JP3731359B2 - バンパスプリング - Google Patents
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Description
【技術分野】
本発明は、車両のサスペンション機構に装着されて、サスペンション機構の作動量を弾性的に制限するバンパスプリングに関するものである。
【0002】
【背景技術】
例えば自動車のサスペンション機構においては、ボデーに対して変位可能に弾性支持された車輪のストローク量を弾性的に制限し、或いはサスペンション機構による車輪の弾性支持機能を補助するために、サスペンションアーム間やサスペンションアームとボデーの間において、弾性材からなるバンパスプリングが、単独で或いはショックアブソーバのピストンロッドに外挿された状態等によって、装着されている。ところで、このようなバンパスプリングには、車両の良好なる乗り心地と操縦安定性を両立するために、サスペンション機構の作動量が小さい場合には柔らかく、作動量が大きくなると硬くなって、作動量を確実に制限し得るような非線形のばね特性が要求される。
【0003】
そこで、このような要求特性を実現するために、例えば、低ばね特性のバンパスプリング本体を採用すると共に、該バンパスプリング本体における軸方向中間部分の外周面上に、樹脂材料等で形成された硬質の拘束リングを外嵌固定したバンパスプリングが、提案されている。このようなバンパスプリングにおいては、バンパスプリング本体の膨出変形が拘束リングで規制されると共に、バンパスプリング本体の圧縮変形量が大きくなった際、拘束リングを他の剛性部材に当接させて変位規制することが出来るのであり、それによって、バンパスプリング本体のばね特性を立ち上げて、バンパスプリング本体の弾性変形量、ひいてはサスペンション機構の作動量を有利に制限することが可能となるのである。
【0004】
ところが、かくの如き拘束リングを用いたバンパスプリングにおいては、拘束リングによってバンパスプリング本体が局部的に変形規制されることから、バンパスプリング本体の弾性変形時、特にその弾性変形量が大きくなった時に、拘束リング取付部位に対して応力の集中が発生し易く、バンパスプリング本体の耐久性を充分に得ることが難しいという問題があった。
【0005】
また、サスペンション機構への大荷重の入力による拘束リングの剛性部材への当接が頻繁であったり、当接力が過大であったりすると、拘束リングや剛性部材の耐久性が問題となり易いという問題もあった。そして、拘束リングが破損すると、バンパスプリング本体の弾性変形量を有効に制限し得なくなるために、車両の操縦安定性が著しく低下するおそれがあったのである。
【0006】
【解決課題】
ここにおいて、本発明は、上述の如き事情を背景として為されたものであって、その解決課題とするところは、優れた耐久性を確保しつつ、非線形なばね特性を実現し、且つサスペンション機構の作動量を有効に且つ安定して制限することの出来るバンパスプリングを提供することにある。
【0007】
【解決手段】
このような課題を解決するために為された本発明によって、下記の各態様のバンパスプリングが得られる。なお、本発明の技術的特徴および態様は、以下に記載のものに限定されるものでなく、明細書全体の記載および図面に記載の発明思想に基づいて認識されることが理解されるべきである。
【0008】
本発明の第一の態様は、車両のサスペンション機構の作動に際して接近/離隔方向に相対変位せしめられる一対の部材間に介装されて、該サスペンション機構の作動量を弾性的に制限するバンパスプリングにおいて、前記一対の部材のいずれか一方に取り付けられることにより、該一方の部材から他方の部材に向かって開口する保持筒部を形成する硬質の保持部材に対して、発泡弾性材で形成されたバンパスプリング本体を、その基端側において保持せしめて、該バンパスプリング本体の先端側を、該保持筒部から前記他方の部材に向かって突出させると共に、該保持筒部の先端面から該他方の部材に向かって、該バンパスプリング本体よりも低い突出先端面をもって突出するストッパゴムを設け、該バンパスプリング本体の突出先端面に対する前記他方の部材の当接により、該バンパスプリング本体が該ストッパゴムの内側に収容状態で圧縮変形して、該ストッパゴムの突出先端面が該他方の部材に当接するようにしたバンパスプリングを、その特徴とする。
【0009】
