JP2010000775A - インクジェット記録媒体及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】印画濃度に優れ、にじみ及びブロンジングを抑制できるインクジェット記録媒体を提供する。
【解決手段】支持体上に少なくとも2層のインク受容層を有し、前記少なくとも2層のインク受容層のうち少なくとも1層が塩基性化合物を含有し、前記少なくとも2層のインク受容層のうち、前記支持体から最も離れた最上層が、擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有し、前記最上層と前記支持体との間に設けられた下層が、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、インクジェット記録媒体及びその製造方法に関する。
近年の情報技術産業の急速な発展に伴ない、種々の情報処理システムが開発されると共に、各々の情報処理システムに適した記録方法及び記録装置も実用化されている。これらの中でも、インクジェット記録方法は、多種の被記録媒体に記録可能なこと、ハード(装置)が比較的安価でコンパクトであること、静粛性に優れること等の利点から広く利用されるようになっている。そして、インクジェット記録方法を利用した記録では、いわゆる写真ライクな高画質記録物を得ることも可能になってきている。
インクジェット記録用の記録媒体は一般に、(1)速乾性があること(インクの吸収速度が大きいこと)、(2)ドット径が適正で均一であること(滲みのないこと)、(3)粒状性が良好であること、(4)ドットの真円性が高いこと、(5)色濃度が高いこと、(6)彩度が高いこと(くすみのないこと)、(7)画像部の耐水性や耐光性、耐オゾン性が良好なこと、(8)白色度が高いこと、(9)保存安定性が高いこと(長期保存で黄変着色や画像の滲みのないこと)、(10)変形しにくく寸法安定性が良好であること(低カールであること)、(11)ハード走行性が良好なこと等の特性を持つことが求められている。
上記に鑑み、近年ではインクを受容する層(インク受容層)が多孔質構造を有するインクジェット記録媒体が実用化され、種々の検討がなされている。
例えば、経時による滲み改善を目的として、インク受容層に水溶性多価金属塩及びカチオン変性高分子水分散物を含有させる技術(例えば、特許文献1参照)や、印画濃度、経時によるにじみ、脆性を改善することを目的として、インク受容層にガラス転移温度50℃以下、かつ平均粒子径0.05μm以下の高分子水分散物を含有させる技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。
また、ブロンジングを改善し、吸収速度、耐水性、及び発色性を向上させることを目的として、インク受容層にアルミナ又はアルミナ水和物を含有させ、該アルミナ又はアルミナ水和物の平均二次粒子径を80nm〜300nm、平均一次粒子径を3nm〜50nm、一次粒子状態の粒子の存在確率を10%以下とする技術が知られている(例えば、特許文献3参照)。
また、ブロンジング及び滲みの改善を目的として、インク受容層上層にアルミナ水和物を含有させアルミナ水和物以外のカチオン性化合物を含有させず、インク受容層下層に微粒子シリカ、水溶性ジルコニウム化合物、及びカチオン性ポリマーを含有させる技術が知られている(例えば、特許文献4参照)。
特開2006−15655号公報 特開2006−264190号公報 特開2005−254588号公報 特開2005−262716号公報
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載のインク受容層を用いた場合、印画濃度が低下する場合がある。また、上記特許文献4に記載のインク受容層を用いた場合、印画濃度向上とブロンジング改善とを両立できない場合がある。
本発明は上記に鑑みなされたものであり、印画濃度に優れ、にじみ及びブロンジングを抑制できるインクジェット記録媒体及びその製造方法を提供することを目的とし、該目的を達成することを課題とする。
前記課題を解決するための具体的手段は以下のとおりである。
<1> 支持体上に少なくとも2層のインク受容層を有し、前記少なくとも2層のインク受容層のうち少なくとも1層が塩基性化合物を含有し、前記少なくとも2層のインク受容層のうち、前記支持体から最も離れた最上層が、擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有し、前記最上層と前記支持体との間に設けられた下層が、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体である。
<2> 前記塩基性化合物は、前記最上層に含まれることを特徴とする<1>に記載のインクジェット記録媒体である。
<3> 前記少なくとも2層のインク受容層のうち少なくとも1層が、スルホ基を有する有機化合物を含有することを特徴とする<1>又は<2>に記載のインクジェット記録媒体である。
<4> 前記スルホ基を有する有機化合物が、ナフタレン環を有することを特徴とする<3>に記載のインクジェット記録媒体である。
<5> 支持体上に、少なくとも、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有する塗布液Aと、擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有する塗布液Bと、を該支持体側からみて塗布液A、塗布液Bの順となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含み、前記インク受容層を形成するための塗布液の少なくとも1種に塩基性化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法である。
本発明によれば、印画濃度に優れ、にじみ及びブロンジングを抑制できるインクジェット記録媒体及びその製造方法を提供することができる。
≪インクジェット記録媒体≫
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に少なくとも2層のインク受容層を有し、前記少なくとも2層のインク受容層のうち少なくとも1層が塩基性化合物を含有し、前記少なくとも2層のインク受容層のうち、前記支持体から最も離れた最上層が、擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有し、前記最上層と前記支持体との間に設けられた下層が、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有して構成される。
擬ベーマイトアルミナは印画濃度の向上に寄与する成分であるが、擬ベーマイトアルミナを含むインク受容層ではブロンジングが発生する場合がある。
ブロンジング抑制には、擬ベーマイトアルミナを含むインク受容層に、水溶性高沸点溶剤及び塩基性化合物を添加することが効果的であるが、水溶性高沸点溶剤の添加によりにじみが悪化する。一方、にじみ抑制には、カチオン性ポリウレタンやジルコニウム塩の添加が効果的であるが、擬ベーマイトアルミナを含むインク受容層にカチオン性ポリウレタンやジルコニウム塩を添加すると印画濃度が低下する。
そこで、擬ベーマイトアルミナを含むインク受容層の下層側にカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を有するインク受容層を設けることにより、印画濃度向上とにじみ抑制とを両立できる。
従って、インクジェット記録媒体を上記本発明の構成とすることにより、印画濃度が向上し、にじみ及びブロンジングが抑制される。
また、インク受容層を単層構成とした場合、具体的には、水溶性高沸点溶剤とカチオン性ポリウレタンとを同じインク受容層に含ませた場合、塗布〜乾燥時にインク受容層の収縮が起こり、層形成が困難となる(即ち、塗布適性が低下する)場合がある。
従って、上記本発明においては塗布適性も良好である。
本発明において、前記塩基性化合物は、前記少なくとも2層のインク受容層のうち、少なくとも1層に含まれていればよい。
本発明による効果をより効果的に得る観点からは、前記塩基性化合物は、前記最上層に含まれていることが好ましい。
<インク受容層>
本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に少なくとも2層のインク受容層を有する。
ここで少なくとも2層のインク受容層は、前記支持体から最も離れた最上層と、前記最上層と前記支持体との間に設けられた下層と、を含んでいれば特に限定はない。必要に応じ、前記最上層と前記下層との間や前記下層と前記支持体との間にその他の層(中間層等)を含んでいてもよい。
(最上層)
本発明における最上層は、擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有する。該最上層は必要に応じ、その他の成分を含んでいてもよい。但し、インク受容層の乾燥収縮をより抑制する観点からは、最上層には後述するカチオン性ポリウレタンを含まないことが好ましい。
本発明による効果をより効果的に得る観点からは、本発明における最上層は、更に、塩基性化合物を含むことが好ましい。
最上層の擬ベーマイトアルミナの塗布量としては特に限定はないが、インク吸収性及び発色性の観点からは、10〜30g/mが好ましく、15〜25g/mがより好ましい。
最上層に含まれる上記各成分の詳細については後述する。
(下層)
本発明における下層は、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有する。該下層は必要に応じ、その他の成分を含んでいてもよい。但し、インク受容層の乾燥収縮をより抑制する観点からは、下層には後述する水溶性高沸点溶剤を含まないことが好ましい。
また、前記下層は、単層構成であっても2層以上の構成であってもよい。
下層の無機微粒子の塗布量(2層以上の場合は総塗布量)としては特に限定はないが、インク吸収性及び塗布性の観点からは、10〜30g/mが好ましく、15〜25g/mがより好ましい。
下層に含まれる上記各成分の詳細については後述する。
本発明において、ブロンジング抑制の効果をより効果的に得る観点からは、下記式Aで表される最上層の層比率(%)や、下記式Bで表される下層の層比率(%)を調節することが好ましい。
最上層の層比率(%) = (最上層の擬ベーマイトアルミナの塗布量(質量)/(最上層の擬ベーマイトアルミナの塗布量(質量)+下層の無機微粒子の塗布量(質量)))×100 … 式A
