JP2018177634A - 無機ナノシート分散液およびその製造方法 - Google Patents

無機ナノシート分散液およびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】バリア性の良好な水蒸気ガスバリアフィルムを低温で得ることのできる無機ナノシート分散液及びその製造方法、並びにこの分散液を用いたガスバリアフィルムの製造方法及びガスバリアフィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシート(A)、アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン(B)、1気圧下における沸点が125℃以下の有機溶媒(C)、水(D)、及びアミン(E)を含有し、前記有機溶媒(C)と水(D)の合計量を100質量%としたときの水(D)の量が20質量%以下である無機ナノシート分散液。
【選択図】なし

Description

本発明は、無機ナノシート分散液およびその製造方法に関する。
電子デバイスの基板及び封止膜、梱包材、又は光学フィルム等の用途では、水蒸気の透過を抑制することが要求され、水蒸気バリアフィルムが用いられている。例えば特許文献1では、粘土などの層状無機化合物から得られる無機ナノシートをガスバリアシートに用いることが記載され、無機ナノシートの水分散液に、N,N−ジメチルホルムアミド又はアセトニトリルなどの有機溶媒及びアミンを加えた後、加熱して水を優先して除去してガスバリア用塗工液を得ることが開示されている。ここでは、水を有機溶媒で置換するために、水分散液を濃縮して有機溶媒を添加することや、脱水剤を添加することが示されている。
特開2011−230504号公報
しかし、特許文献1に記載の方法のうち、有機溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミドを用いる例では、N,N−ジメチルホルムアミドの沸点がおよそ153℃であるため、塗工液をPENフィルムに塗布後180℃もの高温で保持することによってガスバリアフィルムを得ているが、高温で処理することで基材フィルムの劣化が進行し、フィルムがゆがむという問題や、樹脂成分がオリゴマーとしてブリードアウトし、ガスバリアフィルム全体のヘーズが悪化するなど、適用できる基材フィルムが限定されるという問題がある。また有機溶媒としてアセトニトリルを用いた例では、アセトニトリルの沸点が約82℃であり、加熱した際にアセトニトリルが水よりも優先的に蒸発するため、分散液における水含有割合が多くなる。特許文献1ではアミンが無機ナノシートに吸着することで無機ナノシートの表面を疎水化して水蒸気バリア性を確保しており、分散液における水の含有割合が多い場合には、水と疎水性であるアミンとが、塗工膜内で別々にドメインを形成してしまう。その結果、塗工膜を更に加熱して水を除去したとしてもガスバリア膜内に欠陥を生じてしまい、ガスバリア性が高くならないという問題があった。
本発明は、バリア性の良好な水蒸気ガスバリアフィルムを低温で得ることのできる無機ナノシート分散液及びその製造方法、並びにこの分散液を用いたガスバリアフィルムの製造方法及びガスバリアフィルムを提供することを目的とする。更に、本発明の好ましい態様において、水蒸気ガスバリアフィルムの透明性を良好にすることを目的とする。
本発明者は前記の課題を解決するため鋭意検討した結果、以下のことを見出して本発明を完成させた。
すなわち本発明は、
平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシート(A)、
アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン(B)、
1気圧下における沸点が125℃以下の有機溶媒(C)、
水(D)、及び
アミン(E)
を含有し、前記有機溶媒(C)と水(D)の合計量を100質量%としたときの水(D)の量が20質量%以下である無機ナノシート分散液である。
本発明の無機ナノシート分散液において、(i)前記(A)の無機ナノシートが、スメクタイト族及び雲母族よりなる群から選択される層状無機化合物に由来するものであること;(ii)前記(B)が、アンモニウムイオン(NH4 +)であること;(iii)前記(C)の有機溶媒が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、及びジメチルアセタールよりなる群から選択される少なくとも1種であること;(iv)前記(E)のアミンがジアミンであること、の少なくともいずれかを満たすことが好ましい。
本発明は、上記のいずれかの分散液の製造方法であって、
アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオンを層間に有し、平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシートの水分散液と、1気圧下における沸点が125℃以下の第1の有機溶媒と、アミンと、任意に用いられる第2の有機溶媒とを混合し、
水を前記第1の有機溶媒及び/又は第2の有機溶媒と共沸除去する無機ナノシート分散液の製造方法も包含する。
上記無機ナノシート分散液の製造方法で製造された分散液を基材フィルムに塗布後、20℃〜120℃で乾燥することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法も本発明に含まれる。更に本発明は、このガスバリアフィルムの製造方法で製造されたガスバリアフィルムであって、水蒸気透過率が0.01g/m2・24時間未満であるガスバリアフィルムも包含する。
平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシート、アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン、及びアミンを含むガスバリア層が、ガラス転移点が50℃以上、125℃以下である樹脂基材の上に積層されたガスバリアフィルムであって、水蒸気透過率が0.01g/m2・24時間未満であるガスバリアフィルムも本発明に含まれる。
上記いずれのガスバリアフィルムについても、基材を含めたガスバリアフィルムの全光線透過率が85%以上であり、ヘーズが3.0%以下であることが好ましい。
本発明は、低沸点の有機溶媒に無機ナノシートが分散した液であり、従来よりも水含有割合が低く抑えられている。従って、この分散液を樹脂フィルムなどに塗布してガスバリアフィルムとする場合、有機溶媒の沸点が低いために塗布後に有機溶媒が速やかに揮発し、製膜にかかる時間を短縮でき、製造プロセスの高速化を図ることができる。また分散液の水の含有割合が低いため、有機溶媒が揮発する時に共沸するか、あるいは残留しても少量のため、ガスバリア層に欠陥を生じにくく、ガスバリア性の低下を抑えることができる。さらにガスバリアフィルムの乾燥温度を低くできることで、フィルム基材などの熱劣化を抑えることができ、またガスバリアフィルムのヘーズ悪化を抑えることも可能である。
本発明の分散液は、
平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシート(A)、
アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン(B)(以下、これらをまとめて「アンモニウムイオン等」と呼ぶ場合がある)、
1気圧下における沸点が125℃以下の有機溶媒(C)、
水(D)、及び アミン(E)を含有する無機ナノシート分散液であって、
特に沸点の低い有機溶媒(C)を含むと共に、分散液中の水の割合が低く抑えられている点に特徴を有している。以下、本発明について詳しく説明する。
無機ナノシート(A)
無機ナノシートとは、ナノオーダー又はサブナノオーダーの最小単位層(1層、1シート)を1つ又は複数有する無機微粒子を意味し、1つのシート(1つの層)から形成される単層構造の無機微粒子であってもよく、複数のシート(複数の層)から形成される積層構造の無機微粒子であってもよい。シート(層)の数は、例えば、30以下、好ましくは10以下である。シート(層)の数は、無機ナノシートの断面を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することで確認できる。
前記無機ナノシートは、例えば、粘土鉱物などの劈開(剥離)可能な層状無機化合物を劈開(剥離)することによって得られるものが挙げられる。粘土鉱物は、通常、Al−O八面体(AlO6)またはMg−O八面体(MgO6)の二次元的なつながり(八面体シートまたは八面体層)やSi−O四面体(SiO4)の二次元的なつながり(四面体シートまたは四面体層)を含む。こうした粘土鉱物としては、八面体シートと四面体シートの割合が1対1で構成される粘土(1:1型粘土)が挙げられ、例えばカオリナイト族がこれに該当する。また粘土鉱物としては、八面体シートが四面体シートに挟まれた構造を有する粘土(2:1型粘土)も挙げられ、パイロフィライト族、スメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族、脆雲母族、及び緑泥石族などがこれに含まれる。
前記粘土鉱物としては、スメクタイト族、バーミキュライト族、雲母族、脆雲母族、及び緑泥石族などが好ましく、有機溶媒中での劈開のしやすさという観点からスメクタイト族、バーミキュライト族、及び雲母族がより好ましく、合成のしやすさや透明性の高さの観点からスメクタイト族及び雲母族がよりさらに好ましい。スメクタイト族としては、モンモリロナイト、ヘクトライト、サポナイトなどが好ましく、ヘクトライトがより好ましい。
