JP2004217766A - ガスバリア性組成物及びこれを用いたガスバリア性フィルム - Google Patents
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Abstract
【課題】高湿度下におけるガスバリア性、及び水蒸気バリア性が向上し、かつ、耐熱水性の優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【解決手段】水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物、並びに平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有する。
【選択図】 なし
【解決手段】水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物、並びに平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有する。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガスバリア性組成物、及びこれを用いたガスバリア性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
食品や薬品の包装分野において、内容物の品質劣化を防ぐ目的で、酸素ガスバリア性等のガスバリア性に優れている包装材料が使用されている。このようなガスバリア性フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンを積層したフィルム、ポリビニルアルコール系樹脂を用いたフィルム等が知られている。特に、上記ポリ塩化ビニリデンを積層したフィルムは、食品包装用として幅広く使用されている。
【0003】
しかし、上記ポリ塩化ビニリデンを積層したフィルムは、近年のダイオキシンをはじめとする環境問題から、使用が控えられる傾向にある。また、上記ポリビニルアルコール系樹脂を用いたフィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂が水酸基を含有するため、高湿度下でのガスバリア性が低下する問題点を有する。
【0004】
これに対し、高湿度下でのガスバリア性を向上させる方法として、無機層状化合物を高水素結合性樹脂に均一分散させた塗工用組成物を用いたフィルムが特許文献1等に多数開示されている。
【0005】
また、高湿度下でのガスバリア性を向上させる方法として、ポリビニルアルコールあるいはエチレン−ビニルアルコールコポリマーとアルコキシシラン及びシランカップリング剤を含有する組成物を、ゾル−ゲル法によって重縮合した複合ポリマーをフィルムに塗工した例が特許文献2や特許文献3等に開示されている。
【0006】
さらに、高湿度下でのガスバリア性を向上させる更なる方法として、無機層状化合物、樹脂及び金属アルコキシドの加水分解物からなる積層体が特許文献4等に開示され、さらにまた、金属アルコキシドの加水分解物又は加水分解縮合物と水素結合性樹脂との反応生成物及び平板状顔料含有するガスバリア層を形成したフィルムが特許文献5等に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−93133号公報
【特許文献2】
特許第2556940号公報
【特許文献3】
特許第2880654号公報
【特許文献4】
特開平11−129379号公報
【特許文献5】
特開2001−260269号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載のフィルムは、耐熱水性が不十分な傾向にある。また、上記特許文献2や特許文献3に記載のフィルムは、耐熱水性はあるものの、高湿度下におけるガスバリア性は、必ずしも十分とはいい難い場合があり、さらに、水蒸気バリア性はほとんど有さない。
さらにまた、上記特許文献4や特許文献5に記載の積層体は、高湿度下におけるガスバリア性、及び水蒸気バリア性は、必ずしも十分とはいい難い場合がある。
【0009】
そこで、この発明は、高湿度下におけるガスバリア性、及び水蒸気バリア性が向上し、かつ、耐熱水性の優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物、並びに平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有したガスバリア性組成物を、基材の少なくとも片面に塗工したガスバリア性フィルムを用いることにより、上記課題を解決したのである。
【0011】
水溶性高分子と、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物とが重縮合反応するので、有機物と無機物とが複合した緻密な構造体ができ、この構造体の隙間に、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が埋め込まれ、非常に緻密な膜が得られる。さらに、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物として、所定の回折ピークの相対強度を有する鉱物を用いるので、膜状としたとき、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性等を発揮する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下において、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかるガスバリア性組成物は、水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物、及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した組成物である。
【0013】
上記水溶性高分子とは、水溶性を有する高分子物質をいい、官能基として、水酸基、アミノ基、酸アミド基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を有するものがあげられる。この水溶性高分子の例としては、ポリビニルアルコール系重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド等や、これらの共重合体、変性体等の誘導体があげられる。これらの中でも、ポリアクリルアミドが好ましい。ポリアクリルアミドを用いることにより、得られるガスバリア性組成物からなる層と後述する基材との密着性が向上し、より良好な性能が得られる。これらは、少なくとも1種が採用され、1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
上記水溶性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、500〜1500万が好ましく、5000〜1000万がより好ましい。500より小さいと、最終的に得られる組成物のガスバリア性が悪くなる傾向がある。一方、1500万より大きいと、水溶液とした場合の粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0015】
上記金属アルコキシドは、下記の化学式(1)であらわされる化合物をいう。
M(OR)n (1)
上記式(1)において、Mは、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム等から選ばれる少なくとも一種の金属元素を示し、Rは、炭素数1〜8の低級アルキル基を示し、nは1〜4の整数を示す。
【0016】
上記金属アルコキシドは、その加水分解物及び/又はその縮合物を使用するので、触媒の作用で加水分解及び縮合するものであれば特に限定されない。この金属アルコキシドの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン等のチタンアルコキシド化合物、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド化合物、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド化合物等があげられる。これらの中でも、アルコキシシラン化合物が最も好適である。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記金属アルコキシドの使用量は、特に限定されないが、上記水溶性高分子100重量部に対して、50〜5000重量部がよく、100〜4000重量部が好ましい。50重量部より少ないと、十分なガスバリア性や耐熱水性が発現しにくくなる傾向にある。また、5000重量部より多いと、得られるガスバリア性組成物からなるコート層の脆性が増し、性能も悪くなる傾向にある。
【0018】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とは、下記の式(2)を満たす人工鉱物であり、SiO4正四面体を基本にして、この四面体が六角網目の板状に連なっており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオンがイオン結合し、サンドイッチ層を形成している。このサンドイッチ層とサンドイッチ層の間に層間イオンと呼ばれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンが非常に弱いイオン結合で配位している構造を有する。
X0.33〜1.0Y2〜3Z4O10F2 (2)
なお、ここで、Xは配位数12の陽イオン、Yは配位数6の陽イオン、Zは配位数4の陽イオンを表す。具体的には、Xは、Na+、K+、Ca2+、Ba2+、Rb2+、Sr2+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、また、Yは、Mg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Al3+、Fe3+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、さらに、Zは、Si4+、Ge4+、Al3+、Fe3+、B3+から選ばれる1種または2種以上の陽イオンである。
【0019】
また、一般式(2)のZに入るSiの数により、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物には、二ケイ素型(ジシリシックタイプ)、三ケイ素型(トリシリシックタイプ)、四ケイ素タイプ(テトラシリシック)の各タイプが存在する。これらの中でも、四ケイ素タイプであり、上記X、すなわち、層間イオン種がNa+或いはLi+であり、結晶構造中において電荷のバランスを層間イオンが補っている四ケイ素雲母は、膨潤性を有しており、特に好ましい。
【0020】
この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例としては、ナトリウムテトラシリシックマイカ[NaMg2.5(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムテニオライト[(NaまたはLi)Mg2Li(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムヘクトライト[(NaまたはLi)0.33Mg2.67Li0.33(Si4O10)F2]などが挙げられ、これらの中でも、ナトリウムテトラシリシックマイカ、ナトリウム又はリチウムヘクトライトがより好適に用いられる。これらは1種のみでも2種以上混合しても使用することができる。なお、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例についてのそれぞれの組成式については、理想的な組成を示しており、厳密に一致している必要はない。
【0021】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、原料として、目的とする膨潤性フッ素雲母の化学組成となるように、シリカ、マグネシア、フッ化マグネシウム、ケイフッ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウム等を調合し、これを内燃式電気炉中、1400〜1500℃で溶融後、溶融体を鋳型に流出させて冷却する過程で、鋳型内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法といわれる公知の方法によって合成することができる。
【0022】
また、他の合成方法として、特開平2−149415号公報に開示されているような、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして、膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法をあげることができる。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られる。