下層の層比率(%) = (下層の無機微粒子の塗布量(質量)/(最上層の擬ベーマイトアルミナの塗布量(質量)+下層の無機微粒子の塗布量(質量)))×100 … 式B
具体的には、ブロンジング抑制の効果をより効果的に得る観点からは、最上層の層比率(%)は10%以上であることが好ましく、30%以上であることがより好ましく、40%以上であることが特に好ましい。
最上層の層比率(%)の上限は特に限定はないが、60%が好ましい。
以下、本発明におけるインク受容層に含まれる各成分について説明する。
(塩基性化合物)
本発明におけるインク受容層のうち、少なくとも1層(好ましくは最上層)は塩基性化合物を含有する。
前記塩基性化合物としては、例えば、エタノールアミン、トリエタノールアミンのようなアルコールアミン、アンモニアのような揮発性の塩基、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムのようなアルカリ金属の水酸化物や酢酸ナトリウム等の無機アルカリ剤、グアニジンのような塩基性アミノ酸、等が挙げられる。
受像紙の保存性(湿熱にじみ)性能を考慮すると、前記塩基性化合物としては、揮発性の塩基や塩基性アミノ酸が好ましく、アンモニアやグアニジンが特に好ましい。
本発明における塩基性化合物の含有量としては特に限定はないが、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、インク受容層全層(最上層及び下層を含む全層)の全固形分に対し、0.01〜0.3質量%が好ましく、0.02〜0.1質量%がより好ましい。
(擬ベーマイトアルミナ)
本発明におけるインク受容層(少なくとも最上層、必要に応じ下層やその他の層)は、擬ベーマイトアルミナを少なくとも1種含有する。
本発明における擬ベーマイトアルミナは、Al・nHO(1<n<3)の構成式で表され、nが1より大きく3未満であるときのアルミナ水和物をさす。
前記擬ベーマイトアルミナとしては、結晶質でも非晶質でもよく、不定形や、球状、板状等の形態を有しているものを用いることができる。これらのうち1種のみを使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
特に、アスペクト比2以上の板状、又は棒状の擬ベーマイトアルミナが好ましい。
前記擬ベーマイトアルミナを製造する方法には特に限定はないが、例えば、アルミニウムイソプロポキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により製造できる。
前記擬ベーマイトアルミナの市販品は、例えば、日産化学工業(株)、触媒化成工業(株)、Sasol社、Martinswerk社などから入手可能である。
本発明における擬ベーマイトアルミナの一次粒子の平均粒径としては特に限定はないが、100nm以下が好ましく、5〜50nmがより好ましく、8〜30nmが特に好ましい。
前記一次粒子の平均粒径は、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めることができる。
本発明における擬ベーマイトアルミナの二次粒子の平均粒径としては特に限定はないが、80〜250nmが好ましく、120〜200nmがより好ましい。
上記範囲によりインク吸収性と表面光沢がさらに向上する。
前記二次粒子の平均粒径とはアルミナ水和物の分散液を固形分濃度を2%以下まで希薄しレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置、又は動的光散乱型粒子系分布測定装置で測定される。二次粒子の粒径はアルミナ水和物のもつ分散性に支配されるが、解膠剤の添加量や固形分濃度によりある程度調整は可能である。
本発明において擬ベーマイトアルミナは、擬ベーマイトアルミナ分散物として用いる形態が好適である。
擬ベーマイトアルミナの分散には、例えば、歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、高圧ホモジナイザー、超音波分散機およびビーズミル等公知の分散装置を用いることができる。
また、擬ベーマイトアルミナの分散の際には、分散助剤を用いることが好ましい。
前記分散助剤としては、乳酸、酢酸、蟻酸、硝酸、塩酸、臭化水素酸、塩化アルミニウム等の酸を用いることができるが、中でも、無機酸が低温粘度がより高くなり、好ましい。
前記分散助剤の添加量としては、擬ベーマイトアルミナに対して0.1〜5重量%であることが好ましい。
酸で分散された擬ベーマイトアルミナを用いることで、硬膜剤(架橋剤)としてほう酸またはほう酸塩を使用した場合においても、塗布液特性が良好となり、塗布性も良好となる。その結果、白紙部光沢性、インク吸収性が良好となるので好ましい。
本発明に用いられる擬ベーマイトアルミナ分散液の固形分濃度はAl換算で10〜35質量%が好ましく、20〜30質量%がより好ましい。
本発明における擬ベーマイトアルミナは表面がカチオン性を有していることが好ましい。これにより、インクに使用されている染料等の着色剤の定着効果が大きくなり、カチオン性ポリマー等の媒染剤の添加量を減らしたり抜くことが可能となる。
また、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、本発明のインク受容層における擬ベーマイトアルミナの含有量としては、擬ベーマイトアルミナを含むインク受容層(例えば、最上層)中の全固形分に対し、40〜90質量%が好ましく、50〜80質量%がより好ましい。
(無機微粒子)
本発明におけるインク受容層(少なくとも下層、必要に応じ最上層やその他の層)は、無機微粒子を少なくとも1種含有する。
上記無機微粒子としては、例えば、微粒子シリカ、コロイダルシリカ、二酸化チタン、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、ゼオライト、カオリナイト、ハロイサイト、雲母、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸カルシウム、ベーマイトアルミナ、擬ベーマイトアルミナ等を挙げることができる。
中でも、下層の無機微粒子としては、擬ベーマイトアルミナ又は微粒子シリカが好ましい。擬ベーマイトアルミナについては、上述した通りであり好ましい範囲も同様である。
上記微粒子シリカは、比表面積が特に大きいので、インクの吸収性及び保持の効率が高く、また屈折率が低いので、適切な微小粒子径まで分散を行なえばインク受容層に透明性を付与でき、高い色濃度と良好な発色性が得られるという利点がある。この様に受容層が透明であるということは、OHP等透明性が必要とされる用途のみならず、フォト光沢紙等の記録用シートに適用する場合でも、高い色濃度と良好な発色性及び光沢度を得る観点より重要である。
前記微粒子シリカとしては、合成シリカを好適に用いることができる。
前記合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式シリカに大別することができる。
気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。
前記気相法シリカは、平均一次粒子径が5〜50nmのものが好ましい。より高い光沢を得るためには、5〜20nmでかつBET法による比表面積が90〜400m2/gの気相法シリカが好ましい。本発明でいうBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
上記のようにして気相法シリカは、数nm〜数十nmの一次粒子が網目構造あるいは鎖状につながりあって二次的に凝集した状態で存在することができる。この凝集粒子の平均粒径が500nm以下になるまで分散されることが好ましく、300nm以下になるまで分散されることがより好ましい。下限の粒子径は50nm程度である。ここで、凝集粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、堀場製作所製、LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
湿式法シリカは、製造方法によって更に沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造される。製造過程で粒子成長したシリカ粒子は、凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば東ソーシリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。
ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学工業(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販されている。
ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる。例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
前記湿式法シリカとしては、沈降法シリカあるいはゲル法シリカが好ましい。これらの湿式法シリカの平均粒径(平均二次粒子径)は、通常1μm以上である。これらの湿式法シリカは、平均粒径が500nm以下になるまで粉砕されることが好ましく、平均粒径が300nm以下になるまで粉砕されることがより好ましい。下限の粒子径は50nm程度である。粉砕された湿式法シリカの粒子径は、前述したように透過型電子顕微鏡あるいはレーザー散乱式の粒度分布計で求めることができる。
前記湿式法シリカの粉砕工程は、分散媒に微粒子シリカを添加し混合(予備分散)する一次分散工程と、該一次分散工程で得られた粗分散液中のシリカを粉砕する二次分散工程と、を含むことが好ましい。一次分散工程における予備分散は、通常のプロペラ撹拌、歯状ブレード型分散機、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌、超音波撹拌等で行うことができる。湿式法シリカの粉砕方法としては、分散媒中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルが好ましく用いられる。
