JP3811008B2 - カルボニルストレス状態改善剤、および腹膜透析液 - Google Patents

カルボニルストレス状態改善剤、および腹膜透析液 Download PDF

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Description

技術分野
本発明は、腎不全患者の治療に用いられる腹膜透析液に関する。
背景技術
慢性腎不全患者に行われる透析には、血液透析と腹膜透析とがある。腹膜透析とは、腹腔内に透析液を一定時間蓄留させ、体内の老廃物を腹膜を通して透析液中へ排泄させた後、透析液を回収することにより行われる透析方法である。腹膜透析は、間欠的腹膜透析法(IPD)と持続的外来腹膜透析法(CAPD:continuous ambulatory peritoneal dialysis)に大別される。CAPD法は、IPD法の長所を取り入れ、腹腔内に注入する灌流液の貯留時間を長くして、1日4回程度の液交換とする腹膜透析法である。
腹膜透析は簡便で時間的な拘束が少ないなどの長所を持つが、腹膜透析を長期間続けていると次第に除水能が低下し、腹部のタンパク質の変性や硬化、腹膜融合などが起きる場合があることが知られている。
これらの原因の一部は、腹膜透析液に含まれるグルコースにあると考えられる。現在、使用されている腹膜透析液の多くは、浸透圧調節剤としてグルコースを含有する。グルコースは熱に対して不安定で、滅菌時に一部が分解し、タンパク質を修飾し得る反応性の高いカルボニル化合物が分解産物として生成すると考えられる。また、グルコースを含む腹膜透析液は、滅菌後、保存中にも分解産物が生成・蓄積すると考えられる。
一般にグルコースの分解は、中性付近から塩基性側で生じ易いことから、通常の腹膜透析液では、グルコースの安定性を考慮して、酸性側(pH5.0〜5.4)のpHを与える緩衝系が用いられることが多い。ところが、このような酸性の腹膜透析液は、腹腔マクロファージの免疫防御機構の低下や細菌の進入による腹膜炎の発生、腹膜中皮細胞への傷害性などが危惧される。このような相反する問題点を解消するために、中性付近における腹膜透析液中のグルコースの分解に由来するカルボニル化合物生成防止、あるいはカルボニル化合物の除去が切望されていた。
一方、高濃度のグルコースが配合された腹膜透析液は、タンパク質を修飾するなど、腹膜にとって好ましくないとの観点から、より分解物の生成が低いグルコースポリマーを用いた腹膜透析液が開発されている(特開平10−94598号、Wilkie,M.E.et al.,Perit.Dial.Int.,17:S47−50(1997))。
さらに同様の視点から浸透圧調節剤としてグルコースに代えてシクロデキストリン(特開平8−71146号)、二糖類(特開平8−131541号)、アミノ酸(Faller,B.et al.,Kidney Int.,50(suppl.56),S81−85(1996))を使用した腹膜透析液も提案されている。また、システインを添加してグルコースの分解を抑制した腹膜透析液も開示されている(特開平5−105633号)。
これらの方法はいずれも、腹膜透析液中の高濃度グルコースに起因する不都合の改善を目的としたものである。
ところで、慢性腎不全の患者では、高血糖の有無に関わらず血中や組織中に反応性の高いカルボニル化合物やAGE(Advanced glycation end products)が著しく蓄積していることが報告されている(Miyata,T.et al.,Kidney Int.,51:1170−1181(1997)、Miyata,T.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,7:1198−1206(1996)、Miyata,T.et al.,Kidney Int.54:1290−1295(1998)、Miyata,T.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.9:2349−2356(1998))。腎不全においては、非酵素的生化学反応によりカルボニル化合物が高負荷の状態(カルボニストレス)となり、タンパク質修飾が亢進される病態が存在しており、糖・脂質からカルボニル化合物が生成されタンパク質を修飾するためであると考えられる(Miyata,T.et al.,Kidney Int.55:389−399,(1999))。カルボニルストレスは、単にコラーゲンやフィブロネクチンなどのマトリックスタンパク質の構築を変化させるという問題のみならず、カルボニル化合物の持つ各種の細胞に対する生理活性のために、腹膜透過性の亢進・炎症の惹起等にも関係すると考えられる。
腹膜透析の場合、血中の老廃物は腹膜を通して腹膜透析液中に排泄される。高浸透圧の腹膜透析液は、腎不全患者の血中に蓄積した反応性の高いカルボニル化合物を、腹膜を介して腹腔内の腹膜透析液中に集める作用がある。そのため腹膜透析液中のカルボニル化合物濃度の高いカルボニルストレスの状態がもたらされ、腹腔内のタンパク質がカルボニル修飾を受けて腹膜の機能が低下し、腹膜硬化症の進展に関与すると考えられる。
実際に、腹膜透析患者において、腹腔内が導入されたグルコースによってカルボニルストレス状態となっていることは、内皮および中皮の免疫組織学的検討から証明された(Yamada,K.et al.,Clin.Nephrol.,42:354−361(1994)、Nakayama,M.et al.,Kidney Int.,51:182−186(1997)、Miyata,T.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.in press、Combet,S.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.in press、Inagi,R.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.in press)。
発明の開示
本発明は、腹膜透析におけるカルボニル化合物による障害、すなわちカルボニルストレス状態の改善のための方法、並びにこの方法を実現するための透析液や薬剤の提供を課題とする。本発明におけるカルボニル化合物とは、腹膜透析を受ける患者に由来するカルボニル化合物、腹膜透析液自体がその製造中または保存中に生成したカルボニル化合物、並びに腹膜透析中に腹腔内で生成されるカルボニル化合物が対象となる。これらのカルボニル化合物による透析患者に対する障害を、できるだけ小さくすることが本発明の課題である。
本発明者は、患者の腹腔内に注入された腹膜透析液中に含まれる反応性の高いカルボニル化合物は、もともとの腹膜透析液に由来するものだけではないという知見を得た。即ち、腹膜透析患者から回収された腹膜透析排液中のグルコース以外のカルボニル化合物は、透析前の5倍となり、増加分は血液由来のカルボニル化合物と考えられた(図1)。このことから、腹腔内の腹膜透析液中のカルボニル化合物は、腹膜透析液の加熱滅菌の過程で生じるカルボニル化合物、あるいは腹膜透析液の保存中に生成・蓄積したカルボニル化合物に加え、血液由来のカルボニル化合物および腹腔内で生成・蓄積するカルボニル化合物の存在も無視できないことがわかった。実際、免疫染色法を用いた腹膜透析患者の腹膜組織の検査においても、カルボニル修飾蛋白が組織内に局在していた(図2)。したがって、腹膜透析に伴い血液より腹腔内に流出するカルボニル化合物をも除去することができれば、カルボニルストレス状態の改善がより一層効果的に行われるものと推測される。
本発明者は、腎不全においては生体内タンパク質修飾を亢進する病態が存在しており、腹膜透析のように腹腔内に持続的に高濃度のグルコースを注入する場合、腹腔内のカルボニル化合物が蓄積した腹膜透析液によって、腹腔タンパク質は一層、非酵素的に修飾を受け易い状態に置かれるのではないかと考えた(図7)。
以上のような背景のもとで、本発明者は腹膜透析液に由来するカルボニル化合物を軽減する透析液を作成するためにカルボニル化合物トラップ剤が有効であることを見出し、本発明を完成した。更に本発明者は、血中に蓄積するカルボニル化合物を重視し、カルボニルストレスによるタンパク質修飾を中心として腹膜透析合併症を阻害することができる薬剤が有用であることを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、カルボニルストレス状態改善剤とそれを応用した腹膜透析液、並びに薬剤に関し、より具体的には、
(1) カルボニル化合物トラップ剤を有効成分とする腹膜透析における腹腔内のカルボニルストレス状態改善剤、
(2) カルボニル化合物トラップ剤が、不溶性の担体に固定化されている(1)に記載のカルボニルストレス状態改善剤、
(3) カルボニル化合物トラップ剤が、腹膜透析液に混入させるためのものである(1)に記載のカルボニルストレス状態改善剤、
(4) カルボニル化合物トラップ剤が、アミノグアニジン、ピリドキサミン、ヒドラジン、またはSH基含有化合物、あるいはそれらの誘導体からなる群から選択される化合物である、(1)〜(3)のいずれかに記載のカルボニルストレス状態改善剤、
(5) カルボニル化合物トラップ剤が、メイラード反応阻害剤である、(1)〜(3)のいずれかに記載のカルボニルストレス状態改善剤、
(6) カルボニル化合物トラップ剤が、カルボニル化合物を吸着することができる腹膜透析液に不溶性の化合物である、(1)に記載のカルボニルストレス状態改善剤、
(7) (2)および/または(6)のカルボニル化合物トラップ剤を充填した腹膜透析液中のカルボニル化合物トラップ用カートリッジ、
(8) (7)に記載のカルボニル化合物トラップ用カートリッジに腹膜透析液を通過させる工程を含む、カルボニル化合物含有量が低減された腹膜透析液の調製方法、
(9) 次の工程を含む、カルボニル化合物含有量が低減された腹膜透析液の調製方法、
a)(2)および/または(6)に記載のカルボニル化合物トラップ剤と腹膜透析液とを接触させる工程、および
b)カルボニル化合物トラップ剤と腹膜透析液を分離する工程
(10)カルボニル化合物トラップ剤を含む腹膜透析液、
