JP3694896B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
本発明は、インクジェット記録用紙に関し、特に印字後の画像の滲みを改善したインクジェット記録用紙に関する。
【背景技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであり、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。この方式で従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インクおよび装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、さまざまな分野に急速に普及している。
このインクジェット記録方式で使用される記録用紙としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合でもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が要求される。
特にインク吸収速度が遅い場合には、2色以上のインク液滴が重なって記録される際に、記録用紙上で液滴がハジキ現象を起こしてムラになったり、また、異なる色の境界領域でお互いの色が滲んだりして画質を大きく低下させやすいために、記録用紙としては高いインク吸収性を持たせるようにすることが必要である。
これらの問題を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。
例えば、特開平3−27976号等に記載されている特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有する記録用紙、特開平7−276789号等に記載されているコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有する記録用紙、および特開平5−16517号公報などに記載されているアルミナ水和物微粒子を含有する記録用紙等が知られている。
これらは、無機微粒子と親水性バインダーを使用し、微小な空隙をインク吸収層に形成した空隙型記録用紙は比較的高い光沢が得られるため高品位の光沢紙として好ましいものである。
そしてそのような無機微粒子として表面がアニオン性である微粒子シリカを使用した場合には優れた光沢性が得られることから好ましく、中でも気相法で合成された1次粒子の平均粒径が30nm以下の微粒子シリカとカチオン性ポリマーの組み合わせで得られる平均粒径が100nm以下の複合粒子は光沢性と高空隙率が両立できる点で特に好ましいものである。
ところでインクジェット記録後には、記録した画像が高湿下で保存した時や水滴が付着した時に画像が滲みやすい問題がある。
この問題を解決するために、以前から多くの技術が提案されている。
特開昭57−36692号には塩基性媒染剤ラテックスを使用することが、特開昭59−198188号にはポリエチレンイミンを含浸させる方法が、特開昭62−174184号にはポリアリルアミンを媒染剤として使用することが記載されている。
さらに、特開平6−234268号、同7−125411号他などにはカチオン性媒染剤を添加してインク染料の定着性を改善する技術が多数開示されている。
しかしながら先行技術に開示されているものの殆どは、シリカの如き表面がアニオン性である無機微粒子と混合した際に凝集物が形成されやすく、良好な塗布液が調製できなかったりあるいは塗布膜面の光沢性が著しく低下する等の問題があった。
この点を改良するために本出願人は先の出願(特開平10−217601号)で平均分子量が5万以下の水溶性のカチオン性ポリマーを使用することを特許出願しているが、これにより充分優れた耐水性と光沢性が得られるようになった。
しかしながらその後の本出願人の検討の結果、インクジェットプリンターで印字後に比較的短時間に重ね合わせたりクリヤーファイル等に保管してしまうと時間の経過によって徐々に画像が滲みやすいことが判明し一層の改良が望まれていた。
この保管時間経過による滲みは使用するインクの染料の種類や水溶性高沸点有機溶媒の含有量にも依存するが、記録用紙の染料の定着度にも依存することが判明した。
本発明者は、印字後の画像の滲みがカチオンポリマーの構造及び塗膜の特定のpHで改善されることを見いだし本発明に至った。
本発明が解決しようとする課題は、無機微粒子および親水性バインダーを含む空隙型インク吸収層を有するインクジェット記録用紙において、高い光沢性と高いインク吸収容量を維持したままで、印字後の画像の滲みを改善したインクジェット記録用紙を提供することである。
【発明の開示】
本発明のインクジェット記録用紙を記述する。
1.支持体上に、親水性バインダー、平均粒径が200nm以下の気相法シリカおよび下記式(1)で表される水溶性のカチオンポリマーを含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6.5であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは40ないし100モル%、yは0ないし60モル%である。
2.支持体上に、親水性バインダー、1次粒子の平均粒径が30nm以下の気相法シリカを含んで形成される平均粒径が200nm以下の微粒子および式(1)で表される、水溶性のカチオンポリマーを含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6.5であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは40ないし100モル%、yは0ないし60モル%である。
3.支持体上に、親水性バインダー、1次粒子の平均粒径が30nm以下の気相法シリカを含んで形成される平均粒径が200nm以下の微粒子および式(1)で表される平均分子量が10万以下の水溶性のカチオンポリマーを含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは50ないし100モル%、yは0ないし50モル%である。