【0023】
上記の溶融法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、通常数重量%程度又はそれ以上のオーダーで、合成フッ素雲母系鉱物とはいえない副生成物(以下、単に「副生成物」と称する。)や未反応原料等が混在する。また、この溶融法での製造時には、結晶自体は大きく良好なものが得られるが、上記副生成物として、主にクリストバライト等が混在する。
【0024】
上記のインターカレーション法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、溶融法に比べて、副生成物や未反応原料等の不純物が少なく比較的純度の高いものが得られるものの、合成フッ素雲母系鉱物に類縁する副生物(以下、単に「副生物」と称する。)が混在する。この副生物の例としては、膨潤性に乏しい相からなる合成フッ素雲母系鉱物があげられる。
【0025】
市販されている膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の中には、副生成物や未反応原料等をあるレベルまで減少させたものがあるが、これらの市販品には、副生成物や副生物が少量含まれている。
【0026】
これら副生成物や副生物を少量含む膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を水溶性高分子と混合分散し、フィルムに塗工した場合、高湿度下でのガスバリア性を低下させたり、さらにまた透明性、平滑性なども低下させ、非常に重要な問題となる。
【0027】
これらの存在は、X線回折分析により得られる回折ピークで確認することができる。すなわち、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)については、面間隔dがほぼ9.6Å(9.4〜9.8Å)のピークで確認することができる。また、クリストバライトについては、面間隔dがほぼ4.0Å(3.9〜4.1Å)のピークで確認することができる。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物については、面間隔dがほぼ12.4Å(12.1〜12.6Å)のピークで確認することができる。いずれも、ピークトップの強度を評価する。測定は、120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて行われる。なお、サンプルの粒度は、100メッシュのふるいを通過するものに揃えた。
【0028】
(1)粉末X線回折分析条件
装置:理学電機(株)製RINT2000シリーズ、X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)
カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、走査軸:2θ/θ
【0029】
(2)ピーク強度Iの算出条件
平滑化(点数9)、バックグラウンド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1 0.5)
【0030】
具体的には上記粉末X線回折分析において、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)を示す面間隔dがほぼ9.6Åの回折ピーク強度を[Id=9.6 Å]、クリストバライトを示す面間隔dがほぼ4.0Åの回折ピーク強度を[Id=4.0 Å]、及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を示す面間隔dがほぼ12.4Åの回折ピーク強度を[Id=12.4 Å]としたとき、各回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20を満たすのがよく、さらに[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]=0、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦10であるのが好ましい。さらにまた、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]=0、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦4であるのがより好ましい。
【0031】
[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100>2である場合や、[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100>20である場合は、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0032】
さらに本発明における上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の純度とは以下に示す粒子の沈降テストにより求めた値が所定の条件を満たす必要がある。イオン交換水中に膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分が1.5重量%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行って十分分散させる。その水分散液50mlを50mlメスシリンダー(胴径25mmφ×全長220mm)に入れ、静置する。6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定する。このとき、上記メスシリンダー中の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の全量をA重量部、完全沈降した粒子の量をB重量部としたとき、下記の式(3)を満たすのがよい。
(A−B)/A×100≧90 (3)
また、上記式(3)の左辺の値が、92以上が好ましく、95以上がより好ましい。上記式(3)の左辺の値が、90より小さいと、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0033】
なお、上記の容器の底面に完全沈降したか否かは、目視で判断し、メスシリンダーの底面に接触しているものと目視で判断されたものを完全沈降した粒子とする。また、粒子が、3層以上に分離した場合であっても、完全に沈降した粒子のみを対象とし、これらの重量を測定する。
【0034】
上記に示したX線回折分析から得られる相対強度が前述の範囲内にある場合、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたガスバリア性積層体が得られる。さらに、上記沈降テストにおける純度が前述の値を満たす場合には、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともにより優れたガスバリア性積層体が得られる。
【0035】
上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物、すなわち、X線回折分析から得られる相対強度が前述の条件を満たす膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得るためには、以下の精製方法を採用することができる。上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製、すなわち、上記の非膨潤性合成フッ素雲母系鉱物等の副生物や、クリストバライト等の副生成物、未反応原料等(以下、「不純物等」と称する。)の除去は、遠心分離又はデカンテーションにより行うことができる。具体的には、上記遠心分離は、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物をホモジナイザーなどで固形分濃度が0.5〜12重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは3〜8重量%となるように十分水に分散させたものを、200〜100000G、好ましくは300〜50000G、より好ましくは500〜20000Gの範囲で、10秒〜30分間の条件で行い、沈殿した不純物等を取り除くことができる。200G未満だと、不純物等の分離を十分に行うのが困難となる傾向がある。一方、100000Gより大きくてもよいが、遠心分離機の性能と能力の面から、100000G程度で十分である。
【0036】
また、上記デカンテーションは、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度が0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4.5重量%、さらに好ましくは1〜4重量%となるよう水に分散させ、ホモジナイザーなどを用いて十分分散させたものを、1〜120時間、好ましくは3〜72時間、より好ましくは8〜48時間静置させることにより、沈殿した不純物等を取り除くことができる。これらのいずれの方法でも、上澄みの懸濁液から膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を回収することにより、上記の高純度の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。1時間より短いと、不純物等との分離が十分に行われない場合がある。また、120時間より長いと、生産性の低下を招くだけでなく、収率も低下する傾向がある。
上記の遠心分離処理とデカンテーション処理とは、いずれか一方のみを行っても、両方を続けて行ってもよい。
なお、上記分散液に使用される分散媒としては、イオン交換水や蒸留水等があげられる。
【0037】
上記の精製処理に供与される膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、デカンテーション法を用いる場合、6μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。6μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。遠心分離法を用いる場合、2μm以上であるのが好ましく、4μm以上がより好ましい。2μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。
【0038】
また、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の遠心分離やデカンテーションによる精製の前に、ガスバリア性、透明性、平滑性などの物性を損なわない範囲であれば、分散剤等を少量添加して分散処理をしてもよい。この場合、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散して分散液を調製し、これに上記分散剤を添加して分散処理をすることができる。
【0039】
上記インターカレーション法によって製造した膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の場合には、水に長時間浸漬することにより、膨潤性に乏しい相がある程度、膨潤する相に変化していく。この状態のものについて、上記デカンテーション及び遠心分離処理により上澄み分を採取することにより、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。このとき、上記デカンテーション及び遠心分離処理の前に上記分散処理を施すと、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を短時間で効率よく得ることができる。
【0040】
上記分散剤の種類としては、高分子型、界面活性型、及び無機型のもの等が例示できるが、中でもポリカルボン酸型高分子を用いるのが好ましい。ポリカルボン酸型高分子を用いる理由としては、上記デカンテーション及び遠心分離処理時の収率がよく、さらに最終的に得られるフィルムの高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたものが得られる。
【0041】
この上記ポリカルボン酸型高分子としては、平均分子量は1000〜100万のナトリウム塩やアンモニウム塩を好適に用いることができる。
【0042】
上記分散媒としては、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を上記分散媒に分散させるときの膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度は、0.5〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。0.5重量%より少ないと、生産効率の低下を招く場合がある。一方、15重量%より多いと、粘度が高くなりすぎ、分散しにくくなる傾向がある。
