JP3666143B2 - インクジェット記録用紙 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、水性インクを用いて記録を行うインクジェット記録用紙に関し、特にインク吸収性を改善したインクジェット記録用紙に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙などのインクジェット記録シートに付着させ、画像・文字などの記録を行うものであるが、比較的高速、低騒音、多色化が容易である等の利点を有している。この方式で従来から問題となっていたノズルの目詰まりとメンテナンスについては、インクおよび装置の両面から改良が進み、現在では各種プリンター、ファクシミリ、コンピューター端末等、さまざまな分野に急速に普及している。
【0003】
このインクジェット記録方式で使用されるインクジェット記録用紙としては、印字ドットの濃度が高く、色調が明るく鮮やかであること、インクの吸収が早く印字ドットが重なった場合に於いてもインクが流れ出したり滲んだりしないこと、印字ドットの横方向への拡散が必要以上に大きくなく、かつ周辺が滑らかでぼやけないこと等が要求される。
【0004】
特にインク吸収速度が遅い場合には、2色以上のインク液滴が重なって記録される際に、インクジェット記録用紙上で液滴がハジキ現象を起こしてムラになったり、また、異なる色の境界領域でお互いの色が滲んだりして画質を大きく低下させやすいために、インクジェット記録用紙としては高いインク吸収性を持たせるようにすることが必要である。
【0005】
これらの問題を解決するために、従来から非常に多くの技術が提案されている。
【0006】
例えば、特開昭52−53012号に記載されている低サイズ原紙に表面加工用の塗料を湿潤させたインクジェット記録用紙、特開昭55−5830号に記載されている支持体表面にインク吸収性の塗層を設けたインクジェット記録用紙、特開昭56−157号に記載されている被履層中の顔料として非膠質シリカ粉末を含有するインクジェット記録用紙、特開昭57−107878号に記載されている無機顔料と有機顔料を併用したインクジェット記録用紙、特開昭58−110287号に記載されている2つの空孔分布ピークを有するインクジェット記録用紙、特開昭62−111782号に記載されている上下2層の多孔質層からなるインクジェット記録用紙、特開昭59−68292号、同59−123696号および同60−18383号などに記載されている不定形亀裂を有するインクジェット記録用紙、特開昭61−135786号、同61−148092号および同62−149475号等に記載されている微粉末層を有するインクジェット記録用紙、特開昭63−252779号、特開平1−108083号、同2−136279号、同3−65376号および同3−27976号等に記載されている特定の物性値を有する顔料や微粒子シリカを含有するインクジェット記録用紙、特開昭57−14091号、同60−219083号、同60−210984号、同61−20797号、同61−188183号、特開平5−278324号、同6−92011号、同6−183134号、同7−137431号、同7−276789号等に記載されているコロイド状シリカ等の微粒子シリカを含有するインクジェット記録用紙、および特開平2−276671号、同3−67684号、同3−215082号、同3−251488号、同4−67986号、同4−263983号および同5−16517号などに記載されているアルミナ水和物微粒子を含有するインクジェット記録用紙等が多数知られている。
【0007】
しかし、インク受容層がインクを吸収したり保持するための空隙を多く有する層のみから構成される場合、空隙の多いインク受容層が空気との界面や皮膜表面のミクロな凹凸を多く有することになり、インク受容層への入射光が散乱されたり、透過が妨げられるために、光沢が出にくくなったり不透明になりやすい。
【0008】
また、空隙を形成するため顔料自身の凹凸や顔料の2次凝集体の凹凸による皮膜表面の平滑性が低下して光沢が出にくい欠点がある。
【0009】
更に、インク吸収容量をあげるため、空隙を増やす目的で空隙層の膜厚が増加する傾向であるが、空隙に浸透したインクに光が到達しにくくなるため画像が白っぽくなり、色再現性及び色濃度が低下する等の欠点を有する。
【0010】
そのため、空隙層の空隙率を増やし、膜厚が薄い空隙層で空隙率をあげる検討も行われているが、顔料の分散性、塗布液粘度上昇、さらにはインク受理層の塗布、乾燥後のひび割れ等のさまざまな問題を有する。
【0011】
