JP3852257B2 - インクジェット記録用紙およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)及びその製造方法に関し、特に画像保存性、耐水性及び光沢性に優れるインクジェット記録用紙及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上してきており、写真画質に迫りつつある。この様な写真画質をインクジェット記録で達成するために、記録用紙の面でも改善が進んでおり、高平滑性の支持体上に微小な空隙層を設けた記録用紙はインク吸収性及び乾燥性に優れていることからもっとも写真画質に近いものの一つになりつつある。
【0003】
一方、インクジェット記録においては通常水溶性染料が色材として用いられるが、この水溶性染料は親水性が高いために通常、記録後に高湿下に長期間保存したり或いは記録面上に水滴が付着した場合に染料が滲みやすい傾向がある。
【0004】
この問題を解決するために染料固着性物質をインク受容層中に添加しておくことが一般的に行われており、そのような染料固着剤としては、表面がカチオン性である無機顔料(アルミナ微粒子等)や分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマー等が挙げられる。
【0005】
アルミナ微粒子はそれ自体は高い染料固着性を有し、しかも少量のバインダー(ポリビニルアルコール等)の使用で色材受容層を空隙層にすることが出来るが、原材料コストが比較的高く安価な記録用紙を製造する点で不利である。
【0006】
一方、分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーは種々の微粒子と併用することで空隙層型の色材受容層に耐水性を付与することが出来る。
【0007】
しかしながら、色材受容層が空隙層であることはインク吸収性に優れておりインクジェット記録時にムラのない均質な画像が得られる反面、多孔質皮膜であるが故に酸素の透過性が大きく、記録後の耐光性が劣る傾向にある。
【0008】
多孔質皮膜にカチオン性物質を添加した場合、この問題が特に顕著に発生しやすく、特に空気が循環しやすい場所でかかる問題が生じることが本発明者らの検討の結果判明した。
【0009】
このような耐光性の劣化を改善する為に従来から褪色防止剤として紫外線吸収剤を添加すること、各種の酸化防止剤を添加することが多数提案されている。
【0010】
例えば、特開昭57−87989号、同57−74192号、特開平1−95091号にはフェノール、ハイドロキノン誘導体を色材受容層に含有した記録用紙が開示されている。また、特開平1−115677号、同1−36479号にはチオエーテル結合を有する化合物を色材受容層中に含有する記録用紙が開示されている。
【0011】
しかしながら、酸素透過性の高い空隙層を有するインクジェット記録用紙においては、効果が必ずしも充分とは言い難く、充分な褪色防止効果を得るためにこうした各種の褪色防止剤を多量に添加すると、空隙層のインク吸収性を大幅に低下させてしまう。
【0012】
また、従来の褪色防止剤は光を照射した初期は確かに効果が認められるが継続的に光照射されるような場合には徐々に効果が無くなり易い欠点があった。
【0013】
また、光褪色防止剤として、紫外線吸収剤を含有したインクジェット用記録用紙材料が、特開昭57−74193号、同57−164975号等に開示されているが、紫外線吸収剤では光照射したときの褪色には効果があるが、オゾン、窒素酸化物、硫黄酸化物等の室内に存在する酸化性ガスによる褪色には全く効果をしめさないものであった。
【0014】
特に分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーを使用した場合には、色材の劣化の問題が大きくなり、インク吸収速度に悪影響を及ぼすことなく耐水性及び耐光性を改良させることが望まれている。
【0015】
カチオン性ポリマーを用いた場合耐光性の劣化が空隙皮膜で加速される原因は定かではないが、染料がより上層、すなわち表面に固定されやすくなって酸素の影響をより受けやすくなったためと推定される。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の第一の目的は、画像保存性を改良した、インクジェット記録用紙及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の第二の目的は、画像保存性を劣化させることなく、インク吸収性に優れ、にじみのない、光沢性に優れたインクジェット記録用紙及びその製造方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0018】
1.支持体上に色材受容層が設けられてなるインクジェット記録用紙において、分子内にフェノール性水酸基と該分子内のフェノール性水酸基の隣接の位置にL−SRで示される部分構造を有する化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙(Lは2価の基、Rは水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、これら脂肪族基または芳香族基は置換基を有してもよい)。
【0019】
2.前記分子内にフェノール性水酸基と該分子内のフェノール性水酸基の隣接の位置にL−SRで示される部分構造を有する化合物が下記一般式(I)であることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録用紙。
【0020】
【化2】
Figure 0003852257
【0021】
式中、Lは2価の連結基を表し、Rは、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、これら脂肪族基または芳香族基は置換基を有してもよく、Rは水素原子または置換基を表す。mは0または1の整数を表し、mが1の時には、2つの−L−S−Rは同じでも異なっていてもよい。nは0〜4の整数を表す。
【0022】
