インクジェット記録方式に使用される記録材料として、通常の紙やインクジェット記録用紙と称される支持体上に非晶質シリカ等の顔料とポリビニルアルコール等の水溶性バインダーからなる多孔質のインク受容層を設けてなる記録材料が知られている。
例えば、特開昭55−51583号、同56−157号、同57−107879号、同57−107880号、同59−230787号、同62−160277号、同62−184879号、同62−183382号、及び同64−11877号公報等に開示のごとく、シリカ等の含珪素顔料を水系バインダーと共に紙支持体に塗布して得られる記録材料が提案されている。
また、特公平3−56552号、特開平2−188287号、同平10−81064号、同平10−119423号、同平10−175365号、同10−203006号、同10−217601号、同平11−20300号、同平11−20306号、同平11−34481号、同2000−211235号公報等には、気相法による合成シリカ微粒子(以降、気相法シリカと記す)を用いた記録材料が開示されている。
また、特開昭62−174183号、特開平2−276670号、特開平5−32037号、特開平6−199034号公報等にアルミナやアルミナ水和物を用いた記録材料が開示されている。
アルミナ水和物、アルミナ、および気相法シリカは、一次粒子の平均粒径が数十nm以下の超微粒子であり、高い光沢と高いインク吸収性が得られるという特徴があり、銀塩写真並の高画質が要求されるインクジェット記録材料では、インク受容層として用いられ、その支持体として光沢性との風合いの観点から、紙の表面にポリエチレン等の樹脂を被覆した紙支持体(樹脂被覆紙)やポリエステルフィルムなど耐水性支持体が一般的に使用されている。しかしながら、このような耐水性支持体自体は、インクを吸収しないことから、インク受容層にはそのまま高沸点溶媒が残存し、印画後、高温高湿環境下に長時間保存されると、インク受容層中で該溶媒が染料と共に拡散して、画像の滲み(以降、高湿滲みと記す)を生じるという問題があった。
一方、インクジェット記録材料には、インク中の染料成分を固定化する目的でアミノ基やアンモニウム塩を有する化合物、特にこれらを有する高分子化合物を添加することが提案されている。例えば、特開昭60−83882号公報、同64−75281号公報、同59−20696号公報等に記載されるジアリルアンモニウム塩誘導体の(共)重合体、特開2002−274024号公報、特開昭61−61887号公報、同61−72581号公報等に記載されるアリルアミン塩(共)重合体、特開平8−108618号公報(特許文献4)、特開平6−340163号公報、同4−288283号公報、同9−300810号公報、同8−318672号公報、同10−272830号公報、特開昭63−115780号公報等に記載のアンモニウム塩を有する(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド系(共)重合体、ビニルベンジルアンモニウム塩(共)重合体等のビニル(共)重合体など多くの化合物が知られている。
また、特開平10−44588号公報等に記載の変性ポリビニルアルコール(PVA)、特開平6−234268号公報、同11−277888等に記載のアミン・エピクロルヒドリン重付加体、特開平10−119418号公報等に記載のジハライド・ジアミン重付加体、特開平11−58934号公報、同11−28860等に記載のポリアミジン、同12−71603号公報などに記載のアリルアミン塩酸塩、アリルアミン、ジアリルジメチルアンモニウム塩等の重合体など多くの化合物が提案されている。また、特開昭63−280681号公報には、炭素数2〜3のヒドロキシアルキルが置換されたポリアミン類を用いたインクジェット記録材料が示されている。
しかしながら、これらアミノ基やアンモニウム塩を有する高分子化合物を用いた技術では、前述した気相法シリカあるいはアルミナ水和物を用いた高い空隙率を持つインク受容層のインク吸収性や発色性に悪影響を与える場合があり、高湿滲みと同時に十分に満足するまでには至っていなかった。
インク吸収性や耐水性を改良するために、特開2000−309157号公報(特許文献1)にインク受容層がシリカで形成され水溶性アルミニウム化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物を含有するインクジェット記録用紙が開示されているが高湿滲みに対しては不十分であり、また印字部表面に金属光沢のような光沢異常いわゆるブロンジングという現象の発生に対してはまだ不十分である。ブロンジングとはインクの色材がインク受容層表面でインク受容層に均一に定着せず、色材が過度に凝集したため発生したものである。
また、特開2001−96897号、同2001−113819号公報にはジルコニウム等の水溶性金属化合物を含有する気相法シリカをインク受容層とするインクジェット記録材料が開示されている。さらに、特開2001−310548号、同2002−160442号公報にはインク受容層が気相法シリカ等の無機微粒子で重層構成であるインクジェット記録材料が開示されている。これらはインク吸収性や高湿滲みを改良したものではあるが、特に高湿滲みに対する効果はまだ満足の行くレベルではなく、保存する湿度条件の変化によって色味が異なったり、ブロンジングが発生しやすくなる等発色性にも問題があった。