従って、空隙の多いインク受容層で高い光沢性や透明性を維持しつつ、色再現性や色濃度の高い画像を得るのは困難であった。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記の実態に鑑みてなされたものであって、本発明の第1の目的は、優れたインク吸収性、高画像濃度であるインクジェット記録用紙を得ることであり、第2の目的は、さらに光沢が高く、微小ひび割れ発生が無い、インクジェット記録用紙を得ることにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記目的は以下の構成により達成される。
【0014】
1.紙の両面をポリエチレンで被膜し、不透明度85%以上である支持体と、この支持体上に設けられたインクを受理する1層の空隙層とを有し、
この1層の空隙層は、平均粒径が0.005〜0.1μmのシリカ微粒子と沸点が130℃以下の有機溶媒を含む塗布液を前記支持体上に塗布乾燥して形成され、乾燥膜厚が36.4〜50μmであり、空隙容量が20〜40ml/m2であることを特徴とするインクジェット記録用紙。
【0015】
2.前記空隙層は、前記シリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、該シリカ微粒子の該親水性バインダー1種に対する重量比が10以上、200未満であることを特徴とする前記1に記載のインクジェット記録用紙。
【0016】
3.前記空隙層は、前記シリカ微粒子と親水性バインダーを少なくとも有し、該シリカ微粒子の該親水性バインダー存在下で軟凝集させて得た液を塗布乾燥して形成されたことを特徴とする前記1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0020】
本発明のインクジェット記録用紙が有するインク空隙受理層(以下、単に空隙層ともいう)は、無機または有機の固体粒子とその間に形成される空隙から成る。
【0021】
好ましい空隙の形成方法は以下の2種である。
【0022】
(1)親水性バインダーに対して概ね等量以上(好ましくは1.0倍以上)の容積を有する固体微粒子及びまたは微粒子油滴と親水性バインダーを含有する塗布液を支持体上に塗布して固体微粒子の間に空隙を作成する方法、
(2)平均粒径が約0.1μm程度以下の固体微粒子を塗布液調整時または皮膜形成時に凝集させて2次粒子または3次元構造を形成して空隙を作成する方法、
上記空隙の大きさは好ましくは20〜200Å、さらに好ましくは40〜100Åであり、充填物の大きさや皮膜形成時の製造条件もこの様な空隙を形成する条件になるように設定するのが好ましい。
【0023】
一方、上記(1)(2)の方法はインクジェット記録用紙を低コストで作成すると言う観点から複雑な製造工程を取らずに作成できる方法が好ましい。
【0024】
本発明のインクジェット記録用紙の上記空隙層は皮膜としての特性を維持するためにバインダーを有していることが好ましい。
【0025】
このバインダーとしては従来公知の各種のバインダーを使用することが出来るが、インクより高い浸透性が得られる親水性バインダーが好ましく用いられる。しかしながら、親水性バインダーの使用に当たっては、親水性バインダーが膨潤して、インクの初期の浸透時に膨潤して空隙を塞いでしまわないことが重要であり、この観点から比較的室温付近で膨潤性の低い親水性バインダーが好ましく用いられる。特に好ましい親水性バインダーは完全または部分ケン化のポリビニルアルコールまたはカチオン変成ポリビニルアルコールでる。
【0026】
ポリビニルアルコールの中でも特に好ましいのはケン化度が80以上の部分または完全ケン化したものである。また、皮膜脆弱性を改良する観点から、平均重合度は500〜10000が好ましく、特に好ましくは1000〜5000のものが用いられる。
【0027】
また、カチオン変成ポリビニルアルコールとしては、例えば特開昭61−10483号に記載されているような、第1〜3級アミノ基や第4級アンモニウム基を上記ポリビニルアルコールの主鎖または側鎖中に有するポリビニルアルコールである。
【0028】
また、前記空隙層中には他の親水性バインダーを含有させることが出来るが、好ましくはそれらの親水性バインダーは上記ポリビニルアルコールまたはカチオン変成ポリビニルアルコールに対して概ね20重量%以下であることが好ましい。
【0029】
本発明のインクジェット記録用紙の空隙層を形成する場合において、特に好ましい態様である、前記(1)または(2)による空隙作成の場合、固体微粒子の親水性バインダーに対する容量比は3以上が好ましく、特に4以上にするのが好ましい。
【0030】