3.前記色材受容層が、無機顔料と水溶性樹脂を含有する多孔質層であることを特徴とする前記1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
【0023】
4.前記色材受容層がカチオン性樹脂を含有することを特徴とする前記1、2又は3に記載のインクジェット記録用紙。
【0024】
5.前記無機顔料が平均粒径100nm以下の超微粒子シリカであることを特徴とする前記1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録用紙。
【0025】
6.支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、分子内にフェノール性水酸基と該分子内のフェノール性水酸基の隣接の位置にL−SRで示される部分構造を有する化合物を微小油滴として含有した水性塗布液を用いて製造することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法(Lは2価の基、Rは水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、これら脂肪族基または芳香族基は置換基を有してもよい)
【0026】
以下、本発明を更に詳細に説明する。
本発明のインクジェット記録用紙の色材受容層には、色材の褪色防止剤として、分子内にフェノール性水酸基と−SRで示される部分構造を有する化合物を含有している。フェノール性水酸基とは、ベンゼン環、ナフタレン環等の芳香環および複素芳香環に直結した水酸基を意味する。フェノール性水酸基を有するフェノール性の化合物及び−SRで示される部分構造を有する硫黄系の化合物は、それぞれ一次酸化防止剤、二次酸化防止剤として広く工業用に利用され、色材の褪色防止剤としても利用されている。
【0027】
一次酸化防止剤とは、酸化雰囲気下でそれ自身酸化されることにより、機能を発現するものであり、二次酸化防止剤とは、それ自身の酸化防止能力は高くないが、一次酸化防止剤との併用により、褪色防止効果を発現するものである。
【0028】
本発明のインクジェット記録用紙の色材受容層に含有される、分子内にフェノール性水酸基と−SRで示される部分構造を有する化合物は、好ましくは前記一般式(I)で示される化合物である。
【0029】
前記一般式(I)において、Lは2価の連結基を表し、R1は、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R2は水素原子または置換基を表す。mは1〜5の整数を表し、mが2以上の時には、−L−S−R1は同じでも異なっていてもよい。nは0〜4の整数を表す。
【0030】
以下一般式(I)について、詳しく説明する。Lは、2価の連結基(例えば、アルキレン、アリーレン、−O−、−S−、−COO−、−SO2−、−NR3−等)を表し、これらの組み合わせを包含する。
【0031】
具体的には、−CH2−、−CH2CH2−、−CH(CH3)−、−C(CH32−、1,4−C64、1,3−C64、−COOCH2−、−SO2CH2−等が挙げられる。
【0032】
Lとしては、メチレン基、エチレン基であることが好ましく、その置換位置は、フェノール性水酸基の隣接位置であることが好ましい。
【0033】
1は、水素原子、脂肪族基、芳香族基を表す。脂肪族基としては例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、脂肪族複素環基を表す。アルキル基、アリール基は置換基を有していてもよく、またLまたはフェノール核と結合して環状構造を有していてもよい。
【0034】
具体的には、脂肪族基としてメチル基、オクチル基、シアノエチル基、ドデシルオキシカルボニルメチル基、ベンジル基、シクロヘキシル基、2−ピペラジニル基、エチニル基、ビニル基等が挙げられるが本発明はこれらに限定されるものではない。
【0035】
芳香族基の具体例としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−テトラデシルオキシフェニル基、3−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
2は、水素原子または置換基を表し、置換基の具体的な例としては、メチル基、t−ブチル基、オクチル基、オクチルチオメチル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニルメチル基等のアルキル基、フェニル基、4−メトキシフェニル基、2−ピリジル基等のアリール基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アミノ基、ハロゲン原子、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、水酸基、カルボキシ基、カルバモイル基、スルファモイル基、アミノカルボニル基、アミノスルホニル基、ホスホニル基、ホスファニル基等の置換基を表すがこれらに限定されるものでは無い。nは0〜4の整数を表し、nが2以上の時は、R2は同じであっても、異なっていても良い。
【0037】
一般式(I)で表される化合物は、R1、R2の違いにより一般式(I)で表される化合物の水に対する溶解性を変えることができるが、好ましくはR1、R2の総炭素数が10〜30の範囲のものである。
【0038】
また、一般式(I)で示される化合物の、色材褪色防止効果の機構については不明であるが、フェノール部位が酸化されて生じる、フェノキシラジカルをスルフィド部分で還元して、フェノールを再生して効力を発揮しているものと推定される。
【0039】
本発明でもちいられる分子内にフェノール性水酸基と−SRであらわされる部分構造を有する化合物は、分子内に一次酸化防止機能を有する部分と、二次酸化防止機能を有する部分を併せ持っているが、特にフェノール性水酸基と−SRとを併せ持つ本発明の化合物は相乗効果が顕著に顕れるものと推定される。
【0040】
また、一般式(I)で表される化合物においてLが−CH2CH2−、−CH2−であるときは、フェノール性水酸基との酸素原子と硫黄原子が5員あるいは6員の安定な環状遷移状態を形成しうるため、より色材褪色防止効果を効率的に機能しているものと推定される。