また前記層状無機化合物としては、フッ素化された粘土鉱物も好ましく、例えば、スメクタイト族としてはフッ素化スメクタイトが好ましく、雲母族としては、フッ素化雲母が好ましい。フッ素化物は、透明性が高く、合成が容易であるという利点を有する。
さらに層状無機化合物としては、劈開性が良好であり、透明性も高く、後述する平均アスペクト比が高いものがより好ましい。このような層状無機化合物には、フッ素化ヘクトライト、フッ素化雲母、膨潤性雲母などが含まれる。前記フッ素化ヘクトライト及びフッ素化雲母(例えば、NTS−5、トピー工業株式会社製)は、溶融法によって合成できる。また前記膨潤性雲母は、高純度タルクを珪フッ化ナトリウム又は珪フッ化リチウムとともに熱処理することによって調製できる。なお前記層状無機化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ところで前記層状無機化合物を形成する各シート(各層)の間には、通常、層間イオンが存在している。後述する製造方法において、(B)のアンモニウムイオン等で置換(イオン交換)されるため、原料層状無機化合物の層間イオンは特に規定されるものではないが、アルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオンが層間イオンであると、アンモニウムイオン等(B)とイオン交換が生じやすいため好ましい。層間イオンとしては、例えばリチウムイオン、またはナトリウムイオンが好ましい。
粘土鉱物などの前記層状無機化合物の陽イオン交換容量(C.E.C.)は、例えば、50meq/100g以上、200meq/100g以下が好ましく、100meq/100g以上、150meq/100g以下がさらに好ましい。陽イオン交換容量が50meq/100g以上であると、アミンを層間に十分に取り込むことができ、十分なガスバリア性を示すことができる。また陽イオン交換容量を200meq/100g以下とすることにより、ナノシートと層間カチオン間の静電的相互作用が適切な範囲となり、層状無機化合物がナノシート単位に剥離しやすい。なお、上記陽イオン交換容量は、Schollenberger法を基本とする、酢酸アンモニウムと塩化ナトリウム又は塩化カリウムとを用いた公知の手法によって求めることができる。
前記粘土鉱物は、天然粘土、合成粘土のいずれであってもよいが、合成粘土が好ましい。天然粘土は、前記層間イオンとして鉄イオンを含んでいることがあり、褐色であることが多いのに対して、合成粘土では、層間の不純物イオン含有量を少なくでき、着色を抑制できる。そのため、合成粘土を用いると、本発明のガスバリアシートに高い透明性、特に無着色という特徴を付与できる。
前記層状無機化合物から得られる無機ナノシートにおいて、1層(1シート)当たりの厚み(以下、「単位厚みT」と称する場合がある)は、例えば、0.2nm以上、1.1nm以下、好ましくは0.9nm以上、1.1nm以下である。一般に、2:1型粘土であるスメクタイト族及び雲母族の粘土鉱物においては、ナノシートの単位厚みTは0.96nm程度であることが知られている(日本化学会・編、高木克彦;高木慎介・著、共立出版、化学の要点シリーズ11巻、層状化合物)。本明細書では、特に断りのない限り、2:1型構造をとるスメクタイト族粘土鉱物及び雲母族粘土鉱物におけるナノシートの単位厚みTは0.96nmとして取り扱う。また、前記スメクタイト族及び雲母族以外の粘土鉱物の場合には、単位厚みTは、(A)無機ナノシートのみの粉末に対して、又は測定に際して基材の影響が十分排除できる基材(例えば平滑な樹脂基板又はシリコンウェハ等)上へ、(A)ナノシートのみを固形分として含有する分散液を滴下した後、十分乾燥させた後に得られた薄膜に対して、X線回折法等の公知の測定方法により得られる値である。
本発明の無機ナノシートの平均アスペクト比は100以上、4000以下である。平均アスペクト比を100以上とすることで、水蒸気ガスバリア性を向上できる。平均アスペクト比(R)は800以上が好ましく、1200以上がより好ましく、1600以上がさらに好ましい。また平均アスペクト比(R)を4000以下にすることで、劈開性や分散性を維持でき、かつ分散液の粘度上昇を避けることができる。平均アスペクト比(R)は、4000未満が好ましく、3200以下がより好ましい。
前記平均アスペクト比(R)は、下記式によって定義される値である。
R=D/T
(式中、Dは、無機ナノシートの平均粒子径(nm)を表す。Tは無機ナノシートの単位厚み(nm)を表す。)なお、無機ナノシートが複数の最小単位層から形成される積層構造である場合には、(A)ナノシートの平均アスペクト比は、層状無機化合物の最小単位層当たりに換算された平均アスペクト比を意味する。
無機ナノシートの平均粒子径Dは、無機ナノシートの水分散液を調製し、動的光散乱法によって求めることができ、より詳細には散乱光が減衰するまでの時間に基づいて求められる。
無機ナノシートの平均粒子径は、768nm以上が好ましく、1152nm以上がより好ましく、1536nm以上が特に好ましい。このようにすることで、水蒸気ガスバリア性を向上できる。また、無機ナノシートの平均粒子径は、4608nm以下が好ましく、3840nm以下がより好ましく、3072nm以下が特に好ましい。このようにすることで、劈開性及び分散性を向上できる。
本発明の分散液中で、層状無機化合物が劈開物である無機ナノシートとして存在していることの確認は、小角X線散乱測定によって行うことができる。粒径D、厚さLのディスク状粒子コロイドであって、十分に希釈され、粒子が互いに独立している、つまり粒子間相互作用のないコロイド中では、理論上、散乱強度Iと散乱ベクトルの大きさQ(Q=(4πsinθ)/λ、ただしθ:散乱角、λ:入射光の波長)との間に、1/D<Q<1/Lの領域でI∝Q-2の関係、Q<1/Dの領域でI∝Q0の関係がある(中戸晃之・宮元展義・著、シーエムシー出版、機能性粘度素材の最新動向、粘土コロイドが形成する液晶とゲル)。
アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン(B)
無機ナノシートは通常、負の永久電荷を有する。(B)成分は、アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオンであり、(B)成分は、無機ナノシートの負の永久電荷を補償するため、ナノシート表面または層間に存在する。また(B)成分は、好ましくは後述するアミン(E)に自身のプロトンを供与することでアンモニア、もしくは第一級〜第三級アミンとなり、ナノシート表面または層間から放出される。
(B)成分は、例えばアンモニアをプロトン化したアンモニウムイオン;メチルアンモニウム、エチルアンモニウム、プロピルアンモニウム、イソプロピルアンモニウムなどの第一級アミンをプロトン化したイオン;ジメチルアンモニウム、エチルメチルアンモニウム、ジエチルアンモニウムなどの第二級アミンをプロトン化したイオン;またはトリメチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウムなどの第三級アミンをプロトン化したイオンである。これらの中でも、アンモニアをプロトン化したアンモニウムイオン(NH4 +)が、本発明の分散液を調製し、基材などに塗布した後の乾燥工程において液から放出されやすい点及びコストの点で好ましい。
有機溶媒(C)
本発明において用いる有機溶媒(C)は、大気圧下における沸点が125℃以下である。このように沸点の低い有機溶媒を用いることによって、本発明の分散液を基材等に塗布後に大気圧下で速やかに揮発する。有機溶媒(C)の沸点は120℃以下が好ましく、100℃以下であることがより好ましく、80℃以下であることがさらに好ましい。有機溶媒(C)の沸点の下限は、例えば50℃である。
大気圧下における沸点が125℃以下である有機溶媒としては、炭素数が少ない(例えば総炭素数が5以下)溶媒であって、ニトリル系溶媒、アルコール系溶媒、エーテル系溶媒、ケトン系溶媒などが挙げられる。ニトリル系溶媒としては、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリルが挙げられ、アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール等のモノアルコールが挙げられ、エーテル系溶媒としてはジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、ジメチルアセタール等の鎖状エーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン等の環式エーテルが挙げられる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノンなどが挙げられる。