本発明のインクジェット記録用紙の空隙層の空隙の容量はインクジェット記録用紙1m2当たり20ml/m2以上であることが好ましい。空隙容量が20ml/m2未満の場合、低インク量の吸収性は良好であるものの高いインク量の印字の際にインクが溢れて画質を低下させたり、あるいは印字後の乾燥性が遅いなどの問題が生じやすい。
【0031】
一方、空隙容量の上限は特に制限されないが、空隙層の乾燥膜厚は概ね50μm以下にすることがひび割れ等の皮膜の物理的特性を悪化させないために必要であることから概ね40ml/m2以下である。
【0032】
上記(1)の方法において、20ml/m2以上の空隙容量を達成するためには空隙層の空隙率を100容量%以上にすることが好ましい。
【0033】
ここで空隙容量とは、空隙層中の乾燥膜厚から空隙層中のバインダーや各種の充填剤等の固形分の容量の総量を差し引いた値であり、空隙率はこれら固形分の容量に対する空隙量の割合を示す。
【0034】
好ましくは空隙率を150容量%以上にするのがよい。空隙率の上限は、充填剤の種類やバインダーの種類により一般に変化するが、皮膜としての強度や脆弱性等から一般には200容量%以下である。
【0035】
空隙率を好ましく100容量%以上とするためには、固体微粒子と親水性バインダーの比率が特に重要であり、該固体微粒子の親水性バインダーに対する重量比が10以上が好ましく、200未満にすることがすることがより好ましい。この重量比が10未満では空隙容量が100%以上得るのが困難となり、200以上の場合には皮膜の脆弱性が劣化する。
【0036】
空隙層が固体微粒子を含有する空隙層で有る場合、固体微粒子としては従来インクジェット記録用紙で公知の各種の無機または有機の固体微粒子を用いることが出来る。
【0037】
上記目的で用いられる無機微粒子の例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、水酸化亜鉛、硫化亜鉛、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、珪酸アルミニウム、ケイソウ土、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、合成非晶質シリカ、コロイダルシリカ、アルミナ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、水酸化アルミニウム、リトポン、ゼオライト、水酸化マグネシウム等の白色無機顔料等を挙げることが出来る。
【0038】
その様な無機微粒子は、1次粒子のままでバインダー中に均一に分散された状態で用いられることも、また、2次凝集粒子を形成してバインダー中に分散された状態で添加されても良い。
【0039】
一方有機微粒子の例としては、ポリスチレン、ポリアクリル酸エステル類、ポリメタクリル酸エステル類、ポリアクリルアミド類、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、またはこれらの共重合体、尿素樹脂、またはメラミン樹脂等が挙げられる。
【0040】
本発明においては高い濃度を達成し、鮮明な画像を記録し低コストで製造できる等の点より、固体微粒子として、アルミナ水和物微粒子、シリカ微粒子および炭酸カルシウムから選ばれる固体微粒子を用いることが好ましい。
【0041】
本発明に好ましく用いられるアルミナまたはアルミナ水和物は、半径(短径)が3〜10nmを有する細孔容積の和が0.2〜2ml/gである多孔質アルミナまたはその含水物である。細孔容積の測定手段は、アルミナまたはアルミナ水和物の乾燥固形分に対して公知の窒素吸着法により測定することが出来る。
【0042】
アルミナまたはアルミナ水和物は結晶性であっても、非晶質であっても良く、また、形状は不定形粒子、球状粒子、針状粒子など任意の形状の物を使用することが出来る。
【0043】
本発明に好ましく使用されるシリカ系微粒子としては従来インクジェットで公知の各種のシリカ系微粒子を使用することが出来、例えば、湿式または気相法で合成された合成シリカ、コロイダルシリカ、1次粒子が凝集して2次粒子を形成している多孔質シリカ任意の形状のシリカを使用することが出来る。