特開2003−237223号公報(特許文献2)にはコロイダルシリカを含有する表面被覆層を設け中間層にアルミナあるいはアルミナ水和物を主体とするインク受容層、支持体に近い側に気相法シリカを主体とするインク受容層の積層構成からなるインクジェット記録材料が開示されている。この技術では気相法シリカ層に水溶性多価金属化合物を含有しておりインク滲みに対してある程度効果がみられるものの、アルミナあるいはアルミナ水和物を主体とする中間層にもカチオン性化合物である水溶性多価金属化合物を含有する構成であり、高温高湿条件下ではアルミナあるいはアルミナ水和物を主体とする隣接のインク受容層が滲み防止効果に悪影響を及ぼす場合があり、またカチオン性コロイダルシリカを用いた表面被覆層自体も発色性は優れるものの高湿滲みを満足するレベルにはなく改善が望まれている。
また、特開2002−192830号公報(特許文献3)にインク受容層が2層以上の積層構成で支持体から最も離れたインク受容層にカチオン性ポリマーを含有することを特徴とするインクジェット記録用紙が開示されているが、開示されている技術では含有するカチオンポリマーの影響でインク吸収や発色性を低下を引き起こしやすいという欠点がある。
特開2000−309157号公報(第2〜4頁)
特開2003−237223号公報(第2〜4頁)
特開2002−192830号公報(第2〜4頁)
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明のインク受容層(A)に用いられる微粒子シリカとして合成シリカである気相法シリカ、湿式法シリカの少なくとも1種が使用される。
本発明において、インク受容層(A)に用いられる微粒子シリカの量は、10〜45g/m2が好ましく、13〜40g/m2の範囲がより好ましい。含有量が上記範囲より多くなるとひび割れが生じやすくなり、また少なくなるとインク吸収性が低くなる。
本発明に用いられる合成シリカは、製造法によって気相法シリカ、湿式シリカに大別することができる。
気相法シリカは、乾式法とも呼ばれ、一般的には火炎加水分解法によって製造される。具体的には四塩化ケイ素を水素及び酸素と共に燃焼して作る方法が一般的に知られているが、四塩化ケイ素の代わりにメチルトリクロロシランやトリクロロシラン等のシラン類も、単独または四塩化ケイ素と混合した状態で使用することができる。気相法シリカは、日本アエロジル(株)からアエロジル、(株)トクヤマからQSタイプとして市販されており入手することができる。
本発明に用いられる気相法シリカは、平均一次粒子径が5〜50nmのものが好ましい。より高い光沢を得るためには、5〜20nmでかつBET法による比表面積が90〜400m2/gの気相法シリカが好ましい。本発明で云うBET法とは、気相吸着法による粉体の表面積測定法の一つであり、吸着等温線から1gの試料の持つ総表面積、即ち比表面積を求める方法である。通常吸着気体としては、窒素ガスが多く用いられ、吸着量を被吸着気体の圧、または容積の変化から測定する方法が最も多く用いられている。多分子吸着の等温線を表すのに最も著名なものは、Brunauer、Emmett、Tellerの式であってBET式と呼ばれ表面積決定に広く用いられている。BET式に基づいて吸着量を求め、吸着分子1個が表面で占める面積を掛けて、表面積が得られる。
上記のようにして気相法シリカは、数nm〜数十nmの一次粒子が網目構造あるいは鎖状につながりあって二次的に凝集した状態で存在する。この凝集粒子の平均粒径が500nm以下になるまで分散されるのが好ましく、より好ましくは300nm以下になるまで分散される。下限の粒子径は50nm程度である。ここで、凝集粒子の平均粒径は、透過型電子顕微鏡による写真撮影で求めることができるが、簡易的にはレーザー散乱式の粒度分布計(例えば、堀場製作所製、LA910)を用いて、個数メジアン径として測定することができる。
湿式法シリカは、製造方法によって更に沈降法シリカ、ゲル法シリカ、ゾル法シリカに分類される。沈降法シリカは、珪酸ソーダと硫酸をアルカリ条件で反応させて製造される。製造過程で粒子成長したシリカ粒子は、凝集・沈降し、その後濾過、水洗、乾燥、粉砕・分級の工程を経て製品化される。この方法で製造されたシリカの二次粒子は緩やかな凝集粒子となり、比較的粉砕し易い粒子が得られる。沈降法シリカとしては、例えば東ソーシリカ(株)からニップシールとして、(株)トクヤマからトクシール、ファインシールとして市販されている。
ゲル法シリカは、珪酸ソーダと硫酸を酸性条件下で反応させて製造される。この場合、熟成中に小さなシリカ粒子が溶解し、大きな粒子の一次粒子間に一次粒子どうしを結合するように再析出するため、明確な一次粒子は消失し、内部空隙構造を有する比較的硬い凝集粒子を形成する。例えば、水澤化学工業(株)からミズカシルとして、グレースジャパン(株)からサイロジェットとして市販されている。
ゾル法シリカは、コロイダルシリカとも呼ばれ、ケイ酸ソーダの酸などによる複分解やイオン交換樹脂層を通して得られるシリカゾルを加熱熟成して得られる。例えば日産化学工業(株)からスノーテックスとして市販されている。
本発明で用いられる湿式法シリカとしては、沈降法シリカあるいはゲル法シリカである。これらの湿式法シリカの平均粒径(平均二次粒子径)は、通常1μm以上である。本発明は、これらの湿式法シリカを、平均粒径が500nm以下になるまで粉砕する。好ましくは、平均粒径が300nm以下になるまで粉砕する。下限の粒子径は50nm程度である。粉砕された湿式法シリカの粒子径は、前述したように透過型電子顕微鏡あるいはレーザー散乱式の粒度分布計で求めることができる。