前記湿式法シリカは、平均粒子径(平均二次粒子径)が5μm以上のものが好ましい。比較的大きな粒子径のシリカを粉砕することによって、より高濃度での分散が可能となる。本発明に用いられる湿式法シリカの平均粒子径の上限は特に制限されないが、通常湿式法シリカの平均粒子径は200μm以下である。
前記湿式法シリカとしては、沈降法シリカが好ましい。前述したように、沈降法シリカは、その二次粒子が緩やかな凝集粒子であるので、粉砕するのに好適である。
本発明において、微粒子シリカはカチオン性化合物を添加してカチオン化することが好ましい。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物、あるいはシランカップリング剤が用いられる。これらのカチオン化合物の中でも特にカチオン性ポリマーおよび水溶性多価金属化合物が好ましく、特にカチオン性ポリマーが好ましい。
本発明に用いられるカチオン性ポリマーとしては、4級アンモニウム基、ホスホニウム基、あるいは1〜3級アミンの酸付加物を有する水溶性カチオン性ポリマーが挙げられる。例えば、ポリエチレンイミン、ポリジアルキルジアリルアミン、ポリアリルアミン、アリキルアミンエピクロルヒドリン重縮合物、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号、WO99/64248号公報等に記載されたカチオン性ポリマーが挙げられる。本発明に用いられるカチオン性ポリマーの重量平均分子量は10万以下が好ましく、より好ましくは5万以下であり、特に好ましくは2千〜3万程度である。
本発明において、カチオン性ポリマーの使用量は微粒子シリカに対して1〜10質重%の範囲が好ましい。
また、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、本発明のインク受容層における無機微粒子の含有量としては、無機微粒子を含むインク受容層(例えば、下層)中の全固形分に対し、0.5〜10質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましい。
(バインダー)
本発明におけるインク受容層(少なくとも最上層および下層、必要に応じその他の層)は、バインダーを少なくとも1種含有する。
前記バインダーとしては、公知の各種バインダーを用いることができるが、透明性が高くインクのより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変性ポリビニルアルコールである。
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度200〜5000のものが好ましい。
また、カチオン変性ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基をポリビニルアルコールの主鎖あるいは側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
また、本発明による効果をより効果的に得る観点からは、本発明のインク受容層におけるバインダーの含有量としては、バインダーを含むインク受容層(例えば、最上層または下層)中の全固形分に対し、5〜30質量%が好ましく、7〜20質量%がより好ましい。
(水溶性高沸点溶剤)
本発明におけるインク受容層(少なくとも最上層、必要に応じ、下層やその他の層)は、水溶性高沸点溶剤を少なくとも1種含有する。
水溶性高沸点溶剤を含有することにより、ブロンジングが抑制される。また、記録媒体のカールも抑制される。
ここで、「高沸点」とは、常圧下において120℃以上である沸点を指す。
また、「水溶性」とは、常温常圧下で水に1質量%以上溶解する性質を指す。
前記水溶性高沸点溶剤の常圧下における沸点は、150℃以上がより好ましく、180℃以上が特に好ましい。
上記水溶性高沸点溶剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEGMHE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)、グリセリンモノメチルエーテル、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,4−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、トリエタノールアミン、ポリエチレングリコール(重量平均分子量が400以下)等のアルコール類が挙げられる。
本発明における水溶性高沸点溶剤としては、ブロンジング抑制の観点からは、エーテル系高沸点溶剤が好ましく、中でも、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(DEGMHE)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(TEGMBE)がより好ましい。
上記水溶性高沸点溶剤のインク受容層形成用塗布液(例えば、後述の塗布液B)中における含有量としては、0.05〜1質量%が好ましく、特に好ましくは0.1〜0.6質量%である。
(カチオン性ポリウレタン)
本発明におけるインク受容層(少なくとも下層、必要に応じその他の層)は、カチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有する。
前記カチオン性ポリウレタンは、カチオン性基を含有するポリウレタンを指す。
前記カチオン性ポリウレタンとしては、例えば、以下に挙げるジオール化合物とジイソシアネート化合物とを種々組み合わせて、重付加反応により合成されたポリウレタンが挙げられる。
上記ジオール化合物の具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,4−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ペンタンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオール、1,8−オクタンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ハイドロキノン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール(平均分子量=200,300,400,600,1000,1500,4000)、ポリプロピレングリコール(平均分子量=200,400,1000)、ポリエステルポリオール、4,4'―ジヒドロキシ−ジフェニル−2,2−プロパン、4,4'―ジヒドロキシフェニルスルホン等が挙げられる。
上記ジイソシアネート化合物としては、メチレンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート,1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、2,4−トルエンジイソシアネート、2,6−トルエンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート,m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、3,3−ジメチル−4,4'―ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3'−ジメチルビフェニレンジイソシアネート、4,4'−ビフェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)等が挙げられる。
本発明におけるカチオン性ポリウレタンが含有するカチオン性基としては、1級〜3級アミン、4級アンモニウム塩の如きカチオン性基が挙げられる。
本発明におけるカチオン性ポリウレタンとしては、3級アミン及び4級アンモニウム塩の如きカチオン性基を有するカチオン性ポリウレタンが好ましい。
カチオン性ポリウレタンは、例えば、ポリウレタンの合成の際、前記のごときジオールにカチオン性基を導入したものを使用することによって得られる。また4級アンモニウム塩の場合は、三級アミノ基を含有するポリウレタンを四級化剤で四級化してもよい。
上記ポリウレタンの合成に使用可能なジオール化合物、ジイソシアネート化合物は、各々1種を単独で使用していもよいし、種々の目的(例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整や溶解性の向上、バインダーとの相溶性付与、分散物の安定性改善等)に応じて、各々2種以上を任意の割合で使用することもできる。
前記カチオン性ポリウレタンの分散液の市販品としては、例えば、第一工業製薬(株)製の「スーパーフレックス650」「スーパーフレックス650−5」「F−8564D」「F−8570D」、日華化学(株)製「ネオフィックスIJ−150」などを挙げることができる。
上記カチオン性ポリウレタンにおけるカチオン性基の含有量は、0.1〜5mmol/gが好ましく、0.2〜3mmol/gがより好ましい。上記カチオン性基の含有量が0.1mmol/g以上であると、ポリマーの分散安定性をより向上させることができ、5mmol/g以下であると、バインダーとの相溶性をより向上させることができる。
上記カチオン性ポリウレタンをインク受容層に用いる場合のガラス転移温度には特に限定はないが、以下の範囲であることが好ましい。
インクジェット記録により画像を形成した後の、画像の経時にじみを長期に亙り抑制するために、また、寸度安定性(カール)をより向上させるために、上記カチオン性ポリウレタンのガラス転移温度は、50℃未満であることが好ましい。更に、該カチオン性ポリウレタンのガラス転移温度は、30℃以下であることがより好ましく、15℃以下であることが特に好ましい。
尚、該ガラス転移温度の下限には特に制限はないが、水分散物を調製する際の製造適性の観点からは、通常の用途では−30℃程度である。
上記カチオン性ポリウレタンの質量平均分子量(Mw)としては、通常1000〜200000が好ましく、2000〜50000がより好ましい。該分子量が1000以上であると、より安定な水分散物を得ることができる。また、該分子量が200000以下であると、溶解性をより向上させることができ、液粘度をより低下させることができ、水分散物の平均粒子径をより小さくする(例えば、0.05μm以下に制御する)ことができる。
