JP3890743B2 - インクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法及びインクジェット記録用紙の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法及びインクジェット記録用紙(以下、単に記録用紙ともいう)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などの記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。この方式で従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インクおよび装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、さまざまな分野に急速に普及している。
【0003】
このインクジェット記録方式で使用される記録用紙としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が要求される。
【0004】
特にインク吸収速度が遅い場合には、2色以上のインク液滴が重なって記録される際に、記録用紙上で液滴がハジキ現象を起こしてムラになったり、また、異なる色の境界領域でお互いの色が滲んだりして画質を大きく低下させやすいために、記録用紙としては高いインク吸収性を持たせるようにすることが必要である。
【0005】
これらの問題を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。
【0006】
例えば、特開昭52−53012号公報に記載されている低サイズ原紙に表面加工用の塗料を湿潤させた記録用紙、特開昭55−5830号に記載されている支持体表面にインク吸収性の塗層を設けた記録用紙、特開昭56−157号公報に記載されている被履層中の顔料として非膠質シリカ粉末を含有する記録用紙、特開昭57−107878号に記載されている無機顔料と有機顔料を併用した記録用紙、特開昭58−110287号公報に記載されている2つの空孔分布ピークを有する記録用紙、特開昭62−111782号に記載されている上下2層の多孔質層からなる記録用紙、特開昭59−68292号、同59−123696号および同60−18383号公報などに記載されている不定形亀裂を有する記録用紙、特開昭61−135786号、同61−148092号および同62−149475号公報等に記載されている微粉末層を有する記録用紙、特開昭63−252779号、特開平1−108083号、同2−136279号、同3−65376号および同3−27976号等に記載されている特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有する記録用紙、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−210984号、同61−20797号、同61−188183号、特開平5−278324号、同6−92011号、同6−183134号、同7−137431号、同7−276789号等に記載されているコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有する記録用紙、および特開平2−276671号公報、同3−67684号公報、同3−215082号、同3−251488号、同4−67986号、同4−263983号および同5−16517号公報などに記載されているアルミナ水和物微粒子を含有する記録用紙等が多数が知られている。
【0007】
一方、インクジェット記録においては、得られる画像の耐水性が改良するために、インク受容層中にカチオン性物質を添加しておき、染料を固定化する方法も種々用いられている。
【0008】
しかしながら、上記の空隙構造を有するインク受容層中において、空隙構造を形成する物質がカチオン性の無機微粒子である場合にはカチオン性コロイダルシリカのように高い空隙率が形成しにくかったり、あるいは、アルミナ水和物などのように高い製造コストになる等の問題点がある。
【0009】
一方、比較的安価に入手できる無機微粒子として例えば表面がアニオン性である微粒子シリカの様な無機微粒子を用い、耐水性を与えるためにカチオン性ポリマーを併用する場合には、表面がアニオン性である無機微粒子とカチオン性ポリマーの間で凝集を形成しやすく、良好な塗布液が形成されなかったり、高い光沢性が得られないと言う欠点がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実態に鑑みてなされたものであって、本発明の第1の目的は、安価に製造でき、高い空隙率、耐水性および高光沢性が得られるインクジェット記録用紙を提供することにある。
【0011】
本発明の第2の目的は、表面がアニオン性の無機微粒子の表面をカチオン性に変換したインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液を提供することにある。
【0012】
本発明の第3の目的は、上記インクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液を安価に製造する方法に関する。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0014】