また有機溶媒(C)は、前記無機ナノシート(A)と後述するアミン(E)の両方を均一分散できることが好ましい。また有機溶媒(C)の一部は無機ナノシート(A)の層間にインターカレートし、ナノシートを膨潤させることができる。前述の通り、無機ナノシート(A)の層間には、ナノシートの永久負電荷を補償するために、正に帯電したアンモニウムイオン等(B)がインターカレートされている。文献(鬼形正伸・著 粘土科学第46巻第2号131-138(2007))によれば、ドナー数の高い有機溶媒は層間カチオンを溶媒和することが記載される。有機溶媒としては、無機ナノシート(A)とアミン(E)の両方と相溶性がある、もしくは無機ナノシート(A)/アミン(E)/有機溶媒(C)とを混合した際に相溶性を示すものであることが好ましい。有機溶媒(C)の相溶性・膨潤性はドナー数又はアクセプター数を参考にすることができ、ドナー数の高い有機溶媒、もしくはドナー数アクセプター数の双方が高い有機溶媒を用いることが好ましい。本発明における有機溶媒(C)としては、ニトリル系溶媒、またはアルコール系溶媒が好ましく、特にアセトニトリル、プロピオニトリル、エタノールが、ナノシートとアミン双方の相溶性の点で好ましい。これらの溶媒は単独で用いても、複数を組み合わせて用いてもよい。
水(D)
本発明における分散液は、分散媒として水を含む。水は有機溶媒(C)と同様、ナノシートの分散に寄与する。分散液における水の含有割合は、有機溶媒(C)と水(D)の合計を100質量%としたとき、20質量%以下である。水の割合が20質量%超であると、分散液を塗布して乾燥する際に、先に有機溶媒が揮発して無機ナノシート(A)の層間などに水が残り、アミン(E)が分散液に相溶しない。無機ナノシート(A)の層間に水が残ると、無機ナノシート(A)の層間において水とアミンの相分離が起こり、その状態で水が蒸発すると無機ナノシート(A)の層間に欠陥を生じ、ガスバリア性が得られない。水の含有割合は19質量%以下であることが好ましく、より好ましくは18質量%以下である。水の含有割合の下限は例えば1質量%以上であることが好ましい。このようにすることで、無機ナノシート(A)の濃度や有機溶媒(C)の種類等に関わらず、無機ナノシート(A)が十分に分散及び膨潤できる。なお、本発明における有機溶媒(C)は1気圧下における沸点が125℃以下であって水(D)と共沸混合物を構成することができるため、有機溶媒(C)だけでなく水(D)も共に減少させることができ、水の含有量を20質量%以下にできる。有機溶媒(C)の沸点が水(D)より低い場合には、水の含有量が20質量%以下であるとともに有機溶媒(C)と水(D)との共沸混合比よりも水(D)の含有割合を少なくすることが好ましい。
本発明の分散液中の水分含有量は、カールフィッシャー分析計、ガスクロマトグラフィーなど公知の方法を用いて測定できる。
アミン(E)
アミン(E)は、無機ナノシート(A)表面の疎水化に寄与するため、本発明の分散液を用いて得られるガスバリア層は優れた水蒸気ガスバリア性を実現できる。アミン(E)は、少なくとも一部が無機ナノシート(A)の表面に結合(吸着)していることが好ましく、このようにすることで、無機ナノシート(A)表面を効率的に疎水化できる。
アミン(E)が無機ナノシート(A)に吸着していることは、ガスバリア層をX線回折測定した際のスペクトルのピークが下記の特徴を有することを確認することで判断できる。
無機ナノシートが水を主とした分散媒に分散し添加剤を含まない分散液から分散媒を除去して得た無機ナノシートの積層体に、銅のKα線(波長1.54Å)を用い、気温25℃相対湿度50%でX線回折測定を行うと、2θで6.76〜7.18度の範囲に、001面の一次回折によるシャープなピークが観察される。これを層間距離に換算すると、1.23〜1.30nmに相当する。添加剤としてアミンを含む無機ナノシート分散液(水を主とした分散媒)から分散媒を十分除去して得られる、アミンを含有する無機ナノシート積層体に、上記と同じ条件でX線回折測定を行った場合、2θで6.76度以上の回折領域にのみ001面の一次回折によるピークトップが存在すれば、層間距離は1.30nm以下であり、ナノシートにアミンが吸着していないと判断できる。
また、2θで6.76度未満の領域で001面の一次回折によるピークトップが観察されれば、これはすなわち層間距離が1.30nm超であることを意味し、アミンの少なくとも一部が無機ナノシートの層間に吸着し、ナノシート層間距離が広がっていると判断できる。アミンを添加したことにより表れるピークトップの位置は、ガスバリア層中のアミンの含有割合、無機ナノシートとアミンとの含有比率、アミンの分子サイズ、無機ナノシートとアミンとの相互作用などの影響によって、2θ=6.76度未満の範囲内で変わり得るが、2θ=6.76度未満の領域にピークトップが観察される限り、アミンの少なくとも一部が無機ナノシートに吸着していると判断する。
アミンの無機ナノシートに対する割合が多くなり、かつアミンの無機ナノシート層間へのインターカレーションが進んで無機ナノシート層間距離が拡大しすぎると、水蒸気ガスバリア性を含むガスバリア性が低下するため好ましくない。従って、ガスバリア性の観点からは、001面の一次回折によるピークトップの位置は、2θで1.75度以上(層間距離に換算して5.0nm以下)が好ましく、1.75度超(層間距離に換算して5.0nm未満)がより好ましく、2.21度以上(層間距離に換算して4.0nm以下)がより好ましく、2.94度以上(層間距離に換算して3.0nm以下)がさらに好ましく、4.41度以上(層間距離に換算して2.0nm以下)がさらに好ましく、5.51度以上(層間距離に換算して1.6nm以下)が特に好ましい。本発明の特に好ましい態様においては、ナノシートの001面の一次回折によって生じたX線回折スペクトルが、1.75<2θ<6.76の回折領域にピークトップを有する。
また、本発明では、アミン(E)の少なくとも一部が前記したアンモニウムイオン等(B)とプロトン交換して、例えばアンモニウムイオンなどのカチオンとなり、通常負の永久電荷を有している無機ナノシート(A)とイオン結合していることが好ましく、イオン結合によって無機ナノシート(A)とより強く結合できる結果、水蒸気ガスバリア性が特に良好となる。アミン(E)がカチオン化して無機ナノシート(A)とイオン結合していることは、例えば、無機ナノシート(A)を硝酸等に浸漬処理し、得られた処理液中の沈殿物を定性分析することで陽イオン種を特定してアミン(E)由来のカチオンの存在を検出する方法により確認される。
アミン(E)は、無機ナノシート(A)の表面を疎水化してガスバリア性を確保するため、有機アミンを用いることが好ましい。有機アミンは、1つのアミノ基を有するものであってもよいし、複数(例えば2〜4)のアミノ基を有するものであってもよい。1つのアミノ基を有する有機アミンとしては、例えばメチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、などの脂肪族アミン、シクロヘキシルアミンなどの脂環式アミン;ベンジルアミン、フェネチルアミンなどのアラルキルアミン;アニリン、N−メチルアニリン、N,N−ジメチルアニリン、p−トルイジン、p−フルオロアニリン、p−クロロアニリン、p−ブロモアニリン、p−ヨードアニリン、p−アニシジン、p−ニトロアニリンなどのアリールアミン;ピリジン、ピロール、ピロリジン、ピペリジン、モルホリン、キヌクリジン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、ジアザビシクロウンデセンなどの複素環式アミン;3−アミノプロピルトリメトキシシランなどのアミノシラン;グアニジンおよびその誘導体等が挙げられる。2つのアミノ基を有するジアミンとしては、1,2−フェニレンジアミン、cis−1,2−シクロヘキサンジアミン、trans−1,2−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、N−ベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−キシリレンジアミン、メタキシレンジアミン、トリエチレンジアミン、1,1’−ビナフチル−2,2’−ジアミン、1,8−ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、1,3−ジ(4−ピペリジル)プロパン等が挙げられる。3つのアミノ基を有するトリアミンとしては、3,3’−ジアミノジプロピルアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミンなどが挙げられる。4つのアミノ基を有するテトラアミンとしては、ブタン−1,1,4,4−テトラアミン、ピリミジン−2,4,5,6−テトラアミンなどが挙げられる。これらのアミンは単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
中でも複数のアミノ基を有するアミンは、無機ナノシート(A)の同種又は異種の2つ以上のアニオンと結合(吸着)できるため、水蒸気ガスバリア性を向上できる点で好ましく、中でも特にジアミンが好ましい。ジアミンとしては、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、N,N’−ジメチル−1,4−キシリレンジアミンが反応性・相溶性の点で好ましく、特にN,N’−ジベンジルエチレンジアミンが好ましい。
本発明の分散液は、アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオンを層間に有し、平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシートの水分散液と、1気圧下における沸点が125℃以下の第1の有機溶媒と、アミンと、任意に用いられる第2の有機溶媒とを混合し、水を前記第1の有機溶媒及び/又は第2の有機溶媒と共沸除去することによって製造できる。以下、本発明の分散液の製造方法について、好ましい態様も含めて説明する。