本発明のインク受容層がカチオン性ポリウレタンを含む場合、該カチオン性ポリウレタンの含有量としては、カチオン性ポリウレタンを含むインク受容層(例えば、下層)の全固形分に対し、0.1〜30質量%が好ましく、0.3〜20質量%がより好ましく、特に0.5〜15質量%が最も好ましい。該含有量が0.1質量%以上であると、経時にじみの改善効果をより効果的に得ることができ、一方、該含有量が30質量%以下であると、微粒子及びバインダー成分の割合が多くなり、インク吸収性をより向上させることができる。
次に、上記カチオン性ポリウレタンの水分散物の調製方法につき説明する。
上記カチオン性ポリウレタンを水系溶媒と混合して、必要に応じて添加剤を混合し、該混合液を分散機を用いて細粒化することで、平均粒子径0.05μm以下の水分散液を得ることができる。該水分散液を得るために用いる分散機としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミル、ビーズミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することができるが、形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行うという観点から、媒体撹拌型分散機、コロイドミル分散機又は高圧分散機が好ましい。
高圧分散機(ホモジナイザー)は、米国特許第4533254号明細書、特開平6−47264号公報等に詳細な機構が記載されているが、市販の装置としては、ゴーリンホモジナイザー(A.P.V GAULIN INC.)、マイクロフルイダイザー(MICROFLUIDEX INC.)、アルティマイザー(株式会社スギノマシン)等が使用できる。また、近年になって、米国特許第5720551号明細書に記載されているような、超高圧ジェット流内で微粒子化する機構を備えた高圧ホモジナイザーは、本発明の乳化分散に特に有効である。この超高圧ジェット流を用いた乳化装置の例として、DeBEE2000(BEE INTERNATIONAL LTD.)が挙げられる。
上記の分散工程における水系溶媒として水、有機溶媒、又はこれらの混合溶媒を用いることができる。この分散に用いることができる有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、メトキシプロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、酢酸エチル、トルエン等が挙げられる。
上記カチオン性ポリウレタンは、それ自身で自然に安定した乳化分散物となり得るが、該乳化分散をより速やかにもしくはより安定化する為に、少量の分散化剤(界面活性剤)を用いてもよい。この様な目的に用いる界面活性剤としては、例えば、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤や、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー等のノニオン系界面活性剤が好ましい。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好ましく用いられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型の両性界面活性剤等も好ましい。更に、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)記載の界面活性剤として挙げたものも使用することができる。
乳化直後の安定化を図る目的で、前記界面活性剤と併用して水溶性ポリマーを添加することもできる。水溶性ポリマーとしては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドやこれらの共重合体が好ましく用いられる。また多糖類、カゼイン、ゼラチン等の天然水溶性ポリマーを用いるのも好ましい。
上記乳化分散法により、上記カチオン性ポリウレタンを水系媒体に分散させる場合、粒子サイズをコントロールすることが好ましい。即ち、インクジェットにより画像を形成した際の、色純度や色濃度を高める為には、上記水分散物における自己乳化性高分子の平均粒子径を小さくすることが好ましい。具体的には、本発明のインク受容層には、上記カチオン性ポリウレタンの体積平均粒子径は、0.05μm以下であることが好ましく、該平均粒子径は0.04μm以下であることがより好ましく、0.03μm以下であることが特に好ましい。
(カチオン変性自己乳化性高分子の水分散物)
本発明におけるインク受容層は、上記カチオン性ポリウレタンとともに、上記カチオン性ポリウレタン以外のカチオン変性された自己乳化性高分子(カチオン変性自己乳化性高分子)を用いることもできる。
この「カチオン変性自己乳化性高分子」とは、乳化剤もしくは界面活性剤を用いることなく、或いは用いるとしてもごく少量の添加で、水系分散媒体中に自然に安定した乳化分散物となり得る高分子化合物を意味する。定量的には、上記「カチオン変性された自己乳化性高分子」とは、室温25℃で水系分散媒体に対して0.5質量%以上の濃度で安定して乳化分散性を有する高分子物質を表し、該濃度としては1質量%以上であることが好ましく、特に3質量%以上であることがより好ましい。
上記「カチオン変性自己乳化性高分子」は、より具体的には、例えば、1〜3級アミノ基、4級アンモニウム基等のカチオン性の基を有する重付加系もしくは重縮合系高分子化合物が挙げられる。
上記高分子として有効なビニル重合系ポリマーは、例えば、以下のビニルモノマーを重合して得られるポリマーが挙げられる。即ち、アクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類(エステル基は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基であり、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、tert−オクチル基、2−クロロエチル基、シアノエチル基、2−アセトキシエチル基、テトラヒドロフルフリル基、5−ヒドロキシペンチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、3−メトキシブチル基、2−(2−メトキシエトキシ)エチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,2,2,2−テトラフルオロエチル基、1H,1H,2H,2H−パーフルオロデシル基、フェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,4,5,6−テトラメチルフェニル基、4−クロロフェニル基等);
ビニルエステル類、具体的には、置換基を有していてもよい脂肪族カルボン酸ビニルエステル(例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート等)、置換基を有していてもよい芳香族カルボン酸ビニルエステル(例えば、安息香酸ビニル、4−メチル安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル等);
アクリルアミド類、具体的には、アクリルアミド、N−モノ置換アクリルアミド、N−ジ置換アクリルアミド(置換基は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、シリル基であり、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、フェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,4,5,6−テトラメチルフェニル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリル等);
メタクリルアミド類、具体的には、メタクリルアミド、N−モノ置換メタクリルアミド、N−ジ置換メタクリルアミド(置換基は置換基を有していてもよいアルキル基、アリール基、シリル基であり、例えば、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、tert−ブチル基、tert−オクチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、ヒドロキシメチル基、アルコキシメチル基、フェニル基、2,4,5−トリメチルフェニル基、2,3,4,5−テトラメチルフェニル基、2,4,5,6−テトラメチルフェニル基、4−クロロフェニル基、トリメチルシリル等);
オレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、1−ペンテン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン等)、スチレン類(例えば、スチレン、メチルスチレン、イソプロピルスチレン、メトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロルスチレン等)、ビニルエーテル類(例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル等);等が挙げられる。
その他のビニルモノマーとして、クロトン酸エステル、イタコン酸エステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトン、メトキシエチルビニルケトン、N−ビニルオキサゾリドン、N−ビニルピロリドン、メチレンマロンニトリル、ジフェニル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジフェニル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ジブチル−2−アクリロイルオキシエチルホスフェート、ジオクチル−2−メタクリロイルオキシエチルホスフェート等が挙げられる。
上記カチオン性基を有するモノマーとしては、例えば、ジアルキルアミノエチルメタクリレート、ジアルキルアミノエチルアクリレート等の3級アミノ基を有するモノマー等が挙げられる。
上記カチオン変性自己乳化性高分子としては、例えば、カチオン性基含有ポリエステルが挙げられる。
カチオン性基含有ポリエステルとしては、例えば、以下に挙げるジオール化合物と、ジカルボン酸化合物とを種々組み合わせて、重縮合反応により合成されたポリエステルが挙げられる。
