JP3849354B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はインクジェット記録用紙に関し、詳しくはインクジェット記録する際のバンディング性を改良し、かつ画像滲みの少ないインクジェット記録用紙に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、インクジェット記録は急速に画質が向上し、写真画質に迫りつつある。写真画質並の画像をインクジェット記録で達成するために記録用紙の方面からも改善がすすんでおり、高平滑性の支持体上に微小な多孔質層を設けた記録用紙はインク吸収性及び乾燥性に優れていることから最も写真画質に近いものの一つになりつつある。
【0003】
このような高画質化に伴い、記録用紙に要求される特性も一段と高まっているが、特に非吸水性支持体上にインク吸収層が設けられているインクジェット記録用紙は高品位のプリントが得られ好ましい。
【0004】
インクジェット記録においては、通常、水溶性染料が色材として用いられるが、この水溶性染料は親水性が高いため記録後に高湿下に長期間保存したり、記録面上に水滴が付着した場合には染料が滲み易い傾向がある。
【0005】
この問題を解決するために、染料固着性物質、即ち耐水化剤をインク吸収層中に添加しておくことが一般的に行われており、そのような耐水化剤としては表面がカチオン性である無機顔料(アルミナ微粒子等)や分子内に第4級アンモニウム塩基を有するカチオンポリマー等が挙げられている。
【0006】
一方、プリンター技術においてもより高画質画像を得ようと、インクの微小ドットを実現しようとする方向にある。
【0007】
本発明者らは高画質画像の達成のため鋭意検討した結果、プリンターから放出される微小ドットのインクは、プリント時に記録用紙の幅手方向にインクがのらない部分として生ずる画像のすじ状の白抜け、即ちバンディングの発生の原因となることを突き止めた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的はインクジェット記録用紙のバンディング性及び画像滲み性の両方を改善することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題は以下の本発明によって解決された。
【0010】
1.非吸水性支持体上に、親水性バインダー、無機微粒子、及び染料を固定する耐水化剤として数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子を含有するインク吸収層を設けたインクジェット記録用紙であって、少なくとも下記AまたはBで表される方法を用いることにより、下記する測定方法による耐水化剤の溶出率が、浸漬前の耐水化剤含有量に対して0.5〜30重量%であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
A:数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子の分子量2000以下の成分を、インク吸収層中の該高分子に対して0.5〜30重量%含有する方法
B:数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子の分子量300〜1000の成分を、インク吸収層中の該高分子に対して1〜10重量%含有する方法
測定方法:インクジェット記録用紙を一定面積切り取り、これを23℃の純水中に1分間浸漬した後に取り出し、純水中の溶出重量を測定して、浸漬前の含有量に対する比率を測定する。
【0012】
以下、本発明を詳しく説明する。
【0013】
本発明のインクジェット記録用紙は、インク吸収層中の染料を固定する耐水化剤(以下、単に耐水化剤という)の純水中への溶出率を、浸漬前の耐水化剤含有量に対して0.5〜30重量%の範囲の条件に設定して形成されており、この構成によりバンディング性及び画像滲み性の両方を同時に改善しえるという効果を奏する。
【0014】
インクジェット記録する際、本発明のインクジェット記録用紙がバンディング性を改善し、かつ画像滲みの少ないものとなりうるメカニズムは明確ではないが、本発明者らは次のように考えている。
【0015】
耐水化剤を含有するインク吸収層では、印字されたインクが乾いた後はインク中の染料は耐水化剤に固着される。印字後の多湿環境下における画像滲み性の向上を追求するためには耐水化剤が非拡散性であることが最も好ましい。
【0016】
一方、インク吸収層表面の疎水性を増して耐水性を向上させようと試みると、プリント時のインクのはじきによるすじ状の白抜け(バンディング)が生じることがある。これは高画質化を追求するプリンター技術によりインクドット径をより小さくした場合に発生しやすいものである。このような場合、耐水化剤に固着された染料が僅かに拡散することによって画像(ドット)が適度にぼかされる。即ちドットを適度な径にコントロールすることで、ドットが小さくなりすぎるために生じる白抜け状のバンディングを防止することができる。
【0017】
耐水化剤の拡散性が上限を越えると画像滲みが発生するおそれがあるため、耐水化剤の拡散性の程度を純水中への溶出率で具体化し、該溶出率を浸漬前の耐水化剤含有量に対して0.5〜30重量%の範囲、好ましくは溶出率を1〜10重量%に設定することによりバンディング防止及び画像滲み防止の両立を達成できると推定している。
【0018】
本発明において、耐水化剤の純水中への溶出率は、以下のようにして測定する。
【0019】
インクジェット記録用紙を一定面積切り取り、これを23℃の純水中に1分間浸漬した後に取り出し、純水中の溶出重量を測定して、浸漬前の含有量に対する比率を溶出率とする。