かかるバンパスプリングにおいて、入力荷重が小さい間は、ストッパゴムが他方の部材に当接することなく、バンパスプリング本体が他方の部材に当接して圧縮変形せしめられることにより、バンパスプリング本体のばね特性が発揮される。入力荷重が大きくなると、バンパスプリング本体の圧縮変形量が大きくなり、ストッパゴムが他方の部材に当接して、バンパスプンリング本体とストッパゴムの両方が圧縮変形せしめられる。その結果、ばね特性が非線形的に変化せしめられ、硬いばね特性が発揮される。しかも、ストッパゴムは、硬質の保持部材で形成された保持筒部の先端面上に設けられていることから、一対の部材の相対変位量を、弾性的に且つ確実に制限することが出来、それによって、バンパスプリング本体の変形量が有効に制限されて良好なる耐久性が発揮され得る。
【0010】
しかも、かかるバンパスプリングにおいては、バンパスプリング本体を発泡弾性体にて構成したことにより、圧縮変形時に体積減少してコンパクトになり得るのであり、それによって、ストッパゴムの先端面における他方の部材への当接が、バンパスプリング本体によって阻害されることなく、安定して実現され得る。また、バンパスプリング本体が、圧縮変形時にストッパゴムの内側に収容状態とされることから、バンパスプリング本体の他部材等への干渉も防止され得る。
【0011】
また、本発明の第二の態様は、前記第一の態様に係るバンパスプリングにおいて、前記保持部材における保持筒部の内周面に保持ゴム層を形成し、該保持ゴム層の内周面に対して、前記バンパスプリング本体の外周面を、抜け出しを阻止する凹凸係止構造をもって嵌め合わせて保持せしめたことを、特徴とする。
【0012】
このような第二の態様に係るバンパスプリングにおいては、バンパスプリング本体を、保持部材の保持筒部に嵌め込むことによって、強固に保持させることが可能となる。特に保持ゴム層を形成したことにより、保持部材の形状を単純にして優れた製作性を維持しつつ、バンパスプリング本体を保持せしめるための凹部や凸部等を容易に形成することが可能となる。なお、バンパスプリング本体は、保持部材乃至は保持ゴム層に対して、必ずしも接着する必要はない。また、凹凸係止構造は、保持ゴム層とバンパスプリング本体の各対応する部位に、互いに係合する各種形状の凹部と凸部を形成すること等によって実現され得る。更にまた、保持ゴム層は、ストッパゴムと一体形成しても良い。
【0013】
また、本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に係るバンパスプリングにおいて、前記保持部材を有底円筒形状の保持金具にて構成し、該保持金具の底壁部によって、前記バンパスプリング本体の基端側の端面を支持せしめたことを特徴とする。
【0014】
このような第三の態様に係るバンパスプリングにおいては、バンパスプリング本体の基端部を、保持部材によって一層強固に且つ安定して保持することが可能となる。なお、かかる保持金具は、例えば、金属板の絞り加工等によって有利に形成することが可能であり、好適には、開口周縁部に対して、径方向外方に向かって広がる円環板形状のフランジ状部が一体形成されて、該フランジ状部に対してストッパゴムが突出形成される。また、本実施態様においては、例えば保持金具の底壁部にボルト装着孔を設け、該底壁部において、保持金具をサスペンション部材等に取付可能とすることも、有効である。
【0015】
また、本発明の第四の態様は、前記第一乃至第三の何れかの態様に係るバンパスプリングにおいて、前記バンパスプリング本体を、突出方向に貫通する中心孔を有する中空筒形状とすると共に、該バンパスプリング本体の基端側の端面において、該中心孔から外周縁部まで径方向に延び、更に連続して、該バンパスプリング本体の基端側の外周面を軸方向に延びて、該バンパスプリング本体の中心孔を前記保持部材の外部空間に連通する凹溝を設けたことを特徴とする。
【0016】
このような第四の態様に係るバンパスプリングにおいては、バンパスプリング本体の中心孔を利用して、バンパスプリングの装着作業を行うことが出来るのであり、また、ショックアブソーバのピストンロッドに外挿装着することも可能となる。更にまた、中心孔の大きさを調節することにより、バンパスプリング本体のばね特性を容易にチューニングすることができる。また、バンパスプリング本体の先端面が他方の部材に当接して閉塞した場合でも、中心孔の内部空間が凹溝を通じて外部空間に連通されることから、バンパスプリング本体の圧縮変形に伴う中心孔の容積変化に際して、該凹溝を通じての空気の給排が許容されることにより、バンパスプリング本体に対して安定した弾性変形が許容されると共に、空気音等の異音の発生も防止され得る。しかも、バンパスプリング本体に中心孔を設けたことにより、圧縮変形時における外周側への膨出変形量を抑えることが出来、ストッパゴム等への干渉を軽減乃至は防止することも可能となる。なお、凹溝は、一つでも良いが、複数設けても良い。