【0041】
以下に一般式(I)で示される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものでは無い。
【0042】
【化3】
Figure 0003852257
【0043】
【化4】
Figure 0003852257
【0044】
【化5】
Figure 0003852257
【0045】
本発明の分子内にフェノール性水酸基と−SRで示される部分構造を有する化合物の添加方法としては、水溶性が高い場合には水溶液として、インク受容層の塗布液に添加することもできるし、疎水性が高い場合には、分子内にフェノール性水酸基と−SRで示される部分構造を有する化合物を含む水中油滴型の微小乳化物(以下オイル分散物という)として添加することもできる。
【0046】
また、塗工された色材受容層に、適当な溶媒に溶解して含浸させてもよい。
添加方法としては、塗布液の粘度、安定性や、製造時の工数を考慮すると、水中油滴型の乳化分散液として添加するのが好ましい。オイル分散物で塗布液に添加した場合、塗布液中にカチオン性物質が存在した場合でも、相互作用が少ないため、凝集物等の発生も無く、平滑性が高く、高光沢のインク受容層を形成させることができる。
【0047】
本発明の分子内にフェノール性水酸基と−SRで示される部分構造を有する化合物のインク受容層中への添加量については、0.01g/m2〜1g/m2の間である事が好ましい。添加量が多すぎるとインクの吸収性、インク受容層の膜強度に悪影響を与えることがあるためである。より好ましくは、0.05g/m2〜0.5g/m2の含有量である。
【0048】
本発明のインクジェット記録用紙は、支持体上に設けられた色材受容層が水溶性樹脂を有し、インクジェット記録時に色材受容層が膨潤してインクを受容する膨潤型インクジェット記録用紙である場合と、色材受容層が無機顔料及び少量の水溶性樹脂を有する空隙層を形成している空隙型のインクジェット記録用紙の場合のいずれにも適用できる。
【0049】
しかしながら近年高インク吸収性が益々要求されており、特に空隙型の色材受容層であることは画質や記録後の乾燥性或いは皮膜の耐水性の面から好ましい。
【0050】
また、支持体自身も耐水性に優れていることが好ましい。支持体が耐水性に優れているものは一般に非多孔質支持体であり、しかもこの上に設けられた色材受容層が空隙構造をとる場合に本発明の効果が特に大きい。
【0051】
以下特に好ましい空隙型の色材受容層について説明する。
空隙型色材受容層は無機微粒子と少量の水溶性樹脂を有する。
【0052】
上記無機微粒子の例としては、たとえば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることが出来る。
【0053】
この様な無機微粒子は、1次粒子のまま用いても、また、2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできるが、優れた光沢性を得る観点から被膜中で0.01〜0.1μmのサイズに成るような無機微粒子を使用することが好ましい。
【0054】
本発明においては、低コストであることや高い反射濃度が得られる観点から低屈折率の微粒子であることが好ましく、表面がアニオン性の無機微粒子としては、気相法で合成されたシリカまたはコロイダルシリカがより好ましい。
【0055】
また、表面がカチオン性の無機微粒子としては、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカおよびアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等も用いることが出来る。
【0056】
色材受容層に用いられる水溶性樹脂の例としては、ポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラーギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。
【0057】
これらの水溶性樹脂は2種以上併用することも可能である。
本発明で好ましく用いられる水溶性樹脂はポリビニルアルコールである。
【0058】
本発明で好ましく用いられるポリビニルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0059】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1500〜5000のものが好ましく用いられる。
【0060】
ケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0061】
カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0062】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(2−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0063】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0064】
アニオン変性ポリビニルアルコールは例えば、特開平1−206088号公報に記載されているようなアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号、および同63−307979号公報に記載されているような、ビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体及び特開平7−285265号公報に記載されているような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0065】
また、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば、特開平7−9758号公報に記載されているようなポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号公報に記載された疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0066】