【0020】
本発明においては耐水化剤の溶出率が0.5〜30重量%であるが、この状態を実現するには例えば、▲1▼親水性基を有する耐水化剤を用い、親水性をコントロールして適切な溶出率とする、▲2▼耐水化剤として有機高分子化合物を使用し、その分子量分布において低分子量成分の量をコントロールしたものを用い適切な溶出率とする、▲3▼耐水化剤として有機高分子化合物を使用し、低分子量成分を添加して適切な溶出率とする、などが挙げられるが、染料固定性能が最適な構造を有する耐水化剤で適切な溶出量をコントロールすべく分子量によって溶出量を調整することが可能であるという点において、特に▲2▼及び▲3▼が好ましい。
【0021】
上記のうち本発明の態様は下記に示すものである。
【0022】
即ち耐水化剤として含有される数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子の分子量2000以下の成分を、インク吸収層中の該高分子に対して0.5〜30重量%含み、かつ親水性バインダーを含むインク吸収層を非吸水性支持体上に設ける態様である。
【0023】
又別の態様として、耐水化剤として含有される数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子の分子量300〜1000の成分を、インク吸収層中の該高分子に対して1〜10重量%含み、かつ親水性バインダーを含むインク吸収層を非吸水性支持体上に設けることが挙げられる。
【0024】
耐水化剤としては、ポリマー主鎖又は側鎖に第4級アンモニウム塩基を有するポリマーであり、実質的に水溶性であるものが好ましい。
【0025】
具体的には、ポリアルキレンポリアミン・ジシアンジアミドアンモニウム塩縮合物、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド−SO2共重合物、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロライド重合物、(2−メタクロイルオキシエチル)トリメチルアンモニウムクロライド重合物、などが挙げられる。
【0026】
特に本発明では第4級アンモニウム塩基を有するポリマーが好ましく、中でも第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体又は他の共重合しうる1又は2以上のモノマーとの共重合体が好ましい。
【0027】
以下に、本発明に好ましく用いられる第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーの具体例を挙げる。
【0028】
【化1】
【0029】
【化2】
【0030】
本発明に用いられる耐水化剤の数平均分子量は特に限定しないが、10万以下であることが好ましく、更には5万以下であることが好ましい。
【0031】
ここで数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリスチレン値に換算した値である。
【0032】
インク吸収層は、耐水化剤の他に無機微粒子と少量の親水性バインダーから基本的に構成される多孔質性インク吸収層である。
【0033】
本発明で用いる無機微粒子の例としては、例えば軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、珪藻土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料を挙げることができる。
【0034】
これら無機微粒子は、1次粒子のまま用いても、又2次凝集粒子を形成した状態で使用することもできるが、高い光沢性と速い吸収性を有する観点から、皮膜中で0.01〜0.1μmのサイズになるような無機微粒子を使用することが好ましい。
【0035】
本発明においては、低コストであることや高い反射濃度が得られる低屈折率の微粒子であること等から、表面がアニオン性の無機微粒子としては、気相法で合成されたシリカ又はコロイダルシリカが好ましい。又、表面がカチオン性である無機微粒子としては、カチオン表面処理された気相法シリカ、カチオン表面処理されたコロイダルシリカ、及びアルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト等も用いることが出来る。
【0036】
インク吸収層に用いられる親水性バインダーとしては、例えばポリビニルアルコール、ゼラチン、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、デキストラン、デキストリン、カラギーナン(κ、ι、λ等)、寒天、プルラン、水溶性ポリビニルブチラール、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらの親水性ポリマーは2種以上併用することも可能である。
【0037】
本発明で好ましく用いられる親水性ポリマーは、ポリビニルアルコールである。このポリビリルアルコールには、ポリ酢酸ビニルを加水分解して得られる通常のポリビニルアルコールの他に、末端をカチオン変性したポリビニルアルコールやアニオン性基を有するアニオン変性ポリビニルアルコール等の変性ポリビニルアルコールも含まれる。
【0038】
酢酸ビニルを加水分解して得られるポリビニルアルコールは、平均重合度が1000以上のものが好ましく用いられ、特に平均重合度が1500〜5000のものが好ましい。鹸化度は70〜100%のものが好ましく、80〜99.5%のものが特に好ましい。
【0039】