上記ジカルボン酸化合物としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、ジメチルマロン酸、アジピン酸、ピメリン酸、α,α―ジメチルコハク酸、アセトンジカルボン酸、セバシン酸、1,9−ノナンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、2−ブチルテレフタル酸、テトラクロロテレフタル酸、アセチレンジカルボン酸、ポリ(エチレンテレフタレート)ジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ω―ポリ(エチレンオキシド)ジカルボン酸、p−キシリレンジカルボン酸等が挙げられる。
上記ジカルボン酸化合物は、ジオール化合物と重縮合反応を行う際には、ジカルボン酸のアルキルエステル(例えば、ジメチルエステル)およびジカルボン酸の酸塩化物の形態で用いてもよいし、無水マレイン酸、無水コハク酸及び無水フタル酸のように酸無水物の形態で用いてもよい。
上記ジオール化合物としては、上記ポリウレタンにおいて例示したジオール類と同様の化合物を用いることができる。
カチオン性基含有ポリエステルは、一級、二級、三級アミン、四級アンモニウム塩の如きカチオン性基を有するジカルボン酸化合物を用いて合成することにより得られる。
上記ポリエステルの合成に使用されるジオール化合物、ジカルボン酸類、およびヒドロキシカルボン酸エステル化合物は、各々1種を単独で用いてもよいし、種々の目的(例えば、ポリマーのガラス転移温度(Tg)の調整や溶解性、染料との相溶性、分散物の安定性)に応じて、各々2種以上を任意の割合で混合して用いることもできる。
(ジルコニウム塩)
本発明におけるジルコニウム塩としては、酢酸ジルコニウム、オキシ酢酸ジルコニウム(酢酸ジルコニル)、塩化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、乳酸ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム化合物等が挙げられる。
これらのものは、第一稀元素化学工業(株)からジルコゾールZA−20、同ZA−30、同ZC−2等として市販されている。また、日本軽金属(株)等からも市販されている。
ジルコニウム塩は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明におけるインク受容層がジルコニウム塩を含む場合、該ジルコニウム塩の含有量としては、ジルコニウム塩を含むインク受容層(例えば、下層)中の無機微粒子に対し、1質量%以上30質量%未満の割合で添加するのが好ましく、2〜25質量%がより好ましい。
(スルホ基を有する有機化合物)
本発明におけるインク受容層のうち少なくとも1層(好ましくは最上層)は、耐オゾン性をより向上させる観点からは、スルホ基を有する有機化合物を含有することが好ましい。
前記スルホ基を有する有機化合物としては特に限定はないが、可視域の光学吸収が小さい化合物が好ましい。また、該有機化合物又はその塩(スルホン酸塩)は、水に対し0.1質量%以上溶解することが好ましい。
前記スルホ基を有する有機化合物の具体例としては、メタンスルホン酸、ヒドロキシメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、2−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ペンタンスルホン酸、1−へキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、ビニルスルホン酸、2−メチル−2−プロペンスルホン酸、アミノメタンスルホン酸、タウリン、3−アミノ−1−プロパンスルホン酸、スルホ酢酸、ベンゼンスルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、4−クロロベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、スチレンスルホン酸、ヒドロキシベンゼンスルホン酸が挙げられる。中でも、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、が特に好ましい。
前記スルホ基を有する有機化合物の使用量としては、耐オゾン性をより効果的に向上させる観点からは、0.01g/m〜1.0g/mが好ましく、0.02〜0.8g/mがより好ましく、0.03〜0.6g/mが特に好ましい。
上記同様の観点より、前記スルホ基を有する有機化合物の含有量としては、インク受容層全層の全固形分に対し、0.004〜0.45質量%が好ましく、0.008〜0.36質量%がより好ましく、0.012〜0.27質量%が特に好ましい。
また、本発明におけるインク受容層(即ち、擬ベーマイトアルミナを多孔質形成の顔料として用いたインク受容層)に前記スルホ基を有する有機化合物を含有させた場合、耐オゾン性を向上させるだけでなく、湿熱にじみ抑制や印画濃度向上にも効果が大きいことがわかった。
湿熱にじみ抑制、耐オゾン性向上、及び印画濃度向上のバランスの観点からは、前記スルホ基を有する有機化合物の中でも、ナフタレン環を有する有機化合物(以下、「スルホ基及びナフタレン環を有する有機化合物」ともいう)がより好ましい。
前記「スルホ基及びナフタレン環を有する有機化合物」としては、具体的には、2−ナフタレンスルホン酸、1,5−ナフタレンジスルホン酸、が特に好ましい。
前記「スルホ基及びナフタレン環を有する有機化合物」の使用量としては、0.05g/m〜0.5g/mが好ましく、0.1〜0.2g/mがより好ましい。0.05g/m以上であると、湿熱にじみ抑制、耐オゾン性向上、及び印画濃度向上の効果をより効果的に奏することができ、0.5g/m以下であると印画濃度をより向上させることができる。
上記同様の観点より、前記「スルホ基及びナフタレン環を有する有機化合物」の含有量としては、インク受容層全層の全固形分に対し、0.02〜0.25質量%が好ましく、0.04〜0.10質量%がより好ましい。
(水溶性多価金属化合物)
本発明のインク受容層では、上記ジルコニウム塩以外の水溶性多価金属化合物を含有してもよい。
前記水溶性多価金属化合物は、上記擬ベーマイトアルミナや上記無機微粒子を水に分散させる際に含有させることが好ましい。
ここで、水溶性多価金属化合物とは、20℃の水に1質量%以上溶解する2価以上の金属の化合物をいう。
前記水溶性多価金属化合物としては、例えば、アルミニウム、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、鉄、亜鉛、クロム、マグネシウム、タングステン及びモリブデンから選ばれる1種又は2種以上の金属の水溶性塩が挙げられる。具体的には例えば、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、塩基性チオグリコール酸アルミニウム、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酪酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、シュウ酸バリウム、ナフトレゾルシンカルボン酸バリウム、酪酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガンニ水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)ニ水和物、硫酸銅、酪酸銅(II)、シュウ酸銅、フタル酸銅、クエン酸銅、グルコン酸銅、ナフテン銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト(II)、ナフテン酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、スルファミン酸ニッケル、2−エチルヘキサン酸ニッケル、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、クエン酸鉄(III)、乳酸鉄(III)三水和物、三シュウ酸三アンモニウム鉄(III)三水和物、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸亜鉛、乳酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化酸化ジルコニウム八水和物、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、酢酸クロム、硫酸クロム、酢酸マグネシウム、シュウ酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。これらの水溶性多価金属化合物は2種以上を併用してもよい。
上記の水溶性多価金属化合物の中でも、アルミニウムもしくは周期律表4A族金属(例えば、チタン)からなる化合物が好ましい。特に好ましくは水溶性アルミニウム化合物である。水溶性アルミニウム化合物としては、例えば無機塩としては塩化アルミニウムまたはその水和物、硫酸アルミニウムまたはその水和物、アンモニウムミョウバン等が知られている。さらに、無機系の含アルミニウムカチオンポリマーである塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が知られており、好ましく用いられる。
上記塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物とは、主成分が下記の一般式1、2又は3で示され、例えば[Al(OH)153+、[Al(OH)204+、[Al13(OH)345+、[Al21(OH)603+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al(OH)Cl6−n … 式1
[Al(OH)AlCl … 式2
Al(OH)Cl(3n−m) 0<m<3n … 式3
これらのアルミニウム化合物は、大明化学工業より塩基性塩化アルミニウム(アルファイン83)の名で、多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って上市されており、各種グレードの物が容易に入手できる。
(硬膜剤)
本発明におけるインク受容層(例えば、最上層及び/又は下層)は、前記バインダーとともに硬膜剤(架橋剤)を含有してもよい。
前記硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。
