JP3751164B2 - インクジェット記録媒体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクを用いて記録するインクジェット記録媒体に関するものであり、更に詳しくは高いインク吸収性を有し、色再現範囲の広いインクジェット記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、種々の作動原理によりインクの微小液滴を飛翔させて紙などの記録媒体に付着させ、画像・文字などの記録を行なうものであるが、高速、低騒音、多色化が容易、記録パターンの融通性が大きい、現像−定着が不要等の特徴があり、漢字を含め各種図形及びカラー画像等の記録装置として種々の用途に於いて急速に普及している。更に、多色インクジェット方式により形成される画像は、製版方式による多色印刷やカラー写真方式による印画に比較して、遜色のない記録を得ることが可能である。又、作成部数が少なくて済む用途に於いては、写真技術や印刷技術によるよりも安価であることからフルカラー画像記録分野にまで広く応用されつつある。
【0003】
インクジェット記録方式で使用される記録媒体としては、通常の印刷や筆記に使われる上質紙やコーテッド紙を使うべく、装置やインク組成の面から努力がなされてきた。しかし、装置の高速化・高精細化或はフルカラー化等インクジェット記録装置の性能の向上や用途の拡大に伴い、記録媒体に対してもより高度な特性が要求されるようになった。即ち、当該記録媒体としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早くて印字ドットが重なった場合においてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が均一で必要以上に大きくなく、且つ周辺が滑らかでぼやけないこと、経時や環境で画質の変化がないこと例えば、耐光性、耐水性、耐オゾン性に優れていること等が要求される。
【0004】
このような要求に対して、従来からいくつかの提案が行われてきた。インク吸収性向上や印字ドットの拡散防止に対しては、特開昭52−9074号公報、同58−72495号公報等に支持体上にインク受容層を設ける方法が、特開昭55−144172号公報にインク受容層中におけるインク中の染料成分の分布状態が色彩性や鮮鋭性に影響することに着目して、染料成分を吸着する特定の剤を用いる方法等が示されている。又、耐光性、耐水性、耐オゾン性を向上させるために、特開昭60−11389号公報には、塩基性オリゴマーを含有させること、特開昭64−8085号公報には、基材中又は基材上の塗工層にポリビニルアミン共重合物を用いること等が開示されている。
【0005】
しかしながら、これらの特性に対する要求は次第に高度になり、厳しくなる一方で、インクジェット記録装置が安価でしかも鮮鋭性や色彩性といった画像再現性や色再現性に優れた画像をパーソナルコンピューターレベルで簡単に得ることができるようになってきている。従ってインクジェット記録装置は、特定の人に使用される特殊な記録装置から汎用の記録装置に変遷してきており、自作の絵はがきやデジタル写真のプリンタとしての用途にも使われるようになっている。この場合は絵はがきや写真プリントのもつ質感や触感が要求されるようにもなった。更に、このような用途においては打込むインク量が多く、基紙にまで達するインク溶媒によって記録後のシートに波打ちを生じ、見栄えが悪くなるという問題も発生している。
【0006】
更に、用途の多様化に伴って、ポスターやPOPアートに使用されたり、裏面に粘着剤層を設けて、価格表示用ラベル、商品表示(バーコード)用ラベル、品質表示用ラベル、計量表示用ラベル、広告宣伝用ラベル(ステッカー)等のラベル用途、広い範囲の被着体に良く接着し、貼り付け作業が簡単なため、他面に粘着層を介して感熱特性、磁気特性、オフセット印刷適性を有するシート等と貼り合わせて複合した機能を付加させることも可能となることから、切符、定期券、各種カード等、コンピュータと接続した用途への応用も広がりつつある。
【0007】