【0043】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散させた分散液への上記分散剤の添加量は、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。0.1重量部より少ないと、分散性能が発揮されない場合がある。一方、10重量部より多くても、期待されたほどの分散性能が発揮されない場合がある。
【0044】
上記分散剤を添加した分散液の分散処理方法としては、既知の分散機を用いて、撹拌等の分散処理することができるが、高速ホモジナイザー等を使用するのが好ましい。分散時間については特に制限は無いが、10分〜1時間程度の比較的短時間で十分である。
【0045】
上記の精製処理によって不純分等を取り除いた後の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、0.05〜10μmがよく、0.1〜8μmがより好ましい。0.05μmより小さいと、高湿度下でのガスバリア性が十分発現されず、一方、10μmより大きいと、塗工面の透明性や平滑性が失われるため実用上好ましくない。なお、この平均粒径は、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱粒度分布測定装置LA920を使用し、分散媒としてイオン交換水を用いて測定することができる。なお本発明でいう平均粒径とはメジアン径(粒子径基準は体積)を意味する。
【0046】
この発明にかかるガスバリア性組成物中の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物との混合割合は、特に限定されないが、重量比で、水溶性高分子/膨潤性合成フッ素雲母系鉱物=99.5/0.5〜20/80がよく、99/1〜30/70が好ましい。膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が0.5重量%より少ないと、高湿度下でのガスバリア性や水蒸気バリア性が不十分となる場合がある。一方、80重量%より多くなると、透明性や基材との密着性が悪くなったり、上記ガスバリア性組成物がゲル化しやすくなる傾向がある。
【0047】
上記金属アルコキシドの加水分解反応や縮合反応を行うためには、水、加水分解反応や縮合反応を行う触媒、及び有機溶媒が用いられる。さらに、得られるガスバリア性組成物からなる層の耐熱水性をさらに向上させたり、膜強度及び基材との密着性を向上させる目的で、架橋剤を添加することができる。さらにまた、上記の水溶性高分子と金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との結合性をより向上させるため、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物を添加してもよい。
【0048】
上記金属アルコキシドの加水分解反応及びその縮合反応、又はそれらの反応生成物と上記水溶性高分子との重縮合反応は、酸性条件、塩基性条件のいずれの条件下においても促進される。酸性条件下における触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸があげられる。また、塩基性条件下における触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基、アンモニア、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等の有機塩基があげられる。これらの中でも、酸性条件が好ましく、塩酸が特に好ましい。さらに、これらの触媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。さらにまた、触媒は、加水分解反応を目的とする触媒と、重縮合反応を目的にする触媒とに分けて用いてもよい。
【0049】
上記の触媒の添加量は、特に限定されず、溶液がゲル化しない範囲内で、任意の量を添加することができる。
【0050】
上記有機溶媒は、上記の金属アルコキシドを溶解させ、さらに、上記水溶性高分子の水溶液と相溶するものであれば特に限定はされないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールが好ましい。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記有機溶媒の添加量は、特に限定されないが、金属アルコキシド100重量部に対し、2〜500重量部がよく、10〜300重量部が好ましい。2重量部より少ないと、金属アルコキシドが十分に溶解せず、加水分解反応が抑制される。一方、500重量部より多いと、水溶性高分子の溶解性が低下する傾向がある。
【0052】
上記架橋剤とは、上記ガスバリア性組成物中の他の成分と架橋反応しうるものであれば、特に制限されない。上記架橋剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物等があげられる。これらの中でも、特に性能の向上に効果があるのは、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物である。
【0053】
上記カルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミド化合物、ポリウレタンの技術分野において公知のジイソシアネート化合物の脱炭酸反応によって得られるポリカルボジイミド化合物等があげられる。上記のポリウレタンの技術分野において公知のジイソシアネート化合物としては、メチレンジフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンー1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネン・ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等があげられる。この中でも、特に親水性のカルボジイミド化合物が好適であり、具体例としては、日清紡(株)製:商品名 カルボジライト等があげられる。
【0054】
上記エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロジレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル等のトリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のテトラグリシジルエーテル類などがあげられる。
【0055】
上記イソシアネート化合物の具体例としては、ブロック化イソシアネート化合物(例えば第一工業製薬(株)製、商品名 エラストロン、エラストロンBNシリーズ)、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロへキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0056】
上記アルデヒド化合物の具体例としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサンジアール、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘキサンジアール、5−メチルヘプタンジアール、4−メチルオクタンジアール、2,5−ジメチルオクタンジアール、3,6−ジメチルデカンジアール、オルトフタルアルデヒド等があげられる。
【0057】
上記の架橋剤を添加する場合には、その添加量は特に限定されないが、水溶性高分子内の反応性基1モルに対して、0.1×10−3〜1モルがよく、0.5×10−3〜0.5モルが好ましい。0.1×10−3モルより少ないと得られるガスバリア性組成物からなる層の性能の向上に特に効果はない。一方、1モルより多いと、溶液がゲル化したり、得られるガスバリア性フィルムの性能が低下する傾向がある。
【0058】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物とは、一分子中に有機官能基及び加水分解基を有し、通常では結合しにくい有機質と無機質とを結合させるバインダーとして作用するものをいう。
【0059】
上記有機官能基としては、ビニル基、アミノ基、ハロゲン基、エポキシ基、メタクリロイル基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、アルデヒド基、イソシアネート基、スルホン酸基、リン酸基等があげられる。これらは、1種の官能基のみを有してもよく、2種以上の官能基を有してもよい。
【0060】
上記加水分解基とは、無機質と化学結合できる官能基をいい、低級アルコキシル基をいう。具体的には、メトキシ基、エトキシ基等があげられる。これは、1種のみでもよく、2種以上を有していてもよい。
【0061】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等があげられる。これらの中でも、エポキシ系の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等がより好ましい。
【0062】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物を添加する場合には、その添加量は、特に限定されないが、金属アルコキシド100重量部に対し、0.001〜100重量部がよく、0.01〜25重量部が好ましい。上記範囲外の添加量だと、得られるガスバリア性フィルムの性能が低下する傾向がある。
【0063】
上記ガスバリア性組成物には、最終的に得られるガスバリア性フィルムの性能を低下させない範囲で、分散剤、可塑剤等の各種添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0064】
次に、この発明にかかるガスバリア性組成物の製造方法について説明する。上記の水溶性高分子、金属アルコキシド又はその加水分解物及び/若しくはその縮合物、並びに膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を混合する。これらの混合順序は特に制限されないが、金属アルコキシドを直接加える場合は、まず、上記水溶性高分子の水溶液に有機溶媒及び触媒を添加し、次いで、金属アルコキシド及び、必要に応じて、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物を混合させ、溶液を完全に相溶させ、必要に応じて、さらにその他の各種添加剤を加えることが好ましい。
【0065】
また、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を当初から含有させる場合は、上記の水溶性高分子の水溶液に混合させるのがよい。この際、両者の混合方法は、特に限定されないが、上記水溶性高分子の水溶液に直接、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を添加してもよく、また、上記水溶性高分子の水溶液に、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物をあらかじめ膨潤・へき開させた分散液を添加してもよい。
【0066】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を当初から含有させる場合は、上記の水溶性高分子と、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とを複合させながら、上記水溶性高分子と、上記金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との重縮合反応を行うので、一液型のガスバリア性組成物が得られる。
【0067】
この一液型のガスバリア性組成物は、膜としたとき、非常に緻密な膜となる。さらに、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物として、所定の回折ピークの相対強度を有する鉱物を用いる。これらにより、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性、耐熱水性等を発揮する。
【0068】
この発明にかかるガスバリア性組成物を周知の方法で成形することにより、ガスバリア性フィルムを得ることができる。また、上記ガスバリア性組成物を、基材の少なくとも片面に塗工することによっても、ガスバリア性フィルムを製造することができる。
【0069】
上記基材としては、ガス透過性の有無に関わらず、基材としての強度を有していればよく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、及びそれらの混合樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる高分子樹脂フィルム、又はそれらの高分子樹脂フィルムの積層体があげられる。この高分子樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、また、延伸フィルムであってもよい。