カチオン変成ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されるような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を、上記ポリビニルアルコールの主鎖又は側鎖中に有するポリビニルアルコールであり、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体を鹸化することにより得られる。
【0040】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチル−トリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0041】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0042】
アニオン変性ポリビニルアルコールは、例えば特開平1−206088号に記載される様なアニオン性基を有するポリビニルアルコール、特開昭61−237681号、同63−307979号等に記載される様なビニルアルコールと水溶性基を有するビニル化合物との共重合体、及び特開平7−285265号に記載されるような水溶性基を有する変性ポリビニルアルコールが挙げられる。
【0043】
又、ノニオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開平7−9758号に記載される様な、ポリアルキレンオキサイド基をビニルアルコールの一部に付加したポリビニルアルコール誘導体、特開平8−25795号に記載される、疎水性基を有するビニル化合物とビニルアルコールとのブロック共重合体等が挙げられる。
【0044】
ポリビニルアルコールは、重合度や変性の種類違いなど2種類以上を併用することもできる。
【0045】
インク吸収層に用いられる無機微粒子の添加量は、本発明で好ましい多孔質性インク吸収層を形成しようとする場合は、一般には記録用紙1m2当たり概ね5〜30g、好ましくは10〜25gである。
【0046】
又、本発明で用いる無機微粒子と親水性バインダーの比率は、重量比で概ね2:1〜20:1であることが好ましい。
【0047】
本発明の記録用紙に用いられる非吸水性支持体は、透明支持体或いは不透明支持体の何れでも可能である。
【0048】
透明支持体としては、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料から成るフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用された時の輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。この様な透明な支持体の厚さとしては、約10〜200μmが好ましい。
【0049】
又、不透明支持体としては、例えば基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(所謂RCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに硫酸バリウム等の白色顔料を添加して成る所謂ホワイトペットが好ましい。
【0050】
上記各種支持体とインク吸収層の接着強度を大きくする等の目的で、インク吸収層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。更に、本発明の記録用紙は、必ずしも無色である必要はなく、着色された記録用紙であってもよい。
【0051】
本発明のインクジェット記録用紙では、原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるため特に好ましい。その様なポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0052】
紙支持体に用いられる原紙は、木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレン等の合成パルプ或いはナイロンやポリエステル等の合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしては、LBKP,LBSP,NBKP,NBSP,LDP,NDP,LUKP,NUKPの何れも用いることが出来るが、短繊維分の多いLBKP,NBSP,LBSP,NDP,LDPをより多く用いることが好ましい。ただし、LBSP及び/又はLDPの比率は1070重量%が好ましい。
【0053】
上記パルプは、不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0054】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0055】
抄紙に使用するパルプの濾水度は、CSFの規定で200〜500mlが好ましく、又、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分重量%と42メッシュ残分重量%との和が30〜70%が好ましい。尚、24メッシュ残分の重量%は20重量%以下であることが好ましい。
【0056】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0057】
原紙は、抄紙段階又は抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に、原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0058】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布してもよく、表面サイズ剤としては、前記原紙中に添加できるサイズ剤と同様のサイズ剤を使用できる。