ポリビニルアルコールは重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0067】
色材受容層に用いられる無機微粒子の添加量は、要求されるインク吸収容量、空隙層の空隙率、無機微粒子の種類、水溶性樹脂の種類に大きく依存するが、一般には記録用紙1m2当たり、通常5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0068】
また、色材受容層に用いられる無機微粒子と水溶性樹脂の比率は質量比で通常2:1〜20:1であり、特に3:1〜10:1であることが好ましい。
【0069】
分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーはインクジェット記録用紙1m2当たり通常0.1〜10g、好ましくは0.2〜5gの範囲で用いられる。
【0070】
本発明のインクジェット記録用紙は、光沢性に優れ、高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化させずに得るために、前記水溶性樹脂が硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0071】
硬膜剤は、一般的には前記水溶性樹脂と反応し得る基を有する化合物あるいは水溶性樹脂が有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、水溶性樹脂の種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0072】
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸およびその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0073】
特に好ましい水溶性樹脂としてポリビニルアルコールおよびまたはカチオン変性ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸およびその塩又はエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。
【0074】
最も好ましいのはほう酸およびその塩から選ばれる硬膜剤である。
本発明で、ほう酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、八ほう酸およびそれらの塩が含まれる。
【0075】
上記硬膜剤の使用量は水溶性樹脂の種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や水溶性樹脂に対する比率等により変化するが、通常水溶性樹脂1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
【0076】
上記硬膜剤は、本発明の水色材受容層形成用水溶性塗布液を塗布する際に、該塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、本発明の色材受容層形成用水溶性塗布液を塗布しても良い。また、本発明の色材受容層形成用水溶性塗布液(硬膜剤非含有)を塗布・乾燥した後で硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして供給することができるが、かれらの中で、好ましくは製造効率の観点から、本発明の色材受容層形成用水溶性塗布液中に硬膜剤を添加して塗布する方法が好ましい。
【0077】
本発明の分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーは、ポリマー主鎖または側鎖に第4級アンモニウム塩基を有する水溶性ポリマーであり、インクジェット記録用紙で公知の化合物が用いられるが、本発明においては、インクジェット記録用紙の耐光性及び耐水性を改良する観点から特に側鎖に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーが好ましい。
【0078】
ポリマー主鎖に第4級アンモニウム塩基を有するポリマーの例としては例えばエピクロルヒドリン・ジメチルアミン付加重合物、ジメチルアリルアンモニウムクロライド・SO2共重合物、ジメチルアリルアンモニウムクロライド重合物などが挙げられる。
【0079】
ポリマー側鎖中に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーとしては、ポリアリルアミン塩の重合物、或いは下記一般式(1)または(2)で表される繰り返し単位を有する水溶性ポリマーが挙げられる。
【0080】
【化6】
Figure 0003852257
【0081】
一般式(1)、(2)においてRおよびR′は水素原子または炭素原子数が1〜4のアルキル基を表し、R1、R2、R3、R1′、R2′およびR3′はそれぞれアルキル基を表しAおよびJは2価の連結基を表す。X1 -およびX2 -はアニオンを表す。mは1〜6の整数を表す。
【0082】
更に、具体的には、一般式(1)、(2)において、RおよびR′は水素原子または炭素原子数が1〜4のアルキル基であり、好ましくは水素原子またはメチル基である。
【0083】
1、R2、R3、R1′、R2′およびR3′はそれぞれアルキル基を表し、好ましくはメチル基またはエチル基である。これらのアルキル基はそれぞれ置換基を有していてもよい。
【0084】
AおよびJは2価の連結基を表すが、Aは単なる結合手、−CONH−または−COO−であることが好ましい。またJは単なる結合手または−CON(R″)−基であることが好ましい(R″は水素原子、または置換基を有していてもよいアルキル基を表す)。
【0085】
1 -およびX2 -はアニオン(ハロゲンイオン、メチル硫酸イオン、p−トルエンスルホン酸イオン等)を表す。
【0086】