(11)第1室および第2室からなる分画された容器に収容された腹膜透析液において、第1室に還元糖が収容され、第2室にカルボニル化合物トラップ剤が収容されているものである、(10)に記載の腹膜透析液、
(12)カルボニル化合物トラップ剤が腹膜透析液とともに腹腔内に投与するためのものである、(10)に記載の腹膜透析液、
に関する。
あるいは本発明は、腹腔内のカルボニルストレス状態改善方法におけるカルボニル化合物トラップ剤の使用に関する。本発明は、腹膜透析治療におけるカルボニル化合物トラップ剤の使用にも関する。更に本発明は、カルボニルストレス改善剤の製造方法におけるカルボニル化合物トラップ剤の使用に関する。
本発明において、トラップの対象となるカルボニル化合物とは、例えば腹膜透析液の製造過程、ならびに保存中に生成するカルボニル化合物を挙げることができる。先に述べたとおり、浸透圧調節剤としてグルコースを高濃度で含む腹膜透析液には、常にカルボニル化合物生成の可能性が伴う。この種のカルボニル化合物としては、たとえば以下のような物質が知られている(Richard,J.U.et al.,Fund.Appl.Toxic.,4:843−853(1984))。
・3−デオキシグルコソン
・5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−hydroxymethylfurfural、以下5−HMFと省略する)
・ホルムアルデヒド
・アセトアルデヒド
・グリオキサール
・メチルグリオキサール
・レブリン酸
・フルフラール
・アラビノース
本発明では、カルボニル化合物トラップ剤を透析施行中を通じて使用することにより、腹膜透析液の製造過程や保存中に生成するカルボニル化合物のみならず、腎不全患者の血中に蓄積し、腹膜透析にともなって腹腔内に輸送される以下のようなカルボニル化合物の除去をも達成することができる。
アスコルビン酸に由来するカルボニル化合物:
・デヒドロアスコルビン酸
炭水化物、脂質、またはアミノ酸に由来するカルボニル化合物:
・グリオキサール、
・メチルグリオキサール、
・3−デオキシグルコソン
・ヒドロキシノネナール
・マロンジアルデヒド
・アクロレイン
本発明におけるカルボニル化合物トラップ剤としては、これら全てのカルボニル化合物に対し、化学的な反応や吸着によってカルボニル化合物のタンパク質に対する修飾活性を失わせる、または低下させるものであることが望ましいが、これらのカルボニル化合物の中で主要なもののみに対して有効な場合も含まれる。たとえばメチルグリオキサールは、カルボニル化合物の中でも比較的反応性が高いとされており(Thornalley,R.J.,Endocrinol.Metab.3:149−166(1996)、Inagi,R.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.in press、および実施例3参照)、その活性を奪うことは病態生理学的な意義が大きい。したがって、メチルグリオキサールに対して有効な化合物は、本発明におけるカルボニル化合物トラップ剤として望ましいと言うことができる。具体的には、実施例にも示すように、活性炭、グアニジン、アミノグアニジン、ビグアナイド剤、システイン、あるいはアルブミン等の化合物は、メチルグリオキサールに対して特に有効なカルボニル化合物トラップ剤である。
浸透圧調節剤として用いる炭水化物には、グルコースよりも安定性に優れたものも報告されているが、加熱滅菌や保存中にこれらのカルボニル化合物の生成を完全に抑制することは容易ではない。したがって、グルコース以外の炭水化物を用いる場合であっても、カルボニル化合物トラップ剤の使用には意味がある。グルコース以外に腹膜透析の浸透圧調節剤として用いることが可能な炭水化物には、トレハロース(特開平7−323084)、加水分解でんぷん(特開平8−85701)、マルチトールやラクチトール(特開平8−131541)、あるいは非還元性オリゴ糖や非還元性多糖(特開平10−94598)等が知られている。
本発明におけるカルボニル化合物トラップ剤としては、カルボニル化合物との化学的な反応や吸着によってカルボニル化合物の透析患者に対する障害活性を失わせる化合物、あるいは低下させる化合物であって、その化合物そのものは透析患者に対して安全である物質を用いる。このような化合物には、例えば以下のようなものが知られている。なお、本発明のカルボニル化合物トラップ剤は、単独で用いるほか、2種類以上の配合剤として使用してもよい。
・アミノグアニジン(Foote,E.F.et al.,Am.J.Kidney Dis.,25:420−425(1995))
・±2−イソプロピリデネヒドラゾノ−4−オクソ−チアゾリジン−5−イルアセタニリド(±2−isopropylidenehydrazono−4−oxo−thiazolidin−5−ylacetanilide:OPB−9195)(S.Nakamura,1997,Diabetes.46:895−899)
さらにカルボニル化合物トラップ剤としては、例えば以下のような化合物またはそれらの誘導体であって、カルボニル化合物トラップ剤として機能する化合物を用いることができる。なお、誘導体とは、化合物のいずれかの位置で原子または分子の置換が起きている化合物を指す。
(1)メチルグアニジンなどのグアニジン誘導体(特開昭62−142114号、特開昭62−249908号、特開平1−56614号、特開平1−83059号、特開平2−156号、特開平2−765号、特開平2−42053号、特開平6−9380号、特表平5−505189号)。
(2)スルホニルヒドラジンなどのヒドラジン誘導体。
(3)ピラゾロン(特開平6−287179号)、ピラゾリン(特開平10−167965号)、ピラゾール(特開平6−192089号、特開平6−298737号、特開平6−298738号)、イミダゾリジン(特開平5−201993号、特開平6−135968号、特開平7−133264号、特開平10−182460号)、ヒダントイン(特開平6−135968号)などの2個の窒素原子を有する5員複素環式化合物。
(4)トリアゾール(特開平6−192089号)などの3個の窒素原子を有する5員複素環式化合物。
(5)チアゾリン(特開平10−167965号)、チアゾール(特開平4−9375号、特開平9−59258号)、チアゾリジン(特開平5−201993号、特開平3−261772号、特開平7−133264号、特開平8−157473号)などの1個の窒素原子と1個の硫黄原子を有する5員複素環式化合物。
(6)オキサゾール(特開平9−59258号)などの1個の窒素原子と1個の酸素原子を有する5員複素環式化合物。
(7)ピリジン(特開平10−158244号、特開平10−175954号)、ピリミジン(特表平7−500811号)などの含窒素6員複素環式化合物。
(8)インダゾール(特開平6−287180号)、ベンゾイミダゾール(特開平6−305964号)、キノリン(特開平3−161441号)などの含窒素縮合複素環式化合物。
(9)ベンゾチアゾール(特開平6−305964号)などの含硫含窒素縮合複素環式化合物。
(10)ベンゾチオフェン(特開平7−196498号)などの含硫縮合複素環式化合物。
(11)ベンゾピラン(特開平3−204874号、特開平4−308586号)などの含酸素縮合複素環式化合物。
(12)カルバゾイル(特開平2−156号、特開平2−753号)、カルバジン酸(特開平2−167264号)、ヒドラジン(特開平3−148220号)などの窒素化合物。
(13)ベンゾキノン(特開平9−315960号)、ヒドロキノン(特開平5−9114号)などのキノン類。
(14)脂肪族ジカルボン酸(特開平1−56614号、特開平5−310565号)。
(15)ケイ素含有化合物(特開昭62−249709号)。
(16)有機ゲルマニウム化合物(特開平2−62885号、特開平5−255130号、特開平7−247296号、特開平8−59485号)。
(17)フラボノイド類(特開平3−240725号、特開平7−206838号、特開平9−241165号、WO94/04520)。
(18)アルキルアミン類(特開平6−206818号、特開平9−59233号、特開平9−40626号、特開平9−124471号)。
(19)アミノ酸類(特表平4−502611号、特表平7−503713号)。
(20)アスコクロリン(特開平6−305959号)、安息香酸(WO91/11997)、ピロロナフチリジニウム(特開平10−158265号)などの芳香族化合物。
(21)ポリペプチド(特表平7−500580号)。
(22)ピリドキサミンなどのビタミン類(WO97/09981)。
(23)グルタチオン、システイン、N−アセチルシステインなどのSH基含有化合物。
(24)還元型アルブミンなどのSH基含有蛋白。
(25)テトラサイクリン系化合物(特開平6−256280号)。
(26)キトサン類(特開平9−221427号)。
(27)タンニン類(特開平9−40519号)。
(28)第4級アンモニウムイオン含有化合物。
(29)フェンホルミン、ブホルミン、あるいはメトホルミン等のビグアナイド剤。
(30)イオン交換樹脂。
(31)活性炭、シリカゲル、アルミナ、炭酸カルシウムなどの無機化合物。
以上のような化合物には、一般にメイラード反応阻害剤として知られている化合物が含まれる。メイラード反応とは、グルコースなどの還元糖とアミノ酸やタンパク質との間に生じる非酵素的な糖化反応であり、1912年にメイラード(Maillard)がアミノ酸と還元糖の混合物を加熱すると褐色に着色する現象に注目して報告した(Maillard,L.C.,Compt.Rend.Soc.Biol.,72:599(1912))。このメイラード反応は、食品の加熱処理や貯蔵の間に生じる褐変化、芳香成分の生成、呈味、タンパク質変性などに関与していることから、食品化学の分野で研究が進められてきた。
ところが、1968年ヘモグロビンの微小画分であるグリコシルヘモグロビン(HbAlc)が生体内で同定され、さらにこれが糖尿病患者において増加することが判明し(Rahbar.S.,Clin.Chim.Acta,22:296(1968))、それを契機に生体内におけるメイラード反応の意義並びに糖尿病合併症、動脈硬化などの成人病の発症や老化の進行との関係が注目されるようになってきた。そして、このような生体内のメイラード反応を阻害する物質の探索が精力的に行われ、前述の化合物類がメイラード反応阻害剤として見出された。