その様な例として、例えば特開昭55−51583号および同56−148583号等に記載された合成非晶質シリカ、例えば特開昭60−204390号に記載された気相法により合成されたシリカ超微粒子、特開昭60−222282号に記載されたフッ素を含有する合成不定形シリカ、特開昭60−224580号および同62−178384号に記載されたシランカップリング剤により表面処理された合成不定形シリカ、例えば特開昭62−183382号および同63−104878号に記載された球状シリカ、特開昭63−317381号に記載されたNa2O含有量が0.5重量%以上である合成シリカ微粒子、特開平1−115677号に記載された比表面積が100m2/g以上の合成シリカ微粒子、特開昭62−286787号に記載されたアルミナ表面処理された合成シリカ微粒子、特開平1−259982号に記載されたCa、MgまたはBaで表面処理された合成シリカ微粒子、吸油量が180ml/g以上の合成シリカ微粒子、特開昭57−14091号に記載されたコロイダルシリカ、特開昭60−219084号、特開平6−92011号、同6−297830号および同7−81214号に記載されたカチオン性コロイダルシリカ、および特開平5−278324号および同7−81214号に記載された数珠状に連結したまたは分岐したコロイダルシリカ等を挙げることが出来る。
【0044】
しかしながら、高い光沢性と高い空隙容量を得るためには、平均粒径が7〜30nmのシリカ超微粒子を用いることが好ましい。このシリカ微粒子は表面をカチオン変性されたものであってもよく、また、Al、Ca、MgおよびBa等で処理された物であてもよい。
【0045】
本発明のインクジェット記録用紙に好ましく用いられる炭酸カルシウムとしては、例えば、特開昭57−12486号、同57−129778号、同58−55283号、同61−20792号に記載された特定に比表面積を有する軽質炭酸カルシウム、特開昭63−57277号およぼ特開平4−250091号に記載された針柱状炭酸カルシウム、特開平3−251487号に記載された特定の針状1次粒子が凝集して2次粒子を形成した炭酸カルシウム微粒子、特開平4−250091号及び同4−260092号に記載された特定の吸油量を有する針柱状の斜方晶アルゴナイト炭酸カルシウム、および特開平7−40648号に記載された球状沈降性炭酸カルシウム等が挙げられる。
【0046】
この場合、高い光沢性と高い空隙容量を得られることから、粒径が約0.1μm以下の炭酸カルシウム微粒子を使用することが好ましく、特に平均粒径が10〜50nmの炭酸カルシウム微粒子を使用することが好ましい。
【0047】
一方、前記(2)による空隙形成を行う場合、固体微粒子と親水性バインダーは比較的強い相互作用をし、軟凝集体を形成することが好ましい。その様な固体微粒子と親水性バインダーは前記した中から適宜選択し、例えばそれらの水溶液を水分散物と混合し、その粘度上昇から比較的容易に判断することができる。
【0048】
好ましい形態は親水性バインダーの水溶液[A](通常1〜20重量%)と、固体微粒子分散液[B](通常1〜30重量%)を混合し、得られた混合液の粘度が[A]または[B]の高い方の少なくとも1.5倍以上になる様なものが使用できる。
【0049】
本発明で特に好ましいのは、親水性バインダーとして少なくとも水酸基を有するポリマーであり、ポリビニルアルコール、カチオン性ポリビニルアルコールは特に好ましい。
【0050】
又、固体微粒子としては、平均粒径が0.005〜0.1μmの微粒子シリカ、ケイ酸マグネシウムが特に好ましい。
【0051】
本発明の低沸点有機溶媒は、塗布乾燥時に蒸発し残存していないものが好ましく、好ましくは沸点が130℃以下、特に好ましくは100℃以下、最も好ましくは80℃以下の有機溶媒である。又、室温における水に対する溶解度が1重量%以上の低沸点有機溶媒が好ましい。
【0052】
低沸点有機溶媒の具体例として例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、2−メトキシエタノール、アセトン、メチルエチルケトン、2−ヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ビニル、酢酸イソプロピル、酢酸−n−プロピル、酢酸−n−ブチル、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、酪酸エチル、酪酸ビニル、酪酸メチル、アクリル酸メチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、イソプロピルビニルエーテル、および1,4−ジオキサン等が挙げられる。これらは2種以上を併用してもよい。
【0053】
この様な低沸点有機溶媒は好ましくは親水性バインダーに対して1〜15重量%用いることが好ましい。
【0054】
上記低沸点有機溶媒を含有する塗布液を調製する際には、該低沸点有機溶媒の濃度は固体微粒子の濃度、親水性バインダーの種類及び濃度等に様々変化するが、一般的には塗布液中における濃度が0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜10重量%である。
【0055】
