(比較例1)
巴工業(株)製円筒型遠心分離機ASM−100(容量2.6リットル)に、5重量%のNTS1分散液を流量100リットル/hrで15分間通した。15分後、分離機内に固形分が堆積し、原液がそのまま流出してきた。得られた流出液中の鉱物のピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。
次いで、得られた流出液を用いて、実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0121】
(比較例2)
三菱化工機(株)製デカンタ型遠心分離機DS−10(容量1.2リットル)に、5重量%のNTS1分散液を流量40リットル/hrで通したが、固形分の脱水性が悪いため、固形分が排出されることなく、原液がほとんどそのまま流出した。得られた流出液中の鉱物のピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。
次いで、得られた流出液を用いて、実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0122】
(比較例3)
無機層状化合物として、NTS1を用い、遠心分離処理を行わず、ピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。
次いで、上記NTS1にAQ4105水溶液を混合し、固形分が3/7(重量比)、総固形分5重量%となるように調製した。得られた液を用いて実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0123】
(比較例4)
無機層状化合物として、NTS2を用い、遠心分離処理を行わず、ピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。
次いで、上記NTS2にAQ4105水溶液を混合し、固形分が3/7(重量比)、総固形分5重量%となるように調製した。得られた液を用いて実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0124】
(比較例5)
無機層状化合物として、ME100を用い、水浸漬処理を行ったもののピーク強度比及び光透過度を測定した。その結果を表1に示す。なお、水浸漬処理は、ME100を5重量%となるように、イオン交換水中にホモジナイザーを用いて20分間分散した後、一晩スターラー撹拌する処理である。
次いで、水浸漬処理を行った上記ME100分散液にAQ4105水溶液を混合し、固形分が3/7(重量比)、総固形分5重量%となるように調製した。得られた液を用いて実施例1と同様にして積層体を得た。この積層体を用いて上記の方法で評価した。その結果を表1に示す。
【0125】
【表1】
【0126】
(実施例4)
表2に記載の水溶性高分子の4重量%水溶液125g(固形分5g)を調製し、上記ディスク型遠心分離機BTPX205により精製した固形分1.68重量%の精製NTS1分散液125g(固形分2.1g)と混合させた。次いで、エタノール75gを添加した後、1N塩酸水溶液を適量添加してから、TEOS75g、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製:KBM−403)を7.5g加えた。次に、液が均一になった時点で、架橋剤としてカルボジイミドを0.5g添加して塗工液を得た。
得られた塗工液をPETフィルムにメイヤーバーを用いて膜厚0.5μmとなるように塗工した。乾燥は、100℃、1分間行った。その結果を表2に示す。
【0127】
(実施例5)
水溶性高分子としてPAMを用いた以外は、実施例4と同様にして、塗工液を得た。得られた塗工液をPETフィルムにメイヤーバーを用いて膜厚0.5μmとなるように塗工した。乾燥は、100℃、1分間行った。その結果を表2に示す。
【0128】
(比較例6)
遠心分離処理をしていないNTS1を用いた以外は、実施例4と同様にして、塗工液を得た。得られた塗工液をPETフィルムにメイヤーバーを用いて膜厚0.5μmとなるように塗工した。乾燥は、100℃、1分間行った。その結果を表2に示す。
【0129】
【表2】
【0130】
【発明の効果】
この発明にかかる膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、特定の遠心分離法で処理するので、不純物が極めて少ないものである。
【0131】
そして、この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いることにより、ヘイズ、平滑性、及び高湿度下でのガスバリア性に優れたガスバリア性積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ディスク型遠心分離機の機構の例を示す模式図
【符号の説明】
11 遠心分離部
12 インレットパイプ
13 スピンドル
14 分離板群
15 スラッジスペース
16 上部回収部
17 固形物排出口
Claims (7)
- 遠心分離によって遠心分離部の内壁に分離された不純物を、間欠的に上記遠心分離部外に排出する機構を有する遠心分離機を用いて、間欠的に排出しつつ遠心分離処理する工程を含む、粉末X線回折から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6Å]/[Id=12.4Å]×100≦2、かつ[Id=4.0Å]/[Id=12.4Å]×100≦20を満たす膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の製造方法。
- 上記遠心分離処理には、処理前の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の0.5〜15重量%分散液が用いられ、かつ、上記遠心分離処理における遠心力が5000〜50000Gである請求項1に記載の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法で得られる膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を用いるガスバリア性組成物の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法で得られる膨潤性合成フッ素雲母系鉱物と、水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物を用いるガスバリア性組成物の製造方法。
- 請求項1又は2に記載の製造方法で得られる膨潤性合成フッ素雲母系鉱物と水溶性高分子とを用いるガスバリア性組成物の製造方法。
- 請求項4又は5に記載の製造方法で得られたガスバリア性組成物を熱可塑性樹脂フィルムに塗工して、ヘイズが10%以下であるガスバリア性積層体を得るガスバリア性積層体の製造方法。
- 請求項6に記載の製造方法で得られたガスバリア性積層体を少なくとも用いたガスバリア性多層体の製造方法。
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