湿式法シリカの粉砕工程は、分散媒にシリカ微粒子を添加し混合(予備分散)する一次分散工程と、該一次分散工程で得られた粗分散液中のシリカを粉砕する二次分散工程からなる。一次分散工程における予備分散は、通常のプロペラ撹拌、歯状ブレード型分散機、タービン型撹拌、ホモミキサー型撹拌、超音波撹拌等で行うことができる。湿式法シリカの粉砕方法としては、分散媒中に分散したシリカを機械的に粉砕する湿式分散法が好ましく使用できる。湿式分散機としては、ボールミル、ビーズミル、サンドグラインダー等のメディアミル、高圧ホモジナイザー、超高圧ホモジナイザー等の圧力式分散機、超音波分散機、及び薄膜施回型分散機等を使用することができるが、本発明では特にビーズミル等のメディアミルが好ましく用いられる。
本発明に用いられる湿式法シリカは、平均粒子径(平均二次粒子径)が5μm以上のものが好ましい。比較的大きな粒子径のシリカを粉砕することによって、より高濃度での分散が可能となる。本発明に用いられる湿式法シリカの平均粒子径の上限は特に制限されないが、通常湿式法シリカの平均粒子径は200μm以下である。
本発明のインク受容層(A)に用いられる湿式法シリカとしては、沈降法シリカが好ましい。前述したように、沈降法シリカは、その二次粒子が緩やかな凝集粒子であるので、粉砕するのに好適である。
本発明において、微粒子シリカはカチオン性化合物を添加してカチオン化することが好ましい。カチオン性化合物としては、カチオン性ポリマー、水溶性多価金属化合物、あるいはシランカップリング剤が用いられる。これらのカチオン化合物の中でも特にカチオン性ポリマーおよび水溶性多価金属化合物が好ましく、特にカチオン性ポリマーが好ましい。
本発明に用いられるカチオン性ポリマーとしては、4級アンモニウム基、ホスホニウム基、あるいは1〜3級アミンの酸付加物を有する水溶性カチオン性ポリマーが挙げられる。例えば、ポリエチレンイミン、ポリジアルキルジアリルアミン、ポリアリルアミン、アリキルアミンエピクロルヒドリン重縮合物、特開昭59−20696号、同59−33176号、同59−33177号、同59−155088号、同60−11389号、同60−49990号、同60−83882号、同60−109894号、同62−198493号、同63−49478号、同63−115780号、同63−280681号、特開平1−40371号、同6−234268号、同7−125411号、同10−193776号、WO99/64248号公報等に記載されたカチオン性ポリマーが挙げられる。本発明に用いられるカチオン性ポリマーの重量平均分子量は10万以下が好ましく、より好ましくは5万以下であり、特に好ましくは2千〜3万程度である。
本発明において、カチオン性ポリマーの使用量は微粒子シリカに対して1〜10質重%の範囲が好ましい。
本発明に用いられる水溶性多価金属化合物としては、カルシウム、バリウム、マンガン、銅、コバルト、ニッケル、アルミニウム、鉄、亜鉛、ジルコニウム、チタン、クロム、マグネシウム、タングステン、モリブデンが挙げられ、これらの金属の水溶性塩として用いることができる。具体的には例えば、酢酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、硫酸カルシウム、酢酸バリウム、硫酸バリウム、リン酸バリウム、塩化マンガン、酢酸マンガン、ギ酸マンガン二水和物、硫酸マンガンアンモニウム六水和物、塩化第二銅、塩化アンモニウム銅(II)二水和物、硫酸銅、塩化コバルト、チオシアン酸コバルト、硫酸コバルト、硫酸ニッケル六水和物、塩化ニッケル六水和物、酢酸ニッケル四水和物、硫酸ニッケルアンモニウム六水和物、アミド硫酸ニッケル四水和物、硫酸アルミニウム、亜硫酸アルミニウム、チオ硫酸アルミニウム、ポリ塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム九水和物、塩化アルミニウム六水和物、臭化第一鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、臭化亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛六水和物、硫酸亜鉛、酢酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩基性炭酸ジルコニウム、水酸化ジルコニウム、炭酸ジルコニウム・アンモニウム、炭酸ジルコニウム・カリウム、硫酸ジルコニウム、フッ化ジルコニウム、塩化ジルコニウム、塩化ジルコニウム八水和物、オキシ塩化ジルコニウム、ヒドロキシ塩化ジルコニウム、塩化チタン、硫酸チタン、酢酸クロム、硫酸クロム、硫酸マグネシウム、塩化マグネシウム六水和物、クエン酸マグネシウム九水和物、りんタングステン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウムタングステン、12タングストりん酸n水和物、12タングストけい酸26水和物、塩化モリブデン、12モリブドりん酸n水和物等が挙げられる。これらの中でも特に、アルミニウムあるいは周期表IVa族元素(ジルコニウム、チタン)の水溶性塩が好ましい。本発明において、水溶性とは常温常圧下で水に1質量%以上溶解することを意味する。