このようにコンピュータに取り込んだ写真画像等を印刷出力する場合には、印刷画像の色の鮮やかさ、濃度の濃さは重要な要素であるが、こればかりではなく色再現範囲も重要な要件となってきた。つまり、入力画像信号に対応した色が出力画像に表現出来ればもっとも好ましいのであるが、出力機器によってその表現出来る色再現範囲が異なっている。そのため、通常入力画像信号が出力機器の色再現範囲を超えてしまい、その場合色域圧縮が必要になる。この色域圧縮については、明度を保存した圧縮、定点にむかっての圧縮、出力機器色再現範囲の内部に押し込めるように圧縮(階調性重視)、色差最小になるように圧縮、などがあるが、いずれにしても出力機器の色再現範囲に入るように圧縮変換する必要があり、出力機器の色再現範囲が広い方がより好ましいのは明白である。その出力機器がインクジェット記録装置の場合には、その被記録材であるインクジェット記録媒体がその色再現範囲を律する要件の1つとなっている。
【0008】
インクジェット記録媒体の形態としては、所謂、上質紙・ボンド紙等に代表される普通紙タイプと上質紙等の紙、合成紙、合成樹脂フィルム等の支持体面上にインク受容層を設けた塗工タイプに大別される。塗工タイプのインクジェット記録媒体は、塗設されたインク受容層の種々特性が印字品質に直接影響することから、吸収性にたいしては顔料の比表面積や形状の選択、色彩性や色再現性等については顔料の透明性や屈折率の検討、画像品質にたいしては塗層構造や表面形状等、用紙の波打ち等の改善については水中伸度、合成繊維やガラス繊維の配合といった種々の検討、更には塗工方法等について種々検討がなされてきた。
【0009】
又、用途の多様化はインクジェット記録媒体の外観に対しても生じており、従来からある普通紙やマット紙といった光沢のない或いは光沢の低い外観に加え、アート紙、コート紙、キャスト紙、印画紙等に類似の光沢を有した外観が求められることもある。これはインクジェット記録が印刷や写真に匹敵する画像品質を再現できることにより、外観も類似させたいという要望が生じているためである。
【0010】
そこで、光沢表面を備えたインクジェット記録媒体としては、塗層が湿潤状態にある間にキャスト仕上げして得られるキャスト塗被紙が特開平6−320857号公報等に記載されているが、銀塩写真印画紙と比較するとその表面光沢は極めて低く、銀塩写真の質感が得られるものではない。
【0011】
一方、表面光沢性を高めたインクジェット記録媒体としては、支持体上に樹脂からなるインク受容層を設けたものが提案されている。こうした用途に使用される樹脂の例としては、例えば特開昭57−38185号、同62−184879号公報等に記載されているようなポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体、特開昭60−168651号、同60−171143号、同61−134290号公報に記載されているようなポリビニルアルコールを主体とする樹脂組成物、特開昭60−234879号公報に示されているようなビニルアルコールとオレフィンまたはスチレンと無水マレイン酸との共重合体、特開昭61−74879号公報に示されているようなポリエチレンオキサイドとイソシアネートとの架橋物、特開昭61−181679号公報に示されているようなカルボキシメチルセルロースとポリエチレンオキサイドとの混合物、特開昭61−132377号公報に示されているようなポリビニルアルコールにメタクリルアミドをグラフト化したポリマー、特開昭62−220383号公報に示されているようなカルボキシル基を有するアクリル系ポリマー、特開平4−214382号公報等に示されているようなポリビニルアセタール系ポリマー、特開平4−282282号、同4−285650号公報に記載されているような架橋性アクリル系ポリマー等種々のインク吸収性ポリマーが提案されている。また、特開平4−282282号、同4−285650号公報等には架橋性ポリマーから構成されるポリマーマトリックスと吸収性ポリマーとを併用したインクジェット記録媒体が提案されている。しかし、これら樹脂からなるインク受容層は、シリカ等の顔料微粒子からなる多孔性のインク受容層と比較して、表面光沢性は得られるものの、吸収速度が遅く、また吸収容量が少ないという欠点を有する。
【0012】