【0059】
原紙のpHは、JIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0060】
原紙表面及び裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)及び/又は高密度のポリエチレン(HDPE)であるが、他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0061】
特に、インク吸収層側のポリエチレン層は、写真用印画紙で広く行われている様にルチル又はアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度及び白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量は、ポリエチレンに対して概ね3〜20重量%、好ましくは4〜13重量%である。
【0062】
ポリエチレン被覆紙は、光沢紙として用いることも、又、ポリエチレンを原紙表面上に溶融、押し出してコーティングする際に、いわゆる型付け処理を行って、通常の写真印画紙で得られる様なマット面や絹目面を形成したものも本発明で使用できる。
【0063】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量は、インク吸収層やバック層を設けた後で低湿及び高湿化でのカールを最適化する様に選択されるが、概ねインク吸収層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0064】
更に、上記ポリエチレン被覆紙支持体は、以下の特性を有していることが好ましい。
【0065】
1)引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2〜30kg、横方向が1〜20kg
2)引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g,横方向が20〜200g
3)弾性:圧縮弾性率≧103kgf/cm2
4)面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上(光沢面)。型付け品ではこれ以下も可
5)不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で、可視域の光線での透過率が20%以下(特に15%以下)。
【0066】
本発明のインクジェット記録用紙には、皮膜を強固にするため、又は本発明の目的の一つである滲みの劣化を防止するために硬膜剤を含有する態様が好ましい。
【0067】
硬膜剤は、一般的には前記親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物又は親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物、又は耐水化剤同士、又は耐水化剤と親水性バインダーとの反応を促進するような化合物等が用いられる。例えばエポキシ系硬膜剤、アルデヒド系硬膜剤、活性ハロゲン系硬膜剤、活性ビニル系化合物、ほう酸及びその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0068】
特に好ましい親水性バインダーとしてポリビニルアルコール、カチオン変性ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸及びその塩、及びエポキシ系硬膜剤から選ばれるのが好ましく、最も好ましいのはほう酸又はその塩である。
【0069】
ほう酸又はその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸及びその塩を示し、具体的にはオルトホウ酸、二ホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸、五ホウ酸、八ホウ酸及びそれらの塩が含まれる。これらのホウ酸又はその塩は記録用紙1m2当たり0.05〜2g、好ましくは0.1〜1gの範囲で用いられる。
【0070】
上記硬膜剤は、本発明に係るインク吸収層形成用塗布液中に添加して供給してもよく、又はインク吸収層形成用塗布液を塗布した後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして供給することもできる。
【0071】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層及び必要に応じて設けられるその他の層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することができる。
【0072】
例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、又はこれらの共重合体、尿素樹脂、又はメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子;カチオン又はノニオンの各種界面活性剤;特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤;特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている褪色防止剤;特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号及び特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤;硫酸、燐酸、枸櫞酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤;消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0073】