上記以外の水溶性アルミニウム化合物として、塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物が好ましく用いられる。この化合物は、主成分が下記の式1、2又は3で示され、例えば[Al6(OH)15]3+、[Al8(OH)20]4+、[Al13(OH)34]5+、[Al21(OH)60]3+、等のような塩基性で高分子の多核縮合イオンを安定に含んでいる水溶性のポリ水酸化アルミニウムである。
[Al2(OH)nCl6-n]m ・・式1
[Al(OH)3]nAlCl3 ・・式2
Aln(OH)mCl(3n-m) 0<m<3n ・・式3
これらのものは多木化学(株)よりポリ塩化アルミニウム(PAC)の名で水処理剤として、浅田化学(株)よりポリ水酸化アルミニウム(Paho)の名で、また、(株)理研グリーンよりピュラケムWTの名で、また他のメーカーからも同様の目的を持って市販されており、各種グレードの物が容易に入手できる。本発明ではこれらの市販品をそのままでも使用できる。これらの塩基性ポリ水酸化アルミニウム化合物は、特公平3−24907、同平3−42591号公報にも記載されている。
上記した水溶性多価金属塩化合物の添加量は、微粒子シリカに対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
本発明に用いられるシランカップリング剤としては、特開2000−233572号公報に記載されており、それらの中からカチオン性のものを用いることができる。シランカップリング剤の添加量は、無機微粒子に対して0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
本発明のインク受容層(B)に使用されるアルミナ水和物は、Al2O3・nH2O(n=1〜3)の構成式で表される。nが1の場合がベーマイト構造のアルミナ水和物を表し、nが1より大きく3未満の場合が擬ベーマイト構造のアルミナ水和物を表す。アルミニウムイソプロボキシド等のアルミニウムアルコキシドの加水分解、アルミニウム塩のアルカリによる中和、アルミン酸塩の加水分解等の公知の製造方法により得られる。得られるアルミナ水和物の形態としてはベーマイトゾルの場合やベーマイトゾルをゲル化やスプレードライにより粉末化されたものがあり、市販品では日産化学工業(株)社、Sasol社、Martinswerk社などから入手可能である。
本発明のアルミナ、及びアルミナ水和物の一次粒子の平均粒径は100nm以下が用いられるが、5〜50nmが好ましく、より好ましくは8〜30nmである。一次粒子の平均粒径とは、分散された粒子の電子顕微鏡観察により一定面積内に存在する100個の粒子各々の投影面積に等しい円の直径を粒子の粒径として求めた。
本発明のアルミナ、及びアルミナ水和物の二次粒子の平均粒径が80〜250nmであることが好ましく、より好ましくは120〜200nmである。上記範囲によりインク吸収性と表面光沢がさらに改良される。本発明の二次粒子の平均粒径とはアルミナ水和物の分散液を固形分濃度を2%以下まで希薄しレーザー回折/散乱式粒度分布測定装置で測定される。二次粒子の粒径はアルミナ水和物のもつ分散性に支配されるが、解膠剤の添加量や固形分濃度によりある程度調整は可能である。
本発明に用いられる上記のアルミナ水和物の分散液を安定化させるためには、ゾルの解膠剤やアルミナ水和物粉末の分散剤として、種々の酸類が添加される。このような酸類として無機酸としては硝酸、塩酸、臭化水素酸等が挙げられ、有機酸としは乳酸、酢酸、蟻酸等が挙げられる。酸の添加量はアルミナ、及びアルミナ水和物のAl2O3換算100gに対して10〜120ミリモルが好ましく、特に20〜80ミリモルがより好ましい。
本発明に用いられるアルミナ水和物分散液の分散には、例えば歯状ブレード型分散機、プロペラ羽根型分散機、高圧ホモジナイザー、超音波分散機およびビーズミル等公知の分散装置が用いられる。また解膠剤の添加はアルミナ水和物微粉末を水に添加する前でも後でもよく、同時に添加してもよい。
本発明に用いられるアルミナ水和物分散液の固形分濃度は一般的にはAl2O3換算で10〜35質量%であるが、20〜30質量%が好ましい。
本発明のインク受容層(A)および(B)は、皮膜としての特性を維持するためと、透明性が高くインクのより高い浸透性を得るために親水性バインダーを用いることが好ましい。親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーがインクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、デキストリン、カルボキシメチルセルロース等やそれらの誘導体が使用されるが、特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールである。インク受容層の親水性バインダーの含有量は好ましくは微粒子シリカやアルミナ水和物の5〜30質量%、特に好ましくは5〜25質量%である。
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのは、ケン化度が80%以上の部分または完全ケン化したものである。平均重合度500〜5000のポリビニルアルコールが好ましい。
本発明のインク受容層(A)にはカチオン性ポリマーと水溶性ジルコニウム化合物が含まれる。カチオン性ポリマーおよび水溶性ジルコニウム化合物は前述した微粒子シリカをカチオン化するために用いたものでも良いし、微粒子シリカのカチオン化とは別に添加しても良い。