しかし、このようなメイラード反応阻害剤が、腹膜透析液や血中由来のカルボニル化合物を排除して腹膜透析患者のカルボニルストレス状態を改善し、カルボニルストレスに起因する腹膜透析合併症を阻害することができるということは、全く知られていなかった。
また、本発明のカルボニル化合物トラップ剤には、前述のメイラード反応阻害剤に代表される有機化合物の他、イオン交換樹脂などの高分子化合物、あるいは活性炭やシリカゲル、アルミナ、炭酸カルシウムなどの無機化合物も使用できる。これらの化合物は腹膜透析液に対して不溶性のカルボニル化合物トラップ剤であり、そのカルボニル化合物吸着能を利用してカルボニル化合物をトラップすることができる。これらはクロマトグラフィーの充填剤として知られているものであるが、カルボニルストレス状態の改善に有用であることは知られていない。
従来、活性炭を使用した吸着型血液浄化器が、薬物中毒や肝性昏睡時の血液浄化や、多臓器不全としての急性腎不全発症の初期に増加する内因性・外因性の各種トキシンや血管作動性物質の除去を目的とした血液透析の補助療法として使用されている。しかしながら、かかる吸着型血液浄化器が腹膜透析液中あるいは透析中に腹腔に蓄積するカルボニル化合物の除去に有効であるということは全く知られていなかった。
また、特開昭58−169458号公報には、固体粒子状吸収剤を含有する腹膜透析液および該腹膜透析液を用いた腹膜透析方法に関する発明が記載されている。しかし、同公報によれば、固体粒子状吸収剤は、クレアチニンや低分子量の代謝産物の除去のために添加されており、このものが腹膜透析液中あるいは透析中に腹腔に蓄積するカルボニル化合物の除去に有効であるとする記載は全くない。また、該腹膜透析方法を用いることによって、腹膜透析患者のカルボニルストレス状態が改善されるといったことは、示唆も教唆もされていない。
本発明におけるカルボニル化合物トラップ剤を添加するベースとなる腹膜透析液の組成は、公知のものとすればよい。一般的な腹膜透析液は、浸透圧調節剤、緩衝剤、および無機塩類などで構成されている。浸透圧調節剤には先に列挙したような糖類が用いられる。緩衝剤としては、主としてグルコースの安定性を考慮して酸性側(pH5.0−5.4)のpHを与える緩衝系が用いられることが多い。もちろん、浸透圧調節剤にグルコースを加えないものでは、より生理的なpHである7.0前後のpHを与える緩衝剤が利用できる。また、グルコースを用いながら中性域のpHを利用できるように、使用時にpHを調節するための緩衝系を別に包装する商品形態も考案されている。なお、本発明では、加熱滅菌や長期保存時のグルコースの分解に由来するカルボニル化合物が除去されるため、従来グルコースの分解のために製剤学的に調製が困難であった中性域のpHを与える緩衝系を好適に用いることができる。更に腹膜透析液には、通常、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、あるいは塩化マグネシウムのような無機塩類が添加される。これらの塩類は、腹膜透析を生理的な条件に近づけ、生体適合性の向上を期待して添加されるものである。
本発明のカルボニル化合物トラップ剤は、このような公知の処方に対して、腹膜透析液の配合時に添加し、そのまま密封して加熱滅菌することができる。そうすることによって、加熱滅菌処理に伴う、これら主成分からのカルボニル化合物の生成に対して予防的な作用を期待できる。また、第1室および第2室からなる分画された容器に腹膜透析液を収容し、第1室に還元糖を収容し、第2室にカルボニル化合物トラップ剤を収容し、使用直前に混合してもよい。この場合、滅菌時および保存時に生成したカルボニル化合物は、混合されたカルボニル化合物トラップ剤と速やかに結合する。そして、腹腔内に投与された後、余剰のカルボニル化合物トラップ剤が血中由来のカルボニル化合物を捕捉する。腹膜透析液に添加されるカルボニル化合物トラップ剤は、単独であっても良いし、複数種を混合して用いることもできる。
一方、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体や自身腹膜透析液に不溶性のカルボニル化合物トラップ剤と腹膜透析液との接触方法としては、種々の形態が考えられる。例えば、カルボニル化合物トラップ剤を内部に固定化した容器、あるいは粒子や繊維のような担体に固定したカルボニル化合物トラップ剤入りの容器に腹膜透析液を収容し、保存中に生成・蓄積するカルボニル化合物をトラップさせることができる。後者においては、不溶性担体を濾過などによって腹膜透析液から分離することができる。またカルボニル化合物トラップ剤を固定化したビーズ状や繊維状等の担体、あるいは自身が不溶性のカルボニル化合物トラップ剤をカラムに充填してカルボニル化合物トラップ用カートリッジとし、このカートリッジに腹膜透析液を接触させた後に腹腔内に導入することもできる。かかるカートリッジは、腹膜透析開始時の空気混入を防ぐために、予め蒸留水などを充填しておくのが好ましい。腹腔導入時にカルボニル化合物トラップ用カートリッジに接触させる場合、透析中に蓄積する患者由来のカルボニル化合物を除去することはできないが、透析液中のカルボニル化合物の除去は可能である。あるいは腹膜透析液を小型の循環ポンプを使用して閉鎖系回路内で循環させるような腹膜透析法の場合にあっては、循環回路中にカルボニル化合物トラップ剤を固定化した前記カルボニル化合物トラップ用カートリッジを設置することにより、腹膜透析液のみならず、透析中に腹腔内に蓄積するカルボニル化合物の除去をも達成することができる。
本発明におけるカルボニル化合物トラップ剤を固定化する担体としては、人体に対して無害なもの、腹膜透析液に直接接触する材料として安全性および安定性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、合成または天然の有機高分子化合物や、ガラスビーズ、シリカゲル、アルミナ、活性炭などの無機材料、およびこれらの表面に多糖類、合成高分子などをコーティングしたものなどが挙げられる。カルボニル化合物トラップ剤を固定化するための担体や自身腹膜透析液に対し不溶性のカルボニル化合物トラップ剤は、公知の修飾、改質または変性などを施すことにより、物質透過性、薬液適合性、保護強度、吸着能力、またはカルボニル化合物に対する特異性を高めることができる。
高分子化合物からなる担体としては、例えば、ポリメチルメタクリレート系重合体、ポリアクリロニトリル系重合体、ポリスルフォン系重合体、ビニル系重合体、ポリオレフィン系重合体、フッ素系重合体、ポリエステル系重合体、ポリアミド系重合体、ポリイミド系重合体、ポリウレタン系重合体、ポリアクリル系重合体、ポリスチレン系重合体、ポリケトン系重合体、シリコン系重合体、セルロース系重合体、キトサン系重合体などが挙げられる。具体的には、アガロース、セルロース、キチン、キトサン、セファロース、デキストラン等の多糖類およびそれらの誘導体、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリプロピレン、ポリビニルアルコール、ポリアリルエーテルスルフォン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリカーボネート、アセチル化セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、シリコン樹脂、フッ素樹脂、ポリウレタン、ポリエーテルウレタン、ポリアクリルアミド、それらの誘導体などが挙げられる。これらの高分子材料は単独、あるいは2種以上を組み合わせて使用され得る。2種以上組み合わせる場合は、そのうち少なくとも1種にカルボニル化合物トラップ剤が固定化される。固定化されるカルボニル化合物トラップ剤は、単独で固定化するほか、2種類以上を固定化してもよい。また、上記の高分子材料は、単一のポリマーとして用いられるほか、異種ポリマーとの共重合体とすることもできる。さらに、適当な改質剤を添加したり、放射線架橋、過酸化物架橋などの変性処理を施してもよい。
担体の形状に制限はなく、例えば膜状、繊維状、顆粒状、中空糸状、不織布状、多孔形状、ハニカム形状などが挙げられる。これらの担体は、厚さ、表面積、太さ、長さ、形状、および/または大きさを種々変えることにより、腹膜透析液との接触面積を制御することができる。更に、腹膜透析液を収容する容器の内壁や、腹膜透析液循環回路の内部などにカルボニル化合物トラップ剤を固定することもできる。
上記担体にカルボニル化合物トラップ剤を固定化するには、公知の方法、例えば、物理的吸着法、生化学的特異結合法、イオン結合法、共有結合法、グラフト化などを用いればよい。また必要によりスペーサーを担体とカルボニル化合物トラップ剤の間に導入してもよい。カルボニル化合物トラップ剤に毒性がある場合など、担体からの溶出が問題となる場合には、溶出量をできるだけ少なくするためにカルボニル化合物トラップ剤は担体に共有結合で固定化されていることが好ましい。カルボニル化合物トラップ剤を担体に共有結合するには、担体に存在する官能基を用いればよい。官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、チオール基、ヒドロキシル基、シラノール基、アミド基、エポキシ基、サクシニルイミド基等が挙げられるが、これらに制限されない。共有結合の例としてエステル結合、エーテル結合、アミノ結合、アミド結合、スルフィド結合、イミノ結合、ジスルフィド結合等が挙げられる。
カルボニル化合物トラップ剤が固定化された担体としては、例えば、スルホニルヒドラジン基を有するポリスチレン担体(PS−TsNHNH2,ARGONAUT TECHNOLOGIES社)などの市販のものを用いることもできる。