1.無機ナノシートの水分散液を得る工程(工程1)
本発明の分散液を製造するに際して、好ましくは、まず無機ナノシート(A)が水に分散した水分散液を得る(以下、工程1と呼ぶ場合がある)。なお本明細書において、水分散液とは、分散媒が水を主とする(例えば全分散媒を100質量%としたときの割合で50質量%超、好ましくは70質量%以上)分散液と定義する。
無機ナノシート(A)が水に分散した水分散液を得るために、まず無機ナノシート(A)の原料である層状無機化合物と水とを用意する。層状無機化合物を水中(または有機溶媒中)で劈開することで無機ナノシート(A)を得ることができるが、分散媒である水と層状無機化合物を単に混合するだけでは、無機ナノシート(A)が十分に分散した水分散液を得ることが難しい場合がある。層状無機化合物を形成する単位層は、平均アスペクト比が大きくなって相互作用する面積が大きくなったり、電荷密度が大きくなったりすることで、単位層の面同士の結合力が大きくなり、層状無機化合物を無機ナノシートまで劈開することが困難となり、また劈開できた場合であっても無機ナノシートを水中で高度に分散させることが困難となる。このような分散性が不十分な状態では、後述する工程におけるイオン交換の効率が低下するため好ましくない。
従って、無機ナノシートの分散性が良好な水分散液を得るためには、磁気回転子などを用いる撹拌、衝突型高圧分散装置、超高圧ホモジナイザー等の公知の微分散装置を用いた微分散処理を行うことが好ましい。このような微分散装置を用いることによって、層状無機化合物に機械的な力を付与でき、層状無機化合物の劈開を促進できる。また、このような機械的な力を層状無機化合物に付与することで、層状無機化合物の液晶転移を促進できる場合がある。層状無機化合物の中でも、特に、合成されたフッ素化雲母は平均アスペクト比が大きいことなどに起因して、単位層間が強固に結合されている場合が多い。従って、合成されたフッ素化雲母に上記した微分散処理を行うことは、効果的である。
無機ナノシートの分散性が良好な水分散液を得るための他の方法としては、層状無機化合物及び/または無機ナノシートと水を含む液に、重力加速度を印加し(例えば遠心分離法など)、無機ナノシートの分散度が高い部分を分離・抽出する方法が挙げられる。この方法によれば、層状無機化合物が液晶転移を起こす化合物である場合に、液晶相を分離して抽出できる場合がある点で好ましい。また層状無機化合物が天然鉱物である場合、酸化ケイ素や炭酸カルシウムなどの不純物が含まれている場合があり、また合成された鉱物である場合には、合成時にガラス質のような不純物が含まれている場合がある。しかし、遠心分離等の方法によればこれら不純物を沈降させて除去できるため、水蒸気ガスバリア性を一層高めることが可能となる。
このような無機ナノシート(A)が水に分散した水分散液は市販されているものもあり、市販物をそのまま用いてもよいし、これに更に上述したような微分散処理、分離及び抽出処理を行ってもよい。
2.余剰イオンの除去及び交換処理工程(工程2)
上述した通り、無機ナノシート(A)の層間には、通常、負の永久電荷を補償するために、原料の層状無機化合物に由来する金属イオンが存在している。しかし、金属イオンが存在することで、水蒸気ガスバリア性が低下するため、これを除去することが好ましい。また、本発明では、層間に存在する金属イオンを除去するとともに、この金属イオンに代えてアンモニウムイオン等を導入することで、本発明の分散液に添加されるアミン(E)による疎水化の効果を最大限に発揮させることができる。従って、工程1で得られた無機ナノシート水分散液を、イオン交換処理工程(工程2)に供することが好ましい。
特許第5437751号によれば、無機ナノシートの分散液において、無機ナノシートの負電荷の補償に寄与しない余剰の陽イオン、およびその陽イオンの対イオンである陰イオン(以下、余剰の陽イオンおよびこの対イオンである陰イオンをまとめて「余剰イオン」と呼ぶ場合がある)を除去することによって、無機ナノシートの分散性を維持することができる。また、負電荷の補償に用いられる陽イオンの大部分をアンモニウムイオン等に置換することで無機ナノシートの分散性が更に向上する。そして、アンモニウムイオン等が本発明の分散液に添加されるアミン(E)と共に存在することで、本発明の分散液を基材等に塗布して乾燥する際、アンモニウムイオン等はアミン(E)とプロトン交換してアミン(E)が最大限に無機ナノシート(A)の疎水化効果を発揮できるようにすると共に、アンモニウムイオン等自身はアンモニアまたは第1〜3級アミンとして塗膜の外に放出される。このようなアミン(E)へのプロトン供与は、前記した金属イオンでは生じない。
前述の余剰イオンは、通常用いられるイオン交換方法によって他のイオンに交換することのできる交換性イオンである。イオン交換方法としては、イオン交換樹脂または半透膜を用いる方法が挙げられ、余剰イオンは、例えば前記工程1で得られた無機ナノシート水分散液を、イオン交換樹脂及び/または半透膜で処理することによって除去することができる。
余剰イオンが余剰陰イオンと余剰陽イオンの両者を含み、イオン交換樹脂を用いてこれらを除去する場合には、陽イオン交換樹脂を用いて余剰の陽イオンをアンモニウムイオン等または水素イオンに交換し、且つ、陰イオン交換樹脂を用いて余剰の陰イオンを水酸化物イオンに交換することが好ましい。イオン交換により生成したアンモニウムイオン等または水素イオンと、水酸化物イオンが反応することで、水またはアンモニアまたはアミンが生成するため、分散液中のイオン濃度を増加させることなく、余剰イオンを除去できる。このような方法により、層間余剰イオンをアンモニウムイオン等(B)に交換することはすなわち、層間から余剰イオンを除去すると同時に、層間イオンをアンモニウムイオン等(B)に交換できることを意味する。なお、イオン交換後の水分散液を加熱又は減圧処理すれば、水分散液中に残留している余剰のアンモニウムイオン等と水酸化物イオンとが反応して水とアンモニア等になる反応が速やかに進行し、水分散液中の余剰のアンモニウムイオン等と水酸化物イオンを水分散液中からより除去できるため好ましい。
層間余剰イオンは、交換前のイオン種の90質量%以上がアンモニウムイオン等に交換されていることが好ましく、より好ましくは95質量%以上、さらに好ましくは97質量%以上、さらに好ましくは99質量%以上である。該交換率は、100質量%に近いことが好ましい。交換率は、交換前後の分散液について、前述した方法で分散液中のイオン量を測定し、該測定値から算出できる。
イオン交換樹脂を用いたイオン交換法では、例えば柱状容器等にイオン交換樹脂をいれ、これに工程1で得られた水分散液を流す方法を採用できる。陽イオン交換と陰イオン交換を両方行う場合、これらの順序としては先に陰イオン交換を行い、その後に陽イオン交換を行うことが好ましく、特に平均アスペクト比が800以上のフッ素化ヘクトライト及びフッ素化雲母ではこの順序を採用することが好ましい。フッ素化ヘクトライト及びフッ素化雲母を用いる場合に、先に陽イオン交換を行ってその後陰イオン交換を行うか、または陽イオン交換と陰イオン交換を実質的に同時に行うと、無機ナノシート同士の凝集が起こったり、分散液のゲル化速度が速まる場合がある。
余剰イオンを除去及び交換する方法としては、前述のイオン交換膜を用いる方法の他に、半透膜を用いる方法が挙げられる。例えば限外濾過膜、精密濾過膜又は逆浸透膜などの半透膜は、無機ナノシートの粒子は透過せず、余剰イオン種のみ透過するような平均細孔径を有しており、余剰イオンを分散媒とともに分離することができる。この場合、余剰イオンとともに分散媒も一部分離され、無機ナノシートが分散している水分散液の粘性が増大して余剰イオンの除去が進まなくなる場合がある。その際には、イオン交換処理対象の水分散液に分散媒を追加すればよい。
余剰イオンの除去及び交換処理を行ったあとの余剰イオンの割合は、イオンクロマトグラフィー分析により算出することができる。余剰陰イオンの量は、工程2に供する無機ナノシート分散液中の無機ナノシート(A)の含有割合をk質量%としたとき、k×0.0002mol/L以下が好ましく、k×0.00015mol/L以下がより好ましく、k×0.0001mol/L以下であることがさらに好ましい。その中でも、特に硫酸イオンの含有割合が、k×0.00001mol/L以下であることが好ましく、より好ましくはk×0.000005mol/L以下であることがより好ましい。余剰イオンは、少なければ少ないほど好ましい。
なお、余剰イオンの中で、陽イオンとしては例えばナトリウムイオン等の金属イオンやアンモニウムイオンが例示され、陰イオンとしてはフッ化物イオンや硫酸イオンが例示される。前記硫酸イオンは天然粘土鉱物にも合成粘土鉱物にも含まれていることが多く、フッ化物イオンは合成フッ素化ヘクトライト及び合成フッ素化雲母などの合成時に用いたフッ素原料の影響で残留することが多い。
無機ナノシートの層間余剰イオンに代わって導入される(置換される)イオン種としては、アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン(B)が好ましい。置換されたイオンがアンモニウムイオン等(B)であると、分散媒が水の場合にも有機溶媒の場合にも、無機ナノシートを良好に分散でき、分散液の固形分濃度を高めることができ、さらに疎水性の強い添加剤とも混合しやすく、添加剤を無機ナノシートの層間にインターカレーションしやすくなる。