本発明のインク受容層(A)に含まれるカチオン性ポリマーとして前述の微粒子シリカをカチオン化に使用されるものと同様のカチオン性ポリマーが使用されるが、より好ましいはものは、下記一般式(1)あるいは(2)を繰り返し単位とするカチオン性ポリマーである。
但し、式中、R1は水素又はメチル基を表し、L1は連結基を表す。R2及びR3は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、水素あるいはアルキル基を表し、HXは酸を表す。詳細にはL1の連結基としてはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アラルキレン基、COO、NHCOO、NHCOOCH2CH2、またはCONHなどの単独もしくは複合からなる連結基が挙げられる。R2及びR3のアルキル基としてはC1〜C4の直鎖もしくは分岐のアルキル基が挙げられる。
一般式(1)で表されるカチオン性ポリマーの具体的な繰り返し単位を以下に示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(1)で表されるカチオン性ポリマーは、上記の繰り返し単位のみからなるホモポリマーであっても、他の共重合可能なモノマーとのコポリマーであってもよい。コポリマーの場合には、上記繰り返し単位はコポリマー100質量部に対して50質量部以上含まれていることが好ましい。
一般式(1)で表されるカチオン性ポリマーとして、より好ましくは、アリルアミン塩酸塩水溶液からラジカル重合により得られるポリアリルアミン塩酸塩が挙げられ、例えば、PAA−HCL(日東紡績(株))として市販されている。
但し、式中、R4は水素又はメチル基を表し、L2は連結基を表す。R5、R6及びR7は同じであっても異なっていてもよく、それぞれ、置換、無置換の、アルキル基、アルケニル基、アラルキル基、アリール基を表し、X-は陰イオンを表す。詳細にはL2の連結基としてはアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基、アラルキレン基、COO、NHCOO、NHCOOCH2CH2、CONHまたはCOOCH2CH(OH)CH2などの単独もしくは複合からなる連結基が挙げられる。R5、R6及びR7のアルキル基あるいはアルケニル基としてはC1〜C4の直鎖もしくは分岐のもの、アリール基としてはフェニル基等、アラルキル基としてはベンジル基等が挙げられる。X-の陰イオンとしてはハロゲンイオン(特に塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン)、硫酸イオン、アルキル硫酸イオン(特にメチル硫酸イオン、エチル硫酸イオン)、アルキルあるいはアリールスルホン酸イオン、酢酸イオンを表す。特に好ましいポリマーは、R5、R6及びR7の少なくとも1つはアラルキル基である。
一般式(2)で表されるカチオン性ポリマーの具体的な繰り返し単位を以下に示すが本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明のインク受容層(A)に含まれる水溶性ジルコニウム化合物として前述の微粒子シリカをカチオン化に使用されるものと同様の水溶性ジルコニウム化合物が使用されるが、より好ましいはものは、酢酸ジルコニウム、酢酸ジルコニルまたはオキシ塩化ジルコニウムである。これらの化合物はpHが不適当に低い物もあり、その場合適宜pHを調節して用いることも可能である。これらの化合物は第一希元素化学工業(株)からジルコゾールZC−2,同ZA−20等、または日本軽金属(株)等から市販されている。
本発明ではインク受容層(A)にカチオン性ポリマーと水溶性ジルコニウム化合物が含まれており、かつインク受容層(B)には実質的にアルミナ水和物以外のカチオン性化合物が含まれない構成でなければならない。この構成により高湿下での染料インクの滲み防止や発色性に優れた、かつブロンジングを発生することなくインク吸収性に優れた効果があることを見いだした。インク受容層(B)に実質的に含まないカチオン性化合物と前述のインク受容層(A)に含まれるカチオン性ポリマーやシリカのカチオン化に用いられる化合物等が挙げられる。本発明における実質的に含まないとは、インク吸収性や発色性に影響を与えない程度であればカチオン性化合物を含んでも良いが、好ましくはカチオン性化合物を含有しないことを意味する。機構について定かではないが、インク受容層(B)で定着しきれなかったインク染料をインク受容層(A)で定着するにあたって、本発明の水溶性ジルコニウム化合物はインク染料の定着に寄与するだけでなく、共存するカチオン性ポリマーを架橋して、染料を定着したカチオンポリマー自体を安定化させて滲み防止に寄与しているものと考えられる。インク受容層(A)のカチオン性化合物として水溶性ジルコニウム化合物だけではこのような効果は得られず、従来技術で滲み防止や耐水性に効果があるとされている水溶性アルミニウム化合物ではカチオン性ポリマーと共存しても期待される効果は得られない。またインク受容層(B)にカチオン性化合物を入れると発色性や染料の定着性に悪影響を与えることが多く、本発明のインク受容層(A)より支持体から離れた所にインク受容層(B)を設けることによって、インク受容層(B)は実質的にカチオン性化合物を含有する必要がなくなった。結果として、従来技術で滲みを防止しようとした場合インク吸収速度の低下あるいは最表層で染料が凝集することで発生するブロンジングを招く傾向にあったが、本発明のインク受容層(A)のアルミナ水和物の効果によりインク吸収性が向上し、カチオン性化合物を実質的に含まないことにより、発色性に優れやブロンジング防止に著しく効果がある。