インク吸収速度が速く、表面光沢性を高めたインクジェット記録媒体としては、近年、アルミナ水和物(カチオン性アルミナ水和物)を用いたものが提案されており、例えば特開昭60−232990号、同60−245588号公報、特公平3−24906号公報、特開平6−199035号、同7−82694号公報に記載されているように微細な擬ベーマイト形アルミナ水和物を水溶性バインダーとともに支持体表面に塗工したインクジェット記録媒体が開示されている。しかしながら、擬ベーマイト形アルミナ水和物を用いたインクジェット記録媒体は、表面光沢性は非常に高くなるものの、細孔容積が少ないために、例えば特開平5−24335号公報に記載されているように、インク吸収容量が少なく、十分なインク吸収容量を得るためには厚膜塗布が必要である。
【0013】
また、例えば特開平10−203006号公報には、一次粒子径が3nm〜30nmである主として気相法による合成シリカを使用するインクジェット記録媒体が提案されている。この場合も充分な吸収容量を得るために、30μm以上の膜厚が必要とされている。
【0014】
他方、吸収性や解像度、及び色濃度等を改良する提案として、特開平9−95042号公報、特公平3−26665号公報には、塗工顔料として、比表面積や粒子径更にはロジン−ラムラー分布の均等数nを規定したインクジェット記録用紙または記録用紙用填料が開示されている。特に特公平3−26665号公報においては、坪量60g/m2基準のステキヒトサイズ度が4秒以下の基紙上に、BET法で測定した比表面積が200m2/g以上で、かつロジン−ラムラー(Rosin-Rammler)分布の均等数nが1.10以上の微粒シリカと水溶性高分子バンインダーとを含む塗工層を設けた、インクジェット記録用紙が開示されている。しかしながらこれらの技術では、近年高度に発展したインクジェット記録技術に対応した画像再現性、インク吸収性更には色再現範囲拡張の全ての要求を満足することは出来なかった。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、インクを用いて記録するインクジェット記録媒体において、高いインク吸収性を有し、色再現範囲の広いインクジェット記録媒体を提供するものである。
【0016】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、高いインク吸収性を有し、色再現範囲の広いインクジェット記録媒体を鋭意追求した結果、特定の物性を持つ非晶質シリカ微粒子が上記課題を満足させることを見出し本発明のインクジェット記録媒体を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明のインクジェット記録媒体は、支持体上に、少なくとも無機顔料及び高分子接着剤を含有するインク受容層からなる記録媒体であって、該無機顔料が、BET比表面積が250〜400m2/gであり、平均粒子径が4.5μm以上、15μm以下であり、且つロジン−ラムラー(Rosin-Rammler)分布の均等数nが2.7以上の非晶質シリカ微粒子であり、インク受容層中に、該非晶質シリカ微粒子に対し該高分子接着剤を2〜30重量%含有することを特徴とするインクジェット記録媒体である。
【0018】
また、支持体が合成紙、樹脂被覆紙あるいは60g/m2換算ステキヒトサイズ度が5秒以上の紙から選ばれたものであるとより好ましく、更に該インク受容層中にカチオン性水溶性樹脂を含有することも好ましい態様である。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明のインクジェット記録媒体について、詳細に説明する。
【0020】
本発明に用いられる支持体としては、例えば、
a)LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGW、RMP、TMP、CTMP、CMP、CGPなどの機械パルプ、DIPなどの古紙パルプなどの天然パルプと従来公知の顔料を主成分として、バインダーおよびサイズ剤や定着剤、歩留まり向上剤、カチオン化剤、紙力増強剤などの各種添加剤を1種以上用いて混合したスラリーを用い、長網抄紙機、円網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機などの各種装置で抄造された酸性原紙、中性原紙、あるいは疑似酸性原紙類;
【0021】
b)原紙に、澱粉、ポリビニルアルコールなどでのサイズプレスやアンカーコート層を設けた原紙や、それらの上にコート層を設けたアート紙、コート紙、キャストコート紙などの塗工紙類;