分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーとしては特に上記一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し単位を有するポリマーが好ましく、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し単位から構成される単独重合体であってもよく、また、第4級アンモニウム塩基を含まない繰り返し単位との共重合体であってもよい。
【0087】
また、第4級アンモニウム塩基を有する繰り返し単位は一般式(1)と一般式(2)で表される繰り返し単位の両者を含むものであってもよく、更に一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し単位が各々2種以上繰り返し単位を含むものであっても良い。
【0088】
一般式(1)または一般式(2)と共に共重合される第4級アンモニウム塩基を有しない繰り返し単位に用いられる単量体としては、例えば、スチレン、ブタジエン、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ヒドロキシルエチルメタクリレート、酢酸ビニル、ビニルエーテル、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−ブチルアクリルアミド、N−ビニルイミダゾール、4−ビニルピリジン、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
【0089】
上記水溶性ポリマーが共重合体である場合、一般式(1)または一般式(2)で表される繰り返し単位はモル比で20〜100モル%が好ましく、30〜100モル%が特に好ましい。
【0090】
上記第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーは第4級アンモニウム塩基を有するために水溶性であるが、共重合する第4級アンモニウム塩基を含まないモノマーの組成や共重合体の比率によっては完全に水に溶解しないことがあるが、水混和性の有機溶媒と水との混合溶媒に溶解させることにより溶解し得るもので有れば本発明には使用できる。
【0091】
ここで水混和性有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して通常10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0092】
次に本発明の分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性の水溶性ポリマーの具体例を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
【化7】
Figure 0003852257
【0094】
【化8】
Figure 0003852257
【0095】
【化9】
Figure 0003852257
【0096】
【化10】
Figure 0003852257
【0097】
【化11】
Figure 0003852257
【0098】
【化12】
Figure 0003852257
【0099】
【化13】
Figure 0003852257
【0100】
【化14】
Figure 0003852257
【0101】
上記カチオン性ポリマーの数平均分子量は2000〜10万のものが好ましく、8万〜3000のものが特に好ましい。
【0102】
本発明のインクジェット記録用紙の色材受容層および必要に応じて設けられるその他の層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することが出来る。
【0103】
例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0104】
特に、本発明の色材受容層には、ラッテクス性ポリマーを含有させることによって、さらに、退色防止効果が発揮され好ましい。該ラッテクス性ポリマーのTg(ガラス転移点)が40℃以下のラテックス性ポリマー用いると、さらに、本発明の効果をより奏する点で好ましい。
【0105】
本発明に好ましく用いられる、テックス性ポリマーは、乳化重合法で重合されたラテックス性ポリマーであることが好ましく、例えば、ポリスチレンラテックス、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、アクリロニトリル−ブタジエン系ラテックス、ポリアクリル酸エステル系ラテックス、ポリメタクリル酸系ラテックス、塩化ビニル系ラテックス、酢酸ビニル系ラテックス、エチレン−酢酸ビニル系ラテックス等が好ましく用いられる。
【0106】
上記のラテックス性ポリマーの具体例として、例えば、スチレン/ブタジエンラテックス(7/3)、ポリ酢酸ビニルラテックス、酢酸ビニル/エチレンラテックス(9/1)、酢酸ビニル/メタクリル酸エチルラテックス(5/5)、塩化ビニル/アクリル酸エチル(3/2)、アクリル酸エチル/アクリル酸メチル/ヒドロキシルエチルメクリレート(5/4/1)、スチレン/アクリル酸ブチル/ヒドロキシルエチルメタクリレート(1/6/3)、シリコンラテックス等を挙げる事ができる。上記において、かっこ内の共重合比率はモル比を表す。
【0107】
上記ポリマーラテックスの使用量は記録用紙1m2当たり0.1〜2gであることが好ましい。0.1g以上であれば、十分な褪色改良効果が得られる。また、2g以下であれば、色材受容層の空隙率を低下させることなく、十分なインク吸収量が確保できる結果、高インク吸収量を保てる。
【0108】
色材受容層は2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらの色材受容層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。
【0109】
本発明のインクジェット記録用紙に用いられる支持体としては、従来インクジェット用記録用紙として公知の紙支持体、プラスチック支持体、複合支持体など適宜使用できるが、より高い濃度で鮮明な画像を得るためには支持体中にインク液が浸透しない疎水性支持体を用いるのが好ましい。