4.支持体上に、親水性バインダー、1次粒子の平均粒径が30nm以下の気相法シリカおよび式(1)で表される水溶性のカチオンポリマーを含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6.5であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは40ないし100モル%、yは0ないし60モル%である。
5.支持体上に、親水性バインダーおよび、1次粒子の平均粒径が30nm以下の気相法シリカおよび式(1)で表される平均分子量が10万以下の水溶性のカチオンポリマーを含んで構成されるカチオン性の複合粒子を含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは50ないし100モル%、yは0ないし50モル%である。
6.支持体上に、親水性バインダー、平均粒径が200nm以下の気相法シリカ、下記式(1)で表される水溶性のカチオンポリマーおよびそれ以外のカチオンポリマーを含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6.5であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは40ないし100モル%、yは0ないし60モル%である。
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
インク吸収層は、少なくとも親水性バインダーおよび無機微粒子を含有する、空隙型インク吸収層である。無機微粒子を含んで形成される微粒子を親水性バインダーとともに製膜することによって、該微粒子の間に形成される空隙にインクが吸収されると考えられる。無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることができる。
これらの無機微粒子は好ましくは1次粒子の平均粒径が30nm以下であり、本発明の効果をより顕著に得られるという観点において、1次粒子の平均粒径が16nm以下であると、さらに好ましい。また、該無機微粒子の製造上の困難性という観点から、1次粒子の平均粒径の下限は概ね4nmである。
本発明においては、特に皮膜の透明度が高く微細な空隙が形成できる観点より、シリカまたは擬ベーマイトが好ましく、特に気相法により合成されたシリカが最も好ましく用いられる。
気相法により合成された微粒子シリカとしては例えば日本アエロジル株式会社製のアエロジルシリーズが市販されている。
これら無機微粒子は、1次粒子のまま用いてもよく、また、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできる。最終的に記録用紙において観察される微粒子が、本願請求の範囲に記載したものであればよい。
「微粒子」は上記の無機微粒子を含むものであって、好ましくは平均粒径200nm以下である。当該微粒子の平均粒径は、記録用紙を電子顕微鏡で観察して100個の任意の粒子の粒径を求めてその単純平均値(個数平均)として求められる。ここで個々の粒径はその投影面積に等しい円を仮定したときの直径で表したものである。
本発明の記録用紙は、少なくとも当該無機微粒子および後述する水溶性のカチオン性ポリマーを含むものであるが、例えば、本発明のひとつの形態としては、当該無機微粒子が一般式(1)で表されるカチオン性のポリマーと共にカチオン性の複合粒子を形成して用いられる態様も好ましく挙げられる。
本発明においては当該微粒子の平均粒径が200nm以下であることが好ましいが、さらに160nm以下であると、本発明の効果がより顕著に得られるという点において好ましい。本発明の効果を奏するという観点においては該平均粒径の下限は限定されないが、例えば、上述した1次粒子平均粒径を有する無機微粒子を用いて微粒子が形成されるならば、概ね20nm以上である。
一つの例として、インクジェット記録用紙のインク吸収層は、少なくとも親水性バインダー、特定の粒径をもった微粒子および式(1)で表されるカチオンポリマーを含む。
また、無機微粒子は、本発明のうちのひとつの態様としては、平均分子量が10万以下の式(1)で表されるカチオン性のポリマーと共にカチオン性の複合粒子である微粒子を形成して用いられる。
この複合粒子である微粒子は該カチオン性のポリマーと無機微粒子を混合して得られる。水溶性のカチオンポリマーを含有する水溶液と、表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液を混合すると凝集物を発生するので、これを解消するためにこの混合液には分散処理が行われる。
この分散処理を行うことにより、カチオンに変換された無機微粒子の分散液が得られる。この分散処理方法としては、高速回転分散機、媒体攪拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、ロールミル分散機、高圧分散機等の各種の分散機を使用することが出来る。本発明では形成される塊状微粒子の分散を効率的に行うという点から超音波分散機または高圧分散機が好ましく用いられる。
超音波分散機は通常は20ないし25KHzの超音波を与えることで固液界面にエネルギーを集中させることで分散するものであり非常に効率的に分散される。比較的少量の分散液を調製する場合に特に有用である。
高圧分散機は3個または5個のピストンを持った高圧ポンプの出口に、ねじまたは油圧によってその間隙を調整できるようになっている均質バルブを1個または2個備えたものであり、高圧ポンプにより送液された液媒体が均質バルブによりその流れが絞られて圧力がかかり、この均質バルブを通過される瞬間に微小な塊状物質が粉砕される。
この方式は連続的に多量の液を分散できるために、多量の液を製造する場合特に好ましい方式である。均質バルブに加えられる圧力は概ね50ないし1000Kg/cm2であり、分散は1回のパスで済ますことも多数回繰り返して行うこともできる。