【0022】
c)マシンカレンダー、TGカレンダー、ソフトカレンダーなどのカレンダー装置を用いて平滑化処理を施したような原紙類;
【0023】
d)原紙あるいは塗工紙の両面または片面に溶融押し出し法などにて高密度、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステルなどをコートした樹脂被覆類;
【0025】
f)ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、ポリスチレン、アクリル酸エステル類などの熱可塑性樹脂と炭酸カルシウム、タルク、シリカ、焼成クレーなどの無機顔料を混合して延伸積層した合成紙;
【0026】
g)あるいはこれら支持体の表面にコロナ放電処理、火炎処理、プラズマ処理、アンカー層塗工処理などの易接着性を改良したようなものを好適に用いることができる。
【0027】
しかしながら、支持体が天然パルプを主成分とするスラリーから抄造された酸性原紙か、中性原紙、或は中性原紙上に硫酸バンド液をタブサイズプレス、フィルムトランスファーコータ、エアーナイフコータ、ブレードコータ、ゲートロールコータ、バーコータ、ロッドコータ、ロールコータ、ビルブレードコータ、ショートドエルブレードコータなどにて塗工した疑似酸性原紙を用いるのが好ましい。またこれらのステキヒトサイズ度は60g/m2に換算して2秒以上80秒以下であることが好ましく、さらに好ましくは5秒以上60秒以下である。ステキヒトサイズ度が2秒未満であるとインク受容層が支持体中に沈み込んだり、インクが裏迄浸透して、裏抜けと言われる現象を生じたり、インク中の色素を支持体層にまで浸透させる事により、色濃度の低下、色再現範囲の低下を招くので好ましくない。またサイズ度があまり高いと、塗工層との接着性が悪くなるためあまり好ましくない。また、ステキヒトサイズ度が60g/m2換算で5秒以上60秒以下の酸性原紙、中性原紙及び疑似酸性原紙の他、合成紙、合成樹脂フィルムおよび樹脂被覆紙も特に好ましい。
【0028】
さらに、これらの支持体には、マシンカレンダー、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、艶消しカレンダー、摩擦カレンダー、ブラシカレンダーなどのカレンダー処理を行うことができる。支持体の坪量としては、通常50〜300g/m2程度のものが用いられる。
【0029】
非晶質シリカ微粒子とは、乾量基準でSiO293%以上、Al23約5%以下、Na2O約5%以下から構成される微粒子であり、いわゆるホワイトカーボン、シリカゲルや非晶性微粉末シリカなどがある。非晶性シリカ微粒子の製造方法は、乾式法と湿式法に大別され、乾式法には、燃焼法と加熱法がある。また、湿式法には沈殿法とゲル法と言われる製造方法がある。乾式燃焼法は気化させた四塩化珪素と水素を混合したものを1600〜2000℃で空気中で燃焼させる方法で気相法ともよばれる。湿式沈殿法は珪酸ソーダと硫酸等を水溶液中で反応させて、SiO2を沈殿させる方法で、反応温度や酸の添加速度等の条件によりシリカの比表面積(40〜400m2/g)や一次粒子径(5〜80nm)等を調整することが出来る。また、乾燥や粉砕条件で二次粒子径やシリカ物性が微妙に変化する。湿式ゲル法は珪酸ソーダと硫酸の同時添加等で反応させて製造されるもので、シリカ粒子同士の重合、例えばシラノール基の脱水縮合等、が進んで三次元的なヒドロゲル構造になったものである。その特徴は、一次粒子が比較的小さいヒドロゲル構造であるため、比表面積の大きな二次粒子が製造出来ることであり、その一次粒子(2〜15nm)の大きさを反応条件等を変えることにより調整し、比表面積(200〜1500m2/g)の異なる二次粒子を製造できる。
【0030】
本発明で使用する非晶質シリカ微粒子は、上記の内、湿式法により合成されたシリカ微粒子であって、BET比表面積が250〜500m2/g、好ましくは250〜400m2/gであり、平均二次粒子径が4.5μm以上、15μm以下であり、且つロジン−ラムラー(Rosin-Rammler)分布の均等数nが2.7以上の非晶質シリカ微粒子である。該BET比表面積が上記範囲より小さい場合、インク受容層のインク吸収容量が低下し、多量のインクが来た場合にあふれて画像の鮮鋭性が保てなくなる。一方、BET比表面積が上記より大きい場合には、分散液の粘度が極めて高くなり、塗工液にしたり塗工をするときにその作業性が極めてわるくなる。また比表面積が大きいということはシリカの一次粒子径が小さいということであり、一次粒子間の細孔径も小さくなるため、インク中の着色材の吸着にも好ましくない。