又有機溶媒の添加時期は塗布前であれば、塗布液調製時のいかなる時期でも良く、具体的には例えば固体微粒子の分散時、親水性バインダー溶液との混合時、或いは塗布直前、のいかなる時期であっても良い。
【0056】
本発明の低沸点有機溶媒を塗布液中に添加することにより、前記(1)の方法による空隙形成の場合には、固体微粒子の凝集による粗大粒子の形成が抑制され、高い光沢を有する塗膜が得られると共に空隙容量が増してインク吸収性が改善される。
【0057】
又、前記(2)の方法においては、一般に固体微粒子と親水性バインダーの相互作用が比較的強いために塗布液が一般に増粘しやすく、作業性や塗布性及び生産性が低下しやすい。この場合、本発明の低沸点有機溶媒を添加することにより塗布液粘度が減粘して作業性、塗布性及び生産性が向上する。又塗布液乾燥後には有機溶媒の蒸発により急激に塗膜温度の低下と有機溶媒自体の蒸発による塗布液の急激な増粘により強い乾燥風を吹き付けることが可能となって、塗布スピードも大きく増大させることができる。
【0058】
本発明のインクジェット記録用紙のインク空隙受理層側の任意の層中には、必要に応じて各種の添加剤を含有させることが出来る。
【0059】
例えば、特開昭57−74193号、同57−87988号及び同62−261476号に記載の紫外線吸収剤、特開昭57−74192号、同57−87989号、同60−72785号、同61−146591号、特開平1−95091号及び同3−13376号等に記載されている退色防止剤、アニオン、カチオンまたはノニオンの各種界面活性剤、特開昭59−42993号、同59−52689号、同62−280069号、同61−242871号および特開平4−219266号等に記載されている蛍光増白剤、硫酸、リン酸、クエン酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のpH調整剤、消泡剤、ジエチレングリコール等の潤滑剤、防腐剤、増粘剤、硬膜剤、帯電防止剤、マット剤等の公知の各種添加剤を含有させることもできる。
【0060】
硬膜剤としては無機または有機の硬膜剤を使用することが出来、例えばクロムみょうばん、ホルムアルデヒド、グリオキサール、エポキシ系化合物、ビニルスルホン系化合物、アクリロイル系化合物、s−トリアジン系化合物、N−メチロール系化合物、カルボジイミド系化合物およびエチレンイミノ系化合物等を使用することが出来る。
【0061】
本発明のインクジェット記録用紙におけるインク記録面側の塗布固形分の量は特に制限はないが、概ねインクジェット記録用紙に対して5〜60g/m2が好ましく、10〜40g/m2がより好ましい。なお、記録画像形成後のカールの防止という面からは、なるべく薄く形成するのが良い。
【0062】
本発明のインク記録面側の任意の構成層中には、画像の耐水化剤として特開昭56−84992号のポリカチオン高分子電解質、特開昭57−36692号の塩基性ラテックスポリマー、特公平4−15744号、特開昭61−58788号、同62−174184号等記載のポリアリルアミン、特開昭61−47290号記載のアルカリ金属弱酸塩等を一種以上用いることができる。
【0063】
本発明でインクジェット記録用紙の支持体としては、従来インクジェット用記録用紙として公知のものを適宜使用できる。
【0064】
透明支持体としては、例えば、ポリエステル系樹脂、ジアセテート系樹脂、トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリイミド系樹脂、セロハン、セルロイド等の材料からなるフィルムや板、およびガラス板などを挙げるられ、この中でもOHPとして使用されたときの輻射熱に耐える性質のものが好ましく、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。このような透明な支持体の厚さとしては、約10〜200μmが好ましい。透明支持体のインク空隙受理層側およびバック層側には公知の下引き層を設けることが、インク空隙受理層やバック層と支持体の接着性の観点から好ましい。
【0065】
また、透明である必要のない場合に用いる支持体としては、例えば、一般の紙、合成紙、樹脂被覆紙、布、木材、金属等からなるシートや板、および上記の透光性支持体を公知の手段により不透明化処理したもの等を挙げることができる。不透明の支持体としては、基紙の少なくとも一方に白色顔料等を添加したポリオレフィン樹脂被覆層を有する樹脂被覆紙(いわゆるRCペーパー)、ポリエチレンテレフタレートに白色顔料を添加してなるいわゆるホワイトペットが好ましい。
【0066】