【0070】
なお、上記基材の表面には、接着性を向上させるため、公知のコロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、アンカーコート剤塗布処理などを行ってもよい。また、上記基材として、上記樹脂フィルムの表面に無機酸化物蒸着層を形成した蒸着フィルム等を用いてもよい。この場合、上記ガスバリア性組成物を、上記蒸着フィルムの蒸着面に塗工してもよい。
【0071】
上記ガスバリア性組成物を塗工する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常の塗工方法を採用することができる。なお、コーティングはフィルムの延伸前であっても延伸後であってもよい。
【0072】
上記ガスバリア性組成物を上記基材に塗工することによって形成されるガスバリアコート層の乾燥は特に限定されないが、基材の融点及び軟化点以下の温度で行うことができ、有機物と無機物の複合化反応が十分に行われる温度でよい。本発明の上記ガスバリア性組成物は非常に反応性に富むため、有機物と無機物の複合化反応に120℃を超える温度・長時間での熱処理を必要としない。120℃以下、数秒の比較的低温・短時間での乾燥・熱処理で十分である。
【0073】
さらに、上記ガスバリア性組成物を塗工し、乾燥させた基材を、エージングすることにより、形成されたガスバリアコート層の架橋密度を増大させ、よりバリア性を向上させることができる。このエージングの温度や時間は、特に限定されないが、20〜120℃で1〜150時間が好ましく、30〜70℃で6〜100時間がより好ましい。
【0074】
上記温度が20℃より低いと、エージング時間がかかりすぎる傾向にあり、一方、120℃を超えると、基材にダメージを与える場合がある。また、上記時間が、1時間より短いと、十分に架橋密度を増大させることができない場合がある。一方、150時間を超えてもよいが、特に性能向上に与える効果はない。
【0075】
上記ガスバリア性組成物は、例えば、溶液を加熱する等の操作によって、急激に有機物と無機物とを複合化させてしまうと、多孔質な構造となってしまい、十分な性能が得られない場合がある。このため、基材に塗工、乾燥させてから、上記エージング等の操作で徐々に反応させることによって、より緻密な構造を造ることができる。
【0076】
このガスバリア性フィルムは、緻密な構造を有するガスバリア層を有するので、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性、耐熱水性等を発揮し、また、表面の平滑性及び透明性に優れる。
【0077】
この発明にかかるバリア性フィルムは、高湿度下、具体的には23℃、90%RHでのガスバリア性が非常に良好であるハイバリアフィルムである。このガスバリアコート層1μmあたりの23℃、90%RHでの酸素透過度は、1cc/m2・day・atm以下がよく、0.8cc/m2・day・atm以下が好ましい。1cc/m2・day・atmより大きいと、ハイバリア性包装材料とした場合の実用性に欠ける。
【0078】
この発明にかかるガスバリア性フィルムは、そのままガスバリア性フィルムとして使用することができ、また、このガスバリア性フィルムを他のフィルム又はシートに積層して、積層体を形成することができる。この積層体は、ガスバリア性を有する積層体として使用することができる。
【0079】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明する。まず、使用原料、精製方法及び評価方法について下記に示す。
[使用原料]
【0080】
(水溶性高分子)
・ポリビニルアルコール…(株)クラレ製:PVA117(平均重合度1700、以下、「PVA」と略する。)
・ポリアクリルアミド…東京化成工業(株):試薬(10%水溶液、重量平均分子量70万〜100万、以下、「PAM」と略する。)
・ポリエチレンイミン…日本触媒(株)製:エポミンP−1000(数平均分子量70000、以下、「PEI」と略する。)
・メチルセルロース…信越化学工業(株)製:メトローズSM−100(メチル基29重量%、以下、「MC」と略する。)
【0081】
(金属アルコキシド)
・テトラエトキシシラン…多摩化学工業(株)製:正珪酸エチル(以下、「TEOS」と略する。)
・テトラプロピルチタネート…松本製薬工業(株)製:オルガチックスTA−10(以下、「TA−10」と略する。)
・テトラプロピルジルコニウム…松本製薬工業(株)製:オルガチックスZA−40(以下、「ZA−40」と略する。)
【0082】
(無機層状化合物)
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製:NTS10重量%(ゾル)、平均粒径13.5μm)を固形分5重量%となるようにイオン交換水に分散させ、4000Gで5分間遠心沈降分離を行い、上澄みを採取して調製した(以下、「P−NTS」と略する。)。このP−NTSの平均粒径は0.9μm、粉末X線回折法から得られる回折ピークの相対強度は、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100=0、[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100=0であった。
【0083】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製:NTS10重量%(ゾル)、平均粒径13.5μm)をそのまま使用した(以下、「NTS」と略する。)。このNTSの粉末X線回折法から得られる回折ピークの相対強度は、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100=0、[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100=56であった。
【0084】
・精製モンモリロナイト…クニミネ工業(株)製:クニピアG(平均粒径1.2μm、以下、「モンモリロナイト」と略する。)
【0085】
(架橋剤)
・カルボジイミド化合物…日清紡(株)製:カルボジライト V−02−L2(有効成分40重量%、カルボジイミド当量385、以下、「カルボジイミド」と略する。)
・エポキシ化合物…ナガセケムテックス(株)製:デナコールEX850(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、以下、「エポキシ」と略する。)
・イソシアネート化合物…第一工業製薬(株)製:エラストロンBN−08(以下、「イソシアネート」と略する。)
【0086】
[評価方法]
(フィルムのガスバリア性)
[酸素透過度]
酸素透過試験器(Modern Contorol社製、OX−TRAN2/20)により、23℃、相対湿度90%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。
フィルムのガスバリア性は基材のフィルムの種類や厚み、およびコート層の厚みにより変化するため、下記の式に従って、ガスバリアコート層1μmあたりの酸素透過度(Psamp1e)(単位:cc・1μm/m2・day・atm)を算出した。
1/Ptotal=1/Psamp1e+1/Pbase
Ptotal;測定結果
Pbase;基材フィルムの酸素透過度
Psamp1e;ガスバリアコート層の酸素透過度
【0087】
[水蒸気透過度]
水蒸気透過試験器(Modern Contorol社製、PARMATRAN−W3/31)により、40℃、相対湿度90%の雰囲気下における水蒸気透過度(単位:g/m2・day)を測定した。
【0088】
(外観)
ガスバリア性組成物をコートしたフィルムの外観を以下の基準で評価した。
○:透明性が良好で、基材フィルムと変化なし
×:白濁する
【0089】
(耐熱水性)
80℃の温水中に、ガスバリア性組成物をコートしたフィルムを30分間浸漬し、ガスバリア性組成物の重量減少を測定した。重量残存率を下記の基準で評価した。
◎:重量残存率100%
○:重量残存率80%以上、100%未満
×:重量残存率80%未満
【0090】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
表1に記載の水溶性高分子の2重量%水溶液250g(固形分5g)を調製し、表1に示す無機層状化合物の固形分2.1gを混合させた。次いで、エタノール75gを添加した後、1N塩酸水溶液を適量添加してから、表1に示す金属アルコキシドを75gを加え、必要に応じて、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物(表1において、「特定シラン化合物」と称する。)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製:KBM−403)を7.5gくわえた。次に、必要に応じて、液が均一になった時点で、表1に記載の架橋剤を0.5g添加し、ガスバリア性組成物を得た。
【0091】
得られたガスバリア性組成物を、基材フィルムである延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製:E5100、厚さ12μm)のコロナ処理面に乾燥後の塗工厚みが1μmとなるようにメイヤーバーで塗工した。その後、100℃で5分間、熱風乾燥機中で乾燥・熱処理を行い、ガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを用いて上記の試験及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
(比較例3)
特定シラン化合物を添加し、無機層状化合物を添加しない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性組成物及びガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを用いて上記の試験及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0093】
(比較例4)
表1に記載の水溶性高分子の2重量%水溶液250g(固形分5g)を調製し、表1に示す無機層状化合物の固形分2.1gを混合させて樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、上記の基材フィルムのコロナ処理面に乾燥後の塗工厚みが1μmとなるようにメイヤーバーで塗工した。その後、100℃で5分間、熱風乾燥機中で乾燥・熱処理を行い、ガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを用いて上記の試験及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【発明の効果】
この発明にかかるガスバリア性組成物は、水溶性高分子と金属アルコキシドとの加水分解物及び/又はその縮合物を含有するので、それらが重縮合反応し、有機物と無機物とが複合した緻密な構造体ができ、この構造体の隙間に、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が埋め込まれ、膜としたとき、非常に緻密なものが得られる。
【0096】
また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物として、所定の回折ピークの相対強度を有する鉱物を用いたガスバリア性組成物を用いるので、得られるガスバリア性フィルムは、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性、耐熱水性等を発揮すると共に、表面の平滑性及び透明性に優れる。
【発明の属する技術分野】
この発明は、ガスバリア性組成物、及びこれを用いたガスバリア性フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
食品や薬品の包装分野において、内容物の品質劣化を防ぐ目的で、酸素ガスバリア性等のガスバリア性に優れている包装材料が使用されている。このようなガスバリア性フィルムとしては、ポリ塩化ビニリデンを積層したフィルム、ポリビニルアルコール系樹脂を用いたフィルム等が知られている。特に、上記ポリ塩化ビニリデンを積層したフィルムは、食品包装用として幅広く使用されている。
【0003】
しかし、上記ポリ塩化ビニリデンを積層したフィルムは、近年のダイオキシンをはじめとする環境問題から、使用が控えられる傾向にある。また、上記ポリビニルアルコール系樹脂を用いたフィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂が水酸基を含有するため、高湿度下でのガスバリア性が低下する問題点を有する。
【0004】