【0031】
本発明において、非晶質シリカ微粒子は、平均二次粒子径が4.5μm以上、15μm以下であり、且つ粒度分布としてロジン−ラムラー(Rosin-Rammler)分布の均等数nがが2.7以上である。更に好ましくは均等数nが3.0以上である。均等数nが大きいと言うことは、粒度分布範囲が狭いことを意味し、平均二次粒子径が上記範囲であり、且つ粒度分布が狭いということが、相乗的に作用して色再現範囲を広くしていると考えられる。
【0032】
本発明により、色再現範囲が広くなる理由は、必ずしも明らかではないが、粒度分布がブロード(均等数nが小さい)であるとそれらの粒子が充填された形であるインク受容層の二次粒子間の細孔の分布もブロードとなり、その大きさが可視光の波長(380nm〜720nm)に重なる部分が増えることによって、光の散乱または吸収に影響を及ぼすためではないかと考える。シリカの一次粒子は光の波長に対して十分に小さいので、可視光線に対しては透明である。従って一次粒子間の細孔の影響は少ないと考えられる。また、二次粒子が4.5μm以上であり大きさがそろっている(均等数nが大きい)と、それらの粒子が充填されたインク受容層は二次粒子間の細孔の分布もシャープとなり、且つその細孔径は可視光線の長波長付近から上になり、吸収散乱への影響が減るのではないかと考えられる。更に支持体として非吸水性の合成紙、合成樹脂フィルム、樹脂被覆紙あるいはステキヒトサイズ度が60g/m2換算で5秒以上の紙を用いることによって、インクの支持体への浸透が抑えられ、上記効果と相まって、色再現範囲を更に拡大する効果を発現しているものと考えられる。
【0033】
尚、ロジン−ラムラー分布の均等数nは、次のような方法により求められる。即ち、非晶質シリカ微粒子を水またはメタノール溶液中に分散し、粒度分布測定器を使用して例えば、0.6〜30μm迄の粒径範囲で、粒子径Dpなる粒子の積算質量R(Dp)を測定し、Rosin−Rammlerの式R(Dp)=100・exp(−bDpn)(ここでb、nはいずれも定数で、nは均等数又は分布定数と呼ばれる)に基づくRosin−Rammler線図(以下R−R線図)にプロットし直線を求める。そこで、この直線をR−R線図に示されている極点Pを通るように平行移動させ、その延長線上の均等数nを読取ることによって容易に求めることができる。
【0034】
ここでR−R線図は既成の線図が販売されているが、条件を設定して自分で作成することも簡単である。本発明の効果は上記の方法でプロットした粒度分布測定値が近似的に直線と見做せる場合についても成立する。
【0035】
市販のシリカの中で上記の条件を満足するものとしては、ファインシールX60(トクヤマ製)を上げる事ができる。また、均等数nは2.5未満であるが、平均二次粒子径が3μm以上のシリカを更に分級することによって、例えば4μm以下の微粒分をカットすることによって均等数nと平均二次粒子径を上記範囲内にした非晶質シリカ微粒子を得ることも出来る。
【0036】
本発明に用いられる高分子接着剤としては、水溶性あるいは非水溶性の高分子化合物である。本発明に用いられる高分子化合物は、インク受容層の構成成分として、インクと親和性を有する化合物である。例えば、水溶性高分子化合物としてはポリビニルアルコール、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、無水マレイン酸重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、でんぷん、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カゼイン、アイオノマー、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、プルラン、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等である。好ましくは、ポリビニルアルコールである。