【0017】
また、本発明の第五の態様は、前記第一乃至第四の何れかの態様に係るバンパスプリングにおいて、前記ストッパゴムを、前記保持筒部の先端面上において周方向に連続した筒形状をもって形成したことを特徴とする。
【0018】
このような第五の態様に係るバンパスプリングにおいては、ストッパゴム自体の座屈的な変形を抑えることができ、安定したばね特性と優れた耐久性が実現され得る。なお、ストッパゴムは、このように筒形状にて形成することが有効であるが、周方向に実質的に独立して複数の突状ブロック構造をもって形成することも、勿論可能であり、その他、突出先端側に行くに従って次第に先細となる形状のストッパゴムや、内外周の表面に凹所を設けてばね特性を調節したストッパゴム等も、より優れた緩衝作用を得る上に有効である。更にまた、ストッパゴムの突出先端面に対して、周方向に離間して複数の弾性突起を一体形成することも可能であり、それにより、ストッパゴムの他方の部材への当接時における打音や衝撃を軽減乃至は防止することが出来る。
【0019】
また、本発明の第六の態様は、前記第一乃至第五の何れかの態様に係るバンパスプリングにおいて、前記バンパスプリング本体に対して、外周面を周方向に延びる周溝を、少なくとも一つ形成したことを特徴とする。
【0020】
このような第六の態様に係るバンパスプリングにおいては、周溝の作用によって、バンパスプリング本体の突出方向での圧縮変形が安定し、以て、目的とするばね特性をより安定して得ることが可能となると共に、座屈的な変形が防止されて、耐久性の更なる向上が図られ得る。特に、複数の周溝を突出方向に離間して形成することにより、更に、バンパスプリング本体に対して中心孔を形成した場合には、バンパスプリング本体の内周面を周方向に延びる周溝を、外周面の周溝と異なる位置に、より好ましくは外周面の周溝と内周面の周溝の各複数を、バンパスプリング本体の突出方向で交互に位置するように形成して、バンパスプリング本体を蛇腹構造とすることにより、一層安定した圧縮変形が実現され得る。
【0021】
更にまた、本発明の第七の態様は、前記第一乃至第六の何れかの態様に係るバンパスプリングにおいて、前記バンパスプリング本体の前記ストッパゴムの突出先端面からの突出高さを、該バンパスプリング本体の全長の75%以下としたことを、特徴とする。
【0022】
このような第七の態様に係るバンパスプリングにおいては、バンパスプリング本体に対する過大な荷重入力や過大な圧縮変形が回避されることにより、耐久性の更なる向上が実現され得る。特に好適には、ストッパゴムを介しての、保持筒部の他方の部材への当接により、バンパスプリング本体の最大圧縮歪みが75%以下となるように設定される。
【0023】
また、本発明の第八の態様は、前記第一乃至第七の何れかの態様に係るバンパスプリングにおいて、ストッパゴムを、非発泡のゴム材で形成し、且つ該ストッパゴムのばね定数を、バンパスプリング本体のばね定数よりも大きく設定したことを、特徴とする。
【0024】
このような第八の態様に係るバンパスプリングにおいては、非線形的な目的とするばね特性が一層有利に実現可能となる。なお、ストッパゴムの材質は、要求特性に応じて入力荷重の大きさや使用環境等を考慮して決定されるものであって、特に限定されるのものでない。また、バンパスプリング本体の材質としては、体積収縮を伴う圧縮変形が生ぜしめられるものであれば良いが、例えば発泡ポリウレタン等が好適に採用される。
【0025】
更にまた、本発明の第九の態様に係るバンパスプリングにおいては、前記第一乃至第八の何れかの態様に係るバンパスプリングにおいて、バンパスプリング本体における突出方向の中間部分に対して、外周面を周方向に延びる環状の拘束リングを外嵌装着したことを、特徴とする。
【0026】