【0110】
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアテセート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、約10〜200μmが好ましい。透明支持体のインク受容層側およびバック層側には公知の下引き層を設けることが、インク受容層やバック層と支持体との接着性を改良する観点から好ましい。
【0111】
また、不透明支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加したホワイトペットが好ましい。
【0112】
上記支持体とインク受像層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明の記録用紙は必ずしも無色である必要はなく、着色された記録用紙であってもよい。
【0113】
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0114】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP,LBSP,NBKP,NBSP,LDP,NDP,LUKP,NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP,NBSP,LBSP,NDP,LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPおよびまたはLDPの比率は10質量%〜70質量%が好ましい。
【0115】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0116】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0117】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500mlが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分の質量%と42メッシュ算分の質量%との和が30〜70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の質量%は20質量%以下であることが好ましい。
【0118】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0119】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0120】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0121】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法ににより測定された場合、5〜9であることが好ましい
原紙表面および裏面はを被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0122】
特にインク受容層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタンの含有量はポリエチレンに対して通常3〜20質量%、好ましくは4〜13質量%である。
【0123】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した物も本発明で使用できる。
【0124】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量はインク受容層やバック層を設けた後で低湿および高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、通常インク受容層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0125】
更に上記ポリエチレン被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
▲1▼引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kgであることが好ましい
▲2▼引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g、横方向が20〜200gが好ましい
▲3▼圧縮弾性率≧1.01×107Paが好ましい
▲4▼表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い。
▲5▼不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい。
【0126】
本発明の記録用紙の空隙層および下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種の親水性層を支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての水溶性樹脂層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0127】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0128】
本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。
【0129】
上記水性インクとは、下記着色剤及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としてはインクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0130】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。
【0131】
これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0132】
