JP2667162B2 - インクジエツト記録用シート - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は記録紙上に形成された画像が高度に耐水化さ
れたインクジェット記録用紙に関するものである。 〔従来の技術〕 一般にインクジェット記録は直径数十ミクロンの細孔
からインクを加圧噴出させ、生成したインク微粒子によ
り記録紙上にドット記録を行う方式である。細孔からの
安定なインク噴出を確保する必要上通常の印刷インクの
ようにインク中に、顔料，樹脂等を含有させることが困
難であり、一般に直接染料，酸性染料等の水溶性染料か
らなる低粘度の水性インクが用いられる。このためのイ
ンクジェット記録は記録濃度，光沢，耐光性，耐水性等
の記録品質が一般の印刷に比べ見劣りするのが当然と考
えられていた。 しかしインクジェット記録方式の使用分野の拡大並び
にカラープリンタの普及につれて記録時の性能即ち解像
度，濃度，カラー色調のあざやかさなどは勿論のこと記
録後の耐水性，耐光性等の保存性も要求されるようにな
った。 このうち記録の解像度，濃度，カラー色調のあざやか
さの対策としては、特開昭55−51583号公報，同56−148
583号公報，及び同56−148585号公報などでシリカ系顔
料と水溶性高分子バインダーからなる塗料を10g/m²以上
支持体に塗布することが提案されており、更に本発明者
等は、特開昭59−185690号公報において支持体上に粘度
分布（Rosin−Rammler分布）の均等数ｎが1.10以上であ
りかつBET法による比表面積200m²/g以上のシリカと水溶
性高分子バインダーを含む塗工層を設けることによっ
て、一層鮮明なかつインク色再現性に優れた記録が得ら
れることを提案した。 更にインクジェット記録画像を耐水化するためには、
カチオン性ポリマーをその表面に含有する記録媒体に水
性インクを印写する方法が提案されている。 カチオン性ポリマートとしては、ポリエチレンイミ
ン，ポリアリールピリジニウムハライド等のカチオンソ
ープ（特開昭56−84992号公報）、３級アミノ基又は４
級アンモニウム基を有するモノマーと疎水性モノマーと
の共重合体からなる水不溶性ポリマーラテックス（特開
昭57−36692号公報）、第４級アンモニウム塩型の導電
剤（特開昭58−177390号公報）、ジアリルジアルキルア
ンモニウムハライド（特開昭59−20696号公報）、ジシ
アンジアミドホルマリン縮合物（特開昭59−146889号公
報）、ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミドアン
モニウム縮合物（特開昭60−49990号公報）、チオ尿素
化合物（特開昭61−163886号公報）等が代表的なもので
ある。更にこれらのカチオン性ポリマーと多価金属化合
物との併用（特開昭59−106989号公報，特開昭60−1875
82号公報，特開昭61−14979号公報）も提案されてい
る。 この方法による耐水化は、インク中の直接染料，酸性
染料とこれらカチオン性ポリマーとの結合により、水に
不溶性のコンプレックスが形成されることによるもので
ある。 しかし、これらのカチオン性ポリマーを使用した記録
シートには次のような欠点があった。 ポリエチレンイミン，ポリビニルピリジニウムハライ
ド等のカチオンソープ，ジアリルジアルキルアンモニウ
ムハライド，ポリアルキレンポリアミンジシアンジアミ
ドアンモニウム縮合物のようなカチオン性ポリマー等を
使用した記録紙及びこれらのカチオン性ポリマーと多価
金属化合物を併用した記録紙にインクジェット記録を施
した場合、未添加の記録紙と比較して概して画像耐水性
の大幅な向上は認められるが、インク中に含まれる染料
の種類によって多少差はあるものの、全ての色あるいは