上記支持体とインク空隙受理層の接着強度を大きくする等の目的で、インク空隙受理層の塗布に先立って、支持体にコロナ放電処理や下引処理等を行うことが好ましい。さらに、本発明の記録シートは必ずしも無色である必要はなく、着色された記録シートであってもよい。
【0067】
本発明のインクジェット記録用紙では紙支持体の両面をポリエチレンでラミネートした紙支持体を用いることが、記録画像が写真画質に近く、しかも低コストで高品質の画像が得られるために特に好ましい。そのようなポリエチレンでラミネートした紙支持体について以下に説明する。
【0068】
紙支持体に用いられる原紙は木材パルプを主原料とし、必要に応じて木材パルプに加えてポリプロピレンなどの合成パルプあるいはナイロンやポリエステルなどの合成繊維を用いて抄紙される。木材パルプとしてはLBKP,LBSP,NBKP,NBSP,LDP,NDP,LUKP、NUKPのいずれも用いることが出来るが短繊維分の多いLBKP,NBSP、LBSP,NDP、LDPをより多く用いることが好ましい。但し、LBSPおよびまたはLDPの比率は10重量%以上、70重量%以下が好ましい。
【0069】
上記パルプは不純物の少ない化学パルプ(硫酸塩パルプや亜硫酸塩パルプ)が好ましく用いられ、又、漂白処理を行って白色度を向上させたパルプも有用である。
【0070】
原紙中には、高級脂肪酸、アルキルケテンダイマー等のサイズ剤、炭酸カルシウム、タルク、酸化チタンなどの白色顔料、スターチ、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール等の紙力増強剤、蛍光増白剤、ポリエチレングリコール類等の水分保持剤、分散剤、4級アンモニウム等の柔軟化剤などを適宜添加することが出来る。
【0071】
抄紙に使用するパルプの濾水度はCSFの規定で200〜500ccが好ましく、また、叩解後の繊維長がJIS−P−8207に規定される24メッシュ残分重量%と42メッシュ算分の重量%との和が30乃至70%が好ましい。なお、4メッシュ残分の重量%は20重量%以下であることが好ましい。
【0072】
原紙の坪量は30乃至250gが好ましく、特に50乃至200gが好ましい。原紙の厚さは40乃至250μmが好ましい。
【0073】
原紙は抄紙段階または抄紙後にカレンダー処理して高平滑性を与えることも出来る。原紙密度は0.7乃至1.2g/m2(JIS−P−8118)が一般的である。更に原紙剛度はJIS−P−8143に規定される条件で20乃至200gが好ましい。
【0074】
原紙表面には表面サイズ剤を塗布しても良く、表面サイズ剤としては前記原紙中添加できるサイズと同様のサイズ剤を使用できる。
【0075】
原紙のpHはJIS−P−8113で規定された熱水抽出法により測定された場合、5〜9であることが好ましい。
【0076】
原紙表面および裏面を被覆するポリエチレンは、主として低密度のポリエチレン(LDPE)および/または高密度のポリエチレン(HDPE)であるが他のLLDPEやポリプロピレン等も一部使用することが出来る。
【0077】
特にインク空隙受理層側のポリエチレン層は写真用印画紙で広く行われているようにルチルまたはアナターゼ型の酸化チタンをポリエチレン中に添加し、不透明度および白色度を改良したものが好ましい。酸化チタン含有量はポリエチレンに対して概ね3〜20重量%、好ましくは4〜13重量%である。
【0078】
ポリエチレン被覆紙は光沢紙として用いることも、また、ポリエチレンを原紙表面上に溶融押し出してコーティングする際にいわゆる型付け処理を行って通常の写真印画紙で得られるようなマット面や絹目面を形成した物も本発明で使用できる。
【0079】
原紙の表裏のポリエチレンの使用量はインク空隙受理層やバック層を設けた後で低湿および高湿化でのカールを最適化するように選択されるが、概ねインク受容層側のポリエチレン層が20〜40μm、バック層側が10〜30μmの範囲である。
【0080】
更に上記ポリエチレン被覆紙支持体は以下の特性を有していることが好ましい。
【0081】
▲1▼引っ張り強さ:JIS−P−8113で規定される強度で縦方向が2乃至30kg、横方向が1乃至20kgであることが好ましい、
▲2▼引き裂き強度:JIS−P−8116による規定方法で縦方向が10乃至200g、横方向が20乃至200gが好ましい、
▲3▼圧縮弾性率≧103kgf/cm2
▲4▼表面ベック平滑度:JIS−P−8119に規定される条件で20秒以上、特に好ましくは500秒以上が光沢面としては好ましいが、いわゆる型付け品ではこれ以下であっても良い、
▲5▼不透明度:JIS−P−8119による方法で85%以上、特に90%以上が好ましい。
【0082】
【実施例】
以下に本発明の実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、実施例中で「%」は特に断りのない限り絶乾重量%を示す。