1.数平均分子量が10万以下の水溶性のカチオン性ポリマーを含有する水溶液に、表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液を、該無機微粒子とカチオン性ポリマーとの比率が、無機微粒子:該カチオン性ポリマー=1:0.01〜1:1で添加し、分散して無機微粒子の表面をカチオン性に置き換える工程を経ることを特徴とするインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
【0015】
2.前記無機微粒子がシリカであることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
【0016】
3.前記シリカが1次粒子の平均粒径が100nm以下である気相法により合成されたシリカであることを特徴とする前記2に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
【0017】
4.前記分散を高圧分散機又は超音波分散機を用いて行うことを特徴とする前記1、2又は3に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
【0018】
5.前記1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法により製造されたカチオン性複合微粒子分散液及び親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明の表面がアニオン性である無機微粒子はカチオン性複合粒子の使用目的により広範なものが使用でき、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化亜鉛等の他各種の天然または合成の無機微粒子を使用することが出来る。
【0021】
中でもシリカはその低い屈折率のために透明性が比較的要求されるインクジェット記録用紙のインク受容層を形成するのに好ましく用いられ、特に、気相法により合成された微粒子シリカは高い空隙率が得られやすいことから好ましい。
【0022】
気相法により合成された微粒子シリカはその表面がアニオン性であるものの、表面に出ているシラノール基数が比較的少ないために、特に高い空隙率のインク受容層が得られることから好ましい。
【0023】
無機微粒子の平均粒径は種々のものが用いることが出来、例えば、平均粒径が0.005〜20μmのものをその使用目的に合わせて種々選択して用いることが出来る。
【0024】
インクジェット記録用紙のインク受容層を形成する無機微粒子としては中でも、1次粒子の平均粒径が100nm以下が好ましく、より好ましくは30nm以下の気相法シリカが好ましい。1次粒子の平均粒径の下限は取り扱い性の観点より通常5nmである。
【0025】
本発明のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液(以下、単にカチオン性複合微粒子分散液或いは複合微粒子分散液ともいう)は、数平均分子量10万以下の水溶性カチオン性ポリマー(以下、単にカチオン性ポリマーともいう)を含有する水溶液に、表面がアニオン性である無機微粒子分散液を含有する分散液を添加して分散して得られるものである。
【0026】
本発明のカチオン性ポリマーは好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するポリマーであり、特に好ましくは第4級アンモニウム塩基を有するモノマーの単独重合体または他の共重合しうる1または2以上のモノマーとの共重合体である。
【0027】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーとしては例えば以下の例を挙げることが出来る。
【0028】
【化1】
【0029】
【化2】
【0030】
上記第4級アンモニウム塩基と共重合し得るモノマーはエチレン性不飽和基を有する化合物であり、例えば以下の具体例を挙げることが出来る。
【0031】
【化3】
【0032】
特に第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーが共重合体である場合、カチオン性モノマーの比率は10モル%以上が好ましく、より好ましくは20モル%以上、特に好ましくは30モル%以上である。
【0033】
第4級アンモニウム塩基を有するモノマーは単一でも2種類以上であっても良い。
【0034】
以下に、本発明に好ましく用いられる第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーの具体例を挙げる。
【0035】
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化6】
【0038】
【化7】
【0039】
上記第4級アンモニウム塩基を有するカチオン性ポリマーは水溶性であるが、水混和性の有機溶媒と水の混合溶媒に溶解するものも含む。
【0040】
ここで水混和性の有機溶媒とは、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノールなどのアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリンなどのグリコール類、酢酸エチル、酢酸プロピル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類など、水に対して通常10%以上溶解し得る有機溶媒を言う。この場合、有機溶媒の使用量は水の使用量以下であることが好ましい。
【0041】
本発明の水溶性カチオン性ポリマーは数平均分子量が10万以下であることが必要である。
【0042】