上記の分散は2種以上を併用することも可能である。
カチオン性の複合粒子である微粒子の調製には各種の添加剤を用いることができる。
例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤など、必要に応じて適宜使用することができる。
特に水混和性有機溶媒は、無機微粒子とカチオン性ポリマーを混合した際の微小なダマの形成が抑制されるために好ましい。そのような水混和性有機溶媒は分散液中に0.1ないし20重量%、特に好ましくは0.5ないし10重量%使用される。
カチオン性微粒子分散液を調製する際のpHは用いる無機微粒子の種類やカチオン性ポリマーの種類、各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはカチオン性微粒子分散液のpHが1ないし8であり、特に2ないし7が好ましい。
本発明に用いられるカチオンポリマーは式(1)で表される。
式(1)において、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基であり、好ましくは水素原子またはメチル基である。
R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表し好ましくはメチル基またはエチル基である。このアルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
Jは2価の連結基を表し、単なる結合手または2価の有機基を表すが、有機基としては好ましくは−CON(R’)−基を表す(R’は水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基を表す)。
X−はアニオン基(ハロゲンイオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等)を表す。
Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。
Qの単量体の具体例としては、例えばスチレン、ブタジエン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、ヒドロキルエチルメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン、塩化ビニル等が挙げられる。
Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは40ないし100モル%、yは0ないし60モル%であり、好ましくはxは50ないし100モル%、yは0ないし50モル%、xは70ないし100モル%、yは0ないし30モル%が特に好ましい。
式(1)で表されるカチオンポリマー組成の具体例を示す。
式(1)で表されるカチオン性ポリマーは好ましくは平均分子量が10万以下であるが、これは数平均分子量を示す。
ここで数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフイーから求められたポリスチレン値に換算した値である。
平均分子量が10万以下であれば、カチオンポリマーの水溶液を表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液に添加した際の凝集物の発生を充分に抑えることができ、均一な分散液が得られやすい。このようなカチオンポリマーと無機微粒子を含む分散液を使用してインクジェット用光沢紙に適用した場合には、より高い光沢性が得られる。更に好ましくは5万以下である。
平均分子量の下限は染料の耐水性の点から概ね2000以上であり、特に5000以上が好ましい。
上記無機微粒子とカチオン性のポリマーの重量比率は、無機微粒子の種類や粒径、あるいはカチオン性ポリマーの種類や平均分子量で変わりうる。概ね1:0.01ないし1:1が好ましい。
本発明の記録用紙には、各種親水性バインダーを用いることができる。本発明に係る無機微粒子およびカチオンポリマーと混ぜ合わせた際に凝集や著しい増粘作用を示さない親水性バインダーが好ましい。そのような親水性バインダーとしては、例えばゼラチン(酸処理ゼラチンが好ましい)、ポリビニルピロリドン(平均分子量が約20万以上が好ましい)、プルラン、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリエチレングリコール(平均分子量が10万以下が好ましい)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、水溶性ポリビニルブチラールを挙げることができる、これらの親水性バインダーは単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
特に好ましい親水性バインダーは、ポリビニルアルコールまたはカチオン変成ポリビニルアルコールである。
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールは平均重合度が300ないし4500のものが好ましく用いられ、特に平均分子量が1000以上のものが得られる皮膜の脆弱性が良好であることから好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度は70ないし100%のものが好ましく、80ないし100%のものが特に好ましい。
また、カチオン変性ポリビニルアルコールは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(3−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1ないし10モル%、好ましくは0.2ないし5モル%である。
カチオン変性ポリビニルアルコールの重合度は通常500ないし4000、好ましくは1000ないし4000が好ましい。