【0083】
実施例1
100g/m2の原紙両面をポリエチレンで被覆した紙支持体(厚さ140μm、記録面側のポリエチレン層中に7重量%のアナターゼ型二酸化チタン含有。記録面の裏面側にバック層としてアルカリ処理ゼラチン1.2g/m2と硬膜剤を含有する層を有する)上の記録面側に、下記の〔塗布液1−1〕を湿潤膜厚が188μmに成るように塗布し、乾燥し空隙を有する層を支持体上に塗設しインクジェット記録用紙−1を得た。
【0084】
〔塗布液1−1〕
純水 935ml
平均粒径約0.07μmの微粒子シリカ 67.5g
平均重合度3500のポリビニルアルコール 18g
(ケン化度89%)
酢酸エチル 38.2ml
界面活性剤−1 1.2g
この皮膜の空隙容量は23ml/m2であった。
【0085】
【化1】
【0086】
次に、インクジェット記録用紙−1において、〔塗布液1−1〕を用いた塗布を以下のように変更したインクジェット記録用紙−2〜7をインクジェット記録用紙−1と同様にして作成した。
【0087】
インクジェット記録用紙−2:〔塗布液1−1〕の酢酸エチルを純水に変えた以外はインクジェット記録用紙−1と同じ。
【0088】
インクジェット記録用紙−3:
〔塗布液1−2〕
純水 980ml
平均粒径約0.07μmの微粒子シリカ 48.2g
平均重合度3500のポリビニルアルコール 12.8g
(ケン化度89%)
界面活性剤−1 1.2g
上記塗布液を湿潤膜厚が125μmに成るように塗布し乾燥後に更に上記塗布液で再度塗布乾燥して空隙を有する層を支持体上に塗設した。
【0089】
インクジェット記録用紙−4
上記の塗布液〔塗布液1−1〕の酢酸エチルの量を18ml/m2に低減し、純水量を10.2ml増加した以外はインクジェット記録用紙−1と同じ。
【0090】
インクジェット記録用紙−5:〔塗布液1−1〕の酢酸エチルをイソプロパノールに変えた以外はインクジェット記録用紙−1と同じ。
【0091】
インクジェット記録用紙−6:〔塗布液1−1〕の酢酸エチルをアセトンに変えた以外はインクジェット記録用紙−1と同じ。
【0092】
インクジェット記録用紙−7:〔塗布液1−1〕の酢酸エチルをメチルエチルケトンに変えた以外はインクジェット記録用紙−1と同じ。
【0093】
得られた各々のインクジェット記録用紙について、セイコーエプソン株式会社製インクジェットプリンターMJ−5100Cを用い、評価パターンを印字し以下の項目の評価を行った。
【0094】
(1)インク吸収容量:
▲1▼イエローとシアンの各インクの最大インク量の60%の吐出時、
▲2▼イエローとシアンの各インクの最大インク量の60%の吐出とマゼンタインクの最大インク量の30%を吐出させた時、
各々の場合のインクの溢れの状態を目視で観察した。
【0095】
〔インクの溢れ〕
○:印字直後に全く溢れない
△:印字直後には僅かに溢れているが約10秒以内に乾燥する
×:印字直後に溢れており表面が乾燥するのに10秒以上かかる。
【0096】
(2)インク吸収性:
▲1▼イエローおよびシアンのそれぞれ最大インク量の30%になるように 均一に吐出させて記録し、ベタ部の赤色反射濃度をマイクロデンシトメーター(アパーチュア=200μmφ)を用いて20点測定し、その濃度のバラツキの標準偏差を求め平均反射濃度で割った値を求めた。
【0097】
インク吸収性が良好な場合には画像にムラが無くこの値が小さくなるが、インク吸収性が低下するとこのお互いのインク液滴同士が記録紙上で互いにビーディングを起こしてムラになりこの値が増加する。
【0098】
(3)乾燥性:イエローとマゼンタの60%印字部を印字後一定時間経過後、普通紙を重ねて放置し、インクが普通紙に転写しなくなるまでの時間を求めた、
(4)ドット直径:ブラックインクの単一ドット直径(K)およびイエローベタ印字部にブラックの単一ドットを印字しその直径を顕微鏡で観察して求めた(K/Y)。直径は、それぞれ20個のドットの面積を測定しこれを円換算したときの直径の平均値として求めた(単位:μm)
(5)光沢度:印字面を日本電色工業株式会社製変角光沢度計(VGS−1001DP)を用いて60度光沢を測定した。
【0099】
(6)塗膜の微小ひび割れ:塗膜のひび割れはシアン印字部について50倍の倍率で顕微鏡写真を撮影し、この写真を用いて目視で評価した。
【0100】
評価基準は、
○;ひび割れの発生なし
△:ひび割れの発生がわずかにある
×;ひび割れがかなり認められる
××:拡大しなくても視認できる
(7)印字濃度:ブラックインクを印字して、印字濃度を光学濃度で測定した。
【0101】
数値の高い方が印字濃度は高いことを示す。