特定の色について色相が変化し本来の色とは大きくかけ
はなれてしまったり（以下色ずれという）、あるいは明
度が低くなって全体として暗くしずんだ感じの鮮明性に
劣る画像しか得られない。これは、インク中の染料がカ
チオン性ポリマーと一緒になって水不溶性のコンプレッ
クスを生じる際、染料の集合状態が大巾に変化したり、
大きな高分子錯体を作ってしまう結果、染料が本来有し
ていた光の吸収スペクトルパターンが大きく変化する為
であろうと考えられる。 カチオン性モノマーと疎水性モノマーからなる水不溶
性塩基性ポリマーラテックスを含むインクジェット記録
用紙を使用した場合、ラテックス化するのに必要な疎水
性基のためかインク吸収性が悪く、ラテックス表面が捕
捉されなかったインク中の染料は耐水化されず、全体と
して耐水性が不十分であり、又、ラテックスの粒界の反
射のため画像が白っぽくなり、濃度の低い不鮮明な印象
の画像となる。 〔発明が解決しようとする問題点〕 近年、一次発色によってカラー画像が容易に得られる
というインクジェット記録の特性を活かした高速度高密
度高精細のフルカラープリンタ、特に写真や印刷に比肩
しうるピクトリアルカラープリンタも増えてきており、
この分野で用いられる記録用シートは、インク吸収性は
もちろんのこと、画像耐水性とともに画像の色再現性が
特に優れたものが強く要望されている。 かかる現状に鑑み、本発明は、カラー記録における画
像耐水性にすぐれ、かつ画像の色再現に優れた鮮明な画
像が得られるインクジェット記録用シートを提供するも
のである。 〔問題点を解決するための手段〕 本発明は、叙上の課題を解決するものであり、水溶性
染料を含有した水性インキを用いて記録像を形成するイ
ンクジェット記録用シートに於て、該シートが下記式
（Ｉ）の構造式で示される単量体を主たる構成単位とし
た水溶性重合物すなわち、（ａ）（メタ）アクリル酸ア
ルキル４級アンモニウム塩を骨格とした重合物を支持体
に単独でもしくは混合して塗工又は含浸せしめてなるも
のとすることによってカラー記録画像の耐水化ととも
に、色再現性に特に優れた鮮かなカラー画像が得られる
ことを見い出し本発明を完成した。 但し式中、Ｒは水素又はメチル基、ｎは１〜３の整数
を示す。R₁,R₂,R₃は同一もしくは異なった水素及びC1〜
C4の脂肪族アルキル基を示す。Ｘ は陰イオンを表し、
ハロゲンイオン，硫酸イオン，アルキル硫酸イオン，ア
ルキルあるいはアリールスルホン酸イオン，酢酸イオン
である。Ｙは０又はNHである。ハロゲンイオンとして
は、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、ガ適して
おり、アルキル硫酸イオンのアルキル基としてはメチル
基、エチル基などの低級アルキル基が適している。 本発明で使用する水溶性重合体は式（Ｉ）に示す（メ
タ）アクリル酸アルキルあるいは（メタ）アクリル酸ア
ミドアルキルの４級アンモニウム化物の重合体あるいは
共重合体であり、共重合体である場合は上記４級アンモ
ニウム化物を50モル％以上含有することが好ましく、80
モル％以上含有することが更に好ましい。水溶性高分子
中に於ける上記４級化物の割合が50モル％よりも低いと
画像耐水性や色再現性が低下する。 上級４級化合物以外の単量体は、非イオン性もしくは
カチオン性の上記４級化物と共重合可能なものであれば
よく、例えばエチレン，ブダヂエン，スチレン，酢酸ビ
ニル，（メタ）アクリル酸低級エステル，（メタ）アク
リル酸アルキルアミン，（メタ）アクリルアミド，（メ
タ）アクリロニトリル及びアクリルアミドアルキルアミ
ン，ビニルピリジン等の１種以上を共重合体の水溶性を
損わない範囲で重合する。 本発明の第４級アンモニウム塩型カチオン性重合体あ
るいは共重合体は、３級アミノ基を有するモノマーを重