ここで数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーから求められたポリスチレン値に換算した値である。
【0043】
数平均分子量が10万を越える場合には、カチオンポリマーの水溶液を表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液に添加した際に凝集物の発生が激しく、またその後分散処理を施しても均一な分散液に成りにくく粗大粒子が多数存在して均一な分散液に成りにくい。このようなカチオンポリマーと無機微粒子から成る複合微粒子分散液を使用してインクジェット記録用紙に適用した場合には、高い光沢性が得られなくなる。
【0044】
数平均分子量の下限は染料の耐水性の点から通常2000以上であり、特に5000以上が好ましい。
【0045】
上記無機微粒子とカチオン性のポリマーの比率は、無機微粒子の種類や粒径、あるいはカチオン性ポリマーの種類や平均分子量で変わり得る。
【0046】
本発明のカチオン性複合微粒子分散液は、微粒子の表面がカチオン性に完全に置き換わって安定化させる必要があり、無機微粒子:カチオン性ポリマー=1:0.01〜1:1である。
【0047】
本発明の無機微粒子とカチオン性ポリマーの比率が上記の範囲であると、無機微粒子のアニオン成分がほぼ完全にカチオン成分によって被覆されるため、無機微粒子とカチオン性ポリマーとのイオン結合による粗大粒子形成をひきおこすことがなく、好ましい。
【0048】
本発明のカチオン性複合微粒子分散液を製造する場合には、表面がアニオン性である無機微粒子のアニオン部分をカチオン性ポリマーのカチオン部分で徐々に置き換え最終的に全てのアニオン部分をカチオン変換する必要がある。そのため、無機微粒子の分散液とカチオン性ポリマーの添加方法としては、カチオン性ポリマーを含有する水溶液中に表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液を添加する必要がある。
【0049】
この逆に、無機微粒子の分散液中にカチオン性ポリマー含有水溶液を撹拌しながら添加した場合には、途中で液全体が一つの巨大な固まりになり撹拌が殆ど出来なくなる。この理由は定かではないが初めの液全体がアニオン性になっている中にカチオン性ポリマーが徐々に添加されてくると、アニオンが徐々に減少し、途中で電荷的に中性領域を通過するために液全体が巨大な固まりに成ってしまうためではないかと考えられる。この様な場合であっても、カチオン性ポリマーが充分存在すれば、撹拌を時間をかけて充分行えば最終的には徐々に液状化してくるが生産効率上あまり好ましいことではない。
【0050】
カチオン性ポリマー含有水溶液中に、表面がアニオン性無機微粒子分散液を徐々に添加することで、液全体は常にカチオン性を維持されるため比較的均質な分散液が得られる。
【0051】
このようにして得られた分散液は、しかしながらミクロ的に見た場合、微小のダマ状凝集物が多数存在している。これは無機微粒子分散液が添加された箇所では局所的には無機微粒子の分散液に対してカチオン性ポリマーが不足するために、電荷的に不安定な状態が形成される為と推定される。
【0052】
このような微小ダマ状凝集物はその後の分散処理を行うことにより軽減される。
【0053】
そのような分散処理を行うことにより、微小ダマ状凝集物が多数存在することのない、ほぼ元々の無機微粒子の粒子径を有するカチオン変換された無機微粒子の分散液が得られる。
【0054】
この分散処理方法としては、高速回転分散機、媒体撹拌型分散機(ボールミル、サンドミルなど)、超音波分散機、コロイドミル分散機、ロールミル分散機、高圧分散機等従来公知の各種の分散機を使用することが出来るが、本発明では形成されるダマ状微粒子の分散を効率的に行うという点から超音波分散機または高圧分散機が好ましく用いられる。
【0055】
超音波分散機は通常は20〜25kHzの超音波を照射することで固液界面にエネルギーを集中させることで分散するものであり非常に効率的に分散され、少量の分散液を調製使用する場合に、特に適している。
【0056】
一方、高圧分散機は3個または5個のピストンを持った高圧ポンプの出口に、ねじまたは油圧によってその間隙を調整できるようになっている均質バルブが1個または2個備えられたものであり、高圧ポンプにより送液された液媒体が均質バルブによりその流れが絞られて圧力がかかり、この均質バルブを通過される瞬間に微小なダマ物質が粉砕される。
【0057】
この方式は連続的に多量の液を分散できるために、多量の液を製造する場合特に好ましい方式である。均質バルブに加えられる圧力は通常50〜1000kg/cm2であり、分散は1回のパスで済ますことも多数回繰り返して行うことも出来る。
【0058】
上記の分散は2種以上を併用することも可能である。
【0059】
カチオン性複合微粒子分散液を調製する際には、各種の添加剤を添加して調製することが出来る。
【0060】
例えば、ノニオン性またはカチオン性の各種の界面活性剤、消泡剤、ノニオン性の親水性ポリマー(ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、ポリアクリルアミド、各種の糖類、ゼラチン、プルラン等)、ノニオン性またはカチオン性のラテックス分散液、水混和性有機溶媒(酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、アセトンなど)、無機塩類、pH調整剤など、必要に応じて適宜使用することが出来る。
【0061】