その他の水性インクの添加剤としては、例えばpH調整剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤、等が挙げられる。
【0133】
水性インク液は記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、通常2.5×10-2Nm-1〜6.0×10-2Nm-1、好ましくは3.0×10-2Nm-1〜5.0×10-2Nm-1の範囲内の表面張力を有するのが好ましい。
【0134】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾質量%を示す。
【0135】
実施例1
「シリカ分散液−1の調製」
1次粒子の平均粒径が約0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル工業株式会社製:アエロジル300)125kgを、三田村理研工業株式会社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、硝酸でpH=2.5に調整した620Lの純水中に室温で吸引分散した後、全量を694Lに純水で仕上げた。
「シリカ分散液−2の調製」
カチオン性ポリマー(P−10)を1.29kg、エタノール4.2L、n−プロパノール1.5Lを含有する溶液(pH=2.5)18Lに、シリカ分散液−1の694Lを攪拌しながら添加し、ついで、ホウ酸260gとホウ砂230gを含有する水溶液7.0Lを添加し、消泡剤(SN381:サンノプコ社製)を1g添加した。
【0136】
この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで2.45×107Paの圧力で2回分散し、全量を純水で97Lに仕上げてほぼ透明なシリカ分散液−2を調製した。
【0137】
この混合液を三和工業株式会社製高圧ホモジナイザーで2.45×107Paの圧力で2回分散し、全量を純水で97Lに仕上げてほぼ透明なシリカ分散液−2を調製した。
【0138】
「オイル分散液−1の調製」
例示化合物A−1(チバガイギー社製、Irganox LR)900g、ジイソデシルフタレート800gを酢酸エチル12Lに加熱溶解し、これを酸処理ゼラチン3300g、カチオン性ポリマー(P−1)1500g、サポニン50%溶液・9,000mlを含有する水溶液65Lに添加混合して三和工業株式会社製の高圧ホモジナイザーで2.45×107Paの圧力で3回乳化分散し、減圧で酢酸エチルを除去した後全量を100Lに仕上げた。
【0139】
「塗布液の調製」
第1層、第2層の塗布液を以下の手順で調製した。
第1層用塗布液:
シリカ分散液−2の650mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
(1)ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)
の10%水溶液: 0.6ml
(2)ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)
の5%水溶液: 270ml
(3)オイル分散液−1: 35ml
(4)純水で全量を1000mlに仕上げる。
第2層用塗布液:
シリカ分散液−2の650mlに40℃で攪拌しながら、以下の添加剤を順次混合した。
(1)ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA203)
の10%水溶液: 0.6ml
(2)ポリビニルアルコール(クラレ工業株式会社製:PVA235)
の5%水溶液: 270ml
(3)シリコン分散液(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製
・BY−22−839): 15ml
(4)サポニン50%水溶液: 4ml
(5)純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0140】
上記のようにして得られた塗布液を、下記のフィルターで濾過した。
第1層:東洋濾紙株式会社製TCP10で2段
第2層:東洋濾紙株式会社製TCP30で2段
ついで両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚みが220μmでインク吸収層面のポリエチレン中にはポリエチレンに対して13質量%のアナターゼ型酸化チタンを含有)に、第1層(140μm)、第2層(40μm)の順になるように各層を塗布した。かっこ内はそれぞれの湿潤膜厚を示し、第1層、第2層は同時塗布した。
【0141】
塗布はそれぞれの塗布液を40℃で2層式スライドホッパーで塗布を行い、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間順次乾燥して記録用紙−1を得た。
【0142】
記録用紙−1において、以下のように変更した記録用紙−2〜13を作製した。
【0143】
記録用紙−2:「オイル分散液−1」の調製において、例示化合物A−1を例示化合物A−4に替えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−2を作製した。
【0144】
記録用紙−3:「オイル分散液−1」の調製において、例示化合物A−1を例示化合物A−9に替えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−3を作製した。
【0145】
記録用紙−4:記録用紙−1の作製において、「オイル分散液−1」の代りに、例示化合物A−14の9%水溶液(硝酸でpHを4.2に調整)を同量添加した以外は記録用紙−1と同様にして、記録用紙−4を作製した。
【0146】
記録用紙−5:記録用紙−1の作製において、シリカ分散液−1の調製に用いた気相法シリカをアエロジル200(日本アエロジル社製)に代えてそのまま、シリカ分散液−2の調製を行った以外は、記録用紙−1と同様にして、記録用紙−5を作製した。
【0147】
記録用紙−6:記録用紙−1の作製において、シリカ分散液−1の調製に用いた気相法シリカをアエロジル50(日本アエロジル社製)に代えてそのまま、シリカ分散液−2の調製を行った以外は、記録用紙−1と同様にして、記録用紙−6を作製した。