また、カチオン変成ポリビニルアルコールのケン化度は通常60ないし100モル%、好ましくは70ないし99モル%である。
上記親水性バインダーはインク吸収層がインク吸収層になるようにするために無機微粒子に対して比較的少量使用され、皮膜が安定に形成され支持体との接着性が充分保てる範囲でできるだけ少なく使用するのが好ましい。親水性バインダーの量は一般には前記無機微粒子に対して重量比で概ね1/3ないし1/10であり、特に1/4ないし1/8である。
前記親水性バインダーは、皮膜の脆弱性を劣化させずに高光沢性および高いインク吸収容量を得るために、硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
硬膜剤は、一般的には前記親水性バインダーと反応しうる基を有する化合物、あるいは親水性バインダーが有する異なる基相互の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択される。
硬膜剤の具体例としては、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸およびその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
親水性バインダーとしてポリビニルアルコールおよびまたはカチオン変成ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸およびその塩、およびエポキシ系硬膜剤を使用するのが好ましい。
最も好ましいのはほう酸およびその塩である。
ほう酸またはその塩の例は、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩であり、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、および八ほう酸およびそれらの塩が含まれる。
上記硬膜剤の使用量は親水性バインダーの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、概ね親水性バインダ1g当たり5ないし500mg、好ましくは10ないし400mgである。
上記硬膜剤は、インク吸収層を構成する塗布液を塗布する際にインク吸収層形成の塗布液及びまたはインク吸収層に隣接するその他の層を形成する塗布液に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、前記インク吸収層を形成する塗布液を塗布したり、さらにはインク吸収層を形成する硬膜剤非含有の塗布液を塗布乾燥後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどしてインク吸収層に硬膜剤を供給することができるが、好ましくは製造上の効率から、インク吸収層を形成する塗布液またはこれに隣接する層の塗布液中に硬膜剤を添加して、インク吸収層を形成するのと同時に硬膜剤を供給するのが好ましい。
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層および必要に応じて設けられるその他の層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することができる。
例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層における空隙の容量(インク吸収容量と、ほぼ等しい)は概ね20ないし50ml/m2であり、またこの層における空隙率は概ね0.5ないし0.8である。
上記、インク吸収層は2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらのインク吸収層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。
インク吸収層が2層以上からなる場合、式(1)で表されるカチオンポリマーはインク吸収層の全ての層に添加することも、一部の層に添加することもできるが、好ましくは支持体から最も離れたインク吸収層には少なくとも添加されていることが好ましい。
また各インク吸収層には式(1)で表されるカチオンポリマー以外のポリマーを併用することも可能である。
本発明において、併用することのできる、式(1)で表されるカチオンポリマー以外のカチオン性ポリマーは従来インクジェット記録用紙で公知のカチオン性ポリマーの中から任意に選択して使用することが出来るが、特に好ましいものは、数平均分子量が1000ないし10万のものである。
特に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが共重合体である場合、カチオン性モノマーの比率は10モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーは単一でも2種類以上であっても良い。
以下に本発明のカチオン性ポリマーの具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明の記録用紙のインク吸収層はその膜面pHが3ないし6.5であることが必要である。膜面pHが3未満の場合には式(1)で表されるカチオンポリマーを用いても印字後の滲みの改良効果が得られず、また層中の空隙率も低下してインク吸収容量が低下する。また、膜面pHが6.5を越える場合にも印字後の滲みが改良されず、光沢も低下してくる。
特に好ましい膜面pHは3.6ないし5.3である。
インク吸収層の膜面pHは記録用紙の表面に20ないし50μlの脱イオン水を滴下し、市販の表面pH電極を用いて測定することができる。
本発明でインクジェット記録用紙の支持体としては、インクジェット用記録用紙として用いられる紙支持体、プラスチック支持体、複合支持体など適宜使用できる。より高い濃度で鮮明な画像を得るためには支持体中にインク液が浸透しない疎水性支持体を用いるのが好ましい。
疎水性支持体としては透明または不透明のプラスチック樹脂フィルム支持体および紙の表面をポリエチレンでラミネートした紙支持体等が好ましく用いられる。