特に水混和性有機溶媒は、表面がアニオン性である無機微粒子含有分散液とカチオン性ポリマー含有水溶液を混合した際の微小なダマの形成が抑制されるために好ましい。そのような水混和性有機溶媒は分散液中に0.1〜20重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%使用される。
【0062】
カチオン性複合微粒子分散液を調製する際のpHは無機微粒子の種類やカチオン性ポリマーの種類、各種の添加剤等により広範に変化し得るが、一般的にはpHが1〜8であり、特に2〜7が好ましい。
【0063】
次に本発明のカチオン性複合微粒子分散液を用いるインクジェット記録用紙について説明する。
【0064】
本発明のインクジェット記録用紙が有するインク吸収層(本発明においては空隙層ともいう)は上記カチオン性複合微粒子と親水性バインダーを基本的に含有するものである。
【0065】
親水性バインダーとしては、従来公知の各種親水性バインダーが用いられるが、本発明のカチオン性複合微粒子分散液と混ぜ合わせた際に凝集や著しい増粘作用を示さない親水性バインダーが好ましい。そのような親水性バインダーとしては、例えばゼラチン(酸処理ゼラチンが好ましい)、ポリビニルピロリドン(平均分子量が約20万以上が好ましい)、プルラン、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリエチレングリコール(平均分子量が10万以上が好ましい)、ヒドロキシエチルセルロース、デキストラン、デキストリン、水溶性ポリビニルブチラールを挙げることができる。これらの親水性バインダーは単独で使用しても良く、2種以上を併用しても良い。
【0066】
特に好ましい親水性バインダーは、ポリビニルアルコールまたはカチオン変成ポリビニルアルコールである。
【0067】
本発明で用いられるポリビニルアルコールは平均重合度が300〜4000のものが好ましく用いられ、特に平均分子量が1000以上のものが得られる皮膜の脆弱性が良好であることから好ましい。また、ポリビニルアルコールのケン化度は70〜100%のものが好ましく、80〜100%のものが特に好ましい。
【0068】
また、カチオン変性ポリビニルアルコールは、カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体と酢酸ビニルとの共重合体をケン化することにより得られる。
【0069】
カチオン性基を有するエチレン性不飽和単量体としては、例えばトリメチル−(2−アクリルアミド−2,2−ジメチルエチル)アンモニウムクロライド、トリメチル−(3−アクリルアミド−3,3−ジメチルプロピル)アンモニウムクロライド、N−ビニルイミダゾール、N−ビニル−2−メチルイミダゾール、N−(3−ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド、ヒドロキシルエチルトリメチルアンモニウムクロライド、トリメチル−(−メタクリルアミドプロピル)アンモニウムクロライド、N−(1,1−ジメチル−3−ジメチルアミノプロピル)アクリルアミド等が挙げられる。
【0070】
カチオン変性ポリビニルアルコールのカチオン変性基含有単量体の比率は、酢酸ビニルに対して0.1〜10モル%、好ましくは0.2〜5モル%である。
【0071】
カチオン変性ポリビニルアルコールの重合度は通常500〜4000、好ましくは1000〜4000が好ましい。
【0072】
また、カチオン変成ポリビニルアルコールのケン化度は通常60〜100モル%、好ましくは70〜99モル%である。
【0073】
本発明で特に好ましい態様は、表面がアニオン性である無機微粒子として、微粒子シリカを1次粒子として用いて得られたカチオン性複合微粒子分散液及び親水性バインダーとしてポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールを用いて、作製したインク吸収層を有するインクジェット記録用紙である。
【0074】
この場合、インク吸収層中で微粒子シリカ表面のシラノール基とビニルアルコールの水酸基が弱い水素結合を行い、軟凝集体が形成される。
【0075】
本発明のインクジェット記録用紙を作製するのに用いられる無機微粒子としては、良好な光沢性を得るために、1次粒子の平均粒径が100nm以下、特に好ましくは30nm以下、最も好ましくは10nm以下の気相法により合成されたシリカであるが、親水性バインダーに対するシリカの比率は特に重量比で2〜10、特に好ましくは3〜8である。
【0076】
本発明のインクジェト記録用紙は、高光沢性で高い空隙率を皮膜の脆弱性を劣化させずに得るために、前記親水性バインダーが硬膜剤により硬膜されていることが好ましい。
【0077】
硬膜剤は、一般的には前記親水性バインダーと反応し得る基を有する化合物あるいは親水性バインダーが有する異なる基同士の反応を促進するような化合物であり、親水性バインダーの種類に応じて適宜選択して用いられる。
【0078】
硬膜剤の具体例としては、例えば、エポキシ系硬膜剤(ジグリシジルエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ジグリシジルシクロヘキサン、N,N−ジグリシジル−4−グリシジルオキシアニリン、ソルビトールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)、アルデヒド系硬膜剤(ホルムアルデヒド、グリオキザール等)、活性ハロゲン系硬膜剤(2,4−ジクロロ−4−ヒドロキシ−1,3,5−s−トリアジン等)、活性ビニル系化合物(1,3,5−トリスアクリロイル−ヘキサヒドロ−s−トリアジン、ビスビニルスルホニルメチルエーテル等)、ほう酸およびその塩、ほう砂、アルミ明礬等が挙げられる。