多孔質のインク吸収層は2層以上から構成されてもよく、この場合、それらのインク吸収層の構成はお互いに同じであっても異なってもよい。
【0074】
本発明のインクジェット記録用紙のインク吸収層及び下引層など、必要に応じて適宜設けられる各種の親水性層を支持体上に塗布する方法は、公知の方法から適宜選択して行うことができる。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設・乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0075】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法又は米国特許2,681,294号に記載のホッパーを使用する、エクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0076】
本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。
【0077】
本発明でいう水性インクとは、下記着色剤及び液媒体、その他の添加剤から成る記録液体である。
【0078】
着色剤としては、インクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料又は食品用色素等の水溶性染料又は水分散性顔料が使用できる。中でも、特に効果が大きいのはフタロシアニン系の染料をシアン染料として含有するものである。フタロシアニン系染料は、シアン系染料の中でも特に広く知られ、かつ用いられているものである。
【0079】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えばメチルアルコール、i−プロピルアルコール、ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、i−ブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。
【0080】
これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル類は好ましいものである。
【0081】
その他、水性インクの添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防黴剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤などが挙げられる。
【0082】
水性インク液は、記録用紙に対する濡れ性を良好にするため、20℃において25〜60dyn/cm、好ましくは30〜50dyn/cmの範囲内の表面張力を有することが好ましい。
【0083】
【実施例】
以下に実施例を挙げて説明するが、本発明の実施態様がこれらに限定されるものではない。尚、実施例中での%は、特に断りのない限り絶乾重量%を表す。
【0084】
実施例1
1.シリカ分散液1の調製
1次粒子の平均粒径が約12nmの気相法シリカ(日本アエロジル工業社製:A200)90kgを、三田村理研工業社製のジェットストリーム・インダクターミキサーTDSを用いて、600リットルの純水中に室温で吸引分散した後、純水で全量を650リットルに仕上げた。
【0085】
例示化合物P−5の構造を有し、数平均分子量10万の耐水化剤を1.6kg、エタノール2リットル、プロパノール1.5リットルを含有する水溶液18リットルに前述した気相法シリカ分散液65リットルを撹拌しながら添加し、次いで消泡剤(SN381;サンノブコ社製)を1g添加した。
【0086】
次に、ほう酸とほう砂を各150g含む1:1混合水溶液(ほう酸及びほう砂がそれぞれ5重量%含有)を撹拌しながら徐々に添加した。
【0087】
この混合液を三和工業社製高圧ホモジナイザーで分散し、全量を純水で97リットルに仕上げた。
【0088】
2.塗布液1の調製
上記シリカ分散液1を使用して下記の塗布液を調製した。
【0089】
シリカ分散液1の600mlに、40℃で撹拌しながら以下の添加剤を順次混合した。
【0090】
ポリビニルアルコール(クラレ工業社製;PVA203)の10%水溶液5ml
ポリビニルアルコール(クラレ工業社製;PVA235)の5%水溶液250ml
純水で全量を1000mlに仕上げる。
【0091】
3.記録用紙の作製
・記録用紙1の作製
坪量170g/m2の原紙の両面をポリエチレンで被覆したポリエチレンコート紙(インク吸収層側のポリエチレン中に8重量%のアナターゼ型酸化チタン含有;インク吸収層面側に0.05g/m2のゼラチン下引層、反対側にTgが約80℃のラテックスポリマーをバック層として0.2g/m2含有する)に、上記塗布液1を湿潤膜厚が160μmになるように塗布し、約7℃に一度冷却した後に20〜65℃の温風を吹き付けて乾燥し、記録用紙1を作製した。
【0092】
・記録用紙2の作製
記録用紙1の作製において使用したシリカ分散液1で用いた例示化合物P−5(数平均分子量10万)の耐水化剤に代えて、例示化合物P−5(数平均分子量6万)の耐水化剤を用いる以外はシリカ分散液1と同様にして調製したシリカ分散液2を使用する以外は記録用紙1の作製と同様にして記録用紙2を作製した。
【0094】
・記録用紙4の作製