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、約10ないし200μmが好ましい。透明支持体のインク吸収層側およびバック層側には下引き層を設けることが、インク吸収層やバック層と支持体の接着性の観点から好ましい。
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフイン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
上記支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明の記録シートは必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP、LBSP、NBKP、NBSP、LDP、NDP、LUKP、NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP、NBSP、LBSP、NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPおよびまたはLDPの比率は10重量%以上、70重量%以下が好ましい。
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することができる。
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200ないし500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分重量%と42メッシュ残分の重量%との和が30ないし70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の重量%は20重量%以下であることが好ましい。
原紙の坪量は30ないし250gが好ましく、特に50ないし200gが好ましい。原紙の厚さは40ないし250μmが好ましい。
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることもできる。原紙密度は0.7ないし1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20ないし200gが好ましい。
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5ないし9であることが好ましい。
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することができる。
特にインク吸収層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して概ね3ないし20重量%、好ましくは4ないし13重量%である。
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した物も本発明で使用できる。
原紙の表裏のポリエチレンの使用量はインク吸収層やバック層を設けた後で低湿および高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、概ねインク吸収層側のポリエチレン層が20ないし40μm、バック層側が10ないし30μmである。
更に上記ポリエチレン被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
1.引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2ないし30Kg、横方向が1ないし20Kgであることが好ましい。
2.引き裂き強度はJIS−P−8116による規定方法で縦方向が10ないし200g、横方向が20ないし200gが好ましい。
3.圧縮弾性率≧103Kgf/cm2
4.表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い。
5.不透明性度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい。
本発明の記録用紙のインク吸収層および下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種の親水性層を支持体上に塗布する方法は適宜選択すればよい。各層を形成するための塗布液は支持体上に塗設して乾燥される。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー含有層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2681294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクが好ましく用いられる。
水性インクは、着色剤及び水を主成分とする液媒体、その他の添加剤を含む。着色剤としてはインクジェット記録に用いられる直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エンチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。
これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
その他の水性インクの添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防バイ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤、及び防錆剤、等が挙げられる。
水性インク液は記録用紙に対する濡れ性が良好にするために、20℃において、25ないし60dyn/cm、好ましくは30ないし50dyn/cmの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて説明する。実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾重量%を示す。