【0079】
特に好ましい親水性バインダーとしてポリビニルアルコールおよびまたはカチオン変成ポリビニルアルコールを使用する場合には、ほう酸およびその塩、およびエポキシ系硬膜剤から選ばれる硬膜剤を使用するのが好ましい。
【0080】
最も好ましいのはほう酸およびその塩から選ばれる硬膜剤である。
【0081】
本発明で、ほう酸またはその塩としては、硼素原子を中心原子とする酸素酸およびその塩のことを示し、具体的にはオルトほう酸、二ほう酸、メタほう酸、四ほう酸、五ほう酸、および八ほう酸およびそれらの塩が含まれる。
【0082】
上記硬膜剤の使用量は親水性バインダーの種類、硬膜剤の種類、無機微粒子の種類や親水性バインダーに対する比率等により変化するが、通常親水性バインダ1g当たり5〜500mg、好ましくは10〜300mgである。
【0083】
上記硬膜剤は、空隙層を構成する塗布液を塗布する際に空隙層形成の塗布液中及びまたは空隙層に隣接するその他の層を形成する塗布液中に添加してもよく、あるいは予め硬膜剤を含有する塗布液を塗布してある支持体上に、前記空隙層を形成する塗布液を塗布したり、さらには空隙層を形成する硬膜剤非含有の塗布液を塗布乾燥後に硬膜剤溶液をオーバーコートするなどして空隙層に硬膜剤を供給することができるが、好ましくは製造上の効率から、空隙層を形成する塗布液またはこれに隣接する層の塗布液中に硬膜剤を添加して、空隙層を形成するのと同時に硬膜剤を供給するのが好ましい。
【0084】
空隙層を形成するのが微粒子シリカおよびポリビニルアルコール又は変性ポリビニルアルコールである特に好ましい態様においては、空隙層を形成する塗布液中に予め硬膜剤を添加しておき、一定時間(好ましくは10分以上、特に好ましくは30分以上)経過してから支持体上に塗布・乾燥するとより高い空隙率を皮膜の脆弱性を悪化させることなく達成することが出来る。
【0085】
また、上記硬膜剤は本発明のカチオン性の複合微粒子分散液を調製する場合に添加剤として予め添加しておくこともできる。
【0086】
本発明のインクジェト記録用紙の空隙層および必要に応じて設けられるその他の層には、前記した以外に各種の添加剤を添加することが出来る。
【0087】
例えば、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等の有機ラテックス微粒子、流動パラフィン、ジオクチルフタレート、トリクレジルホスフェート、シリコンオイル等の油滴微粒子、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭57−74193号公報、同57−87988号公報及び同62−261476号公報に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号公報、同60−72785号公報、同61−146591号公報、特開平1−95091号公報及び同3−13376号公報等に記載されている退色防止剤、特開昭59−42993号公報、同59−52689号公報、同62−280069号公報、同61−242871号公報および特開平4−219266号公報等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0088】
本発明のインクジェット記録用紙の空隙容量は通常20〜40ml/m2であり、空隙層の空隙率は通常0.5〜0.8である。
【0089】
上記、空隙層は2層以上から構成されていてもよく、この場合、それらの空隙層の構成はお互いに同じであっても異なっていても良い。
【0090】
本発明でインクジェット記録用紙の支持体としては、従来インクジェット記録用紙として公知の紙支持体、プラスチック支持体、複合支持体など適宜使用できるが、より高い濃度で鮮明な画像を得るためには支持体中にインク液が浸透しない疎水性支持体を用いるのが好ましい。
【0091】
疎水性支持体としては、例えば透明もしくは不透明のプラスチック支持体又は紙の表面をプラスチック樹脂で被覆した支持体等が挙げられる。
【0092】
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルム等が挙げられ、中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、10〜200μmが好ましい。透明支持体のインク受容層側およびバック層側には公知の下引き層を設けることが、インク受容層やバック層と支持体の接着性の観点から好ましい。
【0093】
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0094】
上記支持体とインク受像層の接着強度を大きくする等の目的で、インク受容層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明の記録シートは必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0095】
本発明のインクジェット記録用紙では原紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0096】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP,LBSP,NBKP,NBSP,LDP,NDP,LUKP,NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP,NBSP,LBSP,NDP,LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPおよびまたはLDPの比率は10重量%以上、70重量%以下が好ましい。