このような拘束リングを設ければ、バンパスプリング本体それ自体においても、非線形的なばね特性が実現されることから、バンパスプリングに対して、非線形なばね特性が一層有利に実現可能となる。また、バンパスプリング本体の自由な弾性変形が拘束リングで規制されることにより、その圧縮変形に際しての形状の安定化が図られ、より安定したばね特性が発揮され得ることとなる。尤も、このような拘束リングをバンパスプリングに装着しない場合には、バンパスプンリングの圧縮変形時における応力集中等の問題が一層有利に回避乃至は軽減され得るが、拘束リングを装着した場合でも、本発明においては、バンパスプリング本体の弾性変形量が、ストッパゴムで制限されることから、過大な応力集中が回避され、良好な耐久性が実現可能となる。なお、拘束リングは、バンパスプリング本体の圧縮変形に際して、ストッパゴムや保持部材に対する当接が回避されるように形状や寸法等を設定することがより望ましい。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を更に具体的に明らかにするために、上記本発明の第一〜第九の共通した実施形態としてのバンパスプリングについて、図面を参照しつつ、詳細に説明する。
【0028】
先ず、図1には、本発明の第一の実施形態としてのバンパスプリング10が示されている。このバンパスプリング10は、バンパスプリング本体12と、保持部材としての保持金具14が、互いに組み付けられて構成されている。
【0029】
そこにおいて、バンパスプリング本体12は、図2及び図3にも示されているように、厚肉の略円筒形状を有しており、中心軸上を貫通して延びる中心孔16を備えている。また、軸方向一方の側(図2中の下側)の端部は、先太形状とされて、外径寸法が最も大きい基端部18とされている。一方、軸方向他方の側の端部は、先細形状とされて、外径寸法が最も小さい先端部20とされている。
【0030】
また、バンパスプリング本体12の外周面上には、それぞれ外周面に開口して周方向に連続して延びる第一の外周溝22と第二の外周溝24が、何れも外周側に向かって拡開した略V字形断面をもって形成されている。そして、これら第一の外周溝22と第二の外周溝24は、バンパスプリング本体12の軸方向中間部分において、互いに軸方向に離間して形成位置せしめられている。また一方、バンパスプリング本体12の内周面上には、それぞれ内周面に開口して周方向に連続して延びる第一の内周溝26と第二の内周溝28が、何れも内周側に向かって拡開した略V字形断面をもって形成されている。そして、バンパスプリング本体12の軸方向において、第一の外周溝22,第一の内周溝26,第二の外周溝24および第二の内周溝28が、交互に距離を隔てて位置せしめられることにより、バンパスプリング本体12が、基端部18の付近を除く全体において、略厚肉の蛇腹構造とされている。また、バンパスプリング本体12は、基端部18から先端部20に向かって、軸方向で次第に薄肉化されており、ばね特性が、先端側ほど柔らかくされている。
【0031】
更にまた、バンパスプリング本体12の基端部18側は、軸方向所定長さに亘って大径の厚肉構造とされている。また、バンパスプリング本体12の基端部18側の端面には、径方向に直線的に延び、中心孔16から外周縁部にまで至る凹溝30が、形成されている。かかる凹溝30は、幾つ形成しても良いが、本実施形態では、中心孔16を径方向に挟んだ両側に位置して一対が形成されている。更に、各凹溝30は、バンパスプリング本体12の外周縁部に達した後、連続して、バンパスプリング本体12の外周面上を軸方向に延びており、第一の外周溝22内に開口している。
【0032】
ところで、かくの如きバンパスプリング10は、発泡弾性体によって形成されており、例えば、ポリウレタンを発泡成形することによって得られるウレタンフォーム等が好適に採用され得る。
【0033】
一方、保持金具14は、図4及び図5にも示されているように、有底円筒形状を有している。そして、その底壁部32の中央には、取付孔34が貫設されていると共に、その筒壁部33の開口周縁部は、径方向外方に屈曲されており、略一定幅で周方向に連続して延びるフランジ状部36が一体形成されている。
【0034】
この保持金具14は、硬質材で形成されていれば良く、例えば硬質の合成樹脂材等で形成することも可能であるが、本実施形態では、鉄系金属等の金属板をプレス加工等で絞り成形して得られたものが、採用されている。
【0035】
また、保持金具14には、その筒壁部33の先端面としてのフランジ状部36上に、ストッパゴム38が、載置された状態で固着されることにより、軸方向外方に向かって突出形成されている。このストッパゴム38は、円筒形状を有しており、フランジ状部36を略全面に亘って覆うようにして、フランジ状部36に接着されている。なお、ストッパゴム38の突出先端面40には、略半球形状で突出する弾性突起42の複数(本実施形態では、8個)が、互いに周方向に離間して一体形成されている。
【0036】