【0037】
また、非水溶性高分子化合物としては、エタノール、2−プロパノール等のアルコール類やこれらのアルコール類と水との混合溶媒に溶解する非水溶性バインダーが、無機顔料の分散が安定化されるので特に好ましい。この様な非水溶性バインダーとしては、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール等のアセタール樹脂を挙げることができ、特にアセタール化度が5モル%以上20モル%以下の範囲のアセタール樹脂は、水を多少含有させることができ、非晶質シリカ微粒子の分散を容易にすることができる為、特に好ましい。
【0038】
これらの高分子化合物は、単独乃至複数を併用してもよく、非晶質シリカ微粒子に対し、2〜30重量%を添加する。好ましくは、5〜20重量%を添加する。上記の添加量の範囲以下では塗膜強度が弱くなり、多すぎるとインク吸収性、色再現範囲が低下する。
【0039】
本発明ではインク受容層にカチオン性水溶性樹脂を含有することも好ましい態様である。本発明で使用されるカチオン性水溶性樹脂としては、二級アミン、三級アミン、及び四級アンモニウム塩としてポリエチレンイミン塩、ジメチルアミンエピハロヒドリン縮合体、ポリビニルアミン塩、ポリアリルアミン塩、ポリジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩、ポリジアリルジメチルアンモニウム塩、ジアリルアミンアクリルアミド共重合体塩、ポリスチレンの四級アンモニウム塩等を例示できる。中でも色再現範囲をより好ましい方向(広い方向)に導くものとして、四級の環状アミンが挙げられる。また、これらカチオン性樹脂の2種類以上を配合使用することもなんら問題はないし、むしろそれぞれの特徴を最大限に引出すために積極的に配合することもある。
【0040】
これらカチオン性水溶性樹脂は、染料のスルホン酸基、カルボン酸基とイオン結合して不溶性のコンプレックスを形成する。そのためインク中の染料分子は不溶化して、表面近くに捕捉され、色濃度や色彩性がより高くなるものと考えられる。また、インク受容層に用いられている他の素材(顔料や接着剤)との間の屈折率の差が小さいほどインク受容層内での光の散乱が緩和されるため、より好ましい組み合せが存在し、色再現範囲を広くするのに役立っているものと考えられる。
【0041】
本発明における塗工液を塗布する方法は、Eバー塗布、カーテン塗布、ストラドホッパー塗布、エクストルージョン塗布、ロール塗布、エアナイフ塗布、グラビア塗布、ロッドバー塗布等の各種塗布方法を採用することができる。
【0042】
本発明において、インク受容層の層構成は、単層であっても積層構成であってもよい。積層構成の場合、全層が同じ配合の層であってもよいし、他の成分で構成される層との積層構成であってもよい。
【0043】
本発明のインク受容層の塗工量は、固形分換算で単位平方メートル当たり5g以上が必要であり、本発明のさらなる効果を認めるには、好ましくは単位平方メートル当たり7g以上30g以下である。
【0044】
塗工後に乾燥する手段としては、一般の公知の方法を用いることができ、限定されない。例えば、熱源により発生した加熱空気を送風した加温器内に搬送する方法、ヒーター等の熱源近傍を通過させる方法等である。
【0045】
更に、本発明の非晶質シリカ微粒子と高分子接着剤、さらに要すればカチオン性水溶性高分子とを含有するインク受容層を形成する塗工液は、必要に応じて、界面活性剤、無機顔料、着色染料、着色顔料、紫外線吸収剤、酸化防止剤、顔料の分散剤、消泡剤、レベリング剤、防腐剤、蛍光増白剤、粘度安定剤、pH調整剤、硬膜剤等の公知の各種添加剤を添加することができる。
【0046】
本発明で言う色再現範囲とは、以下の操作によって得られた面積を指す。インクジェットカラープリンタによって、C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、R(レッド、M+Y),G(グリーン、C+Y),B(ブルー、C+M)の6色のべた印字を行い、その色を色彩計(分光光度計)によって測定し、L***値を求める。このa*、b*値をx軸にa*値、y軸にb*値をとってプロットし、隣り合った各点を結ぶと六角形の図形が得られる。これを色彩学的に色再現範囲(色域とか、演色範囲とも表現される)というが、本発明では、この六角形の面積をもって色再現範囲という。