本発明のインク受容層(A)は単一層であっても、複数の層でから構成されても良い。インク受容層(A)の固形分塗布量はインク吸収性および塗布性の点で10〜30g/m2の範囲が好ましく、より好ましくは15〜25g/m2である。
本発明のインク受容層(B)の固形分塗布量はインク吸収性と発色性の点で2〜15g/m2が好ましく、より好ましくは4〜10g/m2である。
本発明において、インク受容層に皮膜の脆弱性を改良するために各種油滴を含有することができる。そのような油滴としては室温における水に対する溶解性が0.01質量%以下の疎水性高沸点有機溶媒(例えば、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等)や重合体粒子(例えば、スチレン、ブチルアクリレート、ジビニルベンゼン、ブチルメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート等の重合性モノマーを一種以上重合させた粒子)を含有させることができる。そのような油滴は好ましくは有機バインダーに対して10〜50質量%の範囲で用いることができる。
本発明において、インク受容層には、親水性バインダー等の有機バインダーとともに硬膜剤を含有するのが好ましい。硬膜剤の具体的な例としては、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒドの如きアルデヒド系化合物、ジアセチル、クロルペンタンジオンの如きケトン化合物、ビス(2−クロロエチル尿素)−2−ヒドロキシ−4,6−ジクロロ−1,3,5トリアジン、米国特許第3,288,775号記載の如き反応性のハロゲンを有する化合物、ジビニルスルホン、米国特許第3,635,718号記載の如き反応性のオレフィンを持つ化合物、米国特許第2,732,316号記載の如きN−メチロール化合物、米国特許第3,103,437号記載の如きイソシアナート類、米国特許第3,017,280号、同2,983,611号記載の如きアジリジン化合物類、米国特許第3,100,704号記載の如きカルボジイミド系化合物類、米国特許第3,091,537号記載の如きエポキシ化合物、ムコクロル酸の如きハロゲンカルボキシアルデヒド類、ジヒドロキシジオキサンの如きジオキサン誘導体、クロム明ばん、硫酸ジルコニウム、ほう酸及びほう酸塩の如き無機硬膜剤等があり、これらを1種または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも、特にほう酸あるいはほう酸塩が好ましい。硬膜剤の添加量はインク受容層を構成する有機バインダーに対して、0.1〜40質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%である。
インク受容層には、更に着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調節剤などの公知の各種添加剤を添加することもできる。また、本発明のインク受容層(A)の塗布液のpHは、3.3〜6.5の範囲が好ましく、特に3.5〜5.5の範囲が好ましい。本発明のインク受容層(B)の塗布液のpHは、3.3〜6.5の範囲が好ましく、特に4.0〜6.0の範囲が好ましい。
本発明において、インク受容層(A)及び(B)の塗布方法は、1層ずつ塗布する逐次塗布方法(例えば、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、グラビアコーター、リバースコーター等)、あるいは多層同時重層塗布方法(例えば、スライドビードコーターやスライドカーテンコーター等)のいずれの方法であっても、本発明の効果は得られる。しかし、多層同時重層塗布方法が好ましく用いられる。
本発明で使用される支持体としては、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ジアサテート樹脂、トリアセテート樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリイミド樹脂、セロハン、セルロイド等のプラスチック樹脂フィルム、及び紙と樹脂フィルムを貼り合わせたもの、基紙の両面にポリオレフィン樹脂層を被覆したポリオレフィン樹脂被覆紙等の耐水性支持体が好ましい。これらの耐水性支持体の厚みは50〜300μm、好ましくは80〜260μmのものが用いられる。
本発明に好ましく用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙支持体(以降、ポリオレフィン樹脂被覆紙と称す)について詳細に説明する。本発明に用いられるポリオレフィン樹脂被覆紙は、その含水率は特に限定しないが、カール性より好ましくは5.0〜9.0%の範囲であり、より好ましくは6.0〜9.0%の範囲である。ポリオレフィン樹脂被覆紙の含水率は、任意の水分測定法を用いて測定することができる。例えば、赤外線水分計、絶乾重量法、誘電率法、カールフィッシャー法等を用いることができる。