なお、層間イオンが陽イオンの場合には、前述のイオン交換率、イオンの含有割合、及び全交換性イオンに占める層間イオンの割合は、前述のSchollenberger法に基づく公知の手法によって陽イオン交換容量を求め、かつイオンクロマトグラフィー法で分散液のイオン種の濃度を定量することによって求めることができる。陽イオン交換容量(C.E.C.)に対応する量の電荷は基本的には層間イオンの量に対応しており、それを超える量のイオンは基本的には余剰イオンとみなされる。このとき、(ナノシート端部の電荷の影響は考慮しないこととする。
上述のように、水分散液中の余剰イオン濃度を除去してアンモニウムイオン等に交換すると、水のみでなく、有機溶媒でも、無機ナノシートが高度に分散できる。従って、従来行われていた有機イオン又はシランによる層状無機化合物の変性(修飾)処理や、親水性の高分子または金属アルコキシド等の加水分解物の使用に頼らなくても、無機ナノシートを有機溶媒中で凝集及びゲル化させることなく高度に分散できる。工程2を行うことで、平均アスペクト比800以上、さらには1600を超える高アスペクト比の層状無機化合物のナノシートに対しても無機ナノシートの有機溶媒中での高度分散という効果を実現できる。
3.有機溶媒(C)と水(D)とアミン(E)を含む無機ナノシート(A)の分散液の調製工程(工程3)
本発明の分散液の製造方法では、アンモニウムイオン等(B)を層間に有する無機ナノシート(A)の水分散液と、1気圧下における沸点が125℃以下の第1の有機溶媒(C)とアミン(D)とを混合して、これらを含む分散液を調製することが重要である。本工程によれば、水を主な分散媒とする従来の分散液とは異なり、水に難溶な疎水性の添加剤を分散液に含ませることができる。例えば、疎水性の添加剤を混合する際には、有機溶媒(C)の量が、疎水性の添加剤が十分に溶解し均一に混合できる程度に十分な量であることが好ましい。有機溶媒(C)の量は、分散媒全体の80質量%超99質量%以下であることが好ましく、より好ましくは83質量%以上、99質量%以下であり、更に好ましくは85%質量以上、99質量%以下である。
なお、有機溶媒を混合する際、ナノシートが分散せず一部凝集を示すことがあるが、アミンを添加することによって再度分散する場合は、この時点でナノシートが均一分散していなくても構わない。
本工程では、更にアミン(E)が添加される。本工程によれば、有機溶媒(C)の存在によって液中に良好に分散できるアミン(E)が、負電荷を帯びた無機ナノシート表面に近接することができ、無機ナノシートの層間にインターカレートする。有機溶媒(C)の種類によっては、無機ナノシートが分散せずに結晶性膨潤にとどまる場合もあるが、アミン(E)が無機ナノシートの層間にインターカレートすることで、無機ナノシートを分散できることがある。アミン(E)が層間にインターカレートしていると、分散液を基材に塗布する際に、アミン(E)が前述のアンモニウムイオン等(B)と無機ナノシート層間において効率よくプロトン交換反応を起こすことができ、無機ナノシート表面に結合することで無機ナノシート表面の疎水化を実現できる。アミン(E)の添加方法は特に限定されないが、添加するアミンが固体の場合は、アミン(E)を分散液中に、より均一に混合させるため、アミン(E)と別の溶媒と混合して溶液にしたものを添加してもよい。このときに使用する溶媒は、前記第1の有機溶媒(C)とは別の有機溶媒でもよく、また(D)水でもかまわない。
4.水の共沸除去工程(工程4)
本工程では、第1の有機溶媒(C)および水を含む分散液を共沸蒸留して水を除去する。共沸蒸留する分散液は、アミン(E)添加前のものであってもよいし、アミン(E)添加後のものであってもよく、更に第1の有機溶媒(C)とは異なる第2の有機溶媒を含んでいてもよい。
本発明者は、第1の有機溶媒(C)として特定の有機溶媒を用い共沸蒸留を行えば、例えば工程1、2を経ることによって含有されていた水を(第2の有機溶媒を用いる場合には、更に第2の有機溶媒を)、無機ナノシート(A)の分散・膨潤を維持したまま除去することができ、水と同等かそれより低沸点の有機溶媒を主として含む分散液中の水含有割合を大幅に減らせることを見出した。
共沸蒸留は、二種類以上の溶媒が共沸混合物を形成し、蒸留後に無機ナノシート(A)が分散を維持するのであればどのような温度、圧力で行ってもよい。
本発明の分散液の製造方法において、工程3、4における各手順を行う順序は特に限定されないが、工程3において無機ナノシート(A)の水分散液と、第1の有機溶媒(C)とアミン(E)の添加順序は特に限定されないが、例えば工程1、2で調製されたアンモニウムイオン等(B)を層間に有する無機ナノシートの水分散液と、1気圧下における沸点が125℃以下の第1の有機溶媒(C)とを混合して有機溶媒(C)と水(D)とを含む分散液を先に調製しておくことが好ましい。この有機溶媒(C)と水(D)とを含む分散液を調製した後は、工程4の共沸蒸留を先に行ってから、共沸蒸留後の分散液とアミン(E)とを混合してもよいし、有機溶媒(C)と水(D)とを含む分散液とアミン(E)とを混合してから、工程4の共沸蒸留を行ってもよい。
共沸蒸留を行う前の段階で、有機溶媒(C)と水(D)との混合比が適切に調製されていることが好ましく、有機溶媒と水が共沸混合物を構成する組成比としておくか、あるいは共沸点が水より高い場合は水を共沸組成比より多く混合し、共沸点が水より低い場合は有機溶媒を共沸組成比より多く混合した分散液を共沸蒸留に供することが好ましい。共沸蒸留の具体的な手段としてはロータリーエバポレーター、遠心濃縮機などを用いることができる。特に、遠心濃縮機を用いると、蒸留容器中における分散液の濃度のムラを小さくすることができるため、より好ましい。
また、第1の有機溶媒(C)と水を含む分散液を共沸蒸留した後、さらに別の第2の有機溶媒を添加し、共沸蒸留してもよい。第1と第2の有機溶媒の共沸点において、第2の有機溶媒の共沸組成比が大きくなる場合、この方法を用いて、第2の有機溶媒を主とする分散液を得ることができる。あるいは、水と第2有機溶媒が共沸混合物をつくらない場合に、この方法が有効である。
なお、好ましくは工程1、2を行った後に、上記工程3及び4を行い、その後得られた分散液に有機溶媒もしくは水を添加して、分散液中の無機ナノシート濃度、水含有量を調整してもかまわない。この操作を行う場合、撹拌など、種々の方法で混合することができる。
製膜工程
本発明においては、上記で得た塗工液を基板上に塗布した後、大気圧かつ20℃〜40℃の雰囲気下で5〜15分程度保持することで、塗膜中の分散媒を揮発させることができ、その後更に100〜130℃程度(特に120℃以下)で1〜3時間保持することによって、無機ナノシートとアミンとを含み、水分量が低減されたガスバリア層を基板上に形成できる。本発明において発明者は、分散媒として大気圧下における沸点が125℃以下の有機溶媒を主成分として用いることで、塗布後速やかに乾燥し、ガスバリア層における有機溶媒の残存が極めて少ないガスバリア膜を得られることを発見した。
ガスバリア層を得るために基材等に塗布する塗工液(本発明の分散液)の固形分濃度は、0.3質量%以上が好ましく、0.6質量%以上がより好ましく、1.1質量%以上がさらに好ましい。塗工液の固形分濃度は、混合、後述する脱泡等が可能な濃度であればよく、塗工液が粘度の高いペースト状であってもよいが、目安として、例えば固形分濃度が10質量%以下であることが好ましく、8質量%以下がより好ましく、6質量%以下が更に好ましい。
なお、塗工液に浮遊異物やナノシート凝集物など、粗大な固形異物が混入している場合は、遠心分離、ろ過等の処理によって固形異物を除去することが好ましい。これらの処理は、共沸蒸留の前後に行うことが好ましく、後に行うことが、濃度調整のしやすさの点でより好ましい。これらの処理を行う際、水、有機溶媒、もしくはこれらの混合溶媒を用いて塗工液を希釈する(但し、希釈後の無機ナノシート分散液においても、有機溶媒(C)と水(D)の合計量を100質量%としたときの水(D)の量が20質量%以下である)ことで、塗工液の粘度を低下させることができ、特にろ過による除去を行う際に有効である。塗工液に混入している固形異物は、塗工液を用いてガスバリアフィルムを形成する際、ガスバリア層に欠陥を生じさせ、ガスバリア性を低下させる要因となることから、これらの方法により除去することが好ましい。
また、塗工液中に気体成分が混入している場合には、真空脱泡、又は遠心分離等の処理によって気体成分を除去することが好ましい。気体成分の除去工程は、製造工程のどの段階で行ってもよいが、無機ナノシートの微分散処理の際に気体成分が混入しやすいことを考慮すれば、例えば微分散処理の後に行ってもよいし、それらの処理中に同時に行ってもよい。塗工液に気体成分が混入していると、このような塗工液から形成されるガスバリア層に空隙や欠陥を生じさせ、ガスバリア性を低下させる結果となる。従って、気体成分の除去を行うことが好ましい。
塗工液の塗布方法は特に限定されず、例えばスプレー塗布、バーコーター、ドクターブレード、ダイコート、グラビアロール、キスロールなどの方法が挙げられる。中でも、ダイコート、グラビアロール、キスロールにより製造されることが、量産性、塗布面積、塗布後の乾燥工程の組み込みやすさの点で好ましい。
塗布後の分散媒除去の方法・環境については特に限定されず、例えば大気圧・室温下で塗布した後、一定時間静置するなどの方法をとることができる。より高速に乾燥するには、例えば強制送風式オーブン等において、20℃以上40℃以下の温度条件下で、5秒以上10分以下で分散媒を乾燥させる方法が挙げられる。上記により、所望のガスバリア層を形成できる。