【0047】
【実施例】
以下、本発明を実施例により説明するが、勿論これに限定されるものではない。
【0048】
<非晶質シリカ微粒子a0の分級>
湿式沈殿法による非晶質シリカ微粒子であるファインシールX37B(トクヤマ製、比表面積271m2/g、粒子径5.2μm:これをシリカa0とする)を大量の水に分散し、静置して沈降させ、大きい粒子が先に沈降した部分をとりだすことによって、小粒部分をカットしたり、逆に小粒部分を取り出す事によって大粒部分をカットしたり、更に沈降時間及び回数を変えることによって、粒子径、粒度分布の異なるシリカa1〜シリカa6の非晶質シリカ微粒子を得た。尚、分級することによるシリカの比表面積は殆ど変化しなかった。
【0049】
<非晶質シリカ微粒子b0の分級>
湿式ゲル法による非晶質シリカ微粒子であるサイリシア450(富士シリシア社製、比表面積300m2/g、粒子径5.5μm:これをシリカb0とする)を大量の水に分散し、静置して沈降させ、大きい粒子が先に沈降した部分をとりだすことによって、小粒部分をカットしたり、逆に小粒部分を取り出す事によって大粒部分をカットしたり、更に沈降時間及び回数を変えることによって、粒子径、粒度分布の異なるシリカb1〜シリカb5の非晶質シリカ微粒子を得た。尚、分級することによるシリカの比表面積は殆ど変化しなかった。
【0050】
<非晶質シリカ微粒子c0の分級>
湿式沈殿法による非晶質シリカ微粒子であるカープレックス#80(シオノギ製薬社製、比表面積200m2/g、粒子径6.5μm:これをシリカc0とする)を大量の水に分散し、静置して沈降させ、大きい粒子が先に沈降した部分をとりだすことによって、小粒部分をカットしたり、逆に小粒部分を取り出す事によって大粒部分をカットしたり、更に沈降時間及び回数を変えることによって、粒子径、粒度分布の異なるシリカc1〜シリカc3の非晶質シリカ微粒子を得た。尚、分級することによるシリカの比表面積は殆ど変化しなかった。
【0051】
<市販の非晶質シリカ微粒子>
実施例の非晶質シリカ微粒子としてシリカd(ファインシールX60、比表面積300m2/g、トクヤマ社製)、比較例の非晶質シリカ微粒子として、シリカe(ファインシールX45、比表面積300m2/g、トクヤマ社製)、シリカf(ファインシールX37、比表面積270m2/g、トクヤマ社製)、シリカg(サイリシア440、比表面積300m2/g、富士シリシア社製)、シリカh(サイリシア470、比表面積300m2/g、富士シリシア社製)、シリカi(カープレックスFPS−1、比表面積200m2/g、シオノギ製薬社製)、シリカj(カープレックスFPS−3、比表面積410m2/g、同)、シリカk(カープレックス#1120、比表面積110m2/g、同)、シリカl(ミズカシルP78A、比表面積350m2/g、水沢化学社製)、シリカm(ミズカシルP78F、比表面積390m2/g、水沢化学社製)及びシリカn(ミズカシルP526、比表面積125m2/g、同)の各シリカを非晶質シリカ微粒子とした。
【0052】
<インク受容層塗工液A>
インク受容層の塗被組成物は、表1に記載した非晶質シリカ微粒子100部、ポリビニルアルコール(PVA117:クラレ社製)25部を混合し、各々の塗工液とした。
【0053】
<インク受容層塗工液B>
インク受容層の塗被組成物は、表2に記載した非晶質シリカ微粒子100部、ポリビニルアルコール(R1130:クラレ社製)20部、カチオン性染料定着剤(スミレッズレジン1001:住友化学社製)20部を混合し、各々の塗工液とした。
【0054】
塗布は、A;コート原紙(坪量157g/m2、タルク填料分6%、ステキヒトサイズ度15秒(60g/m2換算)、酸性紙)、B;コート原紙(坪量157g/m2、タルク填料分6%、ステキヒトサイズ度3秒(60g/m2換算)、疑似酸性紙)、C;コート原紙(坪量157g/m2、タルク填料分6%、ステキヒトサイズ度6秒(60g/m2換算)、疑似酸性紙)、D;合成紙(ユポFPG#200、坪量158g/m2、王子油化合成紙社製)の各支持体に、ワイヤーバーを用いて塗工量15g/m2になるように塗布した。塗布後、90℃中に10分間放置し乾燥してインクジェット記録媒体とした。