更にまた、保持金具14には、その筒壁部33の内周面を覆うようにして、保持ゴム層44が形成されて固着されている。この保持ゴム層44は、筒壁部33の内周面を全面に亘って覆うように形成されて、筒壁部33に被着されている。特に、本実施形態では、かかる保持ゴム層44が、ストッパゴム38と一体形成されている。より好適には、これら保持ゴム層44とストッパゴム38の成形型内に保持金具14をセットし、保持ゴム層44とストッパゴム38を、その加硫成形と同時に保持金具14に加硫接着することにより、一体加硫成形品として形成される。
【0037】
また、保持ゴム層44には、保持金具14の底側端部において、周方向に連続して延びる係止凹溝46が形成されている。この係止凹溝46は、バンパスプリング本体12の基端部18の外周面形状に対応した内周面形状を有している。これにより、図1に示されている如く、バンパスプリング本体12の基端部18を、保持金具14に押し込むことによって、かかる基端部18の外周部分が、保持ゴム層44の係止凹溝46に嵌まり込んで嵌合されるようになっている。そして、バンパスプリング本体12の基端部18が、保持ゴム層44の係止凹溝46に対して、凹凸係止構造をもって抜け出しを阻止し得る状態で係止されることにより、バンパスプリング本体12が保持金具14によって保持されている。
【0038】
ここにおいて、バンパスプリング本体12の軸方向長さ:L1は、保持金具14におけるストッパゴム38の突出高さ:M1よりも大きく設定されており、L1>M1とされている。また、バンパスプリング本体12の軸方向長さ:L1に対する保持金具14におけるストッパゴム38(弾性突起42を含む)の突出高さ:N1の比:N1/L1の値を、0.25以上に設定することが望ましく、より好適には、バンパスプリング本体12の軸方向長さ:L1に対する保持金具14の筒壁部33の軸方向長さ:P1の比:P1/L1の値が、0.25以上に設定される。特に、図示されている本実施形態では、バンパスプリング本体12の軸方向長さ:L1に対するストッパゴム38の突出高さ:M1の比:M1/L1の値が、略0.4に設定されている。
【0039】
このような構造とされたバンパスプリング10は、自動車のサスペンション機構の作動に際して互いに接近/離隔方向に相対変位せしめられる一対の部材50,52間において、その一方の部材50に装着される。かかる装着は、例えば図示されているように、保持金具14の底壁部32の取付孔34に挿通したボルト54によって行われる。その際、保持金具14をボルト54にて部材50に固着した後、保持金具14にバンパスプリング本体12を嵌め込んで組み付けることも可能であるが、本実施形態では、バンパスプリング本体12を保持金具14に組み付けた後、バンパスプリング本体12の中心孔16を通じて、ボルト54の螺着作業を行い、保持金具14を部材50に螺着するようになっている。
【0040】
そして、このような装着状態下、バンパスプリング10は、バンパスプリング本体12が一方の部材50から他方の部材52に向かって突出し、バンパスプリング本体12の先端部20が、該他方の部材52に対して離間して対向位置せしめられる。なお、バンパスプリング本体12は、その中心軸が、両部材50,52の略接近/離隔方向となるように位置決め装着される。かかる状態下、サスペンション機構の作動によって両部材50,52が相対接近せしめられると、先ず、他方の部材52が、バンパスプリング本体12に当接する。その結果、バンパスプリング本体12が軸方向に圧縮変形せしめらる。その際、ストッパゴム38は、他方の部材52に当接しないことから、バンパスプリング本体12のみの圧縮ばねに基づき、柔らかいばね特性が発揮される。更に、サスペンション機構の作動量が増大し、バンパスプリング本体12の圧縮変形量が大きくなると、バンパスプリング本体12だけでなく、ストッパゴム38も、他方の部材52に当接する。これにより、バンパスプリング本体12とストッパゴム38の両方の圧縮ばねが作用することとなり、ばね定数が急激に大きくなって、硬いばね特性が発揮される。
【0041】
従って、本実施例のバンパスプリング10によれば、サスペンション機構の作動量が小さい間は、柔らかいばね特性が発揮されると共に、サスペンション機構の作動量が大きくなると、急激にばね特性が大きくなり、サスペンション機構の過大な作動量、換言すれば車体のローリング方向の過大な変位が、確実に防止され得るのである。それによって、通常の走行時における優れた乗り心地を確保しつつ、操縦安定性の向上が有利に達成され得る。
【0042】