本発明に基づくカルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体の滅菌は、公知の滅菌法から、カルボニル化合物トラップ剤や担体などの種類により適当な滅菌法が選択される。滅菌処理には高圧蒸気滅菌、ガンマ線照射滅菌、ガス滅菌などが挙げられる。不溶性のカルボニル化合物トラップ剤や担体に結合されたカルボニル化合物トラップ剤を充填したカートリッジを用意し、これを腹膜透析液を収容した容器に接続した状態で両者を同時に滅菌することもできる。
腹膜透析液と接触するカルボニル化合物トラップ剤が少ないと、腹膜透析液中のカルボニル化合物を十分に除去することができなくなるケースが予想される。一般には腹膜透析中のカルボニル化合物の量をあらかじめ予測することは困難なので、患者に対する安全性を保障できる範囲内でできるだけ多量のカルボニル化合物トラップ剤が活性を維持できるようにするのが効果的である。カルボニル化合物トラップ剤の用量は、担体へのカルボニル化合物トラップ剤の固定化量、またはカルボニル化合物トラップ剤が固定化された担体の使用量を変更して調整することができる。
あるいは、適当な混注用コネクターを装備した腹膜透析回路に、カルボニル化合物トラップ剤を注入することもできる。この場合は、滅菌時および保存時に生成したカルボニル化合物は、回路中で捕捉される。
さらに、カルボニル化合物トラップ剤を直接腹腔内に投与して、腹腔内で腹膜透析液と混合することもできる。このとき腹膜透析液由来および血中由来のカルボニル化合物は、腹腔内で不活性化される。
また、腹膜透析液を患者へ注入する前または腹腔内貯留中に、カルボニル化合物トラップ剤を静脈注射等によって腹膜透析患者体内へ投与することによって、腹腔内のカルボニルストレス状態の改善を図ることもできる。
以下に本発明による腹膜透析液の望ましい実施態様を具体的に示す。
まずベースとなる透析液の組成は、一般的には次のような処方が利用される。これらの処方はあくまでも一般的なものであり、実際には患者の症状に合わせてより適切な組成が採用される。
グルコース 1−5%w/v
ナトリウムイオン 100−150meq
カリウムイオン 0−0.05meq
マグネシウムイオン 0−2meq
カルシウムイオン 0−4meq
塩素イオン 80−150meq
緩衝剤 10−50mM
(乳酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸、ピルビン酸、コハク酸等の有機酸)
以上のような基本処方に対して、本発明によるカルボニル化合物トラップ剤の有効量を添加する。たとえばアミノグアニジンを添加する場合には、1mM以上、好ましくは10mM以上、より好ましくは10mM以上100mM以下の濃度となるように添加する。添加量が少ない場合には、製造ならびに保存中に発生するカルボニル化合物にカルボニル化合物トラップ剤が消費されてしまい、実際の透析時に患者の血液や組織から透析液に浸出するカルボニル化合物を処理することができなくなるケースが予想される。特に患者の血液や組織から浸出するカルボニル化合物の量をあらかじめ予測することは困難なので、患者に対する安全性を保障できる範囲内でできるだけ多量のカルボニル化合物トラップ剤が活性を維持できるようにするのが効果的である。アミノグアニジンは、動物に対し低毒性であることが知られている。「化学物質の毒性効果表(Registry of Toxic Effect of Chemical Substances)」(1978)によれば、アミノグアニジンの半致死量は、ラット皮下注射の場合1258mg/kgであり、マウスでは963mg/kgである。また、水溶性にも優れている。この他OPB−9195の場合も同様に、1mM以上、好ましくは10mM以上、より好ましくは10mM以上100mM以下の濃度となるように添加する。
上記のような処方で配合された本発明による腹膜透析液は、適当な密閉容器に充填し、滅菌処理する。滅菌処理には高圧蒸気滅菌や熱水滅菌などの加熱滅菌が有効である。この場合、高温で有害物質を溶出せず、滅菌後も輸送に耐える強度を備えた容器を用いる。具体的にはポリ塩化ビニルやポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、エチレン酢酸ビニル共重合体などからなる可撓性プラスチックバッグが挙げられる。また、外気の影響による液の劣化を避けるために、腹膜透析液を充填した容器をさらにガスバリアー性の高い包装材で包装してもよい。
加熱滅菌に代えて、濾過滅菌を施すこともできる。例えば、孔径0.2μm程度のメンブランフィルターを備えた精密濾過器を用いて濾過することにより滅菌する。この場合は、加熱に由来するカルボニル化合物の生成を防止することができる。濾過滅菌された腹膜透析液は、可撓性プラスチックバッグなどの容器に充填された後、密封される。滅菌から輸送にいたる一連の処理は、現行の透析液の製造と何ら変わるところは無いので、同様の工程で本発明による腹膜透析液を製造することができる。
高圧加熱滅菌を含む加熱滅菌により滅菌処理を行う場合、用いられるカルボニル化合物トラップ剤が加熱などの処理に対して十分安定であるならば、腹膜透析液配合時に該カルボニル化合物トラップ剤を予め添加してから、加熱滅菌操作を行うことができる。このようにすれば、加熱時の透析液由来のカルボニル化合物の生成・蓄積を抑制することができる。勿論、保存時や腹膜透析中にも該カルボニル化合物トラップ剤が機能し、カルボニル化合物の生成・蓄積を抑えることができる。
用いるカルボニル化合物トラップ剤が加熱滅菌に安定ではない場合は、加熱を要しない滅菌法を用いることもできる。このような滅菌法には、例えば濾過滅菌などがある。また、予め加熱滅菌した腹膜透析液に、後で該カルボニル化合物トラップ剤を添加してもよい。添加する時期は特に制限されない。例えば、液を滅菌後に該カルボニル化合物トラップ剤を添加すれば、腹膜透析中のみならず、透析前の腹膜透析液保存中のカルボニル化合物の生成および/または蓄積を抑制することができるため好適である。
あるいは、腹膜透析直前または同時に該カルボニル化合物トラップ剤を添加することもできる。例えば、使用直前までベースとなる溶液とカルボニル化合物トラップ剤を前述の軟質プラスチックバッグなどに別々に収容し、腹膜透析開始直前に両者を無菌的に混合する。このためには、特開昭63−19149号に開示されているような剥離可能な接着部により仕切られた可撓性プラスチックバッグが好適に用いられる。
あるいはまた、腹膜透析回路の途中に混注のためのコネクター部材を設け、該コネクターからカルボニル化合物トラップ剤を注入してもよい。
このような腹膜透析液の調製方法は、熱に不安定なカルボニル化合物トラップ剤のみならず、熱に安定なカルボニル化合物トラップ剤に対しても用いることができる。
さらにまた、腹膜透析液を小型の循環ポンプを使用して閉鎖系回路内で循環させるような腹膜透析法の場合にあっては、回路中のいずれかの箇所にカルボニル化合物トラップ剤を充填した濾過器を装置することもできる。
本発明の腹膜透析液は、現行の腹膜透析液と同様の腹膜透析処置に利用される。すなわち、透析患者の腹腔内に本発明による腹膜透析液を適量注入し、腹膜を通して生体内の低分子量成分を腹膜透析液内に移行させる。腹膜透析液は間欠的に循環させ、患者の症状に応じて透析を継続する。このときカルボニル化合物は、クレアチニンや無機塩類、あるいは塩素イオン等の透析成分ととともに、血中や腹膜内から腹膜透析液中へ移行する。同時に、カルボニル化合物トラップ剤の作用により、その生体に対する障害活性がうばわれ、無害化される。
発明を実施するための最良の形態
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
[実施例1] 腹膜透析液および腹膜透析排液中のカルボニル化合物量の測定 腹腔内におけるカルボニルストレスの発生を証明するため、以下の実験方法に従い、腹膜透析排液中のカルボニル化合物量を測定した。
1)カルボニル化合物の測定
腹膜透析液(バクスター製、ダイアニールPD−2 2.5)および腹膜透析患者に前記の腹膜透析液を投与し腹腔内に一夜貯留後の腹膜透析排液をそれぞれ400μL採り、1.5mMの2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(2,4−DNPH)(和光純薬製)を0.5N塩酸溶液400μLと混合後、30分間室温で攪拌し、液中のカルボニル化合物と2,4−DNPHを反応させた。次に1Mのアセトン水溶液40μLを添加し、室温で5分間攪拌して過剰の2,4−DNPHをアセトンと反応させて除去した後、400μLのn−ヘキサンで3回洗浄し、水層について360nmにおける吸光度をマイクロプレート用分光光度計(日本モレキュラーデバイス製SPECTRAmax250)で測定した。
2)検量線の作成
種々の濃度のグルコース水溶液を調製し、1)と同様に操作して、グルコースとグルコース由来のカルボニル化合物量に対する検量線を作成した。
3)カルボニル化合物の定量
腹膜透析液および腹膜透析排液中のグルコース濃度をグルコース測定キット(和光純薬製、グルコースCII−テストワコー)を用いて測定した。検量線からグルコース由来のカルボニル化合物の量を求めた。液中の総カルボニル化合物の量からグルコース由来のカルボニル化合物の量を差し引き、カルボニル化合物の量とした。
得られた結果を図1に示す。腹腔内に一夜貯留された後の腹膜透析排液では、投与前の腹膜透析液と比較してカルボニル化合物量は約5倍となり、血中から腹腔内へのカルボニル化合物の移行が示された。
[実施例2] 腹膜透析液患者の腹膜におけるカルボニル修飾蛋白の組織的局在
腹膜透析患者の腹膜組織中のカルボニル化合物をマロンジアルデヒドを指標とした免疫染色法により調査した。
腹膜透析患者(50歳男性、腹膜透析歴5年)の腹膜組織について、Horieらの方法(Horie,K.et al.,J.Clin.Invest.,100,2995−3004(1997))に従い、一次抗体としてマウス抗マロンジアルデヒドモノクローナル抗体を用いて免疫染色を行った。その結果、剥離した中皮細胞下の結合組織および肥厚した血管壁に強い陽性所見を認めた(図2)。