【0055】
<非晶質シリカ微粒子の粒度分布測定>
非晶質シリカ微粒子を水に分散し、コールター社製(米国)コールターカウンター(マルチサイザー、アパーチャー径50μm)を使用して、平均粒径と重量累積%(R)を測定し下記R−R線図より均等数nを求めた。
【0056】
<均等数n>
本発明では以下の条件を設定して作図したR−R線図を使用した。1.横軸の範囲Dpは、Dp=1〜30μmとした。2.縦軸の範囲Rは、R=5〜95とした。3.極Pは原点、即ちDP=1,R=95にとり、均等数nの目盛りをつけ、R−R線図を作成した。そのR−R線図上に、上記コールターカウンターで測定した粒度(μm)と重量累積%(R)をプロットし、均等数nを求めた。
【0057】
<インク吸収性評価>
インク吸収性の評価は、インクジェット記録装置であるキャノン(株)製BJC−420Jを使い、シアンインク、マゼンタインクで重色の矩形パターンを印字し、この印字パターンと未印字部分の境界部分を下記の基準に従って、目視にて評価した。
◎:境界部分には滲みが全く認められない
○:境界部分には殆ど滲みが認められない
△:境界部分には滲みが認められる
×:境界部分に顕著に滲みが認められる
良好なインク吸収性を示すのは、◎乃至○の評価である。
【0058】
<色再現範囲の測定>
エプソン社製インクジェットプリンター(PM700C)により、Y,M,C,R,G,Bのべた印刷を行い、日本電色工業社製分光式色差計PF10を使い、光源はD65/10に設定して、L***を測定した。a*を横軸に、b*を縦軸にとり、Y,R,M,B,C,Gで囲まれた面積を計算して、色再現範囲を求めた。
【0059】
【表1】
Figure 0003751164
【0060】
【表2】
Figure 0003751164
【0061】
【表3】
Figure 0003751164
【0062】
表1、2、3より、BET比表面積が250m2/g以上、平均粒径が4.5μm以上で、且つロジン−ラムラー分布の均等数nが2.7以上の実施例1〜30は、色再現範囲が広いことがわかる。また、平均粒径が4.5μ以上で、ロジン−ラムラー分布の均等数nが2.7以上(比較例4、5、6)でも比表面積が250m2/g以下であると色再現範囲が狭い。同じ塗工液の中で色再現範囲の差が最も小さなものは、実施例7と比較例1との差227であるが、これは実際の印字物で比較すると目視でも鮮やかさに明らかに違いが認められる。また、粒径が4.5μm以上で、比表面積が250m2/g以上(比較例13、14、15、16、17、18、19、20、27、28、29、30)であっても均等数が2.7未満であると、やはり色再現範囲が狭い。又、実施例4、12、13及び実施例8、26、27の支持体サイズ度の違いを比較すると、サイズ度が5秒以上になると色再現範囲が顕著に向上していることが認められる。更にインク受容層にカチオン樹脂が入っていると(塗工液B)、入っていない(塗工液A)ものより色再現範囲は広くなっていることもわかる。また、吸収性は粒径、均等数が大きいと良くなっている。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明により、吸収性がよく、色再現範囲の広いインクジェット記録媒体が供給出来る。

Claims (3)

  1. 支持体上に、少なくとも無機顔料及び高分子接着剤を含有するインク受容層からなる記録媒体であって、該無機顔料が、BET比表面積が250〜400m2/gであり、平均二次粒子径が4.5μm以上、15μm以下であり、且つロジン−ラムラー(Rosin-Rammler)分布の均等数nが2.7以上の非晶質シリカ微粒子であり、インク受容層中に、該非晶質シリカ微粒子に対し該高分子接着剤を2〜30重量%含有することを特徴とするインクジェット記録媒体。
  2. 該支持体が、合成紙、樹脂被覆紙あるいは60g/m2換算ステキヒトサイズ度が5秒以上の紙から選ばれたものである請求項1記載のインクジェット記録媒体。
  3. 該インク受容層が更にカチオン性水溶性樹脂を含有する請求項1または2記載のインクジェット記録媒体。
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