合させた後アルキル化剤で４級化するか４級アンモニウ
ム塩型モノマーを直接重合あるいは共重合させることに
より得られる。重合法としては、ラジカル重合開始剤あ
るいはレドックス系重合剤を使用して水溶液重合法や、
有機溶媒中にモノマー水溶液を乳化あるいは分散させて
行う逆相乳化重合法や逆相懸濁重合法、更にモノマーは
溶解するが重合体は溶解しない有機溶媒中で重合を行う
沈澱重合法等の通常の方法である。 本発明の水溶性カチオン性重合体あるいは共重合体の
使用量は、支持体への含有のさせ方、顔料やバインダー
の種類や量によって異なるが、少なくとも噴射されるイ
ンク中の染料と等しい化学当量が必要であり、通常染料
の化学当量の1.5倍程度が適当である。多量に使用して
も弊害は殆んどないが、経済的でない。 記録シートは通常、その表面に顔料，バインダー及び
添加剤等からなる塗工層が設けられている。 顔料としては、シリカ，合成珪酸塩，タルク，カオリ
ン，クレー，重質又は軽質炭酸カルシウム，その他の炭
酸塩，酸性白土，水酸化アルミニウム，ケイソウ土，酸
化チタン，酸化亜鉛，硫酸バリウム，尿素ホルマリン樹
脂粉末，エチレン樹脂微粉末，スチレン樹脂微粉末等で
あり，これらを混合して使用することもできる。 バインダーとしては、PVA,酸化でんぷん，エーテル化
でんぷん，その他のでんぷん誘導体，ゼラチン，カゼイ
ン，カルボキシメチルセルロース，ヒドロキシエチルセ
ルロース，その他のセルロース誘導体，ポリビニールピ
ロリドン等を単独あるいは併用して使用する。更に接着
剤としては、スチレン・ブタジエン共重合物，メチルメ
タクリレート・ブタジエン共重合物，アクリル酸エステ
ル共重合物，ポリ酢酸ビニル，エチレン・酢酸ビニル共
重合などのラテックス類も使用可能である。 添加剤としては、顔料分散剤，界面活性剤，消泡剤，
着色剤，酸化防止剤，紫外線吸収剤，離型剤，粘度調節
剤，バインダーの架橋耐水化剤等が必要に応じて適宜使
用される。 上記のうち顔料としてはシリカ系のものが良く、なか
でも二酸化珪素を主成分とする湿式法による無定形合成
シリカが好適であり、これに水溶性高分子バインダーと
してPVA（ポリビニールアルコール）を組合わせたもの
が、画像の濃度，鮮明性の点で特に好ましいものであ
る。 顔料と水溶性高分子バインダーと本発明の４級アンモ
ニウム塩型ポリマー（ａ），（ｂ）との使用割合は、要
望されるインクジェット記録用シートの性能に応じて適
宜決定し得るものである。又、同時に使用される他の添
加剤や塗布量によっても変化するものであるが、一般的
には、固形分重量で顔料100部に対して、好ましくは水
溶性高分子バインダーが10〜40部、より好ましくは15〜
30部であり、本発明の４級アンモニウム塩型ポリマー
（ａ），（ｂ）が好ましくは１〜50部、より好ましくは
１〜30部、最も好ましくは２〜15部である。尚、本明細
書中の部はすべて重量部を示す。４級アンモニウム塩ポ
リマーの使用量は、１部以下では耐水性に乏しく、30部
以上では相対的にポリマー量が多いためインク吸収性が
悪くなる傾向にある。しかし、カチオン界面活性剤等が
同時に添加されている場合には、１部以下でも充分な耐
水性を発揮する。又、塗布量が少ない場合には50部以上
でも吸収性に劣ることはない。水溶性高分子バインダー
が少なすぎると接着力が不足して粉落ちがおこり、多す
ぎると顔料の効果がなくなり、インクの吸収が悪くなっ
て画像のベタツキやインクの不規則な拡散により鮮明性
が損われる。本発明の４級アンモニウム塩型ポリマー
（ａ），（ｂ）が上記割合より少ないと画像耐水性の向
上度が不十分となり易く、多いとインクの色相が変化し
たり明度が低くなる等色再現性が不十分となる傾向にな
る。 本発明で使用する４級アンモニウム塩型ポリマー
（ａ），（ｂ）の塗布量又は含浸量は固形分としては0.