また、バンパスプリング本体12とストッパゴム38に対して、バンパスプリング10に要求される緩衝機能等を分担させることが出来る。それによって、バンパスプリング本体12のばね特性を柔らかくして、通常走行時での乗り心地が確保され得る範囲で、サスペンション機構による車輪の弾性支持機能を補助すると共に、サスペンション機構の作動量を制限するストッパ機能の緩衝的な初期作動を実現することが出来ると共に、ストッパゴム38の突出高さを座屈等が問題となる程に大きくすることなく、サスペンション機構の作動量を緩衝的に且つ確実に制限するストッパ機能を有利に実現することが出来るのである。特に、ストッパゴム38が、硬質材からなる保持金具14の筒壁部33上に形成されていることから、実質的に、この筒壁部33により、両部材50,52の相対変位量が確実に制限され得るのである。
【0043】
特に、本実施形態では、ストッパゴム38が周方向に連続した円筒形状とされていることから、座屈等の不規則な変形が一層有利に防止され得る。また、ストッパゴム38の突出先端面40に弾性突起42が形成されていることから、ストッパゴム38の部材52への打ち当たり時の打音が軽減されると共に、ストッパゴム38の部材52への当接の際に、自動車に乗っている人が感じるドスン感等の軽減効果も発揮される。
【0044】
さらに、バンパスプリング本体12は、発泡弾性体で形成されており、圧縮時に容積減少することから、座屈等の不規則な変形が有利に防止されて、軸方向に安定して圧縮変形し得る。そして、バンパスプリング本体12が、圧縮変形量の増加に伴って、ストッパゴム38および保持金具14の内部に収容されるように容積減少せしめられることから、バンパスプリング本体12が径方向外方にはみ出して、他部材に緩衝したり、ストッパゴム38の部材52への当接が阻害されるようなこともない。特に、本実施形態では、バンパスプリング本体12に中心孔16が形成されて、内周側への膨出変形が許容されていることから、バンパスプリング本体12における外周側への膨出変形が一層有利に軽減乃至は防止され得る。
【0045】
また、本実施形態では、バンパスプリング本体12に拘束リング等が装着されていないことから、バンパスプリング本体12の圧縮変形時における局部的な応力集中が有利に回避され得る。しかも、バンパスプリング本体12の圧縮変形量が、保持金具14の筒壁部33とストッパゴム38の部材52への当接によるサスペンション機構の作動量の制限作用によって、確実に制限され得ることから、バンパスプリング本体12の最大発生応力も限度内に抑えられて、優れた耐久性が発揮され得る。
【0046】
また、バンパスプリング本体12の中心孔16は、バンパスプリング本体12の凹溝30を通じて、保持金具14の底壁部32内面および保持ゴム層44の内周面との間を通って、保持金具14の開口部から外部空間に、常時、連通状態に維持されており、バンパスプリング本体12の中心孔16と外部空間との間での空気の給排が許容されるようになっている。これにより、バンパスプリング本体12の先端部20に部材52が当接して、中心孔16の先端開口部が覆蓋された状態で、バンパスプリング本体12が弾性変形した際にも、中心孔16の容積変化が容易に許容されて、中心孔16内の圧力増大に伴うバンパスプリング本体12の損傷等が回避されると共に、所期のばね特性が安定して発揮され得、空気の給排等に伴う異音の発生も効果的に防止され得る。
【0047】
以上、本発明の一実施形態としてのバンパスプリング10について詳述してきたが、これはあくまでも例示であって、本発明の態様が、かかる実施形態における具体的記載によって、何等、限定されるものでない。
【0048】
特に、バンパスプリング本体やストッパゴムの具体的な材質や形状、大きさ等は、要求される特性等に応じて適宜に決定されるものであって、限定されるものでない。前記実施形態とは異なる形態の一例を、第二の実施形態として、図6に示す。なお、本実施形態では、その理解を容易とするために、図中、第一の実施形態の部材と対応する各部材に対して、それぞれ、第一の実施形態と同一の符号を付することとする。
【0049】
すなわち、本実施形態のバンパスプリング60を構成するバンパスプリング本体12は、図7及び図8にも示されているように、全体として厚肉の円筒形状を有しており、中央部分よりも先端部20がやや大径とされており、更に先端部20よりも基端部18がやや大径とされている。また、外周面上には、第一及び第二の外周溝22,24が、軸方向に離間して形成されていると共に、先端部20の内周面上に第一の内周溝26が形成されて、軸方向のばね特性が柔らかく調節されている。更に、基端部18の外周面上には、周方向に連続して延びる環状の係止凹溝62が形成されている。
