JP3724463B2 - 煮豆のドライパック包装体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は煮豆のパウチ包装体に関し、詳しくは耐熱性合成樹脂やアルミ箔製等の軟質の袋(パウチ)内に調味液の残溜をほとんど無くして含気密封(ドライパック)された煮豆のドライパック包装体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、市販の包装煮豆は、缶詰にされた水煮スタイルのものがある。このような包装煮豆は缶を開封して調味液を棄て煮豆のみを取り出してサラダの具材としたり、適宜の味付けをして惣菜として用いられている。また近年、運搬上の取扱いも容易で包装コストの安いパウチ包装された煮豆も多く提供されるようになり、中でもパウチ内に調味液汁の溜りがほとんど無いいわゆるドライパックスタイルのものが好まれ製品化されている。
【0003】
これらに関連して例えば、特公平4−65659号公報には、軟らかくて食感の良好なドライパックスタイルの煮豆の製法が記載されている。また、特開昭57−155969号公報の実施例1にはドライパックとは言い難いが煮豆の表面に高糖度のシラップが多量に付着した小豆の甘露煮の製法が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記水煮スタイルの包装煮豆は利用価値のない調味液を含んでいるため製品の運搬及び商品価値の上で好ましくない。
また、上記特公平4−65659号公報に提案されている製法により得られるドライパックスタイルの煮豆は、適当な軟らかさを有していて食感の良いものなる点で評価できるものの、殺菌処理工程やその後の運搬、箱詰、陳列、保管時の取扱い状況等によっては、煮豆が圧潰又は変形され見栄えのしないものとなる。
【0005】
特開昭57−155969号公報の実施例1に記載の製法によるものは、小豆の甘露煮であるために、小豆表面に高糖度シラップのヌメリやベタつき感があり、小豆同士が複数粘り付いて個別に分離し難い(パラつき感がない)ものとなる。したがって、この製法によって得られる煮豆も調味液がなくパウチ内で個々の煮豆が粘り付かずに独立状態で収納されたドライパックスタイルの煮豆のパウチ包装体とは言えず、サラダの具材や味付けをして惣菜として便利に用いるには不適なものである。
本発明は以上の従来技術が有する問題を勘案してなされたもので、パウチ包装体で煮豆同士の粘り付きがなく、表面に良好な滑り感を有するため、外部からの押圧による煮豆の変形や圧潰が生じ難く、サラダの具材等に適した煮豆を得ることができる煮豆のドライパックスタイルの包装体(ドライパック包装体)を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の煮豆のドライパック包装体は、DE値が15以下のデキストリンの還元物又はDE値が19以下のデキストリンを含む調味液による調味付けの後に液切りして得た、前記調味液が付着した煮豆を、パウチ内に少なくとも煮豆の5粒体積以上の含気空間が形成されるように当該パウチに密封包装してレトルト殺菌してなることを特徴とする。このような構成とすることにより、パウチ内に収納された煮豆は表面の良好な滑りを維持したものとなり、乱暴な取扱いや運搬による外部からの押圧が加わっても、パウチ内で煮豆が滑り移動するため圧潰や変形が生じ難いものとして得ることができる。この際、調味液として、DE値15以下のデキストリン又はその還元物を1重量%以上の濃度で含有するものを使用すると、煮豆表面になお一層の滑り感が与えられるのでよい。また、濃度の上限は、本発明の煮豆表面に滑り感を付与するという効果の観点からは特に制限する必要はないが、25重量%を超えると、もはや濃度上昇に伴う効果の改善が認められないため不経済的である。
【0007】
