JP6468866B2 - 加熱処理済み豆類およびその製造方法、並びにこれを用いた赤飯 - Google Patents
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(1)加熱処理済み豆類の水分含量が35質量%超50質量%以下、
カルシウム濃度が600ppm以上であり、
加熱処理済み豆類に対する含気率が4%以上(体積比)となるようにドライパック包装されてなる
赤飯用加熱処理済み豆類、
(2)(1)に記載の赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法であって、
豆類をカルシウム塩溶液中で浸漬する浸漬工程と、
加熱膨潤工程と、
加熱膨潤させた豆類を含気させた状態でドライパック包装する充填密封工程を含む、
赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法、
(3)(2)に記載の赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法であって、
前記加熱膨潤工程において、
豆類をカルシウム塩溶液中で原料豆類に対し1.3倍超1.6倍以下に膨潤するように75℃以上100℃以下で加熱し加熱膨潤することを特徴とする、
赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法。
(4)(3)に記載の赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法であって、
前記加熱膨潤工程より前に、豆類を含む溶液を75℃以上100℃以下に達温させる達温工程を含み、
前記加熱膨潤工程の開始時にカルシウム塩を添加することを特徴とする、
赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法、
(5)ドライパック包装された加熱処理済み豆類を用いた赤飯であって、
炊飯後の豆類全粒数に対する腹割れした豆類の粒数の割合が10%以下、炊飯後の豆類の水分含量が50質量%以上である、
赤飯、
(6)(5)に記載の赤飯であって、
前記ドライパック包装された加熱処理済み豆類が請求項1記載の赤飯用加熱処理済み豆類である、
赤飯、
である。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類は、水分含量が35%超50%以下、カルシウム濃度が600ppm以上であり、豆類に対する含気率が4%以上(体積比)でドライパック包装され、加熱処理された豆類であることにより、赤飯を炊飯あるいは蒸した際に豆類の腹割れが起こりにくく、豆類の色ムラもなく、家庭で調理した時のように赤飯の豆類がふっくらと炊き上がることを特徴とする。
本発明に用いる赤飯用の豆類の種類は、一般的に赤飯に用いられる豆であればいずれの豆類でも良く、例えば、小豆、大納言小豆、ささげ豆を使用することができる。
本発明において、赤飯用豆類を「ドライパック包装する」とは、耐熱性合成樹脂やアルミ箔製等の軟質の袋(パウチ)内に調味液等の残溜液をほとんど無くして含気密封する包装形態を指す。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類は、炊飯した際に腹割れが起こりにくく、ふっくらと炊き上がる点で、ドライパック包装する際に含気させるエアー(空気)量が豆類に対して4%以上(体積比)である。さらには豆類に対して体積比で5%以上とすることができる。含気量が上記範囲であることにより豆類がふっくらと炊き上がるとともに、色ムラがなく赤飯の豆らしい赤黒い美しい色調の豆類とすることができる。上記範囲よりも含気量が少ないと、豆の色調が悪くなり色ムラが発生したり、豆同士が密着し、豆の変形、豆中の澱粉の溶出などによって炊き上がりの豆類の食感および食味を低下させたりする原因となる可能性がある。
なお、上限は密封に影響のない範囲であれば特に限定されないが、豆類に対して体積比で30%以下、さらには10%以下とすることができる。上記範囲よりも含気量が多いと、殺菌効率が悪く炊き上がりの食感が固い豆となってしまう。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類の水分含量は、35%超50%以下である。さらに38%以上45%以下とすることができる。
水分含量を上記範囲とすることによって、炊飯した際に腹割れが起こりにくく、豆類をふっくらと炊き上げることができる。なお、「食品成分表2014 女子栄養大学出版部」によると、小豆、ささげ豆において、100gあたりの乾物豆の水分含量は15.5%、煮豆の水分含量は小豆で64.8%、ささげ豆で63.9%とされている。したがって、本発明の赤飯用加熱処理済み豆類は、乾物豆と煮豆の中間の水分含量に調整していると言える。