【0050】
一方、本実施形態のバンパスプリング60を構成する保持金具14は、図9及び図10にも示されているように、その筒壁部33が、開口部側に向かって僅かに絞られて、底部より開口部が小径化された逆テーパ付きの円筒形状とされている。これにより、フランジ状部36の外径寸法を抑えつつ、フランジ状部36の幅を大きく設定可能とされている。
【0051】
更に、この保持金具14の内周面に被着された保持ゴム層44には、内周面上を周方向に連続して延びる係止凸条64が一体形成されている。そして、図1に示されているように、保持金具14にバンパスプリング本体12を嵌め込むことにより、バンパスプリング本体12の係止凹溝62に対して、保持ゴム層44の係止凸条64が嵌まり込んで、バンパスプリング本体12を保持金具14に対して係止するようになっている。要するに、本実施形態では、係止凹溝62と係止凸条64によって、バンパスプリング本体12の保持金具14からの抜け出しを阻止する凹凸係止構造が構成されているのである。
【0052】
また、保持金具14のフランジ状部36上に突出形成されたストッパゴム38は、第一の実施形態のものより大きな突出高さで形成されており、先端側に向かって内径寸法が大きくされることにより、先端側に向かって薄肉化する断面形状を有している。また、ストッパゴム38の内外周面には、周方向に延びる溝状の凹所66,68が形成されており、ストッパゴム38の軸方向の圧縮ばね特性が調節されている。更に、ストッパゴム38の突出先端面40には、周方向に交互に凹部70と凸部72が形成されていると共に、各凹部70の中央において、ストッパゴム38の突出方向に向かって略円錐台形状をもって突出する、先端球状の弾性突起42が、それぞれ一体形成されている。なお、弾性突起42の突出高さは、凹部70と凸部72の段差寸法よりも大きくされており、弾性突起42の先端部分が凸部72よりも、軸方向外方に突出せしめられている。
【0053】
このような構造とされたバンパスプリング60においても、前記第一の実施形態のバンパスプリング10と同様な効果が、何れも、有効に発揮され得る。また、特に本実施形態のバンパスプリング60では、バンパスプリング本体12が、その軸方向長さの半分以上の部分において、保持金具14の筒壁部33およびストッパゴム38で外周を囲まれていることから、バンパスプリング本体12の座屈的な変形や外方への局部的な変形等が一層有利に防止されて、より安定した圧縮変形が生ぜしめられる。また、第一の実施形態のものに比して、バンパスプリング本体12が厚肉とされていると共に、ストッパゴム38の突出高さが大きくされていることにより、サスペンション機構を構成する両部材の接近方向への相対変位量の増大に伴うばね特性の急激な立ち上がりが緩和されて、滑らかな緩衝効果が発揮され得る。特に、本実施形態では、ストッパゴム38の突出先端面40に凹部70と凸部72が形成されていると共に、第一の実施形態のものより大きな弾性突起42が形成されていることにより、バンパスプリング本体12の圧縮変形に基づく柔らかいばね特性から、ストッパゴム38の圧縮変形に基づく硬いばね特性への移行領域において、ばね特性の衝撃的な変化が有利に緩和され得るといった利点がある。
【0054】
また、上記第一及び第二の実施形態においては、何れも、円筒形状のバンパスプリング本体12が採用されていたが、本発明においては、バンパスプリング本体を中実構造とすることも可能である。その際には、例えば、保持金具14にナット等の雌ねじ部を固着して部材50にボルト固定可能としたり、或いは、保持金具14自体を部材50に溶着したり、保持金具14に対して外周面上に突出する取付脚部を形成すること等によって、保持金具14を部材50に取り付けることが有効である。
【0055】
また、バンパスプリング本体に中心孔を形成しない場合には、凹溝30等によって空気抜孔を形成する必要はない。
【0056】
更にまた、バンパスプリング本体に中心孔を形成する場合でも、バンパスプリング本体に凹溝を形成する代わりに、バンパスプリング本体が嵌合される保持金具又は保持ゴム層の表面に対して、凹溝を形成し、バンパストッパ本体の外周面との間に空気抜孔を形成することも可能である。
【0057】
また、ストッパゴムを、発泡弾性材で形成することも可能である。
【0058】
更にまた、保持金具における筒壁部が厚肉であり、筒壁部の先端面の幅寸法を充分に確保できるような場合には、フランジ状部等は必ずしも設ける必要がない。
【0059】