煮豆にデキストリンを含む調味液を添加する方法としては、例えば、煮豆をデキストリンを含む調味液に浸漬(どぶ漬け)する方法、煮豆表面に調味液をスプレーする方法等がある。また、煮豆を包装体に充填する際に、少量の調味液を一緒に充填する方法でもよい。
煮豆に付着させるデキストリンを含む調味液の量は、製品全体に対して0.5〜5重量%程度が好ましい。あまり多いと、煮豆がびしょ濡れの状態となりドライパックスタイルらしからぬ製品となる。また、少な過ぎると、煮豆の表面に滑り感を付与することができず、煮豆が割れたり変形したりし易くなる。
尚、本発明においてデキストリンを含む調味液とは、食塩、甘味料、香辛料その他の調味料を添加して風味を付与した調味液に限らず、単なるデキストリンの水溶液をも含むものである。
【0008】
また、パウチ内には少なくとも煮豆の5粒体積以上の含気空間を形成してあると、パウチに外部から局部的押圧力が加わっても、パウチ内で煮豆が滑り移動できる空間となり、圧潰や変形されることをさらに未然に防ぐことができるので好ましい。
【0009】
本発明におけるデキストリンは、分岐状・直鎖状の分子構造上の区別を問うことなく、さらに、還元性・非還元性の区別を問うことなく使用可能である。またデキストリンのDE値とは、一般に「DE=還元糖%/固形分%×100」の計算式で求められるデキストロース当量を示している。この際、一般にDE値が小さい場合は高分子多糖類とされており、例えば、澱粉のDE値は約0〜1、デキストリンは約2〜50程とされている。
尚、食品用原料として市販されているデキストリンには、粉末状の乾燥品と液状の水溶液品があるが、本発明における濃度は、乾燥品換算で表わした数値(重量%)である。
【0010】
また、本発明で用いられるパウチは、レトルト殺菌が可能なアルミ箔製や耐熱性合成樹脂製の袋体が適しており、その形状は偏平形状からスタンディングパウチに至るまで各種の袋体を用いることができる。また、煮豆の風味を長期間保持するためには、酸素バリア性の高いものであることが好ましい。
【0011】
以下、本発明の煮豆のドライパック包装体をその製法に基いて説明する。
本発明で上記パウチ内に充填・密封される煮豆としては、好ましくは、乾物の豆を清水中に10〜24時間程度浸漬して水戻しをして、次いでこの水戻し豆を約93〜100℃の湯(調味液でもよい)中で20〜50分程度煮込むことにより得られたものが用いられる。
このようにして得られた煮豆は、その重量が、煮豆に仕上げた段階で乾物の豆の約2.2倍になる。
【0012】
また、上記煮豆の原料豆としては、その種類は特に制限されないが、大豆、小豆、白いんげん豆(大福豆)、レッドキドニー(赤いんげん豆)、ガルバンゾ(ひよこ豆)、マローファット(緑色豆)、グレートノーザン(小ぶり白いんげん豆)の単種あるいはそれぞれを適宜混ぜ合わせた物が好適である。
また、本発明で、上記煮豆の表面に滑り感を付与し、必要に応じて味付けをするための調味液としては、清水にDE値19以下のデキストリンを添加し、さらに好ましくは食塩、グルタミン酸ソーダ、クエン酸等の調味料を目的に応じて一種又は二種以上添加し、溶解させたものが用いられる。
【0013】
而して、本発明の煮豆のドライパック包装体を製造するに際しては、前記煮豆を耐熱性合成樹脂製パウチ内に充填・密封する前に、前記調味液に数分から数十分間浸漬する。この調味液への浸漬処理により、煮豆の表面に滑り感が付与されると共に、適宜味付けがなされるものである。浸漬処理が終了したら調味液から煮豆を取り出し、液切りした後パウチ内に充填・密封する。パウチ内への煮豆の充填・密封は常法により行えばよく、パウチ充填口から煮豆を充填後、その充填口をシルバーにて熱シールする等の技法により行う。
この際、充填後パウチを密封する前にパウチ内の空気を窒素ガス等の不活性ガスで置換しておくことが好ましく、またパウチ内の含窒素空間の容積を少なくとも煮豆の5粒体積以上の大きさにするのが、煮豆の圧潰・変形を防ぐ上でより一層好ましい。