05〜2.5g/m²好ましくは0.1〜1.5g/m²で十分な画像耐水
効果が発現される。塗料の塗布方法としては従来法をそ
のまま用いることが可能である。即ち、サイズプレス，
ゲートロールコーター，エアナイフコーター，ブレード
コーター，スプレー等が利用でき、塗料全体の塗布量が
多ければオフマシン塗工で行い、少なければオンマシン
塗工が可能である。 〔作 用〕 本発明で使用する４級アンモニウム塩型ポリマー
（ａ），（ｂ）が画像の耐水性とともに色再現性に優れ
た効果を発揮する理由から明らかではないが概ね次のよ
うに考えられる。一般にカチオン性ポリマーとインクジ
ェット染料との結合は主としてイオン結合である。しか
し、ポリマーの化学構造やポリマーの形と大きさによっ
てとりうるそのコンフォメーション、及びポリマーのカ
チオン性の強さとカチオン基の分子中における密度等の
要因が、ポリマーと染料との結合のしかたに大きな影響
を与えており、そのことがインク色再現性や耐水性の良
否に繋がっているものと考えられる。 即ち、強い耐水性を得るには、染料がカチオン性ポリ
マーと強力に結合するとともに、できたコンプレックス
が水により記録層から容易に脱離しないものでなければ
ならない。 染料とカチオン性ポリマーが強力に結合するために
は、使用状態に於て解離する強さを有するカチオン基が
分子中に多数存在し、且つそのカチオン基に染料が接近
し得る構造を有している必要がある。更に、ポリマーの
コンフォメーションによって染料がポリマーに取り囲ま
れたり、ポリマーが三次元網目構造をとる場合はその網
目構造中に染料が取り込まれることによっても耐水性が
得られる。 一方、強力なイオン結合や、ポリマー分子による染料
の取り囲み、更にポリマー中の疎水性基や置換基の影響
等により染料の分散状態が変化すると、染料が本来もっ
ていた反射スペクトルや吸収スペクトルが変化して、鮮
明性や色ずれが発生する。 本発明の４級アンモニウム塩型ポリマーは、カチオン
基が高密度で存在し、更にエステル基あるいはアミド基
とカチオン基の位置関係によって染料をしっかり捕捉し
て耐水性を向上させる一方、水溶性の線状高分子であっ
て三次元網目構造を取ったり、疎水性基や置換基の存在
による染料の分散集合状態の変化が殆んどないため色ず
れも極めて僅かに抑制されているものと考えられる。 〔実施例〕 以下に本発明を実施例により詳細に説明する。実施例
中の部及び％は特にことわらないかぎり重量部及び重量
％を表す。 合成例１ （化合物Ａ） ジメチルアミノエチルメタクリレートを塩化メチルで
４級化した、β−メタクロイルオキシトリメチルアンモ
ニウムクロライド103gをイオン交換水110gに溶解し、エ
チレンジアミン0.14g、重合開始剤としてアゾビスイソ
ブチロニトリル0.23g,ポリオキシエチレノニルエーテル
の１％水溶液0.3gを混合した。窒素置換を行った後１％
過硫酸カリウム5.3g,2％テトラメチルエチレンジアミン
8.25gを加えて40℃で４時間反応させ更に60℃で２時間
反応させた。反応終了後アセトンを加えて重合物を分離
洗浄して減圧乾燥して粉末状重合物を得た。 合成例２ （化合物Ｂ） 単量体としてジメチルアミノエチルメタクリレートを
ジメチル硫酸で４級化したもの140gを用いた他は合成例
１と同じ条件で重合して化合物Ｂを得た。 合成例３ （化合物Ｃ） 単量体としてメタクリルアミドプロピルトリメチルア
ンモニウムクロライド110gを用いた他は合成例１と同じ
条件で重合して化合物Ｃを得た。 合成例４ （化合物Ｄ） 蒸留水324gにセチルトリチメルアンモニウムクロライ
ド24g,10％ポリビニルアルコール水溶液1.0gを加え窒素
置換、ついでβ−メタクロイルオキシエチルトリメチル
アンモニウムクロライド67.4g,スチレン3.2gを加えて攪
拌乳化する。60℃に達したら１％過硫酸カリウム水溶液
2.9gと亜硫酸水素ナトリウム0.2gを加えて５時間重合し
た。反応終了後アセトンを加えて重合物を分離洗浄して
減圧乾燥して粉末状重合物を得た。 合成例５〜７ （化合物F,G,H） 単量体としてβ−メタクロイルオキシエチルジメチル