なお、豆類の水分含量は常圧加熱乾燥法等の方法によって測定することができる。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類のカルシウム濃度は、600ppm以上である。さらに、650ppm以上とすることができる。また、1000ppm以下とすることができる。カルシウム濃度を上記範囲にすることによって、炊飯した際に腹割れが起こりにくく、豆類をふっくらと炊き上げることができる。なお、「食品成分表2014 女子栄養大学出版部」によると、小豆、ささげ豆において、100gあたりのカルシウム濃度は、乾物豆(水分15.5%)で750ppm、煮豆(水分64.8%または63.9%)で300ppm(小豆)または320ppm(ささげ豆)、であるとされている。したがって、本発明の赤飯用加熱処理済み豆類は、同等の水分量(35%超50%以下)に換算して比較すると、通常の乾物豆や煮豆に比べて、高いカルシウム濃度に調整していると言える。
なお、豆類のカルシウム濃度はICP発光分光分析法等により測定することができる。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類には、上述した豆類、後に説明するカルシウム塩の他に、本発明の効果が損なわれない範囲で食品素材を適宜添加することができる。具体的には、砂糖、デキストリン、マルトデキストリン、デキストリン還元物、トレハロース等の糖類、ビタミンC、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸、ナイアシン、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類、アルギニン、グルタミン等のアミノ酸、キサンタンガム、アラビアガム、ペクチン等の増粘剤、酢酸、乳酸、クエン酸等の酸味料、スクラロース、エリスリトール、ステビア、アセスルファムK等の甘味料、乳酸菌、酵母、香料、着色料、乳化剤等が挙げられる。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類は、赤飯用豆類を選別し、ボイル加熱し、充填密封し加熱加圧殺菌することにより製することができ、特に限定されるものではないが、豆類をカルシウム塩溶液中で浸漬する浸漬工程と、
加熱膨潤工程と、加熱膨潤させた豆類を含気させた状態で容器にドライパック包装する充填密封工程を含むことができる。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法は、豆類を原料豆類に対して膨潤度1.3倍超1.6倍以下に調整する「加熱膨潤工程」を含むことができる。加熱膨潤工程において75℃以上100℃以下で膨潤度を1.3倍超1.6倍以下に調整することによって、加熱処理済み豆類の水分含量を35%超50%以下に調整することができる。その結果、炊飯した際に、豆類の腹割れが起こりにくく、豆類がふっくらと炊き上がる。
さらに膨潤度を1.35倍以上1.45倍以下とすることができる。膨潤度が上記範囲よりも大きいと、炊いた時に腹割れが起こりやすく、膨潤度が上記範囲よりも小さいと炊いた時に固い食感になってふっくらとしない原因となる可能性がある。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法は、カルシウム塩溶液中で豆類を浸漬する「浸漬工程」を含むことができる。カルシウム塩溶液中で豆類を浸漬させることによって加熱処理済み豆類のカルシウム濃度を600ppm以上とすることができ、その結果豆類の表面を適度な強度に保つことができ、炊いた際の豆類の腹割れを防ぎ、ふっくらとした食感の豆類に仕上げることができる。
なお、豆類をカルシウム塩溶液中で浸漬すると同時に上記加熱膨潤させる工程を行うことができる。
豆類を浸漬するカルシウム塩溶液の濃度は、加熱処理済み豆類のカルシウム濃度が600ppm以上となるように適宜調製すればよいが、0.05%以上5%以下、さらには0.1%以上1%以下とすることができる。
ここで使用するカルシウム塩は、一般的に食品に用いることのできるカルシウム塩であれば特に限定されず、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、クエン酸カルシウム、酢酸カルシウム、グルコン酸カルシウム、リン酸カルシウム、炭酸カルシウム、卵殻カルシウム等のカルシウム塩を使用することができる。特に、食味に影響を与えずに食感を保つことができる点で、塩化カルシウムあるいは乳酸カルシウムを用いることができる。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法において、前記加熱膨潤工程より前に、豆類を含む溶液を75℃以上100℃以下に達温させる「達温工程」を含むことができる。