【0014】
次いで、耐熱性パウチ内に充填・密封された煮豆を加熱殺菌することによって、本発明の煮豆のドライパック包装体を得る。
本発明の煮豆のドライパック包装体の加熱殺菌は、レトルト殺菌機等を用いて100℃以上で行えばよいが、110℃〜130℃の湯中で20〜40分間程の加圧加熱殺菌を行うのが好ましい。加熱殺菌終了後、本発明の煮豆のパウチ包装体は、速やかに冷水中にて冷却され製品とされる。
【0015】
この製品は、パウチ内に調味液がほとんど残っていないドライスタイルのものとなり、パウチ内の煮豆は表面に滑り感及び光沢(照りと艶)の付与されたものとなっており、かつ煮豆同士が粘着することなく個別に分離しているので、パウチ内で煮豆が粒ごとに滑り移動し易く、外部から局部的押圧力が加わっても圧潰や変形が生じ難く、またパウチを開封して取り出し通常の煮豆として、あるいはサラダや惣菜の具として見た目も美しく用いることができる。
【0016】
以下に試験例及び実施例をあげ、本発明を更に詳しく説明する。
【試験例】
レッドキドニー(赤いんげん豆:乾物)1kgを清水中に15時間浸漬し水戻しをした後取り出し、食塩(25g)、クエン酸(35g)、塩化カルシウム(45g)と13.5kgの清水との混合液の100℃の湯中で30分煮込んで煮豆2.2kgを得た。この煮豆を冷水に30分間浸漬した後水切りし、36等分して約60g煮豆サンプル36個を得た。
次いで、これらの煮豆サンプルを各サンプル毎に、下記表1に示す種々のDE値とその濃度の異なる物質を溶質とした調味液(水溶液)にそれぞれ20分間浸漬した後液切りし、それぞれ別個に容積100ccの合成樹脂製アルミ蒸着パウチに充填した後、ヘッドスペースを窒素置換して煮豆の5粒体積以上の空間を形成した後、口部を熱シールして36個のドライパック包装体を得た。
次に、これらのドライパック包装体を、それぞれ釜内圧2.5kg/cmに保持した高温殺菌機にて120℃の湯中で30分間加熱殺菌した後、20℃の水中で20分間冷却して36個の煮豆のドライパック包装体のサンプルを得た。
【0017】
得られた煮豆のドライパック包装体のサンプルをそれぞれ1ヵ月、常温(20℃)で保管した後、パウチ内の煮豆の押圧による圧潰・変形の難易性を測るために、それぞれのパウチをその外面から20ヵ所を指先で押圧し交互に凹ませて煮豆に衝撃圧を与えた。その後パウチを開封して煮豆を取り出し、各煮豆の圧潰(割れ)・変形及び食感について、その状況を観察し確認したところ下記表1に示す結果が得られた。
【0018】
【表1】
Figure 0003724463
【0019】
[註](1)▲1▼欄の記号×,△,○は割れ・変形の有無を示す。
×:煮豆の半数以上に割れ又は変形が生じていた。
△:煮豆全数中の4分の1以上半数未満に割れ又は変形が生じていた。
○:割れ又は変形が生じていた煮豆は、全数中の4分の1未満であった。
(2)▲2▼欄の記号×,△,○は食感の優劣を示す。
×:溶質によるベタつき感が著しい。
△:多少のベタつき感がある。
○:ベタつき感がなく良好な食感である。
【0020】
尚、表1中のa〜iに用いた溶質としては、それぞれ次の市販品を適用した。
a:化工澱粉 商品名「コルフロ67」 日本エヌエスシー(株)製
b:非還元分岐デキストリン 商品名「パインデックス♯100」 松谷化学工業(株)製
c:還元分岐デキストリン 商品名「PO−10」 東和化成工業(株)製
d:還元直鎖デキストリン 商品名「エスイー100」 日研化学(株)製
e:非還元分岐デキストリン 商品名「パインデックス♯4」 松谷化学工業(株)製
f:非還元分岐デキストリン 商品名「パインデックス♯6」 松谷化学工業(株)製
g:還元少糖 商品名「エスイー600」 日研化学(株)製
h:還元ブドウ糖 商品名「ソルビトール日研」 日研化学(株)製