【0097】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0098】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0099】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500ccが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分重量%と42メッシュ残分重量%との和が30乃至70%が好ましい。なお、4メッシュ残分重量%は20重量%以下であることが好ましい。
【0100】
原紙の坪量は30〜250gが好ましく、特に50〜200gが好ましい。原紙の厚さは40〜250μmが好ましい。
【0101】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7〜1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20〜200gが好ましい。
【0102】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0103】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0104】
特にインク受容層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して通常3〜20重量%、好ましくは4〜13重量%である。
【0105】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した物も本発明で使用できる。
【0106】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量はインク受容層やバック層を設けた後で低湿および高湿下でのカールを最適化するように選択されるが、通常インク受容層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0107】
更に上記ポリエチレン被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
【0108】
▲1▼引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2乃至30kg、横方向が1〜20kgであることが好ましい、
▲2▼引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で縦方向が10〜200g、横方向が20〜200gが好ましい、
▲3▼圧縮弾性率≧103kgf/cm2が好ましい、
▲4▼表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い、
▲5▼不透明度:直線光入射/拡散光透過条件の測定条件で可視域の光線での透過率が20%以下、特に15%以下が好ましい。
【0109】
本発明の記録用紙の空隙層および下引き層など必要に応じて適宜設けられる各種の親水性層を支持体上に塗布する方法は公知の方法から適宜選択して行うことが出来る。好ましい方法は、各層を構成する塗布液を支持体上に塗設して乾燥して得られる。この場合、2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての親水性バインダー層を1回の塗布で済ます同時塗布が好ましい。
【0110】
塗布方式としては、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
【0111】
本発明のインクジェット記録用紙を用いて画像記録する際には、水性インクを用いた記録方法が好ましく用いられる。
【0112】
上記水性インクとは、下記着色剤及び液媒体、その他の添加剤を有する記録液体である。着色剤としてはインクジェットで公知の直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料あるいは食品用色素等の水溶性染料あるいは水分散性顔料が使用できる。
【0113】
水性インクの溶媒としては、水及び水溶性の各種有機溶剤、例えば、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトンまたはケトンアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、トリエタノールアミン等の多価アルコール類;エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類等が挙げられる。
【0114】
これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール、トリエタノールアミンやグリセリン等の多価アルコール類、トリエチレングリコールモノブチルエーテルの多価アルコールの低級アルキルエーテル等は好ましいものである。
【0115】
その他の水性インクの添加剤としては、例えばpH調節剤、金属封鎖剤、防カビ剤、粘度調整剤、表面張力調整剤、湿潤剤、界面活性剤及び防錆剤等が挙げられる。
【0116】
水性インク液は記録用紙に対する濡れ性を良好にするために、20℃において、25〜60dyn/cmが好ましく、より好ましくは30〜50dyn/cmの範囲内の表面張力を有するのが好ましい。