ポリオレフィン樹脂被覆紙を構成する基紙は、特に制限はなく、一般に用いられている紙が使用できるが、より好ましくは例えば写真用支持体に用いられているような平滑な原紙が好ましい。基紙を構成するパルプとしては天然パルプ、再生パルプ、合成パルプ等を1種もしくは2種以上混合して用いられる。この基紙には一般に製紙で用いられているサイズ剤、紙力増強剤、填料、帯電防止剤、蛍光増白剤、染料等の添加剤が配合される。
さらに、表面サイズ剤、表面紙力剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、染料、アンカー剤等が表面塗布されていてもよい。
また、基紙の厚みに関しては特に制限はないが、紙を抄造中または抄造後カレンダー等にて圧力を印加して圧縮するなどした表面平滑性の良いものが好ましく、その坪量は30〜250g/m2が好ましい。
基紙を被覆するポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリペンテンなどのオレフィンのホモポリマーまたはエチレン−プロピレン共重合体などのオレフィンの2つ以上からなる共重合体及びこれらの混合物であり、各種の密度、溶融粘度指数(メルトインデックス)のものを単独にあるいはそれらを混合して使用できる。
また、ポリオレフィン樹脂被覆紙の樹脂中には、酸化チタン、酸化亜鉛、タルク、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ステアリン酸アミド、アラキジン酸アミドなどの脂肪酸アミド、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩、イルガノックス1010、イルガノックス1076などの酸化防止剤、コバルトブルー、群青、セシリアンブルー、フタロシアニンブルーなどのブルーの顔料や染料、コバルトバイオレット、ファストバイオレット、マンガン紫などのマゼンタの顔料や染料、蛍光増白剤、紫外線吸収剤などの各種の添加剤を適宜組み合わせて加えるのが好ましい。
ポリオレフィン樹脂被覆紙の主な製造方法としては、走行する基紙上にポリオレフィン樹脂を加熱溶融した状態で流延する、いわゆる押出コーティング法により製造され、基紙の両面が樹脂により被覆される。また、樹脂を基紙に被覆する前に、基紙にコロナ放電処理、火炎処理などの活性化処理を施すことが好ましい。樹脂被覆層の厚みとしては、5〜50μmが適当である。
本発明に用いられる耐水性支持体のインク受容層が塗設される側には、下引き層を設けるのが好ましい。この下引き層は、インク受容層が塗設される前に、予め耐水性支持体の表面に塗布乾燥されたものである。この下引き層は、皮膜形成可能な水溶性ポリマーやポリマーラテックス等を主体に含有する。好ましくは、ゼラチン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、水溶性セルロース等の水溶性ポリマーであり、特に好ましくはゼラチンである。これらの水溶性ポリマーの付着量は、10〜500mg/m2が好ましく、20〜300mg/m2がより好ましい。更に、下引き層には、他に界面活性剤や硬膜剤を含有するのが好ましい。支持体に下引き層を設けることによって、インク受容層塗布時のひび割れ防止に有効に働き、均一な塗布面が得られる。
以下、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
<湿式法シリカ分散液1の作製>
水 329部
カチオン性ポリマー 4部
(ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマー、第一工業製薬(株)製、シャロールDC902P、平均分子量9000)
沈降法シリカ 100部
(ニップシールVN3、平均二次粒径23μm)
水に、沈降法シリカを添加し、のこぎり歯状ブレード型分散機(ブレード周速30m/秒)を使用して予備分散液を作成した。次に、この予備分散液をビーズミル(直径0.3mmのジルコニアビーズ、該ビーズの充填率80容量%、円盤周速10m/秒)に1回通過させて、固形分濃度30質量%、平均粒子径200nmの湿式法シリカ分散液1を作製した。
実施例1のインク受容層A−1の塗布液を下記インク受容層A−4塗布液に変えた以外は実施例1と同様にして実施例4のインクジェット記録材料を得た。
<インク受容層A−4塗布液>
湿式法シリカ分散液1 (湿式法シリカの固形分として)100部
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
カチオン性ポリマー 2部
(化2で例示したA−1の繰り返し単位からなるホモポリマー)
酢酸ジルコニル 3部
(第一希元素化学工業社製、ジルコゾールZA−20)
界面活性剤 0.1部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM−2150)
(比較例1)
<気相法シリカ分散液2の作製>
実施例1の気相法シリカ分散液1の作製において、ジメチルジアリルアンモニウムクロライドホモポリマーを除いた以外は同様にして気相法シリカ分散液2を作製した。
実施例1のインク受容層A−1塗布液を下記インク受容層A−5塗布液に変えた以外は実施例1と同様にして比較例1のインクジェット記録材料を得た。
<インク受容層A−5塗布液>
気相法シリカ分散液2 (気相法シリカの固形分として)100部
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
酢酸ジルコニル 5部