マロンジアルデヒド(MDA)は過酸化脂質の分解により生成するカルボニル化合物である。そこで、MDA以外の過酸化脂質分解生成物である4−ヒドロキシ−2−ノネナール、および糖酸化反応の結果生成するカルボキシメチルリジンやペントシジンに対する抗体を用いて、同様に免疫染色を行った結果、図2で示された陽性部位と同様の箇所が陽性であった。このことから、腹膜透析患者の腹膜組織は、過酸化脂質分解生成物および糖酸化生成物由来のカルボニル化合物に起因するカルボニルストレスの亢進により、蛋白修飾を受けていることが分かった。
[実施例3] メチルグリオキサールによる腹膜細胞障害
長期間の腹膜透析による腹膜の限外濾過機能の低下は、拡散による物質交換が可能な腹膜の表面積の増加を証拠付けるものである(Krediet,R.T.,1999,Kidney Int.55:341−356;Heimburger,O.et al.,1990,Kidney Int 38:495−506;Imholz,A.L.et al.,1993,Kidney Int.43:1339−1346;Ho−dac−Pannekeet,M.M.et al.1997,Perit.Dial.Int.17:144−150)。すなわち、腹膜透析液中のグルコースが拡散し腹腔内から流出することにより浸透圧勾配による透析機能が低下する。これは、腹膜内の血管表面積の増加により説明することも可能である。そしてこの病態には、血管内皮増殖因子(VEGF)が重要な役割を果たすと考えられる。VEGFは血管の透過性を亢進し(Senger,D.R.et al.,1983,Science 219:983−985;Connolly,D.T.et al.,1989,J.Biol.Chem.264:20017−20024)、NOの合成を刺激し血管を拡張させ(Hood,J.D.et al.,1998,Am.J.Physiol.274:H1054−1058)、炎症反応を誘導する(Clauss,M.et al.,1990,J.Exp.Med.172:1535−1545;Melder,R.J.et al.,1996,Nat.Med.2:992−997)。また、VEGFは強力な血管新生因子であり、血管傷害を回復させる機能を持つ(Thomas,K.A.,1996,J.Biol.Chem.271:603−606;Ferrara,N.et al.,1997,Endocr.Rev.18:4−25;Shoji,M.et al.,1998,Am.J.Pathol.152:399−411)。そこで、透析液に含まれるグルコース分解産物がVEGF産生に及ぼす効果を検証した。
<3−1>グルコース分解産物の存在下での腹膜中皮および血管内皮細胞培養におけるVEGFの発現
6週齢の雄CD(SD)IGSラット(Charles−River,Kanagawa,Japan)より腹膜を採取した。中皮細胞はHjelleらの方法(Hjelle.J.T.et al.,1989,Perit.Dial.Int.9:341−347)に基づいて単離し、10%ウシ胎児血清を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)にて培養した。7〜10継代目の中皮細胞を、様々な濃度のグルコース分解産物(グリオキサール、メチルグリオキサール(Sigma,St.Louis,MO)、または3−デオキシグルコソン(Fuji Memorial Research Institute,Otsuka Pharmaceutical Co.,Kyoto,Japanより供与))の存在下、COインキュベータで3時間培養した。VEGF mRNAの発現の解析は、半的量的RT−PCRにより行った。Rneasy Mini Kit(Qiagen,Germany)を用いて中皮細胞から全RNAを単離した。RNA5μgをオリゴ(dT)12−18プライマー(Gibco BRL,Gaithersburg,MD)と200unitsのRNase Hフリーの逆転写酵素(Superscript II:Gibco BRL)を用いて逆転写し、PCR増幅を以前記載した条件にて行った(Miyata,T.et al,,1994,J.Clin.Invest.93:521−528)。用いたオリゴヌクレオチドプライマー配列は、ラットVEGFの増幅に使用したプライマーについては5’−ACTGGACCCTGGCTTTACTGC−3’(配列番号:1)および5’−TTGGTGAGGTTTGATCCGCATG−3’(配列番号:2)で、310bpの増幅産物を得た。ラットグリセロアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ(G3PDH)の増幅に使用したプライマーは5’−CCTGCACCACCAACTGCTTAGCCC−3’(配列番号:3)および5’−GATGTCATCATATTTGGCAGGTT−3’(配列番号:4)であり、322bpの断片を増幅した。G3PDHはRNAの内部標準として使用し、異なる試料間でのRNAレベルの比較を行った。各試料はDNA Thermal cycler(Perkin Elmer Cetus,Norwork,CT)を用いて、94℃ 0.5分、60℃ 1分、72℃ 1.5分の条件で、まず適当なサイクル数を決定した。予備的な実験として、逆転写およびPCR増幅を様々なRNA量を用いて、16、18、21、25、28、31、および34サイクルの条件で行った。その結果、VEGF mRNAの増幅では30サイクル、G3PDH mRNAの増幅では21サイクルの条件で、加えたRNAと定量的に相関したPCR産物のシグナルが得られた。PCR産物は1.5%アガロースゲルで電気泳動し、エチジウムブロマイドで染色した後、定量プログラム(NIH image)でシグナル強度を測定して定量化した。実験は、それぞれのグルコース分解産物濃度において行った。3連の実験でmRNAを定量し、各実験の平均を求めた。計3〜4回の独立した実験を各実験条件にて行った。結果は平均をとり、平均±S.D.で表した。分散分析(ANOVA)により統計的有意性を評価した。この分析により有意な違いが示された場合は、Scheffeのt検定により、異なるメチルグリオキサール濃度で得られた結果を比較した。
0〜400μMの様々な濃度において、グリオキサールや3−デオキシグルコソンはVEGFの発現を変化させなかった(図3AおよびB)。メチルグリオキサールのみが、400μMの濃度でVEGF mRNAの発現を刺激した(P<0.0005)(図3C)。逆転写を行わなかったRNA試料からはPCR産物は生成されなかった。すべての細胞は生存可能であった。中皮細胞を高濃度の3−デオキシグルコソン(0.625,2.5,および5mM)の存在下で培養したところ、細胞の生存率の低下が見られた(細胞生存率は、0.625,2.5,5mMの3−デオキシグルコソン存在下において、それぞれ80,55,8%であった)。細胞の生存率が低下したため、VEGF mRNA発現の測定はできなかった。これらの観察結果から、メチルグリオキサールのみを以下の実験に用いた。
様々な濃度のメチルグリオキサール存在下で24時間培養したヒト微小血管内皮細胞の培養上清中へのVEGF蛋白質の放出を、ELISAにより測定した。ヒト微小血管内皮細胞はクラボー(Osaka,Japan)より購入し、VEGF欠失EGM−2培地(Takara,Tokyo,Japan)で培養した。メチルグリオキサールとのインキュベートは上記のラット腹膜中皮細胞と同様に行った。VEGF蛋白質は、2連で調製した培養上清に対し、キット(Quantikine:R&D Systems,Minneapolis,USA)を用いて添付の説明書に従い、酵素結合イムノソルベントアッセイ(ELISA)により定量化した。実験は3回繰り返し、結果を上記と同様に統計解析した。
その結果、培地中へのメチルグリオキサールの添加により、用量依存的にVEGFの増加が認められた(図4)。メチルグリオキサール非存在下では、VEGFの放出は検出されなかった。すなわち、蛋白質レベルでも、メチルグリオキサールの用量依存的にVEGF産生・放出が刺激されることが示された。
次に、様々な濃度(0〜400μM)のメチルグリオキサール存在下で培養した内皮細胞のVEGF mRNAの発現を調べた。実験はラット中皮細胞の場合と同様に行った。ただし、ヒトVEGFの増幅には5’−GGCAGAATCATCACGAAGTGGTG−3’(配列番号:5)および5’−CTGTAGGAAGCTCATCTCTCC−3’(配列番号:6)のプライマーを使用し、増幅された断片は271bpであった。ヒトG3PDHの増幅にはラットと同じプライマーを使用した。解析の結果、VEGF mRNAの発現は用量依存的に増加することが判明した(図5)。
<3−2>メチルグリオキサールを腹腔内投与されたラットの腹膜組織におけるVEGF発現
メチルグリオキサールが腹膜におけるVEGF mRNAの発現に及ぼす生物学的影響をさらにin vivo系にて調べるため、ラットの腹腔に様々な量のメチルグリオキサールを10日間投与する実験を行った。6週齢の雄CD(SD)IGSラットに、様々な濃度のメチルグリオキサールを含む生理食塩水50ml/kgを10日間、毎日腹腔内に投与した。腹壁から腹膜を単離しVEGF mRNAの発現を調べた。実験は上記ラット中皮細胞のin vitro実験と同様に行った。ただし、腹膜組織からのmRNAの抽出にはISOGEN(Nippon Gene,Tokyo,Japan)を用いた。またPCR増幅は、VEGF mRNAの増幅では28サイクル、G3PDH mRNAの増幅では16サイクルの条件で行った。
図6に示すように、メチルグリオキサール濃度により、腹壁腹膜試料のVEGF mRNA発現は有意に上昇した(P<0.05)。光学顕微鏡観察では、腹膜組織に変化は見られなかった(血管数、血管壁、間隙、および中皮細胞は正常であった)。
<3−3> 長期腹膜透析患者の腹膜組織のVEGFおよびカルボキシメチルリジン(CML)の免疫染色
腹膜透析患者9名の腹膜組織におけるVEGFおよびカルボキシメチルリジンの分布を免疫組織化学分析により調べた。カルボキシメチルリジンは、グリオキサールや3−デオキシグルコソンなどのグルコース分解産物に由来する(Miyata,T.et al.,1999,Kidney Int.55:389−399)。従って、抗カルボキシメチルリジン抗体は、グルコース分解産物で修飾された蛋白質に対するマーカーとして用いられる。