エピクロルヒドリルアンモニウムクロライド163.5g,β
−メタクロイルオキシエチルジエチルベンジルアンモニ
ウムクロライド162.7g及び４−ビニル−Ｎ−ベンジルピ
リジニウムクロライド116gを夫々用いた他は合成例１と
同じ条件で重合して化合物F,G及びＨを得た。 合成例８ （化合物Ｍ） 脱気水1200gにβ−メタクロイルオキシエチルトリメ
チルアンモニウムクロライド101.7gを溶解し窒素雰囲気
下60℃に加熱、ついでスチレン51.03gジビニルベンゼン
2.8gを加えた。脱気水3.8mlに2,2−アゾビス（２−アミ
ジノプロパン）二塩酸塩5.42gを溶解した溶液を加え、
加熱攪拌を３時間続けた後、この混合物を25℃に冷却
し、13％固形分で17.5cpsの溶液粘度を有する重合体を
得た。 尚、ポリマーのカチオン化度の測定法及び、得られた
記録紙の品質テスト法は次の通りである。 （１）カチオン化度；本実施例に用いた各カチオン性ポ
リマーのカチオン化度は、コロイド滴定法によりその規
定度を求めることによって得た。ポリマー１％溶液1ml
を正確にとり、純水20ml,酢酸2ml,トルイジンブル−指
示薬２滴をそれぞれ加えた。これを、1/400規定PVSK
（ポリビニール硫酸カリウム）溶液で滴定した。カチオ
ン性ポリマーの性質を比較する場合の各カチオン性ポリ
マーの実施例における使用量は、塗料中のカチオン量が
一定となるように、測定された規定度に反比例させた。 （２）記録濃度と画像耐水性；記録濃度と画像耐水性は
インクスポット法により得た記録画像で試験した。イン
クスポット法は、直径約8mmのガラス棒の切断面に着け
たインクを記録紙に直接付着させ、ただちにインク面上
に吸収紙を被せ余剰のインクを除くことによって画像を
得る方法である。 この方法は、記録面の性質によって噴射したインクの
ドット径が変化し、記録部と非記録部の割合が変わるた
めにおこる、測色に対する影響を除去することができる
特徴を有する。インクは、市販のインクジェットプリン
タ（シャープ（株）社製インクジェットカラーイメージ
プリンタ−IO−700）用インクのシアン，マゼンタ，イ
エローの３原色を使用した。 このようにしてえた記録画像物について反射濃度計
（マクベス社製RD915）により各色の記録濃度を測定し
た。画像耐水性は、インクスポット法にて記録したもの
を24時間常温の市水に浸漬し、浸漬前後の濃度変化を浸
漬前の濃度に対する割合、即ち退色率（％）で表わし
た。 （３）画像の鮮明性と色ずれ；本発明においては、画像
の鮮明性と色ずれを評価する尺度として彩度差と色相差
を用いた。色は色の３属性即ち、明度，色相，彩度で表
され、CIE（国際照明委員会）の推奨する知覚的にほぼ
等歩度をもつＬ^＊,a^＊,b^＊表色系を用いれば、これは次
のように示される。 明度:L^＊ ブランク紙と記録画像の色をそれぞれLo^＊,ao^＊,bo^＊
及び、Ls^＊,as^＊,bs^＊とし、上式で計算したブランク紙
と画像記録部の明度，色相，彩度をLo^＊,Ho^＊,So^＊及び
Ls^＊,Hs^＊,Ss^＊とすれば、鮮明性と色ずれは次式で表わ
される。 鮮明性；△Ｈ^＊＝Hs^＊−Ho^＊ 色ずれ；△Ｓ^＊＝Ss^＊−So^＊ 各色のＬ^＊,a^＊,b^＊はインクスポット法にて得た記録
部を色差計（日本電色工業（株）製Z80測色色差計）に
て測定した。明度，色相，彩度及び色相差と彩度差即ち
色ずれと鮮明性の値は各測定値より上式にあてはめて求
めた。これらの評価方法としては、ブランクに対して色
相差の絶対値が小さい程度ずれけが小さく、彩度差がプ
ラスの値で大きい程鮮明な画像を得られることを示す。 次に本発明及び本発明の効果を明瞭に示す為の比較に
使用したカチオン性ポリマーの構造を示す。 本発明のカチオン性ポリマー 本発明のカチオン性ポリマー （実施例１） 顔料として比表面積220m²/g、平均凝集径2.5ミクロ
ン、Rosin−Rammler分布の均等数ｎ＝1.3の合成シリカ1
7％スラリー500部に、バインダーとして完全ケン化ポリ
ビニールアルコール（クラレ（株）製PVA117）の10％水
溶液150部を混合した水を加えて固形分濃度15.4％の塗