(第一希元素化学工業社製、ジルコゾールZA−20)
界面活性剤 0.1部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM−2150)
(比較例2)
実施例1のインク受容層A−1の塗布液を下記インク受容層A−6塗布液に変えた以外は実施例1と同様にして比較例2のインクジェット記録材料を得た。
<インク受容層A−6塗布液>
気相法シリカ分散液1 (気相法シリカの固形分として)100部
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
カチオン性ポリマー 5部
(化4で例示したB−1の繰り返し単位からなるホモポリマー)
界面活性剤 0.1部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM−2150)
(比較例3)
実施例1のインク受容層B−1の塗布液を下記インク受容層B−2塗布液に変えた以外は実施例1と同様にして比較例3のインクジェット記録材料を得た。
<インク受容層(B−2)の塗布液>
擬ベーマイト分散液 (擬ベーマイト120℃乾燥固形分として)100部
(一次粒子の平均粒径14nm、2次粒子の平均粒径170nm)
ほう酸 1部
ポリビニルアルコール 10部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
カチオン性ポリマー 2部
(化2で例示したA−1の繰り返し単位からなるホモポリマー)
界面活性剤 0.3部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM−2150)
(比較例4)
支持体上に実施例1で用いたインク受容層A−1塗布液を、乾燥塗布量が25g/m2になるように、スライドビード塗布装置で単層塗布し、実施例1と同様に乾燥して比較例4のインクジェット記録材料を得た。
上記のようにして作成したインクジェット記録シートについて下記の評価を行った。その結果を表1に示す。
(比較例5)
実施例1のインク受容層A−1の塗布液を下記インク受容層A−7塗布液に変えた以外は実施例1と同様にして比較例5のインクジェット記録材料を得た。
<インク受容層A−7塗布液>
気相法シリカ分散液1 (気相法シリカの固形分として)100部
ほう酸 3部
ポリビニルアルコール 22部
(ケン化度88%、平均重合度3500)
カチオン性ポリマー 2部
(化4で例示したB−1の繰り返し単位からなるホモポリマー)
塩基性ポリ水酸化アルミニウム 3部
((株)理研グリーン製、ピュラケムWT)
界面活性剤 0.1部
(ベタイン系;日本サーファクタント社製、スワノールAM−2150)
<インク吸収性>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製、BJF895PD)にて、レッドとグリーンの重色系のベタ印字を隣接して交互に行い、印字直後にベタ部のインクの吸収状態、モットリング(画像の濃淡むら)及びレッドとグリーンの境界のにじみ具合の程度を目視で観察した。下記の基準で評価した
◎:速やかにインクが吸収され、モットリング及び境界のにじみもみられない。
○:インクの吸収はやや遅く、境界滲みが少しみられるが、実用上問題ない。
△:印字面にインクがやや溢れ、モットリングと境界滲みが少しみられる。
×:印字面にインクがあふれ、強いモットリングと境界滲みが発生。
<発色性>
市販のインクジェットプリンター(ヒューレットパッカード社製、deskjet5550)にて、C,M,Yの混色からなるコンポジットブラックのくすみ具合をC、M、Y各色の発色濃度を目視で観察した。下記の基準で評価した
◎:くすみがなく、発色性が良好。
○:くすみが少しみられるが、発色性良好。
△:ややくすみがみられるが、発色性に劣る。
×:強いくすみの発生がみられ、発色性に劣る
<ブロンジング>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製、PIXUS990i)にてシアンとブルーとブラックのベタ部を印字しブロンジングの発生の有無を、目視評価した。
◎:ブロンジングの発生なし
○:一部の色に僅かにブロンジングが認められる。
△:一部の色にブロンジングが認められる。
×:全色にブロンジングが発生
<高湿滲み>
市販のインクジェットプリンター(キヤノン社製、PIXUS850i)にてレッド、グリーン、ブルー、コンポジットブラックの各細線を印字後、30℃80%の環境下に保管したサンプルを1週間後に目視にて観察し、下記の基準で判定した。
◎:滲みがない
○:僅かに滲みが認められる
△:滲みが認められる
×:著しく滲んでいる
本発明の実施例1〜4のインクジェット記録材料は、インク受容層のインク吸収性、発色性、ブロンジング防止、高湿滲みに優れた結果であった。比較例1および2についてはカチオン性ポリマーと水溶性ジルコニウム化合物が共存していない場合でありインク染料の定着が不十分であり、結果として高湿滲みに劣る結果となった。比較例3はアルミナ水和物を含有するインク受容層にカチオン性ポリマーを含有したものであるがインク吸収性、発色性、ブロンジングで劣る結果であった。比較例4はアルミナ水和物含有層を設けない場合であるがこれもインク吸収性、発色性、ブロンジングで劣る結果であった。比較例5は水溶性ジルコニウム化合物にかえて水溶性アルミニウム化合物を含んだ場合であるがブロンジングと高湿滲みに劣る結果であった。