実施例1
予め均一に分散されている1次粒子の平均粒径が約0.007μmの気相法シリカ(日本エアロジル工業社製:A300)の18%水溶液A1(pH=2.5、エタノール3重量%含有)4500mlを、例示カチオンポリマーP−1(平均分子量=約3.5万)を12重量%、n−プロパノール3重量%、およびエタノールを2重量%含有する水溶液C1(pH=2.5、サンノブコ社製消泡剤SN381を0.2g含有)1000mlに、室温で攪拌しながら添加した。
次に、ホウ酸とホウ砂の1:1混合水溶液(ホウ酸およびホウ砂がそれぞれ5重量%含有)350mlを攪拌しながら徐々に添加した。
次いで、三和工業社製の高圧ホモジナイザーで500Kg/cm2の条件で分散して均一でほぼ透明な分散液B1を得た。
次に上記分散液B1を使用して下記の4種類の塗布液を調製した。
第1層用塗布液の作成(塗布液1リットル当たりの量)
分散液B1 650ml
蛍光増白剤分散液(下記) 20ml
酸化チタン分散液(下記) 25ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)5%水溶液 270ml
ラテックス分散液(昭和高分子工業社製AE803) 20ml
純水(全量を1000mlに仕上げる)
第2層用塗布液(塗布液1リットル当たりの量)
分散液B1 650ml
蛍光増白剤分散液(下記) 30ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)5%水溶液 270ml
ラテックス分散液(昭和高分子工業社製AE803) 20ml
純水(全量を1000mlに仕上げる)
第3層用塗布液(塗布液1リットル当たりの量)
分散液B1 620ml
蛍光増白剤分散液(下記) 20ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)5%水溶液 270ml
ラテックス分散液(昭和高分子工業社製AE803) 10ml
純水(全量を1000mlに仕上げる)
第4層用塗布液(塗布液1リットル当たりの量)
分散液B1 600ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA203)10%水溶液 5ml
ポリビニルアルコール(クラレ社製PVA235)5%水溶液 270ml
界面活性剤(サポニン)10%水溶液 10ml
シリコン分散液(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製、
BY−22−839)) 20ml
純水(全量を1000mlに仕上げる)
蛍光増白剤分散液:3%の酸処理ゼラチン水溶液100ml(サポニンを4g、カチオン性ポリマーP−9を2g含有)中に、チバガイギー社製の油溶性蛍光増白剤(UVITEX−OB)0.6gとジイソデシルフタレート12gを酢酸エチル25mlに加熱溶解した液を添加し、超音波ホモジナイザーで乳化分散し、全量を純水で140mlに仕上げる。
酸化チタン分散液:石原産業社製酸化チタン(W10)を40重量%含有する分散液
上記の各塗布液の粘度は、40℃で30ないし40cp、15℃で1万ないし2万の粘度であった。
上記のようにして得られた塗布液を、170g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚さ240μm、記録面側に厚さ約35μmのポリエチレン層中に6重量%のアナターゼ型二酸化チタン含有し、裏面は厚さ約30μmのポリエチレン層)上の記録面側(支持体の75度光沢度は32%、ゼラチン約0.1g/m2下引き層として塗設済み)に、第1層(50μm)、第2層(50μm)、第3層(50μm)、第4層(50μm)の順になるように各層を塗布した。かっこ内はそれぞれの湿潤膜厚を示し、第1層ないし第4層は同時塗布した。
塗布はそれぞれの塗布液を40℃で4層式スライドホッパーで塗布を行い、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20ないし30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間順次乾燥して本発明の記録用紙−1を得た。
得られた記録用紙は次いで35℃で2日間保存した。
次に、記録用紙−1において、カチオンポリマーを表1に示すように変更して分散液B2からB10を分散液B1と同様にして作成しこれを用いて記録用紙−2から11を記録用紙−1と同様にして作成した。
得られたインクジェット記録用紙について、以下の項目について評価した。
(1)表面pH:インク吸収層表面に30μlの純水を滴下し室温で東亜電波社製の平面電極(GST−5315F)を使用して膜面pHを測定した。
(2)光沢度:日本電色工業社製変角光沢度計(VGS−1001D P)を用いて75度光沢を測定した。
(3)画像滲み:セイコーエプソン社製のPM750CでM、C、Kの各ラインを幅約0.3mmで印字し、23℃で80%の条件で1週間保存して各ラインの線幅をマイクロデンシトメーターで測定して線幅の広がり率(元の線幅に対する保存後の線幅の比率)を求めた。
得られた結果を表1に示した。
【表1】
なお、カチオンポリマーの数平均分子量の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリスチレン換算値である。
また、記録用紙1についてインク吸収層に含まれる微粒子の粒径を電子顕微鏡で測定したところ、粒径60nmであった。
表1の結果から、本発明の記録用紙−1から7(特に1から7)はいずれも高い光沢性を有し、しかも印字後の滲みが少ないことがわかる。特に、カチオンポリマーとして平均分子量が5万以下のポリマーを使用した記録用紙(1から5)の光沢度が更に高く、また、カチオンモノマー成分の比率が70%以上である記録用紙(1,2,4から6)の滲み性が特に優れていることがわかる。