本発明におけるインク受容層が硬膜剤を含有する場合、該硬膜剤の含有量はインク受容層を構成するバインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
(その他の成分)
本発明におけるインク受容層は、シランカップリング剤を含んでいてもよい。
前記シランカップリング剤としては、特開2000−233572号公報に記載されており、それらの中からカチオン性のものを用いることができる。シランカップリング剤の添加量は、無機微粒子に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
本発明においては、インク受容層に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは有機バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
インク受容層には、更に着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。また、本発明のインク受容層(A)の塗布液のpHは、3.3〜6.5の範囲が好ましく、特に3.5〜5.5の範囲が好ましい。本発明のインク受容層(B)の塗布液のpHは、3.3〜6.5の範囲が好ましく、特に4.0〜6.0の範囲が好ましい。
<支持体>
本発明で使用される支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアサテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙と樹脂フィルムを貼り合わせたもの、基紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙等の非吸水性支持体(以下、「耐水性支持体」ともいう)が好ましい。これらの耐水性支持体の厚みは50〜300μm、好ましくは80〜260μmのものが用いられる。
本発明に好ましく用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体(以降、ポリオレフィン樹脂被覆紙と称す)について詳細に説明する。本発明に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、その含水率は特に限定しないが、カール性より好ましくは5.0〜9.0%の範囲であり、より好ましくは6.0〜9.0%の範囲である。ポリオレフィン樹脂被覆紙の含水率は、任意の水分測定法を用いて測定することができる。例えば、赤外線水分計、絶乾重量法、誘電率法、カールフィッシャー法等を用いることができる。
ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この基紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
また、基紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2が好ましい。
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
また、ポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂被覆紙の主な製造方法としては、走行する基紙上にポリオレフィン樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、基紙の両面が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。樹脂被覆層の厚みとしては、5〜50μmが適当である。
本発明に用いられる耐水性支持体のインク受容層が塗設される側には、下引き層を設けるのが好ましい。この下引き層は、インク受容層が塗設される前に、予め耐水性支持体の表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/m2が好ましく、20〜300mg/m2がより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。支持体に下引き層を設けることによって、インク受容層塗布時のひび割れ防止に有効に働き、均一な塗布面が得られる。
≪インクジェット記録媒体の製造方法≫
前述の本発明のインクジェット記録媒体を製造する方法としては特に限定はないが、例えば、下記本発明のインクジェット記録媒体の製造方法が挙げられる。
即ち、本発明のインクジェット記録媒体の製造方法は、支持体上に、少なくとも、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有する塗布液Aと、擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有する塗布液Bと、を該支持体側からみて塗布液A、塗布液Bの順となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含み、前記インク受容層を形成するための塗布液の少なくとも1種に塩基性化合物を含有して構成される。
前記インク受容層の形成の際には、前記塗布液A及び前記塗布液Bのほかにも、必要に応じ、支持体と塗布液Aとの間、塗布液Aと塗布液Bとの間に、他の塗布液を配置して塗布してもよい。
ここで、前記塩基性化合物は、前記インク受容層を形成するための塗布液(前記塗布液A、前記塗布液B、及び必要に応じ用いられる他の塗布液)の少なくとも1種に含まれていればよい。
本発明による効果をより効果的に得る観点からは、塗布液A及び/又は塗布液Bに含まれていることが好ましく、塗布液Bに含まれていることがより好ましい。
前記塗布液Aに含まれる無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩、及び必要に応じて用いられる他の成分については、前述の下層中の成分を用いることができる。
また、前記塗布液Bに含まれる擬ベーマイトアルミナ、バインダー、水溶性高沸点溶剤、及び必要に応じて用いられる他の成分については前述の最上層中の成分を用いることができる。
また、塗布液の少なくとも1種中に含まれる塩基性化合物、及び必要に応じ用いられるその他の成分については、それぞれ前述のインク受容層中の塩基性化合物、その他の成分を用いることができる。
前記製造方法において、塗布液A及び塗布液B(及び、必要に応じて用いられる他の塗布液)を塗布する方法としては、支持体側からみて塗布液A、塗布液Bの順となるような配置となる塗布方法であれば特に限定はない。
例えば、1層ずつ塗布する逐次塗布方法(例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等)であっても、多層同時重層塗布方法(例えば、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター等)であってもよい。または、例えば、特開2005−14593号公報段落番号0016〜0037に記載されている「Wet−On−Wet法」(以下、「WOW法)」であってもよい。
中でも、多層同時重層塗布方法が好ましく用いられる。
(塗布液の調製)
本発明において、インク受容層を形成するための塗布液(例えば、塗布液A、塗布液B、必要に応じ用いられる他の塗布液)を調製する方法としては特に限定はなく、各塗布液に含まれる各成分を混合し、撹拌する公知の方法を用いることができる。
本発明による効果をより効果的に得る観点からは、塗布液の調製においては、まず、無機微粒子分散液(例えば、擬ベーマイトアルミナ分散液、気相法シリカ分散液、等)を調製しておき、その後、調製した微粒子分散液と他の成分とを混合する方法が好ましい。
この際、予め微粒子分散液及び他の成分を同じ温度で保温しておき、保温した状態で混合する形態が好ましい。具体的な塗布液の温度としては、40〜70℃が好ましく、45〜60℃がより好ましい。
(乾燥)
本発明において、インク受容層を形成するための塗布液(例えば、塗布液A、塗布液B)を塗布して形成された塗布膜(インク受容層)は、公知の方法により乾燥させることができる。
乾燥温度としては、支持体の耐熱性にも依存するが、10〜100℃の範囲が好ましく、より好ましくは20〜80℃である。
また、塗布後、インク受容層を充分に乾燥させた後、支持体に悪影響を与えない範囲で熱処理を行なうことにより、インク受容層の細孔容積を大きくできるので、インク吸収性が良好になり、さらにインク受容層の耐水性も向上させることができる。熱処理する温度は、支持体の耐熱性にも依存するが、30〜80℃が好ましく、より好ましくは40〜60℃である。
(スルホ基を有する有機化合物の好ましい付与方法)
本発明におけるインク受容層に前述の「スルホ基を有する有機化合物」を含有する場合、インク受容層に「スルホ基を有する有機化合物」を付与する方法については特に限定はない。但し、「スルホ基を有する有機化合物」は電荷がアニオン性であるため、液安定性の観点より、塗布液A及び塗布液B以外の塗布液に含有して付与されることが好ましい。
例えば、液安定性の観点より、塗布液A及び塗布液Bとは別に、前記スルホ基を有する有機化合物を含むpH8.0以上の塩基性溶液Cを調製し、該塩基性溶液Cを前記塗布液Bの上に、同時重層塗布又はWOW法によって付与する方法が好ましい。
ここで、塩基性溶液CのpH調整は、アンモニア水、炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カルシウム、アミノ基含有化合物(エチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ポリアリルアミン等)等を用いてpH8.0以上に適宜行なうことができる。また、塩基性溶液Cは、必要に応じ、架橋剤、界面活性剤等、その他の成分を含有してもよい。
より具体的な方法として、支持体上に、少なくとも前記塗布液A及び前記塗布液Bを、支持体側からみて該塗布液A、該塗布液Bの順となるように塗布して塗布層を形成し、(1)前記塗布液Bを塗布すると同時、又は、(2)形成された前記塗布層の乾燥途中であって該塗布層が減率乾燥を示す前、のいずれかのときに、前記塩基性溶液Cを前記塗布層に付与してインク受容層を形成する工程を含み(この(2)の方法が、Wet On Wet法(WOW法)である)、インク受容層を形成するための塗布液(例えば、塗布液A、塗布液B、及び塩基性溶液C)の少なくとも1種に塩基性化合物を含有する方法がより好ましい。