その他、一々列挙はしないが、本発明は、当業者の知識に基づいて種々なる変更,修正,改良等を加えた態様において実施され得るものであり、また、そのような実施態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限り、何れも、本発明の範囲内に含まれるものであることは、言うまでもない。
【0060】
【発明の効果】
上述の説明から明らかなように、本発明に従う構造とされたバンパスプリングにおいては、非線形のばね特性が有利に実現され得て、サスペンション機構の作動量が小さい領域での柔らかいばね特性を確保しつつ、サスペンション機構の作動量を緩衝的に且つ確実に制限することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一の実施形態としてのバンパスプリングを示す縦断面図であって、図3におけるII−II断面に対応する断面で示す図である。
【図2】図1に示されたバンパスプリングを構成するバンパスプリング本体を示す縦断面図であって、図3におけるII−II断面に相当する図である。
【図3】図2に示されたバンパスプリング本体の底面図である。
【図4】図1に示されたバンパスプリングを構成する保持金具を示す縦断面図であって、図5におけるIV−IV断面に相当する図である。
【図5】図4に示された保持金具の平面図である。
【図6】本発明の第二の実施形態としてのバンパスプリングを示す縦断面図であって、図8における VII−VII 断面に対応する断面で示す図である。
【図7】図6に示されたバンパスプリングを構成するバンパスプリング本体を示す縦断面図であって、図8における VII−VII 断面に相当する図である。
【図8】図7に示されたバンパスプリング本体の底面図である。
【図9】図6に示されたバンパスプリングを構成する保持金具を示す縦断面図であって、図10におけるIX−IX断面に相当する図である。
【図10】図9に示された保持金具の平面図である。
【符号の説明】
10,60 バンパスプリング
12 バンパスプリング本体
14 保持金具
38 ストッパゴム
44 保持ゴム層
Claims (3)
- 車両のサスペンション機構の作動に際して接近/離隔方向に相対変位せしめられる一対の部材間に単独で介装されて、該サスペンション機構の作動量を弾性的に制限するバンパスプリングにおいて、
前記一対の部材のいずれか一方に取り付けられることにより、該一方の部材から他方の部材に向かって開口し且つその開口周縁部が径方向外方に屈曲せしめられて形成されたフランジ状部を備えた保持筒部を与える硬質の保持部材に対して、突出方向に貫通する中心孔を有する中空筒形状を呈し、更に外周面を周方向に延びる周溝が少なくとも一つ形成されてなる、発泡弾性材で形成されたバンパスプリング本体を、その基端側において保持せしめて、該バンパスプリング本体の先端側を、該保持筒部から前記他方の部材に向かって突出させることにより、前記中心孔を空孔状態において該他方の部材に対して開口せしめると共に、該保持筒部の先端面を与える前記フランジ状部から該他方の部材に向かって、該バンパスプリング本体よりも低い突出先端面をもって突出するストッパゴムを、該フランジ状部上において周方向に連続した筒形状をもって固着して設け、更に該ストッパゴムの突出先端面から、前記他方の部材に向かって突出する複数の弾性突起を、互いに周方向に離間して設けて、該バンパスプリング本体の突出先端面に対する該他方の部材の当接により、該バンパスプリング本体が該ストッパゴムの内側に収容状態で圧縮変形して、該ストッパゴムの突出先端面が該他方の部材に当接せしめられ、更に該ストッパゴムが前記保持筒部のフランジ状部と該他方の部材との間において圧縮変形せしめられるように構成する一方、前記保持部材における保持筒部の内周面に保持ゴム層を形成し、該保持ゴム層の内周面に対して、前記バンパスプリング本体の外周面を、抜け出しを阻止する凹凸係止構造をもって嵌め合わせて保持せしめたことを特徴とするバンパスプリング。 - 前記保持部材を有底円筒形状の保持金具にて構成し、該保持金具の底壁部によって、前記バンパスプリング本体の基端側の端面を支持せしめた請求項1に記載のバンパスプリング。
- 前記バンパスプリング本体の基端側の端面において、該中心孔から外周縁部まで径方向に延び、更に連続して、該バンパスプリング本体の基端側の外周面を軸方向に延びて、該バンパスプリング本体の中心孔を前記保持部材の外部空間に連通する凹溝を設けた請求項1又は2に記載のバンパスプリング。
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