これに対し、高湿度下でのガスバリア性を向上させる方法として、無機層状化合物を高水素結合性樹脂に均一分散させた塗工用組成物を用いたフィルムが特許文献1等に多数開示されている。
【0005】
また、高湿度下でのガスバリア性を向上させる方法として、ポリビニルアルコールあるいはエチレン−ビニルアルコールコポリマーとアルコキシシラン及びシランカップリング剤を含有する組成物を、ゾル−ゲル法によって重縮合した複合ポリマーをフィルムに塗工した例が特許文献2や特許文献3等に開示されている。
【0006】
さらに、高湿度下でのガスバリア性を向上させる更なる方法として、無機層状化合物、樹脂及び金属アルコキシドの加水分解物からなる積層体が特許文献4等に開示され、さらにまた、金属アルコキシドの加水分解物又は加水分解縮合物と水素結合性樹脂との反応生成物及び平板状顔料含有するガスバリア層を形成したフィルムが特許文献5等に開示されている。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−93133号公報
【特許文献2】
特許第2556940号公報
【特許文献3】
特許第2880654号公報
【特許文献4】
特開平11−129379号公報
【特許文献5】
特開2001−260269号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載のフィルムは、耐熱水性が不十分な傾向にある。また、上記特許文献2や特許文献3に記載のフィルムは、耐熱水性はあるものの、高湿度下におけるガスバリア性は、必ずしも十分とはいい難い場合があり、さらに、水蒸気バリア性はほとんど有さない。
さらにまた、上記特許文献4や特許文献5に記載の積層体は、高湿度下におけるガスバリア性、及び水蒸気バリア性は、必ずしも十分とはいい難い場合がある。
【0009】
そこで、この発明は、高湿度下におけるガスバリア性、及び水蒸気バリア性が向上し、かつ、耐熱水性の優れたガスバリア性フィルムを提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明は、水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物、並びに平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有したガスバリア性組成物を、基材の少なくとも片面に塗工したガスバリア性フィルムを用いることにより、上記課題を解決したのである。
【0011】
水溶性高分子と、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物とが重縮合反応するので、有機物と無機物とが複合した緻密な構造体ができ、この構造体の隙間に、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が埋め込まれ、非常に緻密な膜が得られる。さらに、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物として、所定の回折ピークの相対強度を有する鉱物を用いるので、膜状としたとき、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性等を発揮する。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下において、この発明について詳細に説明する。
この発明にかかるガスバリア性組成物は、水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物、及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有した組成物である。
【0013】
上記水溶性高分子とは、水溶性を有する高分子物質をいい、官能基として、水酸基、アミノ基、酸アミド基、チオール基、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等を有するものがあげられる。この水溶性高分子の例としては、ポリビニルアルコール系重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、アミロース、アミロペクチン、プルラン、カードラン、ザンタン、キチン、キトサン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリベンゼンスルホン酸、ポリベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド等や、これらの共重合体、変性体等の誘導体があげられる。これらの中でも、ポリアクリルアミドが好ましい。ポリアクリルアミドを用いることにより、得られるガスバリア性組成物からなる層と後述する基材との密着性が向上し、より良好な性能が得られる。これらは、少なくとも1種が採用され、1種のみを使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0014】
上記水溶性高分子の重量平均分子量は、特に限定されないが、500〜1500万が好ましく、5000〜1000万がより好ましい。500より小さいと、最終的に得られる組成物のガスバリア性が悪くなる傾向がある。一方、1500万より大きいと、水溶液とした場合の粘度が高くなりすぎる傾向がある。
【0015】
上記金属アルコキシドは、下記の化学式(1)であらわされる化合物をいう。
M(OR)n (1)
上記式(1)において、Mは、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム等から選ばれる少なくとも一種の金属元素を示し、Rは、炭素数1〜8の低級アルキル基を示し、nは1〜4の整数を示す。
【0016】
上記金属アルコキシドは、その加水分解物及び/又はその縮合物を使用するので、触媒の作用で加水分解及び縮合するものであれば特に限定されない。この金属アルコキシドの例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトラ−tert−ブトキシシラン、テトラ−sec−ブトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、テトラメトキシチタン、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラ−n−ブトキシチタン、テトラ−tert−ブトキシチタン、テトラ−sec−ブトキシチタン等のチタンアルコキシド化合物、テトラメトキシジルコニウム、テトラエトキシジルコニウム、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラ−n−プロポキシジルコニウム、テトラ−n−ブトキシジルコニウム、テトラ−tert−ブトキシジルコニウム、テトラ−sec−ブトキシジルコニウム等のジルコニウムアルコキシド化合物、トリメトキシアルミニウム、トリエトキシアルミニウム、トリイソプロポキシアルミニウム、トリ−n−プロポキシアルミニウム、トリ−n−ブトキシアルミニウム、トリ−tert−ブトキシアルミニウム、トリ−sec−ブトキシアルミニウム等のアルミニウムアルコキシド化合物等があげられる。これらの中でも、アルコキシシラン化合物が最も好適である。これらは、少なくとも1種が使用され、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記金属アルコキシドの使用量は、特に限定されないが、上記水溶性高分子100重量部に対して、50〜5000重量部がよく、100〜4000重量部が好ましい。50重量部より少ないと、十分なガスバリア性や耐熱水性が発現しにくくなる傾向にある。また、5000重量部より多いと、得られるガスバリア性組成物からなるコート層の脆性が増し、性能も悪くなる傾向にある。
【0018】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とは、下記の式(2)を満たす人工鉱物であり、SiO4正四面体を基本にして、この四面体が六角網目の板状に連なっており、この上下2枚の板の間に八面体配位をとるイオンがイオン結合し、サンドイッチ層を形成している。このサンドイッチ層とサンドイッチ層の間に層間イオンと呼ばれるアルカリ金属またはアルカリ土類金属イオンが非常に弱いイオン結合で配位している構造を有する。
X0.33〜1.0Y2〜3Z4O10F2 (2)
なお、ここで、Xは配位数12の陽イオン、Yは配位数6の陽イオン、Zは配位数4の陽イオンを表す。具体的には、Xは、Na+、K+、Ca2+、Ba2+、Rb2+、Sr2+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、また、Yは、Mg2+、Fe2+、Ni2+、Mn2+、Al3+、Fe3+、Li+から選ばれる1種または2種以上の陽イオン、さらに、Zは、Si4+、Ge4+、Al3+、Fe3+、B3+から選ばれる1種または2種以上の陽イオンである。
【0019】
また、一般式(2)のZに入るSiの数により、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物には、二ケイ素型(ジシリシックタイプ)、三ケイ素型(トリシリシックタイプ)、四ケイ素タイプ(テトラシリシック)の各タイプが存在する。これらの中でも、四ケイ素タイプであり、上記X、すなわち、層間イオン種がNa+或いはLi+であり、結晶構造中において電荷のバランスを層間イオンが補っている四ケイ素雲母は、膨潤性を有しており、特に好ましい。
【0020】
この膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例としては、ナトリウムテトラシリシックマイカ[NaMg2.5(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムテニオライト[(NaまたはLi)Mg2Li(Si4O10)F2]、ナトリウム又はリチウムヘクトライト[(NaまたはLi)0.33Mg2.67Li0.33(Si4O10)F2]などが挙げられ、これらの中でも、ナトリウムテトラシリシックマイカ、ナトリウム又はリチウムヘクトライトがより好適に用いられる。これらは1種のみでも2種以上混合しても使用することができる。なお、上記の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の具体例についてのそれぞれの組成式については、理想的な組成を示しており、厳密に一致している必要はない。
【0021】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、原料として、目的とする膨潤性フッ素雲母の化学組成となるように、シリカ、マグネシア、フッ化マグネシウム、ケイフッ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、フッ化リチウム、炭酸ナトリウム及び炭酸リチウム等を調合し、これを内燃式電気炉中、1400〜1500℃で溶融後、溶融体を鋳型に流出させて冷却する過程で、鋳型内にフッ素雲母系鉱物を結晶成長させる、いわゆる溶融法といわれる公知の方法によって合成することができる。
【0022】
また、他の合成方法として、特開平2−149415号公報に開示されているような、タルクを出発物質として用い、これにアルカリ金属イオンをインターカレーションして、膨潤性フッ素雲母系鉱物を得る方法をあげることができる。この方法では、タルクに珪フッ化アルカリあるいはフッ化アルカリを混合し、磁性ルツボ内で約700〜1200℃で短時間加熱処理することによって膨潤性フッ素雲母系鉱物が得られる。
【0023】
上記の溶融法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、通常数重量%程度又はそれ以上のオーダーで、合成フッ素雲母系鉱物とはいえない副生成物(以下、単に「副生成物」と称する。)や未反応原料等が混在する。また、この溶融法での製造時には、結晶自体は大きく良好なものが得られるが、上記副生成物として、主にクリストバライト等が混在する。
【0024】
上記のインターカレーション法によって膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を製造する場合、溶融法に比べて、副生成物や未反応原料等の不純物が少なく比較的純度の高いものが得られるものの、合成フッ素雲母系鉱物に類縁する副生物(以下、単に「副生物」と称する。)が混在する。この副生物の例としては、膨潤性に乏しい相からなる合成フッ素雲母系鉱物があげられる。
【0025】
市販されている膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の中には、副生成物や未反応原料等をあるレベルまで減少させたものがあるが、これらの市販品には、副生成物や副生物が少量含まれている。
【0026】