達温工程を行う際には、前記加熱膨潤工程の開始時にカルシウム塩を添加することができ、豆類を含む溶液をあらかじめ75℃以上100℃以下に達温させた後にカルシウム塩を投入することによって、豆類の膨潤度を適度な範囲に調整することができる。その結果、炊いた際の腹割れを防止し、ふっくらとした食感の豆類とすることができる。豆類を含む溶液にカルシウム塩を加えた状態で達温工程を開始すると、カルシウム塩によって豆類が十分に膨潤することができない可能性がある。また、豆類を加熱膨潤させた後でカルシウム塩を添加する場合には、炊いた際の豆類の腹割れを十分に防止できない可能性がある。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類の製造方法は、豆類を含気させた状態で容器にドライパック包装する「充填密封工程」を含むことができる。
充填密封工程において含気させるエアー(空気)量は豆類に対して4%以上(体積比)とすることができ、さらに5%以上とすることができる。
含気量が上記範囲であることにより豆類がふっくらと炊き上がるとともに、赤飯の豆らしい赤黒い美しい色調の豆類とすることができる。上記範囲 よりも含気量が少ないと、豆の色調が悪くなり色ムラが発生したり、豆同士が密着し、豆の変形、豆中の澱粉の溶出などによって炊き上がりの豆の食感および食味を低下させたりする原因となる可能性がある。
また、含気させるエアー(空気)量は豆類に対して体積比で30%以下、さらには10%以下とすることができる。上記範囲よりも含気量が多いと、殺菌効率が悪く炊き上がりの食感が固い豆類となってしまう。
本発明の赤飯は、ドライパック包装された加熱処理済み豆類を用いることによって、炊飯後の豆類全粒数に対する腹割れした豆類の粒数の割合が10%以下、炊飯後の豆類の水分含量が50%以上である赤飯を得ることができる。さらに、上述の水分含量、カルシウム濃度、含気率の赤飯用ドライパック入り加熱処理済み豆類を用いることによって、豆類の腹割れが起こりにくく、色ムラもなく、豆類がふっくらと炊き上がる赤飯とすることができる。
本発明の赤飯は、米300〜1000部に対して加熱処理済み豆類30〜300部を混合して炊飯あるいは蒸して製することができる。
なお、炊飯後の豆類の水分含量は常圧加熱乾燥法等によって測定することができる。
ニーダーに大納言小豆150kg、清水300kgを投入し、90℃まで加温後(達温工程)、塩化カルシウム1.5kgを添加し、90℃で15分間ボイルした(加熱膨潤工程、浸漬工程)。豆の膨潤度が1.4倍(原料豆比)になったところで30℃以下まで冷却し、水を切った後、ナイロンパウチに、ボイルした豆600g(1060mL)を約90mLのエアーと共に充填密封(ドライパック包装)した(充填密封工程)。110℃で50分間、加熱加圧殺菌処理を施し、実施例1の赤飯用加熱処理済み豆類を得た。
最終的に得られた豆の水分含量は40%、カルシウ濃度は800ppmであった。また、パウチ内の豆類に対する含気率は8%(体積比)であった。
豆類の膨潤度は、膨潤後の豆類の重量を原料豆類の重量で割ることで算出した。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類の水分含量は、常圧加熱乾燥法にて測定した。また、後述する炊飯後の赤飯における豆類の水分含量も同様の方法で測定した。
本発明の赤飯用加熱処理済み豆類のカルシウム濃度は、ICP発光分光分析法にて測定した。
実施例1において、塩化カルシウムを等量の乳酸カルシウムに置き換えた以外は実施例1と同様にして実施例2の赤飯用豆類を得た。
最終的に得られた豆の水分含量、カルシウ濃度、パウチ内の豆類に対する含気率はいずれも実施例1と同等であり、水分含量は35%超50%以下、カルシウム濃度は600ppm以上であり、豆類に対する含気率が4%以上の範囲内であった。
実施例1において、豆類をナイロンパウチに充填した後バキュームパックし、豆類に対する含気率を2%未満とした以外は実施例1と同様にして比較例1の赤飯用加熱処理済み豆類を得た。
最終的に得られた豆類の水分含量、カルシウ濃度はいずれも実施例1と同等であり、水分含量は35%超50%以下、カルシウム濃度は600ppm以上であったが、パウチ内の豆類に対する含気率は2%未満であった。