インフォームドコンセントを得た後、カテーテル再挿入時に9人の非糖尿病腹膜透析患者より腹膜組織を単離した(表1)。カテーテル再挿入の必要性は、カテーテルの損傷、位置のずれ、および/または閉塞による生じたものである。腹膜炎患者はいなかった。腎機能が正常な男性2名(48および58歳)から、腹部切開時に正常な腹膜組織を単離した。
2μ厚の腹膜組織切片を、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(Signa)をコートしたスライドにマウントし、脱パラフィン後、蒸留水を通してから、Pronase(0.5mg/μl:Dako,Glostrup,Denmark)を含むバッファー溶液(0.05M Tris−HCl(pH7.2),0.1M NaCl)で室温で15分インキュベートした。スライドは、0.5%Tween20を含むPBSで洗浄し、4%スキムミルクで2時間ブロッキングを行った後、抗VEGFウサギIgG(Santa Cruz Biotechnology,Santa Cruz,CA)、または抗AGEマウスIgG(Ikeda,K.et al.,1996,Biochemistry 35:8075−8083)(カルボキシメチルリジンをエピトープとする:Miyata,T.et al.,1997,Kidney Int.51:1170−1181)で一晩、4℃にて、ヒューミッドチェンバー中でインキュベートした。切片を洗浄後、1:100希釈のペルオキシダーゼ結合ヤギ抗ウサギIgGまたはペルオキシダーゼ結合ヤギ抗マウスIgG(Dako)で2時間室温でインキュベートし、0.003% Hを含む3,3’−ジアミノベンジジン溶液でシグナルを検出した。また、過ヨウ素酸−シッフ染色により組織学的分析を行った。免疫染色は2人で独立に観察して、シグナル強度と分布の評価を行った。
結果は表1に示した。表中「正常1」および「正常2」は腎機能が正常な被験者由来の試料、「PD1」〜「PD9」は腹膜透析患者由来の試料を表す。代表的な長期腹膜透析患者の腹膜組織像(表1のPD6)の観察では、間質性のフィブローシス、血管壁の肥厚およびヒアリン症が認められた。中皮細胞および血管壁には、VEGFとカルボキシメチルリジンが共局在していた。中皮層では、VEGFのシグナルはカルボキシメチルリジンのシグナルよりも弱かった。結果は、他の8人の患者でも同様であった。正常な腹膜試料(表1の正常2)では、腹膜透析試料に比べ、VEGFは血管壁にしか存在しておらず、中皮層では検出されなかった。カルボキシメチルリジンは中皮層では検出されず、血管壁のシグナルも極弱いものであった。これらの観察は他の対照正常試料でも同様であった。正常マウスIgGを用いた場合は、免疫染色は検出されなかった。このように、腹膜透析患者においてのみ、中皮でのVEGF発現とカルボキシメチルリジンの共局在が見られる事実は、腹膜透析により、腹膜透析液中のグルコース分解産物が、尿毒症患者において実際にVEGF産生を増強していることを示唆している。
Figure 0003811008
以上の結果は、腹膜透析患者が、腹膜透析液中のグルコース分解産物等によりカルボニルストレス状態に置かれていることを裏付けるものであり、更に、メチルグリオキサールが腹膜細胞でVEGFの産生を増強することを初めて実証するものである。腹膜透析液に含まれるグルコース分解産物が腹膜の透過性を低下させる原因の少なくとも一部は、VEGF産生の亢進とそれに伴う血管新生の刺激によるものであることが示唆される。
[実施例4] 腹膜透析患者の透析液排液に対するカルボニル化合物トラップ剤の添加効果
<4−1>
ペントシジンはAGEの構造体の1つであり、腎不全患者の血中には健常人と比較して約20倍の蓄積が認められている(Miyata,T.et al.,J.Am.Soc.Nephrol.,7:1198−1206(1996))。腹膜透析患者の排液を37℃でインキュベートした場合に増加するペントシジンおよびタンパク質上に存在するカルボニル基(プロテインカルボニル)に対するアミノグアニジンの添加効果の検討を行った。
腹膜透析患者の一夜貯留排液を遠心後、上清を濾過滅菌(孔径0.45μm)し、アミノグアニジン(東京化成製)を0、1、10、100mMの濃度になるように添加し、37℃でインキュベートした。インキュベート期間は、ペントシジンを測定する場合は1乃至2週間、プロテインカルボニルを測定する場合では2週間とした。ペントシジンの測定は、6N HCl中110℃でタンパク質を加水分解した後、HPLC(島津製作所製、LC−10A)で定量した(T.Miyataら,1996,J.Am.Soc.Nephrol,7:1198−1206,T.Miyataら,1996,Proc.Natl.Acad.Aci.USA,93:2353−2358)。プロテインカルボニルの測定は、2,4−ジニトロフェニルヒドラジン(2,4−DNPH)(和光純薬製)と反応させた後、カルボニル基と反応して生成したヒドラゾンの吸光度を測定(日本モレキュラーデバイス製、SPECTRAmax250)することにより行った(Levine,R.L.et al.,Methods Enzymol.,233,346−357(1994))。
その結果、ペントシジンの生成に対して、濃度依存的にアミノグアニジンの抑制効果が認められた(図8)。同様に、プロテインカルボニルの生成に対しても、濃度依存的にアミノグアニジンの抑制効果が認められた(図9)。
<4−2>
次に、以下の実験方法に従い、腹膜透析患者の一夜貯留排液中のグルコース以外のカルボニル化合物量に対するアミノグアニジンの添加効果を検討した。
(A)腹膜透析排液のインキュベーション
腹膜透析施行患者の排液を採取し、孔径0.45μmのフィルターで濾過した後、アミノグアニジン(東京化成製)を0、10、50および250mMの濃度となるように加え、試料溶液とした。試料溶液1mlを採り、スクリューキャップ付プラスチックチューブに分注した後、37℃で15時間インキュベートした。なお、試料溶液は、インキュベーション直前まで、−30℃で保存した。
(B)カルボニル化合物の定量
1)試料溶液の測定
試料溶液400μLを採り、1.5mMの2,4−DNPH(和光純薬製)を0.5N塩酸溶液400μLと混合後、30分間室温で攪拌し、試料溶液中のカルボニル化合物と2,4−DNPHを反応させた。次に、1Mのアセトン水溶液40μLを添加し、室温で5分間攪拌して過剰の2,4−DNPHをアセトンと反応させて除去した後、試料溶液を400μLのn−ヘキサンで3回洗浄し、水層について360nmにおける吸光度をマイクロプレート用分光光度計(日本モレキュラーデバイズ製 SPECTRAmax250)で測定した。
2)検量線の作成
種々の濃度のグルコース水溶液を調製し、1)と同様に操作して、グルコースとグルコース由来のカルボニル化合物量に対する検量線を作成した。
3)カルボニル化合物の定量
試料溶液中のグルコース濃度をグルコース測定キット(和光純薬製、グルコースCII−テストワコー)を用いて測定した。検量線からグルコース由来のカルボニル化合物量を求めた。腹膜透析排液中の総カルボニル化合物の量からグルコース由来のカルボニル化合物の量を差し引き、カルボニル化合物の量とした。
その結果を図10に示す。腹膜透析患者の腹膜透析液排液中のグルコース以外のカルボニル化合物量は、インキュベートしないものおよび37℃で15時間のインキュベートをしたもの共に、アミノグアニジンの濃度が増加するに従い減少した。
これらの結果から、カルボニル化合物トラップ剤を腹膜透析液に添加、あるいは患者に投与することが、腹腔内に注入された腹膜透析液中のカルボニル化合物の生成および/または蓄積を抑制するために有効であることが明らかとなった。それにより、腹腔内に存在する腹膜透析液由来および血中由来のカルボニル化合物が除去され、腹膜透析患者のカルボニルストレス状態が改善される。
[実施例5] 腹膜透析液の加熱滅菌過程におけるカルボニル化合物トラップ剤の添加効果
腹膜透析液中には、浸透圧調節剤として、高濃度(1.35〜4.0 w/v%)のグルコースが含まれている。グルコースは熱に対して不安定で、加熱滅菌や保存中に分解する。グルコースの分解物として、5−ヒドロキシメチルフルフラール(5−hydroxymethylfurfural;5−HMF)、レブリン酸、アセトアルデヒドなどが生成することが報告されている(Richard,J.U.et al.,Fund.Appl.Toxic.,4:843−853(1984)、Nilsson,C.B.et al.,Perit.Dial.Int.,13:208−213(1993))。腹膜透析液の加熱滅菌過程におけるアミノグアニジンのカルボニル化合物の生成抑制効果を5−HMF、カルボニル化合物量を測定することにより検討した。なお、グルコースの分解の程度は液のpHの影響を受けることから、滅菌前のpHが酸性(pH5.3)および中性(pH7.0)の2種類の腹膜透析液を調製し、実験に供した。滅菌温度は121℃とした。
<5−1>
5−HMFの測定は、高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製、LC−10A)を用いて、測定した(Nilsson,C.B.et al.,Perit.Dial.Int.,13:208−213(1993))。
その結果、酸性環境(図11)および中性環境(図12)共に、5−HMFの生成に対して、濃度依存的にアミノグアニジンの抑制効果が認められた。
<5−2>
腹膜透析液中のカルボニル化合物の定量は、実施例1と同様に2,4−DNPHと反応させた後、吸光度を測定することにより行った(Levine,R.L.et al.,Methods Enzymol.,233:346−357(1994))。滅菌温度は121℃とした。
その結果、カルボニル化合物量に関しても、濃度依存的にアミノグアニジンの抑制効果が認められた(図13)。
これらの結果から、腹膜透析液中にカルボニル化合物の生成を抑える薬剤を添加することが、腹膜透析液中のカルボニル化合物の生成および/または蓄積を抑制するために非常に有効であることが明らかとなった。
[実施例6] 腹膜透析液中のペントシジン生成に対するカルボニル化合物トラップビーズの添加効果