この方法でインク受容層を形成することにより、擬ベーマイトアルミナ分散液の凝集や増粘がより効果的に抑制され、非常に光沢感があり、かつ、印画濃度の高いインクジェット記録媒体を形成することができる。
上記方法において、架橋硬化により膜強度をより向上させる観点等からは、更に、塗布液B及び/又は塩基性溶液Cに架橋剤を含有する方法が特に好ましい。
なお、「塗布層が減率乾燥を示す前」とは、通常、インク受容層用塗布液の塗布直後から数分間の過程を指し、この間においては、塗布された塗布層中の溶剤(分散媒体)の含有量が時間に比例して減少する「恒率乾燥」の現象を示す。この「恒率乾燥」を示す時間については、例えば、化学工学便覧(頁707〜712、丸善(株)発行、昭和55年10月25日)に記載されている。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
〔実施例1〕
≪インクジェット記録媒体の作製≫
<上層塗布液の調製>
イオン交換水42.0kg、及び2.5質量%アンモニア水溶液(塩基性化合物の水溶液)0.3kgを、吸引分散機CONTI−TDS(株式会社 ダルトン製)に添加し、最大回転数で攪拌を行いながらカタロイドAP−5(触媒化成工業製 擬ベーマイトアルミナ 1次粒子径 8nm)18.1kgを少しずつ添加していき、擬ベーマイト白色粗分散液を得た。このときの分散時間は35分間であった。
この擬ベーマイト白色粗分散液を高圧分散機(スギノマシン社製 アルティマイザーHJP25005)にて微分散を行い、固形分濃度30質量%の透明な擬ベーマイト分散液を得た。このときの圧力は100MPa、吐出量は600g/minであった。
このときの擬ベーマイト透明分散液の粒子径は0.050μmであった。
上記で得られた擬ベーマイトアルミナ分散液585g、イオン交換水186.5g、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチセノール20P 協和発酵ケミカル社製;水溶性高沸点溶剤)10.8g、けんか度88%で重合度3500のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製PVA235)240.7g、及び10%界面活性剤水溶液(日光ケミカル製 スワノールAM2150)1.0gを、それぞれの液を50℃に保温後混合し、擬ベーマイト塗布液(上層塗布液;塗布液B)を得た。
<下層塗布液の調製>
イオン交換水42.3kgを吸引分散機CONTI−TDS(株式会社 ダルトン製)に添加し、最大回転数で攪拌を行いながらカタロイドAP−5(触媒化成工業製 擬ベーマイトアルミナ 1次粒子径 8nm)20.2kgを少しずつ添加していき、擬ベーマイト白色粗分散液を得た。このときの分散時間は35分間であった。
この擬ベーマイト白色粗分散液を高圧分散機(スギノマシン社製 アルティマイザーHJP25005)にて微分散を行い、固形分濃度30質量%の透明な擬ベーマイト分散液を得た。このときの圧力は100MPa,吐出量は600g/minであった。
このときの擬ベーマイト透明分散液の粒子径は0.050μmであった。
上記で得られた擬ベーマイトアルミナ分散液585g、イオン交換水183.8g、酢酸ジルコニウム水溶液(ジルコゾールZA−30 第一稀元素化学工業製)4.5g、カチオン性ポリウレタン分散液(スーパーフレックス650−5 第一工業製薬社製)9g、けんか度88%で重合度3500のポリビニルアルコール(株式会社クラレ製PVA235)240.7g、及び10%界面活性剤水溶液(日光ケミカル製 スワノールAM2150)1.0gを、それぞれの液を50℃に保温後混合し擬ベーマイト塗布液(下層塗布液;塗布液A)を得た。
<支持体の作製>
広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)と針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)の1:1混合物をカナディアン スタンダード フリーネスで300mlになるまで叩解し、パルプスラリーを調製した。これにサイズ剤としてアルキルケテンダイマーを対パルプ0.5重量%、強度剤としてポリアクリルアミドを対パルプ1.0重量%、カチオン化澱粉を対パルプ2.0重量%、ポリアミドエピクロロヒドリン樹脂を対パルプ0.5重量%添加し、水で希釈して1%スラリーとした。このスラリーを長網抄紙機で坪量170g/mになるように抄造し、乾燥調湿してポリオレフィン樹脂被覆紙の原紙とした。
抄造した原紙の一方の面に、密度0.918g/cmの低密度ポリエチレン100重量%の樹脂に対して、10重量%のアナターゼ型チタンを均一に分散したポリエチレン樹脂組成物を320℃で溶融し、200m/分で厚さ35μmになるように押出コーティングし、微粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した(以下、この面を「オモテ面」ともいう)。
もう一方の面には密度0.962g/cmの高密度ポリエチレン樹脂70重量部と密度0.918の低密度ポリエチレン樹脂30重量部のブレンド樹脂組成物を同様に320℃で溶融し、厚さ30μmになるように押出コーティングし、粗面加工されたクーリングロールを用いて押出被覆した(以下、この面を「ウラ面」ともいう)。
以上により、原紙の両面が樹脂被覆されたポリオレフィン樹脂被覆紙を得た。
上記ポリオレフィン樹脂被覆紙のオモテ面に高周波コロナ放電処理を施した後、下記組成の下引き層をゼラチンが50mg/mとなるように塗布乾燥して支持体を作製した。
〜下引き層の組成〜
・石灰処理ゼラチン … 100部
・スルフォコハク酸−2−エチルヘキシルエステル塩 … 2部
・クロム明ばん … 10部
<インク受容層の形成>
上記で得られた上層塗布液、下層塗布液のそれぞれを50℃に保温して、上層塗布液に、保温した7.5%ホウ酸水溶液188gをインライン添加した後、上層塗布液及び下層塗布液を、上記支持体の下引き層上に、該下引き層側から下層塗布液、上層塗布液となる順でスライドビード塗布装置で同時重層塗布した。次に、この同時重層塗布によって得られた塗布層を、膜面温度が20℃になるように2分間セット乾燥し、その後、80℃で10分間乾燥してインク受容層を得た。このとき、上層塗布液の擬ベーマイトアルミナの塗布量及び下層塗布液の無機微粒子(擬ベーマイトアルミナ)の塗布量は、それぞれ19g/mとした。
以上により、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体を得た。
≪評価≫
以上で得られたインクジェット記録媒体について、以下の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
<ブロンジング>
市販のインクジェットプリンター(セイコーエプソン社 PM−A820)にてシアン100%ベタ部を印字してブロンジング発生の有無を確認し、下記評価基準に従ってブロンジングを評価した。
〜評価基準〜
◎;写りこんだ蛍光灯が全く赤くならず、白さを保っている。
○;写りこんだ蛍光灯がわずかに赤くなる
△;写りこんだ蛍光灯が赤くなる
×;写りこんだ蛍光灯がすべて赤くなる
<印画濃度>
セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−A820を使用して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックベタ印刷を行った。
シアン(C)、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)のベタ印字部の画像濃度をグレタグ スペクトロリノSPM−50を用いて、視野角2°、光源D50、フィルターなしの条件で計測した。
更に、ブラック(K)の濃度については、インクジェットプリンターを、キャノン社製インクジェットプリンターPIXUS MP950、ヒューレットパッカード社製インクジェットプリンターC5175、にそれぞれ変えて上記と同様にして計測を行った。
<湿熱にじみ>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製、PIXUS850i)にてレッド、グリーン、ブルー、コンポジットブラックの各細線を印字後、30℃80%の環境下に保管したサンプルを1週間後に目視にて観察し、下記評価基準に従って湿熱にじみを評価した。
更に、インクジェットプリンターをセイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−970C、セイコーエプソン社製インクジェットプリンターPM−A820に変えて上記と同様にして湿熱にじみを評価した。
〜評価基準〜
◎:滲みがない
○:僅かに滲みが認められる
△:滲みが認められる
×:著しく滲んでいる
<耐オゾン性>
市販のインクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製、C5175)にてブラックを最大濃度で印画後、23℃50%、オゾン濃度1ppmの環境下に48時間保管した。保管前後の印画濃度からブラックの残存率を算出した。
得られた残存率に基づき、下記評価基準に従って耐オゾン性を評価した。
〜評価基準〜
◎:残存率が80%以上であった
○:残存率が60%〜80%であった
△:残存率が40%〜60%であった
×:残存率が40%未満であった
〔実施例2〕
下層塗布液から酢酸ジルコニウム水溶液(ジルコゾールZA−30 第一稀元素化学工業製)を除いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
〔実施例3〕
下層塗布液からカチオン性ポリウレタン分散液(スーパーフレックス650−5 第一工業製薬社製)を除いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
〔実施例4〕
上層塗布液中の塩基性化合物であるアンモニアを、同質量の酢酸ナトリウムに変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
〔実施例5〕
下層塗布液を下記の下層塗布液2に変更し、上層塗布液の擬ベーマイトアルミナの塗布量及び下層塗布液の無機微粒子(気相法シリカ)の塗布量を、表1に示す塗布量とした以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
<下層塗布液2の調製>
(気相法シリカ分散液の調製)