これら副生成物や副生物を少量含む膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を水溶性高分子と混合分散し、フィルムに塗工した場合、高湿度下でのガスバリア性を低下させたり、さらにまた透明性、平滑性なども低下させ、非常に重要な問題となる。
【0027】
これらの存在は、X線回折分析により得られる回折ピークで確認することができる。すなわち、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)については、面間隔dがほぼ9.6Å(9.4〜9.8Å)のピークで確認することができる。また、クリストバライトについては、面間隔dがほぼ4.0Å(3.9〜4.1Å)のピークで確認することができる。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物については、面間隔dがほぼ12.4Å(12.1〜12.6Å)のピークで確認することができる。いずれも、ピークトップの強度を評価する。測定は、120℃で10時間以上乾燥した後、23℃−50%RH状態にて24時間以上放置したサンプルについて行われる。なお、サンプルの粒度は、100メッシュのふるいを通過するものに揃えた。
【0028】
(1)粉末X線回折分析条件
装置:理学電機(株)製RINT2000シリーズ、X線:Cu Kα線 (40kV−30mA)
カウンタモノクロメータ:全自動モノクロメータ、発散スリット:1°、散乱スリット:1°、受光スリット:0.15mm、スキャンスピード:4°/分、スキャンステップ:0.01°、走査軸:2θ/θ
【0029】
(2)ピーク強度Iの算出条件
平滑化(点数9)、バックグラウンド除去(曲率0.00)、Kα2除去(Kα2/Kα1 0.5)
【0030】
具体的には上記粉末X線回折分析において、膨潤性に乏しい相(非膨潤性合成フッ素雲母)を示す面間隔dがほぼ9.6Åの回折ピーク強度を[Id=9.6 Å]、クリストバライトを示す面間隔dがほぼ4.0Åの回折ピーク強度を[Id=4.0 Å]、及び膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を示す面間隔dがほぼ12.4Åの回折ピーク強度を[Id=12.4 Å]としたとき、各回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20を満たすのがよく、さらに[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]=0、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦10であるのが好ましい。さらにまた、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]=0、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦4であるのがより好ましい。
【0031】
[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100>2である場合や、[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100>20である場合は、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0032】
さらに本発明における上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の純度とは以下に示す粒子の沈降テストにより求めた値が所定の条件を満たす必要がある。イオン交換水中に膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分が1.5重量%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行って十分分散させる。その水分散液50mlを50mlメスシリンダー(胴径25mmφ×全長220mm)に入れ、静置する。6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定する。このとき、上記メスシリンダー中の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の全量をA重量部、完全沈降した粒子の量をB重量部としたとき、下記の式(3)を満たすのがよい。
(A−B)/A×100≧90 (3)
また、上記式(3)の左辺の値が、92以上が好ましく、95以上がより好ましい。上記式(3)の左辺の値が、90より小さいと、十分なガスバリア性が得られないだけでなく、透明性や平滑性が著しく悪くなる。
【0033】
なお、上記の容器の底面に完全沈降したか否かは、目視で判断し、メスシリンダーの底面に接触しているものと目視で判断されたものを完全沈降した粒子とする。また、粒子が、3層以上に分離した場合であっても、完全に沈降した粒子のみを対象とし、これらの重量を測定する。
【0034】
上記に示したX線回折分析から得られる相対強度が前述の範囲内にある場合、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたガスバリア性積層体が得られる。さらに、上記沈降テストにおける純度が前述の値を満たす場合には、高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともにより優れたガスバリア性積層体が得られる。
【0035】
上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物、すなわち、X線回折分析から得られる相対強度が前述の条件を満たす膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得るためには、以下の精製方法を採用することができる。上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の精製、すなわち、上記の非膨潤性合成フッ素雲母系鉱物等の副生物や、クリストバライト等の副生成物、未反応原料等(以下、「不純物等」と称する。)の除去は、遠心分離又はデカンテーションにより行うことができる。具体的には、上記遠心分離は、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物をホモジナイザーなどで固形分濃度が0.5〜12重量%、好ましくは2〜10重量%、さらに好ましくは3〜8重量%となるように十分水に分散させたものを、200〜100000G、好ましくは300〜50000G、より好ましくは500〜20000Gの範囲で、10秒〜30分間の条件で行い、沈殿した不純物等を取り除くことができる。200G未満だと、不純物等の分離を十分に行うのが困難となる傾向がある。一方、100000Gより大きくてもよいが、遠心分離機の性能と能力の面から、100000G程度で十分である。
【0036】
また、上記デカンテーションは、精製前の上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度が0.1〜5重量%、好ましくは0.5〜4.5重量%、さらに好ましくは1〜4重量%となるよう水に分散させ、ホモジナイザーなどを用いて十分分散させたものを、1〜120時間、好ましくは3〜72時間、より好ましくは8〜48時間静置させることにより、沈殿した不純物等を取り除くことができる。これらのいずれの方法でも、上澄みの懸濁液から膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を回収することにより、上記の高純度の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。1時間より短いと、不純物等との分離が十分に行われない場合がある。また、120時間より長いと、生産性の低下を招くだけでなく、収率も低下する傾向がある。
上記の遠心分離処理とデカンテーション処理とは、いずれか一方のみを行っても、両方を続けて行ってもよい。
なお、上記分散液に使用される分散媒としては、イオン交換水や蒸留水等があげられる。
【0037】
上記の精製処理に供与される膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、デカンテーション法を用いる場合、6μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。6μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。遠心分離法を用いる場合、2μm以上であるのが好ましく、4μm以上がより好ましい。2μm未満であると不純分等との分離が非常に悪く、取り除くことが困難となる場合がある。
【0038】
また、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の遠心分離やデカンテーションによる精製の前に、ガスバリア性、透明性、平滑性などの物性を損なわない範囲であれば、分散剤等を少量添加して分散処理をしてもよい。この場合、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散して分散液を調製し、これに上記分散剤を添加して分散処理をすることができる。
【0039】
上記インターカレーション法によって製造した膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の場合には、水に長時間浸漬することにより、膨潤性に乏しい相がある程度、膨潤する相に変化していく。この状態のものについて、上記デカンテーション及び遠心分離処理により上澄み分を採取することにより、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を得ることができる。このとき、上記デカンテーション及び遠心分離処理の前に上記分散処理を施すと、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を短時間で効率よく得ることができる。
【0040】
上記分散剤の種類としては、高分子型、界面活性型、及び無機型のもの等が例示できるが、中でもポリカルボン酸型高分子を用いるのが好ましい。ポリカルボン酸型高分子を用いる理由としては、上記デカンテーション及び遠心分離処理時の収率がよく、さらに最終的に得られるフィルムの高湿度下でのガスバリア性、透明性、平滑性ともに優れたものが得られる。
【0041】
この上記ポリカルボン酸型高分子としては、平均分子量は1000〜100万のナトリウム塩やアンモニウム塩を好適に用いることができる。
【0042】
上記分散媒としては、イオン交換水、蒸留水等が好ましい。また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を上記分散媒に分散させるときの膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の固形分濃度は、0.5〜15重量%が好ましく、1〜10重量%がより好ましい。0.5重量%より少ないと、生産効率の低下を招く場合がある。一方、15重量%より多いと、粘度が高くなりすぎ、分散しにくくなる傾向がある。
【0043】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を分散媒に分散させた分散液への上記分散剤の添加量は、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物100重量部に対して、0.1〜10重量部が好ましく、0.2〜5重量部がより好ましい。0.1重量部より少ないと、分散性能が発揮されない場合がある。一方、10重量部より多くても、期待されたほどの分散性能が発揮されない場合がある。
【0044】
上記分散剤を添加した分散液の分散処理方法としては、既知の分散機を用いて、撹拌等の分散処理することができるが、高速ホモジナイザー等を使用するのが好ましい。分散時間については特に制限は無いが、10分〜1時間程度の比較的短時間で十分である。
【0045】
上記の精製処理によって不純分等を取り除いた後の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物の平均粒径は、0.05〜10μmがよく、0.1〜8μmがより好ましい。0.05μmより小さいと、高湿度下でのガスバリア性が十分発現されず、一方、10μmより大きいと、塗工面の透明性や平滑性が失われるため実用上好ましくない。なお、この平均粒径は、堀場製作所(株)製レーザー回折・散乱粒度分布測定装置LA920を使用し、分散媒としてイオン交換水を用いて測定することができる。なお本発明でいう平均粒径とはメジアン径(粒子径基準は体積)を意味する。
【0046】