【0102】
各々のインクジェット記録用紙の空隙容量等は以下の通りであった。
【0103】
【表1】
【0104】
【表2】
【0105】
表2の結果から、本発明のインクジェット記録用紙−1、4〜7は高いインク吸収容量、良好なインク吸収性と乾燥性並びに高光沢性を有し、かつ、微小ひび割れの発生が無く、印字濃度が高くさらにドットサイズが小さく高品位インクジェット記録に適していることがわかる。
【0114】
実施例3
実施例1と同様に裏面処理を施した紙支持体の印字面側に、下記の〔塗布液3−1〕を下層として湿潤膜厚188μmに、〔塗布液3−2〕を上層として湿潤膜厚12μmになるように同時塗布して乾燥し、インクジェット記録用紙−30を作製した。
【0115】
【0116】
【化2】
【0117】
インクジェット記録用紙−31:〔塗布液3−2〕の湿潤膜厚を8μmで行った以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0118】
インクジェット記録用紙−32:〔塗布液3−2〕の湿潤膜厚を5μmで行った以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0119】
インクジェット記録用紙−33:〔塗布液3−2〕のポリビニルピロリドンをポリビニルアルコール(平均重合度500、ケン化度88%)に変えた以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0120】
インクジェット記録用紙−34:〔塗布液3−1〕の酢酸エチルをH2Oに変えた以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0121】
インクジェット記録用紙−35;〔塗布液3−2〕のポリビニルピロリドンをパオゲン(EP15){第一工業株式会社製}に変えた以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0122】
インクジェット記録用紙−36:〔塗布液3−1〕を〔塗布液−21〕に変えた以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0123】
インクジェット記録用紙−37;〔塗布液3−1〕を〔塗布液−22〕に変えた以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0124】
インクジェット記録用紙−38;〔塗布液3−2〕のポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイドのかわりにラポナイトRDS{日本シリカ工業株式会 社製}を25gを使用した以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0125】
インクジェット記録用紙−39;〔塗布液3−1〕を〔塗布液−23〕に変えた以外はインクジェット記録用紙−30と同じ。
【0126】
各々のインクジェット記録用紙に対して実施例1と同様な評価を行った。
【0127】
【表5】
【0128】
【表6】
【0129】
表5、表6から明らかように、実施例1と同様、本発明のインクジェット記録用紙が比較のインクジェット記録用紙に比して優れていることが分かる。
【0130】
【発明の効果】
以上実施例で実証した如く、本発明によるインクジェット記録用紙は優れたインク吸収性、高画像濃度であり、さらに光沢が高く、微小ひび割れ発生が無い優れた効果を有す。
Claims (3)
- 紙の両面をポリエチレンで被膜し、不透明度85%以上である支持体と、この支持体上に設けられたインクを受理する1層の空隙層とを有し、
この1層の空隙層は、平均粒径が0.005〜0.1μmのシリカ微粒子と沸点が130℃以下の有機溶媒を含む塗布液を前記支持体上に塗布乾燥して形成され、乾燥膜厚が36.4〜50μmであり、空隙容量が20〜40ml/m2であることを特徴とするインクジェット記録用紙。 - 前記空隙層は、前記シリカ微粒子と親水性バインダーを含有し、該シリカ微粒子の該親水性バインダー1種に対する重量比が10以上、200未満であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録用紙。
- 前記空隙層は、前記シリカ微粒子と親水性バインダーを少なくとも有し、該シリカ微粒子の該親水性バインダー存在下で軟凝集させて得た液を塗布乾燥して形成されたことを特徴とする請求項1又は2に記載のインクジェット記録用紙。
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