【0148】
記録用紙−7:「オイル分散液−1」の調製において、例示化合物A−1を比較化合物1に替えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−7を作製した。
【0149】
記録用紙−8:「オイル分散液−1」の調製において、例示化合物A−1を比較化合物2に替えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−8を作製した。
【0150】
記録用紙−9:「オイル分散液−1」の調製において、例示化合物A−1を比較化合物3に替えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−9を作製した。
【0151】
記録用紙−10:「オイル分散液−1」の調製において、例示化合物A−1を同量のジイソデシルフタレートに替えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−10を作製した。
【0152】
記録用紙−11:記録用紙−1の作製において、シリカ分散液−2の調製に用いたカチオン性ポリマーを使用しなかった以外は記録用紙−1と同様にして、記録用紙−11を作製した。
【0153】
記録用紙−12:記録用紙−11の作製において、「オイル分散液−1」の調製に用いた例示化合物A−1を同量のジイソデシルフタレートに替えた以外は記録用紙−11と同様にして記録用紙−12を作製した。
【0154】
記録用紙−13:記録用紙−1の作製において、シリカ分散液の添加量とポリビニルアルコール(PVA235)水溶液の添加量を入れ替えた以外は記録用紙−1と同様にして記録用紙−13を作製した。
【0155】
以上のようにして得られたインクジェット記録用紙1〜13についてそれぞれ以下の項目の評価を行った。
(画像保存性)
フタロシアニン系シアン染料2質量%、グリセリン6質量%、エチレングリコールを20質量%含有する水性インクを用い、インクジェットプリンターで吐出量を段階的に変化させて各記録用紙にプリントした。
【0156】
得られたプリント画像を、キセノンフェードメータで70,000luxの条件下で20日間光照射した。
【0157】
キセノン光照射前の反射濃度が1.0になる点のキセノン光照射後の反射濃度を色素残存率として耐光性の尺度とした。
(観察粒径)
記録層の断面を電子顕微鏡で観察し、画像解析によって粒子径を求めた。
(光沢度)
表面の75度光沢度を測定した。
(まだら性)
キャノン製インクジェットプリンタBJF600にてシアンのベタをプリントして、その均一性を目視評価した。
【0158】
◎;全く均一なベタ画像である
◎;観察距離30cm以上で均一に感じられる
△;観察距離60cm以上で均一に感じられる
×;観察距離60cm以上でもまだらに感じられる。
(にじみ)
キャノン製インクジェットプリンタBJF600にてマゼンタの細線(幅1/300×2.54cm)をプリントし、23℃、80%RHの環境に一週間放置して、細線の線幅の増大率を求めた。すべての評価結果を以下に示す。
【0159】
Figure 0003852257
【0160】
【化15】
Figure 0003852257
【0161】
【発明の効果】
実施例で実証した如く、本発明によるインクジェット記録用紙及びその製造方法は、画像保存性を改良し、また、画像保存性に影響を与えることなく、インク吸収性に優れ、にじみのない、光沢性に優れた効果を有する。

Claims (6)

  1. 支持体上に色材受容層が設けられてなるインクジェット記録用紙において、分子内にフェノール性水酸基と該分子内のフェノール性水酸基の隣接の位置にL−SRで示される部分構造を有する化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録用紙(Lは2価の基、Rは水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、これら脂肪族基または芳香族基は置換基を有してもよい)。
  2. 前記分子内にフェノール性水酸基と該分子内のフェノール性水酸基の隣接の位置にL−SRで示される部分構造を有する化合物が下記一般式(I)であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
    Figure 0003852257
    (式中、Lは2価の連結基を表し、Rは、水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、これら脂肪族基または芳香族基は置換基を有してもよく、Rは水素原子または置換基を表す。mは0または1の整数を表し、mが1の時には、2つの−L−S−Rは同じでも異なっていてもよい。nは0〜4の整数を表す。)
  3. 前記色材受容層が、無機顔料と水溶性樹脂を含有する多孔質層であることを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
  4. 前記色材受容層がカチオン性樹脂を含有することを特徴とする請求項1、2又は3に記載のインクジェット記録用紙。
  5. 前記無機顔料が平均粒径100nm以下の超微粒子シリカであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録用紙。
  6. 支持体上に色材受容層を有するインクジェット記録用紙の製造方法において、分子内にフェノール性水酸基と該分子内のフェノール性水酸基の隣接の位置にL−SRで示される部分構造を有する化合物を微小油滴として含有した水性塗布液を用いて製造することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法(Lは2価の基、Rは水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、これら脂肪族基または芳香族基は置換基を有してもよい)
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