この発明にかかるガスバリア性組成物中の水溶性高分子と膨潤性合成フッ素雲母系鉱物との混合割合は、特に限定されないが、重量比で、水溶性高分子/膨潤性合成フッ素雲母系鉱物=99.5/0.5〜20/80がよく、99/1〜30/70が好ましい。膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が0.5重量%より少ないと、高湿度下でのガスバリア性や水蒸気バリア性が不十分となる場合がある。一方、80重量%より多くなると、透明性や基材との密着性が悪くなったり、上記ガスバリア性組成物がゲル化しやすくなる傾向がある。
【0047】
上記金属アルコキシドの加水分解反応や縮合反応を行うためには、水、加水分解反応や縮合反応を行う触媒、及び有機溶媒が用いられる。さらに、得られるガスバリア性組成物からなる層の耐熱水性をさらに向上させたり、膜強度及び基材との密着性を向上させる目的で、架橋剤を添加することができる。さらにまた、上記の水溶性高分子と金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との結合性をより向上させるため、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物を添加してもよい。
【0048】
上記金属アルコキシドの加水分解反応及びその縮合反応、又はそれらの反応生成物と上記水溶性高分子との重縮合反応は、酸性条件、塩基性条件のいずれの条件下においても促進される。酸性条件下における触媒としては、塩酸、硝酸、硫酸等の鉱酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸があげられる。また、塩基性条件下における触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機塩基、アンモニア、ピリジン、トリエチルアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリペンチルアミン等の有機塩基があげられる。これらの中でも、酸性条件が好ましく、塩酸が特に好ましい。さらに、これらの触媒は、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。さらにまた、触媒は、加水分解反応を目的とする触媒と、重縮合反応を目的にする触媒とに分けて用いてもよい。
【0049】
上記の触媒の添加量は、特に限定されず、溶液がゲル化しない範囲内で、任意の量を添加することができる。
【0050】
上記有機溶媒は、上記の金属アルコキシドを溶解させ、さらに、上記水溶性高分子の水溶液と相溶するものであれば特に限定はされないが、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等の低級アルコールが好ましい。これらは、1種のみを使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0051】
上記有機溶媒の添加量は、特に限定されないが、金属アルコキシド100重量部に対し、2〜500重量部がよく、10〜300重量部が好ましい。2重量部より少ないと、金属アルコキシドが十分に溶解せず、加水分解反応が抑制される。一方、500重量部より多いと、水溶性高分子の溶解性が低下する傾向がある。
【0052】
上記架橋剤とは、上記ガスバリア性組成物中の他の成分と架橋反応しうるものであれば、特に制限されない。上記架橋剤としては、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物、オキサゾリン化合物、メラミン化合物、アジリジン化合物等があげられる。これらの中でも、特に性能の向上に効果があるのは、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物、アルデヒド化合物である。
【0053】
上記カルボジイミド化合物の具体例としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド等のモノカルボジイミド化合物、ポリウレタンの技術分野において公知のジイソシアネート化合物の脱炭酸反応によって得られるポリカルボジイミド化合物等があげられる。上記のポリウレタンの技術分野において公知のジイソシアネート化合物としては、メチレンジフェニルジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフチレンー1,5−ジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ダイマー酸ジイソシアネート、ノルボルネン・ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等があげられる。この中でも、特に親水性のカルボジイミド化合物が好適であり、具体例としては、日清紡(株)製:商品名 カルボジライト等があげられる。
【0054】
上記エポキシ化合物の具体例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、ノナエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロジレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル等のジグリシジルエーテル類、グリセロールトリグリシジルエーテル等のトリグリシジルエーテル類、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等のテトラグリシジルエーテル類などがあげられる。
【0055】
上記イソシアネート化合物の具体例としては、ブロック化イソシアネート化合物(例えば第一工業製薬(株)製、商品名 エラストロン、エラストロンBNシリーズ)、トリレンジイソシアネート、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−メチレンビスシクロへキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等があげられる。
【0056】
上記アルデヒド化合物の具体例としては、グリオキザール、マロンジアルデヒド、スクシンアルデヒド、グルタルアルデヒド、ヘキサンジアール、ヘプタンジアール、オクタンジアール、ノナンジアール、デカンジアール、ドデカンジアール、2,4−ジメチルヘキサンジアール、5−メチルヘプタンジアール、4−メチルオクタンジアール、2,5−ジメチルオクタンジアール、3,6−ジメチルデカンジアール、オルトフタルアルデヒド等があげられる。
【0057】
上記の架橋剤を添加する場合には、その添加量は特に限定されないが、水溶性高分子内の反応性基1モルに対して、0.1×10−3〜1モルがよく、0.5×10−3〜0.5モルが好ましい。0.1×10−3モルより少ないと得られるガスバリア性組成物からなる層の性能の向上に特に効果はない。一方、1モルより多いと、溶液がゲル化したり、得られるガスバリア性フィルムの性能が低下する傾向がある。
【0058】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物とは、一分子中に有機官能基及び加水分解基を有し、通常では結合しにくい有機質と無機質とを結合させるバインダーとして作用するものをいう。
【0059】
上記有機官能基としては、ビニル基、アミノ基、ハロゲン基、エポキシ基、メタクリロイル基、メルカプト基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルコキシ基、シアノ基、アルデヒド基、イソシアネート基、スルホン酸基、リン酸基等があげられる。これらは、1種の官能基のみを有してもよく、2種以上の官能基を有してもよい。
【0060】
上記加水分解基とは、無機質と化学結合できる官能基をいい、低級アルコキシル基をいう。具体的には、メトキシ基、エトキシ基等があげられる。これは、1種のみでもよく、2種以上を有していてもよい。
【0061】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物の例としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等があげられる。これらの中でも、エポキシ系の3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等がより好ましい。
【0062】
上記有機官能基と加水分解基を有するシラン化合物を添加する場合には、その添加量は、特に限定されないが、金属アルコキシド100重量部に対し、0.001〜100重量部がよく、0.01〜25重量部が好ましい。上記範囲外の添加量だと、得られるガスバリア性フィルムの性能が低下する傾向がある。
【0063】
上記ガスバリア性組成物には、最終的に得られるガスバリア性フィルムの性能を低下させない範囲で、分散剤、可塑剤等の各種添加剤を必要に応じて含有させることができる。
【0064】
次に、この発明にかかるガスバリア性組成物の製造方法について説明する。上記の水溶性高分子、金属アルコキシド又はその加水分解物及び/若しくはその縮合物、並びに膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を混合する。これらの混合順序は特に制限されないが、金属アルコキシドを直接加える場合は、まず、上記水溶性高分子の水溶液に有機溶媒及び触媒を添加し、次いで、金属アルコキシド及び、必要に応じて、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物を混合させ、溶液を完全に相溶させ、必要に応じて、さらにその他の各種添加剤を加えることが好ましい。
【0065】
また、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を当初から含有させる場合は、上記の水溶性高分子の水溶液に混合させるのがよい。この際、両者の混合方法は、特に限定されないが、上記水溶性高分子の水溶液に直接、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を添加してもよく、また、上記水溶性高分子の水溶液に、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物をあらかじめ膨潤・へき開させた分散液を添加してもよい。
【0066】
上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を当初から含有させる場合は、上記の水溶性高分子と、上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物とを複合させながら、上記水溶性高分子と、上記金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物との重縮合反応を行うので、一液型のガスバリア性組成物が得られる。
【0067】
この一液型のガスバリア性組成物は、膜としたとき、非常に緻密な膜となる。さらに、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物として、所定の回折ピークの相対強度を有する鉱物を用いる。これらにより、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性、耐熱水性等を発揮する。
【0068】
この発明にかかるガスバリア性組成物を周知の方法で成形することにより、ガスバリア性フィルムを得ることができる。また、上記ガスバリア性組成物を、基材の少なくとも片面に塗工することによっても、ガスバリア性フィルムを製造することができる。
【0069】
上記基材としては、ガス透過性の有無に関わらず、基材としての強度を有していればよく、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46等のポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂、及びそれらの混合樹脂から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなる高分子樹脂フィルム、又はそれらの高分子樹脂フィルムの積層体があげられる。この高分子樹脂フィルムは、未延伸フィルムであってもよく、また、延伸フィルムであってもよい。
【0070】
なお、上記基材の表面には、接着性を向上させるため、公知のコロナ放電処理、火炎処理、紫外線処理、アンカーコート剤塗布処理などを行ってもよい。また、上記基材として、上記樹脂フィルムの表面に無機酸化物蒸着層を形成した蒸着フィルム等を用いてもよい。この場合、上記ガスバリア性組成物を、上記蒸着フィルムの蒸着面に塗工してもよい。
【0071】
上記ガスバリア性組成物を塗工する方法は、特に限定されないが、グラビアロールコーティング、リバースロールコーティング、ワイヤーバーコーティング、ダイコーティング等の通常の塗工方法を採用することができる。なお、コーティングはフィルムの延伸前であっても延伸後であってもよい。
【0072】