【0117】
【実施例】
以下に本発明を実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明の実施態様はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾重量%を示す。
【0118】
実施例1
予め均一に分散されている平均粒径が0.25μmの酸化チタンの水分散液A(酸化チタンを40重量%含有、pH=5.5、分散剤としてトリポリ燐酸ナトリウムの0.5重量%含有)の10Lを、カチオン性ポリマー(例示ポリマーP−2)を20重量%含有し、メタノールを10重量%含有する水溶液C(pH=4.0)3Lに撹拌しながら添加した。酸化チタンの分散液を添加する際に、1〜5mm程度の微小なダマが多数発生したが、添加途中で液全体が撹拌出来なくなることはなかった。
【0119】
次いで三和工業株式会社製高圧分散機で500kg/cm2で分散して均一な分散液Bを得た。顕微鏡で分散液を調べたが、特に凝集物や粗大なダマの存在はなかった。
【0120】
次に、こうして得られた分散液Bおよび、分散前の酸化チタン分散液Aに、下記のカチオン性界面活性剤(CS−1)の5重量%水溶液およびアニオン界面活性剤(AS−1)の5重量%水溶液をそれぞれ分散液1L当たり10ml撹拌しながら添加し分散液中に発生している凝集物を顕微鏡で観察した。
【0121】
分散前の酸化チタン分散液Aにアニオン性界面活性剤を添加した場合には凝集物の発生は一切ないが、カチオン界面活性剤を添加した場合には著しい凝集物の発生が認められた。一方、分散後のカチオン変換された複合微粒子分散液Bにアニオン界面活性剤を添加した場合には著しい凝集物が確認されたが、カチオン界面活性剤を添加した場合には凝集物やダマの発生はなかった。
【0122】
以上から、本発明に従って得られた分散液はカチオン性ポリマーに対して極めて安定なカチオン変換された複合無機微粒子が形成されていることが分かる。
【0123】
【化8】
【0124】
比較例1
実施例1において、添加順序を入れ替え、水溶液Cを酸化チタン分散液Aに添加した以外は実施例1と同様にして分散液を調製した。
【0125】
その結果、水溶液Cの添加途中で液全体が著しく増粘し、撹拌が殆ど出来ない状態になった。実質的に撹拌が行われない状態で更に添加を続け、約6時間撹拌を行ったところ、液は均一な状態になったが、微小なダマは実施例1よりはるかに多く存在した。
【0126】
比較例2
実施例1において、カチオン性ポリマーとして、組成はP−2と同じであるが、平均分子量が約15万のカチオン性ポリマーに置き換えた以外は実施例1と同様にして分散液の調製を行った。
【0127】
その結果、酸化チタン分散液Aの添加途中から急激な増粘が始まり、全ての添加を終了してから更に10時間撹拌したが液状には成らなかった。
【0128】
またこの液を超音波分散機で分散を行ったが液状態には成らなかった。
【0129】
実施例2
実施例1で高圧分散機を使用する代わりに、超音波分散機を使用して実施例1を繰り返した(但し、分散量は実施例1の1/10で行った)。
【0130】
その結果、実施例1同様、分散後に均一なカチオン性の複合微粒子分散液が得られた。
【0131】
実施例3
予め均一に分散されている1次粒子の平均粒径が0.007μmの気相法シリカ(日本アエロジル工業株式会社製:A300)の18%水分散液A1(pH=2.5、エタノール1重量%含有)4500mlを、例示カチオン性ポリマーP−9を12重量%、n−プロパノール5重量%およびエタノールを2重量%含有する水溶液C1(pH=2.5、サンノブコ株式会社製消泡剤SN381を0.2g含有)1000mlに、室温で撹拌しながら添加した。撹拌途中でダマ状物質が形成したが撹拌が出来ない状態にはならなかった。
【0132】
次に、5%ホウ酸水溶液400mlを撹拌しながら徐々に添加した。
【0133】
次いで、実施例1と同様にして高圧分散機で分散して均一でほぼ透明な分散液B1を得た。
【0134】
得られた分散液B1およびシリカ分散液A1に実施例1と同様にしてアニオン性界面活性剤およびカチオン性界面活性剤を使用して凝集状態を判定した。
【0135】
その結果、実施例1と同様に、シリカ分散液A1はカチオン界面活性剤のみ凝集物を形成し、カチオン性複合分散液B1はアニオン性界面活性剤を添加した時のみ凝集物の形成が確認され、複合粒子が形成されていることが確認された。
【0136】
実施例4
実施例3において、C1液に使用したカチオン性ポリマーP−9と組成は同じであるが平均分子量を4万にしたカチオン性ポリマーを使用した以外は実施例3と同様の方法によって分散液B2を得た。
【0137】
シリカ分散液の添加終了時に稍増粘したが撹拌が止まることはなかった。
【0138】
得られた分散液B2の状態は透明で実施例3で得られたものと同様凝集物は殆どなかった。
【0139】
実施例5
実施例3において、C1液に使用したカチオン性ポリマーP−9と組成は同じであるが平均分子量を7万にしたカチオン性ポリマーを使用した以外は実施例3と同様の方法によって分散液B3を得た。
【0140】
シリカ分散液の添加終了時に増粘し、撹拌が一時的に止まったが約20分の撹拌により液の状態は良好になった。
【0141】
得られた分散液B3の状態は透明で実施例3で得られたものに比べて稍凝集物が多いが、高圧分散を2回繰り返すことで実施例3と同様の分散液を得ることが出来た。
【0142】
比較例3
実施例3において、C1液に使用したカチオンポリマーP−9と組成は同じであるが平均分子量を13万にしたカチオン性ポリマーを使用した以外は実施例3を繰り返した。