これに対して、カチオンモノマーの比率が30%である比較カチオンポリマーRP1を使用した記録用紙(8)や式(1)で表されない本発明外のカチオンモノマーを重合して得られたカチオンポリマーを使用した記録用紙(9)では滲みが本発明の記録用紙より悪いことがわかる。
実施例2
実施例1の記録用紙−1で使用した分散液B1の調製において、溶液A1とC1のpHを硝酸または水酸化ナトリウム水溶液を用いてそれぞれ変化させた以外は分散液B1と同様にして分散液B1(a)からB1(g)を調製し、記録用紙−1と同様にして記録用紙−1(a)から1(g)を記録用紙−1と同様に作成した。
実施例1と同様に評価し、表2に示す結果を得た。また、熊谷理器工業社製のBristow試験装置でインク吸収速度を測定し、接触時間2秒間における転移量をインク吸収容量として求め、表2に結果を示した。
【表2】
表2に示す結果は、膜面pHが3ないし6.5である記録用紙(1,1(b)から1(f))の滲みが良好でこれ以外の膜面pHを有している場合には滲み防止効果が小さいことを示している。特に膜面pHとして3.6ないし5.3の間にある記録用紙(1,1(c)、1(d))が滲みに優れ、しかも吸収容量や光沢の低下が少ないことを示している。
実施例3
記録用紙1作成に用いた分散液B1において、下記の変更点を加えた分散液B12からB17を分散液B1と同様にして調製し、記録用紙1と同様にして記録用紙12から17を作成した。
分散液B12:カチオン性ポリマーの量を2/3の量に減量した以外は分散液B1と同じ
分散液B13:シリカ粒子を、1次粒子の平均粒径が0.012μmの気相法シリカ(日本アエロジル社製、A200)に変更した以外は分散液B1に同じ
分散液B14:シリカ粒子を、1次粒子の平均粒径が0.04μmの気相法シリカ(日本アエロジカル杜製、OX50)に変更した以外は分散液B1に同じ
分散液B15:シリカ粒子を、分散液B1で使用した1次粒子の平均粒径が0.007μmの気相法シリカと分散液B13で使用した1次粒子の平均粒径が0.012μmの気相法シリカの1:1の重量比の混合物に変更した以外は分散液B1に同じ
分散液B16:シリカ粒子を、分散液B1で使用した1次粒子の平均粒径が0.007μmの気相法シリカと分散液B13で使用した1次粒子の平均粒径が0.04μmの気相法シリカの4:1の重量比の混合物に変更した以外は分散液B1に同じ
分散液B17:シリカ粒子を、分散液B1で使用した1次粒子の平均粒径が0.007μmの気相法シリカと分散液B14で使用した1次粒子の平均粒径が0.04μmの気相法シリカの1:1の重量比の混合物に変更した以外は分散液B1に同じ
なお、各記録用紙のインク吸収層に含まれる無機微粒子の粒径を電子顕微鏡で測定し表3に示す結果を得た。また、各記録用紙の膜面pHを測ったところ、記録用紙12から17についても、記録用紙1の膜面pHとほぼ同じでいずれもpH4.52±0.1であった。
【表3】
表3の結果は、記録用紙1,12,13,15から17は、光沢度および滲みのいずれも良好であり、本発明のうちでも特に粒径160nm以下の場合は、光沢度の点ですぐれていることを示す。
実施例4
実施例1の記録用紙1で使用した分散液B1の調製において、カチオンポリマーP−1(平均分子量=約3.5万)12重量%にかえて、下記カチオンポリマー(請求項6でいう「カチオンポリマー(1)以外のカチオンポリマー」に該当する)12重量%を用いる以外は分散液B1の調製と同じにして分散液B1’を調製した。
記録用紙1の作成で使用した第1層用塗布液および第2層用塗布液の作成において、シリカ分散液B1 650mlにかえて、シリカ分散液B1’ 650mlを用いる以外は、第1層用塗布液および第2層用塗布液の作成と同じにして、第1層用塗布液および第2層用塗布液を作成し、これを用いる以外は記録用紙1の作成と同じにして、記録用紙1’(膜面pH4.62)を作成した。
記録用紙1’の性能評価を行ったところ、本発明の効果を発揮することがわかった。
【産業上の利用可能性】
印字後の高湿状態で保存したり重ね合わせて保存した場合でも画像の滲みが改善されたインクジェット用の記録用紙が得られる。
Claims (6)
- 支持体上に、親水性バインダー、1次粒子の平均粒径が30nm以下の気相法シリカを含んで形成される平均粒径が200nm以下の微粒子および式(1)で表される、水溶性のカチオンポリマーを含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6.5であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは40ないし100モル%、yは0ないし60モル%である。 - 支持体上に、親水性バインダー、1次粒子の平均粒径が30nm以下の気相法シリカを含んで形成される平均粒径が200nm以下の微粒子および式(1)で表される平均分子量が10万以下の水溶性のカチオンポリマーを含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは50ないし100モル%、yは0ないし50モル%である。 - 支持体上に、親水性バインダーおよび、1次粒子の平均粒径が30nm以下の気相法シリカおよび式(1)で表される平均分子量が10万以下の水溶性のカチオンポリマーを含んで構成されるカチオン性の複合粒子を含有する硬膜された2層以上のインク吸収層を有し、該インク吸収層の膜面pHが3ないし6であるインクジェット記録用紙。
式中、Rは水素原子または炭素原子数が1ないし4のアルキル基、R1、R2およびR3はそれぞれアルキル基を表しJは2価の連結基を表す。X-はアニオン基を表す。Qはエチレン性不飽和基を有する単量体から誘導される繰り返し単位を表す。Qは2種以上の単量体を共重合した場合も含む。xは50ないし100モル%、yは0ないし50モル%である。
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