上記ガスバリア性組成物を上記基材に塗工することによって形成されるガスバリアコート層の乾燥は特に限定されないが、基材の融点及び軟化点以下の温度で行うことができ、有機物と無機物の複合化反応が十分に行われる温度でよい。本発明の上記ガスバリア性組成物は非常に反応性に富むため、有機物と無機物の複合化反応に120℃を超える温度・長時間での熱処理を必要としない。120℃以下、数秒の比較的低温・短時間での乾燥・熱処理で十分である。
【0073】
さらに、上記ガスバリア性組成物を塗工し、乾燥させた基材を、エージングすることにより、形成されたガスバリアコート層の架橋密度を増大させ、よりバリア性を向上させることができる。このエージングの温度や時間は、特に限定されないが、20〜120℃で1〜150時間が好ましく、30〜70℃で6〜100時間がより好ましい。
【0074】
上記温度が20℃より低いと、エージング時間がかかりすぎる傾向にあり、一方、120℃を超えると、基材にダメージを与える場合がある。また、上記時間が、1時間より短いと、十分に架橋密度を増大させることができない場合がある。一方、150時間を超えてもよいが、特に性能向上に与える効果はない。
【0075】
上記ガスバリア性組成物は、例えば、溶液を加熱する等の操作によって、急激に有機物と無機物とを複合化させてしまうと、多孔質な構造となってしまい、十分な性能が得られない場合がある。このため、基材に塗工、乾燥させてから、上記エージング等の操作で徐々に反応させることによって、より緻密な構造を造ることができる。
【0076】
このガスバリア性フィルムは、緻密な構造を有するガスバリア層を有するので、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性、耐熱水性等を発揮し、また、表面の平滑性及び透明性に優れる。
【0077】
この発明にかかるバリア性フィルムは、高湿度下、具体的には23℃、90%RHでのガスバリア性が非常に良好であるハイバリアフィルムである。このガスバリアコート層1μmあたりの23℃、90%RHでの酸素透過度は、1cc/m2・day・atm以下がよく、0.8cc/m2・day・atm以下が好ましい。1cc/m2・day・atmより大きいと、ハイバリア性包装材料とした場合の実用性に欠ける。
【0078】
この発明にかかるガスバリア性フィルムは、そのままガスバリア性フィルムとして使用することができ、また、このガスバリア性フィルムを他のフィルム又はシートに積層して、積層体を形成することができる。この積層体は、ガスバリア性を有する積層体として使用することができる。
【0079】
【実施例】
以下に実施例及び比較例をあげてこの発明をさらに具体的に説明する。まず、使用原料、精製方法及び評価方法について下記に示す。
[使用原料]
【0080】
(水溶性高分子)
・ポリビニルアルコール…(株)クラレ製:PVA117(平均重合度1700、以下、「PVA」と略する。)
・ポリアクリルアミド…東京化成工業(株):試薬(10%水溶液、重量平均分子量70万〜100万、以下、「PAM」と略する。)
・ポリエチレンイミン…日本触媒(株)製:エポミンP−1000(数平均分子量70000、以下、「PEI」と略する。)
・メチルセルロース…信越化学工業(株)製:メトローズSM−100(メチル基29重量%、以下、「MC」と略する。)
【0081】
(金属アルコキシド)
・テトラエトキシシラン…多摩化学工業(株)製:正珪酸エチル(以下、「TEOS」と略する。)
・テトラプロピルチタネート…松本製薬工業(株)製:オルガチックスTA−10(以下、「TA−10」と略する。)
・テトラプロピルジルコニウム…松本製薬工業(株)製:オルガチックスZA−40(以下、「ZA−40」と略する。)
【0082】
(無機層状化合物)
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製:NTS10重量%(ゾル)、平均粒径13.5μm)を固形分5重量%となるようにイオン交換水に分散させ、4000Gで5分間遠心沈降分離を行い、上澄みを採取して調製した(以下、「P−NTS」と略する。)。このP−NTSの平均粒径は0.9μm、粉末X線回折法から得られる回折ピークの相対強度は、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100=0、[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100=0であった。
【0083】
・膨潤性合成フッ素雲母系鉱物…Na型テトラシリシックマイカ(トピー工業(株)製:NTS10重量%(ゾル)、平均粒径13.5μm)をそのまま使用した(以下、「NTS」と略する。)。このNTSの粉末X線回折法から得られる回折ピークの相対強度は、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100=0、[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100=56であった。
【0084】
・精製モンモリロナイト…クニミネ工業(株)製:クニピアG(平均粒径1.2μm、以下、「モンモリロナイト」と略する。)
【0085】
(架橋剤)
・カルボジイミド化合物…日清紡(株)製:カルボジライト V−02−L2(有効成分40重量%、カルボジイミド当量385、以下、「カルボジイミド」と略する。)
・エポキシ化合物…ナガセケムテックス(株)製:デナコールEX850(ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、以下、「エポキシ」と略する。)
・イソシアネート化合物…第一工業製薬(株)製:エラストロンBN−08(以下、「イソシアネート」と略する。)
【0086】
[評価方法]
(フィルムのガスバリア性)
[酸素透過度]
酸素透過試験器(Modern Contorol社製、OX−TRAN2/20)により、23℃、相対湿度90%の雰囲気下における酸素透過度を測定した。
フィルムのガスバリア性は基材のフィルムの種類や厚み、およびコート層の厚みにより変化するため、下記の式に従って、ガスバリアコート層1μmあたりの酸素透過度(Psamp1e)(単位:cc・1μm/m2・day・atm)を算出した。
1/Ptotal=1/Psamp1e+1/Pbase
Ptotal;測定結果
Pbase;基材フィルムの酸素透過度
Psamp1e;ガスバリアコート層の酸素透過度
【0087】
[水蒸気透過度]
水蒸気透過試験器(Modern Contorol社製、PARMATRAN−W3/31)により、40℃、相対湿度90%の雰囲気下における水蒸気透過度(単位:g/m2・day)を測定した。
【0088】
(外観)
ガスバリア性組成物をコートしたフィルムの外観を以下の基準で評価した。
○:透明性が良好で、基材フィルムと変化なし
×:白濁する
【0089】
(耐熱水性)
80℃の温水中に、ガスバリア性組成物をコートしたフィルムを30分間浸漬し、ガスバリア性組成物の重量減少を測定した。重量残存率を下記の基準で評価した。
◎:重量残存率100%
○:重量残存率80%以上、100%未満
×:重量残存率80%未満
【0090】
(実施例1〜6、比較例1〜2)
表1に記載の水溶性高分子の2重量%水溶液250g(固形分5g)を調製し、表1に示す無機層状化合物の固形分2.1gを混合させた。次いで、エタノール75gを添加した後、1N塩酸水溶液を適量添加してから、表1に示す金属アルコキシドを75gを加え、必要に応じて、有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物(表1において、「特定シラン化合物」と称する。)として、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン(株)製:KBM−403)を7.5gくわえた。次に、必要に応じて、液が均一になった時点で、表1に記載の架橋剤を0.5g添加し、ガスバリア性組成物を得た。
【0091】
得られたガスバリア性組成物を、基材フィルムである延伸ポリエステルフィルム(東洋紡績(株)製:E5100、厚さ12μm)のコロナ処理面に乾燥後の塗工厚みが1μmとなるようにメイヤーバーで塗工した。その後、100℃で5分間、熱風乾燥機中で乾燥・熱処理を行い、ガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを用いて上記の試験及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0092】
(比較例3)
特定シラン化合物を添加し、無機層状化合物を添加しない以外は、実施例1と同様にしてガスバリア性組成物及びガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを用いて上記の試験及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0093】
(比較例4)
表1に記載の水溶性高分子の2重量%水溶液250g(固形分5g)を調製し、表1に示す無機層状化合物の固形分2.1gを混合させて樹脂組成物を得た。
得られた樹脂組成物を、上記の基材フィルムのコロナ処理面に乾燥後の塗工厚みが1μmとなるようにメイヤーバーで塗工した。その後、100℃で5分間、熱風乾燥機中で乾燥・熱処理を行い、ガスバリア性フィルムを得た。得られたガスバリア性フィルムを用いて上記の試験及び評価を行った。その結果を表1に示す。
【0094】
【表1】
【0095】
【発明の効果】
この発明にかかるガスバリア性組成物は、水溶性高分子と金属アルコキシドとの加水分解物及び/又はその縮合物を含有するので、それらが重縮合反応し、有機物と無機物とが複合した緻密な構造体ができ、この構造体の隙間に、所定の膨潤性合成フッ素雲母系鉱物が埋め込まれ、膜としたとき、非常に緻密なものが得られる。
【0096】
また、膨潤性合成フッ素雲母系鉱物として、所定の回折ピークの相対強度を有する鉱物を用いたガスバリア性組成物を用いるので、得られるガスバリア性フィルムは、高湿度条件下で十分なガスバリア性、水蒸気バリア性、耐熱水性等を発揮すると共に、表面の平滑性及び透明性に優れる。
Claims (12)
- 水溶性高分子、金属アルコキシドの加水分解物及び/又はその縮合物、並びに平均粒子径が0.05〜10μmであり、粉末X線回折分析から得られる回折ピークの相対強度が、[Id=9.6 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦2、かつ[Id=4.0 Å]/[Id=12.4 Å]×100≦20である膨潤性合成フッ素雲母系鉱物を含有したガスバリア性組成物。
- 架橋剤を含有する請求項1に記載のガスバリア性組成物。
- 上記架橋剤が、カルボジイミド化合物、エポキシ化合物、イソシアネート化合物又はアルデヒド化合物である請求項1又は2に記載のガスバリア性組成物。
- 上記水溶性高分子がポリアクリルアミドである請求項1乃至3のいずれかに記載のガスバリア性組成物。
- 上記膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、イオン交換水中に固形分が1.5重量%となるように加え、ホモジナイザーを用いて20分間撹拌を行って十分に分散させ、その水分散液50mlを50mlメスシリンダーに入れて静置して6時間経過後、容器の底面に完全沈降した粒子の量を測定したとき、下記の式(1)を満たす鉱物である請求項1乃至4のいずれかに記載のガスバリア性組成物。
(A−B)/A×100≧90 (1)
(上記式において、Aは、上記メスシリンダー中の上記鉱物の全量(重量部)を示し、Bは、完全沈降した粒子の量(重量部)を示す。) - 上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、200〜100000Gの遠心分離及び/又はデカンテーションの処理により得られたものである請求項1乃至5のいずれかに記載のガスバリア性組成物。
- 上記所定の回折ピークの相対強度を有する膨潤性合成フッ素雲母系鉱物は、分散剤を用いて分散処理をした後、200〜100000Gの遠心分離及び/又はデカンテーションの処理により得られたものである請求項1乃至5のいずれかに記載のガスバリア性組成物。
- 上記金属アルコキシドを構成する金属元素は、ケイ素、アルミニウム、チタン及びジルコニウムから選ばれる少なくとも一種である請求項1乃至7のいずれかに記載のガスバリア性組成物。
- 有機官能基及び加水分解基を有するシラン化合物を含有する請求項1乃至8のいずれかに記載のガスバリア性組成物。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載のガスバリア性組成物を高分子樹脂フィルムの少なくとも片面に塗工したガスバリア性フィルム。
- 請求項1乃至9のいずれかに記載のガスバリア性組成物を、高分子樹脂フィルム上に無機酸化物蒸着層を設けた蒸着フィルム蒸着面に塗工したガスバリア性フィルム。
- 請求項10又は11に記載のガスバリア性フィルムを少なくとも1層積層したガスバリア性積層体。
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