ガスバリア層中に残存する有機溶媒の量はIRにて定量的に測定できる。有機溶媒の残存量は無機ナノシートのSi−O固有振動に帰属されるピークの強度と、溶媒を特徴付ける官能基の固有振動に帰属されるピーク強度の比で判断できる。例えば、IRのATR法でガスバリア層表面を測定すると、無機ナノシートのSi−O固有振動に帰属されるピークが999cm-1位置に表れ、またアセトニトリル等のニトリル基を有する有機溶媒の場合は、ニトリル基の固有振動に帰属されるピークが2400cm-1位置に表れる。ニトリル基を有する有機溶媒の場合には、999cm-1におけるピーク強度に対する、2400cm-1におけるピーク強度の比が、0.07以下であることが好ましく、0.04以下であることがより好ましく、0.03以下であることがさらに好ましい。
また残存有機溶媒の量は、質量濃度で表すことができ、例えば100質量ppm以下が好ましく、より好ましくは50質量ppm以下であり、特に好ましくは10質量ppm未満である。残存有機溶媒の量はIRによって測定できる。
本発明におけるガスバリアフィルムは、塗布後に分散媒が速やかに揮発するため、基材に塗布したままでもガスバリアフィルムとして用いることができるが、さらに20℃〜120℃の加熱雰囲気下で乾燥することで、ガスバリア層中のアンモニウムイオン等(B)とアミン(E)のプロトン交換が促進され、アミン(E)をカチオン化して、ガスバリア性をさらに高めることができる。またプロトン交換で生じるアンモニアを排気できるため、アンモニアガスによる汚染が懸念される製品にガスバリアフィルムを適用する場合に有効である。
本発明の分散液を用い、前記製膜工程を行うことで、基材(特にフィルム状)上にガスバリア層を形成することができる。また上記基材からガスバリア層を剥離してガスバリア層単独で用いることもできるし、剥離したガスバリア層を別の基材上に再度積層することもできる。基材とガスバリア層とからなるガスバリアフィルムを製造する場合には、他の工程は必須ではないが、他の層を更に有するガスバリアフィルムを製造する場合には、前記製膜工程の前および/または後に、他の層を形成するための工程を任意に追加できる。例として、本発明における分散液を塗布する前および/または後に、基材表面および/またはガスバリア層表面に、他の層として、本発明の分散液から得られるガスバリア層とは異なる別のガスバリア層(例えば無機材料から構成される)、補強層(例えば樹脂材料から構成される)、傷等を防ぐための保護層、表面を平滑化するための表面平滑化層、アンカーコート層などを積層させることが好ましい。他の層は、樹脂などの有機材料層や、金属蒸着層やポリシラザン層などの無機材料層を含むことが好ましい。前記した他の層は膜状であることが好ましく、1種のみを用いてもよいし、2種以上を積層させて用いてもよい。好ましい態様では、基材樹脂フィルム、アンカーコート層、本発明の分散液から得られるガスバリア層、(補強層及び/又は別のガスバリア層)、平滑化層、保護層、の順で形成される(但し本発明の分散液から得られるガスバリア層、補強層と別のガスバリア層の順序は任意に入れ替えてもよい)。また、本発明の分散液から得られるガスバリア層と他の層との積層物を基材から剥がして用いることも好ましい。他の層やガスバリア層形成の前に、コロナ放電処理、UV/オゾン洗浄処理、プラズマ処理などの表面処理を行ってもよい。
なお本明細書において、用語「フィルム」及び「シート」はその厚みを限定するものではなく、いずれも膜状物の意味で使用される。
なお、本発明の分散液の製造工程において、本発明のガスバリアフィルムとしての性能を損なわない範囲で、任意のタイミングで各種添加剤を混合してもよい。分散液の製造工程のいずれのタイミングで添加剤を混合した場合であっても、製膜工程における分散媒の除去(例えば加熱乾燥等)により、これらの添加剤を含むガスバリア層を形成できる。添加剤は、そのままの状態で添加してもよいし、添加剤を可溶な溶媒に溶解させて溶液の状態で添加してもよいし、溶媒に分散させた状態で添加してもよい。
本発明の分散液は、水の含有割合が低減されているため、添加剤が水に難溶な疎水性の有機物である場合にも均一に混合できる。
ガスバリア層が積層される基材は特に限定されず、例えば塩化ビニル樹脂(PVC)、塩素化塩化ビニル樹脂、プロピレン−塩ビ共重合体などの含塩素系樹脂;ポリスチレン樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)などのスチレン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂などのポリエステル系樹脂;ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂などのポリイミド系樹脂;ポリアミド樹脂(ナイロン);ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂などのポリスルホン系樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリメチルメタクリレート樹脂などのポリ(メタ)アクリレート系樹脂;非晶性ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン系樹脂等のオレフィン系樹脂;フッ素樹脂;トリアセチルセルロースなどのセルロース系樹脂;エチレンビニルアセテート樹脂等を挙げることができ、これらは特に可視光透過性に優れている。耐熱性の観点からは、ポリイミド樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂及びフッ素樹脂が好ましく、透明性・耐熱性・耐溶剤性の観点からはポリエチレンナフタレート樹脂が好ましく、透明性、耐溶剤性、コストの観点からはポリエチレンテレフタレート樹脂が好ましい。
また、本発明の分散液を用いれば、低温乾燥でガスバリア層を形成できることから、耐熱性が低い基材でもガスバリア層を形成することができる。耐熱性の観点から従来は使用が困難であったポリエチレンテレフタレート樹脂等のガラス転移点が例えば50℃以上、125℃以下である樹脂であっても、本発明の分散液によればガスバリア層を形成することができる。ガラス転移点が50℃以上、125℃以下である樹脂としては、例えばポリメチルメタクリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、AS樹脂(アクリロニトリル−スチレン共重合体)、ABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、塩化ビニル樹脂、塩素化塩化ビニル樹脂、プロピレン−塩ビ共重合体、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂を挙げることができる。これらの中でも、非晶性のポリエチレンテレフタレート樹脂(ガラス転移点は70℃前後)が好ましく、ポリエチレンテレフタレート樹脂の有する透明性、耐溶剤性、コストというメリットを享受できる。
ガスバリア層と基材との密着性を向上させるため、基材の表面にアンカーコート層を設けることも好ましい。また、ガスバリア層を一旦基材または支持体に形成し、ガスバリア層を基材または支持体から分離して用いる場合には、基材または支持体の表面に易剥離処理を施しておくことも好ましい。
ガスバリア層中のアミンの含有量は、ナノシート(A)のカチオン交換容量、アミンの基数、ならびに分子量にもよるが、ナノシート固形分重量に対し50質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。アミンの質量が50質量%を超えると、ナノシートの層間に過剰のアミンがインターカレートされ、層間距離が広がることにより、緻密な積層構造が得られない場合がある。
ガスバリア層において無機ナノシートの面が適切に配向していることが好ましい。無機ナノシートの面がガスバリア層の面と略平行であるように積層されることで、優れた水蒸気ガスバリア性を発揮できる。無機ナノシートの配向状態を確認する方法としては、X線回折分析、または透過型電子顕微鏡による積層状態の直接観察が挙げられる。一般的には無機ナノシートの001面の一次回折によって生じるX線回折スペクトルのピークの相対強度、数、回折角度2θで表されるピークの位置及びその半価幅等によって、ナノシートの積層状態及び層間距離の分布を知ることができる。ガスバリア層において無機ナノシートの面方向が上記のように配向していることは、該ガスバリア層のX線回折が、ナノシートを構成する鉱物結晶の001面の一次回折によるシャープなピークを生じ、かつ、その他のピークも00n面(nは整数)の一次回折を示すピークしか現れないことによって、確認できる。
ガスバリアシートの水蒸気透過量は、ISO15106−5に準拠した、酸素雰囲気下での40℃かつ相対湿度90%の環境において、膜厚が1μmの場合に換算した透過係数として、0.01g/(m2・day)未満であることが好ましく、より好ましくは0.009g/(m2・day)未満であり、さらに好ましくは0.008g/(m2・day)未満であり、さらに好ましくは0.007g/(m2・day)未満であり、さらに好ましくは0.005g/(m2・day)未満である。
ガスバリア層の膜厚は、0.001〜1000μmであることが好ましく、0.01〜500μmであることがより好ましく、0.1〜300μmであることがさらに好ましい。ガスバリア層の膜厚は、例えば触針式表面形状測定器や、集束イオンビーム(FIB)によって切断したガスバリアフィルムの断面TEMによって測定できる。