記録用紙1の作製において使用したシリカ分散液1で用いた例示化合物P−5(数平均分子量10万)の耐水化剤に代えて、例示化合物P−5(数平均分子量2.5万)であって、分子量300〜1000の成分が約6重量%含まれる耐水化剤を用いる以外はシリカ分散液1と同様にして調製したシリカ分散液4を使用する以外は記録用紙1の作製と同様にして記録用紙4を作製した。
【0095】
・記録用紙5の作製
記録用紙1の作製において使用したシリカ分散液1で用いた例示化合物P−5(数平均分子量10万)の耐水化剤に代えて、例示化合物P−5(数平均分子量2万)であって、分子量2000以下の成分が約18重量%含まれる耐水化剤を用いる以外はシリカ分散液1の作製と同様にして調製したシリカ分散液5を使用する以外は記録用紙1の作製と同様にして記録用紙5を作製した。
【0096】
・記録用紙6の作製
記録用紙1の作製において使用したシリカ分散液1で用いた例示化合物P−5(数平均分子量10万)の耐水化剤に代えて、例示化合物P−5(数平均分子量1.5万)であって、分子量2000以下の成分が約35重量%含まれる耐水化剤を用いる以外はシリカ分散液1の作製と同様にして調製したシリカ分散液6を使用する以外は記録用紙1の作製と同様にして記録用紙6を作製した。
【0097】
・記録用紙7の作製
記録用紙1の作製において使用したシリカ分散液1で用いた例示化合物P−5(数平均分子量10万)の耐水化剤に代えて、例示化合物P−5(数平均分子量1万)の耐水化剤を用いる以外はシリカ分散液1と同様にして調製したシリカ分散液7を使用する以外は記録用紙1の作製と同様にして記録用紙7を作製した。
【0098】
4.耐水化剤の溶出率の測定
記録用紙1〜7から各一定の面積を切り取り、これを23℃の純水中に1分間浸漬した後に取り出した。当該純水を凍結乾燥して水を除去して残った固型分を重水素に溶解し、内部標準物質としてジオキサンを用いて検量線を作製し、13C−NMRにて各試料の例示化合物P−5の抽出量を測定した。
【0099】
各記録用紙における例示化合物P−5の塗布量(付量)に対する溶出量(溶出率)は表1に示した通りである。尚、記録用紙1については例示化合物P−5に相当するものは抽出物からは検出できなかった。
【0100】
(評価)
・バンディング性
セイコーエプソン社製のPM750でKのライン幅約0.3mmで印字した際に、すじ状の白抜け(バンディング)を目視にて、以下の評価基準で評価した。
【0101】
○・・・白抜けすじが認められない
△・・・白抜けすじがやや認められるが実用上問題ない
×・・・白抜けすじが目立つ。
【0102】
・画像滲み
セイコーエプソン社製のPM750でMのライン幅約0.3mmで印字し、30℃、90%の条件で1週間保存して各ラインの線幅をマイクロデンシトメーターで測定して線幅の広がり率(元の線幅に対する保存後の線幅の比率)を求めた。
【0103】
得られた結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1から明らかなように、本発明の記録用紙4〜5はバンディング性及び画像滲み共に良好であることが分かる。特にその溶出率が6〜10重量%である場合には顕著にその効果が認められた。
【0106】
実施例2
実施例1で調製したシリカ分散液1における「気相法シリカ(日本アエロジル工業社製:A200)90kg」に代えて、「気相法シリカ(日本アエロジル工業社製:A200)120kg」にした以外はシリカ分散液1の調製と同様にしてシリカ分散液21を調製した。
【0107】
同じように「気相法シリカ(日本アエロジル工業社製:A200)120kg」を用いる以外はシリカ分散液2〜7の調製と同じにしてシリカ分散液22〜27を調製した。
【0108】
記録用紙1の作製において使用したシリカ分散液1に代えてシリカ分散液21を使用する以外は記録用紙1の作製と同様にして記録用紙21を作製した。
【0109】
又、同じようにシリカ分散液22〜27を使用して記録用紙22〜27を作製した。
【0110】
これらの各記録用紙について実施例1と同じようにして耐水化剤の溶出率の測定と、バンディング性及び画像滲みの評価を行ったところ、実施例1と同様の効果が認められた。
【0111】
【発明の効果】
本発明によれば、インクジェット記録用紙のバンディング性及び画像滲み性の両方を改善するという、顕著に優れた効果を奏することができる。
Claims (1)
- 非吸水性支持体上に、親水性バインダー、無機微粒子、及び染料を固定する耐水化剤として数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子を含有するインク吸収層を設けたインクジェット記録用紙であって、少なくとも下記AまたはBで表される方法を用いることにより、下記する測定方法による耐水化剤の溶出率が、浸漬前の耐水化剤含有量に対して0.5〜30重量%であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
A:数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子の分子量2000以下の成分を、インク吸収層中の該高分子に対して0.5〜30重量%含有する方法
B:数平均分子量10万〜1.5万の第4級アンモニウム塩基を有する高分子の分子量300〜1000の成分を、インク吸収層中の該高分子に対して1〜10重量%含有する方法
測定方法:インクジェット記録用紙を一定面積切り取り、これを23℃の純水中に1分間浸漬した後に取り出し、純水中の溶出重量を測定して、浸漬前の含有量に対する比率を測定する。
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