分散媒の水と変性エタノールとの中にジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマーを添加し、次いで気相法シリカを添加し予備分散して粗分散液を作製した。次にこの粗分散液を高圧ホモジナイザーで2回処理して、シリカ濃度が20質量%の気相法シリカ分散液(組成は以下の通りである)を作製した。気相法シリカの平均粒子径は100nmであった。
〜気相法シリカ分散液の組成〜
・水 … 430部
・変性エタノール … 22部
・カチオン性ポリマー(ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー、第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、平均分子量9000) … 3部
・気相法シリカ(平均一次粒径7nm、BET法による比表面積300m/g)
… 100部
(下層塗布液2の調製)
下記成分を混合し、撹拌して下層塗布液2を調製した。
〜下層塗布液の組成〜
・上記で得られた気相法シリカ分散液 … (気相法シリカの固形分として)100部
・ほう酸 … 3部
・ポリビニルアルコール(ケン化度88%、平均重合度3500) … 22部
・酢酸ジルコニル(第一希元素化学工業社製、ジルコゾールZA−30)
… 3部
・界面活性剤(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM−2150)
… 0.1部
〔実施例6〕
上層塗布液中の水溶性高沸点溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)を、同質量の水溶性高沸点溶剤であるトリエチレングリコールモノブチルエーテルに変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
〔実施例7〕
上層塗布液中の水溶性高沸点溶剤(ジエチレングリコールモノブチルエーテル)を、同質量の水溶性高沸点溶剤であるトリエチレングリコールモノヘキシルエーテルに変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表1に示す。
〔実施例8〕
まず、実施例1と同様にして、上層塗布液及び下層塗布液を調製した。
<インク受容層の形成>
上記で得られた上層塗布液、下層塗布液のそれぞれを50℃に保温して、上層塗布液に、保温した7.5%ホウ酸水溶液188gをインライン添加した後、上層塗布液及び下層塗布液を、上記支持体の下引き層上に、該下引き層側から下層塗布液、上層塗布液となる順でスライドビード塗布装置で同時重層塗布した。次に、この同時重層塗布によって得られた塗布層を膜面温度が20℃になるように2分間セット乾燥し、その後、80℃で塗布層の固形分濃度が40%になるまで乾燥させた。塗布層は、この期間恒率乾燥を示した。
その直後、上記固形分濃度が40%になるまで乾燥した塗布層を、下記組成の塩基性溶液Cに3秒間浸漬し、前記塗布層に前記塩基性溶液Cの13g/mを付与した。その後、この塩基性溶液C付与後の塗布層を、80℃下で10分間乾燥させてインク受容層とした。
なお、同時重層塗布における、上層塗布液の擬ベーマイトアルミナの塗布量及び下層塗布液の無機微粒子(擬ベーマイトアルミナ)の塗布量は、それぞれ19g/mとした。
以上により、支持体上にインク受容層を有するインクジェット記録媒体を得た。
得られたインクジェット記録媒体について、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
〜塩基性溶液Cの組成〜
・ホウ酸 … 0.6部
・炭酸アンモニウム … 5部
・ポリオキシエチレンラウリルエーテル(界面活性剤) … 0.6部
・1,5−ナフタレンジスルホン酸 … 0.75部
・2.5%アンモニア水 … 6部
・イオン交換水 … 85.8部
〔実施例9〕
実施例8において、1,5−ナフタレンジスルホン酸の量を0.75部から1.50部に変更した以外は実施例8と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表2に示す。
〔実施例10〜11〕
実施例1において、インク受容層形成の際、上層塗布液の擬ベーマイトアルミナの塗布量及び下層塗布液の無機微粒子(擬ベーマイトアルミナ)の塗布量を、下記表2に示すように変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表2に示す。
〔比較例1〕
上層塗布液からジエチレングリコールモノブチルエーテルを除いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
〔比較例2〕
上層塗布液から2.5質量%アンモニア水溶液を除いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
〔比較例3〕
下層塗布液から、酢酸ジルコニウム水溶液(ジルコゾールZA−30 第一稀元素化学工業製)及びカチオン性ポリウレタン分散液(スーパーフレックス650−5 第一工業製薬社製)を除いた以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
〔比較例4〕
上層塗布液からジエチレングリコールモノブチルエーテル及び2.5質量%アンモニア水溶液を除き、かつ、下層塗布液を実施例5の下層塗布液2に変更した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。評価結果を下記表3に示す。
〔比較例5〕
実施例1において、インク受容層形成の際、下層塗布液を用いず上層塗布液のみを擬ベーマイトアルミナの塗布量38g/mにて単層塗布した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表3に示す。
〔比較例6〕
実施例1において、インク受容層形成の際、上層塗布液を用いず下層塗布液のみを無機微粒子(擬ベーマイトアルミナ)の塗布量38g/mにて単層塗布した以外は実施例1と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表3に示す。
〔比較例7〕
比較例5において、上層塗布液の成分として、スーパーフレックス650−5を0.25g/mの塗布量となるように添加した以外は比較例5と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表3に示す。
〔比較例8〕
比較例6において、下層塗布液の成分として、DEGMBEを1.2g/mの塗布量となるように添加した以外は比較例6と同様にしてインクジェット記録媒体を作製し、実施例1と同様の評価を行った。
評価結果を下記表3に示す。
Figure 2010000775
Figure 2010000775
Figure 2010000775
− 表1〜表3中の記号の説明 −
・DEGMBE … ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・TEGMBE … トリエチレングリコールモノブチルエーテル
・DEGMHE … ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル
・印画濃度、耐オゾン性欄中の「K(C5175)」、「Y(A820)」等の表記は、「色(プリンタ名)」を表す。
表1〜表3に示すように、上層に擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有し、下層に、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有する実施例1〜実施例11のインクジェット記録媒体は、印画濃度に優れ、ブロンジング及びにじみが抑制されていた。中でも、上層にスルホ基を有する有機化合物を含有する実施例8及び実施例9は、色濃度が特に高く、にじみが特に抑制され、かつ、耐オゾン性にも優れていた。また、上層の層比率が高い実施例1〜9では、ブロンジング抑制効果が特に顕著であった。
これに対し、上層に水溶性高沸点溶剤を含有しない比較例1、上層に塩基性化合物を含有しない比較例2、上層に水溶性高沸点溶剤も塩基性化合物も含有しない比較例4では、ブロンジングが悪化した。また、下層にカチオン性ポリウレタンもジルコニウム塩も含有しない比較例3では、にじみが悪化した。また、上層塗布液を単層塗布した比較例5ではにじみが悪化し、下層塗布液を単層塗布した比較例6ではブロンジングが悪化した。また、カチオン性ポリウレタンと水溶性高沸点溶剤とを同層に含有させた比較例7及び8では、塗布乾燥時に収縮が起こり評価不能であった。

Claims (5)

  1. 支持体上に少なくとも2層のインク受容層を有し、
    前記少なくとも2層のインク受容層のうち少なくとも1層が塩基性化合物を含有し、
    前記少なくとも2層のインク受容層のうち、前記支持体から最も離れた最上層が、擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有し、前記最上層と前記支持体との間に設けられた下層が、無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
  2. 前記塩基性化合物は、前記最上層に含まれることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録媒体。
  3. 前記少なくとも2層のインク受容層のうち少なくとも1層が、スルホ基を有する有機化合物を含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のインクジェット記録媒体。
  4. 前記スルホ基を有する有機化合物が、ナフタレン環を有することを特徴とする請求項3に記載のインクジェット記録媒体。
  5. 支持体上に、少なくとも、
    無機微粒子、バインダー、並びにカチオン性ポリウレタン及び/又はジルコニウム塩を含有する塗布液Aと、
    擬ベーマイトアルミナ、バインダー、及び水溶性高沸点溶剤を含有する塗布液Bと、
    を該支持体側からみて塗布液A、塗布液Bの順となるように塗布してインク受容層を形成する工程を含み、
    前記インク受容層を形成するための塗布液の少なくとも1種に塩基性化合物を含有することを特徴とするインクジェット記録媒体の製造方法。
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