実施例1において、ボイル時間を長くし、膨潤度が2.0倍(原料豆比)になったところで30℃以下まで冷却した以外は実施例1と同様にして比較例2の赤飯用加熱処理済み豆類を得た。
最終的に得られた豆類のカルシウ濃度、パウチ内の豆類に対する含気率はいずれも実施例1と同等であり、カルシウム濃度は600ppm以上、豆類に対する含気率は4%以上の範囲内であったが、豆類の水分含量は50%を超えていた。
実施例1において、ボイル時間を短くし、膨潤度が0.9倍(原料豆比)になったところで30℃以下まで冷却した以外は実施例1と同様にして比較例3の赤飯用加熱処理済み豆類を得た。
最終的に得られた豆類のカルシウ濃度、パウチ内の豆類に対する含気率はいずれも実施例1と同等であり、豆類のカルシウム濃度は600ppm以上、豆類に対する含気率は4%以上の範囲内であったが、豆類の水分含量は35%以下であった。
実施例1において、塩化カルシウムを入れずに加熱膨潤工程を行った以外は実施例1と同様にして比較例4の赤飯用加熱処理済み豆類を得た。
最終的に得られた豆類の水分含量、パウチ内の豆類に対する含気率はいずれも実施例1と同等であり、豆類の水分含量は35%超50%以下、豆類に対する含気率は4%以上の範囲内であったが、豆類のカルシウム濃度は600ppm未満であった。
実施例1において、塩化カルシウムの投入タイミングを大納言小豆と同時投入に変更した以外は実施例1と同様にして実施例3の赤飯用加熱処理済み豆類を得た。
最終的に得られた豆類の水分含量、カルシウ濃度、パウチ内の豆類に対する含気率はいずれも実施例1と同等であり、豆類の水分含量は35%超50%以下、カルシウム濃度は600ppm以上であり、豆類に対する含気率が4%以上の範囲内であった。
実施例1において、塩化カルシウムの投入タイミングを加熱膨潤工程の後に変更した以外は実施例1と同様にして実施例4の赤飯用加熱処理済み豆類を得た。
最終的に得られた豆の水分含量、カルシウ濃度、パウチ内の豆類に対する含気率はいずれも実施例1と同等であり、水分含量は35%超50%以下、カルシウム濃度は600ppm以上であり、豆類に対する含気率が4%以上の範囲内であった。
実施例1〜4および比較例1〜4について、各100gの赤飯用加熱処理済み豆類を500gのもち米とともに炊飯し、試験例1〜8の赤飯を調製した。
それぞれの赤飯について、炊き上がりの豆類の腹割れと豆類の食感のふっくら感の評価を行った。評価はA、B、Cの順で品位が高いことを示している。結果を表1に示す。
また、炊飯後の赤飯における豆類の水分含量も測定した。
<腹割れ>A:5%以下、B:5%超10%以下、C:10%超
<食感>A:家庭で炊いたようなふっくら感を感じる
B:ふっくら感はあるが、固いあるいは柔らかい部分がある
C:ふっくら感がない、固すぎる、あるいは柔らかすぎる
豆類をカルシウム溶液中で原料豆類に対して1.3倍超、1.6倍以下に加熱膨潤させる工程を含み、カルシウムを添加する前に豆類を含む溶液を75℃以上100℃以下に達温させる達温工程を含む実施例1および2の赤飯用豆類を用いた試験例1および2の赤飯は、特に腹割れが防止され、食感および食味に優れていた。
Claims (5)
- 加熱処理済み豆類の水分含量が35質量%超50質量%以下、
カルシウム濃度が600ppm以上1000ppm以下であり、
加熱処理済み豆類に対する含気率が4%以上10%以下(体積比)となるようにドライパック包装され、
前記加熱済み豆類が小豆、大納言小豆又はささげ豆である、
加熱処理済み豆類。 - 請求項1に記載の加熱処理済み豆類の製造方法であって、
豆類をカルシウム塩溶液中で浸漬する浸漬工程と、
加熱膨潤工程と、
加熱膨潤させた豆類を含気させた状態でドライパック包装する充填密封工程を含む、
加熱処理済み豆類の製造方法。 - 請求項2に記載の加熱処理済み豆類の製造方法であって、
前記加熱膨潤工程において、
豆類をカルシウム塩溶液中で原料豆類に対し1.3倍超1.6倍以下に膨潤するように7
5℃以上100℃以下で加熱し加熱膨潤することを特徴とする、
加熱処理済み豆類の製造方法。 - 請求項3に記載の加熱処理済み豆類の製造方法であって、
前記加熱膨潤工程より前に、豆類を含む溶液を75℃以上100℃以下に達温させる達温
工程を含み、
前記加熱膨潤工程の開始時にカルシウム塩を添加することを特徴とする、
加熱処理済み豆類の製造方法。 - ドライパック包装された請求項1記載の加熱処理済み豆類を用いた赤飯であって、
炊飯後の豆類全粒数に対する腹割れした豆類の粒数の割合が10%以下、炊飯後の豆類の
水分含量が50質量%以上である、
赤飯。
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