【0143】
シリカ分散液の添加の途中で液全体がゲル状になり、超音波分散を行ったが、液状態には成らなかった。
【0144】
実施例6
実施例3において、カチオン性ポリマーを例示ポリマーP−13に変更した以外は実施例3を繰り返し、実施例3と同様の良好なカチオン性複合微粒子分散液B4を得た。
【0145】
実施例7
実施例3で得た分散液を使用して以下のようにして多層式インクジェット記録用紙を作製した。各塗布液は以下に示す添加剤を45℃で順次、添加し調製した。
【0146】
蛍光増白剤分散液:3%の酸処理ゼラチン水溶液100ml(サポニンを4g、カチオン性ポリマーP−9を2g含有)中に、チバガイギー株式会社製の油溶性蛍光増白剤(UVITEX−OB)0.6gとジイソデシルフタレート12gを酢酸エチル25mlに加熱溶解した液を添加し、超音波ホモジナイザーで乳化分散し、全量を純水で140mlに仕上げる。
【0147】
上記の各塗布液の粘度は、40℃で30〜40cp、15℃で1万〜2万の粘度であった。
【0148】
上記のようにして得られた塗布液を、170g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚さ240μm、記録面側に厚さ35μmのポリエチレン層中に9重量%のアナターゼ型二酸化チタンを含有し、裏面は厚さ約30μmのポリエチレン層)上の記録面側(支持体の75度光沢度は32%、ゼラチン約0.1g/m2下引き層として塗設済み)に、第1層(60μm)、第2層(50μm)、第3層(50μm)、第4層(40μm)の順になるように各層を塗布した。かっこ内はそれぞれの湿潤膜厚を示し、第1層〜第4層は同時塗布した。
【0149】
塗布はそれぞれの塗布液を40℃で4層式スライドホッパーで行い、塗布直後に0℃に保たれた冷却ゾーンで20秒間冷却した後、20〜30℃の風で60秒間、45℃の風で60秒間、50℃の風で60秒間順次乾燥して本発明の記録用紙−1を得た。
【0150】
得られた記録用紙は次いで35℃で2日間保存した。
【0151】
次に、記録用紙−1において、カチオン性ポリマーとして実施例4で作製した分散液B2に変更した記録用紙−3およびカチオン性ポリマーとして実施例5で作製した分散液B3に変更した記録用紙−4を記録用紙−1と同様にして作製した。
【0152】
得られたインクジェット記録用紙について、以下の項目について評価した。
【0153】
(1)光沢度:日本電色工業株式会社製変角光沢度計(VGS−1001DP)を用いて75度光沢を測定した
(2)インク吸収性:ヒューレットパッカード株式会社製インクジェットプリンター(フォトスマート)でカラー画像の印字を行い、高インク領域における画質を評価した
○:エッジ部が鮮明であり、ベタ部のマダラムラもない
△:エッジ部は鮮明であるが高濃度ベタ部でのマダラムラが少し認められる
×:エッジ部が不鮮明でありマダラムラも顕著
(3)耐水性 :(2)で使用したインクジェットプリンターでカラーの文字画像を印字し、印字後純水中に10秒間浸漬して滲み度合いを評価した
○:殆ど滲みの痕跡なし
△:若干滲みがあるが文字の識別は可能
×:文字の識別が不能
【0154】
【表1】
【0155】
表1に示す結果から、本発明の記録用紙−1、3、4はいずれも高い光沢性、インク吸収性および耐水性を備えていることが判る。
【0156】
特に平均分子量が5万以下のカチオン性ポリマーを使用した記録用紙−1と3の光沢度が高いことが分かる。
【0157】
【発明の効果】
本発明によるインクジェット記録用紙は安価に製造でき、高い空隙率、耐水性および高光沢性が得られ優れた効果を有する。表面がアニオン性の無機微粒子の表面をカチオン性に変換したインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液が提供でき、且つ、インクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液を安価に製造する方法を提供できる。
Claims (5)
- 数平均分子量が10万以下の水溶性カチオン性ポリマーを含有する水溶液中に、表面がアニオン性である無機微粒子を含有する分散液を、該無機微粒子とカチオン性ポリマーとの比率が、無機微粒子:該カチオン性ポリマー=1:0.01〜1:1で添加し、分散して無機微粒子の表面をカチオン性に置き換える工程を経ることを特徴とするインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
- 前記無機微粒子がシリカであることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
- 前記シリカが1次粒子の平均粒径が100nm以下である気相法により合成されたシリカであることを特徴とする請求項2に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
- 前記分散を高圧分散機又は超音波分散機を用いて行うことを特徴とする請求項1、2又は3に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法。
- 請求項1〜4の何れか1項に記載のインクジェット記録用紙用カチオン性複合微粒子分散液の製造方法により製造されたカチオン性複合微粒子分散液及び親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布することを特徴とするインクジェット記録用紙の製造方法。
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