架橋したポリスチレン樹脂にスルホニルヒドラジン基を結合したもの(PS−TsNHNH2,ARGONAUT TECHNOLOGIES社)をカルボニル化合物トラップビーズとして用いて、腹膜透析液中のカルボニル化合物の除去効果を検討した。腹膜透析液及びカルボニル化合物トラップビーズを添加した腹膜透析液を37℃でインキュベートし、ペントシジンの形成抑制効果を確認した。カルボニル化合物トラップビーズの入ったチューブに、ジメチルスルホキシド100μlを加え膨潤させた後、腹膜透析液(バクスター製、ダイアニール PD−4,1.5)800μL、水に溶解した150mg/mL濃度のウシ血清アルブミン200μLを添加し、37℃で1週間インキュベートした。インキュベート終了後、ポアーサイズ0.22μmの遠心式濾過チューブ(ミリポア製、UFC30GV00)を用いてビーズを除去した。つぎに、ビーズを除去した溶液50μlに10%トリクロル酢酸50μlを加え、遠心して蛋白を沈殿させた。蛋白を300μlの5%トリクロル酢酸で洗浄し、乾固させた。つぎに、6N HClを100μl添加し、110℃で16時間加熱した後、HPLCでペントシジンを定量した(T.Miyataら,1996,J.Am.Soc.Nephrol.,7:1198−1206,T,Miyataら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,93:2353−2358)。
37℃でインキュベートしたときに生成するペントシジン量を図14に示した。カルボニル化合物トラップビーズの添加により、ペントシジンの生成が著しく抑制されることが判明した。
[実施例7] 腹膜透析液中のカルボニル化合物量に対するカルボニル化合物トラップビーズの添加効果
カルボニル化合物トラップビーズによる腹膜透析液中のカルボニル化合物の除去効果を検討した。カルボニル化合物トラップビーズ(PS−TsNHNH2,ARGONAUT TECHNOLOGIES社)の入ったチューブに、ジメチルスルホキシド100μlを加え膨潤させた後、腹膜透析液(バクスター製、ダイアニール PD−4,1.5)900μLを添加し、ローテーターを用いて室温で16時間撹拌した。次に、カルボニル化合物トラップビーズの入った懸濁液を、ポアーサイズ0.22μmの遠心式濾過チューブ(ミリポア製、UFC30GV00)で濾過し、濾液中のカルボニル化合物量を以下のようにして測定した。
<カルボニル化合物の定量>
1)試料溶液の測定
試料溶液200μLと、2,4−DNPHを0.5N塩酸に溶かした溶液(0.025%)200μLを混合後、30℃で30分間反応させた。次に、1Mのアセトン水溶液20μLを添加し、30℃で10分間インキュベートした後、200μLのn−ヘキサンで3回洗浄した。さらに、水層に200μLのオクタノールを加えてヒドラゾンを抽出し、オクタノール層について360nmにおける吸光度をマイクロプレート用分光光度計(日本モレキュラーデバイス製 SPECTRAmax250)で測定した。
2)検量線の作成
種々の濃度のグルコース水溶液を調製し、1)と同様に操作して、グルコースとグルコース由来のカルボニル化合物量に対する検量線を作成した。
3)カルボニル化合物量の定量
試料溶液中のグルコース濃度をグルコース測定キット(和光純薬製、グルコースCII−ワコー)を用いて測定した。検量線からグルコース由来のカルボニル化合物量を求めた。試料溶液中の総カルボニル化合物量からグルコース由来のカルボニル化合物の量を差し引き、試料溶液中のカルボニル化合物の量とした。
その結果を図15に示す。腹膜透析液に2mgのカルボニル化合物トラップビーズを添加し、室温で16時間撹拌することにより、カルボニル化合物量は55%減少した。また、添加するカルボニル化合物トラップビーズの量を10mgまで増加させた場合、カルボニル化合物量はさらに減少した。。
これらの結果から、カルボニル化合物トラップ剤を固定化した担体を用いて、腹膜透析液中のカルボニル化合物の生成および/または蓄積を抑制できることが明らかとなった。
[実施例8] 活性炭によるジカルボニル溶液中のカルボニル化合物トラップ作用
カルボニル化合物トラップ剤として活性炭を用い、ジカルボニル溶液中のカルボニル化合物の除去効果を検討した。活性炭(和光純薬工業製)25μgまたは50μgを入れたチューブに、ジカルボニル化合物をリン酸緩衝液(以下PBSと省略する)に溶解したジカルボニル溶液(いずれも100μM)をそれぞれ900μl分注した。ジカルボニル化合物としては、グリオキサール、メチルグリオキサール、および3−デオキシグルコソンを用いた。このチューブをローテーターにセットして室温で19時間撹拌した。撹拌後、チューブ内の溶液をポアーサイズ0.22μmの遠心式濾過チューブ(ミリポア製、UFC30GV00)で濾過し、各ジカルボニル化合物の濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。測定方法は、公知の方法に従った。
結果は図16に示した。900μlのジカルボニル溶液に活性炭25μgを添加した場合、グリオキサール(GO)で71%、メチルグリオキサール(MGO)で94%、そして3−デオキシグルコソン(3DG)では93%が活性炭によってトラップされていた。活性炭を50μg用いた場合には、グリオキサールで85%、メチルグリオキサールや3−デオキシグルコソンでは98%と、試験した全てのジカルボニル化合物の大部分が活性炭によってトラップされることが確認できた。
[実施例9] 活性炭による腹膜透析液中のカルボニル化合物トラップ作用
カルボニル化合物トラップ剤として活性炭を用い、腹膜透析液中のカルボニル化合物の除去効果を検討した。活性炭(和光純薬工業製)25μgまたは50μgを入れたチューブに、腹膜透析液(バクスター製、ダイアニールPD−4,1.5、商品名)を900μl分注した。このチューブをローテーターにセットして室温で19時間撹拌した。撹拌後、チューブ内の腹膜透析液をポアーサイズ0.22μmの遠心式濾過チューブ(ミリポア製、UFC30GV00)で濾過し、濾液に含まれるグリオキサール、メチルグリオキサール、および3−デオキシグルコソンの濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。測定方法は、公知の方法に従った。
結果は図17に示した。900μlの腹膜透析液に活性炭25μgを添加した場合、活性炭を加えない腹膜透析液に対して、グリオキサール(GO)で56%、メチルグリオキサール(MGO)で71%、そして3−デオキシグルコソン(3DG)では62%が活性炭によってトラップされていた。活性炭を50μg用いた場合には、グリオキサールで64%、メチルグリオキサールで78%、そして3−デオキシグルコソンでは77%のジカルボニル化合物が活性炭によってトラップされることが確認できた。
[実施例10] グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するグアニジン、アミノグアニジン、ビグアナイド剤のトラップ効果
グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンの混合溶液(各1mM)50μl、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)400μl、30mMのグアニジン、アミノグアニジン、またはビグアナイド剤溶液50μlを混合し、37℃でインキュベートした。ビグアナイド剤には、メトホルミン(metformin)、ブホルミン(buformin)、およびフェンホルミン(Phenformin)を用いた。インキュベート終了後、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンを、o−フェニレンジアミンを用いてキノキサリン誘導体とし、それぞれの濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
結果は図18(グアニジン)、図19(メトホルミン)、図20(ブホルミン)、図21(フェンホルミン)、図22(アミノグアニジン)に示した。グアニジン、アミノグアニジン、および、いずれのビグアナイド剤も、特にメチルグリオキサールの濃度を顕著に低下させる効果が確認された。またアミノグアニジンにおいては、メチルグリオキサールに対して劇的に濃度を低下させ、更にその他のビグアナイドでは顕著な濃度低減作用が見られなかった3−デオキシグルコソンに対しても濃度を著しく低下させている。
[実施例11] グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するSH剤のトラップ効果
グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンの混合溶液(各1mM)50μl、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)400μl、30mMのSH化合物溶液50μlを混合し、37℃でインキュベートした。インキュベートした。SH化合物には、システイン(cystein)、N−アセチルシステイン(N−acetylcystein)、およびGSHを用いた。インキュベート終了後、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンをo−フェニレンジアミンを用いてキノキサリン誘導体とし、それぞれの濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
結果は図23(システイン)、図24(N−アセチルシステイン)、および図25(GSH)に示した。いずれのSH化合物にも、グリオキサールとメチルグリオキサールの両方に対して、顕著に濃度を低下させる作用が確認された。
[実施例12] グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するアルブミンのトラップ効果
グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンの混合溶液(各1mM)50μl、0.1Mのリン酸緩衝液(pH7.4)400μl、100mg/mlのウシ血清アルブミン溶液50μlを混合し、37℃でインキュベートした。インキュベート終了後、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンをo−フェニレンジアミンを用いてキノキサリン誘導体とし、それぞれの濃度を高速液体クロマトグラフィーを用いて測定した。
結果は図26に示した。ウシ血清アルブミンには、グリオキサールとメチルグリオキサールの濃度を顕著に低下させる作用が確認された。
[実施例13] 腹膜透析液にSH化合物を添加し、37℃でインキュベートしたときのペントシジンの生成抑制効果
腹膜透析液(バクスター製 PD−4,1.5)490μl、SH化合物を0.1Mリン酸緩衝液(pH7.4)に溶かした液70μl、ウシ血清アルブミンを腹膜透析液(バクスター製 PD−4,1.5)に30mg/mlとなるように溶かした液140μlを混合し、37℃で1週間インキュベートした。SH化合物には、システイン(cystein)、N−アセチルシステイン(N−acetylcysteine)、GSH、およびアミノグアニジンを用いた。インキュベート終了後、溶液50μlに10%トリクロル酢酸50μlを加え、遠心して蛋白を沈殿させた。蛋白を300μlの5%トリクロル酢酸で洗浄し、乾固させた。次に、6N HClを100μ添加し、110℃で16時間加熱した後、高速液体クロマトグラフィーでペントシジンを定量した(T.Miyataら、1996,J.Am.Soc.Nephrol.,7:1198−1206,T.Miyataら,1996,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,93:2353−2358)。
結果は図27に示した。SH化合物の添加によって、ペントシジンの生成量が顕著に抑制されることが確認できた。
産業上の利用の可能性
本発明によれば、腹膜透析において患者を苦しめていたカルボニル化合物による障害を、簡単に取り除くことができる。公知の腹膜透析液においては、製造中に生じたカルボニル化合物とともに、透析によって生体内から腹腔中に浸出したカルボニル化合物により、透析患者の腹膜は常にカルボニルストレスの状態に置かれていた。これに対して本発明では、腹膜透析液中に生成するカルボニル化合物を効果的に除去することができるので、透析患者のカルボニルストレス改善に貢献する。更に、カルボニル化合物トラップ剤の腹腔内への導入、あるいはカルボニル化合物トラップ用カートリッジへの透析液の循環によって、腹腔中に浸出したカルボニル化合物をも効果的に不活性化、あるいは除去することができる。このように、本発明は腹膜透析に伴うカルボニル化合物に起因する腹膜障害を含む腹膜透析に起因する障害の対策として非常に有効なアプローチを提供するものである。
また、本発明では、加熱滅菌や長期保存時のグルコースの分解に由来するカルボニル化合物が除去されるため、従来グルコースの分解のために製剤学的に調製が困難であった中性域のpHを有する腹膜透析液を提供することができ、より生理的な腹膜透析療法が可能となる。
本発明の腹膜透析液は、カルボニル化合物トラップ剤との接触あるいは投与といった簡単な操作のみで実施することができ、特殊な製造設備も要求しない。したがって、本発明によるカルボニル化合物トラップ剤とそれを利用した腹膜透析液、ならびにその製造方法は、腹膜透析治療における新しい治療概念を生み出すものである。
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
図1は、腹膜透析液および腹膜透析排液中のカルボニル化合物量を示す図である。
図2は、腹膜透析患者の腹膜におけるカルボニル修飾蛋白の組織的局在を示す写真(上段)およびその模式図(下段)である。図中、Aは剥離した中皮細胞下の結合組織中の陽性箇所を表す。Bは肥厚した血管壁の陽性箇所を表す。
図3は、グリオキサール、メチルグリオキサール、および3−デオキシグルコソンを添加した中皮細胞におけるVEGF mRNAの発現を示す図である。様々な濃度(0,100,200,400μM)のグリオキサール(A)、3−デオキシグルコソン(B)、およびメチルグリオキサール(C))でインキュベートしたラット中皮細胞培養から抽出した全RNAの逆転写を行った。VEGFおよびG3PDH cDNAを、それぞれ30および21サイクルのPCRにより増幅した。3連で実験を行い平均を求めた。それぞれの実験の平均値に関して、G3PDH mRNA に対するVEGF mRNAの比を計算した。実験は3回行い、その平均±S.D.をグラフにした。*P<0.0005。
図4は、メチルグリオキサール添加による微小血管内皮細胞におけるVEGF蛋白質の産生を示す図である。ヒト微小血管内皮細胞を様々な濃度(0,200,400μM)のメチルグリオキサールの存在下で培養し、ELISAにより培養上清中に放出されるVEGF蛋白質を定量した。3回の実験の代表的な結果を示す。データは平均±rangeで表した。*P<0.05、**P<0.01。
図5は、メチルグリオキサールを添加した内皮細胞におけるVEGF mRNAの発現を示す図である。ヒト内皮細胞を様々な濃度(0,100,200,400μM)のメチルグリオキサールの存在下で培養し、全mRNAを抽出後に逆転写反応を行った。VEGFおよびG3PDH cDNAを、それぞれ30および21サイクルのPCRにより増幅した。3連で実験を行い平均を求めた。それぞれの実験の平均値に関して、G3PDH mRNAに対するVEGF mRNAの比を計算した。実験は3回行い、その平均±S.D.をグラフにした。*P<0.05、**P<0.005、***P<0.0001。
図6は、10日間、毎日メチルグリオキサールを腹腔内投与したラット腹腔組織でのVEGF mRNAの発現を示す図である。腹膜でのVEGFおよびG3PDH mRNAの発現を、それぞれ28および16サイクルのRT−PCRにより増幅した。3連で実験を行い平均を求めた。それぞれの実験の平均値に関して、G3PDH mRNAに対するVEGF mRNAの比を計算した。実験は3回行い、その平均±S.D.をグラフにした。*P<0.05。
図7は、腹膜透析患者の腹腔内でのカルボニルストレスを表す図である。
図8は、腹膜透析排液インキュベーションによるペントシジン生成に対するアミノグアニジンの添加効果を示す図である。
図9は、腹膜透析排液インキュベーションによるプロテインカルボニル生成に対するアミノグアニジンの添加効果を示す図である。
図10は、3人の腹膜透析患者(患者I、患者Sおよび患者K)の腹膜透析(CAPD)排液中のカルボニル化合物量に対する、アミノグアニジンの添加効果を示す図である。
図11は、酸性環境における腹膜透析液中の5−HMF生成に対する、アミノグアニジンの添加効果を示す図である。
図12は、中性環境における腹膜透析液中の5−HMF生成に対する、アミノグアニジンの添加効果を示す図である。
図13は、酸性および中性環境における腹膜透析液中のカルボニル化合物量に対するアミノグアニジンの添加効果を示す図である。
図14は、腹膜透析液へのカルボニル化合物トラップビーズ添加によるペントシジン生成抑制効果を示す図である。
図15は、腹膜透析液へのカルボニル化合物トラップビーズ添加によるカルボニル化合物除去効果を示す図である。
図16は、ジカルボニル溶液への活性炭添加によるカルボニル化合物除去効果を示す図である。
図17は、腹膜透析液への活性炭添加によるカルボニル化合物除去効果を示す図である。
図18は、グアニジンを用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図19は、ビグアナイド剤にメトホルミン(Metformin)を用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図20は、ビグアナイド剤にブホルミン(Buformin)を用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図21は、ビグアナイド剤にフェンホルミン(Phenformin)を用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図22は、アミノグアニジンを用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図23は、SH化合物にシステインを用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図24は、SH化合物にN−アセチルシステインを用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図25は、SH化合物にGSHを用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図26は、SH化合物にアルブミンを用いたときの、グリオキサール、メチルグリオキサール、3−デオキシグルコソンに対するトラップ効果を示す図である。
図27は、腹膜透析液にSH化合物を添加したときのペントシジンの生成抑制効果を示す図である。

Claims (4)

  1. カルボニル化合物トラップ剤を有効成分とする腹膜透析における腹腔内のカルボニルストレス状態改善剤であって、前記カルボニル化合物トラップ剤が活性炭であるカルボニルストレス状態改善剤。
  2. 請求項1に記載のカルボニル化合物トラップ剤を充填した腹膜透析液中のカルボニル化合物トラップ用カートリッジ。
  3. 請求項2に記載のカルボニル化合物トラップ用カートリッジに腹膜透析液を通過させる工程を含む、カルボニル化合物含有量が低減された腹膜透析液の調製方法。
  4. 次の工程を含む、カルボニル化合物含有量が低減された腹膜透析液の調製方法。
    a)請求項1に記載のカルボニル化合物トラップ剤と腹膜透析液とを接触させる工程、および
    b)カルボニル化合物トラップ剤と腹膜透析液を分離する工程
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