料の調製した。この塗料1000部にたいしポリカチオンと
してβ−メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニ
ウムクロライド重合物〔化合物（Ａ）〕の20％水溶液36
部を添加した。支持体は、フリーネス350mlのLBKP80部
およびフリーネス400mlのNBKP20部から成る原料パルプ
に、軽質炭酸カルシウム粉体（白石工業（株）製,PC）
を20部添加し、長網マシンで抄造した坪量60g/m²の中性
サイズ紙を用いた。この支持体上に前記の各混合塗料を
塗布量が約10g/m²になるようにワイヤーバーで塗布し
た。更にこれらの紙のベック平滑度が100秒になるよう
にテストカレンダー（由利ロール（株）社製）に通して
インクジェット記録用紙を得た。この記録用紙にインク
スポット法で画像を作成し、記録濃度，色ずれ及び耐水
性を測定した。 結果は表−１に示したが、標準とした比較例１の結果
と比較すれば、24時間水に浸漬後も画像の退色はみられ
ず、△Ｈ^＊でみた色ずれは各色とも0.05以内で色ずれは
なく、△Ｓ^＊でみた色の鮮明性はわずかではあるがプラ
スの方向にあるので、標準より鮮やかになっている。 （実施例２〜４） 実施例１において、化合物（Ａ）の対イオンを硫酸メ
チルイオンにかけた化合物（Ｂ）の18％水溶液31部及び
β−メタクロイルオキシプロピルトリメチルアンモニウ
ムクロライド〔化合物（Ｃ）〕の20％水溶液29.1部及び
β−メタクロイルオキシエチルトリメチルアンモニウム
クロライド９モルとスチレン１モルの共重合体〔化合物
（Ｄ）〕の20％水溶液22.3部を夫々使用した外は実施例
１と同様にして記録用シートを得た。表−１に示した如
く、これらのシートを用いて得られた記録画像の耐水
性，濃度，色ずれ及び色の鮮明性は実施例１と同じく優
れたものであった。 （比較例１） 支持体上に塗布する塗料中にポリカチオンを全く含ま
ない以外は実施例１と同様にして得たシートを比較用記
録シートとした。このシートを用いて記録したインクス
ポット法による画像の色ずれ，鮮明性，濃度はポリカチ
オンの性能を比較する為の基準である。 （比較例２〜９） 実施例１において、本発明の化合物（Ａ）に代えて、
ジメチル−２−ヒドロキシプロピルアンモニウム塩重合
物（化合物（Ｅ），日華化学工業（株）製，ネオフィッ
クスREY），有機導電剤であり、本発明外の置換基を有
するメタクリル酸エチルの４級アンモニウム塩重合物で
ある化合物（Ｆ），（Ｇ）及びベンジルビニルピリヂン
重合体である化合物（Ｈ）、更にポリジメチルジアリル
アンモニウムクライド（化合物（Ｉ）、日東紡（株）
製,PAS−H10L），ポリエチレンイミン（化合物（Ｊ），
日本触媒化学工業（株）製，エポミンP1000），ジシア
ンジアミドホルマリン縮合物（化合物（Ｋ），日華化学
工業（株）製，ネオフィックスFY），ポリアリルアミン
塩酸塩（化合物（Ｌ），日東紡（株）製,PAA−HCLH）及
び水不溶性塩基性ラテックス〔化合物（Ｍ）〕を測定さ
れたカチオン化度に基づきそれぞれ表−１に示す割合で
添加した塗料を用いた外は実施例１と同様にして得た記
録用シートを比較例２〜10とした。 これらのシートにインクスポット法で形成した記録画
像の色ずれ，鮮明性，濃度，耐水性に関する測定結果は
表−１に示した。各比較例ともカチオン性ポリマーを使
用することで、使用しない場合に比べて耐水性は改善さ
れており、特に比較例5,6は本発明と同等若しくはそれ
以上の耐水性を有している。然いずれの場合も色ずれが
おきており、特に本発明と類似した構造であるが、側鎖
に強い親水基を有していたり、大きな疎水基を有してい
る比較例３及び４が悪い。比較例10の塩基性ラテックス
は予測に反し画像濃度及び耐水性が悪いが、これは表−
１に表示されていない塗布面の疎水性が強くインク受理
性及びインク吸収性が悪いことが関係していると考えら
れる。 （実施例５） 支持体上に塗布する塗料用顔料として軽質炭酸カルシ
ウム（白石工業（株）製,PX）の50％スラリー170部に、
PVAバインダー10％水溶液150部を混合し水を加えて固形