また、ガスバリアシートの全光線透過率およびヘーズは、日本工業規格に規定された「JIS K7361−1 プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」、「JIS K7136 プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」に準拠し、空気でバックグラウンド測定を行って、空気の全光線透過率を100%、空気のヘーズを0%として、算出される。本発明のガスバリアシートの全光線透過率は、85%以上であることが好ましく、より好ましくは87%以上であり、更に好ましくは89%以上であり、特に好ましくは91%以上である。本発明のガスバリアシートのヘーズは、3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.5%以下であり、更に好ましくは2%以下であり、特に好ましくは1.5%以下である。
なお、本明細書において、ガスバリア層とは、本発明の無機ナノシート分散液を用いて得られる層を意味し、該ガスバリア層が基材上に形成されたものをガスバリアフィルム又はガスバリアシートと呼ぶ。
以下に、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら制限を受けるものではない。なお、以下の実施例及び比較例における分散液及びガスバリアシートの物性は、下記の方法で評価した。
(1)分散液中のイオンの存在割合の測定
分散液中のイオンの存在割合は、イオンクロマトグラフィー分析により評価した。陽イオンは、カラムはIonPac CG18、CS18(サイズ4mmφ250mm)を用い、30mMメタンスルホン酸を溶離液として用い、流速1.0mL/分、注入量50μLの条件にて測定した。陰イオンは、カラムはIonPac AG18、AS18(サイズ4mmφ250mm)を用い、溶離液ジェネレータにより調製されるKOHグラジエントを溶離液として用い、流速1.0mL/分、注入量50μLの条件にて測定した。
(2)分散液中のナノシートの平均粒子径
プローブ型粒径測定システムFPAR−1000(大塚電子株式会社製)を用い、動的光散乱法によって平均粒子径を決定した。液温25℃にて約0.005質量%から0.5質量%の範囲で分散液の固形分濃度を変化させ、NDフィルター10%の場合で十分な散乱強度を得られる濃度を任意に決定し、その濃度で3回のダミー測定を行った後、7回測定を実施して、各測定のキュムラント解析結果に基づく平均粒子径のうち、平均に最も近い3点の平均値をその分散液中のナノシートの平均粒子径とした。
(3)分散液中の水分量
カールフィッシャー水分量計KF−31、水分気化装置VA−200(ともに株式会社三菱化学アナリテック製)を用い、電量法により評価した。気化するアミンによる分析結果への影響を防ぐため、分析前、分散液にサリチル酸を添加して評価した。
(4)ガスバリアシートのX線回折分析(XRD)
X線回折装置X’Pert PRO MPD(PANalytical製)によって行った。X線波長は、Cu/Kαの1.54056Åを用いた。加速電圧45kVとした。走査速度は0.25°/秒(STEP:0.017°)とした。測定環境は気温25℃、相対湿度50%とした。
(5)ガスバリアシートのIR測定、残有機溶媒量測定
ATR測定ユニットとして反射型全反射測定装置MIRacle 10を取り付けたIR測定装置IRAffinity−1(ともに株式会社島津製作所製)によって行った。積算回数は16回とした。測定環境は気温25℃相対湿度50%とした。
(6)ガスバリアシートの断面TEM観察、およびガスバリア層の厚さ
得られたガスバリアシートの断面をFIBにより加工して薄片を作製し、透過型電子顕微鏡HF−2000(株式会社日立ハイテクノロジー製)にて200kVで観察を行った。
(7)ガスバリアシートの水蒸気透過量
ガス・水蒸気透過率測定装置DELTAPERM(Technolox社製)を用い、透過面積50.24cm、ガスバリア層が上側になるように上下チャンバーで挟み込み、真空ポンプで上チャンバーと下チャンバーの両方を十分に減圧したのち、両チャンバーから真空ポンプに通じるニードルバルブを閉じ、上チャンバーに水蒸気を導入した。試験中、上チャンバーの温度40℃、湿度90%、圧力50Torrが維持されるよう、水蒸気を導入し続けた。上チャンバーから下チャンバーへ水蒸気が透過し、下チャンバーの圧力が1Torrを超えたら、下チャンバーを再び十分に減圧しなおした。上チャンバーから下チャンバーへの300秒あたりの水蒸気透過量を、下チャンバーの圧力の時間変化から算出し、水蒸気導入開始から10000分以上経過してガスバリア層が十分水蒸気で満たされた後、300秒あたりの水蒸気透過量が一定になった状態において、バリアフィルムの水蒸気透過率とした。
(8)ガスバリアシートの全光線透過率およびヘーズ
全光線透過率およびヘーズは、ヘーズメーターHZ−V3(スガ試験機)を用いてJIS K7361−1及びJIS K7136に基づいて測定した。バックグラウンドとして空気を測定後、ガスバリアシートサンプルを3点用意し、それぞれの測定結果の平均を求めた。
[実施例1]
層状無機化合物としては、溶融法によって合成され、主たる層間イオンがナトリウムイオンであるフッ素化四珪素雲母の分散液(商品名:NTS−5、トピー工業株式会社製、固形分濃度6.0質量%)を用いた。本分散液200gに純水200gを添加し、希釈して固形分濃度を3質量%とした分散液400gを、磁気回転子を用いて2時間撹拌した。遠心分離装置KUBOTA6200(久保田商事株式会社製)を用い、ローター番号AF−5008C、50ml遠沈管を用い、1000rpm、3分の条件で遠心分離を行って、上層をデカンテーションにより取得した。上層の取得重量は375g、固形分濃度は1.7質量%、固形分収率は51%であった。取得した上層375gに純水141gを加えて固形分濃度1.2質量%に希釈した。
陰イオン交換樹脂(アンバーライトIRN78、オルガノ株式会社製)40mlをガラス製のカラムに詰めて、1.2質量%に希釈した前記水分散液を1秒毎に約1滴の速度で上記の陰イオン交換樹脂の詰まったカラムに通し、水酸化物イオンへの陰イオン交換を行った。1Nの塩化アンモニウム水溶液によって十分にアンモニウムイオン型に調整した陽イオン交換樹脂(アンバーライトIR120B、オルガノ株式会社製)約40mlをガラス製のカラムに詰めて、前述の陰イオン交換を行った分散液を、1秒毎に約1滴の速度で上記の陽イオン交換樹脂の詰まったカラムに通し、アンモニウムイオンへの陽イオン交換を行った。得られた分散液をさらに同じ遠心分離装置によって12000G、15分の条件で遠心分離を行ったところ、上澄み、液晶相、沈降物に三層分離した。ここから上澄みをデカンテーションで除去し、液晶相をスポイトで取得した。液晶相として得られた、イオン交換後の分散液の取得重量は139g、固形分濃度は2.8質量%、原料分散液からの固形分収率は33%であった。この分散液中の固形分に対するナトリウムイオンの存在割合は0.05質量%、アンモニウムイオンが同3.5質量%、フッ化物イオンが同0.012質量%、硫酸イオンが同0.002質量%であった。すなわち、前記のイオン交換によってナトリウムイオンの98.5%が除去されたことになる。陽イオン交換後に測定した無機ナノシートの平均粒子径は1120nmであり、アスペクト比は1167であった(なお、これらの値は、基材に塗布する直前の分散液においても同等である)。
このイオン交換後の分散液(分散媒置換用水分散液として)50gを500mL三角フラスコに採取し、アセトニトリル300gを添加し、磁気回転子を用いて混合した。このとき、一部のナノシート成分が凝集した。10分間撹拌後、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン(東京化成工業株式会社製)(アミンとして)300mgを1.5mLのアセトニトリルに溶かしたものを添加、撹拌したところ、ナノシート成分が再度分散した。撹拌は10分続けた。
この混合物を、ガラスフィルター(孔径20〜30μm)で吸引ろ過し、ろ液を500mLナスフラスコに集め、ロータリーエバポレーターにて常圧、85℃の条件にて加熱して水とアセトニトリルを共沸脱揮し、アセトニトリルを主たる分散媒とする、固形分濃度が約2.4質量%の、チクソ性の分散液(有機溶媒分散液として)約40gを得た。カールフィッシャー水分量計によって分析された該分散液中の水の含有量は約18質量%であった。
PENフィルム(帝人デュポン株式会社製Q65H、厚さ100μm、A4サイズ)を、UV/オゾン洗浄装置(サンエナジー株式会社製SKB2003N−04)を用いて、表面洗浄(照度13W/m、3分間)した。洗浄後、フィルムを吸引固定できる多孔質プレートを備え付けたテーブルコーター(テスター産業株式会社製PI−1210)の多孔質プレートに、洗浄面が上になるように吸引固定した。フィルムの片端に、クリアランス25μmのドクターブレード(テスター産業株式会社製)を置き、上記分散液を2g、ドクターブレードで塗布できる領域に均一に滴下し、塗布速度200mm/secにて塗布した。塗布後、溶剤が速やかに揮発し、透明なバリア層を有するガスバリアフィルムが得られた。
塗布後、25℃の室温下で10分放置し、当バリアフィルムのバリア面を、ATR−IRにて分析したところ、アセトニトリルの―C≡N結合に相当する2400cm-1のピークがノイズと遜色ないレベルの小ささであり、ガスバリア層のアセトニトリルが塗布後短時間のうちに揮発していることがわかった。