i:キサンタンガム 商品名「エコーガム」 大日本製薬(株)製
【0021】
【実施例1】
レッドキドニー(赤いんげん豆:乾物)1kgを清水中に15時間浸漬して水戻しした後取り出し、食塩(25g)、クエン酸(35g)、塩化カルシウム(45g)を清水13.5kgに溶解させた95℃の溶液中で、20分間煮込んで煮豆を得た。
次に、得られた煮豆を冷水に30分間浸漬して冷却した後水切りし、さらに、還元直鎖デキストリン(日研化学(株)製、商品名「エスイー100」)濃度5重量%及び食塩濃度1重量%としてある調味液に20分間浸漬した後液切りして調味済み煮豆とした。この調味済み煮豆を60gずつ容積100ccの耐熱合成樹脂製パウチ(呉羽化学工業(株)製、商品名「ベセーラSP100」)に充填した後、ヘッドスペース部を窒素置換し、口部を熱シールした。
このパウチを貯留式殺菌機にて釜内圧2.5kg/cm、120℃の湯中で35分間殺菌後、殺菌機内の釜内圧を2.5kg/cmに保ちつつ冷却水を送りこんで30分間冷却し、製品を得た。
【0022】
得られたレッドキドニーの煮豆のドライパック包装体は、パウチ内に煮豆の5粒体積以上の含気空間を有したものとなり、パウチ内の煮豆は適度の硬さを有し、パウチ外から掴まえるには表面に滑り感があり、極めて押潰し難いものとなった。また、パウチから取り出した煮豆は照りと艶があって見た目が美しく、さらに食感の優れたものであった。
【0023】
【実施例2】
レッドキドニーの代わりにガルバンゾ(ひよこ豆:乾物)1kgを用い、その他は実施例1と同様の工程により、ガルバンゾの煮豆のドライパック包装体を得た。
得られたガルバンゾのドライパック包装体は、パウチ内に煮豆の5粒体積以上の含気空間を有したものとなり、パウチ内の煮豆は適度の硬さを有し、パウチ外から掴まえるには表面に滑り感があって極めて押潰し難いものとなった。また、パウチから取り出した煮豆は、照りと艶があって見た目が美しく、さらに食感の優れたものであった。
【0024】
【実施例3】
レッドキドニーの代わりにマローファット(青えんどう豆)を用い、その他は実施例1と同様に処理し煮豆を得た。この煮豆(マローファット)と実施例1の煮豆(レッドキドニー)及び実施例2の煮豆(ガルバンゾ)のそれぞれを冷水に浸漬して冷却処理した後、同量ずつ混合してミックス煮豆とした。
次にこのミックス煮豆を実施例1と同じ工程にて処理してミックス煮豆のドライパック包装体を得た。
得られたミックス煮豆のドライパック包装体は、パウチ内に煮豆の5粒体積以上の含気空間を有したものとなり、パウチ内の煮豆は適度の硬さを有し、パウチ外から掴まえるには表面に滑り感があって極めて押潰し難いものとなった。また、パウチから取り出した煮豆は、照りと艶があって見た目が美しく、さらに食感の優れたものであった。
【0025】
【発明の効果】
本発明の煮豆のドライパック包装体はパウチ内の煮豆をDE値が19以下のデキストリンを含む調味液で調味付けしてあるので、煮豆の表面が滑り感を有したものとなり、かつ煮豆同士の粘り付きがない。したがって、煮豆には外部から加えられた衝撃や押圧力をまともに負荷されることがなくなり、圧潰や変形の生じ難い外観及び食感の優れたものとして得ることができる。

Claims (2)

  1. DE値が15以下のデキストリンの還元物又はDE値が19以下のデキストリンを含む調味液による調味付けの後に液切りして得た、前記調味液が付着した煮豆を、パウチ内に少なくとも煮豆の5粒体積以上の含気空間が形成されるように当該パウチに密封包装してレトルト殺菌してなることを特徴とする煮豆のドライパック包装体。
  2. 調味液が、DE値15以下のデキストリン又はその還元物を1重量%以上の濃度で含有する請求項1記載の煮豆のドライパック包装体。
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