分濃度31.25％の塗料とし、本発明の化合物（Ａ）の20
％水溶液12部を加えて調製したものを塗布量が約30g/m²
になるようにした外は同様にして記録用シートを得た。 （比較例10〜11） 実施例５において、塗料中にカチオン性ポリマーを含
有しない塗料を使用したもの及び、塗料中に化合物
（Ａ）のかわりに化合物（Ｇ）を加えた塗料を使用した
外は実施例５と同様に夫々記録用シートを作成し比較例
10,11とした。 これらのシート及び実施例５で作成したシートについ
てインクスポット法で形成した画像の測定結果を表−２
に示した。 表−２によれば、本発明の化合物を使用したものは、
何もカチオン性ポリマーを使用しない比較例10に比べて
も色ずれがなく、鮮明さが増大しているのに対し、本発
明外の化合物（Ｇ）を使用した場合は耐水性，色ずれ，
鮮明性がともに本発明化合物の使用したものより劣って
いる。 （実施例６） 本発明の化合物（Ａ）の塗料中への添加量による効果
をみるために、シリカとポリビニルアルコール100重量
部に対し、本発明の化合物（Ａ）を1,3,5,10,30,50重量
部それぞれ添加し、実施例１と同様に記録シートを作成
し、評価し結果を表−２に示した。表−２から明らかな
ように本発明の化合物は比較的少量の使用で強力な画像
退水性を示し、且つ多量に使用した場合も色ずれがおこ
ったり鮮明性を損うことがなかった。 〔発明の効果〕 本発明によれば、インク吸収性が良く高い画像濃度、
極めて優れた画像耐水性とともに、色ずれがなく且つ鮮
明な画像が得られるので、高密度高精細のフルカラープ
リンターに使用すれば、原画像の色再現性に優れたイン
クジェット記録を得ることができる。

Claims (1)

1. (57)【特許請求の範囲】 １．水溶性染料を含有した水性インクを用いて記録像を
   形成するインクジェット記録用シートに於て、該記録用
   シートが少なくとも下記一般式（Ｉ）の構造式で示され
   る単量体すなわち（ａ）（メタ）アクリル酸アルキル４
   級アンモニウム塩あるいは、（ｂ）（メタ）アクリルア
   ミドアルキル４級アンモニウム塩を80mol％以上含む水
   溶性重合物を含有した塗料を、該水溶性重合物の塗工量
   が0.05〜2.5g/m²となるように支持体に塗工したもので
   あることを特徴とするインクジェット記録用シート。 但し、式中Ｒは水素又はメチル基、ｎは１〜３の整数を
   示す。R₁、R₂、R₃は同一もしくは異なった、水素及びC₁
   〜C₄の脂肪族アルキル基を示す。X^-は陰イオンを表し、
   ハロゲンイオン，硫酸イオン，アルキル硫酸イオン，ア
   ルキルあるいはアリールスルホン酸イオン，酢酸イオン
   である。ＹはＯ又はNHを示す。 ２．水溶性染料を含有した水性インクを用いて記録像を
   形成するインクジェット記録用シートに於て、該記録用
   シートの支持体にインク受理層を設け、該インク受理層
   が少なくとも顔料、バインダー及び下記一般式（Ｉ）の
   構造式で示される単量体、すなわち（ａ）（メタ）アク
   リル酸アルキル４級アンモニウム塩あるいは、（ｂ）
   （メタ）アクリルアミドアルキル４級アンモニウム塩を
   80mol％以上含む水溶性重合物を含有し、該水溶性重合
   物が顔料100重量部に対し３〜50重量部であることを特
   徴とするインクジェット記録用シート。 但し、式中Ｒは水素又はメチル基、ｎは１〜３の整数を
   示す。R₁、R₂、R₃は同一もしくは異なった、水素及びC₁
   〜C₄の脂肪族アルキル基を示す。X^-は陰イオンを表し、
   ハロゲンイオン，硫酸イオン，アルキル硫酸イオン，ア
   ルキルあるいはアリールスルホン酸イオン，酢酸イオン
   である。ＹはＯ又はNHを示す。 ３．インク受理層が顔料とバインダーと水溶性重合物を
   含む単一層であることを特徴とする特許請求の範囲第２
   項記載のインクジェット記録用シート。 ４．インク受理層の顔料が合成シリカを含むことを特徴
   とする特許請求の範囲第２項または第３項に記載のイン
   クジェット記録用シート。