ガスバリアフィルムをステンレス製ケーキバットに、ポリイミド粘着テープで固定し、これをあらかじめ50℃に加熱しておいたプログラムオーブン(エスペック株式会社製ST−120)に入れ、50℃で10分保持、2時間かけて120℃まで温度を上げ、120℃で2時間保持した。その後、室温まで自然冷却し、ガスバリアフィルムを得た。
ガスバリアフィルムのX線回折を測定したところ、2θ=6.0°(層間距離1.47nmに相当)に001面の一次回折によるシャープなピークが確認された。また、無機ナノシートの配向状態を確認したところ、無機ナノシートの面がガスバリア層の面と略平行であるように積層されていた。
DELTAPERMで測定した水蒸気透過率は、水蒸気注入開始から10000分後で0.0058g/m2・dayであった。また、ガスバリアフィルムの全光線透過率は86%であり、ヘーズは2.3%であった。
[実施例2]
実施例1で塗布・10分間室温下で乾燥したガスバリアフィルムを、50℃で10分保持、100℃まで2時間かけて昇温、100℃で4時間保持して加熱乾燥した。水蒸気透過量は水蒸気注入開始から10000分後で0.0045g/m2・dayであった。また、ガスバリアフィルムの全光線透過率は86%であり、ヘーズは2.3%であった。
[実施例3]
実施例1で塗布・10分間室温下で乾燥したガスバリアフィルムを、50℃で10分保持、100℃まで2時間かけて昇温、100℃で2時間保持して加熱乾燥した。水蒸気透過量は水蒸気注入開始から10000分後で0.0056g/m2・dayであった。また、ガスバリアフィルムの全光線透過率は86%であり、ヘーズは2.4%であった。
[実施例4]
実施例1で塗布・10分間室温下で乾燥したガスバリアフィルムを、さらにそのまま1日放置した。水蒸気透過量は水蒸気注入開始から10000分後で0.0089g/m2・dayであった。また、ガスバリアフィルムの全光線透過率は86%であり、ヘーズは2.7%であった。
[比較例1]
このイオン交換後の分散液(分散媒置換用水分散液として)50gとN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)30gとを混合し、ロータリーエバポレーターにて約70hPa、45℃の条件にて10分間減圧加熱した後、70℃で分散媒を除去し、DMFを主たる分散媒とする、固形分濃度が約2.8質量%の透明な分散液(有機溶媒分散液として)約30gを得た。カールフィッシャー水分量計によって分析された該分散液中の水の含有量は約4質量%であった。
この分散液を実施例1と同様にフィルムに塗布し、塗布後室温下で放置したところ、10分で揮発した。50℃で10分保持、180℃まで2時間かけて昇温、180℃で2時間保持して加熱乾燥した。水蒸気透過量は水蒸気注入開始から10000分後で0.0023g/m2・dayであった。また、ガスバリアフィルムの全光線透過率は82%であり、ヘーズは6.7%であった。
180℃乾燥後のガスバリアフィルムのガスバリア層表面をATR−IRで分析したところ、DMFのC=O結合に相当する1659cm-1のピークが消失し、ガスバリア層のDMFが180℃乾燥により揮発していることがわかった。
[比較例2]
比較例1で塗布・10分間室温下で乾燥したガスバリアフィルムを、50℃で10分保持、120℃まで2時間かけて昇温、120℃で2時間保持して加熱乾燥した。水蒸気透過率を評価したところ、水蒸気透過量は水蒸気注入開始から10000分後で0.473g/m2・dayであった。また、ガスバリアフィルムの全光線透過率は86%であり、ヘーズは2.3%であった。
120℃乾燥後のガスバリアフィルムのガスバリア層表面をATR−IRで分析したところ、DMFのC=O結合に相当する1659cm-1のピークが観測され、ガスバリア層に高沸点溶剤であるDMFが残存していることがわかった。
Figure 2018177634
本発明に係るガスバリアシートは、水蒸気ガスバリア性に優れるため、下記の分野に好適に用いられる。
本発明の無機ナノシート分散液を用いて得られるガスバリアフィルムは、電子デバイスの基板及び封止膜、梱包材、並びに光学フィルム等のアルカリ金属を嫌う用途に好適に用いられる。
電子デバイス用途では、本発明のガスバリアフィルムを、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及び電子ペーパーの基板並びにガスバリア膜、有機EL照明に用いることもできる。また、液晶ディスプレイの演色性を高めるのに用いられる、量子ドット蛍光体を樹脂フィルムにナノ分散させた量子ドットフィルム/シートに対しても好適に用いることができる。
また、無機ナノシート及び添加剤の種類及び含有量を適切に調整することで、ディスプレイ用途に必要な耐熱性、透明性、柔軟性、低線膨張性などの特性を満足させることができ、ガスバリアフィルムに、バックプレーンとなるアクティブマトリックス駆動回路を高温下で直接形成することも可能である。またディスプレイの視認側及び有機EL照明の光取り出し側に本発明のガスバリアフィルムを用いることもできる。
更に、本発明のガスバリアフィルムを電気回路のフレキシブル基板、フレキシブルプリント基板として用いることもできる。フレキシブル基板及びフレキシブルプリント基板の好適な用途としては、RFIDタグの基板、銅張積層板等が挙げられる。
本発明のガスバリアフィルムは、太陽電池の基板、保護層、バックシートにも適用することができる。適用できる太陽電池の種類としては、結晶シリコン系、薄膜シリコン系、CIGS系のような化合物系、色素増感太陽電池、及び有機薄膜太陽電池等が挙げられ、特に高いガスバリア性を要求する有機薄膜太陽電池には好適である。
その他、本発明のガスバリアフィルムは、食品、医薬品又は電子部品等を梱包する包装材又は容器;液体及び気体の搬送用のチューブ及び貯蔵用のタンク等;燃料電池の水素タンク及び輸送用ホース、並びにガソリンのホース及びタンク;真空断熱材の真空保持材等に用いることも好適である。

Claims (10)

  1. 平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシート(A)、
    アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン(B)、
    1気圧下における沸点が125℃以下の有機溶媒(C)、
    水(D)、及び
    アミン(E)
    を含有し、前記有機溶媒(C)と水(D)の合計量を100質量%としたときの水(D)の量が20質量%以下である無機ナノシート分散液。
  2. 前記(A)の無機ナノシートが、スメクタイト族及び雲母族よりなる群から選択される層状無機化合物に由来するものである請求項1に記載の分散液。
  3. 前記(B)が、アンモニウムイオン(NH4 +)である請求項1または2に記載の分散液。
  4. 前記(C)の有機溶媒が、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチル−1−プロパノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ブタノール、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、1,3−ジオキソラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタン、及びジメチルアセタールよりなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれかに記載の分散液。
  5. 前記(E)のアミンがジアミンである請求項1〜4のいずれかに記載の分散液。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載の分散液の製造方法であって、
    アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオンを層間に有し、平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシートの水分散液と、1気圧下における沸点が125℃以下の第1の有機溶媒と、アミンと、任意に用いられる第2の有機溶媒とを混合し、
    水を前記第1の有機溶媒及び/又は第2の有機溶媒と共沸除去する無機ナノシート分散液の製造方法。
  7. 請求項6に記載の方法で製造された分散液を基材フィルムに塗布後、20℃〜120℃で乾燥することを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。
  8. 請求項7に記載の方法で製造されたガスバリアフィルムであって、水蒸気透過率が0.01g/m2・24時間未満であることを特徴とするガスバリアフィルム。
  9. 平均アスペクト比が100以上4000以下である無機ナノシート、アンモニウムイオンまたは第1〜3級アミンがプロトン化したイオン、及びアミンを含むガスバリア層が、ガラス転移点が50℃以上、125℃以下である樹脂基材の上に積層されたガスバリアフィルムであって、水蒸気透過率が0.01g/m2・24時間未満であるガスバリアフィルム。
  10. 基材を含めたガスバリアフィルムの全光線透過率が85%以上であり、ヘーズが3.0%以下である請求項8又は9に記載のガスバリアフィルム。
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